減損処理とは?減価償却との違いやメリット、計算方法を解説【事例あり】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

会計用語の減損処理と減価償却の意味は全く異なるものです。減損処理と減価償却の違いを明確にするために、関連するのれんの仕訳も含め、減損処理のタイミングや計算方法、メリット・デメリットなどについて、実際の事例も交えて解説します。

目次

  1. 減損処理とは
  2. 減損処理の手順
  3. 減損処理を行うメリット
  4. 減損処理のデメリット
  5. 減損処理を行うタイミング
  6. 減損処理の計算方法
  7. 減損処理が経営に与える影響
  8. 減損処理と減価償却の違い
  9. 企業が減損処理したことを知る方法
  10. 減損処理の事例
  11. まとめ
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1. 減損処理とは

企業が行う会計処理の1つに「減損処理」というものがあります。アクティブな投資戦略やM&Aを活用する企業は、減損処理に関する十分な知識を備えておく必要があるでしょう。

減損とは

企業が何らかの固定資産に投資を行っている場合に、その対象資産に対して投資した金額が回収できない事態に陥ってしまうことは、間々あります。

このような事態において、回収可能と考え得る金額のラインまで固定資産の価値を減少させるのが、減損です。

減損処理の仕組み

企業が投資した固定資産の価値が下がる主な要因は、資産の市場価格や企業収益が低下した場合などです。

そのときに実施する減損処理の具体的な方法は、貸借対照表上に計上されている固定資産の帳簿価額を、価値が低下した分だけ減額処理します。

この減額処理された固定資産の帳簿価額は、新たな適性値となりますが、貸借対照表上の減損処理は、損益計算書にも影響がおよぶものです。

つまり、貸借対照表で減損処理した金額を、損益計算書の特別損失に減損損失として計上しなければなりません。

減損処理を行う対象・固定資産

減損処理を行う対象となるのは、以下の3つです。

  • 有形固定資産
  • 無形固定資産
  • その他の対象資産

有形固定資産

減損処理を行う対象に「有形固定資産」が挙げられます。有形固定資産とは、建物や土地・機械装置・工具備品など、企業が長期に渡って使用するために所有する資産です。

有形固定資産のうち、建設仮勘定と土地を除いた資産は毎年「減価償却」によって価額が減額されるので、これらの資産は償却資産ともいいます。

無形固定資産

有形固定資産の反対の意味を持つ「無形固定資産」も減損処理の対象です。無形固定資産とは、特許権や借地権・商標権・実用新案権・のれんなど物的な形を持たない資産を意味します。

無形固定資産には2種類があり、上記の権利を対象にした資産は「法的権利」、企業の超過収益力を内容とする資産は「営業権」です。

その他の対象資産

減損処理の対象としては、有形固定資産と無形固定資産のいずれにも属さない資産である「投資その他の資産」もあります。ただし、貸借対照表においては、固定資産の1つに分類される資産です。

大別すると「資本参加を目的とする投資」「長期資産運用」「その他の長期資産」の3つに分けられ、関係会社株式・有価証券・長期貸付金・出資金・長期前払い費用などの勘定科目があります。

減損処理に当たらない資産

なお、資産のなかには、減損処理に当たらないものもありますので、注意が必要です。具体的には、仕入れ商品が最も顕著な例になります。仕入れた商品が何らかの理由により、その価値が下落してしまうことは、よくあり得る話です。

そのようなケースにおいては、減損処理をするのではなく、会計上では評価損を行って計上することになります。したがって、減損処理の対象ではありません。

そのほかにも、金融資産や繰延税金資産などの特定の資産においては、個別の会計基準が設けられている場合があり、その場合は、一般的な減損処理の対象とはならないので、注意しましょう。

のれんも減損処理で対応?

