2026年01月17日更新
M&Aにかかる税金はいくら?計算方法から節税対策、最新の税制改正まで専門家が徹底解説
M&Aの税金は株式譲渡や事業譲渡などの手法により異なります。計算を誤ると手取り額が大きく減るため、正しい知識が不可欠です。本記事では、M&Aにおける税金の計算方法や節税対策、最新の動向まで専門家が詳しく解説します。
目次
1. M&Aの手法別に見る課税の仕組みと税率一覧
M&Aの各スキームごとにかかる税金の種類・計算方法、課税方式は以下の表の通りです。
| スキーム | 税金の計算方法 | 各スキームでかかる税金の種類 | 課税方式 | |
| 株式譲渡 | 個人株主 | {株式の売却価格-(株式の取得費用+譲渡費用)} ×(所得税15.315%+住民税5%) =株式の譲渡所得×20.315% |
所得税 消費税 |
分離課税 |
| 法人株主 | {株式の売却価格-(株式の取得費用+譲渡費用)} ×法人税等30〜40% =株式の譲渡所得×(30〜40%) |
法人税 消費税 |
総合課税 | |
| 事業譲渡 | ①法人税等 {事業の譲渡価格-(譲渡する資産+譲渡する負債)} ×法人税等30〜40% =事業の譲渡所得×(30〜40%) ②消費税 (譲渡価格-課税対象でない資産の価格)×消費税10% =課税対象の譲渡価格×10% |
法人税等 消費税 |
総合課税 | |
| 第三者割当増資 | 贈与税の問題を除いて課税されません。 | - | - | |
| 組織再編(合併・会社分割) | 適格分割の場合は課税されません。 | - | - | |
参考:特集「M&A(事業承継)に関する実務─中小企業法律支援ゼネラリスト養成講座より─」
参考:国税庁 営業の譲渡の意義
参考:日本政策金融公庫 譲渡価格算出ツール
株式譲渡を行った場合、原則として売り手にしか税金は発生しません。個人株主と法人株主によって課税される税金が異なります。これに対して、事業譲渡では、売り手・買い手双方に税金が課されます。
第三者割当増資は基本的には課税されません。ただし、有利発行で発行された株を引き受けた場合には贈与税が発生する可能性があります。
合併や会社分割によるM&Aを実施する場合、税制適格か否かに分けられます。税制適格要件を満たした場合、資産・負債を「帳簿価格」で引き継ぐ税務処理がなされるため、売却損益が発生せず課税も生じません。
また、総合課税と源泉分離課税の違いは、確定申告の有無と所得合算の有無です。 総合課税は確定申告が必要で所得を合算しますが、源泉分離課税は所得を分離して計算し、確定申告を必要としません。
M&Aの手法を選択する際は、税務面だけでなく経営戦略も含めた多角的な判断が求められます。特に2025年から2026年にかけては、中小企業の経営承継を支援する税制上の特例措置の適用期限なども意識する必要があります。M&Aの成約後に多額の納税が発生するため、売却代金の使途を決定する前に、納税資金のシミュレーションを専門家と共に行うことがリスク回避の鍵となります。
2. 2026年以降のM&Aにおける税務上の重要トピックス
2026年にかけて、M&Aに関連する税制環境は大きな変化を迎えています。売り手・買い手双方が押さえておくべき最新情報を紹介します。
特例事業承継税制の適用期限と2026年以降の展望
非上場株式の贈与税・相続税が猶予・免除される「特例事業承継税制」は、2027年12月までの特例承継計画の提出期限を控えています。2026年は、この制度を利用した親族内・親族外承継を完了させるか、あるいは第三者へのM&Aに切り替えるかの最終判断を迫られる重要な時期となります。
パーシャルスピンオフ税制の恒久化と組織再編への影響
特定の事業を切り出し、独立した会社として切り離す「パーシャルスピンオフ」に係る税制が整備されました。これにより、2026年に向けて大企業のみならず中堅企業においても、不採算部門の切り離しやコア事業への集中を目的としたM&A・組織再編が加速すると予測されています。
2026年度税制改正に向けた投資減税の最新動向
政府は中小企業の成長を促すため、M&Aを通じた生産性向上に寄与する投資への減税措置を強化する方針です。2026年度にかけては、M&Aに伴うシステム統合費用や設備投資に対する優遇税制が、より活用しやすい形へ見直されることが期待されています。
