投資ファンドによるM&Aの実態とは?投資ファンドの種類や特徴・注意点・M&A事例も紹介!

提携本部 ⾦融提携部 部⻑
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

本記事では、投資ファンドのなかでもPEファンドに焦点を当て、投資ファンドのM&Aの実態に迫ります。投資ファンドに買収された会社の買収後のメリット、デメリットも紹介します。投資ファンドのM&A手法やプロセス、実際の事例を解説します。M&Aを検討中の方は必見です。

目次

  1. 投資ファンドとは
  2. M&Aにおける投資ファンドの種類と特徴
  3. 投資ファンドのM&Aによるロールアップ戦略とは
  4. 投資ファンドにM&Aで売却するメリット
  5. 投資ファンドにM&Aで売却するデメリット
  6. M&Aで投資ファンドに売却する際の2つの注意点
  7. 投資ファンドによるM&A事例7選
  8. 投資ファンドがM&A対象として目を付ける企業の特徴
  9. 投資ファンドによるM&Aの流れ
  10. 投資ファンドのM&A分析のまとめ
  11. ファンド業界のM&A案件一覧
  • ファンドのM&A・事業承継

1. 投資ファンドとは

M&Aにおける投資ファンドとは、企業の経営に積極的に関与し、企業価値を向上させた後に上場や転売を行い、投資利益を得ることを目的としたファンドのことです。

投資ファンドは、匿名組合契約、投資事業有限責任組合(LPS)、または特別目的会社(SPC)を通じて外部から資金を調達し、その資金を用いて投資を行います。そして、得られた利益を投資家に配分します。

投資ファンドの概要・目的

投資ファンドとは、複数の投資家から資金を集めて投資ファンドというビーグル(投資するための組織体)を作り、運用のプロフェッショナル(ファンドマネージャー)が株式や債権、デリバティブ(金融派生商品)、不動産など、さまざまな投資対象に投資を実施し、運用するものです。

運用して得られた利益は、投資家が投資ファンドへ出資した比率に応じて投資家に配分されます。このようにして運営を行っているビーグルが投資ファンドです。

投資ファンドによるM&Aを用いたビジネスモデル

投資ファンドによるM&Aを用いたビジネスモデルは、プライベート・エクイティ・ファンドであるケースが多いでしょう。プライベート・エクイティ・ファンドとは、さまざまなファンドのうち、資金を未上場企業に投資するファンドです。

省略形として「PEファンド」ともいわれるファンドです。昨今は、経営者の高齢化や経営者不足で引退を考え、M&Aを検討する経営者も多くいます。

金融機関・事業会社・個人投資家などの機関投資家たちが、株式非公開の中小企業に資金を投入するケースがよく見られます。経営支援など経営に積極的に関わることで企業価値を上昇させ、IPOや株式売却によって利益を獲得するのが目的です。

投資ファンド活用の効果

企業がPEファンドの活用を通じて見込める効果は、主に以下のとおりです。

  • 資金調達の実現
  • 事業承継問題の解消
  • 株主還元の実施

後継者不在や経営者高齢化などの事業承継問題を抱えている企業では、PEファンドとM&Aを実施することで、人的経営資源を投入できるため、事態の解消につながります。場合によっては、PEファンドに株式譲渡を行った後も、これまでの経営者が経営を継続できることもあります。投資ファンドとのM&Aで見込めるメリットの詳細は後述します。

【関連】PEファンドの仕組みや種類を徹底解説!M&Aで活用するメリットは?

2. M&Aにおける投資ファンドの種類と特徴

M&Aにおける投資ファンドは、投資する対象会社によって複数の種類に分かれています。ここでは5つの投資ファンドの特徴を解説します。

  1. ベンチャーキャピタル(VC)
  2. バイアウトファンド
  3. MBOファンド
  4. 企業再生ファンド
  5. ディストレスファンド

①ベンチャーキャピタル(VC)

ベンチャーキャピタルは、創業間もないベンチャー企業に対し、個人投資家や金融機関から出資を受けて創られる投資ファンドです。

ベンチャー企業にとって、ベンチャーキャピタルは資金を提供してくれる重要なものといえます。非常にハイリスクである一方で、株式公開(IPO)を行ったり、M&Aを行ったりした際に、株式売却で利益を獲得できるのが特徴です。

