2023年06月12日更新
倉庫会社の事業譲渡のメリットとは?M&A動向や注意点を解説!
当記事では、倉庫会社の概要・倉庫業法の改正・倉庫会社業界のM&A動向について解説しています。そのほか、倉庫会社の事業譲渡におけるポイント・注意点・メリットや事業譲渡の流れの解説、現在公開されている売り手希望の案件も紹介しています。
目次
1. 倉庫業界とは
倉庫会社の業界とは、どのような市場環境にあるのでしょうか。ここでは、倉庫業法の改正を含む倉庫会社業界の現状や倉庫会社業界のM&A動向について解説します。
倉庫業界の現状
総務省統計局の「2020年(令和2年)6月分(速報)」によると、倉庫業界の市場規模は2020年6月の月間売上高で3,305億900万円となっています。
2018年度の月平均は3,433億8,500万円、2017年度が3,281億8,600万円、2016年度が3,061億3,200万円であったため、ここ数年で150億~200億円ほど増加していたものが減少に転じていることがわかります。
また、2018年には市場の動きに合わせて倉庫業法の改正が施行されています。
倉庫業法の改正
倉庫業界では荷主からの要望が多様化しており、倉庫会社は倉庫を借りて各顧客のニーズに対応しています。
このような状況を受け、国土交通省が2018年の6月29日から倉庫業法の改正を施行し、手間のかかる変更登録手続きについて簡略化が実現されています。
倉庫業法の改正により、「基準適合確認制度」で登録する前から変更していないことが確認されれば、対象の倉庫が施設設備の基準を満たしていると判断されるようになりました。
これによって必要書類(一部)の省略が可能になり、倉庫を登録するまでの手続き期間を短くでき、スムーズで短期間の入庫を加速させる環境が整えられました。
倉庫会社業界のM&A動向
倉庫会社を含む業界のM&A動向では、物流の一請負・3PL事業へのシフトを進めるために、同業者やメーカーの傘下にある物流会社などを買収・合併する動きがみられます。
そのほかにも、海外とのネットワークを強化するために、国外の物流会社を買収する動きもみられます。
倉庫会社はM&Aによる買収・会社売却で、倉庫の共有・拠点の確保・自社に不足するサービスの補完などを行い、市場での生き残りを図っています。
2. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却のポイント
倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却では、どのような点を意識して進めればよいのでしょうか。
ここでは、事業譲渡・M&A・売却をする理由、M&A・売却後の取引先や従業員への影響、法務・手続き、それぞれの観点から解説します。
事業譲渡・M&A・会社売却をする妥当な理由
1つ目のポイントは、事業譲渡・M&A・会社売却をする妥当な理由を明確にしておくことです。
会社・事業を譲渡する理由によって、優先する条件・スキーム・手続きの仕方や譲渡する対象にも違いがでてくるため、自社がなぜM&Aを行うのかを明確にしておかなければ条件などが定まらずに失敗する可能性が高くなります。
事業譲渡・M&A・会社売却後の取引先・従業員への影響
2つ目のポイントは、事業譲渡・M&A・会社売却後の取引先・従業員への影響を考慮することです。
株式譲渡では会社そのものが引き継がれるため取引・雇用関係も買い手に承継され、合併においても存続する会社に権利義務のすべてが承継されます。
一方、事業譲渡の場合は個別に同意を得て取引・雇用契約を結び直す必要があります。
つまり、どの手法を選択するかによって取引先・従業員に与える影響が異なるため、対応などの考慮が必要です。
合併では労働の規則を統一する必要がある
倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却で合併のスキームを選んだ場合、複数の会社がひとつにまとめられます。
各社で労働に関する規則が異なるため従業員の混乱を招く可能性があるので、合併契約と併せて労働に関する規則・契約を統一させる必要があります。
法務・手続き
3つ目のポイントは、法務と手続きです。倉庫会社の事業譲渡ではほかの事業とは異なる法務によって手続きが行われるため、注意が必要です。
法務における注意点
倉庫業の登録は、事業譲渡でも承継が認められています。ただし、以下のようなケースでは、倉庫業の登録は引き継がれません。
【事業譲渡の法務/引き継ぎ不可のケース】
- 建物・事業所だけを譲渡する
- 倉庫業登録の地位だけを譲渡する
- 倉庫の譲渡譲受を伴わない営業の譲渡
つまり、倉庫会社の事業譲渡における法務では倉庫業を行う建物と営業権を一緒に譲渡する必要があります。
法務の手続き
