M&A戦略の策定方法!目的や注意点も解説!事例あり

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

M&Aを行う際には、具体的な目標や買収相手、希望するM&A取引額などを決める必要があります。この目標のことをM&A戦略といいます。この記事では、M&A戦略の策定方法について、注意点の解説や事例の紹介も含めて説明をしていきます。

目次

  1. M&A戦略の策定とは?
  2. M&A戦略を策定する目的
  3. M&A戦略の策定方法
  4. M&A戦略策定の注意点
  5. 戦略的M&Aのパターン
  6. 戦略的M&Aの流れ
  7. M&A戦略の事例15選
  8. まとめ
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1. M&A戦略の策定とは?

M&A戦略の策定とは?

近年、中小企業を中心にM&A成約件数は増加しています。その主な理由は、経営者の高齢化による事業承継です。現在、経営している会社を売却して、その売却益で引退後、ゆとりのある生活を送ろうと考えている中小企業経営者は多いと思います。

しかし、とにかく会社を売却すれば、ある程度の売却益を受け取ることができると思ったら大間違いです。M&Aを行う前には、しっかりとしたM&A戦略を策定する必要があります

そこで、この記事ではM&A戦略の策定について買い手側・売り手側それぞれの視点から紹介していきます。紹介する内容は以下の通りです。

  • M&A戦略を策定する目的と策定方法、策定のパターンについて
  • M&A戦略策定時の注意点と戦略的M&Aの流れについて
  • 戦略的M&Aの事例15選

事業承継以外にも、事業拡大や新規参入などを目的とした戦略M&Aについても解説をしていきます。ぜひ最後までご覧ください。

2. M&A戦略を策定する目的

M&A戦略策定の理由

後ほど詳しく解説をしますが、M&A戦略では、M&Aの希望取引額、希望するM&A相手の会社の業種など、自社が行うM&Aについて具体的に決めていきます。M&Aを行う際に、なぜM&A戦略を策定しておく必要があるかを売り手側と買い手側の視点から解説します。

売り手側から見たM&A戦略の重要性

売り手側がなぜM&A戦略を策定しておく必要があるかというと、希望の譲渡額で会社を売却することができるかに影響するからです。ねじ工場の中小企業を例に解説をします。

このねじ工場では、さまざまな家電製品に使われているねじを製造・販売しています。しかし、経営者の高齢化と後継者が見つからないという問題からM&Aで事業承継を行おうと考えています。

もし、M&A戦略を考えず、とにかく買収してくれる可能性のある企業に打診をすると譲渡額は低くなることが容易に想像がつきます。加えて、探索対象が多いため、売却先を見つけるまでに時間がかかる可能性があります。

一方で、M&A戦略を考えて実行した場合、売却先の業種を絞っているためすぐに売却先の候補を見つけることができます。また、売却先が大手家電メーカーであり、その会社に対して「自社を子会社化することで製品コストを抑えることができます」などをプレゼンすることで、会社の魅力が高めることができ、希望譲渡額よりも高くなる可能性があります。

これはあくまでも1例ですが、M&A戦略を策定することがいかに重要であるか理解してもらえたと思います。

買い手側から見たM&A戦略の重要性

買収企業は、M&A後、経営を行っていきます。もし、M&A戦略なしにM&Aを行うと失敗の確率が高くなることは容易に想像がつきます。M&Aで失敗をすると多額の資金が移動しているため、自社の経営悪化を招くことになります。

このようなことがないように、M&Aによりどのような経営戦略をとるのか、どのようなシナジー効果を得るのかなどのM&A戦略を売り手側よりもより詳細に考えておく必要があります。M&Aアドバイザーなどと相談して、しっかりとしたM&A戦略を策定するようにしましょう。

M&A戦略パートナーとして、M&A総合研究所をご利用ください。M&Aの流れや事業計画書の見せ方から、スキーム、価格交渉までM&A仲介会社のするすべてのノウハウをお伝えさせていただきます。
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3. M&A戦略の策定方法

M&A策定方法

M&A戦略の策定で、自社や業界の分析を行い、今後どのような経営戦略をとるのか具体的に考えていきます。M&A戦略の策定方法は以下の5つのステップを経て作成します。

  1. 自社の分析を行う
  2. M&Aの目的を定める
  3. 市場調査を行う
  4. M&Aを行うための戦略オプション案をまとめる
  5. 財務や会計を踏まえて点検する

