投資ファンドのM&Aを分析!ファンドに買われた会社は買収後はどうなる?

Medium
この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

投資ファンドのM&Aの手法、プロセス、事例を徹底解説します。さらに投資ファンドに買われた会社のメリット、デメリットにも追求し、M&Aに対する疑問に回答します。M&Aを実施するためのハードルは高くありません。ご検討する際の参考にご活用ください。

目次

  1. M&Aにおける投資ファンドとは
  2. 投資ファンドのM&Aの流れ
  3. 投資ファンドのロールアップ戦略とは
  4. ファンドに買われた会社の買収後
  5. 投資ファンドが目を付ける企業の特徴
  6. 投資ファンドによるM&A事例5選!
  7. 投資ファンドのM&A分析まとめ
  • 今すぐ買収ニーズを登録する
  • 公認会計士がM&Aをフルサポート まずは無料相談

1. M&Aにおける投資ファンドとは

M&A 投資ファンド

概要・目的

投資ファンドとは複数の投資家から資金を集めて投資ファンドというビーグル(投資するための組織体)を作り、運用のプロフェッショナル(ファンドマネージャー)が株式や債権、デリバティブ(金融派生商品)、不動産等、様々な投資対象に投資を実施し、運用します。

運用して得られた利益は、投資家が投資ファンドへ出資した比率に応じて投資家に配分されます。このようにして運営を行っているビーグル(投資するための組織体)を投資ファンドといいます。

投資ファンドの買収とは

特にプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、投資対象として、未公開会社の株式を扱っており、会社の50%以上を獲得し、企業の買収を行うことがあります。

ファンドに買われた会社は、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)による経営指導(ハンズオン)を受けながらで、業績を向上させていきます。

業績向上後、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は役目を終えて、買収した会社の株式を第三者に売却します。

会社の業績に応じて、株価は向上しているので、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)が買収したときよりも高くなっており、売却益がでます。

このときの収益で、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は利益を得ます。この利益をプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、ファンドに投資してくれている投資家(リミテッドパートナー。一般的にLPと呼ばれる)にリターンを返します。

投資ファンドの運用資金

基本的にプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)が投資、または買収することで、得た利益は基本的には、都度投資ファンドへ投資した投資ファンド(LP)へ配分されます。

収益の数パーセント(20%程度が一般的)は、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)を運営しているメンバー(ジェネラルパートナー。一般的にGPと呼ばれる)への成功報酬として支払われますが、残りはLPに配分されます。

プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の運営の資金は投資によって得た収益ではなく、LPからの投資資金でまかないます(ファンドの規模にもよりますが、一般的に2%程度)。

資金調達手段

資金は個人の投資家、もしくは機関投資家(事業会社や投資ファンド)より集めます。

例えば投資信託ファンドは主に上場企業に投資するファンドです。投資信託ファンドが、個人投資家から資金を調達し、投資信託等に投資をしています。

逆に例えばプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)やベンチャーキャピタル(ファンド)は機関投資家から資金を集めます。

こちらはプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)のGPメンバーと個人的なつながりがある場合を除いて、個人投資家からの資金調達は行いません。

こちらでは資金調達の期間を設け、機関投資家(投資ファンドや事業会社)に声をかけ、調達目標額を集めます。

投資対象

株式、不動産、商品等、様々なものが投資対象になります。投資対象に応じて、それぞれ「株式ファンド」、「不動産ファンド」、「商品ファンド」と呼びます。

さらに未公開企業は、「プライベート・エクィティ・ファンド(PEファンド)」(日本語で未公開株式ファンド)と呼びます。

最近では音楽やアート等に投資を行う「コンテンツファンド」も組成されており、様々なものを投資対象としたファンドが立ち上がっています。

不動産

不動産を扱うファンドは主に「不動産投資ファンド」と「不動産投資信託(J-REIT)」の2種類あります。

不動産投資ファンドは主に機関投資家、不動産投資信託(J-REIT)は主に個人投資家を対象にしています。

不動産投資ファンドは投資家から株式(エクイティ)と、金融機関などからの借り入れ(デット)で資金を集めます。これを元手として不動産を購入し、不動産から得られる家賃収入・売却益を投資家に配当金として配当するファンドです。

