2021年03月12日更新
投資ファンドのM&Aを分析!ファンドに買われた会社は買収後はどうなる?

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
投資ファンドのM&A手法、そのプロセス、事例を徹底解説します。概要としては、投資ファンドの中でもPEファンドに重点を置きつつ、投資ファンドのM&Aの実態に迫りました。また、投資ファンドに買われた会社の買収後のメリット、デメリットも掲示しています。
目次
1. M&Aにおける投資ファンドとは
概要・目的
投資ファンドとは、複数の投資家から資金を集めて投資ファンドというビーグル(投資するための組織体)を作り、運用のプロフェッショナル(ファンドマネージャー)が株式や債権、デリバティブ(金融派生商品)、不動産など、さまざまな投資対象に投資を実施し、運用することです。
運用して得られた利益は、投資家が投資ファンドへ出資した比率に応じて投資家に配分されます。このようにして運営を行っているビーグル(投資するための組織体)が投資ファンドです。
投資ファンドの買収とは
特にプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、投資対象として、未公開会社の株式を扱っており、会社の50%以上の株式を獲得し、企業の買収を行うことがあります。
ファンドに買われた会社は、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)による経営指導(ハンズオン)を受けながら、業績を向上させていくのが常です。
業績向上後、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は役目を終え、買収した会社の株式を第三者に売却します。
会社の業績に応じて株価は上昇するものですから、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)が買収したときよりも株価は高くなっており、売却益が出るのは必然です。
プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、このときに得られる利益を、ファンドに投資している投資家(リミテッドパートナー、一般的にLPと呼ばれる)にリターンとして配分します。
投資ファンドの運用資金
基本的にプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)が投資、または買収することで得た利益は、基本的にはその都度、投資ファンドへ投資した投資家(LP)へ配分されます。
収益の数パーセント(20%程度が一般的)は、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)を運営しているメンバー(ジェネラルパートナー、一般的にGPと呼ばれる)への成功報酬として支払われ、その残りがLPに配分する分です。
プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の運営資金は、投資によって得た収益ではなく、LPからの投資資金でまかないます。ファンドの規模にもよりますが、その額は一般的に全体の2%程度です。
資金調達手段
資金は個人の投資家、もしくは機関投資家(事業会社や投資ファンド)より集めます。
例えば、投資信託ファンドは主に上場企業に投資するファンドです。投資信託ファンドが、個人投資家から資金を調達し、投資信託などに投資をしています。
また、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)やベンチャーキャピタル(ファンド)が資金を集めるのは、機関投資家からです。
こちらは、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)のGPメンバーと個人的なつながりがある場合を除いて、個人投資家からの資金調達は行いません。
その資金調達方法としては、資金調達の期間を設けたうえで機関投資家(投資ファンドや事業会社)に声をかけ、調達目標額を集めます。
投資対象
