M&A戦略とは?策定の方法と手順、目的、注意点も解説【成功事例あり】

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取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aを行う際には、具体的な目標や買収相手、希望するM&A取引額などを決める必要があります。この目標のことをM&A戦略といいます。この記事では、M&A戦略の策定方法について、注意点の解説や事例の紹介も含めて説明します。

目次

  1. M&A戦略とは
  2. M&A戦略を策定する重要性
  3. M&A戦略の策定方法
  4. 売り手側におけるM&A戦略策定のポイント
  5. 買い手側におけるM&A戦略策定のポイント
  6. M&A戦略を策定する際の注意点
  7. M&A戦略の事例20選
  8. 戦略的M&Aの流れ
  9. M&A戦略のまとめ
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1. M&A戦略とは

M&A戦略とは、経営戦略を実現するためにM&Aの目的を明確にし、目的を達成するための戦略のことです。具体的には次のような要素が必要になります。

  • 経営戦略との整合性を図ることによりM&A戦略へ落とし込んでいく
  • 経営戦略を通じて必要となる経営資源や能力をもつ企業を選定する
  • M&Aを円滑に遂行するためにM&Aの推進部署や自社内ルールを明確化する

M&A戦略を策定する手順

M&A戦略の策定方法は以下のとおりに行いましょう。

  • 自社の分析を行う
  • M&Aの目的を定める
  • 市場調査を行う
  • M&Aを行うための戦略オプション案をまとめる
  • 財務や会計を踏まえて点検する

このように、自社や業界の分析を行い、今後どのような経営戦略をとるのか具体的に考えていくのです。この記事ではM&A戦略の策定方法を5つのステップに分けてわかりやすく解説しています。

もちろん、取締役や社内のキーパーソンだけでM&A戦略を策定することは可能です。しかし、M&A戦略で決定を間違えてしまうとM&Aの失敗につながるかもしれません。そのため、できる限り専門家に相談しながら策定していくことをおすすめします。

今回の記事を読んで、「客観的な意見も聞きたい」「専門家に力を借りたい」と感じた方は、M&A総合研究所までお気軽にご相談ください。M&Aに詳しい専門家が親身になってアドバイスさせていただきます。

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2. M&A戦略を策定する重要性

M&A戦略では、M&Aの希望取引額、希望するM&A相手の会社の業種など、自社が行うM&Aを具体的に決めていきます

M&Aを行う際に、なぜM&A戦略を策定しておく必要があるかを売り手側と買い手側の視点の両方の立場から確認していきましょう。

売り手側におけるM&A戦略の重要性

売り手側がなぜM&A戦略を策定しておく必要があるかというと、希望の譲渡額で会社を売却できるかに影響するからです。ねじ工場の中小企業を例に解説します。

このねじ工場では、さまざまな家電製品に使われているねじを製造・販売しています。しかし、経営者の高齢化と後継者が見つからない問題からM&Aで事業承継を行おうと考えました。

もし、M&A戦略を考えず、とにかく買収してくれる可能性のある企業に打診をすると譲渡額は低くなることが容易に想像がつきます。加えて、探索対象が多いため、売却先を見つけるまでに時間がかかる可能性があるでしょう。

一方で、M&A戦略を考えて実行した場合、売却先の業種を絞っているためすぐに売却先の候補を見つけられます。また、売却先が大手家電メーカーであり、その会社に対して「自社を子会社化することで製品コストを抑えられます」などをプレゼンすることで、会社の魅力が高められ、希望譲渡額よりも高くなる可能性があります。

あくまでも1例ですが、M&A戦略の策定がいかに重要であるか理解できるでしょう。

買い手側におけるM&A戦略の重要性

買収企業は、M&A後、経営を行います。もし、M&A戦略なしにM&Aを行うと失敗の確率が高くなることは容易に想像がつくでしょう。M&Aで失敗をすると多額の資金が移動しているため、自社の経営悪化を招くことになりかねません。

このようなことがないように、M&Aでどのような経営戦略をとるのか、どのようなシナジー効果を得るのかなどのM&A戦略を売り手側よりも詳細に考えておく必要がありますM&Aアドバイザーなどと相談してM&A戦略を策定するようにしましょう。

