2023年04月26日更新
事業承継の費用相場はどれくらい?相場や補助金制度について相談先別に解説!
本記事では、事業承継で必要になる費用や相場を解説します。事業承継とは、親族や法人などを後継者として事業を引き継ぐことです。事業承継を行う際は、コンサル・弁護士・税理士に依頼して進めるのが一般的であり、当然費用が発生します。事業承継を検討している方は必見です。
1. 事業承継にかかる費用
事業承継を行う際は、さまざまな手続きが必要になり税金もかかります。経営者自身で進めるのが困難な部分も多く、専門家に依頼することが一般的であるため、依頼に関する費用もかかるでしょう。ここでは、事業承継を行うのに必要な費用を解説します。
相続税
相続税とは、相続や遺言に基づいて得た資産や相続時精算課税が適用された資産に課せられる税金です。
相続税の計算では、これらの資産から債務・葬式費用・非課税とされる財産、さらに基礎控除額を引いて課税対象となる遺産総額を算出します。
算出された遺産総額に各相続人の相続分を掛け、得られた金額に税率を掛けます。つまり、合計した相続額に各相続人の割合を掛け各種の控除を引くと、各相続人に対する相続額が算出される仕組みです。
相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度は、オーナー経営者である父母または祖父母が健在なうちに子や孫へ贈与する生前贈与のような制度で、2,500万円までは贈与税が特別控除されます。限度額に達するまで何回でも控除でき、2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。
要件は贈与者が60歳以上であることや、贈与を受ける者が18歳以上(2022年4月より改正)の子・孫である必要があります。贈与額が2,500万円を超えた場合、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかるでしょう。贈与者が亡くなった場合は、相続税から控除できます。
事業承継税制とは
事業承継税制とは、経営承継円滑化法で認められた法人・個人事業者の資産を後継者が譲り受ける際、適用される相続税の猶予制度です。
適用されるのは、法人では相続または贈与で非上場企業の株式などを譲り受けるケース、個人事業者は青色申告の申請者から相続または贈与で事業に関する資産を譲り受けるケースです。
納税猶予について
事業承継税制では、特例措置に当てはまる法人の場合、5年の間に(平成30年4月1日~令和5年3月31日)特例承継計画を差し出し確認を受けることで、10年の間相続税の納付(すべての割合)が猶予されます(期間・平成30年1月1日~令和9年12月31日)。
すべての株式が対象ですが、猶予期間中に引き継いだ株式を譲渡してしまうと、相続税を納税義務が発生するので注意が必要です。
なお、個人事業者の場合は平成31年1月1日~令和10年12月31日における相続で、特定事業用資産を得たケースに対し、10年までの期間(平成31年1月1日~令和10年12月31日)は、すべて金額が納付猶予の対象とされます。
しかし、対象事業をやめてしまったり青色申告の承認が無効になったりすると、利子を含む相続税のすべてまたは一部を支払わなければなりません。
事業承継税制については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
贈与税
贈与税とは、個人が保有する資産を無償で受け取った際にかかる税金(国税)です。個人から生前に資産を贈られた場合、暦年課税か相続時精算課税のどちらかで税金を納めます。
暦年課税は、1年の間(1月1日~12月31日)に贈られた合計額から、基礎控除の110万円を引いた額に対して税金が課せられます。
相続時精算課税は、課税方式を選んだ年の期間(1月1日~12月31日)に贈られた合計額から、2,500万円を引いた額に対して税金がかかるでしょう。
2,500万円の控除を受けるには、期間内に申告書を提出しなければなりません。これまでにいくらかの控除を受けている場合は、控除された額を引いた額(2,500万円-これまでの控除額)が、今年度の控除額になります。
