会社売却、M&Aの税金まとめ!節税対策はできる?

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M&Aシニアマネージャー
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

この記事では会社売却・M&Aで発生する税金についてまとめています。会社売却・M&Aで発生する税金とその内訳、具体的な金額や節税方法についても解説します。M&Aで少しでも手元にお金が残るよう、かかる税金の種類と金額を把握して節税対策はしっかりと行いましょう。

目次

  1. 会社売却・M&Aの売却益に税金は発生するのか
  2. M&Aには消費税がかかる?
  3. 会社売却・M&Aで発生する税金の算出方法
  4. 税金の支払時期はいつになる?
  5. 会社売却・M&A節税で意識すべきポイント
  6. 会社売却・M&Aの税金を減らす節税対策!
  7. 会社売却・M&Aの節税対策における注意点
  8. 会社売却・M&Aの節税に関する相談はM&A総合研究所へ
  9. 会社売却・M&Aの税金と節税対策のまとめ
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1. 会社売却・M&Aの売却益に税金は発生するのか

会社売却・M&Aの売却益に税金は発生するのか

仕事をしてお金を稼いだら、その稼いだ分(利益)に税金が発生し、個人であれば所得税、法人であれば法人税というように課税されます

また、何かを売却したときも、売却で利益が出たのであればその売却益に税金が発生するのです。つまり、利益があるところには課税があるものといえます。

では、M&Aにおいては株式の売却や会社売却で、億単位のお金が動いた場合はどうなるでしょう。その利益(売却益)には想像できないくらい高額な税金が課税されると想像できるのではないでしょうか。

ここでは、M&A・会社売却に伴って発生する税金について解説していきます。M&A・会社売却を考えている方はM&A・会社売却で支払う税金関係についてよく確認しておきましょう。

会社を事業承継で引き継ぐ際の税金

事業承継の方法の一つとしてM&Aがありますが、親族や社内の人に会社を承継させるケースとは発生する税金や使える税制が異なってきます。

親族や従業員に会社を引き継ぐ場合、会社の規模によっては相続税や贈与税が100%免除となる事業承継税制が利用できるかもしれません。

また、子供や孫など特定の親族に会社を承継するときには、相続時精算課税制度を利用して節税を行うことも可能です。

事業承継の方法についてまだ悩んでいる方、M&A以外での承継も考えている方は一度、公認会計士や税理士などに相談しさまざまな承継方法について学んでいきましょう。

事業承継にかかる税金については、以下の記事で解説しているのでぜひ参考にしてください。

【関連】事業承継の税金を徹底解説!相続税の節税対策はできる?

2. M&Aには消費税がかかる?

M&Aには消費税がかかる?

M&A・会社売却は、簡単に言うと会社の売買です。スーパーマーケットやコンビニエンスストアで商品を購入すると代金とは別に消費税として10%の税率が加算されます。

普段の買い物と同じように考えれば、会社を10億円で買収したら消費税が1億円も加算されることになってしまいますが、会社売却やM&Aの際にはどのようになっているのでしょうか。

結論から言うと、この考え方は間違いです。

例えば、M&A・会社売却の代表的な手法である株式譲渡でいえば、消費税は課税されません。しかし、手法によっては10%の消費税が課されることもあります。

税金は正直よくわからないという方も多いでしょうが、ここからは最も身近な税金である消費税について解説していきます。

M&A・会社売却ではどのような場合に、どういった基準で税金が発生するかを理解して、M&Aの手法を検討していきましょう。

消費税が課税されない取引

消費税が課税される取引は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等の取引ですので、それ以外の取引には消費税は課税されません。

例えば、贈与や寄付、出資は対価を得て資産を譲り渡すものではないため、消費税課税の対象外となります。

また、事業者が事業として対価を得て資産を譲り渡す場合であっても、消費を提供する取引ではないケースなど、消費税が課税されない取引があるわけです。

例えば、株式の取引は株式を消費してもらおうとする取引ではないので、消費税がかかりません。

消費税が課税される取引

消費税が課税される取引は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等の取引です。

M&A・会社売却では、株式譲渡や新株発行など消費税が課税されない場合が多いですが、消費税が課税される場合としては、事業譲渡の手法によってM&A・会社売却をする場合があります。

消費税が課税されるなら、事業譲渡は他の手法と比べれば税務上不利なように見えますが、実際のところどうなのでしょうか。

以下の記事では事業譲渡における消費税について課税資産と非課税資産の分類や計算方法について紹介していますので、気になる人は併せて確認しておきましょう。

【関連】事業譲渡における消費税!課税・非課税資産を分類!計算方法も解説!

