2022年08月14日更新
会社買収の手続き・流れ・手順をフローチャートで解説!
M&Aで会社買収を行う企業は年々、増加しています。会社買収を行う際には、買収を行う経営者自身も手続きや流れ、手順について知っておくことが必要です。本記事では、会社買収の手続きや基本的な流れ、手順(フローチャート)を解説します。
1. 会社買収の基本的な手続き・流れ・手順【フローチャート】
まずは、会社買収手続きの基本的な流れ・手順(フローチャート)を紹介します。
準備段階の手続き・流れ・手順
はじめに、買収先を決める前の準備段階の手続き・流れ・手順を紹介します。M&Aの準備段階では、買い手企業と売り手企業とを問わず、M&Aの専門家と相談してM&Aの戦略・方針を定めるのが一般的です。
会社買収・M&Aの専門家に相談する
会社買収の準備は、売り手と買い手を問わず、M&Aの専門家への相談から始めるとよいでしょう。会社買収には多分野にまたがる専門性が必要なので、企業内の人材だけでクロージングまで行えるのは、日常的にM&Aを実施している上場企業に限られます。
M&Aの知見を補い、適切な買収相手を見つけるために、中小企業におけるM&Aでは、専門家のサポートが欠かせません。M&Aの専門家には、多くの事業の中でM&Aサービスも行っている兼業系と、M&Aのみに特化した専業系があります。
兼業系のM&A専門家には、金融機関、会計士、税理士などがいますが、専門分野が別である分、M&A分野の知見が必ずしも高いとは限りません。一方、専業系のM&A専門家には、M&A仲介会社、M&Aアドバイザリーなどがあります。
専業系のM&A専門家は、取り扱うM&A案件数が非常に多く、M&A分野への知見が高いです。実際のところ、専業系のM&A専門家を選んだ方が、自社に合う買収相手を早く見つけられるでしょう。
会社買収に関する委託契約
M&A専門家との相談により、会社買収の戦略が決まったら、この先、会社買収のサポートを依頼するための委託契約をM&A専門家と締結します。M&A仲介会社と結ぶ委託契約は仲介契約、M&Aアドバイザリーと結ぶ契約はアドバイザリー契約です。
ただし、最近は仲介会社でもアドバイザリー契約を行うケースも増えてきました。両者の違いは以下のとおりです。
- 仲介契約:M&A専門家は買収側・売却側の双方と契約し両者の間を取り持って(仲介して)M&Aの成約を目指す
- アドバイザリー契約:M&A専門家は買収側・売却側のいずれかとのみ契約し、顧客が最大限の利益を得られるM&Aの成約を目指す
仲介契約は、成約しやすい反面、条件面での妥協を多く求められるのが特徴です。アドバイザリー契約は、顧客の利益重視のため交渉が長引き、場合によっては破談するケースもあります。どちらのタイプで契約するかは慎重に検討しましょう。
委託契約には、報酬体系、相手との直接交渉禁止、業務範囲、秘密保持などを規定するのが一般的です。
交渉段階の手続き・流れ・手順
ここでは、M&Aの交渉相手を選択し、交渉する流れを紹介します。現在、M&Aは売り手市場といわれていて、会社を売りたい企業に比べて会社を買いたい企業が圧倒的に多い状況です。
1つの売り手企業が複数の買い手企業と交渉することが多く、場合によってはオークション形式の入札が行われます。そのため、現在のM&Aの交渉は、売り手市場を前提にして行われるのが一般的です。
企業概要書からの検討
企業概要書とは、売り手企業が自社の業績や財務状況などをまとめた資料をさします。売り手企業の企業概要書は、契約上、M&A専門家が作成することが多いです。M&A専門家は、売り手企業の財務状況や経営陣からのヒアリングなどに基づき、企業概要書を作成します。
企業概要書には、売り手企業の機密情報が一部公開されているため、この段階では、企業概要書に売り手企業の会社名が記載されないのが一般的です。この状態を、「ノンネーム」と呼びます。
買収先会社の選定
買い手企業は、複数の企業概要書を比較し、自社のニーズに合致する売り手企業を選別します。良い買収企業を見つけたら、M&A専門家を通じて売り手企業へのアプローチです。これに対し、売り手企業は、自社名や詳細な財務情報の開示の可否を判断します。