のれんは、貸借対照表では無形固定資産として経理処理を行います。そもそも、のれんとは、被承継企業の技術力やブランド力・地理的条件・人的資源・顧客ネットワークなど、目に見えない資産価値を表した固定資産です。

したがって、のれんは企業の超過収益力と説明されることがあります。日本では、買収時にあったブランドなどの超過収益力は、時間とともに失われていくとされており、のれんは減価償却するのがルールです。

一方で、国際会計基準においては、原則、のれんの減価償却は行いません。そのため、著しくのれん価値が損なわれた場合に限り、減損処理をすることとされています。

つまり、国際会計基準を適用した方が、のれんの減価償却分だけ減損処理を行うので、利益が増加する可能性があるわけです。

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2. 減損処理の手順

減損処理は、以下の手順で行います。

  1. 固定資産をグループ分けする
  2. 減損損失の判定
  3. 減損損失の算定

①固定資産をグループ分けする

固定資産について、減損が生じている可能性を減損の兆候といいます。この兆候がある場合、減損損失を認識する必要があるかを把握するため、固定資産のグループ分けが必要です。

減損の兆候を判定する

固定資産のグループ分け後、減損の兆候を判定する必要が生じますが、全ての資産について細かく計算を実施することは、実務上、大きな手間・負担です。したがって、その前段階の基準として、主に以下のような観点で判定を行います。

  • 該当資産が計上するキャッシュフローや営業損益が継続してマイナスかどうか
  • 該当資産が造り出す製品などの市場価額に低下が見られるかどうか

②減損損失の判定

次のステップである減損損失の認識(判定)では、「固定資産の帳簿価額」と「割引前将来キャッシュフローの総額」の仕訳を比較し、減損処理を行う必要があるかを判定します。

③減損損失の算定

減損損失の算定は、対象の固定資産の帳簿価額を回収可能価額(正味売却価額と使用価値のどちらか高い方)まで減額して行います。その後、減額分は減損損失として、仕訳の特別損失に計上します。

会計処理を行う

減損処理の対象資産が1つだけであれば、シンプルにその固定資産の帳簿価額を減額させるだけです。しかし、減損処理の最初のステップで行った固定資産のグループ分けにのっとり、減損処理を行う場合には、そう単純にはいきません。

つまり、減損損失の算定によって導き出された減損損失額を、複数の固定資産に配分する必要があります。そして、どのように減損損失額を配分するかは、企業内で明確なルールを設定していくことも必須です。

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3. 減損処理を行うメリット

減損処理を行うメリットには、以下の2つが挙げられます。

  1. 減価償却費を少なくできる
  2. 利益率が向上する

①減価償却費を少なくできる

1つ目のメリットは、「減価償却費を少なくできること」です。固定資産を取得した企業は、一定期間に渡って定率法や定額法という計算方法を用いた減価償却により、少しずつ支払費用を減額していきます。

そして、固定資産を取得した後は、減価償却分だけ一定期間の利益が圧縮される形になるのです。しかし、減損処理を行った場合は、固定資産の支払額を一気に減額するので、支払予定であった減価償却費が少なくなります。

②利益率が向上する

上述のメリットに加えて、「利益率の向上」のメリットも挙げられます。

その理由は、減価償却費の利益増加に限らず、貸借対照表に記載されるROA(Return On Asset=総資本事業利益率)やROE(Return On Equity=自己資本利益率)という利益率の指標も相対的に向上するからです。

4. 減損処理のデメリット

減損処理には上述のメリットがあるものの、やはりデメリットの方が大きいといわざるを得ません。減損処理で生じるデメリットには、主に以下の3点が挙げられます。

  1. 減損処理は会社・経営者の裁量が大きく影響する
  2. 短期的な経営状態が悪化したように見える
  3. 減損処理を投資家に確認される

①減損処理は会社・経営者の裁量が大きく影響する

まず、減損処理の対象資産の1つである「棚卸資産」を例に考えてみましょう。在庫損のようなケースであれば、在庫はどの程度減ったのか、在庫の価値がいつ頃、減ったのかは状況と計算で把握できます。