以下の見出しでは、M&A・会社売却の手法ごとに発生する税金の内訳や種類についてまとめていきます。

3. 会社売却・M&Aで発生する税金の算出方法

会社売却・M&Aで発生する税金の算出方法

M&A・会社売却した際にはどのような税金がかかるのでしょうか。ここからは、売却価格の算出方法やM&A手法別の税金について詳しく解説していきます。

売却価格の算出方法

会社の売却価格を決めるために基礎となるのが、その会社の純資産の価格となります。会社を買収するということは、その会社の資産をまるまる承継するわけですから、会社の純資産が売却価格の基礎となるのは当然です。

しかし、課税の対象となるのはこれだけではありません。取引先や従業員など、帳簿の数字(純資産)だけでは見えない部分も買収の対象になりますので、それらの価格を計上することになるのです。これらのことを営業権といいます。

つまり、会社の売却価格は「会社の純資産+営業権」で算出します。

それでは、会社の売却価格の算定方法(純資産+営業権)を踏まえて、M&A・会社売却の手法別にどのような税金が、誰に、どのくらい課税されるのかについて確認していきましょう。

株式譲渡でかかる税金

まずは、M&A・会社売却で多く利用される手法である株式譲渡の場合について説明していきます。

株式譲渡とは、その名のとおり株式を譲り渡すことです。株式を譲り渡すことで会社の所有者が変わり、事業承継が可能となります。株式売買して利益が出れば、それが譲渡所得として課税の対象です。

株式を持っているのが個人の場合と法人の場合によって課税される税金が異なりますので、分けて解説します。

個人株主の株式譲渡

オーナー社長のように株主が個人の場合、事業承継の手段として株式を譲り渡すことで利益が出れば、その利益は税務上個人の譲渡所得となります。

譲渡所得は、売却価格(純資産+営業権)から、取得費(株式を取得した費用等)や譲渡費用(M&Aアドバイザーへの仲介手数料等)を控除した売却益です。

例えば、株式の売却価格(純資産+営業権)を3億円、株式取得費を1,000万円、譲渡費用を500万円とした場合、以下の通り譲渡所得が計算されます。
 

  • 3億円-(1,000万円+500万円)=2億8,500万円

そして、個人株主のこの譲渡所得税は分離課税方式ですので、一般的な所得税とは別で一律の税率で課税されることとなり、売却益に所得税15.315%と住民税5%の合計20.315%が課税される形です。

法人株主の株式譲渡

株主が法人の場合は、事業承継の手段として株式を譲り渡すことで利益が出れば、その利益は税務上会社の利益と計算されます。そのため、法人税として税金が発生し、それに連動して法人住民税や法人事業税の税金も課税されるのです。

会社利益の計算は個人株主の場合と同じですが、総合課税方式で法人の他の所得と同じように課税されることが違う点となります。

そして、法人税は法人住民税や法人事業税を加えた税率がおおよそ30%〜40%です。この税率は実効税率と呼ばれ、法人の課税所得金額によって具体的な数値が異なるので注意しておきましょう。

【関連】株式譲渡とは?手続きからメリット・デメリット、税金に関して解説【成功事例あり】

事業譲渡でかかる税金

次に、事業譲渡の場合について説明していきます。

事業譲渡は、会社の事業を譲り渡すことです。会社ではなく、会社で行ってきた事業そのものを譲り渡すことで事業承継を行います。

事業承継の手段として事業譲渡を選んだ場合も、売却益に対して課税されるという考え方は株式譲渡と同じです。なお、事業とは棚卸資産や不動産などに限らず、営業権(のれん)や取引先などの財産も一体として捉えたものをいいます。

