2025年07月11日更新
M&Aにおける株式譲渡とは?手続き・メリット・税金を網羅解説|事業譲渡との違いも
M&Aの代表的な手法である株式譲渡は、事業承継で広く活用されています。しかし、手続きや税金が複雑で悩む方も多いでしょう。本記事では、M&Aにおける株式譲渡のメリット・デメリット、具体的な手続きの流れ、事業譲渡との違いをわかりやすく解説します。
目次
1. M&Aにおける株式譲渡とは?事業承継での基本的な意味
事業承継における株式譲渡とは、会社のオーナーが保有する株式を売却し、買い手側に譲渡することをいいます。これにより会社の経営権は承継され、事業そのものを買い手に手渡すものです。
株式譲渡は株式譲渡契約書を締結し、株式の対価を受け取り、株主名簿の書き換えを行うだけで取引は完了します。他のM&Aスキーム(手法)と比べると条件交渉なども簡単で、一番よく使われる手法です。
株式とは?
一般的には「株」と呼ばれるものは、正式には「株式」です。株式会社は資本金を確保するために、出資者に対して株式を発行します。株式の所有者=株主です。過半数の株式の所有者は、会社の経営権を持つことになります。
会社法において株式会社は、各株主をその保有する株式内容と数に応じて、平等に取り扱う「株主平等の原則」が定められており、この原則は株式譲渡・株式移転にも念頭に置かなければなりません。
自社株とは?
自社株とは、会社が自身で発行した株式を所有することやその株式そのもののことです。商法では、会社を支配する手段として利用する場合や、公正ではない取引が生じる恐れがあるため、会社が自社株を売買することを禁じていました。
しかし、1994(平成6)年の商法改正により、一定の条件の範囲内であれば自社株買いや保有が認められるようになりました。自社株の消却を行うためのお金は、法改正により資本準備金や土地再評価益の一部にまで広げられています。
自社株を株主が売却する意欲を高めM&Aを活性化する目的で、2020(令和2)年度末までの時限措置として「株式譲渡損益」への課税繰延措置が規定されました。
株主の権利
株式を所有する株主が、当該会社に対して行使できる権利には以下のようなものがあります。
- 株主総会に出席し会社の経営に参画
- 配当金を受ける
- 会社の解散時、残余財産の分配を得る
株主総会に出席して以下のような決定に議決権を行使することで、会社の経営に参画したことになります。
- 取締役などの選任
- 決算の承認
- 事業計画の承認
- 利益の分配
多額を出資し持株数が多い株主ほど議決権も多く持つことになり、それだけ会社の経営に影響力が大きくなります。
有限会社の株式譲渡
特例有限会社の株式譲渡は、株式会社の株式譲渡と同じく株主総会の普通決議で行えます。ただし、定款の変更手続きは、株式会社より厳しくなっており、株式譲渡承認者を変更する場合には、定款の記載内容によって変更登記の手続きが必要になることが注意点です。
この特例有限会社は定款に持分の譲渡に関する規定がなくても、「株式を譲受する場合には会社の承認が必要」「株主間の株式譲渡は会社が承認したものとする」という2つの定款規定が存在しますので、特例有限会社は全て譲渡制限株式会社となります。
株式譲渡の方法
株式譲渡はM&Aにおいて、最も一般的な手法です。事業承継での株式譲渡の方法として、以下の3種類があります。
- 売買
- 贈与
- 相続
それぞれにメリットやデメリットがあり、最も良い方法で株式譲渡を行うことで成功する事業承継となります。
売買
株式譲渡で売買による取引は、株主の保有株式を対価と引き換えに取得します。M&Aでの事業承継、従業員を後継者とする事業承継の際に用いられる方法です。税金は対価を得た株主に所得税が課されますが、金額や株式数に関係なく一定の税率となります。
贈与
親族を後継者とする事業承継の場合、現経営者が存命のうちに株式を無償で譲渡するのが贈与(生前贈与)です。従業員が後継者で、株式を買い取る資金力がない場合に、贈与で株式を取得する可能性はあります。しかし、実施例は多くないでしょう。
贈与の場合の税金は、贈与を受けた後継者側に贈与税が課されます。株式の時価評価次第では多額の税金になる可能性があり、一般の上場株式のように売却処分して税金用資金にはできませんから、後継者は事前の税金対策が必要です。
相続
親族(相続人)が後継者である事業承継の場合に、現経営者が亡くなって株式を相続により取得します。相続人が複数いる場合、株式が分散してしまい安定した経営ができないリスクがあるため、後継者に全株式が渡るように遺言書などでの対応が欠かせません。
