2022年06月16日更新
事業譲渡の金額・価格の決め方とは?算定方法を解説【事例あり】
本記事では、M&Aスキームの1つである事業譲渡の金額・価格についてまとめました。事業譲渡の金額・価格の基となるバリュエーション(企業価値評価)の算定方法や事業譲渡のメリット・デメリット、税金、注意点などの解説とともに事例も紹介しています。
目次
1. 事業譲渡とは?
事業譲渡とは、M&Aにおける手法の1つで、企業が持つ事業とそれに関連する資産、権利義務などを選別して売買する取引です。事業譲渡によるM&Aを実施する場合、以下のようなメリット獲得を目的としています。
まず、事業譲渡の売り手側の主な目的は以下のとおりです。
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用確保
- 非主力事業や不採算事業を売却し経営資源を主力事業に集中させる
- 譲渡利益の獲得
次に、事業譲渡の買い手側の主な目的には以下のようなものがあります。
- 人材・技術・ノウハウ・取引先・顧客などの獲得
- 新規事業に低コスト・低リスクで参入
- 事業拡大
- 譲渡対象の選別により負債を引き継がない
また、事業譲渡と混同しがちな用語がありますので、それらとの違いを以下で説明します。
事業譲渡と株式譲渡の違い
事業譲渡と言葉が似ているため、混同しやすいM&Aの手法として株式譲渡があります。特定の事業だけを譲渡する事業譲渡に対して、株式譲渡は、買い手側に自社株式を譲渡し会社の経営権を移転させる取引です。
つまり、株式譲渡は会社を丸ごと売却することであり、会社の経営権に影響を与えずに取引を行う事業譲渡とは全く異なります。
事業譲渡と営業譲渡の違い
事業譲渡と営業譲渡は、基本的に同義です。旧商法では事業譲渡のことを営業譲渡と呼んでいました。しかし、2006(平成18)年に会社法が制定された際に、事業譲渡という言葉が用いられ現在に至ります。
事業譲渡と会社分割の違い
M&A手法の1つである会社分割と事業譲渡は、一見、類似して見えますが実際には異なります。会社分割とは、売り手側企業の事業部門を丸ごと買い手側が承継する取引です。そのため、会社分割は、会社法において組織再編行為と定められています。
会社分割では、取得する事業に関わる一切の債権・債務を包括的に買い手側企業が承継するため、債権者保護手続きが必要であるのに対して、事業譲渡は、取得する事業に関わる債権・債務は選別されるために必ずしも買い手側が承継するとは限らず、その場合、債権者保護手続きは必要ありません。
また、会社分割は包括承継であるため事業に必要な許認可を買い手企業が引き継げますが、事業譲渡では許認可を引き継げないため、買い手側はこれを新たに取得する必要があります(会社分割の場合でも、事業によっては引き継げない許認可があります)。
2. 事業譲渡のメリット・デメリット
ここでは、事業譲渡のメリット・デメリットについて、売り手側・買い手側に分けて解説します。
事業譲渡を行うメリット
まずは、事業譲渡の売り手側・買い手側それぞれのメリットを説明します。
売り手側のメリット
事業譲渡では事業を選別して譲渡できますから、売り手側が不採算事業から撤退する際に事業譲渡が用いられます。事業において、売りたくない不動産などを抱えている場合、事業譲渡では、個別に譲渡対象資産を選択できるのもメリットです。
本業とは関連性がないような投資不動産や美術品などを保有しているような場合、事業譲渡であれば譲渡しなければならないわけではありません。事業の買い手側と売り手側との個別の交渉で承継する資産・負債を選択できます。
また、後継者不在の中小企業の場合、承継してほしい事業を譲渡対象にすることで事業承継が実現し後継者問題も解決できるのです。
買い手側のメリット
事業譲渡は、会社を包括承継する取引ではないので、買い手が取得したい資産・負債だけを承継できます。事業譲渡を選択すれば、不要な資産や負債を承継せず、偶発債務などの簿外債務の発生リスクを負わずにすむのです。
特に事業譲渡では、労働債務のリスク(未払賃金の支払いなどのリスク)を負わずにすむメリットがあるので、他のM&A手法よりも、事業譲渡の選択を好む買い手も多く存在します。
事業譲渡を行うデメリット
次に、事業譲渡を行うデメリットについて、売り手側・買い手側に分けて説明します。事業譲渡を行うデメリットをきちんと理解して、そのデメリットをできるだけ避けるように工夫するのが成功の秘訣です。
売り手側のデメリット
事業譲渡の売り手に対し、会社法で競業避止義務が定められています。競業避止義務とは、譲渡した事業と同じ事業を、同一区市町村・隣接区市町村で20年間、行えないというものです。
買い手側のデメリット
事業譲渡は、包括承継ではないため、取引先との契約や従業員との労働契約などは、全て個別に締結し直さなければなりません。契約内容には相手方の同意が必要ですから、それらを1つずつ交渉する手間は膨大で煩雑なものがあります。
また、事業の許認可は引き継げないため、許認可が必要な事業を承継する場合は、事業取得の前に許認可を申請し取得しておくことが必要です。
3. 事業譲渡の適正な金額・価格を知るには?