3. 株式譲渡によるM&Aにかかる税金の詳細と計算手順
ここでは、M&A・会社売却で多く利用される手法である株式譲渡のケースを説明します。株式譲渡とは株式を譲り渡す手法です。
株式を譲り渡すことで会社の所有者が変わり、事業承継が可能となります。株式売買で生じた利益は譲渡所得として課税されます。株式を持つのが個人の場合と法人の場合によって課税される税金が異なる仕組みです。個人と法人に分けて解説しましょう。
売り手が個人株主(オーナー経営者)である場合の税金
オーナー経営者のように株主が個人の場合、M&Aの手法として自社の株式を譲渡して利益(譲渡所得)が生じると、その利益に対して所得税・住民税が課税されます。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は、売却価格(純資産+営業権)から、取得費(株式を取得した費用など)や譲渡費用(M&Aアドバイザーへの仲介手数料など)を控除した売却益です。
例えば、株式の売却価格(純資産+営業権)を3億円、株式取得費を1,000万円、譲渡費用を500万円とした場合、以下の譲渡所得が計算されます。
- 3億円-(1,000万円+500万円)=2億8,500万円
所得税や住民税の税率・計算方法
個人株主が株式譲渡を行う際の譲渡所得は「申告分離課税」の対象です。2025年、2026年現在も、他の所得とは切り離して計算され、税率は一律20.315%(所得税15.315%、住民税5%)となっています。ただし、高所得者に対する課税強化の議論も続いているため、巨額の譲渡益が出る場合は、最新の税制改正大綱の内容を適宜確認する必要があります。
個人株主の株式譲渡において、売却益が1億円だった場合、所得税は1,531万5,000円、住民税5%は500万円の合計2,031万5,000円が課税されます。
オーナー経営者による株式譲渡(会社売却)のメリット
オーナー経営者がM&Aで株式譲渡をした場合、分離課税として株式譲渡所得に対して所得税、復興特別所得税、個人住民税がそれぞれかかります。現行の税率では、20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+個人住民税5%)です。
株式譲渡所得の計算を紹介します。
- 譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
総合課税の最高税率は約56%です。役員報酬(給与所得)数年分、株式譲渡金額が同じ価格であった場合、税率の差額分だけM&Aの方が多くの手取り金額を得られるメリットがあります。
株主の個人が役員であれば、株式譲渡と役員退職金を合わせると税負担を少なくできるでしょう。役員退職金は、売り手側の経営者だけでなく、買い手企業にもメリットがあります。株式譲渡をした場合、投資額の経費処理はできません。
しかし、株式譲渡代金の一部を役員退職金として買い手企業は経営者へ支給ができ、役員退職金の支給分を株式取得代金から圧縮できるメリットがあります。
ただし、適正水準を超えた役員退職金は税務調査で損金不算入となるケースも少なくありません。専門家に相談するのがベストです。
参考:厚生労働省 退職金の金額
相続税額の取得費加算の特例について
相続によって取得した株式を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限(相続開始後10ヶ月)の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合、「相続税額の取得費加算の特例」が適用されます。
この特例により、株式の取得費に、その株式にかかる相続税額の一部を加算できます。結果として譲渡所得が圧縮され、所得税・住民税の負担が軽減されます。なお、この特例は個人株主が対象であり、法人株主には適用されません。
法人株主の場合
株主が法人の場合、株式譲渡によって生じた利益は他の事業利益などと合算され、法人税等が課税されます。法人税等とは、法人税・法人住民税・法人事業税の総称です。
譲渡益の計算方法は個人の場合と同様ですが、個人のように分離課税ではなく、法人の他の所得と合算して課税される「総合課税」が適用されます。