相続の場合の税金は、後継者に相続税が課されます。贈与税と同様に多額の税金となる可能性があり、事前の税金対策が必要です。
事業承継の手法
事業承継は、後継者の立場の違いにより以下の3種類に分けられます。
- 親族内事業承継
- 従業員承継
- M&Aによる事業承継
親族内事業承継
現経営者の親族が後継者となる事業承継が、親族内事業承継になります。特に経営者の子どもが後継者となるのが代表的です。日本の中小企業では広く行われてきましたが、近年は、少子化と価値観の多様化を原因に、親の後を継ぐ子どもが減っています。
後継者の教育に時間をかけられることや、事業承継時期を柔軟に決められる点がメリットです。ただし、経営者の親族に経営者の適性があるとは限らないため、人選には慎重さが求められます。
従業員承継
社内の役員・従業員が後継者となる事業承継が、従業員承継です。社内承継とも呼ばれます。経営方針や事業をよく知っている人物のなかから、経営の適性も見極めて選べることがメリットです。
ただし、後継者は親族ではないため、株式の買取り資金が必要です。多額の資金が用意できない場合、後継者を断るケースもあります。仮に現経営者から無償譲渡(贈与)を受けたとしても、多額の贈与税が課される可能性もあり、資金面の負担は変わりません。
M&Aによる事業承継
M&A(株式譲渡)で会社を売却し、その買い手が後継者(新たな経営者)となるのが、M&Aによる事業承継です。親族や社内に後継者候補がいないまま経営者が引退時期を迎えれば、会社は廃業するしかありません。会社が廃業となれば、従業員は解雇され取引先は契約を失います。
後継者不在でもM&Aが実現すれば会社は存続し、従業員が職を失うことも取引先が契約を失うこともありません。株式を売却した経営者は売却益も得られます。ただし、必ずしも売却先が見つかるとは限らず、想定どおりの金額で売れるとも限りません。
2. M&Aで株式譲渡を進める際の手続きと流れ
オーナー経営者であったとしても、事業承継のために自社株を譲渡するにあたっては、会社法に定められている手続きを踏まなければなりません。ここでは、株式譲渡を実施する場合の手続き方法や流れなどを説明します。
手続き方法
事業承継で株式譲渡を行う際は、会社の定款に定められた手続きに従う必要があります。多くの中小企業は株式に譲渡制限を設けているため、会社からの承認が必須です。
具体的には、株式を譲渡したい株主が会社に対して「株式譲渡承認請求」を行います。取締役会設置会社であれば取締役会、非設置会社であれば株主総会で承認決議を得るのが一般的です。
承認後、当事者間で株式譲渡契約を締結し、株主名簿を書き換えることで手続きが完了します。
手続きの流れ
株式譲渡にて事業承継をするときの手続きの基本的な流れは、以下のようになります。
- 株式譲渡の承認請求
- 株式譲渡承認機関の承認
- 株式譲渡契約書の締結
- 株主名簿の書き換え
株式譲渡の承認請求
株式の譲渡を希望する株主(経営者)が、会社に対してその株数と譲受する相手の氏名や名称を提示し、その譲受者に株式譲渡することの承認を、書面(株式譲渡承認請求書)で請求します。
株式譲渡承認機関の承認
取締役会設置会社であれば取締役会を開催し、株式譲渡承認の可否を決定します。取締役会非設置会社であれば、臨時株主総会の招集を通知・開催し、株式譲渡承認の可否を決議しますが、いずれも決定内容を、請求を受けた日から2週間以内に請求者に通知しなければなりません。
2週間以内に通知しなかった場合は、承認したとみなされます。
株式譲渡契約書の締結
会社からの株式譲渡承認を受けて、当事者間(経営者と後継者)による株式譲渡契約書を締結します。贈与の場合は、無償で譲渡する内容の契約書です。
株主名簿の書き換え
株式譲渡契約書を締結した株式の譲渡者と譲受者(経営者と後継者)は、連名で株主名簿の書き換え請求書を会社に提出します。会社側で株主名簿を書き換えない限り、株式の所有者が代わったことにならないからです。
会社が正しく株主名簿の書き換えを行ったかどうか確認するため、株主名簿記載事項の交付請求書も提出し、株主名簿記載事項証明書を受け取ります。
必要書類
取締役会を設置していない会社で株式譲渡を行う場合、譲渡承認機関が株主総会となるのですが、そのときの譲渡制限株式の譲渡手続きに必要となる書類は以下のとおりです。
- 株式譲渡承認の請求書
- 株主総会招集のための取締役の決定書
- 臨時株主総会の招集通知書