事業譲渡などのM&Aを実施する場合、適正価格を明確に理解しておかないと、実際に事業譲渡の金額が提示されたときに、売り手側であれば「もっと高い金額で譲渡できると思っていた」、買い手側であれば「想定よりも価格が高かった」などと感じてしまうかもしれません。
事業譲渡などのM&Aでは、最終的な金額・価格は売り手・買い手の交渉で決まります。その金額交渉において基本となるのが、売り手企業に対して適正な方法を用いた企業価値評価(バリュエーション)による算定結果です。
企業価値を公正な計算で算定する
企業価値評価(バリュエーション)には、専門的な算定方法が数多く確立されています。その中から適正な方法を選び、なおかつ複数の算定方法を組み合わせて企業価値評価を行うのが通常です。
なお、便宜上、企業価値評価と表現されていますが、事業譲渡の場合には、厳密にいうと、事業価値評価になります。
M&Aにおける「企業価値評価(バリュエーション)」とは?
企業価値評価(バリュエーション)とは、事業譲渡などのM&Aの交渉を進めていくうえで、買い手側・売り手側ともに価格の判断基準とする企業価値評価を、適性な算出方法を用いて算定する方法です。企業価値評価の算定方法は、以下の3系統に大別されています。
- コストアプローチによる企業価値評価
- インカムアプローチによる企業価値評価
- マーケットアプローチによる企業価値評価
コストアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)
企業評価を適正に行う体系の1つが、コストアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)です。これは、企業の純資産を基準として企業価値評価する方法で、貸借対照表に記載されている資産と負債を用いて計算します。客観性に優れていることが特徴です。
コストアプローチによる企業価値評価の主な方法には、時価純資産価格法と修正簿価純資産法があります。時価純資産価格法は、帳簿上の資産・負債を全て時価で再評価し、資産額から負債額を差し引いた純資産額を企業価値評価とする計算方法です。
一方、修正簿価純資産法は、全ての項目を再評価せず、土地や建物、有価証券などの含み損益を算出しやすいもののみを時価に修正し、企業価値評価を算出します。
インカムアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)
インカムアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)とは、将来、獲得が期待される収益やキャッシュフローを、その収益獲得に見込まれるリスクなどを考慮した割引率で割り引いて企業価値評価をする方法です。
インカムアプローチによる企業価値評価の主な方法には、DCF(Discounted Cash Flow)法と収益還元法があります。DCF法は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値評価する方法です。M&Aの現場では広く用いられています。
一方、収益還元法は、分子に「平均収益」を、分母に「資本還元率」を用いて企業価値評価する方法です。
マーケットアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)
マーケットアプローチによる企業価値評価(バリュエーション)とは、株式市場で成立している価格や過去に成立したM&A取引価格を参考に企業価値評価する方法です。マーケットアプローチによる企業価値評価の主な方法には、類似会社比較法と類似取引比較法があります。
類似会社比較法は、企業価値評価対象の企業と「同一業種・同一規模」の上場企業の株価や各種財務指標を参考に企業価値評価を算定する方法です。類似取引比較法は、過去に行われたM&A取引の中から類似するものを選び、その数値を参照して企業価値評価を算定します。
4. 事業譲渡の金額・価格の算定方法
ここでは、事業譲渡金額・価格の算出方法を具体的に説明します。
事業時価純資産+営業権で事業価値を算定
事業譲渡における譲渡価格を簡易的に算定する計算式は、以下のとおりです。
- 事業時価純資産+営業権(のれん代)