昨今は、M&Aによる資金回収を活用するケースが多いです。IPOと比べて回収資金は少ないものの、高い確率でイグジットを達成できます。ベンチャーキャピタルは、経営助言や役員派遣など、企業価値を高める活動も行います。

②バイアウトファンド

バイアウトファンドは、事業の軌道が乗って安定的に収益を創出できる成熟した未公開企業への投資を行うファンドです。ミドルリスク・ミドルリターンで、企業の議決権の過半数を取得し、経営に積極的に関与するのが大きな特徴といえます。

株式価値の向上を図ってから、保有する株式売却によって収益を得て、投資家にキャッシュを還元します。バイアウトファンドが株式を取得する際は、TOB・MBIなどが活用されるのが一般的です。

TOBとは、株式公開買い付けのことです。MBIは、買収企業に外部の経営者を入れ、経営の立て直しを図ることで企業価値を高める手法です。最終的には、その企業の株式売却で利益を得ます。

③MBOファンド

MBOファンドは、MBOを目指す企業経営者の資金需要に対して提供するファンドです。現経営者が資金を出資し、事業の継続を前提として企業の株式を購入します。再上場、第三者への譲渡、自社株買いなどを行い、最終的に第三者への株式売却で利益を得る方法です。

MBOファンドはMBO後も、経営に対する監督を行います。前述のバイアウトファンドは企業に直接投資を行い買収するものです。MBOファンドはMBOを目指す企業経営者に資金を提供する点が大きな違いです。

④企業再生ファンド

企業再生ファンドは、経営不振や経営破綻の企業に対して、投資をするファンドです。投資家などから集めた資金を元手に債権の買い取りや出資を行います。対象企業となるのは、本業の収益力が高い企業や、優れた技術やノウハウを保有している企業が多いです。

企業再生ファンドは、人員削減や資金調達の見直しなどのコスト削減、不採算事業の切り離し、経営方法改善などにより、企業再生の支援を実施します。そして、株式公開や株式譲渡によって、収益をあげる仕組みです。

企業再生の手法には、ターンアラウンドとワークアウトの2つがあります。

⑤ディストレスファンド

ディストレスとは「差し押さえ」の意味です。破綻状態にある企業に投資を行うファンドです。ディストレスファンドは、事業の分離売却やリストラクチャリングなど、企業再建をして価値の上がった株式を売却し、利益を得る方法をいいます。

ディストレスファンドの投資対象は、一般的に市場には出ない企業や事業のケースが多いといえます。非常に低価格で債権や株式を取得できる場合が多いです。企業再建が成功すれば、大きな利益を得られます。

しかし、企業再建に失敗してしまえばその株式は紙くずとなってしまうため、大きな損失が生じる可能性があります。ディストレスファンドはハイリスク・ハイリターンの投資です。

3. 投資ファンドのM&Aによるロールアップ戦略とは

ロールアップ戦略とは、比較的規模の小さな同業者を複数買収により事業規模を拡大し、経営資源の共有化により短期間で収益の向上を図る戦略です。

特に市場規模全体が拡大する可能性が低い場合、業界内でのシェアを高めるために、戦略的に同業界内での買収を行うケースが増えています。投資ファンドがロールアップ戦略を行い、戦略的に再編を進めることも増加しています。

M&Aをご検討されている経営者様は、ぜひ一度M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は中小・中堅規模のM&A仲介を主に手掛けております。支援実績の豊富なアドバイザーによるフルサポートを提供しています。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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4. 投資ファンドにM&Aで売却するメリット

買収後のメリットは、主に次のとおりです。

  • 資金の獲得
  • 経営ノウハウの獲得
  • 時間の短縮
  • 信用力獲得
  • 経営陣のポスト
  • 事業承継問題の解決
  • 個人保証・債務からの解放

資金の獲得

投資ファンドから資金が投入されることにより、ファンドに買われた会社の財務基盤は安定します。ファンドは買収後に単独の企業に対してハンズオンするケースもあります。そのほか実施されるのは、複数の企業を買収して合併させることです。

