2022年12月23日更新
買収防衛策の全種類を解説!買収防衛策の導入方法と事例・廃止企業一覧!
会社買収の一つに敵対的買収の手法があります。2005年のライブドアによるフジテレビへの敵対的買収をきっかけに、買収防衛策が注目されるようになりました。本記事では、買収防衛策全19種類について解説し、買収防衛策の導入企業・廃止企業なども紹介します。
1. 買収防衛策とは

会社買収は、友好的買収と敵対的買収に分けられます。友好的買収とは、両社の協議の結果としてお互いが同意した状態で行う会社買収をさし、通常行われるのはこの友好的買収です。
敵対的買収は、買収される側の同意を得ずに会社買収を行うことです。買収方法としては、TOB(株式公開買い付け)などがあります。
敵対的買収に対して買収される側は何もできないかといえば、そうではありません。敵対的買収の動きに対して、買収される側は買収防衛策をとることが可能です。
買収防衛策とは相手企業が買収を行わないように対策を行うことですが、その方法には多くの種類があります。
この記事では、敵対的買収に対する買収防衛策について詳しく解説していきます。実際に行われた買収防衛策や何らかの理由で廃止された買収防衛策も見ていきましょう。
2. 買収防衛策の問題点

この章では、買収防衛策の問題点について解説します。買収防衛策を行う場合、株式や会社の利益に大きく影響するため、株主や社員への影響を考慮しなければなりません。
ここでは、以下の3点から、買収防衛策の問題点を見ていきましょう。
- そもそも買収防衛策に意味はあるのか?
- 経営者・会社視点であること
- 市場に閉塞感を生む可能性があること
①そもそも買収防衛策に意味はあるのか?
買収対策を検討する場合は「そもそも買収防衛策に意味があるのか」という点を考える必要があります。
買収防衛策のほとんどが株主や社員に不利益を受けるものであるため、的外れな買収防衛策を行うと買収を阻止できないばかりか株主や社員に不利益を与えるだけの結果になりかねません。
買収対策を行う際は、敵対的買収を行う企業にとって効果のある買収防衛策なのか、しっかり検討することが重要です。
②経営者・会社視点であること
次に挙げる問題点は、買収防衛策が経営者・会社視点のみで行われていないか、です。
買収防衛策の大半は定款を変更する必要があり、定款を変更する際は株主総会での決議が必要になるため、株主の同意が得られていると考えられます。
しかし、焦土作戦など一部の買収防衛策は会社の経営陣が独断で行えるため、株主や社員の不利益を考慮せず、経営者・会社視点で買収防衛策を行いやすい点には十分注意が必要です。
非効率的な経営の維持につながると考える意見
非効率的な経営の維持につながると考える意見は、敵対的買収は企業の効率性を向上させる考え方ともいえます。
経営者が企業価値の最大化を怠ると、株式市場でその会社は過小評価されるでしょう。その会社を買収して経営者を交代し、より効率の良い経営へと進めれば企業価値が高められます。
敵対的買収の成功を避けるため、経営者の地位を失わずに、経営者は企業価値の最大化を行うといった理論です。この意見からすると、ベストな買収防衛策は、経営努力による企業価値の最大化といえます。
企業価値の維持のために必要であると考える意見
経営者の交代は、会社と従業員などのステークホルダーの間に存在した暗黙の契約の破棄につながると考えられます。
敵対的買収による暗黙の契約の破棄は、ステークホルダーに投資をするインセンティブを下げるでしょう。その結果、会社の競争力、企業価値を下げることもあるといった意見になります。
一時的に経営を支配し知的財産などを他の会社へ委譲するなどの敵対的買収は、企業価値を毀損するとした考え方もあるでしょう。某会社の買収防衛策が、どちらに当てはまるかは断言できません。しかし、両方の意見を抑えて分析の視点とすることが重要です。
③市場に閉塞感を生む可能性
最後に挙げる問題点は、市場に閉塞感を生む可能性があることです。一般的に、株式分割を行うと株式数が増加するため、株式の流動性が上がります。それに伴ってその株式における需要が増加するため、株価も上昇します。
