M&A・買収後モチベーションは下がる?モチベーションを維持する対策方法・注意点を解説【経営者/社員】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aによる買収で社内の環境が変化すると、社内の人材がモチベーションを維持できなくなる場合があります。企業成長に影響を及ぼすおそれもあるため、事前対策が大切です。本記事では、M&A・買収後のモチベーションを維持する対策方法を解説します。

目次

  1. M&A・買収後モチベーションは下がる?
  2. M&A・買収後モチベーションを維持する対策方法
  3. M&A・買収後モチベーションのまとめ
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1. M&A・買収後モチベーションは下がる?

近年、M&Aを経営戦略として活用する事例が増えています。ところが、M&Aによる企業成長という目的に反して、役員や従業員などの人材の業務意欲が下がってしまうと、M&A前に想定していたシナジーを発揮できないリスクが高いです。

この章では、M&A・買収が譲渡企業に与える変化や、人材のモチベーションが下がる理由などを詳しく解説します。

M&A・買収後モチベーションに影響を与える全体の変化

まずは、M&A・買収が譲渡企業全体に与える影響から解説します。特にモチベーションに与える影響が大きい変化としては、以下の3点が挙げられます。

  • 企業文化の違い
  • 慣れない仕事をする可能性
  • 環境が変わり働きにくい

企業文化の違い

M&Aによる買収を実施すると、譲渡企業を傘下に加えたり統合したりします。しかし、企業によって成り立ちや経営方針に違いがあるため、譲受企業と譲渡企業の企業文化の統合が必要不可欠です。

譲受企業に決定権があるので、譲受企業の企業文化に沿う形になることが多いですが、あまりに差異が大きい場合は従業員同士の衝突が起こる危険性もあります。

譲渡企業側の意思を無視する形で強引に企業文化の統合を進めると、企業全体の業務に対する意欲を著しく下げる要因にもなり得ます。

慣れない仕事をする可能性

仕事は反復することで徐々に慣れていき、自分なりの工夫や対策を身につけていくものです。M&Aによる変化で慣れていない仕事を任されると負担が大きくなり、ストレスを感じたりモチベーションが下がったりすることがあります。

普段であれば不慣れな仕事は上司や先輩に助言を仰げますが、M&A・買収直後となると部署全体が浮き足立っていることも多いため、1人で抱え込んでしまうケースも珍しくありません。

環境が変わり働きにくい

M&A・買収が行われると仕事以外に上司や同僚の顔ぶれが変わるなど、職場環境が劇的に変化します。たとえ雇用条件が維持されていても、精神的な負担が大きく意欲が下がるケースがあります。

特に転職しづらい中高年の従業員(基本的に定年まで勤める考えが強い)に不安やストレスがたまる傾向が強く、業績低下の一因になっている状況です。

M&A・買収後モチベーションが下がる理由

M&A・買収が与える変化は決して小さくありません。ここでは、M&A・買収後にモチベーションが下がる理由を経営者・役員・社員それぞれの視点から解説します。

経営者の場合

一般的なM&Aでは経営者は退任してリタイアするケースが多いですが、契約内容次第では経営者が在籍し続けることもあります。その際は、経営者にかかる負担から業務意欲が下がってしまうことがあります。主な理由は以下の2点です。

  • 拘束される可能性がある
  • 自分で経営できない

拘束される可能性がある

M&A・買収後、経営者が一定期間会社に在籍して事業に携わるよう義務付けられることがあります。キーマン条項(ロックアップ)と呼ばれており、M&A・買収後の事業安定化を促進させるための契約です。

拘束期間は譲受企業と譲渡企業の交渉で決定されますが、基本的に経営者の経験・ノウハウを引き継ぐための十分な期間を設けたいので、数年間は自由を奪われる可能性があります。

自分で経営できない

キーマン条項(ロックアップ)により会社に在籍している間は、経営者ではなく役員的な立ち位置になるため、自分で経営できません。

経営は譲受企業より派遣される担当者が行うため、命じられた業務をこなすことや、不安やストレスを抱えている従業員の精神安定剤的な役割を求められるのが一般的です。拘束期間中は事業を起こせないので、長すぎる期間を設定するとモチベーションを下げる要因になってしまいます。