ファンドに買われた双方の会社が所有する設備や不動産のような有形資産だけでなく、顧客や取引先、技術(知財、ライセンス)などの無形資産も加わることで、事業規模の拡大を図ることが可能となります。

経営ノウハウの獲得

投資ファンドの社外取締役やファイナンシャル・アドバイザー(FA)などが、ファンドに買われた会社の経営に参画し、事業再編のために一緒に経営していくことで経営ノウハウを獲得できます。

合併を伴う買収の場合、経営管理手法の導入による業務効率化や無駄の排除、異なる企業文化の融合による社員のモチベーション・生産性が向上する効果も期待できます。

特に規制が強く、特別な資格、ノウハウや知見が必要な業界では、他社が持っている技術や人材を吸収できるのは大きなメリットです。海外企業がファンドに買われ国内企業と合併する場合、海外展開に必要なノウハウや人材を獲得できます。

時間の短縮

昨今、市場環境の変化がより早くなるなかで、すべて自社独力でやっているうちに他社に先を越され、淘汰(とうた)されるケースが増えています。他社に先んじてシェアの拡大やグローバル化、人材や技術の獲得を行うこと自体が競争優位性を発揮するものです。

新規事業進出や多角化を行う場合にも、研究開発、技術開発、従業員教育などの時間を大幅に削減することが求められます。投資ファンドは、市場環境の予測や人材、技術の獲得手段画策のプロフェッショナルです。

投資ファンドに買われた会社の経営参画で、それらを効率的に進められます。経営資源を所有している企業を合併することにも長けているので、ファンドに買われた会社を合併させ、さらなる事業のスピードアップが期待できます。

信用力獲得

投資ファンドの資金投入で、投資ファンドが資金を出した実績ができ、そのこと自体が信用力の向上につながります。大規模なM&Aになるとメディアでも取り上げられるので、より大きな知名度の獲得となるでしょう。

加えて合併を伴う場合、社会的に信用力がある会社と合併することで、より大きな信用力を獲得すると同時に知名度を獲得可能です。

経営陣のポスト

買収に伴い経営陣を一新するケースもあります。しかし、経営陣が引き続き同様のポストに残るケースが少なくありません。その業界の知識や知見・ノウハウを持ち合わせているのは、ファンドに買われた会社の経営陣だからです。

投資ファンドやファイナンシャル・アドバイザー(FA)がPMIを行っていくなかで、ファンドに買われた会社の経営陣とともに事業再生を行います。今までの経営の非効率な部分の是正など、テコ入れを行うことで、経営陣としての成長も期待できます。

事業承継問題の解決

経営者の高齢化や後継者不在などの事業承継問題も解決できる点が、投資ファンドにM&Aで売却するメリットの1つといえます。投資ファンドから後継者候補を受け入れられるため、事業承継問題の解決につながるからです。

投資ファンドによる事業承継のタイプは2つに大別されます。1つは、企業の存続を目的とした事業承継です。もう1つは、企業のさらなる成長を目的とするものです。

個人保証・債務からの解放

金融機関などから融資を受ける際に、経営者は個人保証を求められます。個人保証を提供して会社の事業活動を行っている経営者がほとんどです。M&Aを行う場合、経営者保証や債務などは、譲受企業側に引き継がれます。

ただし、この個人保証の引継ぎに難色を示すケースが多くみられます。M&A後に経営者が引退する場合には、投資ファンドは、個人保証や担保を速やかに外すように求めるのが一般的です。

この個人保証や債務がM&Aによって引き継げなかった場合、引退後もその責任を負うことになるので注意が必要です。

5. 投資ファンドにM&Aで売却するデメリット

買収後のデメリットは、主に以下のようなものがあります。

  • リストラ
  • 事業削減
  • 企業文化の否定
  • 不満を抱いた社員の大量離職につながるおそれ
  • スタンドアローンによって生じる課題

リストラ

M&Aが行われると、ファンドに買われた会社の非効率な人員の配置や多額な人件費の解消を目的として、人員の再配置を行うことがあります。いわゆる、リストラです。人員・人材の重複を解消し、人件費を抑えるために人員の絞り込みを行います