株式、不動産、商品など、さまざまなものが投資対象になります。投資対象に応じて、それぞれの呼称は「株式ファンド」、「不動産ファンド」、「商品ファンド」などです。
さらに、未公開企業は「プライベート・エクィティ・ファンド(PEファンド)」(日本語で未公開株式ファンド)と呼びます。
最近では、音楽やアートなどに投資を行う「コンテンツファンド」も組成されており、ファンドの投資対象の幅が多様化中です。
不動産
不動産を扱うファンドは、主に「不動産投資ファンド」と「不動産投資信託(J-REIT)」の2種類があります。
不動産投資ファンドは機関投資家、不動産投資信託(J-REIT)は個人投資家が主な対象です。
不動産投資ファンドは、投資家から株式(エクイティ)と、金融機関などからの借り入れ(デット)で資金を集めます。これを元手として不動産を購入し、不動産から得られる家賃収入・売却益を投資家に配当金として配当するファンドです。
不動産投資信託(J-REIT) は、主に個人投資家から集めた資金で不動産を購入します。その資金を元手にして、賃貸収入や売却などで得た利益を分配するのです。
金融資産
金融資産とは、企業会計ではかなり広く、「現金預金、受取手形、売掛金および貸付金などの金銭債権、株式その他の出資証券および公社債などの有価証券ならびに先物取引、先渡取引、オプション取引、スワップ取引およびこれらに類似する取引(「デリバティブ取引」という。)により生じる正味の債権など」と定義されます。
これを扱うファンドは数多く存在し、投資信託ファンドやヘッジファンドなどがその一例です。
投資信託ファンドは、その中で最も馴染みがあると考えられるファンドで、どこでも(証券会社や銀行、郵便局、保険会社など)手軽に取引が可能であるという特徴を持ちます。
ヘッジファンドとは、上場株式のほか、債権、短期金融商品、デリバティブなどです。売りからでも、買いからでも取引ができる特徴があります。
株式
ファンドが取引する対象の代表格が株式です。広く一般的に、「ファンドといえば株式を扱う」という認識があるでしょう。
株式を扱うファンドも幅広く存在し、上記で説明したヘッジファンドのほか、ベンチャーキャピタル(ファンド)、企業再生ファンド、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)など、さまざまなファンドが存在します。
公開株式(上場株式)と未公開株式(未上場株式)が存在し、公開株式は市場で一般の人が自由に購入、売却可能です。一方で、未公開株式は譲渡制限がかかっているため、購入、売却するためには企業の承認(株主総会での決議)が必要になります。
投資ファンドは株式をなるべく安く買取り、さまざまな手段を駆使して株価を高めたところで売却して利益を得るのが基本です。
上場(IPO)すると広く一般の人から資金を調達できるようになるため、未公開会社はIPOを1つのゴールにしています。投資ファンドは一般的に、IPO後に企業が民間から資金を調達できるようになったタイミングで、株式を売却するわけです。
特にプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)やベンチャーファンドは、投資後に企業をIPOさせるために経営指導(ハンズオン)を行い、企業を成長させ、企業の時価総額(株価)の向上に努めます。
投資ファンドの種類
投資ファンドの種類は多種多様にあります。ヘッジファンドのような巨大ファンドから、運用資産額が数百万円規模のファンドまで、投資対象や投資規模など、実にさまざまな種類のファンドが存在するのです。
今回はその中で、投資信託ファンドとプライベート・エクイティ・ファンドについて、紹介します。
投資信託
投資ファンドとして最も有名なものは、投資信託ファンド(証券投資信託)になるでしょう。公募型と私募型が存在し、公募型は証券会社、郵便局、銀行、保険会社などで購入が可能です。
①投資信託の運用スキーム
投資信託を扱う際のステークホルダーは以下の4者となります。
- 投資家
- 販売会社(証券会社、郵便局、銀行、保険会社など)
- 運用会社(投資信託委託会社)
- 信託銀行
一般的に投資家を「受益者」、運用会社を「委託者」、信託銀行を「受託者」と呼びます。
②投資信託の分類