そして、事業譲渡には2つの税金が課税されることになりますので、以下2つに分けてみていきましょう。

法人税等

買収側に譲り渡す事業を行っていたのは個人ではなく法人であり、その事業を売却することの利益も法人にあります。

そのため、事業譲渡で課税されるのは法人税等ということであり、個人に課税されることはありません。実効税率で約30%〜40%が課税されることになります。

譲渡利益の計算は、譲渡価格(純資産+営業権)から、譲り渡す資産の価格と負債の価格の差額(純資産)を控除し、事業譲渡の場合はおおよそ「営業権=譲渡利益」として考えることが可能です。

消費税

先ほど説明したとおり、事業譲渡では消費税が課税されます。

譲り渡す資産の価格に消費税が課税されますが、譲り渡すもののうち、土地や売掛金など消費税の課税されないものは除外し、営業権等の課税される資産のみが対象です。

そのため、例えば3億円で事業譲渡したからといって、必ずしも3,000万円の消費税が課税されるわけではありません。

【関連】事業譲渡とは?会社譲渡との違いや手続きの流れを分かりやすく解説!

第三者割当増資でかかる税金

第三者割当増資とは、売却側の企業が発行済の株式を譲り渡すのではなく、買収側の企業に対して新たに株式を発行することです。

発行済の株式を譲り渡すことはないので、買収側の企業は100%の株式を取得できませんが、多くの株式を保有することで会社経営権を取得できます。

この第三者割当増資の場合は、新たな出資と新たな株式発行となりますので、税務上も単に増資が行われたと判断されることになるでしょう。

そのため、株式譲渡や事業譲渡とは違い、譲渡所得や利益という話にはならず、譲渡所得税や法人税等の課税はありません。

贈与税に注意!?

第三者割当増資は基本的には課税されませんが、仮に第三者割当増資によって発行済株式の株価が上昇してしまうようなケースでは、上昇した金額が税務上贈与とみなされ、贈与税が発生する可能性があります

例えば、資本金5,000万円で発行済株式数5,000株の会社が、第三者割当増資の手法によって新たに1株2万円で5,000株発行したとしましょう。そのまま反映すると、この会社は資本金1億5,000万円で発行済株式数1万株となります。

もちろん新規発行した株もありますが、株価だけ見ると第三者割当増資前はもともと1株1万円だったのが、第三者割当増資後は1株1万5000円となり、株式の価値が上がっていると考えられるのです。この差額が税務上買収側企業からの贈与とみなされ、課税の対象になることもあります。

第三者割当増資の場合、株式の時価で手続きをすれば贈与税の問題はありませんので、時価での取引かどうかは確認してみてください。

【関連】第三者割当増資の株価への影響の理由や事例を紹介!メリット・デメリット、算出方法も解説!

M&A税金比較表

M&Aによる事業承継の方法はいくつか考えられますが、文字だけではわかりにくい部分もありますので、上記の内容を表にまとめた下記をご確認ください。
 

株式譲渡 個人株主 {株式の売却価格-(株式の取得費用+譲渡費用)}
×(所得税15.315%+住民税5%)
株式の譲渡所得×20.315%
法人株主 {株式の売却価格-(株式の取得費用+譲渡費用)}
×法人税等30%〜40%
株式の譲渡所得×(30%〜40%)
事業譲渡 ①法人税等
{事業の譲渡価格-(譲渡する資産+譲渡する負債)}
×法人税等30%〜40%
事業の譲渡所得×(30%〜40%)
②消費税
(譲渡価格-課税対象でない資産の価格)×消費税10%
課税対象の譲渡価格×10%
第三者割当増資 贈与税の問題を除いて課税されません。

事業承継において、どの手法が良いかは税務上の問題だけではなく、会社の状態等を鑑みて総合的に判断することになります。しかし、どのくらいの税金がかかるのか、税務上のことも念頭に置く必要があるのです。

特に税金の支払い時期はM&Aの成立後となりますので、M&A・会社売却でいくら入ってくるかだけでなく、税金を支払えるように注意しましょう。

債権・債務がある赤字会社の場合は?