①自社の分析を行う

まずは、自社の分析を行います。自社分析は、専門家とともに行うことをおすすめしますが、この記事では、経営者自身が簡単に自社分析できる方法を紹介します。それがSWOT分析です。

SWOTとは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)のそれぞれの頭文字を並べたものである。StrengthとWeaknessは、内部の経営環境の強い部分と弱い部分をピックアップします。例えば、営業部門が強いや人事システムが他社に比べて遅れているため弱いなどです。

一方、OpportunityとThreatは、外部の経営環境についてチャンスとピンチの内容をピックアップします。例えば、規制緩和により売り上げ増加のチャンスがあるや消費税増税により売り上げ減少のピンチがあるなどです。

このようにSWOT分析を行うことで自社の経営環境を改めて把握します。SWOT分析であげられた内容を組み合わせることで、チャンスを生かして事業を強化したいなど考えられる経営戦略をいくつかリストアップしておきます

②M&Aの目的を定める

①であげることができた経営戦略のうち、M&Aを行うことで業績の向上もしくは経営課題が解決できるものを選び、それをM&Aの目的とします。詳細なM&A戦略のパターンについては後ほど紹介しますが、ここではM&Aにおいて、買い手側と売り手側のそれぞれの視点から見たM&Aの目的を紹介します。

買い手側の目的

買い手側の目的で最も考えられるM&Aの目的は、事業や販路の拡大です。また、海外進出を目的として海外企業の買収を行う例もあります。さらには、経営の多角化や新規事業への参入、シナジー効果を得るためなどがあります。

売り手側の目的

売り手側の目的で近年増加している目的は、後継者問題です。この目的は、特に高齢の経営者が経営している中小企業でよく見られます。また、経営の効率化や売却益による資金調達などがあります。

特殊な目的

特殊な目的でM&Aを行う場合があります。それが企業再生とグループ内の再編です。

まず、企業再生を目的としたM&A(再生型M&A)は、資金繰りが悪化している企業を買収し、資金提供を行うことで利益額を向上させる手法です。利益をあげることができる技術を持っているが、資金繰りが悪化している企業を対象に再生型M&Aが行われます。再生型M&Aのメリットは、その会社の債権者が、債権を確実に回収できるという点や従業員の雇用維持・取引の維持ができる点などです。

一方、グループ内再編を目的としたM&Aでは、事業を子会社化したり、子会社を親会社に吸収する合併を行います。このM&Aのメリットは、シナジー効果を得ることができたり、税務上で有利になることなどです

③市場調査を行う

M&Aの目的を定めたら、次は市場調査を行います。シナジー効果を目的としたM&Aや同業種内でのM&Aの場合は、同じ業界内の市場調査を行えばよいので比較的情報は得やすく、市場調査を行いやすいと思われます。

しかし、新規参入を目的としたM&Aや異業種とのM&Aを行うときは、買収相手の業種の市場調査を行う必要があるため、困難であると考えられます。もし、市場調査が困難である場合はM&Aアドバイザーに相談したり、調査を依頼する必要があります

M&A総合研究所は、信頼できるM&Aアドバイザーを擁しているM&A仲介会社です。相談などございましたら、気軽にご連絡ください。

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④M&Aを行うための戦略オプション案をまとめる

市場調査が終わった後は、M&Aを行うための戦略オプション案をまとめます。戦略オプション案とは、M&A後にどのような経営戦略をとるかまとめた案のことです。一般的に4種類の戦略オプション案がベースであり、M&Aの手法や目的により決めていきます。そのベースとなる4種類の戦略オプション案とは以下の4つです。

  1. 市場浸透戦略
  2. 新市場開拓戦略
  3. 新製品開発戦略
  4. 多角化戦略

市場浸透戦略とは、既存の市場に既存製品を投入する戦略です。同業種におけるM&Aや規模の経済性を目的としたM&Aを行うときにとる戦略です。新市場開拓戦略とは、新市場に既存製品を投入する戦略です。海外進出を目的としたM&Aや販路拡大を目的としたM&Aなどを行うときにとる戦略です。

新製品開発戦略とは、既存の市場に新製品を投入する戦略です。研究開発シナジーを目的としたM&Aなどを行うときにとる戦略です。最後の多角化戦略とは、新市場に新製品を投入する戦略です。これらの戦略をベースにM&A後の経営戦略を考えていきます。