- 臨時株主総会の議事録
- 株式譲渡承認の通知書
- 株式譲渡契約書
- 株主名簿
- 株主名簿の書き換え請求書
- 株主名簿記載事項証明書の交付請求書
- 株主名簿記載事項証明書
株主名簿の書き換えは、現在ほとんどの中小企業が株券を発券しておらず、株券を発券する代わりに会社の株主名簿に記載されることになります。株式譲渡にて事業承継されたとしても、株主名簿の名義を書き換えなければ株主としての地位が確立されません。
株券不発行会社では株主であるか否かは株主名簿に記載されることが条件であり、それを判断するため株式譲渡により事業承継が完了したら、株主名簿の名義書き換えの手続きを行う必要があります。
株式譲渡で失敗しないための重要注意点
株式譲渡を行う際には、特に以下の3点に注意が必要です。
- 手続きの形式化・省略:特に同族会社や親族間の譲渡では、株主総会などを開催せず書類作成のみで済ませがちです。後々のトラブルを避けるため、法的に有効な手続きを正確に踏むことが重要です。
- 手続きの正確性:株式譲渡は法務局への登記申請が不要なため、専門家のチェックが入らず、手続きに不備が生じやすくなります。契約内容や承認決議などにミスがないか、慎重に確認する必要があります。
- 損益通算の制限:非上場株式の譲渡で生じた損失は、給与所得など他の所得との損益通算ができません。また、上場株式の譲渡損益とも通算できない点に注意が必要です。
以下で、さらに注意したい点を個別に説明します。
適正価格の確認
まず、「適正価格の確認」ですが、事業承継などで株式を売却する場合は、時価で行われることが多く、非公開企業の場合は時価の決め方が難しいことがあります。
家族や親族以外の役員や従業員に事業承継を行う場合、株式を買い取るだけの資金がない場合が多く、当事者間の都合や条件により譲渡価額が上がったり下がったりするので注意が必要です。
経営承継円滑化法
経営承継円滑化法とは、正式には「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」といい、中小企業の事業承継や経営承継などを総合的に支援するための法律です。
この法律には、遺留分に関する民法の特例や事業承継資金などを確保するための金融面での支援、事業承継に伴う税負担の軽減(事業承継税制)とその前提となる認定手続きなどが含まれています。
経営承継円滑化法を活用すると、低利率で融資を受けられたり、後継者が贈与税・相続税の猶予・免除を受けられたりなどのメリットがあるので、身近の専門家に相談するとよいでしょう。
譲渡制限の確認
株式譲渡にあたり、株式の譲渡制限を確認するときは、定款や法人登記簿を確認する必要があります。会社の基本情報は、会社の定款を見れば書いてありますので、定款を確認するのが最も早いでしょう。
万が一、紛失などの理由によって確認ができない場合には、法人登記簿を取得すれば代替的に内容を確認できます。
タイミング
事業承継は、会社の将来を決める大事なプロセスです。条件やタイミングを見計らって行わないと後継者が非常にリスクを背負うことになります。あまり深く考えずに事業承継・株式譲渡をしてしまうと、その後の経営に負荷がかかる可能性もあるので、注意が必要です。
深く考え過ぎて事業承継のタイミングを逃してしまう可能性もあるため、売買条件が多少悪くても、無償であってもタイミングがいいときには、手早く対応できるように準備しておくことも大切になります。
株式譲渡と事業譲渡の決定的な違い
株式譲渡は、株式の売却により買い手は経営権を取得します。つまり、会社を丸ごと包括承継するものです。事業譲渡は、売り手の会社組織はそのままにして、売り手の行う事業の一部または全部を売買します。事業譲渡は、事業に関連する資産や権利義務などを選別できる個別承継です。
株式譲渡と事業譲渡では主に以下の点が異なります。
- 株式譲渡では許認可を引き継げるが事業譲渡では引き継げない
- 譲渡対象に消費税課税資産が含まれている場合、事業譲渡では消費税が発生する
- 株式譲渡では簿外債務などの経営リスク承継を防げないが事業譲渡は譲渡対象を選別できる
なお、個人事業主が事業承継する場合、法人格を持っていないので株式譲渡はできません。したがって、個人事業の事業承継手段は事業譲渡のみとなります。
3. M&Aの手法として株式譲渡を選ぶメリット
ここでは、事業承継を株式譲渡で行うメリットを6つ解説します。
- 現金獲得
- 社員への影響が少ない
- 手続きが簡易的
- 売買のメリット
- 贈与のメリット