不動産投資信託(J-REIT) は主に個人投資家から集めた資金で不動産を購入します。その資金を元手に賃貸収入や売却などで得た利益を分配します。

金融資産

金融資産とは、企業会計ではかなり広く、「現金預金、受取手形、売掛金及び貸付金等の金銭債権、株式その他の出資証券及び公社債等の有価証券並びに先物取引、先渡取引、オプション取引、スワップ取引及びこれらに類似する取引(「デリバティブ取引」という。)により生じる正味の債権等」と定義されます。

これを扱うファンドは数多く存在し、例えば投資信託ファンドやヘッジファンド等が当てはまります。

投資信託ファンドはその中で最も馴染みのあるファンドで、どこでも(証券会社や銀行、郵便局、保険会社等)手軽に取引が可能であるという特徴を持ちます。

ヘッジファンドは上場株式の他、債権、短期金融商品、デリバティブ等を扱っています。売りからでも買いからでも取引ができることが特徴です。

株式

ファンドが取引する対象の代表格が株式です。広く一般的に「ファンドといえば株式を扱う」という認識を持つでしょう。

株式を扱うファンドも幅広く存在し、上記で説明したヘッジファンドの他、ベンチャーキャピタル(ファンド)、企業再生ファンド、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)等、様々なファンドが存在します。

公開株式(上場株式)と未公開株式(未上場株式)が存在し、公開株式は市場で一般の人が自由に購入、売却できます。一方で未公開株式は譲渡制限がかかっているため、購入、売却するためには企業の承認(株主総会での決議)が必要です。

基本的に投資ファンドは株式を安く買取、様々な手段を駆使して株価を高めたところで売却して利益を得ます。

上場(IPO)すると広く一般の人から資金を調達できるようになるため、未公開会社はIPOを一つのゴールにしています。投資ファンドは一般的にIPO後に企業が民間から資金を調達できるようになったタイミングで、株式を売却します。

特にプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)やベンチャーファンドは、投資後に企業をIPOさせるために経営指導(ハンズオン)を行い、企業を成長させ、企業の時価総額(株価の向上につながる)の向上に努めます。

投資ファンドの種類

投資ファンドの種類は多種多様です。ヘッジファンドのような巨大ファンドから、運用資産額が数百万円規模のファンドまで、投資対象や投資規模等、様々な種類のファンドが存在します。

今回はその中で、投資信託ファンドとプライベート・エクイティ・ファンドについて紹介します。

投資信託

投資ファンドといわれてもっとも有名なものは投資信託ファンド(証券投資信託)になるでしょう。公募型と私募型が存在し、公募型は証券会社、郵便局、銀行、保険会社等で購入が可能です。

①投資信託の運用スキーム
投資信託を扱う際のステークホルダーは以下の4者となります。

  • 投資家
  • 販売会社(証券会社、郵便局、銀行、保険会社等)
  • 運用会社(投資信託委託会社)
  • 信託銀行
基本的な運用方法としては、投資家が信託銀行に預けたお金を運用会社が運用します。その運用益を分配金や、償還金という形で、投資家にリターンとして、返します。

一般的に投資家を「受益者」、運用会社を「委託者」、信託銀行を「受託者」と呼びます。

②投資信託の分類
投資信託の分類は様々ですが、投資対象で分類すると公社債投資信託(公社債投資)と株式投資信託(株式投資)が存在します。

投資信託は集めた資金を株式、債権、不動産、短期金融商品、デリバティブ、ファンド等の様々なもので運用します。

その中で公社債投資信託は、株式には一切投資せず、公社債と呼ばれるファンドや短期金融商品で運用します。こちらは、リスクの高い株式に投資しないため、比較的リスクが低いことが特徴です。(ただし利回りは低い。)