買収防衛策は、株式に対して上記とは逆に流動性を下げようとするものです。そのため、株価が低下し株主が不利益を受けます。
3. 買収防衛策の全種類を解説

買収防衛策は全部で19種類あり、これらを大まかに分類すると4つに分けられます。この章では、19種類の買収防衛対策を以下の分類ごとに詳しく見ていきましょう。
- 敵対的買収への予防策
- 有効的な第三者に頼る敵対的買収後の防衛策
- 企業価値を低下させる敵対的買収後の防衛策
- その他
敵対的買収への予防策
まずは敵対的買収への予防策ですが、敵対的買収を防ぐためには相手企業の買収意欲を低下させなければなりません。ここでは、自社で行える買収防衛策の11種類についてそれぞれ解説していきます。
①ポイズンピル(ライツプラン)
1つ目はポイズンピル(ライツプラン)です。この方法は、敵対的買収が行われる可能性がある場合に新株予約権を発行することで買収を阻止します。
万が一、買収企業が株式の保有比率を増やし始めたときは、あらかじめ定められたポイズンピル(毒薬条項)に基づいて新株が発行されます。
これにより買収企業の株式保有比率が下がるため、敵対的買収を阻止することが可能です。しかし、株式の発行総数が増加するため、株価が大きく低下して株主の総資産が減少する場合があります。
なお、ポイズンピルは敵対的買収を引き金にして発動するため「トリガー条項」と呼ばれています。
②ゴールデンパラシュート
2つ目の方法は、ゴールデンパラシュートです。この方法は、買収される会社の役員の退職金を高く設定することで買収意欲を低下させて買収を阻止します。
一般的に、敵対的買収が行われると買収された会社の経営陣は自社の思いどおりになる人を就任させます。買収された会社の経営陣は退職させられ、退職する経営陣には就業規則に基づいて退職金を支払わなくてはなりません。
その際、退職金が高く設定されている(通常は3倍程度に設定される)場合は、それに従って支払わなければならないため、買収後に多額の費用がかかるので買収の抑止力になります。
③ティンパラシュート
3つ目は、ティンパラシュートです。先述したゴールデンパラシュートは経営陣の退職金を高くしますが、ティンパラシュートは従業員の退職金や一時金を高くすることで買収意欲を低下させます。
敵対的買収後には必要な事業に関与している人だけを残し、残りの従業員は人員整理のために退職させるパターンもあります。従業員の人員整理を行うような敵対的買収を行う企業にとって、ティンパラシュートは効果的です。
④マネジメント・バイアウト
4つ目の方法は、マネジメント・バイアウトです。この方法は、自社の経営陣が自社の株式を買い取って非上場化することで、会社の経営権を買収企業に取得させないようにします。
公開会社の場合、株式の取引は自由に行えるため、敵対的買収の方法の1つであるTOB(株式公開買い付け)を行うことも可能です。これを阻止するためには、株式を非上場化して株式の取引を行えないようにし、買収企業に自社株式が流れないようにします。
なお、中小企業や非公開会社の場合、マネジメント・バイアウトは事業承継のために使われるのが一般的です。事業承継の観点からのマネジメント・バイアウトについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
⑤プットオプション
5つ目は、株主や債権者に対してプットオプションという権利を与える方法です。プットオプションとは、一定の事由が生じたときに株式の買い取りや弁済の請求を行える権利です。
買収防衛策としては、敵対的買収が行われる前に株主にはすべての株式の買い取りを、債権者には一括弁済を請求する権利を与えておきます。
プットオプションでは、敵対的買収後にこの請求に対して巨額の資金がかかるため、買収の抑止力となるのです。
⑥チェンジ・オブ・コントロール
6つ目は、チェンジ・オブ・コントロール条項です。支配権(コントロール)が変わったとき、つまり経営権が変わった場合に、制限や契約解除が発動される条項になります。