事業承継税制によるメリット
相続税と同じく、法人(非上場)・個人事業者(青色申告での申請を済ませている)からの贈与では、事業承継税制を活用した納付猶予が受けられます。
法人の場合は10年間(平成30年1月1日~令和9年12月31日)における猶予期間が適用され、すべての株式を対象として前経営者の死による贈与税の一部またはすべてが免除されます。
後継者の対象は3人までなので、一般措置よりも課税の負担を抑えられるでしょう。
個人事業者に対する贈与では一定期限までに贈与が実行され、申告や書類の提出・申請・確認などを済ませましょう。特定事業用資産に対する贈与税のすべてにおいて10年間(平成31年1月1日~令和10年12月31日)における納付の猶予が認められます。
法人税
法人税とは、法人が得た所得に対して課せられる税金です。M&Aによる事業承継の場合、譲渡した資産と譲渡額の差によって法人税が課せられ、譲渡した資産を譲渡額が上回ると、生じた差(利益分)が課税対象になります。
消費税
事業承継の場合、原則として消費税はかかりません。しかし、M&Aによる事業承継では、譲り受けた資産を課税対象と非課税対象に分けて、消費税の対象となる資産のみ税金が課せられます。
登録免許税
不動産(土地・建物)を得たことを登記する際に課せられる税金を登録免許税といいます。事業承継により土地・建物の所有権を譲り受けて移転登記をした際は、それぞれの不動産価格に税率を掛けた額を納めます。
【土地の所有移転登記】
- 売買のケース:土地の価格×20/1,000(2021年3月31日までは15/1,000)
- 相続のケース:土地の価格×4/1,000
- 贈与のケース:土地の価格×20/1,000
【建物の所有移転登記】
- 売買のケース:建物の価格×20/1,000
- 相続のケース:建物の価格×4/1,000
- 贈与のケース:建物の価格×20/1,000
不動産取得税
不動産取得税(地方税)とは、家屋または土地を売買・贈与で得た際に課せられる税金です。法人と個人のどちらも対象となり、得た不動産の価格に対して4%の税がかかります。
ただし、先代から住宅または住宅用の土地を承継する場合、2021年3月31日までは税率が3%になります。
M&Aの費用
事業承継をM&Aで行う際は仲介を依頼する費用がかかり、主な手数料には相談料・着手金・中間金・月額費用・成功報酬があります。
その他、自社の売却価格を検討するための企業価値算定料なども必要になり、各手数料の相場は以下のようになっています。
【M&Aの費用】
- 相談料:1万円以下
- 着手金:数百万円以下
- 中間金:成功報酬額の10~20%、または100万~200万円ほど
- 月額費用:100万円以下
- 成功報酬:移動資産、または譲渡価格の1~5%
- 企業価値評価料:数十万円以下
ただし、最近では完全成功報酬型を採用している仲介会社も多いので、どの手数料が必要になるのかは事前に確認するようにしましょう。
事業承継税制による恩恵
中小企業向けの軽減措置を活用すれば、登録免許・不動産取得税の課税額を下げることが可能です。
ただし、事業承継税制による恩恵を受けるためには、経営力向上計画の作成・提出・承認の必要や適用証明申請書の提出が必要になります。制度の適用が認められる時期が定められているので、事前に把握しましょう。
【制度の適用期間】
- 平成30年7月9日~令和2年3月31日
【登録免許税の軽減措置】
- 事業で必須となる資産の譲受に対する移転登記:1.6%(通常は2%)
- 合併に対する移転登記:0.2%(通常は0.4%)
- 分割に対する移転登記:0.4%(通常は2%)
【事業譲渡に限った不動産取得税の軽減措置】
住宅・土地またはこれら以外の家屋の価格×1/6にあたる額が控除されます。
- 住宅・土地に対する税率:2.5%(通常は3%)
- 住宅・土地以外の家屋に対する税率:3.3%(通常は4%)
2. 【相談先別】事業承継の費用
事業承継に掛かる費用は、どの専門家に依頼するかによっても変わってきます。この章では、それぞれの専門家ごと必要となる費用を解説します。
- 事業承継をM&Aアドバイザーに相談した場合の費用
