2022年09月18日更新
M&Aで発生する違約金とは?契約解除の法的拘束力や注意点を徹底解説
M&Aの際には、契約に違反すると違約金が発生することがあります。違約金の発生は、違反した内容が法的拘束力を持つ条項に違反しているかどうかで変わります。本記事では、M&Aの際に交わす書面ごとに法的拘束力の有無や、違約金が発生する可能性などを解説しました。
1. M&Aで発生する違約金とは?
M&Aの際は、契約に違反すると違約金が発生することがあります。違約金が発生するかどうかは、違反した内容が法的拘束力を持つ条項に違反しているかどうかによって変わります。
どの範囲まで法的拘束力を持つかはM&Aの際に交わす契約書によって違い、例えば、M&A手続きの中間地点となる基本合意書の場合は、法的拘束力を持つ条項と法的拘束力を持たない条項が混じっていることが一般的です。
一方、M&Aの最終的な契約書である最終契約書の場合は、すべての条項が法的拘束力を持っています。つまり、M&A手続きの段階によって、違約金が発生するかどうかは変わるでしょう。
本記事では、M&Aの際に交わす書面ごとに法的拘束力の有無や、違約金が発生する可能性などを解説します。
違約金が生じる条件
違約金が生じる条件とは、契約書に記載した内容に違反した場合です。違反とする基準は、契約書の種類や交渉内容、契約書の法的拘束力の有無によって変わるでしょう。
法的拘束力は、相手が規則違反した場合に損害賠償請求できます。M&Aを進める中でさまざまな契約書を取り交わしますが、中には法的拘束力がない契約書もあるため事前に確認しておくことが大切です。
注意すべき契約書は最終契約書です。最終段階で締結するため、法的拘束力を持ちます。したがって最終契約書で違反した場合は違約金が発生するので慎重に進めるのが大切です。
2. M&Aで違約金が発生する可能性のある契約書
M&Aを実行する際に交わす契約書にはいくつかの種類があります。本章では、各契約書の特徴を解説します。
秘密保持契約書(NDA)
そのような情報をお互い外部に漏らすことがないよう、
- どこまでの情報を秘密情報とするか
- どこまでの相手を情報開示範囲とするか
- 情報の目的外使用の禁止
- 情報の返還と破棄について
アドバイザリー契約書
アドバイザリー契約書とは、M&Aの専門家と業務委託契約を結ぶ際に作成する契約書です。M&Aでは多くの場合、専門家によるサポートが必要となりますが、アドバイザリー契約書を作成することで、専門家にどこまでの範囲を業務委託するかを定められます。
サポートの範囲は専門家によってさまざまです。後で不満を抱くことがないよう、アドバイザリー契約書を交わす際は、M&A手続きのどこまでをサポートしてもらえるのかをよく確認しておく必要があるでしょう。
意向表明書
意向表明書とは、買い手が売り手に対して買収の意思を示す書面のことです。意向表明書はあくまで買い手の意思を示す書面なので、法的拘束力は付与しないケースが一般的です。
意向表明書には決まった書式はありません。しかし、記載される内容はその後の交渉にも影響を与えるものなので、専門家による監修を受けながら丁寧に作成する必要があります。なお、買い手によっては意向表明書を提出しないケースもあります。
基本合意書
基本合意書とは、売り手と買い手が交渉によって一定の合意に至った内容を記載した契約書のことです。買い手が「売り手企業を買います」といった明確な意思表示でもあります。
【基本合意書に記載される主な内容】
- 取引条件
- M&Aのスケジュール
- 独占交渉権
- デューデリジェンスの進め方について
- 誓約事項
- 法的拘束力
なお、基本合意書には条項によって法的拘束力を付与する場合と付与しない場合があるので、どの条項に法的拘束力が発生するかはよく確認する必要があります。
最終契約書
最終契約書とは、売り手と買い手の交渉がまとまった後に結ぶ最終段階の契約書のことです。通常は、そのM&Aで用いるスキームの名前が入ります(株式譲渡契約書、事業譲渡契約書、合併契約書など)。
【最終契約書に記載される主な条項】
- 売買条件
- 手続条項
- 前提条件
- 表明保証
- 遵守事項
- 補償条項
- 解除条項
- 一般条項
前提条項とは、M&Aのクロージングまでに満たしておかなければならない条件のことであり、表明保証とはM&A相手に提示した情報が正しいことを約束する条項のことです。