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3. M&A戦略の策定方法

M&A戦略の策定で、自社や業界の分析を行い、今後どのような経営戦略をとるのか具体的に考えていきます。M&A戦略の策定方法は以下の5つのステップを経て作成します。

  1. 自社の分析を行う
  2. M&Aの目的を定める
  3. 市場調査を行う
  4. M&Aを行うための戦略オプション案をまとめる
  5. 財務や会計を踏まえて点検する

1つずつ確認しましょう。

①自社の分析を行う

まずは、自社の分析を行います。自社分析は、専門家とともに行うことをおすすめしますが、この記事では、経営者自身が簡単に自社分析できる方法を紹介します。それがSWOT分析です。

SWOTとは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)のそれぞれの頭文字を並べたものである。StrengthとWeaknessは、内部の経営環境の強い部分と弱い部分をピックアップします。例えば、営業部門が強いや人事システムが他社に比べて遅れているため弱いなどです。

一方、OpportunityとThreatは、外部の経営環境についてチャンスとピンチの内容をピックアップします。例えば、規制緩和により売り上げ増加のチャンスがあるや消費税増税により売り上げ減少のピンチがあるなどです。

このようにSWOT分析を行うことで自社の経営環境を改めて把握します。SWOT分析であげられた内容を組み合わせることで、チャンスを生かして事業を強化したいなど考えられる経営戦略をいくつかリストアップしておきます

②M&Aの目的を定める

①であげた経営戦略のうち、M&Aを行うことで業績の向上もしくは経営課題が解決できるものを選び、それをM&Aの目的とします。

詳細なM&A戦略のパターンは後ほど紹介しますが、ここではM&Aにおいて、買い手側と売り手側のそれぞれの視点から見たM&Aの目的を紹介します。

もちろん、企業によって目的は異なるので、自社にとってふさわしい目的は何なのか参考程度にご確認ください。

売り手側の目的

売り手側の目的で近年増加している目的は、後継者問題です。この目的は、特に高齢の経営者が経営している中小企業でよく見られます。家族や従業員に事業を任せられる人がいない場合に、M&Aが活用されるのです。

また、経営の効率化や売却益による資金調達などがあります。大企業の傘下に入ることで経営基盤を安定させたり、新しいITシステムを活用させたりすることが期待できるのです。

さらに、M&Aで企業を売却することで、その対価にまとまった資金を得られます。

買い手側の目的

買い手側の目的で最も考えられるM&Aの目的は、事業や販路の拡大です。海外進出を目的として海外企業の買収を行う例もあります。さらには、経営の多角化や新規事業への参入、シナジー効果を得るためなどがあります。

さらに企業の価値を高めるためにM&Aを実施し、手に入れたいものをお金で効率よく買収するのです。

特殊な目的

特殊な目的でM&Aを行う場合があります。それが企業再生とグループ内の再編です。

まず、企業再生を目的としたM&A(再生型M&A)は、資金繰りが悪化している企業を買収し、資金提供を行うことで利益額を向上させる手法です。利益をあげる技術を持っているが、資金繰りが悪化している企業を対象に再生型M&Aが行われます。

再生型M&Aのメリットは、その会社の債権者が、債権を確実に回収できる点や従業員の雇用維持・取引の維持ができる点などです。

一方、グループ内再編を目的としたM&Aでは、事業を子会社化したり、子会社を親会社に吸収する合併を行ったりします。このM&Aのメリットは、シナジー効果を得られたり、税務上で有利になったりすることなどです

③市場調査を行う

M&Aの目的を定めたら、次は市場調査を行います。シナジー効果を目的としたM&Aや同業種内でのM&Aの場合は、同じ業界内の市場調査を行えばよいので比較的情報は得やすく、市場調査を行いやすいでしょう。

しかし、新規参入を目的としたM&Aや異業種とのM&Aを行うときは、買収相手の業種の市場調査を行う必要があるため、困難であると考えられます。もし、市場調査が困難である場合はM&Aアドバイザーに相談したり、調査を依頼したりする必要があります

④M&Aを行うための戦略オプション案をまとめる

市場調査が終わった後は、M&Aを行うための戦略オプション案をまとめます。戦略オプション案とは、M&A後にどのような経営戦略をとるかまとめた案のことです。

一般的に4種類の戦略オプション案がベースであり、M&Aの手法や目的により決めていきます。そのベースとなる4種類の戦略オプション案とは以下の4つです。

  • 市場浸透戦略
  • 新市場開拓戦略
  • 新製品開発戦略
  • 多角化戦略

市場浸透戦略とは、既存の市場に既存製品を投入する戦略です。同業種におけるM&Aや規模の経済性を目的としたM&Aを行うときに取る戦略でしょう。新市場開拓戦略とは、新市場に既存製品を投入する戦略です。海外進出を目的としたM&Aや販路拡大を目的としたM&Aなどを行うときに取る戦略でしょう。