一方では、多彩な能力やノウハウ・経験をミックスさせることでシナジー効果を創出できるため、買収した企業の人材の雇用を維持する傾向も強くみられます。

合併を伴う場合には、M&Aの成立条件として、売り手企業のオーナーが買収された企業の従業員の雇用と待遇維持および改善を条件にしていることが多いです。M&Aによるリストラや雇用条件の低下は起こりにくい傾向にあります。

事業削減

M&Aを経営戦略として最大限有効活用するためには、選択と集中が必要です。既存の事業をコア事業とノンコア事業に分類し、コア事業への注力で、規模の拡大とコスト削減を狙ってM&Aを実行します。

ノンコア事業は、事業売却を行うことがあります。特にファンドに買われた会社は、徹底的にコスト削減を行うことが多いです。結果的に既存事業削減も少なくありません。

企業文化の否定

投資ファンドに買われた会社は、投資ファンドによるテコ入れが起こります。若手中心が重視される文化になったり、徹底的にコストを削減する文化になったりと、これまでの企業文化に変化が生じ得ます。

合併を伴う場合には、合併した企業同士が、お互いの文化を理解し共同で事業を進めていければ問題ありません。しかし、企業文化が全く異なる企業同士が合併する場合、お互いの元の企業文化を重視しがちです。コンフリクト(対立やあつれき)が生じてしまいます。

企業文化でコンフリクトが起きた場合は、人材の流出が起きる可能性があります。お互いの企業文化のすり合わせを行うために、人事交流を積極的に行うなど工夫が必要です。

不満を抱いた社員の大量離職につながるおそれ

投資ファンドの場合、将来的には他の企業に株式譲渡するのを目的としているのが特徴です。社員が不安定な環境にストレスを感じる可能性も高いです。

M&Aによる異なる企業文化の統合が、現場の社員に過重な負担となってしまい、大量離職につながるおそれもあります。投資ファンドは短期的に企業価値を向上させるのがメインです。投資ファンドの経営陣に反発を覚える社員もいるかもしれません。

スタンドアローンによって生じる課題

ファンドに買われた会社が、あるグループ会社の1社であったり、ある会社の1事業であったりする場合(特にMBOなどでは注意が必要)、グループ会社から分離独立(スタンドアローン)させることで生じるマイナスのシナジーが起こり得ます。

例えば、機能別で開発、生産、製造を独立で行っているグループ企業を買収した際に、新たなコスト(仮に資材調達コストなど)が発生するかもしれません。グループ会社の中に顧客企業がいる場合には、その企業からの収益がなくなってしまいます。

これをスタンドアローンコストといいます。条件交渉時には検討しなければなりません。

特に、買収を伴う投資を得意とするプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、買収企業のビジネスモデルを理解し、これらのコストをあらかじめ試算しておく必要があります。

M&Aのメリット・デメリットについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&Aのメリット・デメリットとは?企業買収の効果やリスクを買い手・売り手ごとにわかりやすく解説!

6. M&Aで投資ファンドに売却する際の2つの注意点

投資ファンドに買収される際の注意点を挙げます。主に、次の2点に注意してみましょう。

  1. 相互理解に努める
  2. 経営戦略への関与について把握

①相互理解に努める

投資ファンドは、企業の買収で利益を得ることが目的です。利益優先を第一に据えるがあまり、企業全体の統制が図れなくなる可能性もあります。買収や売却の手続きは煩雑なため、さまざまなプロセスに埋没するケースもあるでしょう。

M&Aにおけるストラクチャーの内容や、投資ファンドがいかに企業価値を向上させるのかなど、十分に確認したうえで決定するとよいでしょう。

②経営戦略への関与について把握

投資ファンドの買収成立後も、業績向上には一定程度の時間がかかります。収益獲得までには一般的に5年程度といわれますが、必ずしも業績向上につながるとは限りません。

さまざまなケースが考えられますので、経営への関与度を高めることが必要になることも念頭に置いておきましょう

7. 投資ファンドによるM&A事例7選

実際に投資ファンドが行った事例に関して、7件を抽出しました。参考事例としてご覧ください。

サンライズ・キャピタルによるキルフェボンへの資本参加

サンライズ・キャピタル(CLSAキャピタルパートナーズがアドバイザーを務める日本企業特化型投資ファンド)は、2024年1月19日にキルフェボンの全株式を取得し、資本参加を完了しました。

