2021年09月11日更新
子会社設立のメリットとデメリットとは!ポイントなども紹介
会社の規模が大きくなると、部署や事業の独立のために子会社設立を検討することがあります。節税効果や経営の意思決定の迅速化などのメリットもあるので、企業成長を図るチャンスにもなります。今回は、子会社設立のメリット・デメリットや注意点を解説します。
1. 子会社設立の意味
会社の規模が一定を超えると、さらなる成長を図るために子会社設立が必要になることがあります。
子会社化には節税効果などのメリットがあるので、子会社設立や分社化、M&Aによる取得などさまざまな形で活用されています。
しかし、デメリットも存在しており、親会社の企業価値を損なうリスクもあります。子会社を最大限に有効活用するためには、子会社の内容やメリット・デメリットを把握したうえで取り組むことが求められます。
子会社設立とはどういうことか?
子会社設立とは、会社が資本を出して新しく会社を設立することです。資本を出した会社が新設会社の株主となるので、親子会社の関係となります。
法令上の制限や会計上のルールを含めて親会社と子会社の関係を把握しておくと、子会社のメリットを最大化させやすくなります。
会社の経営権取得には「50%超の議決権のある株式の保有」という条件がありますが、保有率40%でも資金面や経営方針の決定権などで実質的に支配が及んでいる場合、子会社として扱われることがあります。
合併との大きな違い
合併とは、2つ以上の会社を統合して1つの会社にすることです。被合併法人は財産及び権利義務の全てを合併法人に包括承継し、消滅します。
既存の会社が承継する吸収合併と、新設会社が承継する新設合併の2種類があります。それぞれにメリット・デメリットがありますが、どちらを利用した場合も合併後に残る会社は1つです。
合併は、全ての部門・事業を1つの会社にまとめ、シナジー効果の最大化を目的とした方法です。会社の規模が大きくなり、業界シェアを広げる効果も期待できます。
子会社設立は事業を分散させる方法です。各事業の責任や役割を明確化させることで経営の効率化を目的とする場合がほとんどです。
グループ会社との違い
グループ会社とは、グループトップの親会社と資本関係がある一連の会社群のことです。親会社以外の会社は親会社の利益のために営業・事業を行うことになります。
グループは、親会社の子会社がさらに子会社(孫会社)を設立あるいは買収して、徐々に母体が大きくなっています。直接的な資本関係がない会社もでてきますが、いずれの会社も上を辿っていくとグループトップの親会社に行き着きます。
グループ会社という言葉を耳にすることが多いですが、法的にはグループ会社という呼び方はありません。一般的に、関係会社と似た意味で用いられることが多いです。
2. 親会社と子会社の定義
子会社設立では、親子関係を構築してあらゆるメリットを得ることができますが、議決権の所有比率次第で子会社の種類は細かく分類されます。
求めるメリットが得られなくなることもあるので、子会社の種類について把握しておくことが大切です。この章では、親会社・子会社の定義や子会社の種類について解説します。
子会社に対しての親会社とは
親会社とは、複数の会社が支配関係にある時に、ほかの会社を支配している会社をいいます。
支配とする条件は、子会社の議決権のある株式の過半数の所有です。また、議決権40~50%の所有でも、役員等の構成員の過半数を占めているなど、実質的な支配力を持つ場合も該当します。
親会社にとっての子会社とは
子会社とは、複数の会社が支配関係にある時に、ほかの会社に支配されている会社をいいます。親会社の意思が尊重されるので、経営判断を子会社の独断で決められる場面が限られます。
親会社に議決権の過半数を所有されると支配下に置かれ、議決権の所有比率が40~50%でも子会社とされる場合があります。
子会社はいくつかの種類に分けられますが、いずれも親会社からの実質的な支配の影響を受けています。
完全子会社
親会社が議決権のある株式100%を保有している会社のことです。親会社が子会社の全ての資本を出資しているので、経営面において完全支配下にあります。
会社法における大会社(資本金5億円以上あるいは負債総額200億円以上)は、有価証券報告書とともに連結計算書類の作成・提出が義務付けられています。
