M&AのFA(アドバイザリー)が担う役割とは?仲介との違い、業務・費用を解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aサービスを行う業者には、FA(アドバイザリー)と仲介があります。それぞれ役割や業務内容などに違いがあるため、本記事では、FAとM&A仲介の役割・業務内容の違いを中心に詳しくまとめました。FAを選ぶ基準も解説します。

目次

  1. M&AのFAとは?
  2. M&AのFAと仲介会社の違い
  3. 中小企業M&AにおけるFA・仲介の重要性
  4. M&AにおけるFAを選ぶ基準
  5. M&AでFAを選ぶ際の注意点
  6. M&AのFAまとめ
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1. M&AのFAとは?

M&AにおけるFAは、ファイナンシャル・アドバイザーの略です。FAは、M&Aの実行を考えている企業に対して、M&Aにおける計画の立案からクロージングまでアドバイスや業務を行います。

FAの特徴は、売却側あるいは買収側のどちらかと個別に契約を締結し、一方だけのM&Aをサポートする点です。

M&A業界のFA参入者

M&A業界のFA参入者は、主に以下の4つに分けられます。

  • 専業FA
  • 証券会社
  • 銀行
  • 会計事務所

これらのFA参入者は扱う案件に違いがあり、以下の傾向があります。
  • 大規模のM&A案件→大手証券会社・投資銀行やメガバンクなどの大手金融機関・大手専業FA
  • 中小規模の案件→独立系のFA(会計事務所やコンサルティング会社のM&A部門を含む)・地方金融機関など

この章では、それぞれの特徴を解説します。

専業FA

専業FAとは、いかなる当事者とも利益相反をしないスタンスを保ちながら豊富な経験と知識を結集し、主に中小企業の事業承継問題に関するM&Aをサポートする会社です。

専業FAの多くは資本的に独立しているほか、専業FAで働く人の多くはかつて銀行や証券会社でM&A・法人融資の業務に従事した経験者です。専業FAには、過去の実績や経験をもとに個人で行う業者も存在します。

一般的に銀行や証券会社では小規模な中小企業のM&Aを扱いません。しかし、専業FAでは中小企業を顧客対象とする機関がほとんどです。

銀行・証券会社などにおける金融資本のM&Aアドバイザー部門では、顧客内で取引を進めようとするため、中立的なアドバイザリーサービスが困難な場合があります。一方、独立資本の専業FAは、柔軟なアドバイスを実施しやすいです。

独立資本のFAには、専業FA以外に本業を別に持つ兼業FAも存在します。専業のFAはM&Aの仲介・アドバイザーとして豊富な経験や実績を持ち、兼業FAは本業のネットワークを有効活用できる点が強みです。

証券会社

国内大手の証券会社は、ほとんどがM&Aの専門部署を持ちます。しかし、一般的には大規模な上場企業の案件を中心に取り扱うため、顧客対象はあくまでも年商数十億円の企業です。

証券会社は通常のM&Aスキームだけでなく、上場企業が実施する株式公開買い付け(TOB)の代理人も兼ねます。

大手証券会社のM&Aにおける実力は素晴らしいといえますが、それだけフィーの金額も高額になりやすいです。最近は、大手証券会社だけでなく中堅クラスの証券会社でもM&Aサービスを展開する機関が増加しています。

しかし、中堅クラスの証券会社はネットワークが少なく人員の入れ替わりも激しいため、M&Aのノウハウや情報量が少ない現状です。

銀行

M&Aを扱う銀行は、主にメガバンクや外資系投資銀行です。

メガバンクにはM&A専門のチームが組織され、メインバンクである会社の案件を中心に、大手企業および関連会社のM&Aに携わります。外資系投資銀行は、クロスボーダー案件(海外企業とのM&A)や1,000億円以上の大型案件を中心に取り扱う金融機関です。