赤字のある会社であっても、事業承継に関する税務上の考え方は同じです。

事業承継の方法が株式譲渡の場合、赤字であっても個人株主には譲渡所得税として20.315%の税率で課税されることになりますし、会社の法人株主には法人税が課税されます。

しかし、事業承継の方法が事業譲渡の場合は少し事情が違うのです。事業譲渡で課税される税金は法人税と消費税であることには変わりませんが、事業譲渡によって利益が出ていても赤字会社は赤字部分で利益を圧縮できます。

これは赤字会社にとって、M&A・会社売却において事業譲渡を選択することのメリットです。

ただし、事業を譲り渡す会社が赤字会社であっても消費税は通常どおり課税されることは忘れてはなりません。

なお、赤字会社の株式譲渡の場合は法人株主には法人税が課税されますが、M&Aの対象会社が赤字会社であっても、株主である法人が赤字会社でなければ利益を圧縮できないでしょう。

赤字の場合に発生する税金は間違えやすいので、専門家に相談して詳しくチェックしてみてください。

M&Aの節税対策はM&A仲介会社への相談がおすすめ!

「M&Aや会社売却を行うとき、支払うことになる税金は気になりますよね?」「できれば節税をしたい…けど、どうすればいいかわからない!」

そのようなときは、M&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所では会社売却の際に発生する難しい税務に関して、専任の公認会計士がわかりやすく解説してアドバイスも行います。さらに、豊富な知識と実績を兼ね備えたアドバイザーがM&A・会社売却の交渉からクロージングまでフルサポートいたします。

ご相談は無料であり、費用については国内最安値水準の完全成功報酬制となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所

4. 税金の支払時期はいつになる?

税金の支払時期はいつになる?

節税方法を見ていく前に、税金を支払うのがいつ頃か確認しておきましょう。M&A後に税金は課税されますので、多額の売却益を使ってしまい、税金の支払いが足りるように注意が必要です。

先ほど説明したとおり、株式譲渡や事業譲渡にかかる税金は、個人の譲渡所得にかかる税金、法人税等、消費税があります。

ですが、税金を支払うタイミングとしては個人か法人かで異なるだけです。譲渡所得を個人として受け取るのか、法人として受け取るのかには注意するようにしましょう。

個人の場合

個人の譲渡所得にかかる税金(所得税・住民税)は、個人に課税されますので、確定申告のタイミングで支払うことになります。

その年の1月1日から12月31日までに生じた所得について、翌年の3月15日までに確定申告することになるのです。例えば、年度末である3月に会社売却した場合、その譲渡所得の申告は約1年後となります。

M&Aの実行からかなり時間が経ってから課税が行われることもありますので、課税額をあらかじめ予測して必要なお金を確保しておきましょう。

法人の場合

法人税の申告は会社によって異なりますが、原則としてその法人の決算期から2か月以内に支払うことになっています

例えば、事業年度が3月末日までの会社であれば、税金の支払いは5月末日までということです。

個人の場合と同じく、株式譲渡や事業譲渡のタイミングによっては、1年ほど支払いまでのタイムラグがある場合があります。

法人の場合も、課税額を予測し税金の支払いに向け十分なお金を確保しておくことが必要です。

5. 会社売却・M&A節税で意識すべきポイント

会社売却・M&A節税で意識すべきポイント

次に、発生する税金に関する基本的なポイントも押さえておきましょう。

会社売却・M&Aの節税に入る前にチェックすべきポイントは、以下の2つです。
 

  1. 節税の観点から売買価格を決める
  2. 複数の売却方法を検討する

ここからは、それぞれのポイントについて解説していきます。

①節税の観点から売買価格を決める

課税される金額が少なければ、その分支払う税金は減ります。当たり前のことではありますが、会社売却やM&Aについて話し合いをしている間は、売買金額にだけ注目してしまい節税のことを忘れてしまいがちです。

会社売却について考える際は、必ず公認会計士や税理士など専門家の意見を聞くようにしましょう。早い段階から、できる限り節税したいという意向を伝えておくのがおすすめです。

また、売却する会社に後継者がいないなどの問題がある場合に限り、登録免許税や不動産登録税の軽減措置を受けられる可能性もあります。

売買金額だけを見るのではなく、発生する税金についても早い段階で意識しておきましょう。

②複数の売却方法を検討する

ここまで説明したとおり、M&A・会社売却の方法によって発生する税金の種類や内訳は大きく変わってきます。そのため、可能であれば複数の売却方法を検討してから手法を決めるべきでしょう。