一方で、株式投信は主に株式で運用します。こちらは株式に投資するため、公社債投資信託よりもリスクは高いですが利回りが高いことが特徴です。

投資信託ファンドは、比較的他のファンドと比べるとリスクが低いことが特徴ですが、一方で元本割れのリスクがないわけではないので、注意が必要です。

プライベート・エクイティ・ファンド

「ベンチャーキャピタル(ファンド)」「バイアウトファンド」などを「プライベート・エクイティ・ファンド(未公開株ファンド)」と呼びます。

ベンチャーキャピタル(ファンド)は略して、「ベンチャーキャピタル」もしくは「VC」などと呼ばれることが多く、文字通りベンチャー企業を対象に投資を行います。

起業したてのベンチャー企業は、運転資金もままならない会社ばかりなので、資金需要は多分にあります。

ベンチャーキャピタル(ファンド)は、投資した企業をIPOさせるか第三者へ株式を売却することで利益を得ます。

これをExitと呼びますが、ベンチャーキャピタル(ファンド)が投資した企業が成功するのは約1割ととても少ないものですが、成功すると数倍ものリターンが返ってくることがあります。

バイアウトファンドは成熟産業を扱う企業などをターゲットに企業全体もしくは事業部を買収します。経営権を握り、企業価値を高めた上で株式を売却し、収益を得ます。

具体的な買収の仕方としては、TOB(テイクオーバービット)、MBO(マネージメント・バイアウト)、MBI(エネージメント・バイイン)といった手法を駆使します。

TOBは「株式の公開買い付け」です。2006年村上ファンドが阪神電鉄株を巡って阪急ホールディングスと争った際に阪急ホールディングスがTOBをかけて買収しようとしたのが有名な事例です。

MBOとは企業の経営者たちがバイアウトファンドなどと組んで株式を買取り、元の企業から独立し、経営権を握る手法です。合わせて株式の未公開化を行い、外部の投資家を排除し、経営陣が経営をしやすい環境を整えることがあります。

MBIは企業を買収した投資ファンドが、ファンドに買われた会社に外部から経営陣を送り込むことです。RHJインターナショナルや、カーライルグループが生業としている手法です。

【関連】M&Aによる投資方法と成功ポイントを解説!

2. 投資ファンドのM&Aの流れ

一般的な投資ファンドの企業買収から株式の売却までのプロセスを説明します。

M&A 流れ

企業の株を買収

M&Aの流れは一様ではありませんが、まずは一般的な企業の株式の買収までのプロセスを説明します。

一般的な企業の株式の買収のプロセスは以下の通りとなります。

  • ターゲット企業の選定
  • ファイナンシャル・アドバイザー(FA)の選定
  • ターゲット企業へのアプローチと初期分析
  • 企業価値算定
  • 買収スキーム策定
  • 交渉・基本合意(MOU、LOI)
  • デューデリジェンス(DD)
  • 最終契約・クロージング

ターゲット企業の選定から最終契約・クロージングまで、数ヶ月から長いものだと1年以上かかることもあります。

それだけの期間やリソースを投入しても、なおM&Aを実施することで、それをペイする大きなリターンを得ることができるのがM&Aの特徴です。

ターゲット企業の選定

一般的にM&A市場は売り手市場であるものの、優良な売り案件は不足しています。そのため、M&Aの実行のためには、自ら企業を探しにいく必要があります。買い手企業は自社の経営戦略、事業戦略を鑑みて、買収する企業を選定します。

ターゲット企業の選定は、幅広く情報収集をし、より魅力的かつ買収可能性の高いターゲット企業を絞り込んでいき、最終的には優先順位をつけてアプローチしていく必要があります。

または金融機関やM&A専門会社などから買収案件が持ち込まれることがありますが、買収企業としてふさわしいと判断された場合には、秘密保持計画(NDA)を結んで詳しい情報を入手し、検討を開始します。

