会社買収の価格・金額の算定方法や相場を解説【事例15選】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

会社買収を行う際には、買収手続きだけでなく、買収対象となる会社の価格(金額)の算定方法・相場なども知っておく必要があります。本記事では、会社買収の価格(金額)の算定方法・相場をまとめました。そのほか、会社買収の事例も紹介します。

目次

  1. 会社買収とは
  2. 会社買収の価格・金額のベースになる「企業価値評価」の方法
  3. 会社買収の価格・金額を決める流れ
  4. 会社買収の価格・金額の交渉方法
  5. 会社買収の価格・金額の相場
  6. 会社買収の価格・金額に影響を与える無形資産
  7. 会社買収の価格・金額算定に役立つ事例15選
  8. 希望する価格・金額で会社買収を行うには
  9. 会社買収の価格・金額に関する相談先
  10. 会社買収の価格・金額まとめ
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1. 会社買収とは

会社買収とは

近年、M&Aの成約件数が増加傾向にある状況です。特に会社売却を希望する会社の増加が目立っていますが、主な理由としては中小企業経営者の高齢化に伴う後継者問題の深刻化などが挙げられます。

これに伴い、会社買収を行う企業数が増加中です。会社買収を行う理由は、主に以下の2点が挙げられます。
 

  • 経営の多角化・事業規模の拡大
  • 自社の成長を維持するため
 

1つ目は、経営の多角化・事業規模の拡大です。会社を買収すると、経営のリスクを回避できるほか、シナジー効果による売り上げ増加も期待できます。

2つ目は、自社の成長を維持するためです。最近は時代の流れが速く、先行きが不透明となっており、確実に自社の成長を維持するために会社買収を活用する企業が増えています。

以上のような理由から、従来よりも会社買収を積極的に行う会社は増加しています。会社買収における手続き・基本的な流れ・手順などついては、以下の記事で詳しく解説しておりますのでご活用ください。

【関連】会社買収の手続きや基本的な流れ・手順をフローチャートで解説!

2. 会社買収の価格・金額のベースになる「企業価値評価」の方法

会社買収の価格・金額のベースになる「企業価値評価」の方法

ここでは、会社買収の価格(金額)の算定方法を紹介します。会社買収の価格(金額)の算定方法は、大きく分類すると以下の3つです。
 

  1. インカムアプローチ
  2. マーケットアプローチ
  3. コストアプローチ

それぞれの算定方法を詳しく見ていきましょう。

①インカムアプローチ

インカムアプローチは、買収対象の会社または事業から将来生み出されるフリーキャッシュフローの現在価値総額から、買収金額を算出する方法です。

この算定方法のデメリットは、買い手と売り手が考える事業の将来性が異なる場合、会社買収の交渉が難航するおそれがある点が挙げられます。

インカムアプローチは、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)と配当還元法の2つに細かく分けられます。

特にDCF法は、その理論的背景から最も合理的な企業価値評価の方法といわれていて、M&A取引の説明責任が高い案件で用いられる方法です。

DCF法

DCF法は企業価値評価の手段として、学術から実務まで広く用いられている方法であり、一般的に将来5年にわたるフリーキャッシュフローの予想をもとに算出されます

フリーキャッシュフローは、会社の利益から必要経費を差し引いた額であり、会社が経営のために自由に使用(株主へ分配)できる現金です。DCF法では、想定される将来5年間のフリーキャッシュフローを現在価値に割り引き合計し、企業価値を求めます。

具体例を用いた計算方法は、後ほど紹介します。

配当還元法

配当還元法とは、将来の配当金をもとに企業価値を算出する方法です。株式の配当金は、理論上会社が生むフリーキャッシュフローと連動するため、DCF法と同様に、将来の事業性から企業価値を評価できます。

しかし、実質的に配当金額を経営者自身が決められる場合には、配当金額を高く見積もることで配当還元法の評価結果の釣り上げを図るおそれがあります。

実務上、配当還元法により会社買収の価格(金額)を算出するケースはそれほど見られません。

②マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、市場(マーケット)によって成立する価格(金額)を基準にして企業価値を算出する方法です。つまり、マーケットアプローチでも、客観的な企業価値を算出できます。