方法の違いで、かかる税金が2倍以上異なってくるケースもあります。売却方法別にシミュレーションを行い、最もかかる税金の少ない手法を選ぶのがおすすめです。

なお、M&A総合研究所では親族内外の承継を含めさまざまな手法を提案しながら事業承継のサポートを行っています。

M&Aをしたいけれどどの手法を選ぶのが良いかわからない、会社にとって最もお得な方法を選びたいという方はぜひご相談ください。公認会計士や知識と経験が豊富なアドバイザーが案件ごとに3名体制でのフルサポートをお約束いたします。

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6. 会社売却・M&Aの税金を減らす節税対策!

会社売却・M&Aの税金を減らす節税対策!

ここまで、M&A・会社売却にかかる税金についてまとめました。

M&Aでは会社売却の売却益が大きくなりやすく、課税される税金も高額です。

M&A・会社売却で多額の売却益を勝ち取ったとしても、多額の税金を支払うとなると、なかなかM&Aに対して前向きになれません。

誰でも、できる限り手元に多くの金額を残したいと考えるのが自然です。それでは、M&A・会社売却において少しでも多くの売却益を残すための節税方法はあるのでしょうか。

ここからは会社売却・M&Aの手法別に節税対策を紹介していきます。利益を少しでも多く残したい方はぜひチェックしてください。

株式譲渡の場合の節税対策

まずは株式譲渡の場合の節約方法から見ていきます。

個人にしても、法人にしても株式売却の売却益に税率を乗じて税額が計算されますので、売却益が小さければ小さいほど最終的に課税される税額は小さくなります。

先述のとおり、売却益は株式の売却価格(純資産+営業権)から取得費や譲渡費用を控除した金額なので、取得費や譲渡費用を大きくすれば売却益は小さくなるわけです。

もっとも、譲渡費用はM&A・会社売却にかかる仲介手数料等なので、支払額を増やしたところで、手元に残る金額が増えることにはなりません

そこで、取得費を大きくすることが節税の1つのポイントとなります。

株式の取得費は売却価格の5%

原則、実際に売却をする株式の取得にかかった費用のことを取得費と言います。しかし、税務上その金額がわからないときには売却価格の5%を取得費として計算することが可能です。

また、わからないときだけではなく、取得費が売却価格の5%を下回る場合も5%まで引き上げて計算できます。

1,000万円出資して設立した会社が、長年の成果により純資産5億円となることもあり得ることであり、そのような企業の営業権は高額で買収されて会社の売却価格がさらに高額になるケースもあるでしょう。

例えば、売却会社における純資産と営業権を合計すると10億円であれば、株式の取得費を1,000万円ではなく、10億円の5%である5,000万円とすれば、売却益を4,000万円も削減することが可能です。

事業譲渡の場合の節税対策

事業譲渡の場合は、おおよそ営業権が売却益となりますので、事業譲渡を選択するだけで節税効果がある場合があります。

一見、事業譲渡は法人税と消費税が課税されるため、株式譲渡に比べて不利なように見えますが、取得費を大きくすることでしか節税できない株式譲渡に比べて、営業権が売却益と計算される事業譲渡の方が売却益が小さくなることもあります。

例えば、1,000万円を出資して設立した会社の純資産が1億5,000万円だとして、営業権をプラスして2億円で売却する場合、オーナー社長の株式を譲り渡すのであれば1億9,000万円の売却益となるのに対し、事業譲渡は5,000万円の売却益となります。

計算式は割愛しますが、株式譲渡の場合は約3,800万円が課税されるのに対し、事業譲渡の場合は約2,000万円と計算されるのです。

このように、一見すると税務上不利にも思える事業譲渡も大幅な節税効果を期待できる場合があります。

第三者割当増資の場合の節税対策

先述のとおり、第三者割当増資では課税されませんので、第三者割当増資にかかる税金を節税するということはありません。

ですが、のちに行われる事業承継の場面で第三者割当増資をすることで節税効果が期待できます。

第三者割当増資で新株を発行する際に、増資前の1株当たりの相続税評価額よりも少額で発行すれば、増資後の1株あたりの相続税評価額は小さくなるのです。

そのため、次の世代が株式を相続によって事業承継する際の相続税を節税できます。さらに、増資により会社に資金が投入されたり、経営に関して買収企業側の協力も期待できたりと、のちの事業承継の場面でメリットは多いでしょう。