メガバンク・外資系投資銀行は情報ネットワークに優れ、M&Aに関する情報量やノウハウを十分に備えています。上場企業などの大規模M&A案件を中心に扱うため、フィーが比較的高額に設定される点が特徴的です。

近年は、メガバンク以外の地方銀行・信用金庫へ、経営戦略や後継者問題に悩む地方の中小企業経営者が相談する件数が増えています。これにより、アドバイザリー業務を開始して事業譲渡などの相談に対応する地方銀行・信用金庫なども増加中です。

ただし、金融機関によっては企業価値評価などのスキルが不足していたり、M&Aの情報収集力が弱かったりするケースもあるため注意しなければなりません。

専業FAのような一貫したM&Aアドバイザリーよりも、M&A前や経営統合後の戦略部分を除いたM&Aの実務部分のみのアドバイザリーとなるケースが多い点も把握しておきましょう。

会計事務所

近年は、FAを行う会計事務所および税理士・公認会計士事務所も増えています。

もともとM&Aの実行時は会計や税務の検討から始めることが多く、最初の相談先として会計事務所や税理士・公認会計士事務所が選ばれるケースも少なくありません。

上記の事情からFAを開始した会計事務所も増え、現在では個人事務所だけでなく100名を超える人員を擁する事務所も設立されています。規模・人員などはさまざまですが、多くの事務所は東京や大阪などの大都市が拠点です。

しかし、実績・経験・情報ネットワークなどの観点から、会計事務所や税理士・公認会計士事務所のみで中小企業のM&A案件に対応するのは限界があるケースがほとんどです。事務所が独立系FA会社やM&A仲介会社と提携していれば、十分に対応できます。

【関連】M&Aでの銀行の役割とは?融資・アドバイザリーの特徴、成功のコツ、利益相反の注意点を解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

M&AでFAが担う役割

M&Aに関するサービスを提供する会社は、「FA」と「仲介」の2種類に大きく分けられます。

ケースにより対象業種・地域性などの特徴でM&A会社を分けることもありますが、そもそも「FA」と「仲介」ではビジネスモデル・役割などが大きく異なるので、まずはM&AでFAが担う役割を紹介します。

FAはファイナンシャルアドバイザリーの略で、M&Aの計画立案・クロージング・統合プロセスに至るまで幅広いアドバイス・サポートを手掛ける専門家です。単純にFAと呼ぶ場合は、助言業務・FA会社の両方をさすこともあります。

アドバイザリー(助言業務)を手掛ける専門家としてのFAは売り手・買い手側のいずれか一方につきますが、担当する依頼者側の利益を最大化させるために助言業務を行うことが主な役割です。売り手・買い手のいずれか一方に協力するため、手数料は協力した依頼者側からのみ受け取ります。

FA会社は、特に上場企業同士のM&A・クロスボーダーM&A(海外企業を対象とするM&A)で広く活用されている状況です。

上場企業で採用される主な理由に、不祥事の発生時に責任の所在を明確化しやすい点が挙げられます。とはいえ、最近では中小企業を顧客とするFAも多く、中小企業からFAへの相談も増えています。

【関連】M&Aの資格・種類まとめ!仲介とアドバイザーに資格は必要?| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

M&AでFAが手掛ける業務内容

ここでは、FA・仲介それぞれの業務内容を解説します。

FAはM&Aアドバイザリー・M&Aコンサルなど会社によって呼び方が異なります。基本的に「売り手または買い手の立場からM&Aに関する助言業務を行う」点は共通です。

M&Aシーンで単純にFAと呼ぶとき、通常は「ファイナンシャル・アドバイザー=財務アドバイザー」をさす場合が多いです。M&A終了前まではFA以外に弁護士・税理士・公認会計士なども業務に携わるケースがほとんどであり、彼らもFA同様にアドバイザーといえます。

M&Aの相談をFAに依頼した場合、弁護士・税理士・公認会計士などの協力はFAの紹介によって行われるケースが一般的です。

最近は、公認会計士事務所などでもM&Aのアドバイザリー業務を実施する機関が増えています。こうした機関に相談した場合は、上記とは反対にそれぞれの事務所がFAに協力を依頼するケースが少なくありません。