- 事業承継をコンサルティングに相談した場合の費用
- 事業承継を弁護士に相談した場合の費用
- 事業承継を税理士・会計士に相談した場合の費用
事業承継をM&Aアドバイザーに相談した場合の費用
事業承継をM&Aアドバイザーに相談した場合、事業承継の計画や資金対策などを相談するでしょう。総合的に支援するコンサルティングサービスの場合、月額で30万円程度から依頼できるようです。昨今は、月額報酬のかからない会社もあるため、月額報酬の目安は、無料〜数百万円程度と考えておくと良いでしょう。
労務、財務、営業などのデューデリジェンスを依頼する場合、それぞれ15万円程度の料金がかかります。この場合、基本的には買い手側が負担する費用となるでしょう。
M&Aの候補先を選定する場合は、M&Aを進めるため着手金や相談料が発生するケースもあります。月額報酬と同じく、着手金や相談料も無料の場合もあるでしょう。着手金や相談料がかかる場合は、数十万〜数百万円程度の料金を設定している会社もあります。
成約金額に応じた成功報酬制の場合が多いでしょう。
事業承継をコンサルティングに相談した場合の費用
コンサルティングでは、現状の把握や承継計画の策定・株式の評価・税金対策・スキームの提案と実行・資金調達の支援などを行います。
月額費用の相場は数十万円程度となっており、事業承継の完了までに半年から1年ほどかかれば百数十万~200万強の費用がかかると考えられます。
その他、前述した成功報酬なども必要になるため、どの程度の費用がかかるのかは事前に確認しておくほうがよいでしょう。
事業承継のコンサル費用の相場や仕事内容については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
事業承継を弁護士に相談した場合の費用
弁護士に事業承継を依頼すると、相談料・着手金・成功報酬・実費といった費用が発生するため一般的な相場は以下のようになっています。
【弁護士への相談費用】
- 相談料:5千~1万円/30分
- 着手金:30万~50万円
- 成功報酬:得られた利益、または承継資産×料率(弁護士ごとに異なる)+固定報酬
- 実費:宿泊・交通費、郵便代、他の士業に支払う費用など
成功報酬は300万円を超える利益・承継資産は数%~10%ほどの料率となっており、金額ごとに固定報酬を設けているため最低でも30万円ほどの費用がかかると考えられます。
コンサルや他の専門家に依頼する場合と同じく、おおよその費用は事前に確認するほうがよいでしょう。
事業承継を税理士・会計士に相談した場合の費用
税理士は事業承継に対して、相談・各段階での支援・総合的な支援・顧問契約のサービスを行っています。それぞれの支援に掛かる費用は下記のとおりです。
【税理士への相談費用】
- 相談:1万円~(無料の場合あり)
- 各段階での支援:数十万円~
- 総合的な支援:30万円~
- 顧問契約:数十万円~
事業承継の費用・料金については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
3. 事業承継の相談費用の相場
前章で紹介したように事業承継の費用は相談先ごとに異なりますが、おおむね100万~300万円程度が相場といえるでしょう。しかし、相談先だけでなく支援内容や完了までの期間、利益・承継資産額、事業承継の手段によっても、必要な金額は変わってきます。
総合的な支援を受けるのか、長期に渡る支援を求めるのか、はたまた限られた支援だけを選ぶかなど、受ける支援を明確にしてから自社の事業承継に適した相談先を選ぶことが大切です。
なお、各都道府県にある事業承継・引継ぎ支援センターなどでも無料相談や専門家の紹介などを行っているため、できるだけ費用を抑えたい場合は、このような公的機関に相談してみるのも有効策です。
4. 事業承継の費用を削減する補助金制度とは
後継者に経営を任せたいと考えていても、手元の資金が不足しているなどの理由により、事業承継をためらうこともあるかもしれません。しかし、事業承継を後押ししてくれる補助金や融資・保証制度があるので、自社が利用可能かどうかを確認してみましょう。
事業承継補助金の内容