つまり、売り手企業が承諾してはじめて、売り手企業の会社名を買い手企業に開示するのです。これを「ネームクリア」といいます。買い手企業は、会社名や詳細な財務情報を受取ったうえであらためめて検討し、次のプロセスに進むか否かを判断します。
トップによる会談
双方がM&A取引の検討を進めることに合意すると、秘密保持契約を締結し交渉を開始します。交渉の過程で必ず行われるのが会社の経営トップ同士による会談です。トップ会談では、経営理念、M&Aの至った経緯や目的、今後の方針、経営者の人物像などの確認を行います。
条件交渉
M&A専門家に業務依頼をしている場合、交渉はM&A専門家が代行するので、当事者同士が直接交渉することはありません。条件交渉では、M&A相手の企業価値やM&A相手が希望している譲渡価額を参考に買収価額を提示します。
M&A相手が会社買収の交渉から降りないような条件・価額の提示ができるように、M&A専門家とよく相談しましょう。
会社買収の意向表明書の提示
条件交渉に先立ち、秘密保持契約締結後に開示された売り手企業の開示情報を基にして、買収希望条件を文書にして提示する場合もあります。この文書を意向表明書といいますが、この提示は、M&Aにおいて必須の手続きではありません。
条件面の論点を明確にすることと、買収側が真剣に会社買収を考えていることをアピールするために売り手企業に提示します。
契約段階の手続き・流れ・手順
最後に、交渉が大筋で合意して以降の手続き、流れを紹介します。この段階では、基本合意書締結から統合プロセス(PMI=Post Merger Integration)までの説明です。
会社買収の基本合意書の締結
両社が大筋で条件合意となった場合、基本合意書を締結します。ただし、基本合意書は現時点での合意内容確認書という位置付けで、基本的に法的拘束力はありません。ただし、例外的に法的拘束力を持たせるものとして、買収側は独占交渉権を条項に加えます。
独占交渉権とは、基本合意書に定めた期間(通常は1~2カ月程度)、売り手企業が他の買収候補と交渉するのを禁じることです。
デューデリジェンスの実施
基本合意書締結後、買収側はデューデリジェンス(企業監査)を実施します。デューデリジェンスとは、財務・税務・法務・労務・IT・事業などの各分野について、士業などの専門家を起用して行う売り手企業の調査です。
売り手企業の規模次第で変動しますが、1カ月程度の期間をかけて行います。デューデリジェンスの目的は主に以下の3点です。
- 最終的な買収価額決定のための情報の収集・確認
- 会社買収後、経営にダメージを与えるようなリスクが隠されていないかの調査
- 経営統合計画策定のために必要な売り手企業の各種情報の収集
なお、デューデリジェンスを実施し、売り手が大きな問題を抱えていると判断した場合には、基本合意書に法的拘束力はないので破談にできます。
会社買収の最終条件の交渉
デューデリジェンスの結果を受けて会社買収の最終条件交渉を行い、大きな問題がなければ、基本合意書に記された条件で決まるでしょう。しかし、何らかの問題が発覚した場合には、そのマイナス点を差し引いた金額を提示し、交渉することになります。
また、評価が高まるような内容がデューデリジェンスで出た場合は、買収価額の上乗せもあり得るでしょう。
会社買収の最終契約書の締結
最終交渉で合意できれば、会社買収の最終契約書の締結です。当然ながら、最終契約書は法的拘束力があります。締結内容の変更はできません。また、契約内容の不履行などがあった場合には、相手方に対し損害賠償請求できます。
クロージング
クロージングとは、最終契約書に記載された内容を履行することです。売り手であれば株式や資産などの引き渡し・名義変更手続きなどで、買い手であれば買収対価の支払いなどをさします。
一般的には契約日からクロージングまで一定期間がありますが、契約日までにクロージングに必要な手続きを終えているとき、または契約日後に必要な手続きを正しく終わらせる前提のときは、契約日と同時にクロージングを行うことも可能です。
統合プロセスの実施