法人税等の実効税率は、法人の所在地や資本金規模、所得金額によって変動しますが、2026年時点でも概ね30%〜34%前後が目安となります。中小法人の場合は所得800万円以下の部分に軽減税率が適用されるため、実効税率はさらに低くなる可能性があります。M&Aの実施タイミングによる損益通算の活用も検討すべき重要事項です。
法人税の計算方法
法人税の計算方法は、以下のとおりです。
- 法人税 = 課税所得 × 税率
課税所得とは、会計上の利益に税務上の調整を加味して計算されたものです。
ちなみに、会計上の利益とは、営業利益(売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を引いたもの)から営業外損益や特別損益を加減して計算されるものです。
消費税の計算方法
消費税の計算方法は以下のとおりです。
- 消費税の納付額 = 預かった消費税 - 支払い済みの消費税
消費税はほとんどの商取引が課税対象となりますが、以下のような場合は非課税になります。
- 贈与や寄付
- 株式売却
株式売却には「消費」という性質がない取引であるため、消費税のかからない非課税取引になります。
次に、株式譲渡(会社売却)にかかるその他の税金を見ていきましょう。
不動産取得税とは、不動産の売買を行った際に、一定要件のもとで不動産を買った人にかかる税金をいいます。株式を売却すると所有者(株主)は変更しますが、会社が不動産を所有していても不動産の売買ではないので、不動産取得税はかかりません。
印紙税
株式譲渡(会社売却)のときに、契約書を作成する場合もあります。印紙税法で規定された課税文書に当たる契約書ではないため、印紙税は必要ありません。
売却代金の領収書は、5万円以上であれば印紙税の課税文書に当たるので、領収金額によって印紙税がかかります。
| 受取書の金額 | 印紙税額 |
| 5万円未満 | 非課税 |
| 5万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超~200万円以下 | 400円 |
| 200万円超~300万円以下 | 600円 |
| 500万円超~1,000万円以下 | 2,000円 |
| 1,000万円超~2,000万円以下 | 4,000円 |
| 2,000万円超~3,000万円以下 | 6,000円 |
| 3,000万円超~5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 2万円 |
| 1億円超~2億円以下 | 4万円 |
| 2億円超~3億円以下 | 6万円 |
| 3億円超~5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超~10億円以下 | 15万円 |
| 10億円超 | 20万円 |
| 受取金額未記載 | 200円 |
参考:国税庁 金銭又は有価証券の受取書、領収書
株式譲渡や事業承継の税金についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
4. 事業譲渡によるM&Aにかかる税金の構成と計算のポイント
事業譲渡は、会社全体ではなく特定の事業部門や資産を個別に譲渡する手法です。2026年以降の労働力不足を背景とした業界再編において、不採算部門を売却し、成長分野へリソースを集中させる戦略として有効です。株式譲渡とは異なり、譲渡対象資産の時価と帳簿価額の差額が課税対象となります。
事業承継の手段として事業譲渡を選んだ場合も、売却益に対して課税される考え方は株式譲渡と同じです。なお、事業とは棚卸資産や不動産などに限らず、営業権(のれん)や取引先などの財産も一体として捉えたものをいいます。
事業譲渡時に課される税金には以下の3つがあります。
- 法人税等
- 消費税
- 譲渡対象に不動産が含まれるケースの税金(登録免許税・不動産取得税)
それぞれ解説していきます。
法人税等
事業譲渡によって譲渡益が生じた場合、売り手企業に対して法人税等が課税されます。個人の株主ではなく、あくまで法人としての利益とみなされるため、課税対象は法人です。税率は他の所得と合算された課税所得に対し、実効税率で約30%〜35%が課されます。
