事業譲渡の金額・価格の算定方法を解説【事例あり】

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

当記事内では、M&Aスキームの一つである事業譲渡の金額・価格について解説しています。事業譲渡金額・適正価格を知るためにはどうすれば良いのか、事業譲渡に関する税金などを知りたい方は、ぜひチェックしてください。事業譲渡の金額・価格の事例についても紹介しています。

目次

  1. 事業譲渡とは?
  2. 事業譲渡金額が適正価格かを知るには?
  3. 事業譲渡金額の算定方法
  4. 事業譲渡における税金
  5. 事業譲渡の金額への考え方
  6. 事業譲渡の価格の事例
  7. まとめ
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1. 事業譲渡とは?

事業譲渡とは

今回は、M&A手法の一つである「『事業譲渡』の金額・価格」について詳しく解説していきます。これから事業譲渡の実施を検討されている方、事業譲渡について詳細に知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

この章では、事業譲渡の価格・金額について説明する前に、そもそも「事業譲渡」とは何なのかについて簡潔に解説します。

「事業譲渡」とは、M&Aにおける手法の一つで、企業が持つ「事業」の一部または全部を譲渡することです。M&Aによって事業譲渡を実施するメリットには、以下のようなものが挙げられます。

事業を譲渡する側のメリット

  • 後継者問題を解決できる
  • 従業員の雇用を確保することができる
  • 売却したい事業だけを譲渡できる
  • 譲渡利益を得ることができる etc.

事業を譲受する側のメリット

  • 自社に必要な「人材・技術・ノウハウ・取引先」などを獲得することができる
  • 新規事業を低コストで開始することができる
  • 自社の事業を拡大できる
  • 譲渡側の債務や負債を引き継がなくても良い

【関連】事業譲渡のメリット・デメリット30選!手続き方法や税務リスクも解説!

2. 事業譲渡金額が適正価格かを知るには?

事業譲渡金額が適正価格かを知る方法

M&Aや事業譲渡を検討されている方・これから事業譲渡の実施を控えている方が気になるポイントは、「M&A・事業譲渡金額が適正価格かどうか」というところではないでしょうか。

適正価格を明確に理解しておかないと、実際に事業譲渡金額が提示されたときに、譲渡側であれば「もっと高い金額で譲渡できると思っていた」、譲受側であれば「想定よりも価格が高かった」などと感じてしまいます。

M&A・事業譲渡金額の適正価格を知るためには、公正な計算方法で「企業価値」を算定することで、企業評価する必要があります。

企業価値を公正な計算で算定する

M&Aや事業譲渡をスムーズに進めていくためには、譲渡価格が「適正な金額」である必要があります。適正な売却・譲渡価格を算出する段階において、「企業価値評価(バリュエーション)」が重要になってきます。

M&Aにおける「企業価値評価(バリュエーション)」とは?

「企業価値評価(バリュエーション)」とは、M&A・事業譲渡の交渉を進めていくうえで、買い手側・売り手側ともに「価格の判断基準」とする「企業評価」を、公正な算出方法を用いて算定することです。

企業評価を算出するための算定方法には、以下の3つがあります。

  1. コストアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)
  2. インカムアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)
  3. マーケットアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)

コストアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)

企業評価を適正に行う方法の一つが「コストアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)」です。これは、企業の純資産を基準として企業評価する方法で、帳簿上にすでに記載されている数字をもとに企業評価をします。

そのため、客観性に優れている方法と言えます。コストアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)はさらに、「時価純資産価格法」と「修正簿価純資産法」に分けることができます。

「時価純資産価格法」は、帳簿上の資産・負債をすべて「時価」で再評価し、企業評価を算出する方法です。

一方、「修正簿価純資産法」は、すべての項目を再評価することはなく、土地や建物、有価証券など、含み損益を時価によって算出しやすいもののみを修正して、企業評価を算出する方法です。

インカムアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)

企業評価をする方法の一つである「インカムアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)」とは、将来獲得が期待される収益やキャッシュフローを、その収益獲得に見込まれるリスクなどを考慮した割引率で割り引くことで企業評価をする方法です。

「インカムアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)」はさらに「DCF法」と「収益還元法」に分けることができます。「DCF法」は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業評価する方法です。

一方「収益還元法」は、分子に「平均収益」を、分母に「資本還元率」を用いることで企業評価する方法です。

マーケットアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)

「マーケットアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)」とは、株式市場で成立している価格で企業評価する方法です。

「マーケットアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)」は「類似業種比準方式による算定」と「類似会社比準方式による算定」の2つに分けることができます。

「類似業種比準方式による算定」とは、企業評価対象の企業と「同一業種・同一規模」の企業を比較する方法で、「類似会社比準方式による算定」は、企業評価対象の企業と「同一業種・同一業界」の上場企業の株価をもとにして企業評価する方法です。

【関連】M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?算定方法を解説【事例あり】

3. 事業譲渡金額の算定方法

事業譲渡金額の算定方法

ここまで、M&A・事業譲渡において「『適正価格』を理解しておくことの重要性」と「適正価格を知るための方法」について解説してきました。ここからは、事業譲渡金額の算出方法について詳しく説明してきます。

事業時価純資産+営業権で事業価値を算定

事業譲渡における譲渡価格は、「事業時価純資産+営業権(のれん代)」という計算式で算定することができます。この算定方法で導き出される金額が「事業譲渡における適正価格」と考えることができます。

譲渡する事業の「時価純資産」に、その事業の収益力を反映している「営業権(のれん代)」を加算することで、「コストアプローチによるバリュエーション」と「インカムアプローチによるバリュエーション」を上手く合わせた算出が可能となります。

事業時価純資産の算出

事業譲渡の適正価格を算定するために、「事業時価純資産」を算出する必要があります。「事業時価純資産」を算出する流れは以下のようになっています。

  1. 会社会計を見直す
  2. 含み損益をチェック
  3. ②に対する税効果の検討
  4. 事業時価純資産の算出

【①会社会計を見直す】
非上場の中小企業の場合、「税務会計」を採用して決算書を作成しているケースが多いです。「税務会計」とは、課税されるべき所得額を算出するための会計方式です。

「税務会計」を採用して作成された貸借対照表には、企業の実態が正しく反映されていません。そのため、事業価値を算出する準備として、決算書を「企業会計」ベースに修正する必要があります。

会計の見直し内容としては、以下のようなものがあります。

  • 「現金主義処理」の損益を「発生主義」に変える
  • 有価証券などを「時価評価」にする
  • 賞与引当金の認識をする
  • 従業員の「退職給付引当金」を計上する

例えば、上場企業株式を保有している場合、帳簿上には「200」と記載していても、その株式の時価が「300」である場合には、評価増をして「300」に修正をします。

「退職給付引当金」であれば、「期末要支給額が300、対応する年金積立が200、引当金なし」という内容を修正し、差額の100を引当金計上します。

このように、「税務会計ベース」で作成された決算書を「企業会計ベース」に修正することが、「事業時価純資産」を算出するための第一段階になります。

【②含み損益をチェック】
会社会計を修正したら、次に「含み損益のチェック」を行います。

企業が保有する「不動産(不動産鑑定士によるチェック)」や「保険積立金(解約返戻金と帳簿価格の差額をチェック)」に含み損益が発生していないか確認します。その他、「滞留在庫・過剰在庫・偶発債務」などの認識も行います。

【③「含み損益」に対する税効果の検討】
次に、②の段階で算出した「含み損益」に対する「税効果」の検討を行います。

「税効果」とは、会計上の資産・負債の額と、課税所得計算上の資産・負債の額に差が発生した際に、法人税などの税額を適切に期間配分することによって、税引前の当期純利益と税金費用を対応させることです。

例えば、不動産鑑定士によって不動産の評価額を算出したときに、「含み損:100」を認識できたとします。会計上では「損失100」ですが、税務上はこの不動産を売却した時点で損金が認識されます。

将来、この「含み損100」を抱えた不動産を売却した際は、「100×実効税率(約40%とすると)=40」だけ、税金が少なくなるため、それに対応する資産(繰延税金資産:40)があると考えます。