会社買収側にとって、M&Aの成約よりも重要な手続きが経営統合プロセス(PMI)です。経営統合が確実・適正に行われないと、想定していたシナジー効果の発現はおぼつかず、業績向上の成果も出せずにM&Aは失敗となります。経営統合プロセスで具体的に行う統合は、以下のとおりです。
- 経理・財務のシステム
- 管理システム
- 業務システム
- ITシステム
- 人事評価制度・給与制度
- 社内規定
- 組織の再編成・人員の再配置
- 企業風土の融和
これらを約3~6カ月程度の時間をかけて統合していきます。場合によっては、それ以上の時間を要する事項もあるでしょう。いずれにしろ、確実・適正に経営統合を実現するには、綿密で確かな経営統合計画の策定が必須です。
そのためには売り手企業の関連情報も必要であり、その情報収集はデューデリジェンスで行います。また、経営統合計画は、クロージング後、即実行するので、計画策定はデューデリジェンスの時期と並行して進めなければ間に合いません。
2. 会社買収とは
ここであらためて、会社買収について確認しましょう。会社買収とは、相手企業の経営権を取得することです。端的には、M&Aスキーム(手法)の株式譲渡が該当します。経営権の取得には、最低でも過半数の株式が必要ですが、より安定した経営を行うためには3分の2以上の株式が必要です。
株式譲渡は、その株式の売買を行うM&A取引になります。また、M&Aスキームの事業譲渡も、広義の会社売買といえるでしょう。事業譲渡では、売り手企業の事業とそれに関連する資産・権利義務などを選別して売買します。
株式が売買の対象ではないので経営権の取得はありませんが、該当事業の運営権・営業権は取得可能です。昨今では、中小企業において後継者不在問題があり、その解決手段としてM&Aによる事業承継が広まってきました。
売り手としては、会社や事業を売却することで、その買い手が後継者(新たな経営者)となり事業承継が実現します。これにより近年は、M&Aの実施件数が上昇傾向にあり、会社買収は盛んに行われているのが現状です。
3. 会社買収の手続きに関する契約・書類
会社買収を行うための手続きとして、契約を行ったり、必要な書類を作成したりする必要があります。ここからは、M&Aの手続きに必要な契約や書類の紹介です。
会社買収の手続きに使われる主な契約
会社買収の手続きに使われる契約には、主に以下の4つがあります。
- 秘密保持契約
- アドバイザリー契約(仲介依頼契約)
- 基本合意契約
- 最終契約
秘密保持契約
会社買収手続きの中で、秘密保持契約を締結する機会は2回あります。まず、正式な依頼をする前段階の相談時に、M&A専門家との間で締結します。M&A専門家にある程度の社内情報を話さないと、会社買収の具体的な相談ができません。
そこで、話した内容の漏えいを防ぐため、相談相手となるM&A専門家と秘密保持契約を締結するのです。次に、会社買収の交渉相手が定まった際にも秘密保持契約を締結します。お互いの社内情報を開示しないと交渉が進められないので、その漏えい防止のための締結です。
アドバイザリー契約(仲介依頼契約)
会社買収などのM&Aを自社単独で行うのは難易度が高いので、M&A専門家に業務依頼するのが一般的です。依頼時にはM&A専門家と契約を締結しますが、その場合、既述のとおり、アドバイザリー契約と仲介依頼契約の2パターンがあります。
基本合意契約
会社買収の交渉相手との間で大筋で条件合意ができた時点で締結します。ただし、独占交渉権以外については法的拘束力を持たないため、厳密には契約とは言えません。
最終契約
デューデリジェンス後の最終交渉で無事に合意となれば、最終契約を締結します。この締結により、M&A・会社買収は正式に成約です。
会社買収の手続きに使われる主な書類
会社買収の手続きに使われる書類は、主に以下の3つです。
- 意向表明書
- 基本合意契約書
- 最終譲渡契約書
意向表明書
意向表明書は、会社買収交渉の初期段階に、会社買収側が売却側に買収の意向を表明する書類です。その時点で開示されている売却側の情報を基に、買収額なども含めたさまざまな買収条件を記します。M&A・会社買収の手続き上、必須のものではありません。