本記事では、マーケットアプローチに分類される方法のうち、市場株価法・類似会社比準法を詳しくまとめました。

市場株価法

市場株価法では、上場会社のM&A取引に際して、市場株価を企業価値とみなす方法です。つまり、東京証券取引所などに上場している企業の企業価値を算出する場合でしか使用できません。

日次株価は変動が大きいため、市場株価法を用いるときは、3カ月間の株価の平均値を用いることが多いです。

類似会社比準法

類似会社比準法とは、会社の規模が類似している上場企業の株価をもとに、企業価値や会社買収の価格(金額)を算出する方法です。主として、非上場企業がマーケットアプローチにより企業価値を算出したい場合などに用いられます。

なお、類似会社比準法と性質が似ている算定方法である、類似取引比較法・類似業種比較法などを採用するケースも少なくありません。

類似取引法

類似取引法は、会社の規模が類似している企業のM&A取引における売買価格の平均を株式時価と考え、買収価格を算出する方法です。

類似企業を参考にする点で類似会社比準法と似ていますが、上場会社の取引に限定しない点で異なります

ゴルフ場のM&A取引などで用いられる場合がありますが、基本的に非上場企業のM&Aの売買価格の情報は限定されているため、利用される場面は少ないです。

③コストアプローチ

コストアプローチとは、対象会社の現在における企業価値を算出して、会社買収の価格(金額)を求める方法です。メリットとしては、財務諸表をもとに算出できるため、客観的に会社買収の価格(金額)を求められる点が挙げられます。

その一方でデメリットとしては、将来予想される利益を加味しない点です。そのため、将来的に成長が期待できる業界に所属する企業などとM&Aを行う場合には、コストアプローチはそれほど使用されません。

コストアプローチには、時価純資産法と簿価純資産法の2つに細かく分けられます。

時価純資産法

時価純資産法では、純資産の時価をもとに、会社買収の価格(金額)を求めます。具体的には、対象会社の総資産の時価から負債の時価を差し引き、得られた純資産額の時価を企業価値とする方法です。

簿価をそのまま使うのではなく、時価に置き換える点で簿価純資産法より手間がかかります。各資産や各負債の時価総額は、再調達原価法や正味売却価格を用いて求めます

ただし、全ての資産や負債の時価評価は困難です。そのため、金額が大きい一部の資産や負債のみを時価評価し残りは簿価として計算する方法があり、この方法を修正時価純資産法と呼びます

時価純資産法に数年分の利益を加える方法

時価純資産法から派生した株式評価方法に、「年倍法(または年買法)」があります。

これは、時価純資産法により得られた企業価値総額に、直近年度の事業成績(営業利益やEBITDAなど)を数年分加算する方法です。

加算する事業成績の年数は交渉によって決まることが多いです。一般的には3年から5年程度とすることが多く、買収対象会社の属性や状況次第で増減します。

DCF法と比較して理論的な背景がない方法なので、上場企業などの株主への説明責任が大きいM&A取引ではあまり用いられません
 

簿価純資産法

簿価純資産法は、貸借対照表上の純資産をもとに会社買収の価格(金額)を算出する方法で、具体的な計算方法は以下のとおりです。
 

  • 貸借対照表の総資産額 ー 貸借対照表の負債額

特に買収先が中小企業の場合には、帳簿を粉飾していたり、負債隠しをしていたりするケースが多いです。そのため、基本合意書締結後のデューデリジェンス(企業監査)を徹底的に行いながら、正確な簿価純資産法に基づいた会社買収額を算出しましょう。

とはいえ、もともとの簿価が資産・負債の価値を正確に表している可能性が低いため、会社買収ではほとんど使用されていません。

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3. 会社買収の価格・金額を決める流れ

会社買収の価格・金額を決める流れ

M&A取引の交渉で最も繊細な場面は買収価格の決定といわれています。

その理由は、買い手企業は金額を低くしたいと考える一方で、売り手企業は金額を高くしたいと考えることが当然であるため、利益相反の交渉となるからです。

買収価格は、通常、基本合意書を結ぶ段階でおおむね合意され、その後のデューデリジェンスの結果に基づいて修正されます。

企業価値評価を行う

買い手企業か売り手企業のどちらかが買収価格に納得せず、交渉が難航した場合に、手助けになるのが双方から独立した専門家による企業価値評価です。

買い手企業または売り手企業のいずれかから、売り手企業の財務情報を専門家へ提出し、客観的な企業価値評価結果を算出してもらうことで、買収価格の交渉の材料とすることが可能です。

