2020年10月07日更新
会社売却の注意点まとめ!事例を元に解説!

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
会社売却を成功させるためには、注意点を把握しておくことが大切です。注意点を把握せずに手をつけると、成立しなかったり成立しても目的を達成できなかったりと、様々なリスクがあります。本記事では、会社売却の注意点まとめと全体の流れを紹介します。
1. 会社売却とは
会社売却とは、自社の経営権をほかの会社あるいは個人に売却することです。経営者としてリタイアする時や、新事業・別事業に注力する時に活用されています。
会社売却をすると、会社の経営権と資産を譲り渡す対価として価値に応じた売却益を獲得できます。会社の価値には有形資産以外に無形資産も含まれるため、高額の売却益を獲得できるケースがほとんどです。
しかし、売却益の獲得というメリットがある一方で、いくつかの注意点も存在します。会社売却の成功率を著しく下げてしまう可能性もあるので、注意点を事前に確認しておくことが大切です。
2. 会社売却の注意点まとめ
会社売却は、会社・経営者・従業員にさまざまな影響を与えます。対応を誤るとトラブルに発展してしまう恐れもあるので、注意点を把握しておかなくてはなりません。
【会社売却の注意点まとめ】
- 譲渡所得に対する税金に注意
- 希望額通りの会社売却が出来るとは限らない
- 従業員・役員の処遇を要確認
- 会社売却のタイミングを逃さない
- 売却後の拘束に注意
- 情報漏えいに注意
- 個人で交渉することへの注意
1.譲渡所得に対する税金に注意
会社売却の注意点1つ目は、譲渡所得に対する税金です。会社売却では、株式の譲渡所得に対して20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税)の税率が課せられます。
つまり、経営者が獲得できる売却益は、税金が差し引かれた金額ということになります。税金を考慮していないと資金運用計画に支障がでる可能性もあるので、注意点として認識しておかなくてはなりません。
2.希望額通りの会社売却が出来るとは限らない
会社売却の注意点2つ目は、希望額通りの会社売却が出来るとは限らないことです。会社売却を行う際は、希望額を定めたうえで買い手を探しますが、買い手がみつかるかどうかは別問題であるため、希望額通りの売却が保証されるものではありません。
また、買い手がみつかった場合も交渉を進めるうえで値下げを求められることもあります。希望額通りの売却に拘りすぎると会社売却のタイミングを失ってしまう可能性もあるので、時には譲歩することも大切です。
3.従業員・役員の処遇を要確認
会社売却の注意点3つ目は、従業員・役員の処遇を確認しておくことです。会社売却で利用するM&A手法のなかには、従業員・役員の自動的な引き継ぎが行われない手法もあります。
引き継ぎが行われなかった場合は従業員・役員が失業することになるので、交渉段階から買い手側の意向を確認しておくことが大切です。
4.会社売却のタイミングを逃さない
会社売却の注意点4つ目は、会社売却のタイミングを逃さないことです。会社売却のタイミングは業界再編が進んでいる時が最適であり、買い手側が積極的に買収している時は売り手市場になっているので、高い評価を得られやすくなります。
しかし、業界再編が落ち着いてくると、業界内のシェアが固まって動きがみられなくなります。買い手をみつけることも難しくなる可能性があるので、タイミングを逃さないように常に準備を進めておかなくてはなりません。
5.売却後の拘束に注意
会社売却の注意点5つ目は、売却後に拘束される可能性があることです。会社売却においては、会社売却後も売り手側の経営者を会社・事業に関わらせるキーマン条項(ロックアップ)というものがあります。
キーマン条項の目的は、買い手側の事業安定です。多くの場合は経営者が事業のキーマンであるため、早期の事業安定を図るために売り手側の経営者を数年拘束します。
拘束内容は契約次第ですが、契約期間中は自由に行動できないことが多いため、会社売却後に新たに事業を起こそうと考えている時は、キーマン条項に注意しなければなりません。
6.情報漏えいに注意
会社売却の注意点6つ目は、情報漏えいです。会社売却の情報が不完全な形で流出すると、従業員の不安を煽って自主退職を招いてしまう恐れがあります。
上場会社の場合は株式市場への影響も大きなものになります。投資家は公式に発表された情報以外にも敏感に反応するため、株式市場の公正な取引環境が維持できなくなる可能性が高くなります。