複数から連なる企業集団の財産および損益状況を示すために必要とされており、法務省令で連結貸借対照表・連結損益計算書・連結株主資本等変動計算書・連結注記表が定められています。
決算以外に関しては、完全な経営権の掌握による経営の意思決定の迅速化というメリットがある反面、株式100%の保有という性質から、上場条件の「少数特定者持株比率」を満たせないデメリットもあります。
連結子会社
親会社が議決権のある株式の過半数を保有している会社のことです。決算の際に財務状況や経営状態から、連結子会社の業績を決算に含めることができます。
財務情報を合算するメリットは、親会社の業績が低迷していても、子会社の業績によってよい数字をだせることです。
経営面に関しては、連結子会社は子会社に経営の独立性を維持させたい時に使われることが多いです。完全に支配下に置くよりも、社風や企業風土を尊重するほうが子会社のメリットを活用できると判断される場合などが考えられます。
非連結子会社
非連結子会社は、子会社であるものの連結子会社ではない会社のことです。支配が限定的な場合や当該企業グループ全体の経営・財務への影響度が低い場合は、連結対象から外すことが可能です。
主なメリットには、赤字経営の子会社を連結決算から除外して、業績向上が図れることなどがあります。ですが、議決権所有比率20~50%の場合は、持分法適用会社とされて持分法が適用されます。
3. 子会社設立のメリットとデメリットとは
子会社設立は、メリット・デメリットを把握したうえで、明確な目的をもって実施することが大切です。この章では、子会社を設立することで得られるメリットと逆にデメリットとなるものを解説します。
子会社設立のメリット
まずは、子会社設立のメリットからみていきます。いずれも子会社設立の目的になるほどの恩恵が大きいものばかりです。
【子会社設立のメリット】
- 節税効果がある
- 経営の意思決定の迅速化
- 事業分散によるリスクヘッジ
- 損益管理がしやすい
- 後継者問題の対策になることがある
1.節税効果がある
子会社設立では、交際費の経費算入限度額の増加や親会社から転籍した社員の退職金などの施策により、節税効果を期待することができます。
資本金1億円未満の会社の場合、交際費の経費上限額は年間800万円までです。800万円を超える場合は経費として認められませんが、子会社を設立すると2社合計で1600万円まで交際費を経費計上できるようになります。
子会社の設立に伴い、親会社から役員・従業員が転籍する場合は、親会社を一度退職して子会社に再就職するという流れになります。対象の役員・従業に対して退職金を支給できるので、経費計上して利益圧縮による節税効果を得られます。
2.経営の意思決定の迅速化
会社の規模が大きくなってくると役員などの経営陣が増えて、経営判断や承認に関わる人が多くなります。意思決定が遅れるほか、多くの人の時間を割くような事態になりかねません。
子会社設立で子会社の経営陣に一定の裁量を譲渡すると、承認に関わる人数がコンパクトになります。子会社内で完結できるような事項に関しては、承認にかかる時間を大幅に短縮することができます。
子会社設立で小さな組織を作るメリットには団結力が増す効果もあり、経営に携わる一部の役員だけでなく、社内の従業員にも責任感が芽生えることもあります。
責任が明確化されると意思決定の円滑化が期待できます。経営判断は速度が求められる場面も少なくないので、子会社設立の大きなメリットといえるでしょう。
3.事業分散によるリスクヘッジ
会社は業務上で何かトラブルがあると、業務停止を命じられることがあります。最長で24ヶ月間、業務の全部あるいは一部の停止を命じるというもので、1つの会社に全ての事業を集中している場合は被る損失が非常に大きくなります。
子会社設立で事業を分散していると、業務停止命令は親会社あるいは子会社の片方のみで済むので、損失を抑えることができます。
親会社の不祥事による社会的な信用失墜の場合、子会社が受ける影響は社名が違うこともあり、ある程度は抑えられます。
過去には、USBメモリの販売・レンタル事業の会社が、不実告知により24ヶ月間の業務停止命令を受けた事例もあります。本件は悪質な内容であったため、関連会社7社にも18ヵ月間の業務停止命令が下されています。