専門家は、会計士、税理士、フィナンシャル・アドバイザーなどの企業財務のプロや、商工団体の支援機関などがいます。

専門家は、客観的な結果を出すためにシナジー効果を考慮しない算定結果を出します。この客観的な算定結果に、買い手企業が自社で計算したシナジー効果を加算して、買収価格を決めることが多いです。

デューデリジェンス・交渉をもとに買収価格・金額を決める

最終的な買収価格は、デューデリジェンスにより判明した事実を織り込んで決定されます

そのため、専門家による算定を得る場合には、デューデリジェンスの結果を織り込めるかの確認を取ることをおすすめします。

逆に、デューデリジェンスの際には、どの項目が買収価格に影響するかを意識しながら行うことが重要です。

4. 会社買収の価格・金額の交渉方法

会社買収の価格・金額の交渉方法

ここでは、会社買収の価格(金額)の交渉方法をまとめました。会社買収の価格(金額)の交渉方法は、大きく分けて以下の2つです。
 

  1. 個別交渉による方式
  2. オークション(入札)による方式

それぞれの方法を順番に見ていきましょう。

①個別交渉による方式

価格交渉の方法としては、個別交渉による方式が一般的です。これまでに紹介した会社買収の価格(金額)の算定結果は基本合意書の締結前に提示されて、M&Aにおける取引価格のベースとなります。

基本合意書の締結後はデューデリジェンスが実施されますが、ここではマイナスに評価されれば金額が減少し、プラスに評価されれば金額が上昇します。そして最終契約書の締結前に、デューデリジェンス結果をもとに価格交渉が行われる仕組みです。

以上が、個別交渉による方式の一般的な流れとなります。M&A仲介会社をとおして会社買収を行うときは、基本的に個別交渉により会社買収の価格が決定されるのです。

②オークション(入札)による方式

オークション(入札)による方式は、1つの売却対象に買収を希望する会社が複数存在する場合などに用いられる方式です。オークション方式では一般的にM&A取引金額が高くなる傾向にあるため、会社買収側からするとデメリットとなりやすい方法です。

とはいえ、現時点ではオークション方式が採用されるケースはそれほどありません。なぜなら、売り手側からすると、複数の買い手候補と交渉しなければならず、交渉能力の高いM&A専門家と長期間にわたって契約を締結する必要があるためです。

そのため、売り手側は会社売却が完了するまでに多くの費用を負担しなければならないことから、オークション方式を利用する企業はそれほど見られません。

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5. 会社買収の価格・金額の相場

会社買収の価格・金額の相場

ここでは、会社買収の価格(金額)の相場を具体的な計算方法とともに紹介します。時価純資産法とDCF法による価格(金額)の相場算出方法を、架空のケースを設定してまとめました。

ここで想定する買収予定の中小企業A社は自社とは別業種であり、新規参入のために会社買収を行います。A社の貸借対照表上の総資産は1億円で負債は4,000万円です。ところが、総資産と負債を時価に直すと、それぞれ総資産1億2,000万円・負債5,000万円と算出されました。

A社では将来的に安定した収益が見込まれており、今後5年間のフリーキャッシュフローは毎年2,000万円と予想されています。ここからは、この事例について、各算定方法における価格(金額)相場の計算方法を見ていきましょう。

大まかな相場の計算方法

企業買収価格の相場は、中小企業のM&Aや事業承継で用いられることが多い年倍法により計算します

年倍法では、時価純資産額に将来フリーキャッシュフローの3年分から5年分を加算しますが、上記事例では、将来5年間のフリーキャッシュフローが予想されているので、5年分を加算します。

つまり、時価純資産額7,000万円にフリーキャッシュフロー5年分1億円を加算し、相場は1億7,000万円であるとわかります

時価純資産法を用いた金額の算出

時価純資産法では、総資産と負債を時価に換算した上で企業価値を求めます。この算定方法では、将来の収益およびフリーキャッシュフローなどは用いません。

上記の事例では時価総資産が1億2,000万円・時価の負債が5,000万円であるため、時価純資産法による企業価値は1億2,000万円ー5,000万円=7,000万円と算出されます。