サンライズ・キャピタルは、日本の中堅・中小企業への投資に特化したプライベートエクイティファンドで、投資先企業の価値向上を目指しています。

キルフェボンは、国内で11店舗を展開するフルーツタルト専門店です。

サンライズ・キャピタルは、キルフェボンの顧客体験やブランド力を高く評価し、事業成長と経営基盤の強化を支援することで、既存および新規の顧客に魅力を伝えることを目指します。資本参加後も、キルフェボンのブランド名や顧客重視の運営方針は変更されず、両社が協力して持続的な成長を目指します。

キルフェボン株式会社への資本参加について

W&Dインベストメントデザインによるニットプランナーの買収

W&Dインベストメントデザインは、KP(新KP)を通じて、株式会社ニットプランナーの主要事業を譲り受けました。

W&DiDはアパレル企業ワールドグループと日本政策投資銀行が共同で設立したPEファンドで、コンシューマー企業への投資と再生・成長支援を行っています。新KPはワールドインベストメントネットワーク、ナルミヤ・インターナショナル、日本政策投資銀行の出資を受けて設立されました。

ニットプランナーは子供服ブランド「KP」を展開していましたが、新型コロナウイルスの影響で売上が急減し、2023年10月3日に破産手続き開始が決定されました。

新KPは、ベーシックなヨーロピアンカジュアルを特徴とする4ブランドを展開し、ワールドとナルミヤのノウハウを活用して企業価値の向上を目指します。

株式会社ニットプランナーからの事業譲受について

フォートレス・インベストメント・グループLLCによるアカオの買収

ACAO SPA & RESORTは、保有する土地の7%と付随する建物(旧ホテルニューアカオ、旧ロイヤルウィング)を、フォートレス・インベストメント・グループLLC(東京都港区)の関連会社であるShirakami特定目的会社に売却しました。売却後、これらのホテルは同ファンド系のマイステイズ・ホテル・マネジメント(東京都港区)が運営する予定です。

ACAO SPA & RESORTは不動産、リゾート、ホテル事業を展開しており、フォートレス・インベストメント・グループLLCはニューヨークに本社を持つグローバルな投資運用会社です。

この売却により、ACAO SPA & RESORTはホテル事業から一旦撤退し、FORESTやBEACHでのリゾート事業の充実や新規事業の企画に注力する予定です。

カーライル・グループによるユーザベースへのTOB

米投資ファンドのカーライル・グループは、THE SHAPERを通じて、ユーザベースの株式を公開買付け(TOB)で取得することを決定しました。

ユーザベースは、経済メディア「NewsPicks」や経済情報サービス「SPEEDA」を運営しています。

TOBが成立すれば、ユーザベースは上場を廃止する予定です。買付け価格は1株あたり1,500円で、買付予定数の下限は26,023,700株(所有割合:66.67%)となります。全株取得による非公開化を目的としているため、買付予定数の上限は設定されていません。

このTOBは、NewsPicksの事業基盤を活かし、SaaS事業を強化し、国内市場を牽引するSaaS企業とすることを目的としています。ユーザベースは、このTOBに賛同しています。

ユーザベース、取締役の選任および執行体制の強化に関するお知らせ

アイ・シグマ・キャピタルの昭光通商の買収

アイ・シグマ・キャピタルは2021年3月、昭光通商に対してTOBを実施しました。アイ・シグマ・キャピタルは、丸紅が100%出資を行う投資ファンドです。

対象会社である昭光通商は、化学品、合成樹脂、金属セラミックスなどを取扱う総合商社です。親会社である昭和電工は、昭光通商の企業価値向上、資本見直しの検討など、新たな事業パートナーを検討していました。

今回のM&Aにより、アイ・シグマ・キャピタルは昭光通商を取り込むことで、丸紅グループが国内外に持つネットワークを活用し、利益率の改善、経営の効率化が図り、企業価値向上を目指します