倉庫業の登録を承継する側は、以下のような書類を承継した日から30日以内に国土交通大臣または地方運輸局長へ提出する必要があります。
【承継側が法人の場合】
- 事業譲受届出書
- 譲渡譲受契約書の写し
- 承継した営業所と倉庫の名称の新旧対照表
- 登記事項証明書
- 役員が欠格事由に該当しない旨の宣誓書
3. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却のメリット
倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却のようなメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、売り手と買い手側それぞれのメリットについてみていきましょう。
売り手のメリット
倉庫会社を売る側が享受できるメリットは、主に以下の6つがあります。
【倉庫会社を売る側のメリット】
- 後継者問題の解消
- 個人保証・担保の解消
- 大手の傘下入りによる経営資源の共有
- 取引・雇用契約の維持(株式譲渡・合併)
- 創業者利益の獲得(株式譲渡)
- 事業・会社の存続
買い手のメリット
倉庫会社を買収する側のメリットには、以下の3つがあります。
【倉庫会社を買収する側のメリット】
- 拠点の確保
- 自社にはないサービスの獲得
- スケールメリットの獲得(同業者を買収する場合)
4. 倉庫会社の事業譲渡の主な流れ
倉庫会社の事業譲渡では、大まかに以下のような流れで手続きが進められます。
【倉庫会社・事業譲渡の流れ】
- 事業譲渡の相談と簡易的な戦略策定
- 事業譲渡の委託契・本格的な戦略策定
- 事業譲渡の手続きや各種契約書の締結
- デューデリジェンスや条件交渉
- クロージング
事業譲渡の相談と簡易的な戦略策定
倉庫会社の事業譲渡を行う際は、まず事業譲渡の相談と簡易的な戦略策定を行います。M&A仲介会社などの専門家に相談を持ち掛けて、事業譲渡の目的を明確にしておくことが大切です。
事業譲渡の委託契約・本格的な戦略策定
事業譲渡の目的や簡易的な戦略が決まったら、譲渡を任せる専門家とファイナンシャル・アドバイザリー契約を結びます。
その後、アドバイザー・専門家と相談しながら自社に合ったスキームを決めて本格的な戦略を策定していきます。
事業譲渡の手続きや各種契約書の締結
次は、事業譲渡の手続きや各種契約書の締結をします。トップ同士の面談を済ませると買い手から意向表明書が提出され、基本合意書の締結を経て条件面の調整を行います。
デューデリジェンスや条件交渉
基本合意書の締結が済んだら、買い手側によるデューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスとは、売り手企業が提出した情報に相違がないかを細かく調査していくことや、買収後にリスクとなる可能性があるものを洗い出すことです。
その後は、デューデリジェンスの結果を基に細かな条件面の交渉が行われます。
クロージング
調整した条件に双方が合意すると最終譲渡契約書を結び、対価の支払いや資産の引き渡しなどのクロージングを行います。その後、両社を統合するPMIを済ませて、事業譲渡が完了します。
5. 倉庫会社の事業譲渡の注意点
倉庫会社の事業譲渡では、どのよう点に注意を払えばよいのでしょうか。ここでは、倉庫会社の事業譲渡で特に注意が必要な偶発債務について解説します。
偶発債務
偶発債務とは、将来において発現する可能性を秘めた債務のことです。偶発債務を事業譲渡によって承継してしまうと、将来的には債務がでてきて借金・賠償金の支払いといった負債を抱えてしまうことがあります。
このような偶発債務は、簿外債務の一種とされています。以下では、簿外債務とはどのような債務をさすか、その概要を解説します。
簿外債務
簿外債務とは、貸借対照表に計上されていない債務のことです。簿外債務には、前述の偶発債務のほか、未払いの給与や賞与・退職給付債務などがあります。
買い手が事業譲渡で簿外債務を承継しないようにするためには、徹底したデューデリジェンスを行う必要があります。
6. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却の事例
倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却では、どのような会社が自社・事業の譲渡・買収を行っているのでしょうか。
ここでは、倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却の事例を5つ紹介します。買収先には、倉庫会社や物流事業を営む会社がみられます。
- J-オイルミルズによる子会社の株式譲渡
- 安田倉庫による株式取得
- 内外トランスラインによる株式取得
- トナミホールディングスによる株式取得
