2021年09月04日更新
事業承継は負債のある会社でもできる?分社化するメリットを解説
事業承継は、会社の事業と一緒に負債や連帯保証も引き継ぎます。後継者にとって大きな負担になるため、負債を理由に後継者になることを辞退するケースも多いです。本記事では、負債のある会社の事業承継のリスクや対策について詳しく解説します。
目次
1. 事業承継は負債のある会社でもできる?
会社を永く続けるためには、適切なタイミングで事業承継する必要があります。しかし、会社が負債を抱えていると、引継ぎの決意や段取りに遅れが出ることも少なくありません。
では、負債のある会社の事業承継はどのように進めるべきなのでしょうか。ここでは、事業承継の負債の引継ぎに関して解説します。
負債(債務超過)とは
負債とは、金銭や物資等を借り受けていて、将来的に金銭等の経済的資源を返済する義務のことです。会社の負債の場合、経営者や代表者ではなく会社に返済義務が課されます。
負債には、借入金のほか買掛金や未払金なども含まれます。会社の経済状況に関わらず経常的に発生するものもあるので、どのような会社でも一定の負債を抱えているのが一般的です。
しかし、債務超過は危険です。会社が保有する全ての資産を売却しても負債を返済できないことで、会社の存続すらも困難な状態です。
負債のある会社を事業承継するリスク
近年は事業承継の必要性が主張されることも多いですが、事業承継後のリスクまで取り上げられることは少ないです。
リスクを把握していないと事業承継後に苦しむ結果にもなりかねません。ここでは、負債のある会社を事業承継する2つのリスクを紹介します。
【負債のある会社を事業承継するリスク】
- 負債を引き継ぐ
- 連帯保証も引き継ぐ
1.負債を引き継ぐ
1つ目のリスクは負債を引き継ぐことです。事業承継は会社の経営権や資産と一緒に負債も引き継ぐため、イメージとしては現経営者から後継者に負債を引き継ぐ感じになります。
後継者は、返済スケジュールに沿って会社の収益で返済していきます。返済が難しい場合は、土地や建物等の不動産を売却することもあり、事業用資産なら収益性が低下して悪循環に陥りやすくなります。
資産を売却しても負債を返済できなくなると、返済・利息で純資産が徐々に減る危険な状態になります。さらにキャッシュフローが悪化して事業資金も不足すると、廃業・倒産の危機にあるといえます。
2.連帯保証も引き継ぐ
原則、会社の負債は代表者や経営者に返済の義務はありません。負債が原因で会社が廃業・倒産しても経営者が個人資産で弁済する必要はないというものです。
しかし、多くの場合は資金を借り受ける際に経営者が連帯保証人になります。中小企業は財務状況が不透明なこともあるため、債権者の安全性を確保するために連帯保証を要求することが一般的です。
事業承継では、経営者から後継者に連帯保証人を引き継ぎます。現経営者は事業を失って連帯保証人としての役割を果たせなくなるので、後継者が請け負わなくてはなりません。
そのため、事業承継後に返済が困難な状態になったら、後継者の個人資産で弁済する必要があります。
負債のある会社の事業承継はおすすめできない
負債の返済の目処が立たないまま事業承継を行うと、後継者が行動を起こしづらくなり事業に失敗する可能性が高くなります。
手間をかけて事業承継した会社が廃業・倒産することにもなりかねないので、負債のある会社の事業承継はおすすめできません。
負債のある会社の事業承継は分社化がおすすめです。資産と負債を整理することによって、返済負担の軽減が期待できます。
2. 負債のある会社を分社化して事業承継するメリット
負債のある会社の事業承継に分社化を活用できるという話ですが、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、特に効果が期待できるメリット2つを紹介します。
【負債のある会社を分社化して事業承継するメリット】
- 収益性の高い事業だけを引き継げる
- 債務超過を回避できる
1.収益性の高い事業だけを引き継げる
分社化で用いる手法は事業譲渡や会社分割です。これらの手法には、持ち出す事業を自由に選択できるという特徴があります。
事業承継後も収益が期待できる事業のみを分社化し、負債返済の負担を軽減することができます。後継者の返済負担が軽くなれば事業展開もやりやすくなり、結果を出しやすくなります。
会社の財務状況が良くなれば、新しく融資を受けることも難しくありません。潤沢な事業資金を確保して、事業承継を機に新たな事業に着手するという選択も可能です。