このときに売り手側のファイナンシャルアドバイザー(FA)から提供される一連の情報は、インフォメーション・メモランダムと呼ばれ、事業概要や過去数年間の財務情報など買収対象企業の全体像が把握できるものになります。

ファイナンシャル・アドバイザー(FA)の選定

ファイナンシャル・アドバイザー(FA)は、企業価値算定や財務的なアドバイスにとどまらず、ターゲット企業の選定や買収スキームの立案、交渉支援から最終契約、クロージングに至るまでM&Aに関わる全般的なアドバイスを提供します。

ファイナンシャル・アドバイザー(FA)は投資銀行、証券会社、商業銀行、M&Aアドバイザー等が行っていますが、それぞれ得意とする業界や規模、報酬水準が異なるため、条件に応じてふさわしいファイナンシャル・アドバイザー(FA)を起用すること必要があります。

ターゲット企業へのアプローチ及び初期分析

買収候補企業との関係や買い手企業側の人脈などを考慮して、もっとも効果的なアプローチを検討する必要がります。

買収候補企業と接触し、買収に対して前向きな意向が確認できた場合、相手側から基礎情報を提供してもらい、初期的な分析を行います。

その分析結果を元に、買収の方法やデューデリジェンス(DD)の実施方針を検討します。

企業価値算定

初期分析の結果を鑑みて、買収金額を決めるための基礎情報となる企業価値算定を行います。

価値算定には、次の3つのアプローチがあります。

  • マーケット・アプローチ(市場株価法、類似会社比較法等)
  • インカム・アプローチ(DCF法、収益還元法等)
  • コスト・アプローチ(修正簿価純資産法等)

基本的には複数のアプローチで評価を行い、妥当な価値レンジを算出します。

買収スキーム策定

M&Aには合併、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、新株引受、株式交換等、様々なスキームがあります。

しかもスキームに応じて、会社法の手続き、会計・税務処理の他、必要な資金、株価への影響、シナジー効果の実現のしやすさ等、様々な条件も異なってきます。

買収スキームの検討では、幅広い視野から専門家の助言も受けつつ、最適なスキームを選択することが重要です。

交渉・基本合意(MOU、LOI)

交渉は買収金額の他、買収するにあたって諸条件を明記し、買い手企業としての意向を表明することから始まります。価格は現在の評価に応じた企業価値算定結果のみでなく、買収後のシナジー効果も含めて価値を算定する必要があります。

価格以外にも買収スキーム、時期、買収契約条項、従業員の雇用、買収対象企業の役員の処遇等が交渉の論点となります。

基本的な条件が合意に至った時点で、基本合意契約(LOI、MOU)を締結します。基本合意契約は基本的にはM&Aを実行するための法的拘束力を持つものではありません。

しかし排他的交渉権を買い手企業に与えることで交渉をexclusiveに進めやすくなるというメリットがあります。基本合意では価格やスキーム、買収時期といった重要な条件を仮の条件として盛り込みます。

デューデリジェンス(DD)

基本合意後に本格的なデューデリジェンス(DD)を実施します。

デューデリジェンス(DD)の主たる目的は、買収対象企業の財務実態の把握とリスク事項の抽出、及び買い手企業とのシナジー効果等の詳細分析です。

デューデリジェンス(DD)の対象分野は、財務デューデリジェンス(DD)、法務デューデリジェンス(DD)、ビジネスデューデリジェンス(DD)は基本的に必ず行いますが、必要に応じて人事デューデリジェンス(DD)、環境デューデリジェンス(DD)も行われます。

基本的には外部の専門家に依頼することがほとんどです。

最終契約・クロージング

交渉の結果、全ての条件が合意に至ると、最終契約書(株式譲渡契約書、合併合意書、事業譲渡契約書等)を締結します。これにより、各当事者は一定条件の下にM&Aを実行する法的な義務を負います。