新製品開発戦略とは、既存の市場に新製品を投入する戦略です。研究開発シナジーを目的としたM&Aなどを行うときに取る戦略でしょう。最後の多角化戦略とは、新市場に新製品を投入する戦略です。これらの戦略をベースにM&A後の経営戦略を考えていきます。

⑤財務や会計を踏まえて点検する

最後に自社の財務や会計を踏まえて点検をしておきましょう。特に買収企業では、のれんの取り扱いに注意が必要です。

のれんとは、会計上の純資産額に加算する金額のことです。のれんは、会計上に記載されていないノウハウや顧客情報などに対して支払われる対価で、M&A後は最大20年間かけて償却を行います。

しかし、買収した事業もしくは会社の業績が悪くなり、事業計画よりも悪化した場合は、のれんの減損処理を行う必要があります。のれんの減損処理とはM&A失敗を意味し、税務上などで不利になることから、このようなことが起こらないように自社の財務や会計を点検しておくことが必須です。

M&A戦略を自社内で完結させることは難しいでしょう。専門の部署を作り、M&A業務に専念させる人材や労力が必要です。

そこで、M&Aを検討した段階でM&A総合研究所にご相談ください。経験豊富なアドバイザーが多数在籍するM&A総合研究所が、M&A成立までのフルサポートをいたします。

さらに、M&A総合研究所はスピーディーなサポートを実践しており、成約まで最短3カ月という実績を持っています。初回相談は無料なので、ぜひお気軽にご相談ください。

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⑥相手先候補をリストアップする

自社売却候補を探す場合には、まずはロングリストの作成が必要です。M&Aの経営戦略や目的に適合した企業を20~30社程度リストアップしたものがロングリストです。条件に合った企業が多いと100社程度のロングリストになる可能性もあります。

ロングリストは売り手企業で作ることも可能ですが、実際には情報不足で自作するのは非常に困難です。そのためロングリストの作成はM&Aの専門家への依頼が多いでしょう。

その後さらに検討を加え、絞り込んでいったものがショートリストです。売り手にとってM&Aが成功できるか、目的が果たせるか、などを検討してショートリストに優先順位をつけていきます。

優先順位を売り手企業が決めるのは、ロングリストの作成以上に難しい作業です。ここで判断を誤るとM&Aの成功は望めないでしょう。

⑦相手先企業への接触手段を検討する

交渉の相手先を絞り込むことができたら実際の交渉に入ります。主な相手先との交渉方法は次の2つです。

  • 相手企業との直接交渉
  • M&A支援会社(仲介会社・FA・マッチングサービス)の利用

では、具体的な方法を見ていきましょう。

直接的に接触する

自社売却企業を絞り込んだところで、相手企業への直接交渉も可能です。直接交渉をすればスピーディーに交渉を進められ、機密情報の共有を当事者間だけに留められるメリットがあります。

しかし実際には直接交渉はとても負担が大きいのです。M&Aの検討自体が会社の機密情報にあたりますので、相手企業への直接交渉の場合はトップクラスとの面談が必要です。また相手企業との事業規模の違いや相手先の面目などへの考慮も必要になります。