事業承継・M&Aの実施をきっかけとして経営の方向性を変えたい事業者に対し、発生する経費の一部を補助してくれる制度を事業承継補助金といいます。
補助金のタイプは2つがあり、事業承継に対応しているのはⅠ型です。人件・設備・広告費など12の経費は、2/3(ベンチャー型)または1/2以内(ベンチャー型以外)の補助率に応じた補助金が利用できます。
【補助金の上限額】
- ベンチャー型:既存事業の廃業・事業転換が付帯する/600万円、付帯しない/300万円
- ベンチャー型を除く:既存事業の廃業・事業転換が付帯する/450万円、付帯しない/225万円
既存事業の廃業・事業転換を付帯するケースのほうが補助金の上限が高く設定されていますが、これは廃業・事業転換を図る際、解体費などの経費を補助金対象に加えているためです。
事業承継期間が2017年4月1日~2020年12月31日までとされているので、自社の事業承継が定められた基準に当てはまるなら、経費の補助を検討するとよいでしょう。
融資・保証制度の内容
事業承継を行うにあたり資金が不足している場合、融資制度や保証制度を利用することも可能です。ここでは、各制度の詳細を解説します。
融資制度の詳細
日本政策金融公庫では、事業承継の実施を検討している事業者に向けて、7億2千万円を限度とする融資制度を設けています。
融資を受けるためには条件に該当する必要があり、融資の利率は該当の条件ごとに異なります。返済する期間は設備資金で20年以内、運転資金で7年以内です。
【融資を受けられる条件】
- 現在の経営者と後継者が、中期的な事業承継の計画を立てている
- 経営の安定化を目的とした経営権などの確保で、事業承継・事業の集約を実施する
- 事業承継に合わせて第二創業・新しい試みに着手する
- 中小企業経営承継円滑化法の認定を受けた事業者(中小企業)または認定を受けた事業に取り組んでいない個人
- 金融機関から個人保証の解除などの申し出をきっかけとして融資が受けられないものの、公庫による融資で個人保証の免除が認められている
【利率】
- 1の場合:4億円までは0.71~0.8%/4億円以上は1.11~1.2%
- 2の場合:1.11~1.2%(特定の条件に該当するなら、0.71~0.8%または0.46~0.55%)
- 3の場合:4億円までは0.46~0.55%/4億円以上は1.11~1.2%
- 4の場合:4億円までは0.71~0.8%または0.46~0.55%/4億円以上は1.11~1.2%
- 5の場合:1.11~1.2%
保証制度の詳細
全国51カ所に設けられた信用保証協会は、小規模・中小企業の保証人として金融機関からの融資を支援する公的な機関です。通常の場合、保証内容は普通保険が2億円、無担保保険が8,000万円、特別小口保険では1,250万円までとしています。
しかし、経営承継円滑化法による認定を受けた事業者(法人・個人事業者)は、拡大された保証を受けられます。
5. 事業承継の費用に関する相談先
事業承継の相談先には、M&A仲介会社がおすすめです。M&A仲介会社はM&Aを専業としているため、自社に最適な手法で事業承継を進められます。
もし事業承継をお考えの場合は、M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、中小企業のM&Aと事業承継をサポートするM&A仲介会社です。主に中小・中堅規模の案件を取り扱っており、日本全国どこでもサポートが可能です。その他、案件ごとに知識と経験豊富なM&Aアドバイザーがクロージングまでフルサポートします。
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6. 事業承継の費用相場のまとめ
事業承継にかかる費用について、相談先ごとの費用や相場などを紹介しました。事業承継を行う際は譲渡する資産に対して税金がかかるため、どのような費用が必要になるかを事前に把握しましょう。
なお、ここで紹介した費用相場はあくまでも目安となる金額ですので、どのくらい費用がかかるかも事前に把握する必要があります。
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