譲渡利益の計算は、譲渡価格(純資産+営業権)から、譲り渡す資産の価格と負債における価格の差額(純資産)を控除し、事業譲渡の場合はおおよそ「営業権=譲渡利益」として考えることが可能です。
消費税
事業譲渡では消費税が課税されます。譲り渡す資産の価格に消費税が課税されますが、譲り渡すもののうち、土地や売掛金など消費税が課税されないものは除外し、営業権などの課税される資産のみが対象です。
例えば、3億円で事業譲渡したからといって、必ずしも3,000万円の消費税が課税されるわけではありません。
譲渡対象に不動産が含まれるケースの税金
譲渡対象に不動産が含まれるケースの場合、買い手は登録免許税や不動産取得税が課税されます。登録免許税は、不動産や会社の登記、登録の際に課税される税金です。譲渡対象に不動産が含まれる場合は、不動産の所有権移転登記を行わなければなりません。
土地・建物の売買に伴う登録免許税は以下の計算方法で算出します。
- 「土地の価格×20/1000」(令和8年3月31日までの間に登記を受ける場合には15/1000)
- 「建物の価格×20/1000」
不動産取得税は、土地や建物といった不動産を取得した場合に、課税される税金です。取得する際に、有償、無償、登記の有無にかかわらず発生しますが、相続で引き継いだ際は課税されないケースもあります。
不動産取得税の計算方法は以下のとおりです。なお、土地および住宅については、令和9年3月31日まで税率を3%とする軽減措置が適用されています。
- 「取得した不動産の価格(課税標準額) × 3%」
このように譲渡対象に不動産が含まれる場合は、注意しましょう。
また不動産譲渡において発行する売買契約書は課税文書に該当し、その場合は印紙税が発生する点も確認しなければいけません。
前述のとおり、不動産譲渡の売却代金の領収書は、5万円以上であれば印紙税の課税文書に該当し、領収金額によって印紙税が課せられます。
5. 【組織再編】合併・会社分割における税金のポイント
M&Aを行う場合、税制適格かどうかで税金の支払いが決定します。
税制適格要件を満たせば税金はかからない
合併や会社分割など組織再編を行った場合、原則として当事者には課税関係が発生するでしょう。しかし、一定の税制適格要件を満たせば、課税関係が生じず税金はかかりません。税制適格要件を満たすM&Aの種類は以下の通りです。
- 適格新設合併
- 適格吸収合併
- 適格吸収分割
- 適格新設分割
- 適格株式交換
- 適格株式移転
上記の税制適格要件を満たす場合、資産や負債を帳簿価格で引き継ぐ税務処理がなされるため、売却損益が発生せず課税されません。
税制適格要件の内容
ここでは、組織再編税制の適格要件の具体的な内容と、その関連事項について解説します。組織再編税制では、組織再編前の当事者間の持ち株比率や資本関係に応じて、異なる要件が設定されています。
- 完全支配関係内(持株比率が100%)の組織再編
- 支配関係内(持株比率が50%超100%未満)の組織再編
- 共同事業を営むための組織再編
完全支配関係内(持株比率が100%)の組織再編
100%親子関係にある会社の場合の組織再編税制における適格要件は以下の2つです。
- 対価が合併法人の株式のみ
- 組織再編後の支配関係(支配率100%)の継続
支配関係内(持株比率が50%超100%未満)の組織再編
支配関係(持株比率50%超100%未満)にある親子会社間の組織再編税制における適格要件は以下の5つです。
- 対価が合併法人の株式のみ
- 組織再編後の支配関係(支配率50%超)の継続
- 主要資産や負債の引継ぎ
- 従業員の概ね8割程度の引継ぎ
- 移転した事業の継続
共同事業を営むための組織再編
資本関係がない会社間で共同事業を営むために組織再編をする場合の適格要件は以下の7つです。
- 対価が合併法人の株式のみ
- 移転した事業の継続
- 主要資産や負債の引継ぎ
- 当事者間の主要事業に関連性がある
- 従業員の概ね8割程度の引継ぎ
- 事業規模5倍以内、または特定役員の就任
- 株式の継続保有
以下の記事で組織再編税制についてより詳しく解説しておりますので、必要であればご参照ください。
6. M&Aの税金を抑えるための具体的な節税対策