DCF法を用いた金額の算出

DCF法では、毎年期待されるフリーキャッシュフローの金額を現在価値に割り引いた上で用います。詳細な計算方法は割愛しますが、将来的に物価の向上が予想されれば貨幣価値は下がるため、現在価値の金額が目減りする仕組みです。

上記事例で毎年の金利を3%と仮定すると、将来5年間分のフリーキャッシュフローの合計は、2,000万円✕5年間÷103%÷103%÷103%÷103%÷103%=8,600万円と算出されます。

相場よりも高い価格・金額で会社売却を行うポイント

上記の企業価値計算方法は、あくまで客観的情報から計算した会社の価値であり、誰が計算してもその結果はほとんど同じです。

以下では、計算結果以上の価格でM&A取引に応じてくれる相手を探すためのポイントを解説します。

自社を高く評価する相手先を見つける

買い手企業の状況によっては、売り手企業が持つ帳簿に現れない価値を評価し、相場以上の価格で取引に応じてくれる場合があります

特に、大きなシナジー効果が見込まれる場合は、シナジー効果により得られる利益の一部を買収価格に加算可能です。

自社を高く評価してくれる相手を見つけられれば、相場以上の価格でM&A取引を実行できるでしょう。

買収側が魅力に感じる無形資産をそろえる

帳簿に計上される有形資産のほかに会社価値に影響を与える要素として、無形資産という概念があります。無形資産は、買収価格と時価純資産額の差額である「のれん」として数値化されます

会社価値には以下のような無形資産が影響することを認識し、資産を蓄積すると良いでしょう。

  • 従業員の質
  • 技術力、ノウハウ
  • 知的財産権(特許権など)
  • 許認可
  • ブランド、知名度、信用
  • 販路や商流
  • 店舗網、販売網
  • 業界での地位
  • 業界の成長性

自社の強みを根拠を交えてアピールする

自社の強みのアピールは難しいですが、デューデリジェンスの過程で、自社の情報を相手に正確に伝えられれば、買収価格を向上できる可能性があります

売り手側の将来のキャッシュフローは、事業計画によって判断されます。事業計画の根拠を自社内で明確化しておくことで、将来見込まれる利益を根拠を交えてアピール可能です。

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6. 会社買収の価格・金額に影響を与える無形資産

会社買収の価格・金額に影響を与える無形資産

ここでは、会社買収の価格(金額)に影響を与える無形価値の評価を解説します。会社買収の価格(金額)に影響を与える要素は、純資産額・設備など数値を用いて計算できる要素だけではありません。

買収先が保有する特別な無形資産が1つでもあれば、価格は大きく変動する可能性があります。本記事では、こうした無形資産を、以下の7項目に分けてまとめました。
 

  1. 会社買収先の従業員
  2. 会社買収先の顧客リスト
  3. 会社買収先の取引先
  4. 会社買収先の市場シェア
  5. 会社買収先の特許や技術・ノウハウ
  6. 会社買収先の強み(地域・世代・ジャンル・ブランド力など)
  7. 会社買収先の経営者の人間性・経営哲学

以下では、それぞれの無形資産を詳しく見ていきましょう。

①会社買収先の従業員

会社買収の価格(金額)に影響を与える無形価値の1つ目として、従業員を紹介します。中でも従業員のスキル・定着率・賃金の3要素は、会社買収の価格に影響を与える可能性が高いです。

スキルの高い従業員が多かったり従業員の定着率が高かったりするほど、価格は高まります。賃金水準がスキルに比して低いほど買収側のメリットとなるため、買収価格は高くなる傾向にあるのです。この3要素のバランスが取れている企業ほど、買収価格は高くなります。

反対に、3要素のうち1つでも魅力に欠けていると、買収価格は低くなりやすいです。例えば、従業員のスキルが高く賃金水準も低い一方で、定着率が低い会社を想定します。この会社は定着率が低いため、従業員のスキルを保証できません。

つまり、魅力が大きく低下してしまうため、企業価値が低下して比較的安価な買収価格になります。もしもこうした会社を買収したときは、欠けている魅力を補うための対策が必要です。対策を考慮した上で、会社買収を行いましょう。

②会社買収先の顧客リスト

会社買収の価格(金額)に影響を与える無形価値の2つ目は、顧客リストです。一般的に保有している顧客リストが多い企業ほど、会社買収の価格(金額)は高くなる傾向にあります。顧客リストが整理・分析されており、非常に有用であると判断されれば、会社買収の価格(金額)はより高まるのです。

