負ののれんとは?分かりやすく解説!仕訳、税務処理はどうなるの?

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

M&Aにおいては、買収相手を純資産より高い金額で買収した場合に、のれんが発生します。一方で、純資産より低い金額で買収するケースもなくはありません。この場合に発生するのは、負ののれんです。この負ののれんについて解説しました。

目次

  1. 負ののれんとは?
  2. 負ののれんが生まれる原因
  3. 負ののれんの仕訳・財務処理
  4. 負ののれんが発生した事例5選
  5. まとめ
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1. 負ののれんとは?

負ののれんとは?

負ののれんは、「のれん」と裏表の関係です。この辺りを解説します。

のれんとは?

のれんを一言で言うと、「被買収企業の公正純資産額と買収価格の差額」です。もっとかみ砕いていえば、「買収金額から買収した企業の純資産の金額を引いた金額」です。

この差額が生じるメカニズムですが、まず、企業が自身で持つ資産から負債を差し引いた帳簿上の価値が純資産です。しかし、M&Aで企業を買収する場合は通常、買収先の純資産に加えて、買収先の持つブランド力や技術力、人的資源や地理的条件、顧客ネットワークなどの、見えない資産価値を加えた金額で買収します

この見えない資産価値(「超過収益力」と言われることもあります)が「のれん」です。見えない資産価値で、買収先の貸借対照表には載っていない資産ですから、簿外資産と言うこともできます。しかし買収した企業においては、のれんは買収時に貸借対照表上の借り方(資産側)に計上されます。

のれんは、マイナスになることも

ただし、こののれんは、M&Aにおいてはマイナスが発生することがあります。「買収した企業の純資産額より、低い金額で買収した」場合です。

これがいわば「負ののれん」で、後で解説します。

のれんと呼ばれる理由

しかし、のれんと言うと、元々は店先にかかっている、よく屋号などが書いてある布切れです。漢字では暖簾と書きます。この、暖簾という物そのものにはほとんど価値がありませんが、例えば行きつけの店などをイメージする際に、店先にかかっている暖簾は必ずと言ってよいほど喚起される、お店の象徴として定着しています。

つまり、暖簾=のれんは、知名度や品質などのブランド価値を示す象徴とも言えます。ブランド価値はまさしく目に見えない価値ですから、そこから「のれん」が会計用語にも使われるようになりました。

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2. 負ののれんが生まれる原因

負ののれんが生まれる原因

のれんは、買収先の貸借対照表には乗っていない簿外資産であると記しました。しかし簿外資産の大きさより、買収後に会社の価値を毀損するリスクの方が大きい場合には、逆にその分だけ純資産から差し引いて買収する必要があります。

この差し引いた分が負ののれんで、よくあるのは以下の2パターンによって生じるケースです。

①簿外債務が存在している

簿外債務は、一言で言えば貸借対照表上に載っていない債務のことです。

貸借対照表上には載っていないと言っても、簿外債務自体があることは珍しくはありません。中小企業がよく抱えている簿外債務には、以下があります。
 

  • 債務保証(他社または他人の債務に対する連帯保証)
  • デリバティブ(金融派生商品の含み損)
  • 未払い給与・退職金

この中で、未払い給与・退職金については、税務会計と財務会計の違いによってよく発生しがちな簿外債務ですので、M&Aアドバイザーにより、買い手に提示する書類上では事前に計上されることがほとんどです。

一方で債務保証は、経営者の親族が経営する他の会社があったり、買収先に関連会社が多い場合には特に注意して有無を確かめる必要があります。デリバティブについては、外国との取引を行っている会社の場合に注意が必要です。

これらが多額にわたる場合には、負ののれんが発生しえます。

②損害賠償請求のリスクがある

企業が何らかのトラブルがもとで、損害賠償請求のリスクを抱えていることもあります。

買収後に損害賠償が確定した場合、買収した企業が負担しなければならなくなります。買収する企業としては当然、想定されうる最大限の負担分は差し引いて買収する必要があります。

したがって、この想定される負担分が大きいと、負ののれんが発生し得ます。

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3. 負ののれんの仕訳・財務処理

負ののれんの仕訳・財務処理

負ののれんの仕訳や財務処理について、貸借対照表上の発生益仕訳や減損処理の観点から見ていきます。

正ののれんとの違い

正ののれんと、負ののれんの発生益仕訳の違いについて述べます。

正ののれんの仕訳

日本の会計基準を採用する場合、通常ののれんは、貸借対照表上に無形固定資産として発生益仕訳をし、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって規則的に償却していきます。償却というのは、毎期規則的に費用として計上すると同時に、貸借対照表上の資産価値を減らしていく処理です。