M&A事業を手掛ける公認会計士などは、多くの場合で協力関係のネットワークを結んでいます。お互いの紹介はこうしたネットワークから行われるのが一般的です。協力関係のネットワークで行われる代表的な業務は以下の3つで、基本的に各業務を行うプレイヤーは異なるため注意が必要です。

  • FA業務
  • 弁護士業務
  • 会計士・税理士業務

それぞれの業務内容を詳しく解説します。

FA業務

M&Aを行う際、マッチング・手法の選択・条件交渉・デューデリジェンス対応・機密保持・バリュエーション・契約書の締結・クロージングなど、すべての業務を自力で進めるのは非常に困難です。

ほとんどのケースで、M&Aをサポートする中心的役割としてFAなどの専門家に協力を依頼します。FAは財務アドバイザーであると同時に、M&Aにおける一連の流れを取り仕切るコンサルタントとしての役割を担う専門家です。

M&Aでは戦略立案・調査分析・交渉・実行・クロージング・ポストM&Aなどすべてのプロセスで専門知識が求められるため、当然ながらFAにも財務・M&Aに関する高いレベルの知識・実務能力が求められます。

必要に応じて公認会計士・税理士・弁護士・M&A仲介会社などに依頼し、M&Aのサポートチームを組織するなど、顧客ニーズに対応しながらM&Aプロジェクトをコーディネートする役割を担う存在でもあります。

弁護士業務

弁護士は法務アドバイザーの役割を担う専門家で、法務的な側面からM&Aをサポートします。特に重要な業務は、法務デューデリジェンスです。法的側面からM&Aに関するさまざまなリスクを洗い出し、対応策に関するアドバイスを行います。

M&Aに関わるさまざまなドキュメント(基本合意書や買収契約書など)の作成や、法律専門家の立場からアドバイスを行うケースも多いでしょう。特に買収契約書の作成時は、法務デューデリジェンスによって検出した簿外債務やリスクを可能な限り回避するよう努めます。

弁護士はFAからの紹介でM&Aに携わるケースが少なくありません。しかし、M&Aを検討している企業側と普段から付き合いのある場合やM&Aに精通している場合などは、企業側からの直接依頼でM&Aに携わることもあります。

会計士・税理士業務

会計士や税理士は、会計・税務アドバイザーの役割を担う専門家です。財務デューデリジェンス・税務デューデリジェンスの実施だけでなく、買収に伴う会計処理に関する助言・買収に伴う税務に関する助言・買収スキームの検討なども幅広くサポートします。

特に大きな役割は、財務デューデリジェンスの実施です。財務的な側面からM&Aのリスクを洗い出し、対応策についてアドバイスを行います。

買収対象となる企業の正確な資産価値を示した修正貸借対照表の作成、買収スキームに関する会計・税務面からのアドバイス・候補の買収スキームを前提とした会計処理・税務上の取扱いに関するアドバイスなども行うケースが多いです。

上記の役割を担う監査法人や公認会計士は、一般的にFAが個々の案件に応じて適切な専門家に依頼しコーディネートされますが、ケースによっては買い手が監査法人や公認会計士を直接選定する場合もあります。

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2. M&AのFAと仲介会社の違い

この章では、M&AのFAと仲介会社はどのような点で異なるのか解説します。

M&A仲介会社とは

まずは、M&A仲介会社の解説です。

仲介の役割

M&Aにおける仲介の役割は、売り手・買い手の間に入って双方の条件をすり合わせながら成約へと導くことにあります。仲介を行う会社は売り手・買い手の双方と契約するため、M&Aが成約した場合は双方へ手数料を請求するのが一般的です。