そのため実際に直接交渉が行われるケースとしては、トップ同士が知り合いで気心が知れている場合や、相手先に強い思い入れがある場合などに限られるでしょう。

そこで考えられるのが仲介会社の利用です。

M&A仲介会社を利用して接触する

仲介会社を利用する場合を考えてみましょう。

仲介会社を利用した場合、自社名を伏せての交渉が可能です。M&Aは自社にとって機密事項ですので、必要以上に情報を知られないのは大きなメリットです。

また専門家の立場から交渉の仕方や必要書類の準備などのアドバイスがもらえます。スムーズに交渉を進めるには専門家のアドバイスはとても重要です。

M&Aの経験や知識が豊富な仲介会社の利用はメリットが大きいといえるでしょう。

4. 売り手側におけるM&A戦略策定のポイント

売り手側におけるM&A戦略策定のポイント

M&Aを成功させるには戦略の策定が重要です。M&Aをするには何かしら目的があります。その目的を達成する方法が戦略です。

戦略があいまいだと、買い手側企業に丸め込まれるなど不利な条件で売却することになりかねません。売り手側におけるM&A戦略策定のポイントを確認しましょう。

事業の選択と集中

複数の事業や子会社を展開する企業では、不採算部門の清算が必要になることがあります。また経営戦略上足枷となる部門があった場合、その対処も考えなければなりません。

それらの対処方法の一つとしてM&Aが活用され、事業の集中を図ります。

後継者の確保

次は、後継者や資金不足などの経営課題を解決するためにM&Aを行うパターンです。特に近年では、後継者不在の中小企業を中心にM&Aの成約件数は増加しています。M&Aは事業承継の手段の1つとして認識されつつあります

M&Aによるイグジットの達成

ベンチャー企業にとってはM&Aがイグジットの目標になっています。投資した資金をいつ頃どのような方法で回収するのか、イグジットプランを明確にします。

日本ではM&Aによるイグジットは、会社を見捨てるような負のイメージがあるのも事実です。そのためIPOによるイグジットが多数ですが、近年ではM&Aによるイグジットも徐々に増加しています。

資金不足の解決

会社が保有している技術はトップクラスであるのに、資金繰りに困っている企業もM&Aで解決できます。このM&Aを特に再生型M&Aと呼び、資金提供を受けることで倒産を回避し、再び健全な会社経営を行います。

5. 買い手側におけるM&A戦略策定のポイント

買い手側におけるM&A戦略策定のポイント

買い手企業のM&Aの目的としては、新規事業への参入や既存事業の拡大などがあげられるでしょう。それらの目的を達成するために、具体的な戦略を立てていきます。買い手側におけるM&A戦略策定のポイントを見ていきましょう。

経営資源の吸収

人材や設備、取引先、技術不足などの経営課題を一度で解決できる方法がM&Aです。特に包括承継を行うM&A(吸収合併など)では、人材や設備、取引先、技術などを手に入れられます

技術面では、消滅会社が所有していた自社にない技術を手に入れられるだけでなく、研究開発シナジーを得る可能性があるため、さらなる会社の発展が望めます。

既存事業の強化

市場や事業規模を拡大させる方法として、M&Aを行えばよいことは容易に想像がつきます。しかし、同業種での市場シェアを拡大させるM&Aには、独占禁止法に注意が必要です。

特に規模の大きなM&Aを行う場合は、M&Aにより市場シェアを一気に独占することになり、独占禁止法に抵触する可能性があります。

成長スピードの向上

会社の成長スピードが他社に比べて遅いという経営課題に対してもM&Aで解決できます。特に業界内で同じような成長スピードの会社がいくつもある場合、M&Aで成長スピードを一気に上げ、業界のリーダーになる経営戦略もあります

新規事業へに参入

経営の多角化を行う場合、新たな業界への新規参入が必要です。しかし、業界によっては初期投資額が高すぎるなど参入の障壁が高い業界も存在します。そのような業界への新規参入もM&Aで解決できるでしょう。

目的の業界で経営をしている企業を買収すると、新規参入が簡単にできます。また、初期投資額が低く抑えられる、経営のノウハウを得られるなど、M&Aなしの新規参入より成功率を上げられます

節税効果の獲得

M&Aを行う目的は、事業拡大や経営課題の解決だけではありません。事業承継時の節税対策を目的としたM&Aもあります。それが、分社型(タテ)分割によるM&Aスキームです。

通常の株式売買によるM&Aの場合、株式を売却することで、会社の経営権を譲渡します。この時、M&A対象外資産も渡す必要があり、売主がそれらの所有権を戻したいと思ったら、買い戻すことが必要です。このようなM&Aの場合、売主は売却益の税金とM&A対象外資産を買い戻した時の利益に課税される税金の両方を払うことになるのです。

一方、分社型分割によるM&Aスキームでは、事業部分を子会社化し、その子会社の株式の売却によって事業を売却します。M&A対象外資産は、親会社に残ったままになるので、買い戻しによる税金を払う必要がありません。

6. M&A戦略を策定する際の注意点

M&A戦略を策定する際に注意すべき点はたくさんありますが、この記事では2つについて解説します。

  1. M&Aの必要性があるかどうか
  2. M&Aデメリットへの対策について

それぞれの注意点を詳しく確認しましょう。

①M&Aの必要性があるかどうか

まずは、M&Aの必要性があるかどうかを考え直してみましょう。会社や事業を買収するには、多額の資金が必要です。しかし、M&Aの成功率は約3割と低い値となっています。つまり、多額の資金を費やしてもM&Aが成功するとは限らないのです。