過去の事例では、拘束期間が長すぎたために経営者の意欲がそがれてしまい違約金を払って退職したケースもあります。周囲の役員や社員に悪影響を与えるおそれもあるので、譲受企業側も注意しなければなりません。

【関連】キーマン条項(ロックアップ)とは?意味や期間、注意点を解説【具体例あり】

役員の場合

続いて、M&A・買収後に役員のモチベーションが下がる理由を解説します。大きく変化する可能性があるポイントは以下の2点です。

  • 待遇が悪くなる
  • 経営から遠ざかる

待遇が悪くなる

M&A・買収が行われると役員は一度辞職して再度選任する形が主流です。譲受企業から必要な人材と判断されれば再び役員になれますが、不要と判断された場合は役員から外されて待遇が悪化する事態も考えられます。

役員になれば引退適齢期に近づいていることも多いので、再度選任される可能性は高くありません。退職する場合は通常の従業員と異なる役員退職金を受け取るため、この点も問題になることが多いです。

経営から遠ざかる

役員は、企業の業務執行や監督などを行い経営に深く携わる人材です。しかし、M&A・買収後は譲受企業側が経営権を取得するため、役員は経営から遠ざけられる可能性が高いでしょう。

企業の中心的な立ち位置である上位管理職から遠ざかることは、給与の引き下げの可能性が高いことも意味しており、仕事に対するやりがいや意欲の低下が危ぶまれます。

社員の場合

最後に、M&A・買収後に社員のモチベーションが下がる理由を解説します。特に影響が大きい要素は以下の2点です。

  • 待遇が悪くなる
  • 勤務地や部署が変わる

待遇が悪くなる

M&A・買収では、多くのケースで社員の雇用は維持されます。あらゆる業種で人材不足が叫ばれているため、M&A・買収で確保した人材を自ら手放すケースは少ないです。

しかし、雇用条件を引き継ぐかどうかは別問題で、譲受企業の意向やM&A交渉の内容次第では社員の就業時間や給与などの条件が厳しくなる事態も考えられます。

特に事業譲渡の場合は個別に雇用契約を結ぶことになるため、雇用条件が見直される可能性が高いです。待遇の悪化は、社員のモチベーションを下げるどころか自主退職につながるおそれもあります。

勤務地や部署が変わる

たとえ給与が下がらなくても、勤務地や部署が変わる形で意欲がそがれるケースも想定されます。譲受企業は社員のフル活用を考えるので、へき地に左遷されたり、譲受企業のオフィスに異動になったりとさまざまなケースが考えられます。

職場環境が変化すると、新たな業務を覚える必要があるほか、上司や同僚の顔ぶれも変化するため、心身ともにストレスがかかりやすいでしょう。

異動先が自宅から通勤できる距離ではない場合、引っ越しをする必要があります。家族がいる場合は単身赴任なども検討しなくてはならず、モチベーション低下は計り知れません。

【関連】M&Aで買収された後の会社の末路は?社員、社長はどうなる?給料は減る?

M&A・買収後モチベーションが下がる影響

M&A・買収後に従業員のモチベーションが下がってしまうと、以下のようなデメリットが生じるおそれがあります。

  • 従業員の大量離職
  • 業務の非効率化
  • 社員間の対立
  • 経営陣・社員間の対立
  • 従来の業務方法から改善を図れない
  • 諦めの気持ちを持つ

M&A・買収後に従業員のモチベーションが低下すると、人材の大量離職などが生じるおそれがあります。もしも優秀な人材が離職してしまえば、M&Aで想定していたシナジー効果を獲得できなくなるトラブルが想定されます。

従業員のモチベーション低下を防ぐためには、M&A・買収を戦略的に行わなければなりません。

2. M&A・買収後モチベーションを維持する対策方法

M&A・買収で得られるシナジー効果を最大化するためには、M&A・買収前から綿密な計画を立てておく必要があります。特にモチベーションが下がると会社に与える悪影響は計り知れないため、モチベーション維持のための対策が必要不可欠です。

