2023年08月27日更新
日本国内でのM&Aの現状 課題と対策や今後の展開は?業界の推移も解説
日本国内のM&Aの現状をみると、成約件数が高く推移しているのがわかります。これは、国内市場の縮小による海外進出を目指すM&A、経営者の高齢化・少子化による後継者問題解決のためのM&Aが増加によるものです。今回は、日本国内のM&Aの現状や課題と対策を解説します。
1. 日本国内でのM&Aの現状
M&Aとは、企業の合併や買収を意味する言葉です。少し前までの日本においては馴染みの薄い言葉でしたが、最近は経営戦略の一環としてM&Aを実施する企業が増えており、M&Aという言葉を見聞きする機会も増えています。
現状、日本国内M&Aは活性化しており、M&A成約件数の増加という形で如実に表れています。この章では、日本国内のM&Aの現状や活性化している理由を解説します。
国内市場の縮小により海外M&Aが増加
日本の現状は、国内市場の縮小により海外進出を目指す企業が急増しています。少子高齢化やデフレの長期化により、あらゆる業種において国内市場が縮小しているため、将来性を見込んで海外に拠点を設ける動きがみられます。
海外進出には、新たな市場を獲得する以外に費用の固定化や、許認可を再取得する必要がないなどのメリットもあります。
海外の新規事業の立ち上げと比較するとM&Aは大幅な時間短縮に繋がるので、経営戦略の一環として活用されています。
従来の海外M&Aは、一部上場でも限られた大手企業が行うというものでしたが、近年は中小企業による海外M&A事例もみられます。
企業規模にかかわらず、あらゆる業種の企業が、日本にはない市場や技術を求めて海外M&Aを実施しているのが現状です。
経営者の高齢化・少子化による影響
経営者の高齢化や国内少子化の影響で、後継者問題が深刻化しているという現状もあります。特に中小企業で深刻化しており、後継者不在のままでは最終的に廃業の選択肢しかなくなるため、解決策としてM&Aによる事業承継を活用する事例が増えています。
後継者不在の企業がM&Aした場合、後継者問題の解決や従業員の雇用先の確保などのメリットがあります。現状の経営者の個人保証・担保を引き継ぐことも可能なので、リスクを抑えつつ会社を存続させる可能性が高いでしょう。
また、M&Aによる事業承継の場合、企業価値に応じた売却益の獲得も目指せます。経営者(株主)の個人的な資金になるので、新規事業の立ち上げ資金やリタイア後の生活資金に充て、現状の生活を大きく変える可能性も高まります。
2. M&Aの現状から見えてくる課題と対策
M&Aの現状が全体的に増加傾向となっているのは、企業がさまざまな課題を抱えており、その対策としてM&Aを実施しているためです。この章では、M&Aの現状を踏まえて、課題と対策を解説します。
後継者問題を解決に事業承継
日本企業の現状をみると、後継者問題により事業承継を進められずにいる企業が多くなっています。親族や社内に後継者候補がいない企業にとって、外部から後継者を探せるM&Aが適切な対策として注目されるようになってきています。
M&Aによる事業承継のメリットは、後継者育成の必要がないことです。既に経営のノウハウを持った第三者に経営を引き継ぐので、経営者としての能力や心構えを醸成する期間を設ける必要はありません。
また、M&Aは比較的短期間でも実施できるため、後継者不在で既に廃業危機に瀕しているという企業でも活用できる対策です。
M&Aによる事業拡大により事業の将来不安を解消
買収側は、M&Aにより新たな経営資源を獲得して既存事業の安定化を図ることができるでしょう。豊富な資金を投資して資源を獲得し、現状に不安がある事業に効率的に振り分けていくことで、将来性のある事業に成長させる可能性も高まります。
また、M&Aで新規事業に参入することで、事業の多角化を図るという活用方法もあります。新たに事業を起こすと多大なコストが必要になるため、M&Aで既存事業を買収して効率的に事業拡大を目指すやり方です。
売却側は、買収側の傘下に入ることで、グループの豊富な経営資源を活用して事業拡大が目指せます。顧客・取引先や人材・技術などを共有することができるので、現状で不足している要素を補うことができるでしょう。
人手不足・労働人口の減少対策にM&Aを活用
日本国内の現状として、人手不足・労働人口の減少も深刻です。今後はさらに高齢化社会になることが予測されているため、企業にとって若い働き手の確保が重要課題とされています。
M&Aでは、会社の経営権と一緒に従業員の雇用を引き継ぐことができます。該当事業に関する技術・ノウハウを有する人材を一気に確保できるので、人手不足の現状ではM&Aが有効な解決策として活用されています。
設備の老朽化対策に自社の現状を把握してM&Aを実行
企業は事業を行うための設備投資が必要です。特に製造業では設備の管理状態が企業全体の業績に直結するので、定期的な設備のチェック・メンテナンスが不可欠です。