  • 売り上げ向上を目的にM&Aを考えているのであれば、M&Aでなく、新製品の開発で売り上げを上げられないか
  • 経営の安定化を目的に買収で新規参入を行おうとしている場合は、予想収益の信ぴょう性が高いか

上記の点を再確認し、M&Aが本当に必要か、ほかの方法で対応できないか一度は考え直す必要があります

②M&Aデメリットへの対策について

M&Aのスキームを実行するうえで、問題点も発生します。例として、統合プロセスの失敗と従業員の流出があります。

前者は、M&Aを行ううえで最も難関の作業であり、完了するまでに1年以上かかる場合があるでしょう。後者の場合、経営戦略がわかりにくいM&Aや、イメージの悪い企業とM&Aを行うと特に優秀な従業員が流出する可能性があります。

これらはどのM&Aでも起こる可能性があるため事前に対策を考えておきましょう。

③常に目的を確認する

M&Aを行う目的は何か?M&A戦略を策定する際に後継者問題や資金回収などの目的を明確化し、それらの目的は「M&Aを行うことで達成できるのか」を常に確認します。

M&A交渉は複雑かつ長期にわたるため、目先のことに囚われ目的を見失ってしまう可能性があるからです。常に目的を確認しながら、達成すべきものを見失わないように交渉を続けましょう。

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7. M&A戦略の事例20選

次にM&A戦略が行われた事例を20例紹介します。この記事で紹介する企業はいずれも日本の企業であり、ほとんどの企業が海外進出を買収で行うクロスボーダーM&A戦略で事業を拡大しています

しかし、すべての企業でM&A戦略に成功しているわけではありません。15例目では、ライザップのM&Aにを紹介しますが、ライザップは一度M&A戦略に失敗しており、2018年上期には営業利益が赤字に転落しています。

自社のM&A戦略を策定するときには、M&Aの成功事例・失敗事例を参考にしてください。

①日本電産のM&A戦略

日本電産は、モーター製造を中心とする電気製品メーカーです。1973年に創業し、1984年2月のトリン社軸流ファン部門(アメリカ)を皮切りに2021年8月の三菱重工工作機械まで約35年の間に67件のM&Aを行っています。

日本電産は2021年4月、2022年3月期連結業績(国際会計基準)で売上高が前期比5.1%増の1兆7,000億円、営業利益で同12.5%増の1,800億円と、ともに過去最高となる見通しを発表しています。

海外の企業を買収するクロスボーダーM&Aも積極的に行っており、67件のうち半分以上がクロスボーダーM&Aです。日本電産がここまでM&Aを行ってきた理由は2つあり、1つは車部品や家電業界において新規技術などを手に入れるため、もう1つは、経営のリスク分散を行うためです。

日本電産の会長である永守氏は、失敗しないためのM&A戦略のポイントには以下の3つがあると明言しています。

  • M&Aの買収価格
  • 買収後の経営への関与
  • シナジー効果

1つ目の買収価格は、日本電産のM&Aでは、算定した買収価格よりもできるだけ安い価格で買収を行っています。これはM&Aに失敗したときのリスクを最小限に抑えるためです。

2つ目の経営の関与は、日本電産は買収後の統合作業で社員教育やコスト削減への努力などを徹底的に行います。これを行うことで、被買収会社がさらに利益を上げています。

3つ目のシナジー効果は、日本電産が一番の目的としている効果です。以上の戦略をもとに日本電産はM&Aに成功し続けています。

②ソフトバンクのM&A戦略

ソフトバンクは、1981年に創業した、孫正義氏を社長とする会社です。参入している業界は幅広く、携帯電話通信事業やインターネット事業(ヤフーと共同出資)、最近ではエンタメ事業(パズドラなどのアプリを制作しているガンホーなどを子会社化)にも進出しています。

2020年度のグループの売上高は連結で約5.6兆円と日本企業の中でM&A戦略に最も成功している企業といえるでしょう。

ソフトバンクのM&A戦略に「同士的結合」という言葉があります。これは、利益重視の結合よりも、同じ目標に向かって協力する志に基づいた結合のほうが結びつきが強いという理念です。この理念のもと、グループの体制も、ソフトバンクをトップとした体制ではなく、個々の会社が自立してかつグループ会社からのシナジー効果を得ながら経営を行っていく体制をとっています。