M&Aにおいて税負担を適法に抑えるためには、事前の計画と専門的な知識が不可欠です。ここでは、代表的な節税対策を3つ紹介します。
役員退職金を活用した節税スキーム
オーナー経営者が株式譲渡を行う際、譲渡対価の一部を「役員退職金」として受け取る方法があります。株式譲渡所得の税率が一律20.315%であるのに対し、役員退職金は退職所得控除が適用されるため、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。ただし、不相当に高額な役員退職金は税務上否認されるリスクがあるため、金額の設定には専門家との相談が必須です。
相続・贈与税の納税猶予制度の活用
事業承継を目的としたM&Aでは、「事業承継税制(相続税・贈与税の納税猶予及び免除制度)」の活用も視野に入ります。この制度は、後継者が非上場株式等を相続または贈与された場合に、一定の要件下で納税が猶予・免除されるものです。M&Aのスキームによっては適用できる可能性があるため、検討の価値があります。
税務の専門家(税理士)への早期相談の重要性
最も重要な節税対策は、M&Aの計画段階で税理士などの専門家に相談することです。M&Aの税務は非常に複雑であり、最適なスキームやタイミングは企業の状況によって大きく異なります。早期に相談することで、複数の選択肢の中から最も税負担の少ない方法を選択でき、思わぬ追徴課税などのリスクを回避できます。
7. M&Aにかかる税金(第三者割当増資)
第三者割当増資とは、売却する会社が新しい株式を発行し、それを買収する会社に購入してもらう方法です。これにより会社に資金が入り、財務状況が強化されます。この方法もM&Aの一つです。
買収する会社との関係は、出資比率によって変わりますが、中小企業のM&Aでは、買収する会社から役員が派遣されることがよくあります。
株式の発行先を任意に指定できるので、M&Aの相手企業を引受先とした新株を発行するのみで、簡単に資本関係を構築可能です。迅速にM&Aを進めたい場合、既存株主との交渉が必要になり、時間がかかる第三者割当増資よりも株式譲渡の方が向いています。
贈与税に注意
第三者割当増資は基本的には課税されません。しかし、有利発行で新株を引き受けた場合には、既既存株主が損をして新株主が得をすることになるため、実質的に得をした分の金額に対して税務上贈与とみなされ贈与税が発生する可能性があります。
例えば、資本金5,000万円で発行済株式数5,000株の会社が、第三者割当増資の手法によって新たに1株2万円で5,000株発行したとしましょう。そのまま反映すると、この会社は資本金1億5,000万円で発行済株式数1万株となります。
もちろん新規発行した株もありますが、株価だけ見ると第三者割当増資前はもともと1株1万円だったのが、第三者割当増資後は1株1万5,000円となり、株式の価値が上がっていると考えられるでしょう。
この差額が税務上買収側企業からの贈与とみなされ、課税の対象になることもあります。
第三者割当増資は、株式の時価で手続きをすれば贈与税の問題はないので、時価での取引かどうか確認しましょう。
以下の記事で第三者割当増資についてより詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
8. M&A・会社売却で必要となる税務
ここではM&A・会社売却で必要となる税務を、それぞれの立場から解説します。
個人株主
「株式譲渡所得」に対して20.315%の税金がかかります。この内訳は、所得税が15%、復興特別所得税が0.315%、個人住民税が5%です。
この税金は、クロージング日の翌年2月16日から3月15日の期間に確定申告で納める必要があります。
取得費が不明な場合は譲渡収入の5%を取得費として計上できます。また、相続後3年10ヶ月以内であれば、相続で承継した株式にかかった相続税を取得費に加算することができます。
不動産M&Aの場合、保有期間に注意が必要です。株式譲渡の対象企業の資産のうち、土地や借地権の保有割合が70%以上を占める場合、不動産の短期譲渡所得とみなされ、39.63%の課税が適用される可能性があります。
配当金を受け取ったり、譲渡企業の株式を譲渡企業に売却した場合、配当所得に対して累進税率(最高約50%、配当控除後)の税金がかかります。