例として、「自社が合併もしくは株主が50%を超えて変動した場合は、催告なくA社との契約を解除できる」といった条項を定められます。
この例では、A社が買収される企業にとって大きな取引先である場合、敵対的買収によって取引先を失うだけでなく、売上も低下するでしょう。買収意欲をそぐので、有効な買収防止策といえます。
⑦黄金株
7つ目は、黄金株です。黄金株とは、会社の合併などの議案について拒否できる特別な株式のことです。仮に普通株式が敵対的買収を行う会社に買い占められていても、黄金株により買収を阻止することが可能です。
ただし、黄金株は自社の経営陣で所有できないため、友好的企業に渡すことで買収防衛策として実行します。なお、黄金株は別名「拒否権付き株式」とも呼ばれており、原則として1株のみ発行されます。
⑧絶対的多数条項
8つ目の方法は、絶対的多数条項です。絶対的多数条項とは、株主総会での議決要件を厳しくすることで買収意欲を削ぐ方法です。
敵対的買収を行う際、株式を買い占めてから現経営陣を退職させて買収を行います。取締役などを解職させるには株主総会の定款に基づく賛成を得なければなりませんが、通常は定足数に過半数の賛成を得られれば解職させることが可能です。
絶対的多数条項では、90%以上の賛成が必要などと議決要件を厳しくします。敵対的買収の場合、100%近くの株式を取得するにはさらに多額の資金が必要になるため、絶対的多数条項のある企業は買収しにくくなるのです。
⑨全部取得条項付株式
9つ目の方法は、全部取得条項付株式の発行です。全部取得条項付株式とは、株主総会の特別決議を得れば会社は強制的に買い上げられる株式のことをいいます。
通常はスクイーズアウトの手法で使われ、全部取得条項付株式を買い上げる代わりに、株式比率を乗じた数の普通株式を発行して少数株主を排除します。
買収防衛策としては、無議決権優先株式を全部取得条項付株式として買い上げ、その対価として普通株式を交付させることで株式数を増加させ、買収コストを上げて買収しにくくするのです。この方法は近年考案された方法であるため、実施例はあまりありません。
⑩事前警告型
10個目は、事前警告型です。この方法では、株主利益が明らかに損なわれるなどの一定事由が発生した場合に行う事柄について、あらかじめ公表しておきます。
この策をとっている企業を買収しようとした場合、公表されている買収防衛策が発動するため、簡単に買収できません。
⑪ゴーイング・プライベート
11個目は、ゴーイング・プライベートです。この方法では、マネジメント・バイアウトなどの手法を用いて上場を廃止します。株式を非公開化すると株式取得が困難となるので、買収防衛策となります。
非公開化して譲渡制限付株式へ変更すると、さらに取得が困難です。ただし、非公開化により、今までの株主は株式の譲渡が難しくなったり資金調達が行いにくくなったりするでしょう。
有効的な第三者に頼る敵対的買収後の防衛策
次は、友好的な第三者に頼る敵対的買収後の防衛策です。この防衛策は、友好的な第三者に対して株式の売買を行って、敵対的買収を防ぎます。
この友好的な第三者に頼る敵対的買収後の防衛策には、以下の3種類があります。
- ホワイトナイト
- 第三者割当増資
- 第三者との株式交換
①ホワイトナイト
1つ目の方法は、ホワイトナイトです。ある企業が敵対的買収をされそうになったときに、友好的な第三者の企業・経営者に買収してもらいます。
友好的な第三者の企業・経営者のことを白馬の騎士(ホワイトナイト)と呼ぶことから、この買収防衛策はホワイトナイトと呼ばれています。
②第三者割当増資
2つ目の方法は、第三者割当増資です。会社が発行する新株を友好的な企業や特定の取引先などひいきのある所に引き受けてもらう方法になります。
原則として、会社が発行する株式を誰にどれだけ売るかは自社が決められるため、第三者割当増資を行うことが可能です。買収防衛策としては、買収阻止のために新株を発行して特定の企業や経営者に買い取ってもらいます。
しかし、新株を発行しすぎると株価が低下して株主が不利益を受けるため、株主には不公平な新株発行には差し止めを請求する権利が認められています。