退職金(役員退職慰労金)による節税

事業承継をして引退するオーナー社長の場合は、受け取る金額の一部を退職金とすることで節税することが可能です。

退職金には、退職所得税等が課税されることになり、その計算は以下の通りとなります。
 

(退職金支給額-退職所得控除額)×0.5×税率-控除額

退職所得税は累進課税となっており、受け取る金額によって最低税率5%から45%の税率で変動します。

株式譲渡の譲渡所得であれば税率は一律でしたが、あまり大きい金額を退職金とすると、譲渡所得だけに比べて手元に残る金額が少なくなってしまうのです

例えば、事業譲渡で会社に入った金額の全額を一気に退職金にすると高い税率となり、税務上損をしかねません。節税効果を狙う場合は、時間をかけて少しずつ会社から受け取るようにしましょう。

ヨコの会社分割(分割型分割)で株式譲渡益を圧縮

ヨコの会社分割(分割型分割)とは、いわゆる兄弟会社を作ることをいいます。

兄弟会社を設立すると、M&Aに不要な資産の移動が可能です。買い手企業が欲しがらない資産も一緒に買収したうえで、税金を支払う義務が発生する株式譲渡と比較すると、メリットの大きい手法です。

なお、会社売却において買い手が欲しがらない資産とは、銀行への預金・社長が住む社宅の土地や建物・社長の車などのように形式上会社が所有しており、買い手側からすると使い道がないもののことを言います。

ですので、新設した兄弟会社へ不要な資産を移しておくことで、M&Aを行う際に移した資産分の税金が課税されずに済むでしょう

具体例を確認

例えば、1,000万円を出資して設立した会社の売却価格(純資産+営業権)が5億円だとして、その会社の1億円が買収側にとって不要な資産だとすると、ヨコの会社分割をする場合としない場合で、以下のように違いができます。
(なお、計算しやすいように譲渡費用を0円とします。)
 

会社分割しない場合 株式の売却益は、
5億円-1,000万円=4億9,000万円
と計算されます。
オーナー社長の株式を譲り渡すとして、課税額は、
4億9,000万円×20.15%=約9,873万円
と計算されます。
会社分割した場合 1億円の資産を分割しますので、5億円-1億円=4億円が売却額となります。
会社分割で譲り渡す株式の価格も同じように分割するため、株式の取得費は800万円となります。
そして株式の売却益を計算すると、
4億円-800万円=3億9,200万円
となります。
同じくオーナー社長の株式を譲り渡すとして課税額を計算すると、
3億9,200万円×20.15%=約7,898万円
となります。

このように、ヨコの会社分割で兄弟会社を作るだけで簡単に大幅な節税をすることが可能です。

また、以下の記事ではM&Aの手法である株式譲渡と事業譲渡においてどちらが節税できるのかについて紹介していますので、節税についてより詳しく知りたい人は併せて確認してみてください。

【関連】会社譲渡の税金まとめ!株式譲渡と事業譲渡どちらが節税対策になる?

7. 会社売却・M&Aの節税対策における注意点

会社売却・M&Aの節税対策における注意点

会社売却・M&Aを行うことで、後継者が見つけられない場合でも会社を残すことが可能です。しかし、会社売却・M&Aにおける節税には事前に意識しておくべき注意点もあります。