しかし、工場や建物、機械などの有形固定資産になれば、もっと複雑です。自社だけではなく、子会社があるような場合、子会社の収益性も常に正確な数字を把握するのは困難となります。

このように、正しい資産価値の計算方法は容易ではないので、減損処理を行う場合は会社・経営者の裁量にゆだねられることになり、それがデメリットです。

②短期的な経営状態が悪化したように見える

減損処理を行った場合は、一度に多額の費用を計上します。したがって、計上した年度における経営状態は悪化したように見えることもデメリットといえるでしょう。

③減損処理を投資家に確認される

減損処理の金額と内容が、外部関係者(投資家)に知られることもデメリットです。減損処理は、経営状態が悪化したように見えるデメリットに加えて、その後の資金繰りにも悪影響をおよぼす可能性も問題視されるかもしれません。

これらのデメリットは避けられないものなので、減損処理は極力、行わない方がよいでしょう。

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5. 減損処理を行うタイミング

減価償却とは違い、減損処理はネガティブな印象を持たれがちな処置ですが、将来における収益確保のためには不可欠です。したがって、減損処理を行うタイミングは、正確に認識しておかなければなりません。

そこで、減損処理のタイミングに焦点を当て、解説します。

【減損処理を行うタイミング】

  1. 経営が赤字続き
  2. 固定資産を使用した事業の廃止
  3. 固定資産の価値が大きく下落
  4. 市場の悪化が著しい

①経営が赤字続き

減損処理を行うタイミングとして、「経営が赤字続き」の場合が挙げられます。なぜなら、赤字が継続しているのであれば、将来における投資資金を回収できる見込みが低いからです。

②固定資産を使用した事業の廃止

固定資産を使用した事業の廃止も、減損処理を行うタイミングだといえるでしょう。予想された収益を獲得する見込みが立たないわけですから、減損処理の対象となります。

③固定資産の価値が大きく下落

減損処理を行う対象である「固定資産の価値(市場価値)が大きく下落したとき」も、減損処理のタイミングです。景気後退によって、土地の市場価額が著しく下落したタイミングなどが例として挙げられます。

④市場の悪化が著しい

景気後退を理由として、企業の売上高や売上数量は著しく減少します。その時点で、減損処理を行うタイミングとして適切なのか調査することが大切です。

自社の事業状況や固定資産には問題がなくても、市場(外部環境)の変化により、減損処理を必要とするケースもあります。

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6. 減損処理の計算方法

減損処理の計算方法には、減損処理の過程で認識と計算の2段階で行います。この章では、それら2段階における仕訳をとおして、計算方法を解説します。

減損処理の計算

前章で述べたタイミングの場合でも、減損処理を行うわけではありません。減損処理の計算方法においては、まず、減損処理を実行するか否かの判定を行い、結果次第で減損処理を行います。

判定の過程で行うのが、「固定資産の帳簿価額」と「割引前将来キャッシュフローの総額」の仕訳の比較です。そのうえで、割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を下回る場合に、将来の収益確保の見込みがないと判定したら、減損処理の計算方法を用います。

減損処理後の減価償却の計算方法と仕訳

減損処理を行う必要があると認識した場合は、対象の固定資産の帳簿価額を回収可能価額(正味売却価額と使用価値のどちらか高い方)まで減額する処理を行います。

正味売却価額の計算方法は、固定資産の時価から見込処分費用を差し引いて算定し、使用価値の計算方法は、今後、固定資産から生み出される収益と処分時に生み出される収益の現在価値での算定です。

最後に、減額分は減損損失として、仕訳の特別損失に計上します。

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7. 減損処理が経営に与える影響

ここでは、実際に減損処理が経営に与える影響に焦点を当て解説します。

次年度以降の業績改善

前述したデメリットのように、減損処理を行った年度は経営成績が悪化するものの、次年度以降の業績は改善の見込みがあります。企業にとっては足かせとなる減価償却費が解消されるため、長期的な観点では期待できる処置といえるでしょう。