新規参入を目的として会社買収を行い即座に利益を上げたい場合には、たとえ会社買収の価格(金額)が高くても分析済みの顧客リストを保有する会社を買収すると良いでしょう。

③会社買収先の取引先

3つ目に、買収先の取引先を挙げます。一般的に、自社よりも規模の大きい会社を取引先とするには、非常に大きな労力が必要です。そのため、取引先として数多くの大企業を抱えている会社では、会社買収の価格(金額)が高くなる傾向にあります。

買い手側からすると、取引したい大企業をすでに取引先として抱える買収先を見つけた場合には、買収価格(金額)が多少高くても積極的に買収を狙うと良いでしょう。

④会社買収先の市場シェア

4つ目は市場シェアです。ここでいう市場シェアは、特にニッチ商品に関する市場シェアをさします。

ニッチ商品とは、特定業界において、需要が少なく大手企業が手を出さない商品のことです。しかし、確実な需要があり、なおかつ企業の努力次第で利益を上げられるため、中小企業を中心にニッチ商品の製造・販売は積極的に実施されています。

たとえ業績は赤字だとしても、ニッチ商品の市場シェアを10%以上占めていると、高い確率で利益を上げやすいです。そのため、こうした買収相手は、赤字か否かにかかわらず価格(金額)が高くなる傾向にあります。

⑤会社買収先の特許や技術・ノウハウ

5つ目は、特許や技術・ノウハウです。これらは、非常に高い価値のある無形資産の代表例でもあります。客観的に見て価値の高い無形資産を保有している企業は、もちろん価格(金額)が高まりやすいです。

そのため、特許・技術・ノウハウなどの無形資産の獲得を目的に会社買収を行う場合、M&A取引価格がある程度高まることを想定しておきましょう。

⑥会社買収先の強み(地域・世代・ジャンル・ブランド力など)

6つ目に、地域・世代・ジャンル・ブランド力などの強みです。ここでは、これらの強みと会社の買収価格との関係性を、駄菓子の製造会社を例に挙げながら解説します。

もともと駄菓子は小学生を対象とする商品であり、この世代に対して強みを持っています。そこで駄菓子を製造する会社を買収すれば、小学生を対象とした新商品が受け入れられやすくなったり、駄菓子のブランドや会社名を覚えてもらえたりするほか、将来的に自社の顧客になる可能性も高いです。

このように、何らかの強みを持つ会社はさまざまな経営戦略に応用できるため、会社買収の価格(金額)が高くなる傾向にあります。

⑦会社買収先の経営者の人間性・経営哲学

最後に紹介するのは、経営者の人間性・経営哲学です。買収先企業の創業歴が長いほど、経営者の人間性・経営哲学などが企業全体に行き渡りやすくなります。

しかし、会社買収を行うと、自社の企業風土にするために統合プロセスを行わなければなりません。このときに、経営者の人間性や経営哲学がわかりやすく全社員に浸透している会社を買収すれば、買収後スムーズに統合しやすくなるのです。

そのため、経営者の人間性や経営哲学が浸透している企業は、会社買収の価格(金額)が高くなる傾向にあります。

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7. 会社買収の価格・金額算定に役立つ事例15選

会社買収の価格・金額算定に役立つ事例15選

ここでは、2018年以降に実施された会社買収の事例を15つ紹介します。会社買収の目的および買収価格(金額)を可能な限り記載しているため、会社買収を行う際の参考としてください。

①ニトリHDによる島忠の買収

2021年1月、ニトリホールディングスがTOBにより島忠を完全子会社化しました。ニトリホールディングスは島忠の株式を約3,000万株取得し、買収金額は1,650億円でした

開示情報によれば、ニトリの目的は「ホームセンター商品とホームファッション商品との相互補完による販売拡大と、プライベートブランド商品開発ノウハウ共有による利益率の向上、物流機能の共同利用によるコスト削減・資産効率改善」です。

②NTTによるNTTドコモの子会社化

2020年11月、日本電信電話(NTT)が、上場子会社であったNTTドコモを完全子会社化した取引です。NTTはTOBにより最終的に11億株を取得し、買収金額の総額は約4兆3,000億円でした