最終契約書にクロージングまでに行わなければならない事項(表明保証やクロージングコンディションと呼ばれる)を設定し、これをクリアすることでM&Aが実行されます。

クロージングでは、株式譲渡の場合、株式の授受、株主名簿の書き換え、株式代金の決済等の手続きが行います。

またクロージングと同時に役員の変更手続きが行われます。

経営者の派遣

企業再生ファンドやヘッジファンド等は株式のシェアに応じて、社外取締役を派遣して企業の経営権を持ちます。このように買収後の企業や投資した企業に対して、経営権を握り、マネジメントすることを「ハンズオン」するといいます。

通常、買収を検討するときに締結するTerm Sheetで株式の○%以上所有している場合は取締役を○名派遣することができることを決定し、株主間契約でこれを規定します。

また未公開会社では、取締役会に自由に出席できないので、Teem Sheetと同様の流れで取締役会への参加権(「オブザーバー権」)を規定します。

事業再編

M&Aが実行された企業は、ファンドから派遣された社外取締役やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)等とともに事業再編を行います。これをPMI(Post Merger Integration)と呼びます

具体的には、100日プランやランディング・プランを作成します。これに基づき買収後や投資後にプランを実行していきます。具体的にはPMIを実行するFAやアドバイザーが指揮を執り、事業再編を進めていくことになります。

PMIでは被買収企業の従業員が、買収後に買収されたことのメリットを感じられるような印象的な成果を一刻も早く作ることが、重要です。

そのため、買収後できるだけ早く売上に直結するようなインパクトが大きい施策を実行するよう進めなくてはなりません。

売却

PMIを実施し、買収後に事業再編に成功したら投資ファンドは企業をIPOさせたのちに市場で売却するか他の会社へ株式の譲渡を行います。投資ファンドはこの時の株価の差益で収益を得ます。

対象企業がIPOする場合は、IPOしたのちにロックアップ期間(IPO後一定期間株式を保有する旨を契約で規定)を経て、徐々に市場で株式を売却します。

ロックアップ期間を設ける理由としては、IPO達成後に急に株式が市場に流れて株価の大きな変動を起こすことを避けるためです。

他の会社へ株式譲渡する場合は、興味がある企業に株式を売却します。この際には経営者の意向を確認し、企業価値算定を行い、投資契約・株主間契約等を再度検討、修正し(巻き直し)、条件を確定した上で売却を行います。

【関連】M&Aのプロセスまとめ!
【関連】M&Aのスケジュールを解説!【買収までの流れ・手順】

3. 投資ファンドのロールアップ戦略とは

比較的規模の小さな同業者を複数買収することにより、事業規模を拡大し、経営資源を共有化することで、短期間で収益の向上を図る戦略です。

特に、市場規模全体が拡大する可能性が低い場合、業界内でのシェアを高めるために戦略的に同業界内での買収を行うケースが増えており、投資ファンドがロールアップ戦略を行い、戦略的に再編を進めることも増加しています。

4. ファンドに買われた会社の買収後

M&A ロールアップ戦略

投資ファンドが買収することにより、ファンドに買われた会社が買収後に得られるメリット、デメリットは次のようなものがあります。

M&A 買収後 企業

買収後のメリット

買収後のデメリットは主に次の通りです。

  • 資金の獲得
  • 経営ノウハウの獲得
  • 時間の短縮
  • 信用力獲得
  • 経営陣のポスト

資金の獲得

投資ファンドから資金が投入されることにより、ファンドに買われた会社の財務基盤が安定します。

またファンドが買収して、単独の企業に対してハンズオンすることもありますが、複数の企業を買収して合併させることもあります。

ファンドに買われた双方の会社が所有する設備や不動産のような有形資産だけでなく、顧客や取引先、技術(知財、ライセンス)等の無形資産も加わることで、事業規模の拡大を図ることが可能となります。
 