しかし一方で、上場大企業の中には、国際財務報告基準(IFRS)という会計基準を採用している企業があります。このIFRSを採用している場合には、のれんを毎期償却するのではなく、毎期毎にのれんの減損テストを実施して、価値が著しく下落した際に貸借対照表上ののれんの減損処理をします。IFRSにおける減損テストとは、平たく言えば時価評価しなおすということです。

IFRSについては早い話が、のれんの価値が無くなったら一気に損をすることになるということです。

負ののれんの仕訳

負ののれんの仕訳は、日本の会計基準とIFRSで違いはありません。負ののれんは「一括利益計上処理」として発生益仕訳されます。

この発生益仕訳ついては後述します。

 

一括利益計上処理とは?

負ののれんが生じた場合、買収側は当該事業年度の利益(特別利益)として発生益仕訳します。平たく言えば、買収先の純資産より安く買収した分の金額は、利益にするということです。

当該年度の利益に計上して終わりですので、日本の会計基準における正ののれんで発生するような貸借対照表上の償却処理はありません

ただし、日本の会計基準において、負ののれんがこの一括利益計上処理の発生益仕訳になったのは、2010年からです。IFRSの基準に合わせる形で変更で、それまでは正ののれんの仕訳とは逆に、貸借対照表上の負債側にのれんを計上し毎期利益を発生益仕訳していく方法でした。

負ののれんによる巨額の発生益

負ののれんは、その事業年度に一括して発生益仕訳をすることを説明しました。

ただ、これが一年に何度も負ののれんを発生益仕訳するような買収を繰り返してきて、それを年度をまたいで繰り返しているような企業においては、本当の収益力や事業リスクをわかりにくくするからくりの様になってしまうことがあります。

負ののれんが発生するのは、そもそもリスクがあることで「訳あり」となった会社を買収しているわけです。したがって、買収時に表面上大きな利益が出ていたとしても、リスクが顕在化したら業績が大きく下振れする懸念も出てきます。

粉飾とは違いますが、貸借対照表などから読み取れるのとはかけ離れた実態になる恐れがあります。

のれんの税務

以上で述べたのは、会計上のお話です。税務については上記と異なってきますので、その辺りを簡単に説明します。

まず税務上は、正ののれんの償却費用は損金に、負ののれんの利益は益金になります。この辺りを紹介します。

なお、税務会計上はこれまでに述べたIFRS基準かそうでないかは、関係ありません。

正ののれん償却の税務

正ののれんは、税務会計上は「資産調整勘定」という資産の項目に計上し、これを5年間で償却することになっています。これは、会計上の処理がIFRS基準であっても日本の会計基準であっても関係ありません。

IFRS基準でのれんを計上し、会計上利益も損益も発生していなくても、税務上は償却分は損金です。日本の会計基準によってのれんを計上し、この税務会計の5年とは異なる償却機関になっている場合は、計算にズレが生じます。

負ののれんの税務

負ののれんは例外なく一括利益計上処理をすることは述べた通りですが、税務会計上はこれとは全く違います。

税務会計上の負ののれんは、まず「差額負債調整勘定」という負債の項目に計上し、ここから5年にわたって益金にしていく形です。つまり、負ののれんで得た利益に対する課税は、5年かけて支払う必要があるということです。

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4. 負ののれんが発生した事例5選

負ののれんが発生した事例5選

負ののれんが発生した、もしくは今後発生すると見込まれる事例5つをご紹介します。

伊勢丹・三越の経営統合

2008年、株式会社三越と株式会社伊勢丹が共同株式移転を行い、持株会社・株式会社三越伊勢丹ホールディングスが誕生しました。

このM&Aでは、伊勢丹が三越を買収する形で、700億円の負ののれんが発生しています(なお、このケースはM&Aスキームでいうと株式移転で、単純に伊勢丹=買収側、三越=売却側とはならず、のれん発生の仕方もこれまでの説明とは少し異なりますが、その点は無視して伊勢丹に700億円の負ののれんが発生したことにフォーカスします)。

伊勢丹が三越を安く買収したわけですが、その理由は三越の評価額をDCF法で算出したことによります。この評価に対しての三越の純資産額は、三越が銀座などの一等地に土地を保有していたこともあり、とても高くなっていたことから巨額の負ののれんが生まれました。