しかし、赤字経営の場合は設備投資に資金を回す余裕がなくなる傾向が強いため、経年劣化が進んでしまい、生産性の低下による業績低迷という悪循環に陥るというケースも珍しくありません。
M&Aで売却する際、設備の老朽化はマイナス評価に繋がることが多いです。普段からメンテナンスをして設備保全を徹底しておくと、M&Aの買い手探しも行いやすくなります。
3. 日本国内のM&Aの今後の展開
日本国内の現状として、M&A件数が増加傾向にあります。件数増加の背景にあるのは、中小企業の後継者問題や人手不足であり、企業独自の施策で解消は難しいため、対策としてM&Aが活用されています。
人口減少による国内市場の縮小も懸念されているので、より大きな市場を獲得するために海外展開を図る企業も増加しています。今後の発展が期待できる国へ進出を目指すM&Aが増えているという現状です。
そのほか、M&Aをイグジットに定めるベンチャー・スタートアップも増えています。少数精鋭で短期間の成長を図り、M&Aで高額売却して投資資本の回収を目指すというもので、現状では特にIT分野に多くみられます。
前述のように現状の日本国内において、M&Aは経営戦略として様々な形で活用されています。時代の変化に合わせて企業に求められるモノを補うための対策として、今後もM&Aは活性化すると考えられます。
4. M&Aを検討する際の相談場所
近年のM&A需要増加に伴い、M&A業界も急激に発展しています。新しくM&A仲介業を開始する機関・企業も増えてきており、相談先の選択肢も広がりつつあります。
相談先によってM&A仲介サポートに特徴があるので、自社に合う専門家に相談することが大切です。現状、M&Aの相談先の候補となるのは以下の4つです。
【M&Aを検討する際の相談場所】
- M&A仲介会社
- 金融機関
- 関わりのある士業
- 公的機関
M&A仲介会社
M&A仲介会社とは、M&A・事業承継の仲介サポートに特化したM&Aの専門家です。M&Aに求められる幅広い分野の知識を網羅しており、相談から成約までの工程を一貫サポートしている特徴があります。
相談先をM&A仲介会社から選ぶ際は、得意とする業種・規模に注目するとよいでしょう。サイトで公開されている実績などを参考にすると、自社に合ったM&A仲介会社であるか見極めやすくなります。
料金体系に関しては、現状のM&A業界は発展途上であるため決まったものは存在しません。仲介会社によって採用している料金体系が異なるので、M&Aを相談する際は合わせて確認が必要です。
金融機関
銀行や証券会社などの金融機関でも、M&A関連業務を手掛けています。金融取引に関する専門家としての高い知見や、金融機関という信頼性の高さも相まり、M&Aの相談先として挙げられることも多いです。
金融機関の強みは、独自のネットワークを活かしたM&A先の選定です。まず金融機関に相談する企業も多いため、多数の案件が集中する傾向が強く条件の合う相手をみつけやすくなっています。
金融機関が主に取り扱う案件は、大手上場企業のような大型案件です。積極的に営業しなくとも大型案件が集中するため、実入りが少ない中小規模の案件はサポート範囲外にしているケースも珍しくありません。
関わりのある士業
M&A業務に関わりのある士業への相談することもできます。法務・会計・財務・税務など、あらゆる分野の知識はM&Aでも役立ちます。
弁護士は、契約書の作成・確認や法務デューデリジェンス(法務リスクの調査)などを行います。法務リスクの対策を怠ると後からトラブルが発展することもあるため、ほかの専門家に相談した場合も弁護士が関わることが一般的です。
会計士は、企業価値評価や財務デューデリジェンスなどを行います。税務関連の業務も担えることが多いので、M&Aに必要な多くの工程を担当することができます。
公的機関
M&A関連の支援が受けられる公的機関には、事業承継ネットワークや事業引継ぎ支援センターがあります。
国や各地域の自治体との連携によって設立されており、中小企業の事業承継支援を活動目的としています。
公的機関ということもあり、機密性が極めて高く情報漏洩リスクはほとんどありません。無料相談を受け付けているので、事業承継の流れについて知りたい時などに気軽に利用することができます。
しかし、現状は基本的に相談止まりとなっています。そのため、M&A仲介の直接的なサポートに関しては、専門家の紹介を受ける流れになることが多いです。その際は、専門家が採用する料金体系に基づいた手数料が発生します。
M&Aのご相談はM&A総合研究所へ
M&A総合研究所は、M&A・事業承継の仲介サポートを行うM&A仲介会社です。中堅・中小規模の案件を得意としており、中小企業の事業譲渡の仲介実績を豊富に有しています。