- 両備ホールディングスによる事業の譲受
事例①J-オイルミルズによる子会社の株式譲渡
J-オイルミルズは2019年12月、経営資源の選択と集中を図るために子会社の坂出ユタカサービスの株式を譲渡しました。
事例②安田倉庫による株式取得
安田倉庫は2019年11月、ネットワークの充実と輸送サービスの向上を図るために大西運輸とオオニシ機工の株式を取得し、子会社としています。
事例③内外トランスラインによる株式取得
内外トランスラインは2019年3月、海外における倉庫事業の発展を目指すために韓進海運から韓進海運新港物流センターの株式を60%取得し、子会社としています。
事例④トナミホールディングスによる株式取得
トナミホールディングスは2016年7月、事業基盤を強化するため中央冷蔵の株式をすべて取得しています。
事例⑤両備ホールディングスによる事業の譲受
両備ホールディングスは2016年3月、売り手との関係性維持や地域の発展のためにタカラ物流システムから水宅配事業を譲り受けています。
7. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却の案件一覧
倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却では、以下のような案件が取り扱われています。
- 軽貨物運送事業の事業譲渡
- 梱包・発送・保管事業会社の株式譲渡
- 自動車保管事業会社の事業譲渡
- 一般貨物自動車運送事業会社の株式譲渡
- 運送・倉庫賃貸事業会社の株式譲渡
案件①軽貨物運送事業の事業譲渡
軽貨物運送事業を営む会社は1.5億円を超える売上が予想され、顧客・ドライバーの確保も順調に進んでいましたが、新しく始める別事業に注力するために3,500万円で軽貨物運送事業の譲渡を希望しています。
案件②梱包・発送・保管事業会社の株式譲渡
製薬会社の販促品・プロモーション用の品物を指定された場所へ出荷する事業を営んでいましたが、財務状況の悪化(赤字)と高齢を迎えた従業員の雇用を維持するため、株式譲渡を希望しています。
なお、売上高は750万~1,000万円で、希望する売却価格は750万~1,000万円です。
案件③自動車保管事業会社の事業譲渡
国内外の顧客に対して車の保管・メンテナンスサービスを提供していましたが、後継者がいないため事業譲渡を希望しています。売上高は4,100万円台で、希望する売却価格は600万円です。
案件④一般貨物自動車運送事業会社の株式譲渡
長野県で運送業を営み、駐車場と一時保管のための倉庫を保有し、6台の車両で事業を展開している会社です。
インターの近くに事業所を構えていることから立地もよく、30年ほどの事業運営の実績を築いてきたものの、後継者不足により株式譲渡を希望しています。なお、売上高は1.2億円台で、希望する譲渡価格は1,000万円です。
案件⑤運送・倉庫賃貸事業会社の株式譲渡
インター脇に事業所を構え、トラック10台で安定して利益を上げてきましたが、先代の死を機に会社を継いだ親族では事業存続に不安を感じていたため、事業の継続を任せられる相手への株式譲渡を希望しています。
なお、売上高は1.3億円台で、希望する譲渡価格は1.2億円です。
8. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却時におすすめの相談先
倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却を検討されている場合は、M&A総合研究所へご相談ください。
M&A総合研究所は、主に中堅・中小規模の案件を取り扱う仲介会社です。案件ごとにM&Aアドバイザーが相手先の選定からクロージングまでフルサポートいたします。
料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。
ご相談は無料ですので、倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却をご検討の際は、どうぞお気軽にM&A総合研究所へお問い合わせください。
9. まとめ
倉庫会社の業界では、市場環境の変化に合わせた倉庫業法の改正があり、物流サービスへの拡張、海外の物流拠点確保などの動きがみられます。
【倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却のポイント】
- 事業譲渡・M&A・会社売却をする妥当な理由
- 事業譲渡・M&A・会社売却後の取引先・従業員への影響
- 法務・手続き
【倉庫会社の事業譲渡の注意点】
- 偶発債務
10. 倉庫業界のM&A案件一覧
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