③第三者との株式交換
3つ目の方法は、第三者との株式交換です。買収される会社の自社株式を友好的企業に渡すことにより、敵対的買収を阻止します。この方法で友好的企業に買収されるところまで進んだ場合は、ホワイトナイトと呼ばれます。
企業価値を低下させる敵対的買収後の防衛策
3つ目は、企業価値を低下させる敵対的買収後の防衛策です。この方法では、買収される企業の魅力を低下させることで、敵対する企業の買収意欲をそぎます。
この企業価値を低下させる敵対的買収後の防衛策は、以下の3種類に分類されます。
- ジューイッシュ・デンティスト
- 焦土作戦(クラウン・ジュエル)
- 資産ロックアップ
①ジューイッシュ・デンティスト
1つ目は、ジューイッシュ・デンティストです。これは、敵対的買収の標的になった場合にマスコミを通じて自社のネガティブイメージを宣伝し、社会的信用を低下させて買収意欲をなくす方法です。
万が一、社会的信用を失った状態で敵対的買収を行ったとしても、社会的信用を回復させるために多額の資金が必要になるだけでなく、資金調達も困難になるため買収意欲が低下します。
ただし、買収防衛策に成功してもそのあとは社会的信用を失ったまま経営を行う必要があるため、リスクを負った方法といえるでしょう。
②焦土作戦(クラウン・ジュエル)
2つ目は、焦土作戦(クラウン・ジュエル)です。この方法は、買収企業が欲しがっている資産や事業を売却して買収させる会社の企業価値や魅力を意図的に低下させることで買収意欲を削ぎます。
焦土作戦の語源は「迫ってくる敵に武器や弾薬を使わせないために自軍の軍事施設を焼き払う」に由来しています。
なお、焦土作戦は経営陣の独断で行えますが、買収防衛策を行った後は企業価値が大きく低下するため株主に大きな影響を与えるでしょう。そのため、日本でこの買収防衛策が行われた例は1例しかありません。
③資産ロックアップ
3つ目の方法は、資産ロックアップです。もともとロックアップとは、公開直後にその株式を売却しないよう制限を設けていることをいいます。ここから派生して、買収防衛策では買収直後に買収された資産が売却できないよう制限を設ける旨を定款で定めることをいいます。
買収される企業の資産目的で敵対的買収を行う場合、資産ロックアップにより買収意欲を低下させられるのです。
その他
最後は、先ほどまで紹介した3つに当てはまらない買収防衛策を紹介します。ここで紹介する買収防衛策は以下の3つです。
- パックマン・ディフェンス
- スタッガードボード
- 労働組合との関係
①パックマン・ディフェンス
1つ目は、パックマン・ディフェンスです。敵対的買収が行われる可能性があるときに、買収される企業が逆に買収を仕掛けるという方法になります。
日本の会社法では、買収される企業が買収を仕掛けている企業における4分の1の株式を取得したとき、その企業は自社の株主総会における議決権を失います。
パックマン・ディフェンスは、このルールを利用した方法です。多額の資金が必要になるため中小企業のような規模の小さい会社が行う買収防衛策ではありません。
②スタッガードボード
2つ目の方法は、スタッガードボードです。この方法では、取締役など役員の改選時期をずらすように決めておきます。
敵対的買収を行った後は、必ず取締役などの役員を解職させて買収企業の意見に従ってくれる役員を選任します。しかし、スタッガードボードが行われるとそれがすぐにできないため、買収企業の意欲を低下させられるのです。
③労働組合との関係
最後に紹介する買収防衛策は、労働組合との関係を利用した方法です。労働組合は、労働環境の改善や賃上げなどを求めて労働者が組合を作り、経営者に意見をする組織になります。
経営者が労働者の意見を受け入れてくれない場合はストライキの決行も可能なため、労働組合も買収反対の立場である場合は、ストライキを決行されるなどの可能性があることから買収意欲を低下させられます。
しかし、買収後に人員整理をされてしまうと効果がなくなるので、別の買収防衛策と同時に行うのが一般的です。
4. 買収防衛策を導入する場合の原則