この場合、含み損を抱えた不動産が「時価純資産」に与える最終的な影響は、「含み損:-100+繰延税金資産:40=-60」となります。

【④事業時価純資産の算出】
上記の流れで決算書の修正を行ったら、最後に「事業時価純資産の算出」を行います。

のれん代(営業権)の算出

事業譲渡価格を計算するためには、「事業時価純資産」の金額のほかに、「のれん代(営業権)」の算出も必要となります。「のれん代(営業権)」とは、譲渡される事業が持つ「利益を生み出す力」のことを表しています。

例えば「譲渡される事業が持つノウハウ」や「顧客」「取引相手」などが、この「のれん代」に当たります。「のれん代」自体を正確に算出することは難しいですが、一般的に、「正常営業利益×3~5年分」で計算すると言われています。

この「のれん代」を算出するために、以下のような流れに従って、正式な「利益」を計算する必要があります。

【正式な利益(営業利益)を算出する流れ】

  1. 会社会計を見直す
  2. 支払利息などを省く
  3. 役員報酬などを確認する
  4. のれん代の確定

【①会社会計を見直す】
「税務会計」を採用して決算書を作成している中小企業では、その損益計算書自体が、会社の経営成績を正しく反映できていないことが多いです。そのため、のれん代を算出する前に、「企業会計」による会社会計の修正をする必要があります。

【②支払利息などを省く】
のれん代を算出する際には、「特別損益」や「一時的な損益」、「撤退事業に関する損益」などを省いておきましょう。また「支払利息」などの「資本構成における差異」も省きます。

【③役員報酬などを確認する】
続いて、「役員報酬」や「役員生命保険」「オーナーへの地代家賃」などの確認・修正を行います。

【④のれん代の確定】
上記の流れで、企業会計を採用した会計方式で自社の損益計算書を修正した後、「のれん代」を算出します。

株式譲渡金額の算定方法との違い

ここで、上記で説明した「事業譲渡金額の算定方法」と「株式譲渡金額の算定方法」の違いについてまとめておきます。「株式譲渡」とは、株主がある企業の株式を売却して、新たな法人の株主に企業の所有権を移転させることで、M&Aスキームの一つです。

この「株式譲渡金額の算定方法」と「事業譲渡金額の算定方法」は大きく異なります。「株式譲渡金額の算定方法」では、以下の算定方式が採用されます。

  • 純資産価額方式
  • 類似業種比準方式
  • 配当還元方式

事業譲渡金額の算出には、会社会計を見直して算定される「時価純資産」の価格が重要でした。一方、株式譲渡金額を算出する方法である上記3つは、「株価」「発行株式数」「配当額」などが計算要素として重要になってきます。

【関連】株式譲渡とは?手続きからメリット・デメリット、税金に関して解説【成功事例あり】

ここまで読み進めていただければ、事業譲渡金額を算出することは、非常に複雑で難しいということがご理解いただけたのではないでしょうか。そこで、これから事業譲渡を進めていこうと考えている場合には、「M&A仲介会社」に依頼することをおススメします。

【M&A総合研究所】であれば、M&Aの実務経験が豊富なスタッフが、専任でサポートしてくれます。【M&A総合研究所】への相談は無料となっているので、お気軽にご相談ください。

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4. 事業譲渡における税金

事業譲渡における税金

ここからは、事業譲渡における「税金」について解説していきます。事業譲渡を実施すると、事業の譲渡側・譲受側ともに「税金」が課せられることになります。

売り手側

事業譲渡の譲渡側・売り手側に課せられる税金は、「消費税」「法人税」です。事業譲渡に関しては、「消費税」が課せられてしまうという点に注意が必要です。

消費税

事業譲渡の際には、「消費税」の納税義務が発生します。事業譲渡によって譲渡される資産は、「課税資産」と「非課税資産」に分けられ、課税資産に対して「消費税率(現在は8%)」を乗じた金額が消費税額となります。

「課税資産」として認識されるものは「(土地を除く)有形固定資産」「無形固定資産」「棚卸資産」「のれん代(営業権)」などがあります。一方、非課税資産として認識されるものは「土地、有価証券、債権」などです。

