スタートアップのM&A事例30選!売却額やスキームを解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

スタートアップは、短期間で新たなビジネスモデルの確立を目指す企業をさします。大企業から注目を集めており、スタートアップのM&A件数は増加中です。今回は、スタートアップのM&Aで利用されるスキーム・スタートアップのM&A事例・売却額ランキングを中心に紹介します。

目次

  1. スタートアップのM&A
  2. スタートアップM&Aの売却額TOP10
  3. スタートアップのM&Aで用いられるスキームまとめ
  4. スタートアップのM&Aは増加している
  5. スタートアップのM&Aにあるメリット
  6. スタートアップのM&Aにあるデメリット
  7. まとめ
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1. スタートアップのM&A

スタートアップは、意欲的に新たなビジネスモデルの確立を目指しており、投資家からだけではなく大手企業からも注目を集める有望な企業のことです。

スタートアップが生み出したビジネスモデルや革新的な技術を取り込むべく、最近では大手企業によるM&Aの買収が活発化しています。

スタートアップの定義

スタートアップとは、短期間で革新的な技術・サービスを生み出して急成長を目指す、創業から間もない企業のことをいいます。

単純に新興企業をさすのではなく、画期的な事業に取り組んでいることがポイントです。安定した経営ではなく急成長を目指すという特徴から、事業が成長を遂げるまでは資金回収が望めません。

スタートアップは、将来性のある事業形態を投資家やVCなどにアピールして融資を募って活動資金を調達します。

スタートアップにある最大の特徴は、イグジットをM&AやIPO(株式公開)に定めている点です。ほとんどのスタートアップは、M&AやIPOで投資資本の回収を目指します。

M&Aとは

M&Aとは、企業の合併・買収を意味する言葉です。最近では後継者問題や人材不足などの企業が抱える経営課題を解決する目的で実施されるケースが多いですが、スタートアップにおけるM&Aの会社売却では目的が根本的に異なっています。

スタートアップはいずれかのタイミングで投資資本を回収する必要があり、このタイミングを起業段階からM&Aとして定めているケースがほとんどです。

その一方で、大手企業は目まぐるしく変化するビジネス環境への対応に追われているため、成功したスタートアップのビジネスモデルや新技術を取り込む戦略は非常に効率的です。以上のことから、スタートアップのM&Aでは、売り手と買い手の利点がマッチしています。

2. スタートアップM&Aの売却額TOP10

この章では、2014年〜2019年に実施されたスタートアップのM&A事例の中から、高い売却額順のランキング形式で紹介します。

【スタートアップM&Aの売却額TOP10】

  1. KDDIによるソラコム買収
  2. ポラリスによるBAKE買収
  3. mixiによるチケットキャンプ買収
  4. ヤフーによるdely買収
  5. KDDIによるnanapi買収
  6. DMMによるBANK買収
  7. フィスコによるZaif買収
  8. LINEによるFIVE買収
  9. チェンジによるトラストバンク買収
  10. グリーによる3ミニッツ買収

それぞれの事例を詳しく見ていきましょう。

①KDDIによるソラコム買収

ソラコムは、2014年に設立されたMVNOのスタートアップです。通信プラットフォーム「SORACOM」を主力としており、IoT管理ソリューションを提供していました。

2017年に行われた本件の巨大な投資の背景には、ソラコムの経営基盤の強化やIoT普及の促進効果を見込んだことが強く影響していると推測されています。

譲受企業 KDDI
譲渡企業 ソラコム
スキーム 株式譲渡
譲渡価格 200億円

②ポラリスによるBAKE買収

BAKEは、2013年設立の洋菓子店です。創業から3年で年間売上高36億円を記録しており、国内外に50店舗を構えるほどの急成長を見せました。

2017年に行われた本件M&Aでは、BAKEの株式上場を見据えており、今後も継続して人的・物的支援を行っていくと公表されています。

譲受企業 ポラリス
譲渡企業 BAKE
スキーム 株式譲渡
譲渡価格 100〜150億円

③mixiによるチケットキャンプ買収

フンザはチケットフリマサービス「チケットキャンプ」を運営しており、コンサートや演劇などのチケットをユーザー同士で取引できるプラットフォームを提供するスタートアップです。

2015年のM&Aでは、両社にあるノウハウの共有によって事業拡大を図るとともに、将来的にはmixiとの連携も視野に入れていると明かしています。

譲受企業 mixi
譲渡企業 フンザ(チケットキャンプ)
スキーム 株式譲渡
譲渡価格 115億円

④ヤフーによるdely買収

delyは、料理レシピ動画「クラシル」を運営するスタートアップです。2016年にリリースしてから2年で1,000万DLを達成するなど急成長を見せるクラシルに大きな期待を寄せたことで、2018年にM&Aが実施されました。