M&A経験豊富なM&Aアドバイザーが、相談から成約までの一貫サポートを行います。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)
M&Aや事業承継を検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。無料相談はお電話・Webよりお受けしてしており、M&A・事業承継に明るいスタッフが親身になって対応させていただきます。
5. 近年行われたM&Aの事例
M&Aの現状は件数が増加傾向にあり、多数の企業がM&Aによる事業拡大を果たしてます。この章では、近年行われたM&Aの事例をピックアップして紹介します。
【近年行われたM&Aの事例】
- ニトリによる島忠へのTOB成立
- セブン&アイによる米コンビニ買収
- 三菱商事と中部電力によるオランダエネルギー企業の買収
- 大王製紙と丸紅によるブラジル衛生用品メーカー買収
1.ニトリによる島忠へのTOB成立
2020年12月、ニトリは島忠へのTOBが成立したことを公表しました。TOBで77.04%の株式(買収費用約2142億円)を買い付け、今後は残った株式を買い集めて最終的に完全子会社化する予定としています。
島忠は、家具を中心に扱う中堅ホームセンターです。製造・物流・販売のワンストップ体制を構築しており、中堅ながら業界で大きな存在感を示しています。
本件のきっかけは、ホームセンター大手のDCMが島忠へのTOBを開始したことです。当初は島忠もDCMのTOBに賛同していましたが、ニトリの買収表明によりDCMへの賛同を取り下げてニトリのTOBに応じる形となりました。
2.セブン&アイによる米コンビニ買収
2020年8月、セブン&アイ・ホールディングスはスピードウェイ(米国・オハイオ州)を買収することを公表しました。セブン&アイが買収に投じる費用は、210億ドル(約2兆2200億円)です。
スピードウェイは、ガソリンスタンド併設のコンビニエンスストア事業です。全米で約3,900店舗を展開しており業界3位の実績を保有しています。
セブン&アイは既に米国に9,000店舗を展開していますが、日本国内市場の飽和が進むなか、今後の成長が期待できる米国でのコンビニ事業を強化するとしています。
3.三菱商事と中部電力によるオランダエネルギー企業の買収
2020年3月、三菱商事と中部電力は共同設立のDiamond Chubu Europe B.V.を通じてEneco(オランダ)の全株式を取得したことを公表しました。約41億ユーロ(約5000億円)を投じています。
Enecoは、欧州で総合エネルギー事業を展開している会社です。発電、電力・ガス小売などの他、再生可能エネルギー開発にも注力しており、先進的な総合エネルギー事業会社として高い評価を受けています。
三菱商事は、Enecoの再エネの技術・ノウハウを活用することで欧州内外における再エネ開発を促進させてグループ全体の企業価値の向上を図ります。
中部電力は、Enecoへ参画して各々が培ってきた知見を共有し、国内外のエネルギー事業における新たなビジネスモデルを創出するとしています。
4.大王製紙と丸紅によるブラジル衛生用品メーカー買収
2020年2月、大王製紙と丸紅は共同でSanther(ブラジル)の全ての発行済み株式を取得することを公表しました。取得比率は大王製紙51%、丸紅49%となっており、約23億レアル(約584億円)を投じています。
Santherは、衛生用紙やベビー用おむつなどの個人向け商品の製造・販売を手掛けるブラジルの衛生用品メーカーです。1938年の設立から順調に事業拡大しており、「Personal(ペルソナル)」のブランドでも有名です。
大王製紙は、衛生用品の需要増が期待されているブラジル市場のシェア獲得を目的としています。大王製紙の強みである、大人用おむつや病院・クリニック向けの製品を展開する予定です。
丸紅は、ブラジルを足掛かりの拠点として南米全域とアフリカでの事業規模の拡大を目的としています。
6. まとめ
本記事では、日本国内のM&Aの現状についてみてきました。特に中小企業の事業承継問題が深刻化しており、現状のままでいくと2025年までに大量のGDPと雇用が喪失されることが懸念されています。
M&Aであれば会社の存続と従業員の雇用を守れるので、後継者問題に悩まれている場合はM&Aの検討をおすすめします。その際はM&A仲介会社などの専門家に相談すると計画を立てやすくなります。
【日本国内のM&Aの現状まとめ】
- M&Aの現状は成約件数が増加傾向にある
- 海外M&Aや中小企業の事業承継型M&Aが多い
【M&Aを検討する際の相談場所】
- M&A仲介会社
- 金融機関
- 関わりのある士業
- 公的機関
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