この章では、買収防衛策を導入する場合の原則について解説していきます。買収防衛策を実施する際は、以下の3点を確認しましょう。
- 事前に開示し株主に納得してもらうこと
- 企業価値・株主の利益や向上を考えること
- 買収防衛策の必要性があること
①事前に開示し株主に納得してもらう
1つ目は、事前に買収防衛策を開示して株主からの同意を得ておくことです。先述のとおり、買収防衛策を行うと株主が不利益を受けることになり、その不利益が大きすぎれば株主に差し止め請求権を行使されて買収されてしまう可能性があります。
定款変更に伴う買収防衛策では株主総会で議決を得る必要がありますが、経営陣の独断で行える買収防衛策についても株主に事前通知を行うなどしてください。
②企業価値・株主の利益や向上を考える
2つ目は、企業価値・株主の利益や向上を考えることです。買収防衛策には、企業価値を低下させることで買収意欲を下げたり、株式数を操作するため株主が不利益を受けたりするものがあります。
企業価値の低下に関しては、焦土作戦のように本命の事業を売却すると株主が減少して資金調達が困難になりかねません。株式数については新株予約権の発行などで全発行済株式数が増加し、株価が下落して株主が不利益を受けることもあります。
買収を回避しても経営を継続することが困難になるため、買収防衛策を行う前に買収回避後のことも考えなければなりません。
③必要性があること
3つ目は、その買収防衛策が本当に必要であるかどうかです。買収防衛策を行うと株主などが不利益を受けるので結果として株主が減少してしまい、資金調達が困難になる場合があります。
買収されるか、回避後の経営が困難になるか、この両者のリスクを十分に考慮したうえで買収防衛策を行うことが重要です。
5. 買収防衛策の導入企業・廃止企業一覧

最後に、買収防衛策の導入企業および廃止企業について紹介していきます。この章では、買収防衛策を導入した企業を13社、廃止した企業を28社を見ていきましょう。
買収防衛策の導入企業
まずは、買収防衛策導入企業を13社紹介します。取り上げる企業は、以下のとおりです。
- イオン
- GMOインターネット
- トナミHD
- 赤阪鐵工所
- ファースト住建
- 神田通信機
- トクヤマ
- トーセイ
- 明電舎
- フジテレビ
- システム開発会社ソレキア
- オリジン東秀
- ブルドックソース
①イオン
1社目は、イオンです。イオンは買収防衛策として、事前警告型とポイズンピルを行っています。
事前警告型としては、議決権割合が20%を超えるような買付行為、もしくは20%以上になるための買付行為に対して警告を行っているのです。この警告に従わない場合、ポイズンピルを発動するとホームページで公表しています。
②GMOインターネット
2社目は、GMOインターネットです。この企業は買収防衛策を2006年から導入しており、導入している買収防衛策は、事前警告型とポイズンピルです。
事前警告型では、議決権割合の20%を超える大規模買付やそれを行うグループに対して警告を行っており、これに従わない場合はポイズンピルを発動するとしています。
③トナミHD
3つ目の企業はトナミHDで、富山県高岡市に本社を置く運送会社です。2017年から買収防衛策を導入しており、この企業の買収防衛策は事前警告型とポイズンピルです。
議決権割合が20%を超える買付行為に対して警告を行っており、警告に従わない場合はポイズンピルを発動するとしています。
④赤阪鐵工所
4つ目の企業は赤阪鉄工所で、静岡県焼津市に本社を置く船舶用ディーゼル機関の会社です。2017年から買収防衛策を導入しており、この企業で採用している買収防衛策も事前警告型とポイズンピルです。
議決権割合が20%を超える買付行為に対して警告を行っており、警告に従わない場合はポイズンピルを発動します。
⑤ファースト住建
5つ目の企業はファースト住建で、兵庫県尼崎市に本社を置く不動産会社です。2017年から事前警告型とポイズンピルの買収防衛策を導入しています。
事前警告型に関しては議決権割合が20%を超える買付行為に対して警告を行っており、従わない場合はポイズンピルを発動します。