節税に関する注意点は、以下の3つです。
 

  1. 財産の移動で税金が発生することもある
  2. 印紙税が発生する
  3. 節税による税務リスクは避けられない

M&Aを成功させるため、ぜひチェックしておいてください。

①財産の移動で税金が発生することもある

ここまで説明してきた税金とは別に、会社の事業によっては財産の移動に伴い税金が発生する可能性もあります。

例えば不動産を買い手に渡す場合、不動産取得税が発生します。不動産取得税は原則評価額の4%で、土地や住宅の場合は3%です。

また、不動産に投機を行う場合は登録免許税が発生します。売買によって発生する登録免許税は2%ほどとなるでしょう。

これらは買い手が支払う税金になりますが、M&Aをスムーズに進めるため売り手も税金の存在を意識してみてください。

②印紙税が発生する

会社売却・M&Aによって株式を売買することにあたり、その内容が記載された契約書の取り交わしを行います。契約書の取り交わしにおいて印紙を貼付して発生する印紙税を納付することも多いのですが、株式の売買にかかる契約書は課税対象外となるため印紙税は発生しません。

しかし、株式の売買にあたって支払われた対価に対して発行する領収書は課税対象となり、金額に応じて領収書への印紙貼付が必要となります。会社売却・M&Aの取引額、つまりは領収書に記載される金額は高額になることも珍しいことではなく、貼付する印紙の額も高額になりやすいため、こちらについても意識しておくようにしましょう。

③節税による税務リスクは避けられない

M&A・会社売却には税務リスクがつきものです。税務リスクとは、将来税務調査が行われた際に、否認されて追徴課税されるリスクをいいます。

株式譲渡で会社を買収する場合、買収側は売り手の会社を事業承継し、その会社を経営していくことになりますので、その会社の税務リスクを引き継ぐことになるのです。

そのため買収側は、事前に売り手側の税務リスクをしっかりと調査しておく必要があります。また、売り手としても円満なM&A・会社売却のために自社の税務リスクをしっかりと把握しておくべきでしょう。

これに対して事業譲渡や会社分割を利用した場合には、買収企業が税務リスクを引き継がないとすることも可能です。

そのため、買収企業が税務リスクを引き継がない場合、税務のデューデリジェンスの必要性はそれほど高くはないといえます。

税務リスクを減らすには

売却価格が数億円から数十億円にもなりうるM&Aでは、先述のとおり、大幅な節税も可能です。

ですが、この節税対策も税務リスクの観点から慎重に行わなくてはなりません。

万が一節税の方法を間違えてしまい税務調査で否認されてしまうと、節税したはずの数百万から数千万円の大金が後から追徴課税されることになります。

引退したオーナー社長にとっては、それほどの金額が追徴されればひとたまりもありません。事業承継でM&A・会社売却を利用する場合の節税対策は専門家にお願いをするなどして、慎重に行うべきです。

8. 会社売却・M&Aの節税に関する相談はM&A総合研究所へ

会社売却・M&Aの節税に関する相談はM&A総合研究所へ

会社売却・M&Aを行いたいと考える会社は多数ありますが、買い手探しから契約までを自社で取りまとめるのは困難です。

M&Aに少しでも興味があるなら、まずM&A仲介会社に相談しましょう。M&A仲介会社は、買収相場や業界動向・手続きに関する知識も豊富です。

相談は基本的に無料となっており、仲介会社によっては買い手探しの着手金は無料で行ってくれる会社もあります。自社における今後の経営が不安な人、M&Aに興味があってもどう動けば良いかわからないという人は、仲介会社への相談を検討してみましょう。

そして、信頼できるM&A仲介会社をお探しの場合はM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、中小・中堅企業を中心としたM&A仲介を行い、さまざまな業種の事業承継サポートも行っています。

案件ごとに専任の会計士とアドバイザーが3名体制で売却までのサポートを行いますので、M&Aの知識があまりないという人でも安心してお任せください。また、料金体系には着手金や中間金は無料の完全成果報酬型を採用しているため、成功報酬のみの支払いで済みます。

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9. 会社売却・M&Aの税金と節税対策のまとめ

会社売却・M&Aの税金と節税対策のまとめ

M&A・会社売却に関する税金や節税対策について解説してきました。

しかし、税金のことはよくわからないという方が多いように、実際の税務はもっと複雑になることもあります。税理士や会計士であっても、M&A・会社売却の税務を専門に取り扱ってないとわからないということも少なくありません。

売却価格が大きくなるM&Aですから、節税対策が可能な金額も大きくなります。

節税対策をする場合は、M&Aアドバイザーや専門の税理士などに相談して慎重に手続きを進めていくようにしましょう。

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