⑤財務や会計を踏まえて点検する

最後に自社の財務や会計を踏まえて点検をしておきましょう。特に買収企業では、のれんの取り扱いに注意が必要です。

のれんとは、会計上の純資産額に加算する金額のことです。のれんは、会計上に記載されていないノウハウや顧客情報などに対して支払われる対価のこと、M&A後は最大20年間かけて償却を行います。

しかし、買収した事業もしくは会社の業績が悪くなり、事業計画よりも悪化した場合は、のれんの減損処理を行う必要があります。のれんの減損処理とはM&A失敗を意味し、税務上などで不利になることから、このようなことが起こらないように自社の財務や会計を点検しておく必要があります。

4. M&A戦略策定の注意点

M&A策定の注意点

M&A戦略を策定する際に注意するべき点はたくさんありますが、この記事では2つについて解説をします。

M&Aの必要性があるかどうか

まずは、M&Aの必要性があるかどうかを考え直してみましょう。会社や事業を買収するためには、多額の資金が必要です。しかし、M&Aの成功率は約3割と低い値となっています。つまり、多額の資金を費やしても必ずM&Aが成功するわけではないということです。

  • 売り上げ向上を目的にM&Aを考えているのであれば、M&Aでなく、新製品の開発で売り上げを上げることはできないか
  • 経営の安定化を目的に買収で新規参入を行おうとしている場合は、予想収益の信ぴょう性が高いか
などを再確認し、M&Aが本当に必要か、ほかの方法で対応できないか一度は考え直す必要があります

M&Aデメリットへの対策について

M&Aのスキームを実行するうえで、問題点も発生します。例として、統合プロセスの失敗と従業員の流出があります。

前者は、M&Aを行う上で最も難関の作業であり、完了するまでに1年以上かかる場合があります。後者の場合、経営戦略がわかりにくいM&Aであったり、イメージの悪い企業とM&Aを行うと特に優秀な従業員が流出する可能性があります。

これらはどのM&Aでも起こる可能性があることなので事前に対策を考えておきましょう。

5. 戦略的M&Aのパターン

M&A戦略のパターン

M&Aの買い手側と売り手側でM&Aを行う目的は異なっていますが、ほとんどのM&Aにおいて以下の6つのパターンが戦略的M&Aを行う目的となっています。

  • 人材や設備、取引先、技術不足などの経営課題を解決
  • 後継者や資金不足などの経営課題を解決
  • 成長スピードに問題がある経営課題を解決
  • 新規事業へ参入する経営課題を解決
  • 市場や事業規模の拡大を図る経営課題を解決
  • 手法を目的に合わせて経営課題を解決
以下詳細に解説をしていきます。

人材や設備、取引先、技術不足などの経営課題を解決

人材や設備、取引先、技術不足などの経営課題を一度で解決できる方法がM&Aです。特に包括承継を行うM&A(吸収合併など)では、人材や設備、取引先、技術などを手に入れることができます

技術面では、消滅会社が所有していた自社にない技術を手に入れることができるだけでなく、研究開発シナジーを得ることができる可能性があるため、更なる会社の発展を望むことができます。

後継者や資金不足などの経営課題を解決

次は、後継者や資金不足などの経営課題を解決するためにM&Aを行うパターンです。特に近年では、後継者不在の中小企業を中心にM&Aの成約件数は増加しています。M&Aは事業承継の手段の1つとして認識されつつあります

また、会社が保有している技術はトップクラスであるのに、資金繰りに困っている企業もM&Aで解決をすることができます。このM&Aを特に再生型M&Aと呼び、資金提供を受けることで倒産を回避し、再び健全な会社経営を行うことができます。

成長スピードに問題がある経営課題を解決

会社の成長スピードが他社に比べて遅いという経営課題に対してもM&Aで解決することができます。特に業界内で同じような成長スピードである会社がいくつもある場合、M&Aを行って成長スピードを一気に上げ、業界のリーダーになるという経営戦略もあります

新規事業へ参入する経営課題を解決

経営の多角化を行う場合、新たな業界に新規参入をする必要があります。しかし、業界によっては初期投資額が高すぎるなど参入の障壁が高い業界も存在します。そのような業界への新規参入にはM&Aで解決をすることができます。