譲受企業 ヤフー
譲渡企業 dely
スキーム 株式譲渡
譲渡価格 93億円

⑤KDDIによるnanapi買収

nanapiは、暮らしの情報サイト「nanapi」を運営するスタートアップです。KDDIは、2014年にインターネットコンテンツ開発力に強みを持つnanapiとのノウハウ共有によって、基盤強化と事業規模の拡大を図っています。

譲受企業 KDDI
譲渡企業 nanapi
スキーム 株式譲渡
譲渡価格 77億円

⑥DMMによるBANK買収

BANKは、アイテムをすぐさまキャッシュに変えられるアプリ「CASH」の開発・運営を手掛けるスタートアップです。

DMMの資金力活用によりさらなる事業展開が望めるとして、2017年にM&Aが実施されました。

譲受企業 DMM
譲渡企業 BANK
スキーム 株式譲渡
譲渡価格 70億円

⑦フィスコによるZaif買収

テックビューロはZaifのハッキングにより70億円相当の仮想通貨が流通したことで、金融庁より業務改善命令を度々下されていることが報じられていました。

これにより、テックビューロは事業存続が困難であるという判断から、主力事業であるZaifの事業譲渡および解散を決定したのです。

2018年、フィスコに仮想通貨取引所の事業を譲渡したうえで、テックビューロは解散手続きを行うと発表しています。

譲受企業 フィスコ
譲渡企業 テックビューロ(Zaif)
スキーム 事業譲渡
譲渡価格 55億円

⑧LINEによるFIVE買収

FIVEは、運用型広告「Video Network by FIVE」や「Moments by FIVE」などの動画広告配信プラットフォームを提供するスタートアップです。

2017年、LINEは、リリースからわずか3年で広告主が400を超えるほど急成長したFIVEと連携することで、相互の広告プラットフォーム強化を図ると発表しています。

譲受企業 LINE
譲渡企業 FIVE
スキーム 資本業務提携
譲渡価格 51.1億円

⑨チェンジによるトラストバンク買収

トラストバンクは、寄付先の自治体や返礼品を調べる際に便利なサービス「ふるさとチョイス」などを運営するスタートアップです。

2018年、IT関連企業であるチェンジは、サービスのリリースからわずか3年で月間PV(ページビュー)が1億を超えるほどに大きく成長したトラストバンクを迎い入れてシナジーの獲得を図るものと見られています。

譲受企業 チェンジ
譲渡企業 トラストバンク
スキーム 株式譲渡
譲渡価格 48億円

⑩グリーによる3ミニッツ買収

3ミニッツは、オリジナル動画コンテンツの企画・制作を行うスタートアップです。2017年の買収では、グリーが持つインターネット事業のノウハウと人材を3ミニッツに投入して、さらなる事業規模の拡大を図ると発表しています。

譲受企業 グリー
譲渡企業 3ミニッツ
スキーム 株式譲渡
譲渡価格 43億円

3. スタートアップのM&Aで用いられるスキームまとめ

スタートアップのM&Aで主に使われるスキームは、以下のとおりです。

株式譲渡 株式を売却することで経営権を移転させる手法
株式交換 発行済株式のすべてを親会社に取得させる手法
株式移転 発行済株式のすべてを新規設立される株式会社に移転させる手法
合併 2つ以上の法人格を1つに統合させる手法
事業譲渡 会社が手掛ける事業の一部を切り離す手法
会社分割 会社を複数の法人格に分割させ資産・事業を継承させる手法

4. スタートアップのM&Aは増加している

従来はIPO(株式公開)をイグジットに定めるスタートアップが多く見受けられましたが、昨今ではM&Aを果たすスタートアップが増加傾向にあります。

スタートアップのM&Aが盛んに実施される背景には、大手企業のスタートアップに対する需要の高まりが深く関係しているのです。多様化するニーズに対応するには、自社内でリソースを割いて開発・育成するよりも、積極的にビジネスモデルを生み出すスタートアップを取り込む方が効率的という考え方が主流となりつつあります。

こうした流れは今後も強まっていくと考えられており、M&Aをイグジットに定めたスタートアップを目指す起業家も増加中です。

5. スタートアップのM&Aにあるメリット

スタートアップのM&A件数が増加する背景には、買い手・売り手の双方でさまざまなメリットが享受できる点も深く関係しています。どのようなメリットが期待できるのか、あらかじめ把握しておくことで、M&A戦略を策定するうえでも役立つのです。