遵守事項とは、守らなければならない取り決め内容であり、補償条項とはM&A相手が契約違反をした場合に損害賠償請求ができるようにする条項です。
3. M&Aの違約金と契約解除の法的拘束力
M&Aの契約書には、契約解除に関する法的拘束力がある契約書と、法的拘束力がない契約書とがあります。法的拘束力がある契約に違反した場合、違約金が発生する可能性もあるので注意が必要です。本章では、契約解除の法的拘束を解説します。
秘密保持契約書(NDA)の場合
一般的な契約書では、売り手と買い手どちらかに契約違反があった場合は、契約解除ができるようにしたり、違約金を請求したりできるようにしておくケースが多く見られます。
しかし、秘密保持契約書(NDA)の場合は契約解除の規定を設けないことがほとんどです。契約解除の条項を設けたとしても、法的拘束力を持たない可能性があります。
秘密保持契約書(NDA)は、どこまで法的拘束力を持たせるかが非常に重要です。あらゆる情報に法的拘束力を持たせてしまうと、M&Aに支障がでる可能性があります。
しかし、秘密を保持する情報が限定的すぎると、思わぬ情報が漏れて会社の信用に傷がつく可能性も出てきます。秘密保持契約書(NDA)の効力をいつまで持続させるかも重要です。一般的には、M&Aの完了から3年程度契約を維持するケースが多いです。
アドバイザリー契約書の場合
アドバイザリー契約は、多くの場合専属契約になっていて、同時にほかのM&A専門家との契約はできません。もし同時に複数のM&A専門家と契約した場合は違約金が発生する可能性があります。
M&Aの専門家側がせっかくM&A手続きを進めていっても、依頼者側から途中で契約を解除されてしまったら大きな損失となり、M&A相手にも迷惑がかかるからです。
同様の理由で、アドバイザリー契約は契約期間の途中で解除できず、契約解除すると違約金が発生する場合があります。
専属契約はM&Aの専門家側だけでなく、依頼者側にもメリットとなる面はありますが、M&Aの専門家と相性が悪い場合など、どうしても契約期間中に契約を解消したいケースもあるでしょう。
そのようなときは、弁護士に相談して対応してもらうと違約金が発生せずに契約が解除できる場合もあります。
意向表明書の場合
意向証明書には法的拘束力を持たせないケースが大半です。意向証明書はあくまで買い手から売り手へ買いたいとの意向を伝えるものだからです。
意向表明書の内容と違ったからといって、違約金が発生するようなことはあまりありません。意向表明書自体を提出しない場合もあります。
ただし、意向表明書に法的拘束力がないからといって、まったく無視してよいわけではありません。意向表明書の内容はその後のM&A交渉に影響を与えます。M&A相手に的確に意向を伝えたり、交渉を有利に進めたりするためにも、意向表明書を提出する場合は丁寧に作り込む必要があります。
基本合意書の場合
基本合意書には法的拘束力を持たせないケースがほとんどです。ただし、法的拘束力がないからといっても、条項に意味はあります。
基本合意書は売り手と買い手がお互いの意思を明確に示し、合意した結果の書面なので、その後の交渉には大きな影響を与えます。基本合意書の一部の条項には法的拘束力を持たせる場合もあるでしょう。
独占交渉権やデューデリジェンスは、もし違反があった場合に大きな損失を被る可能性があります。このような一部条項は法的拘束力を持たせ、違反があった場合には違約金が発生することもあります。
最終契約書の場合
最終契約書には法的拘束力があり、違反すると違約金が発生する可能性があるので注意が必要です。最終契約書の中で重要なものは、表明保証・前提条件・遵守条項・補償条項です。
表明保証は提示した情報に間違いがないことを保証する条項なので、故意に情報を変えたり隠したりすると違約金が発生する可能性があります。
買い手は、売り手企業に対してデューデリジェンスを実施してリスクの洗い出しを行いますが、すべての情報を的確に洗い出せるとは限りません。表明保証によってリスクを抑えることが重要になるでしょう。
補償条項があることによって、表明保証・前提条件・遵守条項に違反があった場合は違約金を請求できるようになります。
違約金をいくらにするか、違約金が発生する期限をいつまでにするかなど、補償条項であらかじめ定めておくことでトラブルが大きくなるのを防げます。補償条項の内容をどのようにすればよいかは、弁護士による助言も重要です。
4. M&Aで契約解除する際の注意点