目的の業界で経営をしている企業を買収することで、新規参入を簡単に行うことができます。また、初期投資額が低く抑えることができますし、経営のノウハウを得ることができるため、M&Aなしの新規参入よりも成功率を上げることができます

市場や事業規模の拡大を図る経営課題を解決

市場や事業規模を拡大させる方法として、M&Aを行えばよいということは容易に想像がつくと思います。しかし、同業種での市場シェアを拡大させるM&Aには、独占禁止法に注意が必要です。

特に規模の大きなM&Aを行う場合は、M&Aにより市場シェアを一気に独占することになり、独占禁止法に抵触する可能性があります。

手法を目的に合わせて経営課題を解決

M&Aを行う目的は、事業拡大や経営課題の解決だけではありません。事業承継時の節税対策を目的としたM&Aもあります。それが、分社型(タテ)分割によるM&Aスキームです。

通常の株式売買によるM&Aの場合、株式を売却することで、会社の経営権を渡すことになります。この時、M&A対象外資産も渡す必要があるため、売主がそれらの所有権を戻したいと思ったら、買い戻す必要があります。このようなM&Aの場合、売主は売却益の税金とM&A対象外資産を買い戻した時の利益に課税される税金を払うことになります。

一方、分社型分割によるM&Aスキームでは、事業部分を子会社化し、その子会社の株式を売却することで事業を売却します。M&A対象外資産は、親会社に残ったままになるので、買い戻しによる税金を払う必要がなくなります。

このように目的に合わせてM&Aを行うこともできます。分社型分割によるM&Aスキームなどほかのスキームについては以下の記事で詳しく紹介していますので、興味のある方は是非ご覧ください。

【関連】M&Aスキーム・手法別でメリット・デメリットを比較!

6. 戦略的M&Aの流れ

M&Aの流れ

ここからは、戦略的M&Aの流れを紹介します。基本的には通常のM&Aの流れとほぼ同じです。

  1. M&A戦略の策定
  2. M&A先企業の選定
  3. 取締役員会などでの検討
  4. M&A基本合意書締結
  5. 買い手側によるデューデリジェンス
  6. M&A買収契約書締結
  7. クロージングにてM&A成立

なお、基本的なM&Aの流れについては以下の記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧ください。

【関連】M&Aのスケジュールを解説!【買収までの流れ・手順】

①M&A戦略の策定

まず最初にM&A戦略を策定します。ここで自社分析、市場調査を行い、M&Aの目的を決めたうえで、M&A戦略を決めます。

M&A戦略が定まらないままでM&Aを行うと失敗する可能性が非常に高くなります。M&Aアドバイザーに相談し、意見を聞いて、具体性があって、実効性のあるM&A戦略を策定しましょう。

②M&A先企業の選定

次にM&A先の企業選定を行います。M&A先の探索は、時間がかかるため普通はM&Aアドバイザーに依頼して、M&A先企業の候補を挙げてもらいます

M&Aアドバイザーですが、M&A取引額の大きさによって、得意とするM&Aは変わってきます。中小企業のM&Aなど取引額の小さいM&Aは、M&A仲介会社が得意としています。M&A総合研究所がM&A仲介会社に当たります。一方で比較的取引額の大きいM&Aは、ファイナンシャルアドバイザー(FA)に依頼しましょう。

M&Aアドバイザーから挙げてもらった候補から最終的にM&Aを行う企業を決めます。

③取締役会などでの検討

M&A先の企業が決まったら本格的にM&Aを行う準備を開始します。まずは、取締役会でM&A内容を確認し、問題がなければ承認をします。

次に、株主総会でM&Aについて提案をし、特別決議で承認を得ます。株主総会の特別決議には、議決権の3分の2以上の賛成が必要になります。ここまで賛成の数が必要な理由は、株主総会が会社の最高意思決定機関であり、かつM&Aは最も重要な議題であるからです。両社の株主総会で特別決議を得ることができると次のステップに進みます。

④M&A基本合意書締結

M&A交渉中の内容が外部に漏れないように秘密保持契約を締結します。そのあと、買収企業がM&Aスキームの提案書を作成し、その資料をもとにトップ面談を行います。

トップ面談により、両社がM&Aの意向を示したら、基本合意書を締結し、両社にM&Aの意向があることや独占交渉権があることを確認します。

⑤買い手側によるデューデリジェンス

基本合意書に締結した後は、買収企業によるデューデリジェンス(企業監査)を実施します。デューデリジェンスには3種類あり、ビジネスデューデリジェンス・財務デューデリジェンス・法務デューデリジェンスに分けることができます。