経営ノウハウの獲得

投資ファンドの社外取締役やFA等がファンドに買われた会社に参画し、事業再編のために一緒に経営していくことで経営ノウハウを獲得することができます。

合併を伴う買収の場合、経営管理手法の導入による業務効率化や無駄の排除、また異なる企業文化の融合による社員のモチベーション・生産性の向上の効果も期待できます。

特に規制が強く、特別な資格、ノウハウや知見が必要になる業界において、他社が持っている技術や人材を吸収することができることもできます。

また同様にファンドに買われた会社が海外の企業で、国内の企業と合併する場合、海外展開に必要なノウハウや人材を獲得することができます。

時間の短縮

市場環境の変化がより早くなる中で、全て自社でやっているうちに他社に先を越されてしまい、淘汰されるケースが増えてきていています。

他社に先んじてシェアの拡大やグローバル化、人材や技術の獲得を行うこと自体が競争優位性を発揮することがあります。

また、新規事業進出や多角化を行う場合にも、研究開発、技術開発、従業員教育等の時間を大幅に削減することが求められています。

投資ファンドは市場環境の予測や人材、技術の獲得手段画策のプロフェッショナルのため、投資ファンドがファンドに買われた会社の経営に参画することで、効率的に進めることができます。

また、そのような経営資源を所有している企業を合併させるすることにも長けているので、ファンドに買われた会社を合併させ、さらに事業のスピードアップを図ることが可能になります。

信用力獲得

投資ファンドが資金を投入することで、投資ファンドが資金を出したという実績ができますので、信用力の向上につながります。

さらに大規模なM&Aになりますとメディアでも取り上げられますので、より大きな知名度の獲得につながります。

加えて合併を伴う場合、社会的に信用力がある会社と合併することで、信用力を獲得するとともに知名度を獲得することができます。

経営陣のポスト

買収に伴い経営陣を一新することもありますが、その業界の知識や知見、ノウハウを持ち合わせているのはファンドに買われた会社の経営陣のため、引き続き同様のポストに残るケースが多いです。

投資ファンドやファイナンシャル・アドバイザー(FA)がPMIを行っていく中で、ファンドに買われた会社の経営陣と事業再生を行い、今までの経営の非効率な部分の是正などをテコ入れすることにより、経営陣の成長も見込まれます。

買収後のデメリット

買収後のデメリットは主に以下のようなものがあります。

  • リストラ
  • 事業削減
  • 企業文化の否定

リストラ

M&Aが行われるとファンドに買われた会社の非効率な人員の配置や多額な人件費の解消を目的として、人員の再配置を行うことがあります。その際に人員・人材の重複を解消して人件費を抑えるために、人員の絞り込みを行うことがあります。

しかし一方では、多彩な能力やノウハウ・経験をミックスさせることでシナジー効果を創出できるため、買収した企業の人材の雇用を維持する傾向も強くあります。

また合併を伴う場合には、M&Aの成立条件として、売り手企業のオーナーが買収された企業の従業員の雇用と待遇維持及び改善を条件にしていることが多いため、M&Aによるリストラや雇用条件の低下は起こりにくい傾向にあります。

事業削減

M&Aを経営戦略として最大限有効活用するためには、選択と集中が必要となります。既存の事業をコア事業とノンコア事業に分類し、コア事業に注力することで、規模の拡大とコスト削減を狙ってM&Aを実行します。

この際にノンコア事業に関しては事業売却を行うことがあり、特にファンドに買われた会社は、徹底的にコスト削減を行うことが多いので、既存事業を削減することがあります。

企業文化の否定

投資ファンドに買われた会社は、投資ファンドのテコ入れが起こるため、若手中心が重視される文化になったり、徹底的にコストを削減する文化になったりと、企業文化に変化が起こります。

また合併を伴う場合には、合併した企業どうしが、お互いの文化を理解し、共同で事業を進めていければ良いのですが、全く異なる企業どうしが合併する場合、元の企業文化を重視しがちなため、コンフリクトが起きがちです。

企業文化でコンフリクトが起きた場合は、人材の流出が起きる可能性があります。お互いの企業の文化のすり合わせを行うために、人事交流を積極的に行うなど、工夫が必要になります。