譲渡する事業の「時価純資産」に、その事業の収益力を反映している「営業権(のれん代)」を加算しており、「コストアプローチによるバリュエーション」と「インカムアプローチによるバリュエーション」を組み合わせた算定内容となっています。
事業時価純資産の算出
事業譲渡の適正価格を算定するために、事業時価純資産を算出する必要があります。事業時価純資産を算出する流れは以下のとおりです。
- 会社会計を見直す
- 含み損益をチェック
- 含み損益に対する税効果の検討
- 事業時価純資産の算出
①会社会計を見直す
非上場の中小企業の場合、多くは「税務会計」を採用して決算書を作成しています。税務会計とは、課税されるべき所得額を算出するための会計方式です。税務会計を採用して作成された貸借対照表には、企業の実態が正しく反映されていません。
したがって、事業価値を算出する準備として、決算書を「企業会計」ベースに修正する必要があります。会計の見直し内容は、以下のとおりです。
- 「現金主義処理」の損益を「発生主義」に変える
- 有価証券などを時価評価にする
- 賞与引当金の認識をする
- 従業員の退職給付引当金を計上する
退職給付引当金のケースで例示すると、「期末要支給額が300、対応する年金積立が200、引当金なし」という内容を修正し、差額の100を引当金計上するのが一般的です。
このように、税務会計ベースで作成された決算書を企業会計ベースに修正するのが、事業時価純資産を算出するための第一段階になります。
②含み損益をチェック
会社会計を修正したら、次に含み損益のチェックを行います。企業が保有する不動産(不動産鑑定士によるチェック)や、保険積立金(解約返戻金と帳簿価格の差額チェック)に含み損益が発生していないか確認しなければなりません。その他、滞留在庫・過剰在庫・偶発債務などの認識も行います。
③含み損益に対する税効果の検討
次に、算出した含み損益に対する税効果の検討を行います。税効果とは、会計上の資産・負債の額と、課税所得計算上の資産・負債の額に差が発生した際に、法人税などの税額を適切に期間配分し、税引前の当期純利益と税金費用を対応させなければなりません(税効果会計の適用)。
たとえば、不動産鑑定士によって不動産の評価額を算出したときに、「含み損100」を認識できたとします。会計上では「損失100」ですが、税務上はこの不動産を売却した時点で損金が認識されます。
将来、この「含み損100」を抱えた不動産を売却した際は、「100×実効税率(約40%とすると)=40」だけ税金が少なくなるため、それに対応する資産=「繰延税金資産40」があると考えるのです。
この場合、含み損を抱えた不動産が時価純資産に与える最終的な影響は、「含み損-100+繰延税金資産40=-60」となります。
④事業時価純資産の算出
上記の流れで決算書の修正を行ったら、最後に事業時価純資産の算出を行います。計算式は以下のとおりです。
- 事業時価純資産額=該当事業の時価資産額-該当事業の時価負債額
のれん代(営業権)の算出
事業譲渡価格を計算するためには、事業時価純資産の金額のほかに、のれん代(営業権)の算出も必要になります。のれん代とは、譲渡される事業が持つ「利益を生み出す力」のことです。具体的には、譲渡される事業が持つノウハウや顧客、取引先などが、こののれん代に当たります。
のれん代自体を正確に算出するのは難しいですが、通常、「事業利益×3~5年分」で計算するのが一般的です。こののれん代を算出するためには、以下のような流れで正式な事業利益額を計算しなければなりません。
- 会社会計を見直す
- 支払利息などを省く
- 役員報酬などを確認する
- のれん代の確定
①会社会計を見直す
税務会計を採用して決算書を作成している中小企業では、その損益計算書自体が、会社の経営成績を正しく反映できていない場合が多いです。そのため、のれん代を算出する前に、企業会計による会社会計の修正をする必要があります。
②支払利息などを省く
のれん代を算出する際には、特別損益や一時的な損益、撤退事業に関する損益などを省いておきましょう。支払利息などの資本構成における差異も省きます。
③役員報酬などを確認する
続いて、役員報酬や役員生命保険、オーナーへの地代家賃などの確認・修正を行わなければなりません。
④のれん代の確定
上記の流れで、企業会計を採用した会計方式で自社の損益計算書を修正した後、のれん代を算出します。
株式譲渡金額の算定方法との違い