2.債務超過を回避できる
分社化で持ち出す負債は、資産とバランスが取れる範囲に抑えることで債務超過を回避できます。
例えば、5000万円の負債と3000万円の資産があるとしたら、3000万円の負債と3000万円の資産を持ち出すことで負債は0円となります。
財務状況が健全で返済能力があることを示すことが大事なので、即座に資産を売却して負債を返済する必要はありません。一般的に返済は事業の収益の一部で行っていきます。
残された負債2000万円は、旧会社に返済義務があります。連帯保証がない場合は法人の破産手続き、ある場合は経営者の分割払いによる返済や個人資産での弁済を行います。
多くの場合、経営者が連帯保証人になっているので負債は返済する必要がありますが、会社を綺麗な状態で引き継ぐことで後継者や従業員を守ることができます。
3. 負債のある会社を事業承継する際のポイント
負債のある会社を事業承継する際はいくつか押さえておきたいポイントがあります。特に重要なポイントは次の2つです。
【負債のある会社を事業承継する際のポイント】
- 資産と負債を把握する
- 事業再生という手段もある
資産と負債を把握する
事業承継の際は資産と負債を明確に把握することが大切です。中小企業は現経営者の個人資産と会社の資産が混同していることも多いので、事前に分類しておかなくてはなりません。
また、現経営者だけでなく後継者との共有も大切です。後継者は事業承継後の事業も考えなくてはならないので事前に会社の財務状況を把握しておく必要があります。
親族以外に事業承継する場合、負債を隠しているとトラブルになることもあります。裁判沙汰に発展する可能性もあるので、資産・負債の状況把握と共有は不可欠です。
事業再生という手段もある
事業承継は事業再生を目的として行われることもあります。特に利用されることが多い手法は第二会社方式です。
財務状況が悪化している会社から収益性のある事業を切り出し、新設あるいは既存法人に移転させて、負債や不採算事業が残った法人は特別清算などを用いて整理するというものです。
支援措置や認定要件などを把握する必要はありますが、事業承継を機会に会社全体の健全化を目指すことができます。
4. 負債のある会社を事業承継する際の流れ
負債を抱えた会社は、通常の事業承継よりも必要な手続きが多くなります。負債のある会社の引き継ぐ際は、事業承継の全体の流れを把握しておきましょう。
【負債のある会社を事業承継する際の流れ】
- 資産・負債を確認する
- 事業承継先を選ぶ
- 事業承継計画・分社化の立案
- 後継者による事業計画の立案
- 負債への対処
1.資産・負債を確認する
事業承継の準備は、会社の財務状況を確認することから始めます。引き継ぐ資産・負債を明確にしておかないと、事業承継後に事業に支障をきたす恐れがあるためです。
資産・負債の確認では、特に簿外債務に注意が必要です。退職給付引当金やリース債務などは簿外債務になっていることが多いので、帳簿上は資産が上回っていても実状は債務超過だったというケースも珍しくありません。
事業承継は引き継ぐ資産価値に応じて税金が課せられます。税金対策の方針を決めるためにも資産・負債の把握は重要です。
また、従業員や年齢、キャッシュフローなどの経営資源の確認も必須です。これらの資源は事業を行うために必要なものなので、事業承継計画立案時の指針にもなります。
2.事業承継先を選ぶ
事業承継は資産・負債を引き継ぐ後継者が必要不可欠です。親族内に後継者がいない場合は、社内の人材や外部の第三者に引き継ぐ選択肢もあります。
社内の人材に引き継ぐ場合は、早めに後継者育成を進めておかなくてはなりません。重要な役職への配置や取引先のあいさつ回りに同行させて経験を積ませる必要があります。
外部の第三者に引き継ぐ場合は、後継者育成に時間をかける必要がありません。時間がかかりづらく取り組みやすいため、後継者問題を抱えている企業にとって有力な選択肢となっています。
また、第三者への引継ぎでは経営者が売却益を獲得できるというメリットもあります。残された負債の返済に充てることもできるので、後継者がいない時や返済手段の当てがない時に有効な方法です。
3.事業承継計画・分社化の立案
後継者が決まったら事業承継計画・分社化の立案です。決めるべき事項は多いですが、事業承継を円滑に進めるためには、並行できるように準備しておかなくてはなりません。