スタンドアローンによって生じる課題

ファンドに買われた会社が、あるグループ会社の一社であったり、ある会社の一事業であったりする場合(特にMBO等では注意が必要)際に、グループ会社、会社から分離独立(スタンドアローン)させることで生じるマイナスのシナジーが起こることがあります。

例えば機能別で(開発、生産、製造)を独立で行っているグループ企業を買収した際に新たなコスト(例えば資材の調達コスト)が発生することがあります。もしくは、グループ会社の中に顧客企業がいる場合には、その企業からの収益がなくなってしまいます。

これをスタンドアローンコストといい、条件交渉時には必ず検討します。特に買収を伴う投資を得意とするプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、買収企業のビジネスモデルを理解し、これらのコストをあらかじめ試算しておく必要があります。

5. 投資ファンドが目を付ける企業の特徴

投資ファンド ターゲット企業

ドラマの「ハゲタカ」をイメージしていただくと、イメージがわきやすいと思います。基本的にドラマのように経営難の企業を買い取って成長させるケースは稀で、多くの自社の成長にとってプラスになる会社を買収することを目的としています。

規模が大きい

M&Aを行う上で、規模の大きさは必ず意識するポイントです。

買収時に事業を展開する業界において、大きな規模の会社を買収することで、買収後に規模の経済の効果を得られます。

規模の経済とは、生産量の増大に伴い、原材料や労働力に必要なコストが減少する結果、収益率が向上することをいいます。大きな規模の会社を買収する場合、このようなスケールメリットを活かした企業活動が可能になります。

また事業再編のためにロールアップを行う際にも、大きな規模の企業を買収していくことで効率よく、ロールアップを進めることを意識します。

ただし、買収を進める上で、大きすぎる企業を買収する場合には注意が必要です。買収した企業の方が小さい場合は、コントロールが効かなくなることがあるためです。

大きな企業を買収する場合は、段階的に大きな企業に手を伸ばしていき、戦略的に買収を行うことが重要です。

成長している

買収する企業に関して、投資ファンドが確認する成長の基準としては、以下の2つの観点があります。

  1. 収益が伸びてきているか
  2. 技術や人材等が成長しているか

1.収益が伸びてきているかは、事業の成長を図る上で、最も大切な指標になります。

プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)やベンチャー(キャピタル)ファンドに関しては、IPOをさせる上で、売上の規模や黒字の期間が大事になってくるため、特に注意して確認します。

2.技術や人材等が成長しているかは、以下で説明する事業シナジーを検討する上で、大切な指標になります。

こちらは専門家に技術DD(デューデリジェンス)や知財DD(デューデリジェンス)を行い、検証します。

事業シナジーがある

買収する企業で最も重要なことは事業シナジーがあるかどうかです。

基本的に買収を検討する企業は、

  1. 同じ事業を行っている競合企業
  2. お互いに補完関係がある類似企業
に分かれます。

1.同じ事業を行っている競合企業を買収する場合は、同様の事業の技術やノウハウを足し合わせることで、事業の加速を図ることができます。さらに買収後の企業の規模が大きくなることで規模の経済の恩恵を受けることも出来ます。

2,お互いに補完関係がある類似企業を買収する場合は、買収後に事業領域が拡大するため、その事業領域で幅広く展開することができるようになります。また、競合他社を買収するときと同様に規模の経済の効果があります。

6. 投資ファンドによるM&A事例5選!