この3つの観点から買収する企業を分析し、M&Aを行っても問題がないか確認を行います。特に吸収合併など包括承継のM&Aを行う場合には、徹底したデューデリジェンスを行う必要があります

⑥M&A買収契約書締結

デューデリジェンス実施後、この分析結果に基づいて、最終条件の交渉を行います。この交渉では、契約金や条件などについて話し合います

なお、デューデリジェンスの結果、その会社を買収すると今後経営できなくなる可能性があると判断した場合には、買収の話を白紙にすることができます。無事に交渉が終わり、両社がM&Aの意向を示したら、M&A買収契約書を締結します。

⑦クロージングにてM&A成立

最後はクロージング(M&Aの実行)にてM&Aが成立したことになります。しかし、クロージングでM&Aが終了するわけではありません。買収企業はクロージング後、統合作業を行う必要があります

統合作業にはハード面とソフト面があります。ハード面は、人事や総務などのシステムを統合する作業であり、約3か月程度かかります。ソフト面は、企業風土の統合や従業員の交流などであり、ソフト面が完了したと思うことができるまでには1年以上かかる場合があります。

このように統合作業がM&Aの中で一番時間がかかる作業であり、かつ一番困難な作業となります。そのため、M&Aのクロージングまでは無事に行うことができたが、統合作業に失敗して業績が悪化し、結果としてM&Aに失敗したという例がいくつかあります。このようなことがないようにM&A戦略策定の段階で統合作業をどうするか考えておくようにします。

7. M&A戦略の事例15選

最後にM&A戦略が行われた事例を15個紹介します。この記事で紹介する企業はいずれも日本の企業であり、ほとんどの企業が海外進出を買収で行うクロスボーダーM&A戦略で事業を拡大しています

しかし、すべての企業でM&A戦略に成功しているわけではありません。最後の15例目では、ライザップのM&Aについて紹介しますが、ライザップは一度M&A戦略に失敗しており、2018年上期には営業利益が赤字に転落しています。

自社のM&A戦略を策定するときには、M&Aの成功事例・失敗事例を参考にしてください。

①日本電産のM&A戦略

日本電産は、モーター製造を中心とする電気製品メーカーです。1973年に創業したのですが、約35年の間に61件のM&Aを行い、2017年現在売上高は約1兆5000億円となっています。

海外の企業を買収するクロスボーダーM&Aも積極的に行っており、61件のうち半分以上がクロスボーダーM&Aとなっています。日本電産がここまでM&Aを行ってきた理由は2つあり、1つは車部品や家電の業界において新規技術などを手に入れるため、もう1つは、経営のリスク分散を行うためです。

日本電産の会長である永守氏は、失敗しないためのM&A戦略のポイントには以下の3つがあると明言しています。

  1. M&Aの買収価格
  2. 買収後の経営への関与
  3. シナジー効果

1つ目の買収価格ですが、日本電産のM&Aでは、算定した買収価格よりもできるだけ安い価格で買収を行っています。これはM&Aに失敗したときのリスクを最小限に抑えるためです。2つ目の経営の関与ですが、日本電産は買収後の統合作業で社員教育やコスト削減への努力などを徹底的に行います。これを行うことで、被買収会社がさらに利益を上げることに成功しています。

3つ目のシナジー効果は、日本電産が一番の目的としている効果です。以上の戦略をもとに日本電産はM&Aに成功し続けています。

②ソフトバンクのM&A戦略

ソフトバンク

ソフトバンクは、1981年に創業した、孫正義氏を社長とする会社です。参入している業界は幅広く、携帯電話通信事業やインターネット事業(ヤフーと共同出資)、最近ではエンタメ事業(パズドラなどのアプリを制作しているガンホーなどを子会社化)にも進出しています。創業から37年でグループの売上高は連結で8.9兆円と日本企業の中でM&A戦略に最も成功している企業であるといえます。

ソフトバンクのM&A戦略に「同士的結合」という言葉があります。これは、利益重視の結合よりも、同じ目標に向かって協力する志に基づいた結合のほうが結びつきが強いという理念です。この理念のもと、グループの体制も、ソフトバンクをトップとした体制ではなく、個々の会社が自立してかつグループ会社からのシナジー効果を得ながら経営を行っていく体制をとっています。