法人税

事業譲渡において事業を売却した企業に対しては「法人税」が課せられます。法人税が課せられるのは、事業譲渡による「譲渡益」であり、「譲渡益」は「譲渡益=事業の売却価格-譲渡資産の簿価」で求められます。

事業譲渡における法人税は、「事業譲渡による譲渡益×約40%(実効税率)」で求められます。

買い手側

続いて、事業譲渡における譲受側・買い手側に支払い義務が発生する税金について解説します。事業譲渡の譲受側・買い手側に発生する税金には、「不動産取得税」「登録免許税」などがあります。

不動産取得税

事業譲渡によって譲り受ける資産の中に「不動産」が含まれている場合には、「不動産取得税」が課せられます。「不動産取得税」は、「不動産の評価額×4%」で求めることができます。

登録免許税

事業譲渡によって不動産を引き継ぐとき、「不動産の登記書き換え」を行う際に、「登記免許税」が課せられます。登記免許税は、引き継ぐ不動産の「固定資産税評価額×2%」で求めることができます。

5. 事業譲渡の金額への考え方

事業譲渡の金額への考え方

事業譲渡を実施する際、「事業譲渡の金額」に対する考え方は、事業の売り手と買い手によって異なります

売り手側

事業譲渡における譲渡側・売り手側は、「事業譲渡金額」に対して「高く見積もる」傾向にあります。事業譲渡することになると、これまでその事業を成長させようと努力したことに対する思い入れ・愛着などが、事業譲渡価格に反映されます。

「これまで苦労してきたのだから」「同業種・同レベルの他社よりも高く売却されていいはず」「事業譲渡益をできるだけたくさん手に入れたい」といった考えを持っているため、時折、事業譲渡金額の適正価格よりも高い金額を要求してくることもあります。

買い手側

一方で、事業譲渡の譲受側・買い手側は、できるだけ事業譲渡にかかる金額を低く抑えようと考えます。

事業譲渡の買い手は、事業譲渡を実行するまでに、「自社にどのくらい利益をもたらすか」「既存事業とのシナジー効果は見込めるか」「新規事業を立ち上げるよりも事業を買収したほうが良いか」といった「投資効率」や「事業譲渡におけるリスク」を意識します。

このように、事業譲渡の売り手と買い手で、事業譲渡金額に対しての考え方が異なるために、M&A交渉が始まっても、なかなか交渉がまとまらなかったり、事業譲渡手続きが頓挫するケースもあります。

6. 事業譲渡の価格の事例

事業譲渡の価格の事例

ここでは、事業譲渡の価格の事例についてまとめていきます。どのくらいの規模の事業が、どのくらいの金額で譲渡されるのか、知りたい方はチェックしてみてください。

日本郵政かんぽの宿の事業譲渡

日本郵政株式会社は、2008年12月に、「かんぽの宿」等の事業を「オリックス不動産株式会社」に事業譲渡をしました。事業譲渡対象の施設は70施設に及び、事業譲渡価格は「108億8600万円」でした。

Electro Imaging Systemsの事業譲渡

「Electro Imaging Systems,Inc.(EIS社)」は、東芝の海外子会社である「東芝アメリカビジネスソリューション社(アメリカ)」に、全事業を事業譲渡しました。事業譲渡価格は約3.6億円です。

インドアゴルフスクールの事業譲渡

株式会社ゴルフスタジアムは、「バリューゴルフ」と事業譲渡契約を結び、保有していたインドアゴルフスクールの「e-golf stadium大崎」を事業譲渡しました。この事業譲渡の価格は1,500万円です。

エア・ウォーターの事業譲渡

「エア・ウォータ」は、ケミカル関連事業の一部を「新日鐵住金」と「新日鐵住金化学株式会社」に対して事業譲渡することを決定しました。この事業譲渡の価格は「約150億円」となっています。

7. まとめ

まとめ

今回は、事業譲渡における金額・価格についてまとめてきました。これから事業譲渡を実施していこうと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

事業譲渡やM&Aを安全に進めていくためには、税務や法律に関する専門的知識を必要とします。不安な方は、M&A仲介会社に依頼をして、専門家による徹底的なサポートを受けるようにしましょう。

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