M&A 事例

企業再生機構の日本航空の買収

日本航空は2010年1月に実質的に破産し、負債総額は2兆3200億円で、金融機関の破産を除けば過去最大の倒産劇でした。

破綻の直接の原因は地方の不採算路線の拡大ですが、長年の不採算コスト(高額な人権費、ジャンボ機の大量保有等)の蓄積がたたったものとなります。

企業再生機構の主導の元、子会社・グループ会社の削減に力を入れ、その他様々な施策の実施により、見事2012年9月に再上場を果たしました。その際に企業再生機構は保有する全株式を売却し、売却総額は6633億円に達しました。

産業革新機構によるジャパンディスプレイの買収

産業革新機構は、政府の財政投融資を民間の企業に投資する官民ファンドです。2018年9月に産業革新機構は会社分割を行い、産業革新投資機構と株式会社INCJに分割しています。

政府が定めた投資基準を加味しつつ、投資可否の判断は民間のプロフェッショナルによって行われます。

ジャパンディスプレイは、産業革新機構主導のもと、ソニー、東芝及び日立のディスプレイ事業を統合して誕生しました。

14年3月、東証1部上場を果たしたものの、初値は公開価格よりも割安となったものの、産業革新機構は、上場時点の売却益と含み益の合計で1300億円ほどの利益が出ました。

カーライルグループのキトーの買収

カーライルグループは2003年8月にクレーン等の製造販売会社であるキトーに対して、経営陣の了解を得た上でTOBを実施し、キトーを買収しました。ジャスダックの上場会社でしたが、その後MBOを行い、未公開会社となりました。

経営権を握ったカーライルグループは次のような改革を実施しました。

  • 意思決定の簡素化のため取締役会の簡素化
  • 赤字事業の売却
  • 製造現場の業務フローの改善・在庫の圧縮
  • 海外子会社の経営体制の見直しや工場の建設、役員の招聘等

このような意欲的な改革を実施し、2007年にキトーは見事東証一部に再上場を果たしました。

ベインキャピタルのすかいらーくの買収

ベインキャピタルは世界的に有名なプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の1つです。同社は世界中で大きな買収に関与してきました。日本でも大規模なM&Aを多数手掛けており、その代表格が「すかいらーく」の買収です。

ベインは、すかいらーくの上場廃止を主導した野村プリンシパル・ファイナンスなどから2011年に株式を譲り受けました。

その後、ベインはファミリーレストランすかいらーくの全店舗の廃止及び低価格帯ファミリーレストランガストなどの展開を主導し、2014年に東証1部に再上場させ、企業再生を成功させました。

ユニゾン・キャピタルのスシローグループの買収

ユニゾン・キャピタルは1998年に日本で設立された独立系のプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)です。設立以来、他のプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)との共同投資や経営陣を巻き込んだMBOによるM&Aも数多く手がけています。

ユニゾン・キャピタルが買収した後、MBOにより非公開化したスシローは、ブランドの認知力向上と顧客満足度向上に注力しました。

それらの目標を達成したのち、ユニゾン・キャピタルは2012年9月にプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)のペルミラに全株式を売却し、見事Exitを成功させました。

7. 投資ファンドのM&A分析まとめ

M&A 分析 まとめ

企業を買収する際には、プライベート・エクイティ・ファンドのリレーションや買収先企業の幅広いラインナップを用意することが必要です。また、企業買収をする際には、専門的な知識が必要が必要であることはいうまでもありません。

M&A総合研究所は様々なプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)とのリレーションが強いので ファンドと企業の買い手のM&A仲介も行なっています。 ファンドのお客様もまずは、お気軽にご相談ください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談なら専門の会計士のいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 業界最安値水準!完全成果報酬!
  2. M&Aに強い会計士がフルサポート
  3. 圧倒的なスピード対応
  4. 独自のAIシステムによる高いマッチング精度
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は会計士が運営するM&A仲介会社です。
企業会計に強く、かつM&Aの実績も豊富です。全国にパートナーがいるので案件数も豊富。
また、業界最安値水準の完全成果報酬制のため、M&Aが成約するまで完全無料になります。
まずはお気軽に無料相談してください。

>>【※国内最安値水準】M&A仲介サービスはこちら

電話で無料相談WEBから無料相談
  • 02
  • 03
  • 04
  • 05

関連するまとめ

人気の記事

人気のあるまとめランキング

新着一覧

最近公開されたまとめ