配当金を受け取る際には、支払法人から配当額の20.42%の税金が差し引かれた金額が支払われます。一定額を超える配当の場合は、翌年に確定申告を行い、精算する必要があります。
法人株主
株式譲渡所得は他の所得と合算され、法人税などの税金がかかります。
配当金を受け取ったり、譲渡企業の株式をその企業に売却した場合、一定額を非課税とすることができ、差し引かれた源泉徴収税額は法人税から控除することが可能です。
さらに、100%子会社から土地などの現物配当を受けた場合、その全額が非課税となります。
役員
受け取った役員退職金については、「(退職金-退職所得控除)×1/2×累進税率(最高約56%)」の所得税、復興特別所得税、個人住民税が課されます。企業から税金が差し引かれた金額を受け取る形になります。
勤続年数が5年以下の役員に退職金を支給する場合、1/2の軽減措置は適用されないため注意が必要です。
不動産(建物、土地)の譲渡に関しては、短期譲渡所得に39.63%、長期譲渡所得に20.315%の所得税などがかかります。譲渡年の1月1日時点で保有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得となります。
譲渡日の翌年2月16日から3月15日の間に確定申告を行います。
譲渡企業
譲渡企業は役員退職金を適正額まで損金として計上でき、税負担の軽減効果があります。役員退職金支給による損金が利益と相殺しきれない場合、繰越欠損金として翌期以降9年間(平成29年4月以降の事業年度からは10年間)繰り越せます。
退職金支給時には源泉徴収を行い、役員に代わって翌月10日までに納付します。また、配当金の支払い時や自己株買いを行った場合も、「配当額×20.42%」の源泉徴収を行い、翌月10日までに納付します。
譲受企業の資本金が1億円を超える場合や5億円以上の場合には、適用できなくなる優遇措置がありますが、課税は発生しません。
なお、譲受企業が連結納税適用グループで100%株式譲渡を行う場合、土地などの含み損益を実現させる必要があります。
9. M&A・会社売却の節税対策を行う方法
ここまで、M&A・会社売却にかかる税金に関してまとめました。M&Aでは会社売却の売却益が大きくなりやすく、課税される税金も高額です。M&A・会社売却で多額の売却益を勝ち取ったとしても、多額の税金を支払うとなると、なかなかM&Aに対して前向きになれません。
誰でも、できる限り手元に多くの金額を残したいと考えるのが自然です。それでは、M&A・会社売却に関して、少しでも多くの売却益を残すための節税方法はあるのでしょうか。ここからは、会社売却・M&Aの手法別に節税対策を紹介します。
株式譲渡(会社売却)における節税対策
まずは、株式譲渡の節約方法から見ていきます。個人でも法人でも、株式売却の売却益に税率を乗じて税額が計算されるため、売却益が小さければ小さいほど最終的に課税される税額は小さくなります。
売却益は株式の売却価格(純資産+営業権)から取得費や譲渡費用を控除した金額なので、取得費や譲渡費用を大きくすれば売却益は小さくなるでしょう。
譲渡費用はM&A・会社売却にかかる仲介手数料などであり、支払額を増やしたところで手元に残る金額は増えません。取得費を大きくするのが節税のポイントです。
概算取得費の特例の適用を検討する
原則として実際に売却する株式の取得にかかった費用を取得費といいます。しかし、税務上その金額がわからないときは売却価格の5%を取得費として計算できます。取得費が売却価格の5%を下回る場合も5%まで引き上げて計算することが可能です。
1,000万円出資して設立した会社が、長年の成果により純資産5億円となることもあり得ます。そのような企業の営業権は高額で買収され、会社の売却価格がさらに高額になるケースもあるでしょう。
例えば、売却会社の純資産と営業権を合計して10億円であれば、株式の取得費を1,000万円ではなく、10億円の5%である5,000万円とすれば、売却益を4,000万円も削減できます。
役員退職金(役員退職慰労金)を活用する
事業承継をして引退するオーナー社長は、受け取る金額の一部を退職金にすると節税できます。退職金には、退職所得税などが課税され、その計算は以下のとおりです。