投資信託の分類はさまざまですが、投資対象で分類すると公社債投資信託(公社債投資)と株式投資信託(株式投資)が存在します。
投資信託は、集めた資金を株式、債権、不動産、短期金融商品、デリバティブ、ファンドなどのさまざまなもので運用するのです。
その中で公社債投資信託は、株式には一切投資せず、公社債と呼ばれるファンドや短期金融商品で運用します。こちらは、リスクの高い株式に投資しないため、比較的リスクが低いことが特徴です。ただし、利回りは低くなります。
一方で、株式投信は株式で運用しますが、公社債投資信託よりもリスクは高い分、利回りが高いことが特徴です。
投資信託ファンドは、ほかのファンドと比べるとリスクが低いことが特徴ですが、一方で元本割れのリスクがないわけではないので、注意は必要でしょう。
プライベート・エクイティ・ファンド
「ベンチャーキャピタル(ファンド)」、「バイアウトファンド」などを「プライベート・エクイティ・ファンド(未公開株ファンド)」と呼びます。
ベンチャーキャピタル(ファンド)は略して、「ベンチャーキャピタル」もしくは「VC」などと呼ばれることが多く、文字どおりベンチャー企業が投資対象です。
起業したてのベンチャー企業は、運転資金もままならない会社ばかりなので、資金需要は多分にあります。
ベンチャーキャピタル(ファンド)は、投資した企業をIPOさせるか、第三者へ株式を売却することで利益を得ることが手法です。
これをExit(イグジット)と呼びますが、ベンチャーキャピタル(ファンド)が投資した企業が成功するのは約1割ととても少ないものですが、成功すると数倍ものリターンが返ってくることがあります。
バイアウトファンドは、成熟産業を扱う企業などをターゲットに企業全体もしくは事業部を買収する手法です。経営権を握り、企業価値を高めたうえで株式を売却し、収益を得ます。
具体的な買収の仕方としては、TOB(テイクオーバービット)、MBO(マネージメント・バイアウト)、MBI(エネージメント・バイイン)といった手法です。
TOBは「株式の公開買い付け」を指します。2006(平成18)年、村上ファンドが阪神電鉄株を巡って阪急ホールディングスと争った際に、阪急ホールディングスがTOBをかけて買収しようとしたのが有名な事例です。
MBOとは、企業の経営者たちがバイアウトファンドなどと組んで株式を買取ります。つまり、親会社から独立し経営権を握る手法のことです。そのとき同時に株式の未公開化を行い、外部の投資家を排除して経営陣が経営をしやすい環境を整えることがあります。
MBIは、企業を買収した投資ファンドが、ファンドに買われた会社に外部から経営陣を送り込むことです。RHJインターナショナルや、カーライルグループが生業としている手法です。
2. 投資ファンドのM&Aの流れ
一般的な投資ファンドの企業買収から株式の売却までのプロセスを説明します。
企業の株を買収
M&Aの流れは一様ではありませんが、まずは一般的な企業の株式の買収までのプロセスを説明します。
一般的な企業の株式の買収のプロセスは、以下のとおりです。
- ターゲット企業の選定
- ファイナンシャル・アドバイザー(FA)の選定
- ターゲット企業へのアプローチと初期分析
- 企業価値算定
- 買収スキーム策定
- 交渉・基本合意(MOU、LOI)
- デューデリジェンス(DD)
- 最終契約・クロージング
ターゲット企業の選定から最終契約・クロージングまで、数ヶ月から長いものだと1年以上かかることもあります。
それだけの期間やリソースを投入しても、なおM&Aを実施することで、それをペイする大きなリターンを得られるのがM&Aの特徴です。
ターゲット企業の選定
一般的に、M&A市場は売り手市場であるものの、優良な売り案件は不足しています。そのため、M&A実行のためには、自ら企業を探しにいくことが必要です。買い手企業は自社の経営戦略、事業戦略を鑑みて、買収する企業を選定します。
ターゲット企業の選定は、幅広く情報収集をし、より魅力的かつ買収可能性の高いターゲット企業を絞り込んでいき、最終的には優先順位をつけてアプローチしていくことが必要です。
また、金融機関やM&A専門会社などから買収案件が持ち込まれることもありますが、買収企業としてふさわしいと判断された場合には、秘密保持契約(NDA)を結んで詳しい情報を入手し、検討を開始します。