開示情報によれば、本完全子会社化した目的は「通信事業の競争力強化、成長戦略の柱である法人ビジネス、スマートライフ事業の強化、グループ全体のリソース活用による研究開発体制の強化といった、事業シナジーの実現」です。

③ZホールディングスによるZOZOの買収

2019年11月、ヤフーを子会社に持つZホールディングスが、ZOZOをTOBにより連結子会社化しました。Zホールディングスは152万株を取得し、買収金額は約4,000億円でした

開示情報によれば、ZホールディングスによるZOZOの連結子会社化の目的は、「集客、商品提供、ユーザーの利便性向上などの事業シナジーの実現」です。

④大正製薬HDによるDHG社の子会社化

2019年5月、公開買付けにより大正製薬HDによるDHG社(ベトナム)の子会社化が行われました。取引価格は約160億円と報告されています。大正製薬HDでは、従来よりDHG社と資本業務提携して両社のシナジー効果を追求してきました。

本件子会社化により、両社では、連携関係をさらに強化して、アジア市場での医薬品事業の拡大を図っています。

⑤伊藤忠商事によるデサントの買収

2019年3月、デサントに対する敵対的TOBにより、伊藤忠商事が40%の株式を取得しました。本事例では、伊藤忠商事は約700万株を取得し、買収金額は2,000億円です

開示情報によれば、買収の目的は「取締役の見直し等を中心とした経営体制やコーポレートガバナンスの再構築及び強化によりデサント社及び伊藤忠商事グループ全体の企業価値の向上させること」です。

⑥成学社によるナスピアの子会社化

6つ目の事例は、2019年3月の発表された成学社によるナスピア社の子会社化です。取引価格は非公開とされています。

買収側の成学社は、学習塾の事業を行っています。一方で売却側のナスピアは、AIを活用したeラーニング教材などの企画開発に強みを持っている会社です。今回の子会社化により、成学社では、事業の拡大・eラーニングを用いた就職支援などの展開を図っています。

⑦ジャパンミートによるタジマの子会社化

7つ目の会社買収の事例は、2019年3月の関東圏に基盤を持つジャパンミートが埼玉県東部に展開するスーパー、タジマの子会社化です。取引価格は公開されていません。

買収側のジャパンミートは業務用スーパー「肉のハナマサ」だけでなく、外食事業「焼肉や漫遊亭」や食品スーパー「ジャパンミート生鮮館」などを展開しています。

今回の子会社化は、主として埼玉県での基盤強化および店舗網の拡大が目的とされています。

⑧ロコンドによるモバコレの子会社化

8つ目の事例は、2019年3月のロコンドによるモバコレの子会社化です。取引価格は4億8,800万円と発表されています。

買収側のロコンドはCMでも知られており、靴とファッションの通販サイトを軸に事業を展開する会社です。その一方で、売却側のモバコレでは、20代女性向けファッション商品を取り扱うショッピングサイトを運営しています。

今回の子会社化は、両社からすると、電子商取引サービス・プラットフォームの相互活用による事業拡大を図った事例です。

⑨レノバによる四日市ソーラー匿名組合事業の子会社化

2019年3月、レノバにより四日市ソーラー匿名組合事業が子会社化されました。取引価格は4億800万円と発表されています。

レノバは、太陽光など再生可能エネルギーの発電事業を手掛けている会社です。今回の子会社化により、レノバでは、収益規模の拡大が図られています。

⑩日本アンテナによる東芝コンシューママーケティングのアンテナ・メディア機器事業の取得

10例目は、2019年3月の日本アンテナによる東芝コンシューママーケティングのアンテナ・メディア機器事業の取得です。取引価格は公開されていません。とはいえ、アンテナ・ブースター・チューナーなどの製造販売事業を、売上高約13億4,000万円分での取得を行っています。

本件の事業譲渡により、日本アンテナでは、新商品開発・既存品の改良改造におけるスピードアップをはじめ、シナジー効果の獲得が期待されています。

⑪久光製薬による九動の譲渡

11例目は、2019年3月の久光製薬が子会社の九動を日本クレアに譲渡した事例です。取引価格は公開されていません。子会社である九動は、久光製薬にて使用される実験動物を生産・飼育しています。