- 相続のメリット
①現金獲得
M&Aによる事業承継のメリットで、現金の獲得は非常に重要なものです。株式譲渡を売買によって行う場合、株式の対価として現金を受け取れます。経営者の高齢化などが原因で事業承継をする場合は、株式譲渡をすることで老後の資金の調達ができるでしょう。
対価として受け取った資金で、新たな事業にチャレンジもできます。
②社員への影響が少ない
M&Aによる株式譲渡で事業承継を行う場合、株主ではなくなるものの経営者がそのまま留任する条件とすれば、経営や営業スタイルを変えずに事業継続も可能です。
株式譲渡の際に条件として、従業員の雇用をしっかりと交渉しておけば社員への影響は少なくなり、事業承継後のトラブルも抑えられます。
③手続きが簡易的
事業承継での株式譲渡は、他のM&Aの手法よりも手続きが簡易ですみます。一般に、株式の売買契約書の作成と株式対価の払込などにより株式譲渡の手続きは終了しますので、非常に簡単です。
④売買のメリット
株式譲渡の売買によるメリットは、売り手側は資金が調達できることや、廃業コストがかからないことがメリットといえるでしょう。
⑤贈与のメリット
事業承継を贈与で行う場合のメリットは、自社株の評価額が低くなっているときを見計らって、事業承継を進められることです。
⑥相続のメリット
家族などへの相続による株式譲渡のメリットとしては、経営者の廃業コストを抑えられるところです。その家族は無償で事業を承継することで、事業を起こす費用を抑えられます。
4. 株式譲渡でM&Aを行う際のデメリットと注意点
ここでは、事業承継を株式譲渡で行うデメリット5点を解説します。
- 債務が引き継がれる
- デューデリジェンスの手間がかかる
- 売買のデメリット
- 贈与のデメリット
- 相続のデメリット
①簿外債務なども含めて包括的に承継する
株式譲渡は会社を丸ごと引き継ぐ手法のため、買い手は資産だけでなく、負債や契約関係もすべて承継します。特に、貸借対照表に記載されていない「簿外債務」(例:未払残業代、将来の訴訟リスクなど)や「偶発債務」も引き継いでしまうリスクがあり、事前のデューデリジェンスが極めて重要です。
②デューデリジェンスの手間がかかる
売買による株式譲渡の場合には、売却側の企業に対して、デューデリジェンス(買収監査)を行う必要があります。デューデリジェンスの費用は買収側が負担するものですが、その金額は多額です。
デューデリジェンスは、偶発債務などの簿外債務に関する有無の確認や、買収額決定のための企業価値評価など重要なことですが、それなりの時間やコストがかかることからデメリットであるともいえます。
③売買のデメリット
株式譲渡を売買により行う事業承継では、その後の株式の値上がりなど気にせずに遺留分を計算するだけなので、相続や生前贈与などの事業承継よりも後継者が安定します。しかし、その分、売買にかかる資金調達をしなければなりません。
買収側は、その資金を融資などで調達する場合、その債務や株式譲渡後の株式の価格が低下するとマイナスを負うデメリットがあります。
④贈与のデメリット
株式譲渡を、家族や親族に贈与または親族以外の人に贈与するときのデメリットは、基礎控除額を超えてしまうと贈与税が課されることです。
贈与に関しては2つの課税方法があり、年間110万円までを非課税とする暦年課税と、相続が発生したときに贈与財産と相続財産を合わせて再計算する相続時精算課税のどちらかになります。一度、相続時精算課税にしてしまうと暦年課税に戻せないので、選択は注意しなければなりません。
⑤相続のデメリット
相続による株式譲渡は、家族などに贈与するときと同じで、後継者に相続税が課されます。相続人が複数いる場合には、相続争いが起きやすいのがデメリットでもあります。
5. M&Aの成功を左右する!株式譲渡における企業価値評価
M&Aによる株式譲渡を成功させるには、会社の価値を客観的に評価する「企業価値評価(バリュエーション)」が不可欠です。
なぜ企業価値評価(バリュエーション)が必要なのか
企業価値評価は、売り手と買い手が株式の譲渡価格を交渉する際の客観的な基準となります。売り手にとっては適正な売却価格を知るため、買い手にとっては投資額の妥当性を判断するために重要です。これにより、双方が納得感を持って交渉を進め、公正なM&Aを実現できます。
主な企業価値評価の3つのアプローチ
企業価値評価には、主に以下の3つのアプローチが存在します。
- コストアプローチ:会社の純資産に着目する方法です。貸借対照表の純資産を基準に評価するため客観性が高いですが、会社の将来の収益性を反映しにくい側面があります。