このときに売り手側のファイナンシャルアドバイザー(FA)から提供される一連の情報は、インフォメーション・メモランダムと呼ばれ、事業概要や過去数年間の財務情報など買収対象企業の全体像が把握できるものです。
ファイナンシャル・アドバイザー(FA)の選定
ファイナンシャル・アドバイザー(FA)は、企業価値算定や財務的なアドバイスにとどまらず、ターゲット企業の選定や買収スキームの立案、交渉支援から最終契約、クロージングに至るまで、M&Aに関わる全般的なアドバイスを提供します。
ファイナンシャル・アドバイザー(FA)は、投資銀行、証券会社、商業銀行、M&Aアドバイザーなどが行っていますが、それぞれ得意とする業界や規模、報酬水準が異なるため、条件に応じてふさわしいファイナンシャル・アドバイザー(FA)を起用することが必要です。
ターゲット企業へのアプローチ及び初期分析
買収候補企業との関係や買い手企業側の人脈などを考慮して、最も効果的なアプローチを検討する必要があります。
買収候補企業と接触し、買収に対して前向きな意向が確認できた場合、相手側から基礎情報を提供してもらって行うのが、初期的な分析です。
その分析結果を元に、買収の方法やデューデリジェンス(DD)の実施方針を検討します。
企業価値算定
初期分析の結果を鑑みて、買収金額を決めるための基礎情報となる企業価値算定を行います。
価値算定の方法としてあるのは、次の3つのアプローチです。
- マーケット・アプローチ(市場株価法、類似会社比較法など)
- インカム・アプローチ(DCF法、収益還元法など)
- コスト・アプローチ(修正簿価純資産法など)
基本的には複数のアプローチで評価を行い、妥当な価値レンジを算出します。
買収スキーム策定
M&Aには合併、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、新株引受、株式交換など、さまざまなスキームがあります。
しかもスキームに応じて、会社法の手続き、会計・税務処理のほか、必要な資金、株価への影響、シナジー効果の実現のしやすさなど、種々の条件が異なるものです。
買収スキームの検討では、幅広い視野から専門家の助言も受けつつ、最適なスキームを選択することが重要になります。
交渉・基本合意(MOU、LOI)
交渉は買収金額のほか、買収するにあたっての諸条件を明記し、買い手企業としての意向を表明することから始まります。価格は現在の評価に応じた企業価値算定結果のみでなく、買収後のシナジー効果も含めて価値を算定することが必要です。
価格以外にも、買収スキーム、時期、買収契約条項、従業員の雇用、買収対象企業の役員の処遇などが交渉の論点となります。
基本的な条件が合意に至った時点で締結するのが、基本合意契約(MOU=Memorandum of Understanding、LOI=Letter of Intent)です。ただし、基本合意契約は、M&Aを実行するための法的拘束力を持つものではありません。
しかしながら、排他的交渉権を買い手企業に与えることで交渉を独占的(exclusive)に進めやすくなるというメリットがあります。なお、基本合意契約では、価格やスキーム、買収時期といった重要な条件を仮の条件として盛り込むのが通例です。
デューデリジェンス(DD)
基本合意後に、本格的なデューデリジェンス(DD)を実施します。
デューデリジェンス(DD)の主たる目的は、買収対象企業の財務実態の把握とリスク事項の抽出および買い手企業とのシナジー効果などの詳細分析です。
デューデリジェンス(DD)の対象分野は、基本的に必ず行われる財務デューデリジェンス(DD)、法務デューデリジェンス(DD)、ビジネスデューデリジェンス(DD)のほかに、必要に応じて人事デューデリジェンス(DD)、環境デューデリジェンス(DD)などが実施されます。
そして、デューデリジェンス(DD)の実務は、基本的に外部の専門家に依頼することがほとんどです。
最終契約・クロージング
交渉の結果、全ての条件が合意に至ると、最終契約書(株式譲渡契約書、合併合意書、事業譲渡契約書など各スキームによって異なる)を締結します。これにより、各当事者は一定条件の下にM&Aを実行する法的な義務を負うのです。