4.損益管理がしやすい
会社の規模が大きくなると部署・事業が増えてきて、それぞれの業績を見極めにくくなる問題があります。
子会社設立すると、親会社と子会社が別々に損益管理を行うことになります。収益・費用・利益の3要素が明確になるので、1社に全ての事業を集中している時よりも各事業の損益を把握しやすくなります。
損益を把握しやすくなると、必要以上に経費がかかっている事業を浮き彫りにしやすくなるなどのメリットがあります。不要なコストを削減して、グループ全体の業績を向上させる効果も期待できます。
5.後継者問題の対策になることがある
相続人が複数いる場合は、どちらかを次期経営者に決める必要があります。相続人間で株式折半をすると、株式分散により経営権を集中できない問題があるためです。
しかし、経営者としての素質を重視して選んだ場合でも、選ばれなかったほうから反発が起こる可能性は高く、相続人間で不和が発生して会社の経営や事業に支障をきたす恐れもあります。
子会社がある場合は、それぞれ親会社と子会社の経営者に就いてもらうことで問題が収まることもあります。支配関係は生じますが、将来的に子会社側が株を買い取ることで独立することも可能です。
子会社設立のデメリット
子会社設立にはたくさんのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。メリット以上に損失を被るものも含まれているので、特に気を付けたいポイントです。
【子会社設立のデメリット】
- 設立の手間がかかる
- ランニングコストの増加
- 損益通算できない
- 税金負担が増す場合もある
- グループ全体の実態把握が難しい
1.設立の手間がかかる
子会社設立では、定款・登記書類の作成をはじめとしたさまざまな手続きが必要です。各種資料の作成に関しては専門家に任せることもできますが、基本事項の決定は自分で行う必要があります。
基本事項には、商号・本店所在地・資本金・株主構成などがあります。ただ子会社を設立するだけでは目的を達成できないので、慎重に検討しなくてはなりません。
法人税の確定申告は、親会社と子会社で別々に行う必要があります。決算時期が重なる場合は申告の資料作成のために時間を取られることが想定されます。
2.ランニングコストの増加
子会社設立すると、親会社と子会社に役割が重複する部門・部署が少なからずでてきます。人件費等は継続的に発生するものなので、費用面の負担は無視することができないデメリットといえるでしょう。
子会社でも弁護士や税理士と顧問契約する場合は、契約費用にも注意が必要です。グループ会社として同じ士業事務所に依頼する場合は一定額の割引を期待できますが、費用が増加する可能性が高くなります。
子会社設立前に増加するランニングコストの試算を行い、節税効果や業務効率化よりも負担が大きいかどうか明確にしておく必要があります。
3.損益通算できない
完全親子関係の場合を除いて、親会社と子会社の損益通算は行えません。損益通算とは、黒字所得から赤字所得を差し引くことをいいます。
黒字と赤字相殺による税金負担の軽減は、節税対策の基本とされていますが、別々の会社になると損益通算ができなくなり、各々の黒字分の法人税を納めなくてはなりません。
損益通算ができないと赤字会社がある一方で、グループ全体では多額の法人税の支出が確定してしまうため、税制面における大きなデメリットといえます。
4.税金負担が増す場合もある
法人税は基本的に利益に対して課せられる税金ですが、黒字赤字に関係なく納める均等割という税目があります。
会社単位で課せられる税金なので、子会社設立で会社の数が増えると均等割の負担も増加します。
子会社設立の節税効果が正しく得られていれば、均等割はさほど気になる負担ではないですが、求めていた節税効果が得られていない場合は、単純に均等割の負担が増加するだけの結果に終わる可能性もあります。
5.グループ全体の実態把握が難しい
子会社設立は会社ごとの売上・利益の把握は容易になりますが、会計基準が異なる会社が増えるとグループ全体の実態把握が難しくなる問題があります。
親会社が完全に管理するのではなく、子会社独自の社風や企業文化を維持する場合は、親会社側で把握しきれなくなるケースもあります。