このような戦略をとっているため、同じ志を持つ経営者がソフトバンクに集まり、数多くのM&Aに成功しています。この後、ソフトバンクグループは2010年から30年間に、5,000社体制になることを目指しており、世界に影響を与える集団になることを目標に計画を実行しているのです。

③ダイキンのM&A戦略

ダイキンは、エアコンなどの空調事業として世界のトップシェアを占める企業です。また、空調事業以外にもフッ素化学製品、換気製品でも世界のトップシェアを誇っています。

ダイキンのM&A戦略は、海外販路拡大を目的としたクロスボーダーM&A戦略です。単に売り上げるだけではなく、成長戦略に沿ったM&Aであることが大事と考えています。この戦略により、売り上げの比率は海外が約7割を占めており、また従業員も全体の約8割が海外で働いています。2020年度売上高は連結で約2兆4,934億円となっており、ダイキンもM&A戦略に成功している企業です。

④NTTデータのM&A戦略

NTTデータは、データ通信やシステム構築事業を行っている企業です。NTTデータのM&A戦略も海外販路拡大を目的としたクロスボーダーM&A戦略です。2017年までの11年間で約6,000億円以上をかけて、約50社の企業を買収してきました。

この戦略により、売上高は2020年現在連結で約2兆2,000億円、従業員の海外比率は45%程度になっています。今後、この事業で世界の5番以内に入ることを目標に、さらなるクロスボーダーM&A戦略を行っていく予定です。

⑤サントリーのM&A戦略

サントリーは、ビールや清涼飲料水の製造・販売を行う会社です。サントリーのM&A戦略も海外販路拡大を目的としたクロスボーダーM&A戦略です。

1980年代から海外のビール・洋酒メーカーのM&Aを積極的に行い、現在までに10社以上の買収を行い、グローバル展開をしています。2020年度サントリーの売上高は連結で約2兆3,676億円です。

近年も、サントリーは大型のM&Aを行っており、2014年にジン・ビームを販売しているビーム社を160億ドルで買収し、サントリー酒類のスピリッツ事業と統合しました。今後も海外企業のM&Aを行っていくことで事業を拡大していくと考えられます。

⑥リクルートのM&A戦略

リクルートは、人材派遣・人材紹介などのサービスを行っている会社です。リクルートのM&A戦略も海外販路拡大を目的としたクロスボーダーM&A戦略で、2009年からのM&Aは海外企業のみになっています。その結果海外60カ国で事業を展開し、海外売上高比率は46%まで伸びています。

リクルートのM&A戦略は、日本で成功したビジネスモデルを買収した海外の子会社に適用して業績を伸ばすことです。近年では、ホットペッパーグルメやホットペッパービューティーの事業モデルのノウハウをヨーロッパの買収した企業に適用して完全子会社化を行っているのです。この戦略によりリクルートの売上高は2020年度連結で約2兆2,693億円となっています。

⑦楽天のM&A戦略

楽天は、インターネットサービスを提供している会社です。1997年に創業した比較的若い会社であるにもかかわらず、2020年の売り上げは連結で前年比15.2%増の1兆4,555億円になっています。

楽天もM&Aにより事業を拡大できた会社で、現在「楽天経済圏」を確立しています。楽天経済圏とは、楽天が楽天市場や楽天トラベルなどさまざまな事業を経営し、楽天ポイントという楽天経済圏でしか使えないポイントを発行している事業共同体のことです。

この楽天経済圏の形成により、売り上げを大きく伸ばしています。現在は、海外販路の拡大を目指してクロスボーダーM&Aを積極的に行っています。

⑧JTのM&A戦略

JTは、日本たばこ産業の略称で、1985年に日本専売公社のたばこ事業を引き継いだ民間会社です。国内でのたばこの売り上げは、喫煙率の低下を背景に下がってます。そのため、JTは海外販路拡大の路線をとり、クロスボーダーM&Aを積極的に行う戦略を取りました

まずは、1999年にアメリカのRJRナビスコ社のたばこ事業を買収し、たばこの販売本数を約10倍まで増加させることに成功しました。そのあとも海外のたばこ事業の買収を行い、2020年度の売上高は連結で1兆5,921億円になっています。