最終契約書に、クロージングまでに行わなければならない事項(表明保証やクロージングコンディションと呼ばれる)を設定し、これをクリアすることでM&Aが実行されます。
クロージングでは、株式譲渡の場合に行われるのは、株式の授受、株主名簿の書き換え、株式代金の決済などの手続きです。
また、クロージングと同時に役員の変更手続きが行われます。
経営者の派遣
企業再生ファンドやヘッジファンドなどは、株式のシェアに応じて、社外取締役を派遣して企業の経営権を持ちます。このように買収後の企業や投資した企業に対して、経営権を握りマネジメントすることが「ハンズオン」です。
通常、買収を検討するときに締結するタームシート(Term Sheet=条件規定書)で、株式の保有割合に応じた取締役の派遣人数を提示しておき、株主間契約でこれを規定します。
また、未公開会社では取締役会に自由に出席できないため、取締役会への参加権(「オブザーバー権」)を規定するのは、タームシートと同様の流れです。
事業再編
M&Aが実行された企業は、ファンドから派遣された社外取締役やファイナンシャル・アドバイザー(FA)などとともに事業再編を行います。これは、PMI(Post Merger Integration)と称されるものです。
具体的には、100日プランやランディング・プランを作成します。これに基づき、買収後や投資後に派遣された社外取締役やファイナンシャル・アドバイザー(FA)が指揮を執り、事業再編を進めるのです。
PMIでは、被買収企業の従業員が、買収後に買収されたことのメリットを感じられるように、印象的な成果を一刻も早く作ることが重要とされています。
そのため、買収後できるだけ早く、売上に直結するようなインパクトが大きい施策を実行するよう進めなくてはなりません。
売却
PMIを実施し、買収後に事業再編に成功したら、投資ファンドは企業をIPOさせたのちに市場で売却するか、他の会社へ株式の譲渡を行います。投資ファンドにとって、このときの株価の差額が収益です。
対象企業がIPOする場合は、IPOしたのちにロックアップ期間(IPO後、一定期間、株式を保有する旨を契約で規定)を経て、徐々に市場で株式を売却します。
ロックアップ期間を設ける理由としては、IPO達成後に急に株式が市場に流れて株価の大きな変動を起こすことを避けるためです。
他の会社へ株式譲渡する場合は、興味がある企業に株式を売却します。この際には経営者の意向を確認し、企業価値算定を行い、投資契約・株主間契約などを再度検討、修正(巻き直し)し、条件を確定したうえで売却を行うという流れです。
3. 投資ファンドのロールアップ戦略とは
ロールアップ戦略とは、比較的規模の小さな同業者を複数買収することにより、事業規模を拡大し、経営資源を共有化することで、短期間で収益の向上を図る戦略です。
特に、市場規模全体が拡大する可能性が低い場合、業界内でのシェアを高めるために戦略的に同業界内での買収を行うケースが増えており、投資ファンドがロールアップ戦略を行い、戦略的に再編を進めることも増加しています。
M&Aをご検討されている経営者様は、ぜひ一度M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は中小・中堅規模のM&A仲介を主に手掛けており、支援実績豊富なアドバイザーによるフルサポートを提供しています。
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無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
4. ファンドに買われた会社の買収後
投資ファンドが買収することにより、ファンドに買われた会社が買収後に得られるメリット、デメリットについて掲示します。
買収後のメリット
買収後のメリットは、主に次のとおりです。
- 資金の獲得
- 経営ノウハウの獲得
- 時間の短縮
- 信用力獲得
- 経営陣のポスト
資金の獲得
投資ファンドから資金が投入されることにより、ファンドに買われた会社の財務基盤は安定します。
また、ファンドは買収後に単独の企業に対してハンズオンすることもありますが、そのほか実施されることがあるのは、複数の企業を買収して合併させることです。