現在、中小企業のM&AではFAよりも仲介を利用する割合が高く、特にM&Aの取引規模が小規模であるほどその傾向は強まります。

仲介の業務内容

M&Aの仲介会社は、売り手・買い手の間に立ち交渉の仲介を行いながら、中立的な立場でM&A成立に向けた助言業務を行う専門家です。FAとの大きな違いは、売り手・買い手いずれか一方の利益最大化を目指すのではなく、双方の間に立って客観的かつ中立的な立場から交渉の仲介を行う点が挙げられます。

中小企業のM&Aでは仲介業務を依頼するケースが多く、取扱い企業規模は売上数千万~20億円程度です。仲介業務では案件探しからクロージングまでM&A業務の一連の流れをサポートしますが、役割はFAで重視される利益の最大化よりもM&Aの相手先を探すことに重点を置きます。

FAと同様に、仲介でも弁護士・税理士・公認会計士の紹介や協力依頼などを行うケースが多いです。

M&AのFAと仲介会社の報酬体系

FAとアドバイザリー契約を締結すると、フィーが発生します。

従来は、前提として着手金を支払ってからアドバイザリーを依頼できる契約形態がほとんどでした。しかし、最近はM&Aの完了後にすべてのフィーを支払う「完全成功報酬型」の契約形態が増加中です。

この章では、M&Aで発生する代表的なフィーである、着手金・リテイナーフィー・成功報酬を紹介します。成功報酬の算出で用いられるレーマン方式も解説します。

着手金

M&AのアドバイザリーをFAに依頼することを決めたら、FAとアドバイザリー契約を締結します。着手金とは、契約締結段階で支払うフィーのことです。

着手金は中小企業の場合は50万~100万円程度が相場ですが、売り手企業の規模や案件の規模によっては数百万円に及ぶケースもあります。とはいえ、着手金は、M&A成約時に支払う全報酬総額の1割にも満たない場合がほとんどです。

着手金はFAの初期活動の諸経費に充てられるほか、依頼企業のM&Aに関する意思を確認する意味合いも持ちます。ただし、M&Aが成功しなかった場合でも着手金は返還されません。最近では、着手金が不要な完全成功報酬型を採用する機関が主流です。

着手金の例

中小企業のM&A案件を前提とした着手金の一例は、以下のとおりです。実際に発生する着手金の額は、依頼する企業の規模により異なります
 

譲渡企業の簿価総資産額 手数料
10億円以下 100万円
10億円超50億円以下 200万円
50億円超 300万円

リテイナーフィー

月額報酬のことで、M&Aが成立するまで毎月支払うケースがほとんどです。リテイナーフィーを求めない会社もあります。大まかな目安は、月額30万~200万円程度です。

成功報酬

成功報酬とは、M&Aが成約した段階で支払うフィーのことです。着手金とは異なりM&Aが成約しなかった場合は支払う必要がありません。成功報酬の額は、最終的な売却価格によって定められます。

現在は、FAの多くがレーマン方式と呼ばれる「最終的な成約金額に応じて手数料率が異なる報酬体系」を採用している状況です。

レーマン方式の成功報酬の例

FAの多くはレーマン方式の成功報酬を採用しています。しかし、成約金額に含める内容・レートなどはFAごとに異なるため、契約の際は、入念に確認しなければなりません。

成約金額が段階的に異なるレーマン方式の場合(手数料率の一例は下表のとおり)、成約金額が3億円のケースでは「成功報酬額=2億円×8%+1億円×6%」と算出します。

役員退職慰労金は、成約金額に含めるのが通例です。しかし、買い手が引き継ぐ負債を含めたり、時価総額にさまざまな逓減レートを掛け合わせたりするケースもあるため注意しましょう。
 