ただしこの当時は、IFRSの会計基準は負ののれんにおいて採用されておらず、そのため一括利益計上処理はされていません。700億円を負ののれんとして計上した上で、以降5年間にわたって140億円ほどの利益を負ののれんから計上しています。

三重銀行・第三銀行の経営統合

2018年に三重銀行と第三銀行が経営統合しました。統合によって設立された三十三フィナンシャルグループは、統合後最初の決算となる2019年3月期の決算において、負ののれんを520億円計上する見込みです。このケースも株式移転の形で行われています。

正確な負ののれんの額は確定ではありませんが、負ののれんだけで単純に2つの銀行を加えた80億円(前年度実績)の何倍もの特別利益となる見込みです。2010年以降ですから、負ののれんは現在のIFRS基準に則った一括利益計上処理です。

角川・ドワンゴの経営統合

2014年、角川とドワンゴが経営統合し、持株会社である株式会社KADOKAWA・DWANGOが設立されました。このM&Aも株式移転です。また、この経営統合で負ののれん223億円を計上しています。2010年以降ですから、負ののれんは現在のIFRS基準に則った一括利益計上処理です。

この経営統合は、ドワンゴが角川を買収するのに近い形で行われています。その際、角川の評価を落とす形で行われました。

ドワンゴは成長著しいIT企業である一方で、角川の事業の中心は衰退路線にある出版事業です。評価額だけでなく、持株会社の出資比率や役員人事などもドワンゴ側に有利な形になっており、角川側が色々譲歩してでも成立させたかったM&Aであると推測されます。

出光石油・昭和シェル石油の経営統合

2018年に出光石油と昭和シェル石油が経営統合することが発表されました。株式交換のM&Aスキームで、出光石油が親会社、昭和シェル石油が子会社となる見込みです。

なお、この株式交換によって発生が予想されるのれんの金額に関しては、現段階では未定となっています。しかし、株式交換の形でも負ののれんが発生した事例はありますので、本事例についても同様に負ののれんが発生する可能性はあります。2010年以降ですから、負ののれんは現在のIFRS基準に則った一括利益計上処理です。

ライザップのM&A

負ののれんで最もトピックになるのは、ライザップかもしれません。ライザップで最も有名な事業は減量ジム事業で、今でもこれが本業と言えますが、近年ではM&Aによる様々な業種の買収を繰り返しています。結果、今では美容・健康関連事業、アパレル事業、住関連ライフスタイル事業、エンターテイメント事業などを抱えるグループ企業にまでなりました。

なお、もともとは健康コーポレーションという社名で事業を展開してきましたが、2016年に持株会社の社名をRIZAPグループとしています。

このライザップですが、買収を繰り返したと言ってもその多くは業績の悪い企業でした。業績の悪い企業は、安く買うことができます。またライザップは、会計においてIFRS基準を採用しています。買収先の純資産より安く買うことで、負ののれんによる一括利益計上処理の積み重ねを繰り返してきました

ここで注目を浴びてしまうのが、「負ののれんによる巨額の発生益」で述べたことです。収益力や事業リスクにおける本当のところが、分からなくなっていると言われています。

もちろん、安く買収した会社を再生してきちんと収益化できれば、何も問題はないわけです。というより、それを狙って買収しているのが本当のところでしょう。

しかしながら、2019年3月期の決算見通しを、最終損益で70億円の赤字と発表しました。それまでは159億円の黒字見込みだったのと比べると、一気に引き下げました。理由としては、近年急速に買収を繰り返してきた様々な業種の事業への投資がかさんだ一方で、不発に終わっていることが多いことが挙げられます。

負ののれんは一時的に利益を押し上げる要因にはなりますが、それだけでは収益事業たりえません。まだライザップの事業は継続中ですが、負ののれんのリスクを象徴するものと言えます。

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5. まとめ

まとめ

負ののれんは、買収した企業の純資産額より、低い金額で買収した場合に発生します。

この負ののれんが発生する原因は、買収される会社側における見えないリスクです。このリスクでよくあるのは、簿外債務と損害賠償請求リスクです。

負ののれんは会計仕訳では、日本の会計基準であってもIFRS基準であっても、M&Aで負ののれんが発生した事業年度に一括利益計上処理の発生益仕訳をします。これは当該年度の特別利益となりますが、この発生益仕訳を繰り返していると本当の収益力や事業リスクが分からなくなります。

その良い例として、RIZAPグループの2019年3月期決算の、最終損益で70億円の赤字見込みの発表です。

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