このような戦略をとっているため、同じ志を持つ経営者がソフトバンクに集まり、数多くのM&Aに成功しています。この後、ソフトバンクグループは2010年から30年間の間に、5000社体制になることを目指しており、世界に影響を与える集団になることを目標に計画を実行しています。

③ダイキンのM&A戦略

ダイキンは、エアコンなどの空調事業として世界のトップシェアを占める企業です。また、空調事業以外にもフッ素化学製品、換気製品でも世界のトップシェアを誇っています。

ダイキンのM&A戦略は、海外販路拡大を目的としたクロスボーダーM&A戦略です。この戦略により、売り上げの比率は海外が約7割を占めており、また従業員も全体の約8割が海外で働いています。売上高は連結で約1兆9000億円となっており、ダイキンもM&A戦略に成功している企業です。

④NTTデータのM&A戦略

NTTデータは、データ通信やシステム構築事業を行っている企業です。NTTデータのM&A戦略も海外販路拡大を目的としたクロスボーダーM&A戦略です。2017年までの11年間で約6000億円以上をかけて、約50社の企業を買収してきました。

この戦略により、売上高は連結で約2兆1000億円、従業員の海外比率は45%程度になっています。今後、この事業で世界の5番以内に入ることを目標に、さらなるクロスボーダーM&A戦略を行っていく予定です。

⑤サントリーのM&A戦略

サントリーは、ビールや清涼飲料水の製造・販売を行う会社です。サントリーのM&A戦略も海外販路拡大を目的としたクロスボーダーM&A戦略です。

1980年代から海外のビール・洋酒メーカーのM&Aを積極的に行い、現在までに10社以上の買収を行い、グローバル展開をしています。サントリーの売上高は連結で約2兆7000億円となっております。

近年も、サントリーは大型のM&Aを行っており、ジン・ビームを販売しているビーム社を約4000億円で買収しています。今後も海外企業のM&Aを行っていくことで事業を拡大していくと考えられます。

⑥リクルートのM&A戦略

リクルートは、人材派遣・人材紹介などのサービスを行っている会社です。リクルートのM&A戦略も海外販路拡大を目的としたクロスボーダーM&A戦略で、2010年ごろから海外進出を行っています。

リクルートは先に紹介したM&A戦略とは異なっており、日本で成功したビジネスモデルを買収した海外の子会社に適用して業績を伸ばしています。近年では、ホットペッパーグルメやホットペッパービューティーの事業モデルのノウハウをヨーロッパの買収した企業に適用して完全子会社化を行っています。この戦略によりリクルートの売上高は連結で約1兆8000億円となっております。

⑦楽天のM&A戦略

楽天

楽天は、インターネットサービスを提供している会社です。1997年に創業した比較的若い会社であるにも関わらず、現在の売り上げは連結で1兆円弱になっています。

楽天もM&Aにより事業を拡大することができた会社で、現在「楽天経済圏」を確立しています。楽天経済圏とは、楽天が楽天市場や楽天トラベルなどさまざまな事業を経営し、楽天ポイントという楽天経済圏でしか使えないポイントを発行している事業共同体のことです。

この楽天経済圏の形成により、売り上げを大きく伸ばしています。現在は、海外販路の拡大を目指してクロスボーダーM&Aを積極的に行っています。

⑧JTのM&A戦略

JTは、日本たばこ産業の略称で、1985年に日本専売公社のたばこ事業を引き継いだ民間会社です。国内でのたばこの売り上げは、喫煙率の低下を背景に下がってます。そのため、JTは海外販路拡大の路線をとり、クロスボーダーM&Aを積極的に行う戦略をとりました

まずは、1999年にアメリカのRJRナビスコ社のたばこ事業を買収し、たばこの販売本数を約10倍まで増加させることに成功しました。そのあとも海外のたばこ事業の買収を行い、現在の売上高は連結で約2兆2500億円になっています。JTもM&A戦略に成功した日本企業の1つであるといえます。

⑨株式会社ファーストリテイリングのM&A戦略

株式会社ファーストリテイリングは、子会社にユニクロを持っている衣料品会社です。ファーストリテイリングのM&A戦略も海外販路拡大を目的としたクロスボーダーM&A戦略ですが、一方で経営の安定化を目指した多角化戦略も行っています。