SKTホールディングス株式会社による昭光通商株式会社株式(証券コード 8090)に対する 公開買付けの結果に関するお知らせ

ベインキャピタルの昭和飛行機工業の買収

ベインキャピタルは2020年1月、昭和飛行機工業に対して、TOBを実施しました。ベインキャピタルは世界最大級の投資会社です。プライベート・エクイティ投資、追加的投資などを行っています。

昭和飛行機工業は、タンクローリーなどの特殊車両、軽量・強度素材のハニカム、航空機部品などの輸送用機器関連の製造・販売業を行う企業です。

今回のM&Aにより、ベインキャピタルは、輸送用機器関連事業、不動産賃貸事業、ホテル・スポーツ・レジャーといった複数の事業を行い、地域貢献の最大化を目指すとする昭和飛行機工業の事業価値の最大化を図ります

ビーシーピーイー プラネット ケイマン エルピーによる 昭和飛行機工業株式会社普通株式(証券コード 7404)に対する公開買付けに関するお知らせ

J-STARの「paiza」への投資

J-STARは、2006年2月に東京で設立された独立系プライベート・エクイティ・ファンドです。主として中小企業をターゲットとした投資を実施しています。

J-STARの最新投資案件としては、2020年1月、新規事業立ち上げ支援業を行っている東京のエムアウトの子会社であるギノと、MBO支援契約を締結しました。ギノが行っているITエンジニアの求職や学習プラットフォーム「paiza」事業の今後の成長に着目しての投資です。

J-STARは、これまでにも人気アパレル「WEGO」や、エンタメ居酒屋「相席屋」を展開するセクションエイトなどに投資し、着実に業績拡大させています。「paiza」事業の今後にも期待がかけられます。

経営陣によるMBO実施に関するお知らせ

8. 投資ファンドがM&A対象として目を付ける企業の特徴

近年では、投資ファンドがテレビドラマ化されるようにもなりました。基本的にドラマのように経営難の企業を買い取って成長させるケースはまれです。ここからは、実際に投資ファンドはどんな企業に目を付けるのか解説します。

規模が大きい

M&Aを行ううえで、企業規模の大きさは意識するポイントです。買収時に事業を展開する業界で大きな規模の会社を買収することで、買収後に規模の経済効果を得られます

規模の経済とは、生産量の増大に伴い、原材料や労働力に必要なコストが減少する結果、収益率が向上するものです。大きな規模の会社を買収する場合、このようなスケールメリットを生かした企業活動が可能です。

事業再編のためにロールアップを行う際にも、大きな規模の企業を買収していくことで、効率よくロールアップを進められます。ただし、大き過ぎる企業は注意しなければなりません。仮に買収した企業の方が小さい場合は、コントロールが効かなくなるケースがあるためです。

大きな企業を買収する場合は、段階的に大きな企業に手を伸ばしていき、戦略的に買収を行うことが重要です。

成長している

買収する企業に関して、投資ファンドが確認する成長の基準としては、以下2つの観点があります。

  • 収益が伸びてきているか
  • 技術や人材などが成長しているか

「収益が伸びてきているか」は、事業の成長を図るうえで最も大切な指標です。プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)やベンチャー(キャピタル)ファンドは、IPOをさせるうえで、売上の規模や黒字の期間が大事になってくるため、特に注意して確認します。

「技術や人材などが成長しているか」は、次項で説明する事業シナジーを検討するうえで大切な指標です。こちらは、専門家に技術DD(デューデリジェンス)や知財DD(デューデリジェンス)を行い、検証します。

事業シナジーがある

買収する企業で最も重要なことは事業シナジーがあるかどうかです。基本的に買収を検討する企業は、以下の2パターンに分かれます。

  • 同じ事業を行っている競合企業
  • お互いに補完関係がある類似企業

同じ事業を行っている競合企業を買収する場合は、同様の事業の技術やノウハウを足し合わせることで、事業の加速を図れます。買収後の企業規模が大きくなることで、規模の経済の恩恵を受けることも可能です。

