負ののれんとは?わかりやすく解説!仕訳、税務処理はどうなるの?

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aにおいては買収相手を純資産より高い金額で買収した場合に、のれんが発生します。一方で、純資産より低い金額で買収するケースもなくはありません。この場合に発生するのは、負ののれんです。ここではこの負ののれんについて解説していきます。

目次

  1. 負ののれんとは?
  2. 負ののれんが生まれる原因
  3. 負ののれんの仕訳・財務処理
  4. まとめ
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1. 負ののれんとは?

負ののれんは、「のれん」と裏表の関係です。この辺りを解説します。

のれんとは?

のれんを一言でいうと、「被買収企業の公正純資産額と買収価格の差額」です。かみ砕いていえば、「買収金額から買収した企業の純資産の金額を引いた金額」です。

この差額が生じるメカニズムですが、まず、企業が持つ資産から負債を差し引いた帳簿上の価値が純資産です。しかし、M&Aで企業を買収する場合は通常、買収先の純資産に加えて、買収先の持つブランド力や技術力、人的資源や地理的条件、顧客ネットワークなどの、見えない資産価値を加えた金額で買収します

この見えない資産価値(「超過収益力」ともいわれます)が「のれん」です。見えない資産価値で、買収先の貸借対照表には載っていない資産ですから、簿外資産ということもできます。しかし買収した企業において、のれんは買収時に貸借対照表上の借り方(資産側)に計上されます。

のれんは、マイナスになることも

ただし、のれんは、M&Aにおいてマイナスが発生することもあります。「買収した企業の純資産額より、低い金額で買収した」場合です。

これが「負ののれん」で、後で解説します。

のれんと呼ばれる理由

のれんは、元々は店先にかかっている、屋号などが書いてある布切れです。漢字では暖簾と書きます。暖簾そのものにはほとんど価値がありませんが、例えば行きつけの店などをイメージする際に、店先にかかっている暖簾はお店の象徴として定着しています。

つまり、暖簾=のれんは、知名度や品質などのブランド価値を示す象徴ともいえます。ブランド価値は目に見えない価値なので、そこから「のれん」が会計用語にも使われるようになりました。

2. 負ののれんが生まれる原因

のれんは、買収先の貸借対照表には載っていない簿外資産であると記しました。しかし簿外資産の大きさより、買収後に会社の価値を毀損するリスクの方が大きい場合には、逆にその分だけ純資産から差し引いて買収する必要があります。

この差し引いた分が負ののれんで、よくあるのは以下の2パターンによって生じるケースです。

①簿外債務が存在している

簿外債務は、一言でいえば貸借対照表上に載っていない債務のことです。

貸借対照表上には載っていないといっても、簿外債務自体があることは珍しくはありません。中小企業がよく抱えている簿外債務には、以下があります。
 

  • 債務保証(他社または他人の債務に対する連帯保証)
  • デリバティブ(金融派生商品の含み損)
  • 未払い給与・退職金

この中で、未払い給与・退職金については、税務会計と財務会計の違いによって発生しやすい簿外債務なので、M&Aアドバイザーにより、買い手に提示する書類上では事前に計上されることがほとんどです。

一方で債務保証は、経営者の親族が経営する他の会社があったり、買収先に関連会社が多かったりする場合には特に注意して有無を確かめる必要があります。デリバティブについては、外国との取引を行っている会社の場合に注意が必要です。

これらが多額にわたる場合には、負ののれんが発生し得ます。

②損害賠償請求のリスクがある

企業が何らかのトラブルがもとで、損害賠償請求のリスクを抱えていることもあります。

買収後に損害賠償が確定した場合、買収した企業が負担しなければなりません。買収する企業としては当然、想定されうる最大限の負担分は差し引いて買収する必要があります。

したがって、この想定される負担分が大きいと、負ののれんが発生し得ます。

3. 負ののれんの仕訳・財務処理

負ののれんの仕訳や財務処理について、貸借対照表上の発生益仕訳や減損処理の観点から見ていきます。

正ののれんとの違い

正ののれんと、負ののれんの発生益仕訳の違いについて述べます。

正ののれんの仕訳

日本の会計基準を採用する場合、通常ののれんは、貸借対照表上に無形固定資産として発生益仕訳をし、20年以内のその効果のおよぶ期間にわたって規則的に償却していきます。償却というのは、毎期規則的に費用として計上すると同時に、貸借対照表上の資産価値を減らしていく処理です。