成約金額(役員退職金支給などを含む) 手数料率
2億円以下の部分 8%
2億円超5億円以下の部分 6%
5億円超10億円以下の部分 4%
10億円超の部分 2%

一般的な契約では最低報酬金額があり、中小企業を対象としたFAでは500万円~1,000万円が相場となるため、事前に確認しましょう。

M&AのFAと仲介のメリット

FAと仲介では、それぞれの役割・業務が異なります。ここでは、FAと仲介のメリットをそれぞれまとめました。

FAのメリット

M&AをFAに依頼するメリットは、以下の2点が挙げられます。

  • 自社だけに協力してもらえるため、相談しやすく条件を満たしてもらいやすい
  • 売り手が依頼すると売却価格を上げやすい

M&AをFAに依頼する最大のメリットは、売り手・買い手にかかわらず、自社の要求を相談しやすく満たしやすい点です。M&A仲介会社の場合は、買い手の立場のインセンティブが働く可能性があります。なぜなら、仲介会社にとって、買い手はリピート顧客になり得るためです。案件が成約すると、売り手からのリピートは見込めません。

こうした事情を踏まえると、自社が売り手側で案件規模が大きく自社の価値に自信がある場合は、高く売却できる可能性が高いFAを選ぶとメリットが大きいです。

とはいえ、実際には、買い手側は良い売却案件を見つけるとFA・仲介にかかわらず契約するので、仲介会社への依頼でも高額売却に成功するケースは見られるため、上記のメリットはあくまでもケースバイケースで発生します。

一方、自社が買い手側となる場合は、フィー(手数料)の体系が明確である点がメリットです。一般的に仲介の場合は、売り手よりも買い手の方がフィーの設定が高額となるケースが多く、費用面で不公平感が出る場合があります。しかし、FAの場合は、この問題が発生しません。

仲介のメリット

M&AをFAに依頼するメリットは、以下の2点が挙げられます。

  • FAに比べて成約で得られるフィーが約2倍となるため、成約に対するスピード感やモチベーションが高い
  • 売り手・買い手双方の状況を把握しているため、駆け引きなどに翻弄されず妥当な着地点を見いだしやすい

規模の小さい中小企業のM&Aでは、仲介を依頼するのが一般的です。なぜなら、仲介は売り手・買い手の双方からフィーを受け取ることから、FAに比べて一方の当事者に求めるフィーを安価に設定するケースが多いためです。

仲介会社はM&Aを成約させると売り手・買い手の双方からフィーを得られるため、M&Aの成約に対するスピード感やインセンティブが高まります。

売り手が仲介を選ぶメリットとして、FAに比べて成約しやすい点も見逃せません。当事者の双方がFAに依頼すると、お互いの利益を主張するために交渉自体が長くなりやすく破談しやすい傾向があります。特に、主張の強いFAに依頼するとM&A後にわだかまりが残るおそれもあります。

売上が数億円以下の小規模である場合やスピーディーにM&Aを成約させたい場合などは、仲介業務への依頼が得策です。

M&AのFAと仲介会社のデメリット

FAおよび仲介業務を依頼するとさまざまなメリットが得られますが、その一方で、デメリットの存在も見逃せません。デメリットを把握しないままそれぞれの専門家に業務を依頼すると、想定していたメリットが得られないばかりか、最悪のケースではM&A自体に失敗するおそれもあります。

FAのデメリット

FAへの依頼時に問題となりやすいデメリットは、フィーが高額となりやすい点です。M&A当事者の双方から報酬を受け取れる仲介と比べて求められるフィーの負担が重い傾向にあり、M&Aで発生する費用が想定以上に高額となるケースが少なくありません。

買い手側は、資金不足によりその後の企業運営に悪影響が及ぶおそれがあります。売り手側は、想定していた売却利益を確保できずに引退後の生活に不安を覚えるケースがあります。

当事者の双方がFAを依頼するケースでは、各FAが依頼者の利益を主張するため、交渉期間が長くなりやすく破断するケースも少なくありません。早期の引退を考える経営者は、なかなかM&Aが進まずに不利益を被ることがあります。