会社売却の情報は会社や従業員に与える影響が大きいため、情報保護を徹底しながら交渉を進め、契約が成立した段階で公表する流れが理想です。
7.個人で交渉することへの注意
会社売却の注意点7つ目は、個人で交渉することです。会社売却を個人交渉で進めることも不可能ではありませんが、交渉トラブルや情報漏えいなどの注意点を考えると大きなリスクを伴います。
交渉では主観的な意見がぶつかり合うことになるため、双方が納得できる形で落ち着かせるのは難しく、トラブルも起こりやすくなります。また、各工程で客観的な意見が必要となるため、個人交渉には限界があります。
さらに、買い手側への直接打診は情報漏えいリスクも高まります。会社売却の買い手選定は、専門家を介してノンネームシート(匿名希望)で行うほうが安全でスムーズに進みます。
3. 会社売却の事例とポイントを確認
会社売却は注意点を押さえながら成功させている事例が沢山あります。この章では、会社売却の事例とポイントを確認していきます。
【会社売却の事例とポイント】
- SBSホールディングスと東芝ロジスティクスの会社売却事例
- 丸大食品と不二製油グループの会社売却事例
- グッドコムアセットとルームバンクインシュアの会社売却事例
- カクヤスとサンノーの会社売却事例
- テクノホライゾン・HDとアイ・ティ・エルの会社売却事例
- コロプラとMAGES.の会社売却事例
- ダブルエーと卑弥呼の会社売却事例
- 三洋貿易とNKSコーポレーションの会社売却事例
- 三井松島HDと三生電子の会社売却事例
- ユアサ商事と高千穂の会社売却事例
1.SBSホールディングスと東芝ロジスティクスの会社売却事例
2020年5月、SBSホールディングスは東芝グループの子会社・東芝ロジスティクスの株式を取得して子会社化することを公表しました。取得後の議決権所有割合は66.6%です。
東芝ロジスティクスは東芝グループの物流子会社であり、物流業務で蓄積されたノウハウと情報技術レベルの高さによる物流サービス・ソリューションを提供しています。
SBSホールディングスは、今回のM&Aで獲得した東芝ロジスティクスのノウハウを活用してサービスラインナップの拡充と海外ネットワークの強化を図るとしています。
2.丸大食品と不二製油グループの会社売却事例
2020年5月、丸大食品は不二製油グループの子会社・トーラクの全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。
トーラクは兵庫県神戸市に本社を構える洋菓子メーカーであり、「神戸プリン」や「神戸シェフクラブ」を主力商品として業績を伸ばしています。
今回の目的はトーラクの商品開発力・販売力の獲得としており、丸大食品が保有する経営資源とのシナジー創出により企業価値の向上を目指します。
3.グッドコムアセットとルームバンクインシュアの会社売却事例
2020年4月、グッドコムアセットはルームバンクインシュアの全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。
ルームバンクインシュアは住居タイプ特化の賃貸保証サービスを提供する会社です。賃貸の際に必要な連帯保証人の代わりとなる「賃貸保証システム」を提供することで、借主と貸主の不安を解消しています。
不動産管理業務を手掛けるグッドコムアセットは、今回獲得した賃貸保証サービスを有効活用することで効果的な顧客獲得を目指すとしています。
4.カクヤスとサンノーの会社売却事例
2020年4月、カクヤスはサンノーの全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。取得価格は非公表です。
サンノーは業務用酒類を販売している会社です。飲食店・食ビジネスに携わる企業限定の会員サイト「リカーズABC」を運営しており、福岡市内で大きな影響力を持っています。
カクヤスは今回の会社売却で獲得した事業を活用して九州地方への展開を目指すとしています。国内事業の成長を図ることでグループ全体の企業価値向上を図ります。
5.テクノホライゾン・HDとアイ・ティ・エルの会社売却事例
2020年3月、テクノホライゾン・ホールディングスの子会社タイテックはアイ・ティ・エルの全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。
アイ・ティ・エルは東京に本社を構えるシステム・ソフトウェア開発会社です。マネジメントツール「QPR Professional Manager」による「経営の見える化」を主力商品としています。