秘密保持契約書(NDA)の場合
秘密保持契約書(NDA)の場合は、契約解除後の情報の取り扱いに注意が必要です。秘密保持契約で取り扱う情報の中には非常に重要な情報が含まれることもあるので、秘密保持契約の契約期間が切れた後も情報漏洩(ろうえい)をしないように気をつけなければなりません。
情報が漏洩(ろうえい)したり、目的外の使用がわかったりした場合は、秘密保持契約は切れていても内容によっては訴訟問題になり、違約金が発生する可能性があります。
アドバイザリー契約書の場合
アドバイザリー契約書の場合は、契約の際に専属契約かどうかを確認しておく必要があります。専属契約でなければ契約解除はしやすいですが、専属契約の場合は契約解除が難しくなり、場合によっては違約金が発生することもあります。
ただし、専属契約はデメリットばかりではなくメリットもあるでしょう。専属契約のメリットとデメリットをよく理解したうえでM&Aの専門家とアドバイザリー契約を結ぶことが大切です。
意向表明書の場合
意向表明書には法的拘束力がないので、意向表明書に記載した条件を途中で変えたり交渉を途中でやめたりしたからといって違約金が発生するといったことはめったにありません。
ただし、意向表明書に法的拘束力がないとはいえ、M&Aの交渉における重要な役割を果たすため、文面はしっかりと作る必要があります。
意向表明書には法律で決められた書式があるわけではありませんが、M&A相手と円滑にM&Aを進めるには、専門家の助言の下、適切な内容にすることが大切です。
基本合意書の場合
基本合意書は条項によって法的拘束力を持たせる場合と持たせない場合があるので、契約解除の際は契約違反にならないか事前に確認しておかないと、違約金が発生するなどの損失を被る可能性があります。
一般的に、M&A価格の変更やM&Aスケジュールの変更などは法的拘束力を持たせませんが、独占交渉権は法的拘束力を持たせることがあります。
独占交渉権とは、売り手と買い手の間で取り交わされる独占的にM&Aの交渉を行える権利です。したがって、途中で他社とM&Aの交渉を行うといった場合は、独占交渉権に抵触する恐れがあり違約金が請求される可能性もあるので注意しなければなりません。
秘密保持義務は、基本合意までに秘密保持契約を締結していない場合に記載するケースが多いでしょう。M&A仲介会社などの専門家へ依頼している場合は、初期段階で締結しているのが一般的です。秘密保持義務の条項に違反した場合は違約金が発生します。
最終契約書の場合
最終契約書は法的拘束力を持つ契約書なので、最終契約書を締結した後に契約を解除する場合は、違約金が発生する可能性があります。
基本合意書の場合は売買価格など法的拘束力を持たない条項も多くありますが、最終契約書の場合は売買価格なども含めあらゆる条項に法的拘束力が発生します。
最終契約書を結ぶ前に、基本合意書の内容や基本合意書の変更点などをしっかりと検討することが大切です。
最終契約書に記載される補償条項は、契約に違反した場合に損害賠償請求できる条項です。最終契約書を締結するタイミングは、デューデリジェンスを実施した後でしょう。M&Aの判断材料が全てそろい、最終段階となるため、全ての条項で法的拘束力を持つことになります。
5. M&Aで契約解除する条件
【M&Aの解除条件】
- MAEやMACなどの前提条件が定める
- 表明保証違反に定める
- 債務不履行の有無には注意!
MAEやMACなどの前提条件が定める
MAEまたはMACとは、重大な事由のことです。M&Aを進めていくにあたって大きな支障となる事由が生じた場合は、契約を解除できるようにすることで、契約解除をしても違約金が発生することはなくなります。
ただし、どのような事由が生じた場合に契約が解除できるようにするかは、弁護士などM&Aの専門家にも相談しながら慎重に決める必要があります。
表明保証違反に定める
前述のように、表明保証とは、提示した情報に間違いがないことを表明することです。表明保証の中に、表明保証違反があった場合は契約解除ができるよう定めることで、違約金が発生することなく契約が解除できます。
債務不履行の有無には注意!
場合によっては、M&
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6. M&Aで発生する違約金のまとめ
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