仲介のデメリット

仲介への依頼時に問題となりやすいデメリットは、双方代理特有の問題点でもあります。仲介業務では当事者双方の間に立ってM&A成約を目指しますが、リピートを期待する思いから買い手寄りの目線でM&Aを進められるおそれがあるでしょう。

売り手は、希望条件での売却が困難となる可能性が高まります。自社の希望を最優先に考える場合は、仲介ではなくFAに依頼すると良いでしょう。

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3. 中小企業M&AにおけるFA・仲介の重要性

中小企業がM&Aを行う際は、FA・仲介のサポートを受けることが大切です。ここでは、その理由を解説します。

初期の検討タイミングからサポートを受けるべき理由

中小企業は、後継者不在を解決するために事業承継などを検討する経営者が多いです。しかし、ほとんどの場合、専門知識を持つ相談相手が社内にいません。専門家からのアドバイスは欠かせないといえます。

FAは、売却側や買収側の状況や悩みなどをくみ取って、最適な相手を探し出します。そして、M&Aの交渉をまとめますが、それには会計や法律・税金などの専門的な知識のほか、複雑な手続きを遂行する知識も必要です。

相手先を見つけたり専門知識を把握したりするには、時間やコストがかかります。初期の検討タイミングから、FAやM&Aアドバイザーのサポートを受ければ、納得できるM&Aが実現しやすくなります。

4. M&AにおけるFAを選ぶ基準

近年のM&A業界におけるFAの動向を見ると、大手金融機関から個人の専業FAまでさまざまな規模の業者が参入しています。FA選びを間違えると時間と費用のみが発生し、思うようにM&Aを進められないケースが多いです。

M&Aを成功させるには自社に適したFAと契約することが大切です。しかし、前提として複数のFA・M&A仲介会社と同時に契約できないため、慎重にFAを選ばなければなりません。

M&AでFAを選ぶときは、以下の要素を基準に検討しましょう。

  1. FAの業種
  2. 自社の立場
  3. フィーの体系
  4. 自社との相性・実績

各基準のいかなる点を考慮して検討すれば良いのか解説します。

①FAの業種

依頼できるFAの業種は、自社の規模によってある程度絞られます。例えば、中小企業では、専業FAが適した相談先となるケースがほとんどです。とはいえ、厳格に限定されるわけではなく、銀行・証券会社などへの依頼と比較して判断が難しいケースもあります。

FAの業種にはそれぞれ長所・短所があるため、依頼先を決める際はあらかじめ各特徴を把握しましょう。

専業FAの長所・短所

取り扱う案件サイズはFA会社によって異なりますが、それぞれのネットワークを活用してM&Aの相手探しを行える点が長所です。

しかし、ひとことに専業FAといっても取り扱う案件規模は大きく異なるうえに、FA会社の数も非常に多いため、自社にとって最適なFAを見つけるまでに多くの時間・手間が発生する点は短所といえます。

証券会社の長所・短所

豊富なネットワークを有し、株式公開買い付け(TOB)の代理人を兼ねる点は、証券会社の長所です。

一方で、小回りがききにくく、小規模なM&Aへの対応はそれほど得意ではありません。手数料を高めに設定している点も、依頼時に短所となります。

銀行の長所・短所

豊富なネットワークを有するほか、普段からメインバンクとして利用していると相談しやすい点が長所です。

ただし、証券会社と同様に小回りがききにくく、小規模なM&Aへの対応がそれほど得意ではありません。手数料が高めであり、場合によってはメインバンクであるがゆえに相談しづらいケースも考えられます。

会計事務所の長所・短所

日頃から自社のことを十分に把握しているため、相談しやすい点が長所です。

しかし、M&Aに関する専門知識や経験が不足している会計事務所が多く、事前にM&Aの実績や所有するネットワークなどを入念に確認する必要があります。

②自社の立場

FAを選ぶときは、自社の立場を明確にすることも重要です。FAの業種それぞれのメリット・デメリットを念頭に置いたうえで、自社の立場が売り手であれば信頼の置けるFAを選び、買い手であれば売り案件を多く保有するFAを選ぶと良いでしょう。