例えば、衣料品事業ではユニクロ以外にジーユーというブランドを立ち上げたり、そのほかにも青果事業を行っています。これらの事業を含めたファーストリテイリングの売上高は連結で約1兆8000億円となっております。

⑩株式会社ZOZOのM&A戦略

株式会社ZOZOは、社長がいろいろな話題で有名な前澤友作氏であり、ZOZOTOWNを運営しているスタートトゥデイから社名変更した会社です。ZOZOは2013年から2017年にかけてM&Aを4件行っています

特にファッションメディアのIQONの買収は、新規参入のための買収と考えられ、今後、ZOZOがファッション系メディアに進出していくと思われます。

⑪イオン株式会社のM&A戦略

イオンは、国内最大の流通グループです。総合スーパーなどの小売業以外にも総合金融業、サービス専門店業など多角化経営を行っております。そのため、イオンのM&A戦略はこれらの多角化経営を強化するために行われています。

例えば、総合金融業の強化として子会社であるイオンフィナンシャルサービスが東芝ローンサービスの買収を行っています。また、小売業の事業拡大としてダイエーの子会社化を行いました。その他、数多くのM&Aを行い、事業拡大を行っているため、売上高は連結で流通グループとしては国内最大の約8兆4000億円となっています。

⑫良品計画のM&A戦略

良品計画は、無印良品をプライベートブランドに持つ小売企業です。もともとは、西友のプライベートブランドとして販売されていましたが、無印良品のブランドを西友の完全子会社化するために、良品計画が設立されました

近年では、家具は製造販売イデーの事業を譲り受け、子会社として家具事業を営んでいます。また、ファミリーマートと資本提携を行い、売り上げを伸ばしています。

⑬LINE株式会社のM&A戦略

LINEのアプリ

LINE株式会社は、無料通信アプリLINEを運営しているインターネット関連事業の会社です。LINEは2012年にライブドアのメディア事業の吸収合併を行っています。また、2018年にLINEモバイルとソフトバンクを資本業務提携を行い、電話通信事業で協力することになりました。

⑭ライブドアのM&A戦略

ライブドアは、かつてインターネット、メディア、金融に関する事業を行っていた堀江貴文氏を代表としていた会社である。ライブドアは、多方面の事業に進出しており、各事業で売り上げを向上させるためにM&Aを積極的に行っていました。

⑮ライザップのM&A戦略

ライザップとは、”結果にコミットする”というキャッチフレーズでおなじみのトレーニングジムを経営している会社です。ライザップは、2016年ごろから積極的なM&A戦略をとったため、急速に事業が拡大しました。売上高は2015年度の539億円から2年後には1362億円と約2.5倍増加しています

この間にライザップの子会社になった企業数は約50社にのぼります。経営状態があまりよくない企業も積極的に買収し、独自のメソッドで黒字に回復させるという戦略をとっていました。しかし、2018年度はこのM&A戦略が裏目に出る結果となりました。

2018年度上期の売り上げは1091億円と前年比74%増だったのですが、経常損益が88億円の赤字に転落する結果になりました。一番の原因は、買収後1年以内の子会社の経営不振です。つまり、M&Aで事業拡大を急ぐあまり、買収した会社すべてが経営状態を回復できていなかったため、グループ全体の経営利益が赤字になりました。

今後はM&Aによる事業拡大戦略を一時中断して、既存子会社の経営回復を優先的に行う予定だそうです。この戦略が成功すると営業利益の急激な増加が見込まれるため、今後もライザップに注目しておく必要があります。

8. まとめ

M&A戦略の策定方法について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?この記事をまとめると以下のようになります。

  • M&A戦略策定の重要性について 
  •  →M&A戦略で目的を定めていないと失敗する確率が高くなる
  • M&Aを行うときの注意点について
  •  →M&A戦略を策定する際に本当にM&Aを行うべきか再度確認をする
  • M&A戦略のパターンについて
  •  →M&A戦略はM&Aアドバイザーに相談の上、策定するほうが良い

M&A戦略策定は、M&Aを行う上で非常に重要な作業です。まとめの3つ目に書いてあるようにM&Aアドバイザーと相談したうえでM&A戦略を策定するべきです。M&A総合研究所には、優秀なM&Aアドバイザーが在籍しております。M&A戦略についての相談も無料で行っています

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