お互いに補完関係がある類似企業を買収する場合は、買収後に事業領域が拡大するため、その事業領域で幅広く事業展開ができるようになります。競合他社を買収するときと同様に、規模の経済の効果も得られるでしょう。

9. 投資ファンドによるM&Aの流れ

一般的な投資ファンドの企業買収から株式の売却までのプロセスを説明します。

企業の株を買収

M&Aの流れは一様ではありません。まずは一般的な企業の株式の買収までのプロセスを説明します。一般的な企業の株式の買収のプロセスは、以下のとおりです。

  • ターゲット企業の選定
  • ファイナンシャル・アドバイザー(FA)の選定
  • ターゲット企業へのアプローチと初期分析
  • 企業価値算定
  • 買収スキーム策定
  • 交渉・基本合意(MOU、LOI)
  • デューデリジェンス(DD)
  • 最終契約・クロージング

ターゲット企業の選定から最終契約・クロージングまで、数カ月から長いものであれば1年以上かかることもあります。それだけの期間やリソースを投入してもなお、それをペイする大きなリターンを得られるのがM&Aの特徴です。

ターゲット企業の選定

一般的に、M&A市場は売り手市場であるものの、優良な売り案件は不足しています。M&A実行のためには、自ら企業を探しにいくことが必要です。買い手企業は自社の経営戦略、事業戦略を鑑みて、買収する企業を選定します。

ターゲット企業の選定の際は、幅広く情報収集をし、より魅力的かつ買収可能性の高いターゲット企業を絞り込みます。最終的には優先順位をつけてアプローチしていくことが必要です。

金融機関やM&A専門会社などから買収案件が持ち込まれることもあります。買収企業としてふさわしいと判断された場合には、秘密保持契約(NDA)を結んで詳しい情報を入手し、検討を開始しましょう。

このときに売り手側のファイナンシャルアドバイザー(FA)から提供される一連の情報は、インフォメーション・メモランダムと呼ばれるもので、事業概要や過去数年間の財務情報など買収対象企業の全体像が把握できるものです。

ファイナンシャル・アドバイザー(FA)の選定

ファイナンシャル・アドバイザー(FA)は、企業価値算定や財務的なアドバイスにとどまらず、ターゲット企業の選定や買収スキームの立案、交渉支援から最終契約、クロージングに至るまで、M&Aに関わる全般的なアドバイスを提供します。

ファイナンシャル・アドバイザー(FA)は、投資銀行、証券会社、商業銀行、M&Aアドバイザーなどが行っています。それぞれ得意とする業界や規模、報酬水準が異なるため、条件に応じてふさわしいファイナンシャル・アドバイザー(FA)を起用するのが必要です。

ターゲット企業へのアプローチと初期分析

買収候補企業との関係や買い手企業側の人脈などを考慮して、最も効果的なアプローチを検討する必要があります。買収候補企業と接触し、買収に対して前向きな意向が確認できた場合、相手側から基礎情報を提供してもらい、初期分析を行います

その分析結果をもとに、買収の方法やデューデリジェンス(DD)の実施方針を検討しましょう。

企業価値算定

初期分析の結果を鑑みて、買収金額を決めるための基礎情報となる企業価値算定を行います。価値算定の方法としてあるのは、次の3つのアプローチです。

  • マーケット・アプローチ(市場株価法、類似会社比較法など)
  • インカム・アプローチ(DCF法、収益還元法など)
  • コスト・アプローチ(修正簿価純資産法など)

基本的には複数のアプローチで評価を行い、妥当な価値レンジを算出します。

買収スキーム策定

M&Aには合併、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、新株引受、株式交換など、さまざまなスキームがあります。しかもスキームに応じて、会社法の手続き、会計・税務処理のほか、必要な資金、株価への影響、シナジー効果の実現のしやすさなど、種々の条件が異なります。

買収スキームの検討では、幅広い視野から専門家の助言も受けつつ、最適なスキームを選択するのが重要です。

交渉・基本合意(MOU、LOI)

交渉は、買収金額のほか買収する際の諸条件を明記し、買い手企業として意向表明することから始まります。価格は、現在の評価に応じた企業価値算定結果のみに限らず、買収後のシナジー効果も含めて価値を算定するのが必要です。