- (退職金支給額-退職所得控除額)×0.5×税率-控除額
退職所得税は累進課税で、受け取る金額によって最低税率5%から45%で変動します。株式譲渡の譲渡所得であれば税率は一律でしたが、あまり大きい金額を退職金とすると譲渡所得だけと比べて手元に残る金額が少なくなるでしょう。
例えば、事業譲渡で会社に入った金額の全てを一気に退職金にすると高い税率となり、税務上損をしかねません。節税効果を狙う際は、時間をかけて少しずつ会社から受け取ってください。
第三者割当増資により支配権のみを移転する
株式を売却するのではなく、会社の経営権のみ特定の第三者へ移転する第三者割当増資の方法があります。会社における株式の過半数を持つことで、経営権を得られます。新しく株式を発行し、第三者へ自分の出資額以上の株式を引き受けてもらえば経営権を譲ることができるでしょう。その場合、個人にも法人にも税金の支払いは生じません。
ただし、第三者割当増資を実施する場合、自分は株主のまま第三者と経営に関わることになるので、第三者との関係が良好であることが重要です。
買収側から需要のある資産だけを売却する
M&A・会社売却を行った場合、買い手にとって不要な資産も引き継いでしまいます。買い手にとって不要な資産であった場合でも、企業価値算定上、買収金額もその分加算されてしまうでしょう。
買収金額が高額になる程、売却後に売り手が負担する税金も大きくなってしまいます。少しでも税金の負担を減らすために、買い手側にとって需要のある資産だけを売却し、節税できるケースがあります。
例えば、以下の例があります。
- 不要な資産をニーズに合った他の会社に売却し、買い手に株式譲渡する
- 需要のある資産だけ買い手に事業譲渡する
- 会社分割の方法で需要のある資産だけを買い手に承継する
参考:企業価値評価ガイドライン
参考:取引先の会社分割とその対応
事業譲渡における節税対策
事業譲渡では、おおよそ営業権が売却益となるため、事業譲渡を選択するだけで節税効果のある場合があります。
一見、事業譲渡は法人税と消費税が課税されるため、株式譲渡に比べて不利に見えるでしょう。しかし、取得費を大きくする方法でしか節税できない株式譲渡に比べて、営業権が売却益と計算される事業譲渡の方法は売却益が小さくなるケースもあります。
例えば、1,000万円を出資して設立した会社の純資産が1億5,000万円で、営業権をプラスして2億円で売却する場合、オーナー社長の株式を譲り渡すと1億9,000万円の売却益となるのに対し、事業譲渡は5,000万円の売却益となります。
計算式は割愛しますが、株式譲渡の場合は約3,800万円が課税されるのに対し、事業譲渡では約2,000万円です。
このように、一見すると税務上不利に思える事業譲渡でも、大幅な節税効果を期待できる場合があります。
分割型分割で株式譲渡益を圧縮
ヨコの会社分割(分割型分割)とは、いわゆる兄弟会社を作ることをいいます。兄弟会社を設立すると、M&Aに不要な資産の移動が可能です。買い手企業が欲しがらない資産も一緒に買収したうえで税金を支払う義務が発生する株式譲渡と比較すると、メリットの大きい手法です。
なお、会社売却で買い手が欲しがらない資産とは、銀行への預金・社長が住む社宅の土地や建物・社長の車など形式上会社が所有し、買い手側からすると使い道がないものをいいます。新設した兄弟会社へ不要な資産を移せば、M&Aを行う際に移した資産分の税金が課税されずに済むでしょう。
具体例を確認
例えば、1,000万円を出資して設立した会社の売却価格(純資産+営業権)が5億円とし、その会社の資産のうち買収側にとって不要な資産が1億円分あるとすると、ヨコの会社分割をする場合としない場合で、以下の違いがあります(なお、計算しやすいように譲渡費用は0円です)。
| 会社分割しない場合 | 株式の売却益は、 5億円-1,000万円=4億9,000万円 と計算します。 オーナー社長の株式を譲り渡すとして、課税額は、 4億9,000万円×20.15%=約9,873万円です。 |