⑥神田通信機
6個目の企業は神田通信機で、東京都千代田区に本社を置く通信機器事業を行っている会社です。この会社も事前警告型とポイズンピルの2つの買収防衛策を導入しています。
なお、この企業に関しては合同会社M&Sが買収防衛策に反対しており、神田通信機は反対に対して取締役会の意見を公表しています。
⑦トクヤマ
7個目の企業のトクヤマは大手総合化学工業メーカーです。この会社も買収防衛策を導入していますが、継続して実施するか否かを3年ごとの株主総会で更新しています。
2015年は65.88%の株主が更新に賛成をしましたが、2018年は56.7%と大きく減少しました。経営者の保身につながるとの観点から、賛成する株主が減少していると考えられます。
⑧トーセイ
8個目の企業はトーセイで、東京都港区に本社を置く不動産会社です。2018年から事前警告型とポイズンピル、2つの買収防衛策を導入しています。
事前警告型に関しては議決権割合が20%を超える買付行為に対して警告を行い、従わない場合はポイズンピルを発動します。
⑨明電舎
9個目の企業は明電舎で、東京都品川区に本社を置く電気機器メーカーです。2017年から事前警告型とポイズンピルの2つの買収防衛策を導入しています。
議決権割合が20%を超える買付行為に対して警告を行い、従わない場合はポイズンピルを発動します。
⑩フジテレビ
10社目はフジテレビです。2005年にライブドアはTOBによってフジテレビの経営権を取得しようとしました。
それに対してフジテレビは、友好的な第三者であるフジサンケイグループと株式交換を行い、さらに新株予約権を発行してライブドアの敵対的買収を防ごうとしました。
この事態は買収防衛策の意識が高まるきっかけとなっています。
⑪システム開発会社ソレキア
11社目は、システム開発会社ソレキアです。2017年、フリージア・マクロスの佐々木ベジ会長が仕掛けた敵対的買収に対し、ホワイトナイトを実行しました。
その友好的第三者は昔から取引があった富士通で、こちら側もTOBを行いました。しかし、結果的にこの事例は買収防衛に失敗しています。
⑫オリジン東秀
12社目の事例は、オリジン弁当を経営するオリジン東秀です。敵対的買収を行おうとした企業はドン・キホーテであり、次世代のコンビニエンスストアを作るためにTOBを実施しました。
これに対してオリジン東秀はホワイトナイトとしてイオンにTOBを依頼しました。この事例では、買収防衛に成功しています。
⑬ブルドックソース
最後に紹介する事例は、ブルドックソースです。買収防衛策として、買収企業に対して不利な条件での新株予約権を発行しました。
これに対して買収企業が提訴し、初めて買収防衛策の適法性について争われた事例です。判決では買収による利益などについては株主が判断するため、株主総会の意見が尊重されるべきとされ買収側が敗訴となっています。
買収防衛策の廃止企業
次は、買収防衛策を廃止した企業を28社紹介します。取り上げる企業は、以下のとおりです。
- 櫻島埠頭
- 東洋紡
- 因幡電機産業
- 森永製菓
- パナソニック
- 日清食品ホールディングス
- クラレ
- テイツー
- 省電舎
- 日本プロセス
- ミルボン
- ダントーHD
- リンテック
- ダイワボウ
- 日本ハム
- ワコール
- 京浜急行電鉄
- 阪和興業
- 帝人
- 日本曹達
- 理研機器
- 日本郵船
- 久光製薬
- リンナイ
- 日清オイリオグループ
- コメリ
- グンゼ
- テルモ
①櫻島埠頭
1つ目は、櫻島埠頭です。櫻島埠頭は、事前警告型とポインズンピルの2つの買収防衛策をとっていました。しかし、2020年に経営環境の変化や買収防衛策の動向を踏まえて買収防衛策を廃止しました。
②東洋紡
2つ目は、東洋紡です。東洋紡ぐは2008年から事前警告型とポインズンピルの2つをとっていました。しかし、2020年に経営環境の変化や買収防衛策の動向を踏まえて廃止を決定しました。
③因幡電機産業
3つ目は、因幡電機産業です。因幡電機産業は2014年から事前警告型とポイズンピルの2つをとっていました。しかし、2020年に金融業品取引法による大規模買付行為に関する規制の浸透を理由に廃止を決定しています。