特に自社が売り手でなるべく早く売却したい場合は、FA会社にある売却先を探す能力が最も重要視されます。

しかし、数多くあるFA会社から自社の状況に見合った機関を探すのは困難であるうえ、「この会社が最適である」といった明確な指標はありません。依頼先を決めるときは、複数社を比較し、じっくりと検討する時間を確保しましょう。

そのうえで、会社(または担当者)の実績に加え、実際に会って相談したときの印象(自社との相性)も判断基準にすると良いです。

③フィーの体系

フィーの体系は会社により異なるため、着手金が必要な会社や完全成功報酬型の会社などさまざまな形態があります。最近は完全成功報酬型を採用している機関が多いですが、手数料率(レーマン方式)にも違いが見られるため、公式サイトなどを利用して事前に確認すると良いでしょう。

とはいえ、実際にM&Aが成立した場合に総額で支払う費用は、直接相談して説明を受けてください。手数料の計算は複雑であるため独自で算出するのは難しいうえ、手数料率のみを見て会社を選ぶのも得策とはいえません。

フィーは安価に越したことはありませんが、各FAのフィーに対するサービス内容は大きく異なるため、「サービスに対して支払うフィーは妥当か」という視点で吟味することが大切です。

④自社との相性・実績

依頼するFAを最終的に決定するときは直接会って相談したFA担当者との「相性」や「実績」が何よりも大事です。

ほとんどのFAはWebサイトを開設しているので、サービス概要の比較検討はできますが、実際に依頼する場合は「自社の希望に合うアドバイザリーが受けられるか」が最も重要です。この判断を面談なしで行うことは非常に危険といえます。

特に売却側は、表面的な売上・利益の話だけでなく、仕入先・販売先・その金額や推移・自身や役員の給与・自社の強みや弱み・負債や個人保証・連帯保証・過去の訴訟・担保にしている個人資産など、極めて個人的な情報まで提供を求められます。

FA担当者との相性が良くなければ、伝えるべきネガティブな情報があっても打ち明けられなかったり、交渉中にFAに対して疑心暗鬼になったり、無用の詮索によって交渉がこじれて破談になったりしかねません。

相性と同様にFAの実績も重要です。実績に裏打ちされた知識や経験が不足しているFAは、M&Aを成功に導くことが難しいといえます。

最近は、M&Aに関する相談を無料で行えるFAも増えています。FAを決める際は、複数機関の無料相談を利用して感触を確かめましょう。

M&A総合研究所は、中小・中堅規模の案件を中心に扱うM&A仲介会社です。M&A総合研究所では、M&Aの豊富な知識・実績を持つM&Aアドバイザーが、案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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5. M&AでFAを選ぶ際の注意点

M&Aが成約するまでに、半年〜1年以上かかることは少なくありません。長期で信頼できるFAに依頼することが非常に大切です。FAを選ぶ際は、「希望に合う得意分野を持つ」「コミュニケーションの相性が良い」「報酬が想定内に収まる」点を重視してください。

一度FAを決めても、他のM&A仲介会社からも話を聞くなどして、複数のアドバイザーを比べて依頼するのもおすすめです。

アドバイスの範囲、スキームの立案、マッチング、デューデリジェンスなどの業務範囲に関して具体的に説明してくれるかどうか、そして料金体系や支払い条件などの説明が明確かどうかもFAを選ぶときに重視する点といえます。

6. M&AのFAまとめ

今回は、FA(アドバイザリー)とM&A仲介の役割や業務の違い、FAを選ぶ基準を中心に解説しました。FAとM&A仲介の役割・業務には、以下の違いがあります。

  • FA→売り手と買い手のどちらか一方と契約してM&Aの流れをサポートしつつ、利益を最大化するように尽力する
  • 仲介→売り手と買い手のいずれか一方につかず、中立な立場で成約に導く

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