投資家心理の影響による株価の下落

投資家への悪影響はデメリットの項で触れました。減損処理は事業が失敗したことを示すため、投資家心理は決してプラスの印象を持たないでしょう。したがって、企業成長率や収益率がないと判断されることから、短期的な株価下落の可能性があります。

減損処理の相談は専門家へ

減損処理の影響は決して好ましいといえるものではなく、さらに減損処理は正確に算定する必要にも迫られます。減損処理を行った時点で事業の失敗だと見なされますが、最悪の事態を避けるためには不可欠な処置です。

このように、減損処理では確実な理解と手順を踏む必要があるので、減損処理を行う場合はM&A仲介会社など専門家への相談がおすすめでしょう。

中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが、親身になって一括サポートいたします。

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8. 減損処理と減価償却の違い

この章では、会計用語として類似して見える、減損処理と減価償却の違いについて明らかにします。

減価償却とは

減価償却とは、時間の経過によって価値が減少する固定資産を取得した場合に行う会計処理のことです。具体的には、固定資産を取得するための支払額を、耐久年数を基に費用計上を行います。

そして、減価償却は物品の取得に費やした支払額の全てを、取得時の年度で費用とするものではありません。減価償却は、費用収益対応の原則の考え方(収益を得るために利用した期間に応じた費用計上)を実現させ、企業の業績を正しく捉えることを目的としています。

減価償却を行う対象

減価償却を行う対象は、前述の有形固定資産と無形固定資産、投資その他の資産です。加えて、牛や馬・リンゴ樹・アスパラガスなどの「生物」に分類される物も対象となります。ただし、以下に挙げるものは、減価償却を行う対象ではありません。

  • 事業用ではないもの
  • 価値が下がらないもの(土地や骨董品)
  • 事業用として使用されていないもの(事業用として購入したが不使用)
  • 使用可能期間が1年未満のもの
  • ソフトウェア制作計画の変更で不要になった費用
  • 棚卸資産
  • 有価証券
  • 繰延資産
  • 取得価額が10万円未満のもの

減損処理と減価償却の違い

減損処理は、固定資産から生み出される収益を獲得する見込みがないと判断した時点で、その赤字分を特別損失の仕訳で計上する考え方に基づいて行います。

一方、減価償却は、上述の特徴から「節税」として活用されるものです。また、減損処理との大きな違いとして、会計処理の時点で現金が出ていかないことも特筆されます。

したがって、利益が大きくなると見込まれる時期に、あえて減価償却の対象資産を取得し、減価償却費で利益を減少させることにより、法人税負担を軽くすることが可能です。

このように、会計処理を行うタイミングが限定される減損処理と、それが広範囲のタイミングである減価償却という違いがあります。

臨時償却と減損処理の違い

臨時償却とは、減価償却が適用されている資産において、予測できなかった事由により、残存価額や適用中の耐用年数に非合理が生じてしまったときに行われる会計処理です。

具体的には、減価償却中資産の残存価額の修正や耐用年数の短縮処理などが実施されます。臨時的に実施される点では、臨時償却と減損処理には類似点が見いだしますが、臨時償却は過去に対する修正です。

一方、減損処理は、将来予測を基準とした会計処理といえますから、その点、両者は大きく異なるものになります。

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9. 企業が減損処理したことを知る方法

減損処理をした場合、詳細を確認する方法は、「その年の減損処理の金額」と「減損処理の内容」の2種類です。

まず、減損処理の金額は、企業の損益計算書の仕訳「特別損失」を確認します。減損処理とは特別損失の1つであるため、特別損失の仕訳にはその時期に発生した減損処理の合計額が表示されているのです。

次に、減損処理の内容は、有価証券報告書の「注意事項」を確認します。そのなかに損益計算書関係の項目があるので、ここで減損処理の内容を確認可能です。

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10. 減損処理の事例

この章では、上場企業で実際に行われた減損処理の事例を紹介します。

  1. 日本郵政の減損処理
  2. ジャパンディスプレイの減損処理
  3. キリンホールディングスの減損処理
  4. ミクシィの減損処理
  5. 東芝の減損処理
  6. セブン&アイ・ホールディングスの減損処理
  7. シャープの減損処理
  8. ソフトバンクの減損処理