テクノホライゾン・ホールディングスは、今回取り込んだ事業とタイテックの既存事業との事業シナジーの創出による事業規模の拡大を目指します。
6.コロプラとMAGES.の会社売却事例
2020年3月、コロプラはMAGES.の全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。取得価額は非公表です。
MAGES.は東京都に本社を置くゲーム会社で、「STEINS;GATEシリーズ」を筆頭に数多くのゲーム企画・開発を手掛けています。
コロプラの中核事業はモバイルゲームであり、MAGESのゲーム企画・開発力を活用することで、モバイルゲーム市場での競争力をつけることを目的としています。
7.ダブルエーと卑弥呼の会社売却事例
2020年3月、ダブルエーは不動産会社HSHより卑弥呼の全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。
卑弥呼は1973年創業の婦人靴メーカーです。「卑弥呼レイン」などの高価格帯の独自ブランドを有しており、幅広い層の女性から高い支持を得ています。
一方のダブルエーは、国内112店・海外34店展開しているレディースシューズブランドです。卑弥呼の経営ノウハウやブランドを獲得することで、自社の企業価値向上を図ります。
8.三洋貿易とNKSコーポレーションの会社売却事例
2020年3月、三洋貿易はNKSコーポレーションの全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。
NKSコーポレーションは化学品の輸入販売を手掛ける専門商社です。特に食品添加物分野に長けており、高い認知度と専門性を有しています。
三洋貿易は注力しているライフサイエンス分野を成長させることを目的としており、顧客満足度の向上を通して企業価値向上を図るとしています。
9.三井松島HDと三生電子の会社売却事例
2020年3月、三井松島ホールディングスは三生電子の全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。
三生電子は超小型水晶の生産設備開発を手掛ける会社です。スマートフォンや家電などの電子機器に搭載される精密機器の開発分野において、高い技術力を有しています。
三井松島ホールディングスは、自動車の電装化や通信インフラの5G対応による需要拡大に先駆けたものとしています。今後は経営資源を共有することで、三生電子の事業安定を目指します。
10.ユアサ商事と高千穂の会社売却事例
2020年3月、ユアサ商事は高千穂の全株式を取得して、完全子会社化することを公表しました。取得価額は非公表です。
高千穂は、神奈川県を中心に戸建住宅・マンションのリフォーム工事を手掛ける会社です。安定したリフォーム案件確保の仕組みを構築しており、確固たる経営基盤を有しています。
ユアサ商事は、今回の会社売却の目的を神奈川エリアにおけるリフォーム・リノベーションビジネスの拡大としています。
今後は業界トップクラスの商品ラインナップを活かして、くらし分野のトータルコーディネートの複合専門商社として成長を目指します。
4. 会社売却の価格相場
会社売却を検討するうえで気になるのは売却額ですが、実際のところ価格相場は存在しません。会社売却では、企業価値評価という計算方法を用いて取引価格を算出します。
企業価値評価の計算方法はいくつもありますが、中小企業においては「時価純資産法+営業権」が一般的であり、時価評価した純資産に無形資産を評価した営業権を上乗せして価格を算出します。
算出された価格を参考に交渉を進めていき、最終的な取引価格を決定します。こうした過程を経たうえで売却額が算出されるものなので、一概に価格相場を提示することはできなくなっています。
5. 会社売却の流れ
会社売却を実行するためには、一定の手続きを踏む必要があります。各手続きのなかには注意点もあるので、ここでは共通する流れを解説します。
【会社売却の流れ】
- M&A仲介会社などとの契約
- 会社売却先の選定・交渉
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
1.M&A仲介会社などとの契約
まずはM&Aの専門家とのアドバイザリー契約を締結します。会社売却の注意点を押さえつつ進めるためには、M&Aの専門家のサポートが不可欠です。