ここでは、事業譲渡金額の算定方法と株式譲渡金額の算定方法の違いをまとめます。株式譲渡とは、売り手企業の株式を過半数、買収することでその経営権を取得する取引で、M&Aスキームの1つです。この株式譲渡金額と事業譲渡金額では、譲渡対象が異なるため、算定方法も変わります。
株式譲渡は会社を丸ごと売買する取引ですから、簡易的な算定方法は以下のとおりです。
- 時価純資産額+営業利益×3~5年分
また、実際のM&Aの現場では、複数のバリュエーション方法が採用され、その算定結果を基に売り手と買い手の交渉が行われます。バリュエーションを適正に行うには専門的な知識が欠かせません。したがって、M&A仲介会社などの専門家のサポートを受けるのが得策です。
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5. 事業譲渡の金額・価格に対する考え方
事業譲渡を実施する際、事業譲渡の金額に対する考え方は、売り手と買い手によって異なります。
売り手側
事業譲渡の売り手側は、事業譲渡金額に対して「高く見積もる」傾向にあります。事業譲渡するケースでは、これまでその事業を成長させようと努力したのに対する思い入れ・愛着などが、事業譲渡価格に反映されるのが理由です。
「これまで苦労してきたのだから」、「同業種・同レベルの他社よりも高く売却されていいはず」、「事業譲渡益をできるだけたくさん手に入れたい」といった考えを持っているため、事業譲渡金額の適正価格よりも高い金額を要求してしまうケースが見られます。
買い手側
一方で、事業譲渡の買い手側は、できるだけ事業譲渡にかかる金額を低く抑えようと考えます。
事業譲渡の買い手は、事業譲渡を実行するまでに、「自社にどのくらい利益をもたらすか」、「既存事業とのシナジー効果は見込めるか」、「新規事業を立ち上げるよりも事業を買収した方がよいか」といった投資効率や事業譲渡におけるリスクを意識しなければなりません。
このように、事業譲渡の売り手と買い手で、事業譲渡金額に対しての考え方が異なるために、M&A交渉が始まっても、なかなか交渉がまとまらなかったり、破談したりするケースもあります。
6. 事業譲渡における税金
ここからは、事業譲渡で課される税金を、売り手側・買い手側に分けて解説します。
売り手側の税金
事業譲渡の売り手側に課せられる税金は、法人税です。なお、買い手が負担する消費税は、対価の支払い時に合わせて預かり、売り手が税務署に納付することになっています。
法人税
事業譲渡において事業を売却した企業に対して課される税金は、法人税です。一般に法人税とくくられていますが、実際には以下の種類があります。また、2022(令和4)年6月現在での法人税の実効税率(4種の法人税の税率を総合したもの)は約31%です。
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 地方法人税
法人税が課せられるのは、事業譲渡による譲渡益であり、譲渡益は以下のように計算します。
- 事業の売却価格-譲渡資産の簿価
なお、法人税は事業譲渡益に単独で課されるものではありません。当該年度における売り手企業の全損益を通算し、その益金に対して法人税が課されます。したがって、損益通算後、赤字であった場合、法人税は課されません。
買い手側の税金
事業譲渡の買い手側に発生する可能性がある税金は、消費税、不動産取得税、登録免許税です。
消費税
事業譲渡の譲渡対象に、消費税課税資産が含まれている場合、買い手側に消費税の納税義務が発生します。消費税課税資産は、以下のとおりです。
- (土地を除く)有形固定資産
- 無形固定資産(ソフトウェア、商標、特許権、意匠権など)
- 棚卸資産
- のれん代(営業権)
消費税非課税資産は以下のとおりです。
- 土地
- 有価証券
- 債権
- 売掛金
消費税は、事業譲渡の対価支払い時に、対価と合わせて売り手に預けます。税務署への納付は売り手の担当です。
不動産取得税
事業譲渡によって譲り受ける資産の中に不動産が含まれている場合には、不動産取得税が課せられます。不動産取得税の税率は、「不動産の評価額×4%」です。
登録免許税
事業譲渡によって不動産を引き継ぐとき、不動産の登記書き換えが必要です。その際に登記免許税が課せられます。登記免許税の税率は、引き継ぐ不動産の「固定資産税評価額×2%」です。
7. 事業譲渡を行う際の注意点
ここでは、事業譲渡の際の注意点として、以下の4点を説明します。