価格以外にも、買収スキーム、時期、買収契約条項、従業員の雇用、買収対象企業の役員の処遇などが交渉の論点となります。

基本的な条件が合意に至った時点で締結するのが、基本合意契約(MOU=Memorandum of Understanding、LOI=Letter of Intent)です。価格やスキーム、買収時期といった重要な条件を仮の条件として盛り込むのが通例です。

基本合意契約は、M&Aを実行するための法的拘束力を持つものではありません。しかしながら、排他的交渉権を買い手企業に与えることで、独占的に交渉を進めやすくするといったメリットがあります。

デューデリジェンス(DD)

基本合意後に、本格的なデューデリジェンス(DD)を実施します。デューデリジェンスの主たる目的は、買収対象企業の財務実態の把握とリスク事項の抽出および買い手企業とのシナジー効果などの詳細分析です。

デューデリジェンスの対象分野には、基本的に行われる財務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、ビジネスデューデリジェンスのほかに、必要に応じて人事デューデリジェンス、環境デューデリジェンスなどがあります。

デューデリジェンスの実務は、基本的に外部の専門家に依頼するのがほとんどです。

最終契約・クロージング

交渉の結果、全ての条件が合意に至ると、最終契約書(株式譲渡契約書、合併合意書、事業譲渡契約書など各スキームによって異なる)を締結します。これにより、各当事者は一定条件の下にM&Aを実行する法的な義務を負うのです。

最終契約書に、クロージングまでに行わなければならない事項(表明保証やクロージングコンディションと呼ばれる)を設定します。これをクリアしたあとM&Aが実行されます。

クロージングでは、株式譲渡の場合に行われるのは、株式の授受、株主名簿の書き換え、株式代金の決済などの手続きです。クロージングと同時に役員の変更手続きが行われます。

経営者の派遣

M&Aが実行された企業は、ファンドから派遣された社外取締役やファイナンシャル・アドバイザー(FA)などとともに事業再編を行います。PMI(Post Merger Integration)と称されるものです。

具体的には、100日プランやランディング・プランを作成します。これにもとづき、買収後や投資後に派遣された社外取締役やファイナンシャル・アドバイザー(FA)が指揮を執り、事業再編を進める流れです。

PMIでは、被買収企業の従業員が、買収されたことのメリットを感じられるように、印象的な成果を一刻も早く作ることが重要とされています。買収後できるだけ早く、売上に直結するようなインパクトが大きい施策を実行するよう進めなくてはなりません。

事業再編

企業再生ファンドやヘッジファンドなどは、株式のシェアに応じて、社外取締役を派遣して企業の経営権を持ちます。このように買収後の企業や投資した企業に対して、経営権を握りマネジメントするのが「ハンズオン」です。

通常、買収を検討するときに締結するタームシート(Term Sheet=条件規定書)で、株式の保有割合に応じた取締役の派遣人数を提示しておき、株主間契約でこれを規定します。

未公開会社では取締役会に自由に出席できないため、取締役会への参加権(「オブザーバー権」)を規定するのは、タームシートと同様の流れです。

売却

PMIを実施し、買収後に事業再編に成功したら、投資ファンドは企業をIPOさせたのちに市場で売却するか、ほかの会社へ株式の譲渡を行います。投資ファンドにとって、このときの株価の差額が収益です。

対象企業がIPOする場合は、IPOしたのちにロックアップ期間(IPO後、一定期間、株式を保有する旨を契約で規定)を経て、徐々に市場で株式を売却します。ロックアップ期間を設ける理由は、株式が急に市場に流れて株価の大きな変動を避けるためです。

他の会社へ株式譲渡をする場合は、興味がある企業に株式を売却します。経営者の意向を確認し、企業価値算定を行い、投資契約・株主間契約などを再度検討、修正(巻き直し)し、条件を確定したうえで売却を行う流れです。

10. 投資ファンドのM&A分析のまとめ

企業を買収する際には、プライベート・エクイティ・ファンドのリレーションや買収先企業の幅広いラインアップを用意することが必要です。企業買収をする際には、専門的な知識が必要であることはいうまでもありません。

11. ファンド業界のM&A案件一覧

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