意向表明書を提示するケースとしては、複数の買収候補がいる場合や、今後のスムーズな条件交渉を念頭にした場合などです。
基本合意書
基本合意書は、現時点での合意内容確認書という位置付けです。したがって、独占交渉権以外は法的拘束力を持ちません。M&A・会社買収が成約したわけではなく、基本合意書締結後にM&Aが破談になった例も少なくないので、まだ安心できない状態です。
最終譲渡契約書
最終譲渡契約書には、交渉で決まった全ての事項が記載されます。なお、最終契約とは便宜上の表現です。実際には、用いられるM&Aスキーム(手法)名を冠した以下の例のような契約書名になります。
- 株式譲渡契約書
- 事業譲渡契約書
- 合併契約書
- 会社分割契約書など
4. 会社買収の手続きを成功させるポイント
最後に、会社買収を成功させるポイントについて、以下の5つを紹介します。
- 買収期間をあらかじめ算定
- 必要に応じてロックアップ期間を設ける
- デューデリジェンスを徹底する
- 統合プロセスを実施
- 会社買収・M&Aの専門家に相談する
①買収期間をあらかじめ算定
会社買収成功のポイント1つ目は、買収期間をあらかじめ算定しておくことです。一般的に事業拡大やシナジー効果を期待して会社買収を行います。
近年は、時代の流れが早くなったことで、買収先を探す時間が長過ぎると外部環境が大きく変わり、期待しているほどの事業拡大ができなかったり、シナジー効果を得られなかったりする可能性が否定できません。
この事態を避けるために、会社買収にかける時間をあらかじめ算定しておく必要があるでしょう。万が一、買収期間が想定よりも時間がかかる場合には、継続するかいったん止めるか要検討です。
②必要に応じてロックアップ期間を設ける
会社買収成功のポイント2つ目は、必要に応じてロックアップ期間を設けることです。ロックアップ期間とは、買収先の経営者に引継ぎを行うために会社に行って一定期間残ってもらうことを意味します。経営統合プロセスは、時間がかかるうえに難易度が高い手続きです。
買収先の経営者のリーダーシップを用いて比較的、短時間で統合プロセスが終わるように協力をしてもらいます。なお、ロックアップ期間は買収先の経営者の自由な時間を拘束することになり、モチベーションが下がりやすいと考えられるため、適切なロックアップ期間の設定が重要です。
③デューデリジェンスを徹底する
会社買収成功のポイント3つ目は、デューデリジェンスを徹底することです。会社買収(株式譲渡)は包括承継なので、買収先が抱えている負債やリスクなども引継ぎます。
その負債やリスクなどが大きく、それが原因で自社の経営が大ダメージを受けるような事態を回避するために、デューデリジェンスは徹底的に行わなければなりません。
④統合プロセスを実施
会社買収成功のポイント4つ目は、経営統合プロセスを実施することです。会社買収を行ったが、従業員がばらばらのままでは、期待しているシナジー効果などを得られません。そのため、会社買収後は経営統合プロセスを実施します。
ただし、経営統合プロセスの難易度が高く、時間もかかるため戦略的に行わなければなりません。デューデリジェンスと並行して行う経営統合計画の策定内容が、M&A・会社買収の成否を分けることになります。
⑤会社買収・M&Aの専門家に相談する
会社買収成功の最後のポイントは、会社買収・M&Aの専門家に相談することです。会社買収・M&Aの各プロセスには専門的な知識や経験が不可欠であり、経営の知識だけでは太刀打ちできません。会社買収・M&Aの専門家に相談することで成功確率を上げられるでしょう。
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5. 会社買収の手続き・流れ・手順まとめ
会社買収は重要な経営戦略であり大きな決断です。また、多額の資金も要します。そのような会社買収を成功させるためには、初期段階から会社買収・M&Aの専門家に相談するのが得策です。専門家とともに十分な戦略を練ってこそ、理想的な買収先も見つかるでしょう。
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