衰退産業の元国営企業という印象を完全に払拭し、JTもM&A戦略に成功した日本企業の1つであるといえます。

⑨ファーストリテイリングのM&A戦略

ファーストリテイリングは、子会社にユニクロを持っている衣料品会社です。ファーストリテイリングのM&A戦略も海外販路拡大を目的としたクロスボーダーM&A戦略ですが、一方で経営の安定化を目指した多角化戦略も行っています。

例えば、衣料品事業ではユニクロ以外にジーユーというブランドを立ち上げたり、青果事業を行ったりしているのです。これらの事業を含めたファーストリテイリングの2020年度売上高は連結で2兆22億円になっています。

⑩ZOZOのM&A戦略

ZOZOは、メディアでも有名な前澤友作氏が前社長を務めており、現在は澤田宏太郎氏が代表取締役社長兼CEOを務めている企業です。ZOZOTOWNを運営しているスタートトゥデイから社名変更した会社で、ZOZOは2013年から2017年にかけてM&Aを4件行っています。

特にファッションメディアのIQONの買収は、新規参入のための買収と考えられ、今後、ZOZOがファッション系メディアに進出していくでしょう。

さらに2019年にはソフトバンク傘下のヤフーが、ZOZOに対して株式公開買い付け(TOB)を実施し、連結子会社化することを発表しました。それまで前澤友作氏のカリスマ経営で成り立っていたZOZOですが、ヤフーの傘下に入ることで、新たな販路が切り開かれ、さらなる成長が期待されています。

⑪イオンのM&A戦略

イオンは、国内最大の流通グループです。総合スーパーなどの小売業以外にも総合金融業、サービス専門店業など多角化経営を行っています。そのため、イオンのM&A戦略はこれらの多角化経営を強化することです。

例えば、総合金融業の強化として子会社であるイオンフィナンシャルサービスが東芝ローンサービスの買収を行っています。また、小売業の事業拡大としてダイエーの子会社化を行いました。その他、数多くのM&Aを行い、事業拡大を行っているため、2021年2月期の売上高は連結で流通グループとしては国内最大の約8兆6,039億円となっています。

経済活動の制限や停滞など、日常生活を根本から変えた新型コロナウイルスの世界的な感染拡大ですが、コロナ禍での新たな需要に取り組み、スーパーマーケット事業・ヘルス&ウエルネス事業が好調に推移しています。

⑫良品計画のM&A戦略

良品計画は、無印良品をプライベートブランドに持つ小売企業です。もともとは、西友のプライベートブランドとして販売されていましたが、無印良品のブランドを西友の完全子会社化するために、良品計画が設立されました

近年では、家具は製造販売での事業を譲り受け、子会社として家具事業を営んでいます。また、ファミリーマートと資本提携を行い売り上げを伸ばしていましたが、両社の立ち位置の違いにより、2019年1月で良品計画のファミリーマートへの商品供給は終了しています。

その後良品計画は2020年6月からローソンの都内3店舗で実験導入を始めました。その店舗数は2021年5月には100店舗まで拡大されています。まだ顧客のニーズを見極めている段階ですが、今後はローソン限定の「無印良品」の商品開発も検討されています。

⑬LINEのM&A戦略

LINEの運営会社はLINEで、親会社は韓国最大のインターネットサービス企業のネイバー(NAVER)です。その日本法人であるNHN JAPANは2000年に設立されました。しかしNHN JAPANはいま一つうまくいかず、打開策として行われたのが2010年のライブドア買収で、2011年に公開されたのがLINEアプリです。

LINEは2011年6月にサービスを開始以来急激にユーザー数を伸ばしており、2015年には3億人を突破しています。

2019年11月、LINEとヤフーの経営統合が正式に発表され、2021年3月Yahoo! Japanなどを傘下に抱えるZホールディングスはLINEとの経営統合を完了しメディアから注目されました。

また2020年12月ソフトバンクが連結子会社であるLINEモバイルについて、完全子会社化および吸収合併に向けて検討を進めることを決定し、発表しました。LINEモバイルの吸収合併は現在も協議が進められています。通信事業における新サービスの提供が期待されます。

⑭ライブドアのM&A戦略

ライブドアは、かつてインターネット、メディア、金融に関する事業を行っていた堀江貴文氏を代表としていた会社です。ライブドアは多方面の事業に進出しており、1999年から2006年までに約60回ものM&Aを実施しています。