おすすめの相談・契約先はM&A仲介会社です。M&Aを専門的に請け負っている専門家なので、会社売却の注意点・流れを熟知しています。会社売却の目的に合わせた最適な手法選びという点でも頼れる存在です。
秘密保持契約の締結
秘密保持契約とは、会社売却で開示する自社の秘密情報を守るために締結する契約書です。会社売却の注意点である情報漏えいの対策として、早期に締結しておきます。
2.会社売却先の選定・交渉
専門家との契約が済んだら、会社売却先の選定を行います。よりよい条件の相手を探すために、専門家が保有するネットワークを活用して広範囲から探します。
複数社の選定が終わったら、各社に打診して交渉に入ります。前向きな姿勢をみせる買い手が現れたら、会社の詳細が分かる資料を提供して本格的な検討へと移ります。
意向表明書の提示
意向表明書とは、譲受に対して前向きな意思があることを示す書面です。今後の交渉を円滑にする目的で、買い手側から売り手側に提出されます。
3.基本合意書の締結
基本合意書とは、現段階の交渉内容に双方の合意が得られていることを示す契約書です。契約書ですが法的な効力は持っていません。交渉内容の整理と今後のスケジュール確認を行う意味合いが強くなっています。
ただし、独占交渉権や秘密保持等の一部条項においては、法的な効力をもたせることが一般的です。
基本合意書の法的な効力を巡ったトラブルは珍しくないので、注意点として認識しておかなければなりません。
4.デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスとは、会社売却対象の価値・リスクを調査する活動です。会社の適正な価値を算出するために、買い手側より派遣される専門家によって調査されます。
デューデリジェンスの注意点は簿外債務です。デューデリジェンスで簿外債務が発覚すると、買い手に与える印象が悪くなってしまいます。
不要なトラブルを避けるためにも、徹底した調査と事前報告が不可欠であることを注意点として認識しておきましょう。
5.最終契約書の締結
最終契約書とは、最終的な交渉内容に双方が合意していることを示す契約書です。デューデリジェンスの結果が反映されたものなので、全ての条項において法的な効力を持ちます。
注意点としては、契約書の内容に反する行為は訴訟・紛争問題に発展する可能性があることです。したがって、各条項の内容についてしっかり把握しておく必要があります。
6.クロージング
クロージングとは、売り手側の引き渡しと買い手側の取得対価の支払いを行う場です。会社売却の交渉は既に終わっていますが、引き渡し準備のために最終契約書の締結日より一定の期間を空けてから実行されます。
ただし、最終契約書の締結段階で引き渡し準備が終わっている場合は、同日中にクロージングを行うこともあります。
6. 会社売却の相談はM&A仲介会社がおすすめ
会社売却はいくつもの注意点があり、それぞれ個別に対応することはできても、全ての注意点に対応しようとすると大変な労力を要します。
全ての注意点をおさえて会社売却の成功率を高めるためには、M&A仲介会社のサポートを受けることをおすすめします。
M&A総合研究所は、M&A・会社売却の仲介を請け負っているM&A仲介会社です。さまざまな業種の仲介実績を保有しており、M&A規模は中堅・中小規模と幅広く対応しています。
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料金体系は完全成功報酬制を採用しています。手数料は成功報酬のみなので、会社売却が成約するまで支払いが発生しません。
無料相談は24時間お受けしています。会社売却をご検討の際は、どうぞお気軽にM&A総合研究所にご相談ください。
7. まとめ
今回は、会社売却の注意点について解説しました。会社売却を進めるうえで、多くの注意点は事前に対策を施しておくことで対応できますが、法的な内容が伴うものも存在します。必要に応じて専門家に相談することで、注意点に対して適切な対応を取ることができます。
【会社売却の注意点まとめ】
- 譲渡所得に対する税金に注意
- 希望額通りの会社売却が出来るとは限らない
- 従業員・役員の処遇を要確認
- 会社売却のタイミングを逃さない
- 売却後の拘束に注意
- 情報漏えいに注意
- 個人で交渉することへの注意
【会社売却の流れ】
- M&A仲介会社などとの契約
- 会社売却先の選定・交渉
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
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