- 従業員の引き継ぎ
- 許認可の引き継ぎ
- 消費税・印紙税の発生
- 借入先の金融機関の合意
従業員の引き継ぎ
事業譲渡では、売り手と買い手との事業譲渡契約に、譲渡の対象事業をきちんと定めてから譲渡が行われます。したがって、個別の労働者の労働契約が承継されるかどうかは、一律に決まっているわけではなく、事業譲渡契約における当事者間の合意を基準として判断しなければなりません。
このように、労働契約の承継は、売り手と買い手間の個別の合意が必要とされるのに加えて、労働者の権利・義務を定めた民法第625条第1項が適用され、承継には労働者の同意も必要となります。
民法第625条とは、「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡せない」というものです。したがって、事業譲渡によって従業員を承継する場合には、従業員に対して新契約についてきちんと説明したうえで、契約を結び直さなければなりません。
つまり、事業の譲渡がなされたからといって、売り手企業とその従業員との雇用契約が、当然に買い手企業へ承継されるわけではないのです。したがって、会社と労働者間における労働契約は、当然に承継されるわけではなく、事業譲渡契約の内容によるのが前提とされているのを理解する必要があります。
許認可の引き継ぎ
事情譲渡では、許認可は引き継げません。事業の許認可というものは、申請をした事業主に対して出されるものです。したがって、事業譲渡の買い手側が、譲受した事業に必要な許認可を持っていなければ、新たに申請し取得する必要があります。
許認可は、場合によっては時間がかかるものもあるため、事業譲渡では、そのスケジュールも念頭に手配を進めなければなりません。
消費税・印紙税の発生
前章で説明したとおり、事業譲渡の際に、消費税課税資産が譲渡対象に含まれていれば、買い手に消費税が発生します。事業譲渡の対価と同時に売り手に渡す必要があるため、それも念頭に入れた資金繰りが必要です。
また、事業譲渡契約の締結では、譲渡金額が1万円未満である場合を除き、印紙税の課税対象となります。したがって、契約書に記載された取引額に応じた印紙税を支払わなくてはなりません。
借入先の金融機関の同意
譲渡しようとする事業に直接、ひもづいている借入金などの債務を譲渡対象から外して事業譲渡を行おうとする場合は、金融機関などの債権者からの同意が必要です。
債権者の同意なしで事業譲渡契約を成立させることは可能ですが、後日、その事実が発覚し、なおかつ、売り手企業に債務履行のめどが立たないような場合は、債権者からの訴えにより、事業譲渡は取り消されてしまいます。また、背任行為として刑事事件に発展するかもしれません。
8. 事業譲渡の金額・価格の理解に役立つ事例
ここでは、事業譲渡の価格の事例を紹介します。
DeNAの事業譲渡
2019(令和元)年5月、DeNAは、婚礼事業や広告事業を行っているオースタンスに、趣味でつながる大人向けSNS「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」の譲渡を決定しました。この事業譲渡の価格は、1,100万円です。
エア・ウォーターの事業譲渡
2018(平成30)年3月、エア・ウォーターは、ケミカル関連事業の一部を新日鐵住金と新日鉄住金化学に対して事業譲渡するのを決定しました。この事業譲渡の価格は、約150億円となっています。
Electro Imaging Systemsの事業譲渡
2017(平成29)年11月、Electro Imaging Systems,Inc.は、東芝の海外子会社である東芝アメリカビジネスソリューションに、全事業を譲渡しました。事業譲渡価格は約3億6千万円です。
インドアゴルフスクールの事業譲渡
2017年8月、ゴルフスタジアムは、バリューゴルフと事業譲渡契約を結び、保有していたインドアゴルフスクールの「e-golf stadium大崎」を事業譲渡しました。この事業譲渡の価格は1,500万円です。
9. 事業譲渡の金額・価格に関する相談先
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10. 事業譲渡の金額・価格まとめ
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