ここでは、スタートアップのM&Aにあるメリットを買い手と売り手ごとに紹介します。

買い手側のメリット

買い手側の代表的なメリットは、以下のとおりです。
 

  • シナジー効果を獲得できる
  • 事業領域・事業分野を拡大できる
  • 経営戦略の策定・実施スピーディーにこなせる
  • 既存事業を強化できる
  • 優秀な人材をまとめて確保できる
  • 新規事業に参入できる
  • 事業基盤を強化できる
  • 斬新なアイデアを吸収できる

このように、スタートアップのM&Aによる買収で獲得できるメリットは多種多様であるため、多くの企業が実施を検討しています。

売り手側のメリット

これに対して、売り手側のメリットを以下にまとめました。
 

  • 事業シナジー獲得による発展が期待できる
  • 経営者が抱える個人保証を解除できる
  • 従業員の雇用を確保できる
  • 取引先との関係を維持できる
  • のれん加算により膨大な売却利益を獲得できる
  • 新規事業への投資を行える
  • 後継者不足・事業承継問題を解消できる
  • 財務基盤を安定化させられる

上記のように、スタートアップのM&Aでは売り手側もさまざまなメリットを期待できるため、実施件数が増加しているのです。

6. スタートアップのM&Aにあるデメリット

スタートアップのM&Aにはデメリットも存在しています。デメリットを把握しないままM&Aに着手してしまうと、想定していたメリットが得られないばかりか、M&A自体に失敗してしまうこともあるため注意が必要です。

ここでは、スタートアップのM&Aに潜むデメリットを買い手と売り手ごとに紹介します。

買い手側のデメリット

買い手側の代表的なデメリットは、以下のとおりです。
 

  • 売り手との企業統合(PMI)が完了するまでに多くの時間が必要となる
  • 費用に見合ったシナジー効果が獲得できないことがある
  • 優秀な人材を流出させてしまうおそれがある
  • のれんの減損リスクが生じる
  • 簿外債務や偶発債務が発覚する可能性がある

このように、買い手側にはさまざまなデメリットがあるため、これらを考慮したうえで慎重にM&A実施に踏み切る必要があります。

売り手側のデメリット

これに対して、売り手側のデメリットを以下にまとめました。
 

  • 希望どおりの条件で売却できる買い手が見つからない可能性がある
  • 買い手との企業統合に多くの時間がかかる
  • 取引先・提携先に迷惑をかけるおそれがある
  • 従業員のモチベーションが低下する可能性がある
  • 顧客離れが生じるおそれがある

上記のように、スタートアップのM&Aは売り手側にもさまざまなデメリットを生じさせるため、これらの存在を把握したうえで売却しなければなりません。

7. まとめ

今回は国内の事例に絞って紹介しましたが、海外ではスタートアップのM&Aがさらに活発化しています。

今後は国内スタートアップのM&Aの動きもより強まっていく見込みであり、大手企業とスタートアップ双方の動向に目が離せません。

【スタートアップのM&A事例30選】

  1. ワールドによるラクサス・テクノロジーズ買収
  2. イトクロによるセンジュ買収
  3. エルテスによるエフエーアイ買収
  4. アイモバイルによるオーテ買収
  5. エムスリーによるメディカルエージェンシー買収
  6. イードによるネットショップ総研買収
  7. 日本経済新聞社によるイベントレジスト買収
  8. ミクシィによるスフィダンテ買収
  9. アクセルによるbitcraft買収
  10. イノベーションによるコクリポ買収
  11. エン・ジャパンによるJapanWork買収
  12. リーディングマークによるキャリアベース買収
  13. ユーグレナによるMEJ買収
  14. 夢真ホールディングスによる侍買収
  15. 新生銀行によるフィナンシャル・ジャパン買収
  16. マイナビによるエクスメディオ買収
  17. ピー・シー・エーによるKeepdata買収
  18. BitStarによるメゾワン買収
  19. パーソルキャリアによるライボ買収
  20. オウケイウェイヴによるLastRoots買収
  21. アイレップによるシェアコト買収
  22. ミクシィによるチャリ・ロト買収
  23. クルーズによるイズム買収
  24. エン・ジャパンによるアウルス買収
  25. リーディングマークによるネクスベル買収
  26. フランジアによるグルーヴ・ギア買収
  27. アイフリークモバイルによるフリー買収
  28. ブランジスタによるDugong買収
  29. じげんによるマッチングッド買収
  30. TBMによるバイオワークス買収

【スタートアップM&Aの売却額TOP10】

  1. KDDIによるソラコム買収
  2. ポラリスによるBAKE買収
  3. mixiによるチケットキャンプ買収
  4. ヤフーによるdely買収
  5. KDDIによるnanapi買収
  6. DMMによるBANK買収
  7. フィスコによるZaif買収
  8. LINEによるFIVE買収
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