- マーケットアプローチ:類似する上場企業や、類似するM&A事例の株価や財務指標を参考に評価する方法です。市場の動向を反映できますが、比較対象となる適切な企業や事例を見つけるのが難しい場合があります。
- インカムアプローチ:会社が将来生み出すと期待される収益やキャッシュフローを基に評価する方法です。会社の将来性を最も反映できる手法ですが、事業計画の精度に評価額が大きく左右されます。
非上場株式の株価算定方法
市場価格のない非上場株式の価値を算定する際は、これらのアプローチを複数組み合わせるのが一般的です。例えば、DCF法(インカムアプローチ)、類似会社比較法(マーケットアプローチ)、純資産価額法(コストアプローチ)などを併用し、多角的な視点から企業価値を算定します。
6. M&Aの株式譲渡で発生する税金の種類と計算方法
ここでは、株式譲渡による事業承継で課される税金を説明します。
譲渡所得の計算方法
個人株主が株式譲渡によって売却益を得た場合、その利益は「譲渡所得」として課税対象になります。これは給与所得など他の所得とは合算しない「申告分離課税」です。譲渡所得は以下の計算式で算出します。
- 譲渡所得 = 譲渡価額(売却価格) - (取得費 + 譲渡費用)
- 取得費:株式を取得するために要した費用です。創業者であれば出資した資本金の額、第三者から購入した場合はその購入代金が該当します。
- 譲渡費用:株式を売却するために直接かかった費用で、M&A仲介会社への手数料などが含まれます。
譲渡所得税の内訳
個人の株式譲渡所得に課される税金および税率は、2022(令和4)年9月現在、以下のとおりです。
- 所得税15%
- 復興特別所得税0.315%
- 住民税5%
なお、復興特別所得税は、2037(令和19)年までの時限税です。
納税猶予
後継者が相続や贈与によって事業承継した場合、事業承継税制を活用すると相続税・贈与税の納税猶予が受けられます。最終的には免除も可能です。ただし、この措置を得るためには、手続きと一定の経営状態の維持を要します。
必要手続き
納税猶予を受けるには、「都道府県知事の認定」「税務署への申告」が必要になります。承継計画を認定経営革新等支援機関に提出して所見を記載してもらい、贈与・相続の手続きを終え、認定の申請を提出、税務署へ申告という流れです。
手続き以外にも、維持・継続しなければならない条件が設定されています。認定経営革新等支援機関への相談は不可欠です。認定経営革新等支援機関は全国に数多くあり、中小企業庁のホームページでリストが公表されています。
納税猶予額の免除
事業承継の際に納税猶予を受けた税金は、条件を満たしていれば免除も可能です。納税猶予された税金が免除されるには、主に2つの条件があります。
- 先代の経営者・後継者の死亡
- 次の世代へさらに事業承継をする
この2つの条件がそろった場合には、納税猶予額を免除されることも可能です。
次世代に自社株を一括で贈与するときには、忘れずに税制適用の手続きをしなければなりませんが、一定の条件に該当する場合には、税金が猶予されるだけではなく、免除になることも理解しておくと多大なメリットを得られやすくなります。
株式譲渡による事業承継のご相談はM&A総合研究所へ
第三者への事業承継をお考えの場合は、M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aの相手先探しから手続き・交渉など、親身になって一貫サポートします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談は電話・Webより随時、受け付けていますので、M&Aによる事業承継をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。
7. 株式譲渡による事業承継のまとめ
事業承継を株式譲渡で行う場合、有償で行う売買や家族に無償で行う贈与や相続があります。この手法により、税金やメリット・デメリットが異なることも理解し検討していく必要があり、わからない部分や契約・手続きの部分には専門家によるアドバイスが不可欠です。
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均7.0ヶ月のスピード成約(2024年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。