譲渡企業の人材のモチベーションを維持できれば、譲受企業と譲渡企業の両方の成長につながり、結果としてM&Aも成功しやすくなります。この章では、M&A・買収後モチベーションを維持する対策方法を経営者・役員・社員別に詳しく解説します。

経営者の場合

M&A・買収後に経営者のモチベーションが下がる理由は、キーマン条項(ロックアップ)による拘束です。リタイアして悠々自適に暮らしたい場合や新規に事業を起こしたい場合などは大きな苦痛がかかります。

可能であればキーマン条項は結びたくないのが本音ですが、M&A後の事業安定のためには元経営者の力が必要です。契約期間中は拘束されるとしても、会社や社員のことを考えるとキーマン条項を契約せざるを得ません。

その際は、キーマン条項の拘束期間は長くても3年程度に抑えておくと、負担を軽減させられます。長すぎるとモチベーションが低下し本来の役割を果たせなくなるおそれもあるので、譲受企業と譲渡企業の間で慎重に協議を進める必要があります。

【関連】M&A・会社売却後の従業員・社員・経営者の処遇を徹底解説!

役員の場合

M&A・買収後に役員のモチベーションが下がる主な理由は、待遇の悪化です。譲受企業の采配次第で、経営から遠ざけられたり、給与が下がったりすることで自主退職するケースが想定されます。

役員は社員よりも一足早くM&Aの情報を開示することが一般的なので、早期に説明する場を設けておくと良いでしょう。同時に複数人に報告するのではなく、個別に面談すれば多少の待遇の悪化は飲み込んでもらえることもあります。

面談の場には譲受企業の責任者も同席すると、説明内容に信ぴょう性が増して誠意が伝わりやすくなります。M&A・買収後も役員に勤務してもらいたい場合は、説明責任を果たすことが大切です。

なお、待遇改善は、社員のモチベーションアップを考えた場合に1つのポイントになります。しかし、待遇を改善すれば必ずモチベーションが上がるわけではない点に注意しましょう。

たとえば、昇格がモチベーションにならない人もいれば、給与のアップよりも昇格がモチベーションになる人もいます。

社員の場合

M&A・買収後に社員のモチベーションが下がる主な理由は、待遇の悪化です。給与の引き下げや勤務地・部署異動で起こる環境変化にストレスを感じて、モチベーションが低下するケースが考えられます。

最善策は雇用条件の維持ですが、実現できない場合は説明責任を果たすことが求められます。社員への情報開示タイミングは最終契約書の締結日の直前あるいは直後なので、M&A・買収に至った経緯や今後の方針などを伝えると不安やストレスを和らげることが可能です。

譲受企業と譲渡企業の企業文化の違いが大きい場合、M&A・買収後に従業員同士の衝突が発生するおそれもあります。それぞれ異なる方針で業務に携わってきているので、放置すると業務効率やモチベーションの低下リスクが高いでしょう。

対策方法としては、企業文化の事前リサーチの徹底が挙げられます。譲渡企業にどのような企業文化が形成されているかは書面などからわかりにくいため、マネジメントインタビューなどを通じて情報収集しておくことが大切です。

M&A後の統合プロセス(PMI)も重要です。M&Aで最も重要なのはM&Aの成約ではなくM&A後の統合作業であるため、M&A戦略策定段階から統合プロセスの方針を確立させておく必要があります。

【関連】M&Aの公表タイミングは?最適な時期や社員の退職・トラブルを防ぐ方法も解説

M&A・買収後モチベーションに関する相談先

M&A・買収後もモチベーションを維持するためには、事前準備が必要です。計画性を持って取り組むには特にM&A戦略策定が重要ですが、早期段階でM&Aの専門家に相談しておくと有用なアドバイスを受けながら円滑にM&Aを進められます。

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3. M&A・買収後モチベーションのまとめ

M&A・買収後も企業全体が一丸となって業務を行うためには、モチベーションの維持が必要不可欠です。モチベーションが下がる理由はさまざまなので、M&A交渉段階から譲受企業と譲渡企業が協力して取り組むことが大切です。

とはいえ、経営陣はM&Aの進行で手一杯になりやすく、役員・社員のケアまで行き届かないこともあります。その際は、M&Aの専門家にサポートを依頼するのがおすすめです。

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