親会社と子会社の2社だけであれば負担は少ないですが、さらに増えてくると親会社の経営者だけで管理するのは難しくなります。各子会社の代表者と綿密な連携を取りながら管理に努める必要があります。
4. 子会社設立のポイント
子会社設立はメリット以外に注意点も押さえておく必要があります。特に意識しておきたいポイントには以下の2点があります。
【子会社設立のポイント】
- 中小企業の子会社設立は税務調査が厳しい
- 労使間のトラブルがあるケースも
1.中小企業の子会社設立は税務調査が厳しい
子会社設立のメリットに節税効果がありますが、不当な節税対策は税務署から否認される可能性があります。
過去には、過度な利益調整を行った中小企業が税務署からの指摘を受けています。親会社の利益を相殺するために強引に子会社から仕入れて支出を増やしたり、逆に子会社の利益がでそうな時は親会社から子会社へ売りつけたりなどは、指摘を受ける可能性があります。
これらの調整が認められてしまうと不当な節税対策が横行してしまうため、税務署は中小企業のグループ全体の出資関係を把握しています。申告の際は親子間の取引内容まで厳しい税務調査が行われます。
海外に子会社設立する際は、どこまでの費用を親会社の負担にするかどうかも焦点になります。近年は中小企業が海外進出する事例も増えてきているので、税務署からの税務調査も厳しいものとなっています。
海外子会社の資金不足を理由に日本親会社が経費を負担する場合は、親会社から子会社への寄附金と判断されて損金不算入となる場合があります。
2.労使間のトラブルがあるケースも
子会社設立の際、親会社の従業員を子会社に転籍させる場合がありますが、場合によっては労使間のトラブルに発展することもあります。
転籍する従業員は一度親会社から退職する形になるので、勤続年数が途切れるデメリットがあります。定年退職で受け取れる退職金額に影響がでるので、トラブルになることが多いです。
また、転籍ではなく出向という形を取ることもあります。出向の場合、親会社との労働契約を継続したまま子会社の指示で働きますが、出向者が子会社でトラブルを起こした際は子会社側は処分を下すことができません。
こうしたトラブルは出向を口約束で済ませているときに起こりがちです。役員や従業員の出向が伴う場合は会社と本人の間で契約書を取り交わしておくことが大切です。
労使間のトラブルが発生すると、子会社の事業に支障がでる恐れもあります。子会社設立のメリットを活かすためにも、従業員の転籍・出向手続きは対象者からの承諾を得たうえで進めておくことが大切です。
5. 子会社設立におすすめの相談先
子会社設立は注意点やデメリットがあるので、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。M&Aの専門家なので、子会社の節税効果や従業員の転籍に関して専門的な知見を有しています。
M&A総合研究所は、M&A仲介を主たる業務とするM&A仲介会社です。M&A・子会社設立に精通したアドバイザーによるサポートで、リスクへの対応を行いながら子会社設立のメリットの最大化を図ります。
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6. まとめ
子会社設立には、節税効果などのメリットがある一方、いくつかのデメリットもあります。経営に大きな影響を与えるデメリットもあるので、事前に把握しておくことが大切です。
また、子会社設立は手間がかかるので、専門家に依頼することをおすすめします。専門家のサポートを受けると手続きを円滑に進められ、日常の業務や子会社設立後の事業に集中することができます。
【子会社設立のメリット】
- 節税効果がある
- 経営の意思決定の迅速化
- 事業分散によるリスクヘッジ
- 損益管理がしやすい
- 後継者問題の対策になることがある
【子会社設立のデメリット】
- 設立の手間がかかる
- ランニングコストの増加
- 損益通算できない
- 税金負担が増す場合もある
- グループ全体の実態把握が難しい
【子会社設立のポイント】
- 中小企業の子会社設立は税務調査が厳しい
- 労使間のトラブルがあるケースも
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