④森永製菓
4つ目は、森永製菓です。森永製菓は2008年から事前警告型とポイズンピルの2つをとっていました。しかし、2020年に経営環境や市場環境、買収防衛策の動向を踏まえて廃止を決定しています。
⑤パナソニック
5つ目は、パナソニックです。パナソニックは、2005年から議決権割合の20%を超える買付行為に対し、警告を行う買収防衛策をとっていました。
しかし、2016年にコーポレートガバナンスや外部環境を考慮した結果という理由により、買収防衛策を廃止しています。
⑥日清食品ホールディングス
6つ目は、日清食品ホールディングスです。日清食品ホールディングスは、2007年から大量株式買付行為に対して警告を行う買収防衛策をとっていました。
しかし、2019年に買収防衛策の必要性が相対的に低下したことを理由に廃止を決定しています。
⑦クラレ
7社目は、クラレです。クラレは2007年から、クラレ社株式の大量買付行為に対して警告を行う買収防衛策をとっていました。
しかし、2018年に経営環境の変化や金融商品取引法による大量買付行為の規制が浸透し必要性が低下したことから、廃止を決定しています。
⑧テイツー
8社目はテイツーです。テイツーは2005年から、株式の大量買付行為に対して警告を行う買収防衛策をとっていました。しかし、2018年に買収防衛策に関する環境の変化や法整備の状況を踏まえて、実施していた買収防衛策を廃止しています。
⑨省電舎
9つ目の事例は、省電舎です。この企業は、2018年に有価証券報告書を期限内に提出できなかったことから特設注意銘柄に指定されました。
公式に発表された資料はないものの、おそらくこの事件をきっかけに社会的信用が低下したことから、買収防衛策の必要性が低下したと考えられます。
⑩日本プロセス
10社目は日本プロセスです。日本プロセスは、大量株式買付行為に対して警告を行う買収防衛策をとっていました。しかし、買収防衛策の必要性について相対的に低下したことを理由に、廃止を決定しています。
⑪ミルボン
11つ目の事例は、ミルボンです。ミルボンは2008年から、株式の大量買付行為に対して警告を行う買収防衛策をとっていました。
しかし、2018年に買収防衛策に関する動向や経営環境の変化等を考慮した結果、買収防衛策の必要性が低下したとして廃止しています。
⑫ダントーHD
12社目はダントーHDです。ダントーHDは、2012年から株式の大量買付行為に対して、警告を行う買収防衛策をとっていました。
しかし、2018年に金融商品取引法による大量買い付けに対する規制の整備やコーポレートガバナンス・コードの浸透を踏まえ、買収防衛策の非継続を決定しています。
⑬リンテック
13社目はリンテックです。2007年から当社株式の大量買付行為に対して警告を行う買収防衛策をとっていました。
しかし、2018年に国内外の機関投資家をはじめとする株主の意見や買収防衛策に対する近年の動向を踏まえ、買収防衛策を廃止することを決定しています。
⑭ダイワボウ
14社目はダイワボウです。ダイワボウは2009年から、株式の大量買付行為に対して警告を行う買収防衛策をとっていました。
しかし、2018年に金融商品取引法による大量買付行為に対する規制の浸透や買収防衛策をめぐる近年の変化などを理由に、買収防衛策を廃止しています。
⑮日本ハム
15社目は日本ハムです。日本ハムは、2006年から自社株式の大量買付行為に対する買収防衛策をとっていました。しかし、2018年に企業価値や株主の利益確保にあたって買収防衛策の必要性が相対的に低下したことを理由に廃止しています。
⑯ワコール
16社目のワコールは、2006年から買収防衛策をとっていました。しかし、2018年に金融商品取引法による大量買付行為規制の浸透や外部環境の変化を理由として買収防衛策を廃止しています。
⑰京浜急行電鉄
17社目は京浜急行電鉄です。京浜急行電鉄も2007年から、ここまで紹介した会社と同様の買収防衛策をとっていました。
しかし、2018年に株主や独立委員会の意見や外部環境の変化を理由に買収防衛策を廃止しています。