| 会社分割した場合 | 1億円の資産を分割するので、5億円-1億円=4億円が売却額で、会社分割で譲り渡す株式の価格も同じように分割するため、株式の取得費は800万円です。 そして株式の売却益を計算すると、 4億円-800万円=3億9,200万円 同じくオーナー社長の株式を譲り渡すとして課税額は、 3億9,200万円×20.15%=約7,898万円 と計算されます。 |
このように、ヨコの会社分割で兄弟会社を作るだけで簡単に大幅な節税が可能です。
売却益を経費で相殺する
法人が、子会社株式や投資有価証券などを売る場合、多額の経費を計上する時期に合わせて売却すると法人税を節税できます。例えば、5,000万円の株式売却益を計上した事業年度に、5,000万円の広告宣伝費に使用すると法人税がゼロです。
しかし、経費による節税を行う予定であれば、同時にキャッシュアウトを伴うため、最終的に手元に残る現金が少なくなります。経営上不可欠であり、効果的な経費に使うことが大切です。
以下の記事ではM&Aの手法である株式譲渡と事業譲渡のどちらが節税できるのか紹介しています。
10. M&A・会社売却にかかる税金の申告タイミング
M&A・会社売却では、税金の申告タイミングも把握しておくことが大切です。本章では、M&A・会社売却にかかる税金の申告タイミングを個人と法人に分けて解説します。
個人に課される税金の申告タイミング
個々の人が払うべき税金の額は、通常、毎年2月中旬から3月中旬に行われる確定申告を通じて決定されます。この期間中に、自分の収入や支出を詳しく報告し、正確な税金の額を計算し、支払う必要があります。
しかし、令和3年(2021年)は、新型コロナウィルスの影響により、この期間が1ヶ月延長されました。つまり、その年の確定申告は2月16日から4月15日までの2ヶ月間で行われました。
法人に課される税金の申告タイミング
企業が支払う税金は、その会計年度が終了した翌日から2ヶ月以内に納税しなければなりません。例えば、もし会計年度が3月末に終了する企業ならば、その納税期限は5月末になります。また、年度が12月末に終了する企業では、納税期限は2月末となります。
しかし、上場会社や会計監査人が設置されている会社のように、会計処理が複雑で2ヶ月以内に決算が完了するのが難しい場合は、'申告期限の延長の特例'という手続きを申請できます。これにより、納税の期限を延ばすことが可能です。
11. M&A(株式譲渡・事業譲渡)の税金・財務に関する注意点
ここからは、M&A(株式譲渡・事業譲渡)を成功させるための売り手、買い手双方の注意点を紹介します。
株式譲渡や事業移転を行う際の貴重な情報となりますので、実際にM&Aに取り組む際の参考にしてください。
買い手側の注意点
株式移転や事業譲渡などのM&Aにおいて、買い手は契約終了後の簿外債務などが生じないよう、売り手の財務監査であるデューデリジェンスを徹底しなければいけません。
また売り手企業のブランド的価値である、「のれん」の買収で多額の金額が流動するケースが多く、その金額に対しても消費税が科せられる点も確認しましょう。
売り手側の注意点
M&Aで売り手は自社を買い手に譲渡すれば、譲渡益に対して所得税や消費税などの税金が課せられるので、事前に大まかな税額を算出、把握して支払いに備えましょう。
また事業譲渡時に買い手が実施するデュ―デリジェンスで、過去の税務処理などに問題があれば追加課税などの罰則が科せられるので、事前の税務整理を徹底するのも重要なポイントです。
12. M&A・会社売却にかかる税金の相談先
会社売却にかかる税金の相談先としては、M&A仲介会社や税理士などの専門家などがあります。
M&Aは多くの知識を必要としますし、専門家のサポートなしで進めるのは非常に危険です。まずは税金面での相談をM&A仲介会社や専門家にしてみましょう。
13. M&A・会社売却にかかる税金まとめ
M&A・会社売却に関する税金や節税対策の解説をしました。税金のことはよくわからない方が多いですが、実際の税務はもっと複雑です。税理士や会計士でも、M&A・会社売却の税務を専門に取り扱っていないケースが少なくありません。
売却価格が大きいM&Aなので、節税対策が可能な金額も大きくなります。節税対策をする際は、M&Aアドバイザーや専門の税理士などに相談して慎重に手続きを進めましょう。
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