①日本郵政の減損処理

2020(令和2)年9月、日本郵政は、2020年9月中間決算で3兆円の減損処理をすることを発表しました。この減損処理の内容は、日本郵政が89%を保有しているゆうちょ銀行株の株価が著しく下落したことに伴うものです。

②ジャパンディスプレイの減損処理

2019(令和元)年5月、ジャパンディスプレイは、2019年3月期第4四半期連結決算において、752億円の減損損失計上を発表しました。減損の内容は、スマートフォン向け生産設備の収益性低下に伴う減損処理です。

③キリンホールディングスの減損処理

キリンホールディングスは、豪州の子会社ライオンの飲料事業について、事業譲渡の検討を進める段階で資産の評価減を認識したとして、2019年12月期第1四半期に、減損損失約571億円を計上する予定だと公表しています。

④ミクシィの減損処理

ミクシィは、連結子会社が運営していた「チケットキャンプ」のサービス終了により、減損損失1億3,100万円が生じることとなり、2018(平成30)年3月期第3四半期の連結決算において、減損処理を行っています。

⑤東芝の減損処理

2017(平成29)年2月、不正会計が公になり厳しい目が向けられていた東芝は、2016年4~12月期決算公表の1カ月延期を発表するとともに、アメリカにおける原子力発電事業ののれんの減損損失として、7,125億円の減損処理をする見通しであることを明かしました。

⑥セブン&アイ・ホールディングスの減損処理

セブン&アイ・ホールディングスは、百貨店事業とスーパーストア事業の収益計画を見直す過程において、両事業での店舗に関わる減損損失と、百貨店事業ののれんの減損損失が生じ、2017年2月期第2四半期決算で減損処理をしました。減損損失額は合計606億円です。

⑦シャープの減損処理

シャープは、2015(平成27)年3月期第4四半期の連結決算において、合計995億8,600万円の減損処理を行いました。その内容は、収益性低下により投資額回収が見込めなくなった生産設備と、生産体制見直しで集約予定となった生産設備の減損損失です。

⑧ソフトバンクの減損処理

2015年2月5日に公表されたソフトバンクの減損処理の事例です。同社の米国子会社であるスプリントについて、ソフトバンクは会計基準の違いにより減損処理をしないと発表しました。

減損処理の認識の段階において、スプリントは減損損失として計上したものの、ソフトバンクは回収可能額が公正価値から処分コストを差し引いた出資比率で案分した価額となっており、連結簿価を上回っていることから前述の結果に至っています。

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11. まとめ

減損処理は資産の市場価額の低下により、投資額の回収見込みがない場合に行う処置ですが、似たような印象のある減価償却とは区別し、メリット・デメリットや経営に与える影響を把握しておく必要があります。本記事の概要は、以下のとおりです。

【減損処理を行う対象】

  1. 有形固定資産
  2. 無形固定資産
  3. その他の対象資産

【減損処理のメリット】
  1. 減価償却費を少なくできる
  2. 利益率が向上する

【減損処理のデメリット】
  1. 減損処理は会社・経営者の裁量が大きく影響する
  2. 短期的な経営状態が悪化したように見える
  3. 減損処理を投資家に確認される

【減損処理と減価償却の違い】
  • 減損処理⇒獲得可能な利益が減少したことによる価値の減少の影響
  • 減価償却⇒固定資産を使用することによる劣化の影響

減損処理の仕組み上、マイナスの要因を含んでいるため、減価償却と比較すると、やはり経営に与える影響は決して良いものではありません。

さらに、減損処理は会社・経営者の裁量が大きく影響するので、M&Aの専門家のサポートを受けながら処置を行うことをおすすめします。

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