⑱阪和興業
18社目は阪和興業です。この会社も2007年から買収防衛策をとっていたのですが、機関投資家からの意見や業績の最高最高更新による企業価値の向上などを踏まえてこの策の必要性が低下していました。
以上の理由により、2018年に阪和興業は買収防衛策を廃止しています。
⑲帝人
19社目は帝人で、2006年から株式の大量買付行為に対する対策をとっていました。しかし、2018年に買収防衛策をめぐる近時の動向やコーポレートガバナンス・コードを考慮して、買収防衛策を廃止しています。
⑳日本曹達
20社目は日本曹達です。日本曹達は2007年から、株式の大量買付行為に対する対策をとっていました。しかし、2018年にコーポレートガバナンスの整備と強化や株主の利益確保や向上のため、買収防衛策を廃止しています。
㉑理研機器
21社目は理研機器です。理研機器は、2009年から株式の大量買付行為に対する対策をとっていました。しかし、2018年に買収防衛策をめぐる動向や株主の意見を踏まえて買収防衛策の廃止を決定しています。
㉒日本郵船
22社目は日本郵船で、この会社も株式の大量買付行為に対する対策をとっていました。しかし、2014年に買収防衛策の意義が相対的に低下しているという理由で廃止しています。
㉓久光製薬
23社目は久光製薬で、この会社も株式の大量買付行為に対する対策をとっていました。しかし、2017年に買収防衛策が及ぼす影響を考慮した結果、廃止を決めています。
㉔リンナイ
24社目はリンナイで、この会社も2008年から株式の大量買付行為に対する対策をとっていました。
しかし、2017年に金融商品取引法による大量買付行為の規制の浸透や買収防衛策の目的が担保されるようになってきたことを理由に、廃止することを決めています。
㉕日清オイリオグループ
25社目は日清オイリオグループで、2008年から株式の大量買付行為に対する対策をとっていました。しかし、2017年に買収防衛策をめぐる近年の動向やその影響を考慮して廃止を決めています。
㉖コメリ
26社目はコメリです。コメリは2007年から、株式の大量買付行為に対する対策をとっていました。しかし、2017年に金融商品取引法による規制の整備や買収防衛策をめぐる近年の動向などを踏まえて廃止を決定しています。
㉗グンゼ
27社目はグンゼです。グンゼは2006年から、株式の大量買付行為に対する対策をとっていました。しかし、2017年に金融商品取引法による規制の整備や買収防衛策の目的がある程度担保されていることを理由に、廃止を決定しています。
㉘テルモ
最後はテルモです。テルモは2008年から、株式の大量買付行為に対する対策をとっていました。
しかし、2017年に近年の業績過去最高による企業価値の向上や金融商品取引法による規制の整備などの理由から、買収防衛策を廃止しています。
6. 買収防衛策に関する相談先

買収防衛策を導入もしくは廃止するときは、メリットだけでなくデメリットを考慮して行わなければなりません。経営陣だけでは専門性に欠ける場合があるので、M&A仲介会社などの専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。
M&A総合研究所では、買収防衛策に関する知識・実績の豊富なM&Aアドバイザーが案件をフルサポートいたします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
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7. 買収防衛策のまとめ

買収防衛策は近年廃止される傾向がありますが、会社ごとにステークスホルダーとの関係性は異なるため、一様に買収防衛策を導入しない、廃止することはできません。
買収防衛策が必要であるかどうか、また必要な場合に有効な方法はどれなのかを判断するためには、専門的な見解から総合的に判断する必要があります。
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