ファンドに買われた双方の会社が所有する設備や不動産のような有形資産だけでなく、顧客や取引先、技術(知財、ライセンス)などの無形資産も加わることで、事業規模の拡大を図ることが可能となります。
経営ノウハウの獲得
投資ファンドの社外取締役やファイナンシャル・アドバイザー(FA)などが、ファンドに買われた会社の経営に参画し、事業再編のために一緒に経営していくことで経営ノウハウを獲得できます。
合併を伴う買収の場合、経営管理手法の導入による業務効率化や無駄の排除、また異なる企業文化の融合による社員のモチベーション・生産性が向上する効果も期待できるでしょう。
特に規制が強く、特別な資格、ノウハウや知見が必要になる業界においては、他社が持っている技術や人材を吸収できるのは、大きなメリットです。
また、同様にファンドに買われた会社が海外の企業で、国内の企業と合併する場合、海外展開に必要なノウハウや人材を獲得できます。
時間の短縮
昨今、市場環境の変化がより早くなる中で、全て自社独力でやっているうちに他社に先を越されてしまい、淘汰されるケースが増えてきています。
他社に先んじてシェアの拡大やグローバル化、人材や技術の獲得を行うこと自体が競争優位性を発揮することです。
また、新規事業進出や多角化を行う場合にも、研究開発、技術開発、従業員教育などの時間を大幅に削減することが求められています。
投資ファンドは市場環境の予測や人材、技術の獲得手段画策のプロフェッショナルであるため、投資ファンドがファンドに買われた会社の経営に参画することで、それらを効率的に進められます。
また、そのような経営資源を所有している企業を合併することにも長けているので、ファンドに買われた会社を合併させ、さらに事業のスピードアップを図ることが可能です。
信用力獲得
投資ファンドが資金を投入することで、投資ファンドが資金を出したという実績ができ、そのこと自体が信用力の向上につながります。
さらに大規模なM&Aになるとメディアでも取り上げられるので、より大きな知名度の獲得となるでしょう。
加えて合併を伴う場合、社会的に信用力がある会社と合併することで、より大きな信用力を獲得すると同時に知名度を獲得できるのです。
経営陣のポスト
買収に伴い経営陣を一新することもありますが、その業界の知識や知見、ノウハウを持ち合わせているのはファンドに買われた会社の経営陣であるため、引き続き同様のポストに残るケースが少なくありません。
投資ファンドやファイナンシャル・アドバイザー(FA)がPMIを行っていく中で、ファンドに買われた会社の経営陣と事業再生を行い、今までの経営の非効率な部分の是正などにテコ入れすることにより、経営陣の成長も見込まれます。
買収後のデメリット
買収後のデメリットは、主に以下のようなものがあります。
- リストラ
- 事業削減
- 企業文化の否定
リストラ
M&Aが行われると、ファンドに買われた会社の非効率な人員の配置や多額な人件費の解消を目的として、人員の再配置を行うことがあります。いわゆる、リストラです。その際に、人員・人材の重複を解消して人件費を抑えるために、人員の絞り込みを行うことがあります。
しかし一方では、多彩な能力やノウハウ・経験をミックスさせることでシナジー効果を創出できるため、買収した企業の人材の雇用を維持する傾向も強くあるのも側面です。
また、合併を伴う場合には、M&Aの成立条件として、売り手企業のオーナーが買収された企業の従業員の雇用と待遇維持および改善を条件にしていることが多いため、M&Aによるリストラや雇用条件の低下は起こりにくい傾向にあります。
事業削減
M&Aを経営戦略として最大限有効活用するためには、選択と集中が必要となります。既存の事業をコア事業とノンコア事業に分類し、コア事業に注力することで、規模の拡大とコスト削減を狙ってM&Aを実行するのです。
この際に、ノンコア事業に関しては事業売却を行うことがあり、特にファンドに買われた会社は、徹底的にコスト削減を行うことが多く、結果的に既存事業削減も少なくありません。
企業文化の否定
投資ファンドに買われた会社は、投資ファンドのテコ入れが起こるため、若手中心が重視される文化になったり、徹底的にコストを削減する文化になったりと、これまでの企業文化に変化が起こります。