事業承継の方法に合わせて、実現可能なスケジュールを策定します。後継者が親族や社内の人材である場合、後継者育成のために年単位の時間を確保する必要があります。
事業承継で相続が発生する場合は、想定される問題への対処も必要です。法定相続人の有無や株式保有の状況等を確認しておき、納税資金の確保なども決めておく必要があります。
分社化には事業譲渡や会社分割などのM&A手法を用います。事業承継とは異なる手続きが必要となるので、別方面で計画を進行しなくてはなりません。
事業譲渡は権利義務の包括承継ができないので、手続きが煩雑になる傾向があります。会社分割も専門的な知識が必要になるので、立案段階からM&Aの専門家に相談すると円滑に進めやすくなります。
4.後継者による事業計画の立案
同時に後継者は事業計画の立案も行います。分社化の立案で引継ぎが決まった事業の運営方針を立てて事業承継に備えます。
事業承継は社内に与える影響が大きく、しばらくは利益が出せなくなる状況も考えられるため、さまざまな可能性を考慮したうえで事業計画を立てておく必要があります。
事業計画は、債権者に納得材料を提供するためにも大切なものです。稼ぐ力があると判断してもらえれば、負債の引継ぎの了承や新たな融資の取り付けも可能です。
5.負債への対処
負債のある会社の分社化で避けられないのが、旧会社に残された負債の対処です。収益性のある事業は切り離していて返済能力はないため、法人の破産手続きを行うことになります。
金融機関からの借入で連帯保証人となっている場合は、経営者に返済義務があります。しかし、経営者の個人資産では返済しきれないことが多く、経営者個人の破産手続きも必要になるケースが多いです。
経営者の破産手続きを行う場合、自宅を含めた不動産も返済に充てられることになります。必要最低限の資金を残して返済しなくてはならないため、家族への影響も計り知れません。
なお、経営者に収入があって返済能力がある場合は、破産ではなく長期的な返済プランを提案されることもあります。
というのは、債務者の自己破産は債権者の立場からは損失が大きいため、可能な限り資金回収できるプランを取りたいからです。
どのプランを選ぶにしても、大切なのは債権者の同意を得たうえで実行することです。事業承継の分社化は戦略の1つなので、債権者の協力を得られれば成功する可能性も高くなります。
5. 分社化の相談におすすめのM&A仲介会社
分社化には、事業譲渡や会社分割などのM&A手法を用いて行います。事業承継は全ての資産・負債を引き継ぐ方法ですが、分社化は引き継ぐ事業を選定するために手続きが複雑になりがちです。
また、事業承継の後継者が親族の場合でも、M&A分野の知識が必要になります。負債のある会社の分社化を検討の際は、M&A・事業承継の専門家に相談することをおすすめします。
M&A総合研究所は、M&A・事業承継サポートを手掛けるM&A仲介会社です。主に中堅・中小規模のM&A案件を取り扱っており、中小企業のM&A・事業承継サポートにおける豊富な実績を有しています。
M&A・事業承継の経験豊富なアドバイザーが一貫したサポートを行います。事業承継計画の立案から分社化後の負債の対処方法なども含めて、現実的なプランを模索します。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)
無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
6. まとめ
負債が膨らんで債務超過に陥ると会社の財務状況は一変します。膨らんだ負債をそのまま事業承継すると、後継者が取れる選択肢が限定されてしまい、事業がうまくいかない可能性が高くなります。
会社をできるだけ良い状態で引き継ぐためには、分社化による資産・負債の整理がおすすめです。その際はM&A・事業承継の専門家に相談すると円滑に進めやすくなります。
【負債のある会社を事業承継するリスク】
- 負債を引き継ぐ
- 連帯保証も引き継ぐ
【負債のある会社を分社化して事業承継するメリット】
- 収益性の高い事業だけを引き継げる
- 債務超過を回避できる
【負債のある会社を事業承継する際のポイント】
- 資産と負債を把握する
- 事業再生という手段もある
【負債のある会社を事業承継する際の流れ】
- 資産・負債を確認する
- 事業承継先を選ぶ
- 事業承継計画・分社化の立案
- 後継者による事業計画の立案
- 負債への対処
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