本件譲渡により、久光製薬では、医薬品事業への経営資源の集中を図っています。

⑫日本コンピュータ・ダイナミクスによる矢野産業の子会社化

2019年2月に、日本コンピュータ・ダイナミクスにより矢野産業が子会社化されました。取引価格は公開されていません。

買収側の日本コンピュータ・ダイナミクスは、IT技術を生かした駐輪場事業を展開しており、電子ロック式駐輪場の運営・管理を全国規模で行っています。一方で売却側の矢野産業は、九州地域にて駐輪場事業を行う会社です。

本件子会社化により、日本コンピュータ・ダイナミクスでは、九州における駐輪場事業拡大が図られています。

⑬ウェルス・マネジメントによる美松の子会社化

13例目は、2019年2月のウェルス・マネジメントによる美松の子会社化です。取引価格は公開されていません。

もともと美松は会社分割を行って、新設する法人に対して不動産保有・管理業務を譲渡しています。美松のホテル運営業務への特化に伴い、子会社化が決定されました。

⑭SHIFTによるSHIFT PLUSの子会社化

2019年2月の本事例では、SHIFTによる関連会社SHIFT PLUSの連結子会社化です。取引価格は公開されていません。SHIFT PLUSはSHIFTから出資を受けて設立された会社であり、ソーシャルゲームなどの運営・テスト事業を行っています。

本件連結子会社化により、SHIFTでは、SHIFT PLUSの経営権を掌握して事業発展の加速化を図っています。

⑮マネックスグループによるコインチェックの買収

2018年4月、マネックスグループがNEM流出事件を起こしたコインチェックを完全子会社化しました。マネックスグループはコインチェックの株式177万株を取得し、買収金額として36億円を支払いました

開示情報によれば、マネックスグループの目的は「ブロックチェーンや暗号資産を次世代の技術・プラットフォームとして認識した上で、これらの技術を中心にグループを飛躍的に成長させること」です。

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8. 希望する価格・金額で会社買収を行うには

希望する価格・金額で会社買収を行うには

希望する価格(金額)で会社買収を行うためには、以下の3つを実践すると良いでしょう。
 

  • 複数のM&A仲介会社に相談して、マッチングできそうな買収先を探してもらう
  • 会社買収価格を適正に計算できるようにする
  • 最終契約を行うときの交渉を綿密に行う

1つ目のポイントは、複数のM&A仲介会社に相談しつつ、マッチングできそうな買収先を探してもらう点にあります。探索の数を増やすと目的の会社に出会う確率が高まるため、取り扱い案件数の多いM&A仲介会社には積極的に相談しましょう。

2つ目のポイントは、会社買収価格を適正に計算できるようにする点です。もともと売却側は、できるだけ高値で会社を売ろうと考えます。

そのため、自社の価格が最も高くなるような計算方法で算出した価格のみを最初に提示してくる可能性もあります。

買収側の経営者自身も会社買収価格を計算できるようにしておき、適切な金額で取引できるようにしましょう。

最後のポイントは、最終契約を行うときの交渉です。最終契約の締結はデューデリジェンス後であるため、取得したデータをもとに経営者自身が納得する価格交渉を行えるよう準備しておきましょう。

これら3点のポイントに対応できれば、希望する価格(金額)での会社買収を目指せます。

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9. 会社買収の価格・金額に関する相談先

会社買収の価格・金額に関する相談先

会社買収のスムーズな成功を目指すためにも、M&Aの専門家からサポートを得ながら手続きを進めることをおすすめします。

相談先を選ぶときは、マッチング先が豊富にあること・適正な会社買収価格が計算できること・交渉をしっかり代行してくれることなどを基準に決めるとM&Aの成功につながりやすいです

M&A総合研究所では、経験豊富なM&Aアドバイザーが交渉から契約まで一括サポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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10. 会社買収の価格・金額まとめ

会社買収の価格・金額まとめ

本記事では、会社買収の価格(金額)の算定方法や相場を解説しました。会社買収のポイントは、以下のとおりです。
 

  • 会社買収の算定方法 = 算定方法により金額が異なるため、一度すべての方法で計算してから適正価格を求める
  • 価格に影響を与える無形価値 = 慎重に評価する必要がある

自社の成長につなげるため、スピーディーに会社買収を行う経営者の方は多いです。

しかし、急ぐがあまり相場とかけ離れた高値で会社買収を行い買収側が大きく損してしまった事例も多く報告されています。このような失敗を防ぐには、M&A仲介会社に相談しながら進めていくことが大切です。

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