また、合併を伴う場合には、合併した企業同士が、お互いの文化を理解し共同で事業を進めていければよいのですが、企業文化が全く異なる企業同士が合併する場合、お互いの元の企業文化を重視しがちなため、コンフリクト(対立や軋轢)が生じがちです。
企業文化でコンフリクトが起きた場合は、人材の流出が起きる可能性があります。お互いの企業文化のすり合わせを行うために、人事交流を積極的に行うなど工夫が必要です。
スタンドアローンによって生じる課題
ファンドに買われた会社が、あるグループ会社の1社であったり、ある会社の1事業であったりする場合(特にMBOなどでは注意が必要)、グループ会社から分離独立(スタンドアローン)させることで生じるマイナスのシナジーが起こり得ます。
例えば、機能別で開発、生産、製造を独立で行っているグループ企業を買収した際に、新たなコスト(仮に資材調達コストなど)が発生するかもしれません。もしくは、グループ会社の中に顧客企業がいる場合には、その企業からの収益がなくなってしまいます。
これをスタンドアローンコストといい、条件交渉時には必ず検討しなければなりません。特に、買収を伴う投資を得意とするプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、買収企業のビジネスモデルを理解し、これらのコストをあらかじめ試算しておく必要があります。
5. 投資ファンドが目を付ける企業の特徴
近年では、投資ファンドがテレビドラマ化されるようにもなりました。基本的にドラマのように経営難の企業を買い取って成長させるケースは稀です。実際には、投資ファンドはどんな企業に目を付けるのか見ていきましょう。
規模が大きい
M&Aを行う上で、企業規模の大きさは必ず意識するポイントです。
買収時に事業を展開する業界において大きな規模の会社を買収することで、買収後に規模の経済効果を得られます。
規模の経済とは、生産量の増大に伴い、原材料や労働力に必要なコストが減少する結果、収益率が向上することです。大きな規模の会社を買収する場合、このようなスケールメリットを活かした企業活動が可能になります。
また、事業再編のためにロールアップを行う際にも、大きな規模の企業を買収していくことで、効率よくロールアップを進めることが可能です。
ただし、買収を進める上で、大き過ぎる企業を買収する場合は注意しなければなりません。仮に買収した企業の方が小さい場合は、コントロールが効かなくなるケースがあるためです。
大きな企業を買収する場合は、段階的に大きな企業に手を伸ばしていき、戦略的に買収を行うことが重要になります。
成長している
買収する企業に関して、投資ファンドが確認する成長の基準としては、以下2つの観点があります。
- 収益が伸びてきているか
- 技術や人材等が成長しているか
1の「収益が伸びてきているか」は、事業の成長を図るうえで最も大切な指標です。
プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)やベンチャー(キャピタル)ファンドに関しては、IPOをさせるうえで、売上の規模や黒字の期間が大事になってくるため、特に注意して確認します。
2の「技術や人材等が成長しているか」は、次項で説明する事業シナジーを検討するうえで大切な指標です。
こちらは、専門家に技術DD(デューデリジェンス)や知財DD(デューデリジェンス)を行い、検証します。
事業シナジーがある
買収する企業で最も重要なことは事業シナジーがあるかどうかです。
基本的に買収を検討する企業は、以下の2パターンに分かれます。
- 同じ事業を行っている競合企業
- お互いに補完関係がある類似企業
1の同じ事業を行っている競合企業を買収する場合は、同様の事業の技術やノウハウを足し合わせることで、事業の加速を図ることができます。さらに、買収後の企業規模が大きくなることで、規模の経済の恩恵を受けることも可能です。
2のお互いに補完関係がある類似企業を買収する場合は、買収後に事業領域が拡大するため、その事業領域で幅広く事業展開することができるようになります。また、競合他社を買収するときと同様に、規模の経済の効果も得られるでしょう。
6. 投資ファンドによるM&A事例5選!