しかし一方で、上場企業の中には、国際財務報告基準(IFRS)という会計基準を採用している企業があります。このIFRSを採用している場合には、のれんを毎期償却するのではなく、毎期毎にのれんの減損テストを実施して、価値が著しく下落した際に貸借対照表上ののれんの減損処理をします。IFRSにおける減損テストとは、時価評価を再度行うことです。

IFRSについては早い話が、のれんの価値がなくなったら一気に損をするということです。

負ののれんの仕訳

負ののれんの仕訳は、日本の会計基準とIFRSで違いはありません。負ののれんは「一括利益計上処理」として発生益仕訳されます

この発生益仕訳ついては後述します。

 

一括利益計上処理とは?

負ののれんが生じた場合、買収側は当該事業年度の利益(特別利益)として発生益仕訳します。買収先の純資産より安く買収した分の金額は、利益にするということです。

当該年度の利益に計上して終わりなので、日本の会計基準における正ののれんで発生するような貸借対照表上の償却処理はありません

ただし、日本の会計基準において、負ののれんがこの一括利益計上処理の発生益仕訳になったのは、2010年からです。IFRSの基準に合わせる形の変更で、それまでは正ののれんの仕訳とは逆に、貸借対照表上の負債側にのれんを計上し毎期利益を発生益仕訳していく方法でした。

負ののれんによる巨額の発生益

負ののれんは、その事業年度に一括して発生益仕訳をすることを説明しました。

ただ、一年に何度も負ののれんを発生益仕訳するような買収を繰り返してきて、それを年度をまたいで繰り返しているような企業においては、本当の収益力や事業リスクをわかりにくくするからくりのようになってしまうことがあります。

負ののれんが発生するのは、そもそもリスクがあることで「訳あり」となった会社を買収しているわけです。したがって、買収時に表面上大きな利益が出ていたとしても、リスクが顕在化したら業績が大きく下振れする懸念も出てきます。

粉飾とは違いますが、貸借対照表などから読み取るのとはかけ離れた実態になる恐れがあります。

のれんの税務

以上で述べたのは、会計上の話です。税務については上記と異なってきますので、その辺りを簡単に説明します。

まず税務上は、正ののれんの償却費用は損金に、負ののれんの利益は益金になるので、この辺りを紹介します。

なお、税務会計上はこれまでに述べたIFRS基準かそうでないかは、関係ありません。

正ののれん償却の税務

正ののれんは、税務会計上は「資産調整勘定」という資産の項目に計上し、これを5年間で償却することになっています。これは、会計上の処理がIFRS基準であっても日本の会計基準であっても関係ありません。

IFRS基準でのれんを計上し、会計上利益も損益も発生していなくても、税務上では償却分は損金です。日本の会計基準によってのれんを計上し、この税務会計の5年とは異なる償却期間になっている場合は、計算にずれが生じます。

負ののれんの税務

負ののれんは例外なく一括利益計上処理をすることは述べたとおりですが、税務会計上はこれとは全く違います。

税務会計上の負ののれんは、まず「差額負債調整勘定」という負債の項目に計上し、ここから5年にわたって益金にしていく形です。つまり、負ののれんで得た利益に対する課税は、5年かけて支払う必要があるということです。

4. まとめ

負ののれんは、買収した企業の純資産額より、低い金額で買収した場合に発生します。

この負ののれんが発生する原因は、買収される会社側における見えないリスクです。このリスクでよくあるのは、簿外債務と損害賠償請求リスクです。

負ののれんは会計仕訳では、日本の会計基準であってもIFRS基準であっても、M&Aで負ののれんが発生した事業年度に一括利益計上処理の発生益仕訳をします。

これは当該年度の特別利益となりますが、この発生益仕訳を繰り返していると本当の収益力や事業リスクがわからなくなります。この点についてはよく理解しておきましょう。

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