実際に投資ファンドが行った事例について、5件を抽出しました。参考事例としてご覧ください。
J-STARの「paiza」への投資
J-STARは、2006(平成18)年2月に東京で設立された独立系プライベート・エクイティファンドで、主として中小企業をターゲットとした投資を実施しています。
J-STARの最新投資案件としては、2020(令和元)年1月、新規事業立ち上げ支援業を行っている東京のエムアウトの子会社である東京のギノに対し、MBO支援契約を締結しました。ギノの行う、ITエンジニアの求職や学習プラットフォーム「paiza」事業の今後の成長に着目しての投資です。
J-STARは、これまでにも人気アパレル「WEGO」や、エンタメ居酒屋「相席屋」を展開するセクションエイトなどに投資し、着実に業績拡大させてきているので、「paiza」事業の今後にも期待がかけられています。
産業革新機構によるジャパンディスプレイの買収
産業革新機構は、政府の財政投融資を民間の企業に投資する官民ファンドです。2018(平成30)年9月に産業革新機構は会社分割を行い、産業革新投資機構と株式会社INCJに分割しました。
産業革新投資機構では、政府が定めた投資基準を加味しつつ、投資可否の判断は民間のプロフェッショナルによって行われます。
ジャパンディスプレイは、産業革新機構主導のもと、ソニー、東芝及び日立のディスプレイ事業を統合して2012(平成24)年4月に誕生しました。
その後、ジャパンディスプレイは、2014(平成26)年3月、東証1部上場を果たし、初値は公開価格よりも割安となったものの、産業革新機構は、上場時点の売却益と含み益の合計で1,300億円ほどの利益が出ています。
ベインキャピタルのすかいらーくの買収
ベインキャピタルは、世界的に有名なプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の1つです。同社は世界中で大きな買収に関与してきました。日本でも大規模なM&Aを多数手掛けており、その代表格が「すかいらーく」の買収です。
ベインは、すかいらーくの上場廃止を主導した野村プリンシパル・ファイナンスなどから、2011(平成23)年に株式を譲り受けました。
その後、ベインはファミリーレストランすかいらーくの全店舗の廃止および低価格帯ファミリーレストランガストなどの展開を主導し、2014年に東証1部に再上場させ企業再生を成功させています。
企業再生機構の日本航空の買収
日本航空は2010(平成22)年1月に実質的に破産し、負債総額は2兆3,200億円で、金融機関の破産を除けば過去最大の倒産劇でした。
破綻の直接の原因は地方の不採算路線の拡大ですが、長年の不採算コスト(高額な人件費、ジャンボ機の大量保有など)の蓄積がたたったものとなります。
企業再生機構の主導の元、子会社・グループ会社の削減に力を入れ、そのほかさまざまな施策の実施により、見事、2012年9月に再上場を果たしました。その際に、企業再生機構は保有する全株式を売却し、売却総額6,633億円を得ています。
カーライルグループのキトーの買収
カーライルグループは、2003(平成15)年8月にクレーンなどの製造販売会社であるキトーに対して、経営陣の了解を得たうえでTOBを実施し、キトーを買収しました。キトーはジャスダックの上場会社でしたが、その後MBOを行い未公開会社としています。
経営権を握ったカーライルグループは、次のような改革を実施しました。
- 意思決定簡素化のため取締役会簡素化
- 赤字事業の売却
- 製造現場の業務フロー改善・在庫圧縮
- 海外子会社の経営体制見直しや工場建設、役員招聘
このような意欲的な改革を実施し、2007(平成19)年に、キトーは見事、東証1部に再上場を果たしたのです。
7. 投資ファンドのM&A分析まとめ
企業を買収する際には、プライベート・エクイティ・ファンドのリレーションや買収先企業の幅広いラインナップを用意することが必要です。また、企業買収をする際には、専門的な知識が必要であることはいうまでもありません。
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