金融や広告、携帯販売店や人材派遣など幅広い業界とのM&Aを積極的に行っていたライブドアは、証券取引法違反で上場廃止になりましたが日本に大きな影響をもたらした企業といえるでしょう。

ライブドアグループは分散されましたがさまざまな形で今も残っています。セシールはディノスセシールに、弥生はオリックスの子会社に、ライブドアのWEB事業はLINEに売却され当時の役員がLINEの役員になるなど影響を残しています。

⑮ライザップのM&A戦略

ライザップとは、「結果にコミットする」というキャッチフレーズでおなじみのトレーニングジムを経営している会社です。ライザップは、2016年ごろから積極的なM&A戦略を取ったため、急速に事業が拡大しました。売上高は2015年度の539億円から2年後には1,362億円と約2.5倍増加しています

この間にライザップの子会社になった企業数は約50社にのぼります。経営状態があまりよくない企業も積極的に買収し、独自のメソッドで黒字に回復させるという戦略を取っていました。しかし、2018年度はこのM&A戦略が裏目に出る結果となりました。

2018年度上期の売り上げは1,091億円と前年比74%増だったのですが、経常損益が88億円の赤字に転落する結果になりました。一番の原因は、買収後1年以内の子会社の経営不振です。つまり、M&Aで事業拡大を急ぐあまり、買収した会社すべてが経営状態を回復できていなかったため、グループ全体の経営利益が赤字になりました。

M&Aによる事業拡大戦略を一時中断して、既存子会社の経営回復を優先的に行う方針を定めた結果、2021年3月期決算最終利益が15億5,600万円と3年ぶりに黒字になりました。2019年から子会社や不採算部門を売却する構造改革を実施、2021年は人員配置や店舗の統廃合・本社オフィスの縮小などコスト削減に取り組んでいます。

⑯塩野義製薬のM&A戦略

塩野義製薬は2019年12月、UNMファーマ(秋田市)をTOB(株式公開買い付け)で子会社化しています。それ以前1990年代から海外の同業者や関連企業の買収も進めていました。

UNMファーマを子会社化したことでワクチン開発を本格化しました。新型コロナウイルスのパンデミックにより国内でのワクチン開発が期待され、ワクチンビジネスへの参入が加速化しています。

⑰KeyHolderのM&A戦略

KeyHolderグループは将来の収益体質の向上を見据えて、事業部門の拡大・子会社の統廃合・組織再編などを積極的に行ってきました。その結果総合エンターテインメント事業のほか、バラエティー番組・テレビドラマ・映像制作事業から広告代理店事業など幅広く展開しています。

ところがコロナ渦でイベント開催が困難になり、KeyHolderは2020年12月、同じくコロナ渦で打撃をうけたカラオケ業界最大手の第一興商との接点が生まれ資本業務提携を発表しました。新たな事業展開が期待されます。

⑱大王製紙のM&A戦略

もともと大王製紙はM&Aとは無縁の会社で、多くの従業員の支援によって成り立っている会社でした。そのような大王製紙は2017年2月に日清紡ホールディングスの家庭紙事業を買収して以来、5件のM&Aを成立させました。

家庭紙事業では後発組であった大王製紙ですが、「エリエール」などの大ヒットにより家庭紙で国内最大手の地位を獲得しています。

日清紡ホールディングスを買収したことで家庭紙でのシェア固めをし、低価格競争が激化する中で利益率を向上させているのです。川下にある三浦印刷を子会社化し、紙需要の拡大や印刷事業の強化を図っています

⑲ニトリのM&A戦略

2020年12月ニトリがTOB(株式公開買い付け)で島忠を子会社化しました。複数企業での争奪戦にニトリが勝った形での子会社化です。ニトリのキャッチフレーズである「お値段以上」が株価にも反映されたようでした。

ニトリは両社のゴールが一致しているので、それぞれのブランドに磨きをかけ、ともに歩みたいと話し、島忠をニトリ方式に変えることで生まれ変われると再生計画を立てています。

⑳大和ハウスのM&A戦略

米国東部や中部で戸建て販売をしている大和ハウスが、2021年10月米国で住宅事業を展開しているキャッスルロックの買収を発表しました。

大和ハウスはM&Aで米国での事業拡大を図っていますが、今回の買収は海外M&Aでは同社で最大のものです。米国は住宅需要が旺盛なためM&Aで販売地域を拡大し、海外売上高を伸ばしています

8. 戦略的M&Aの流れ

ここからは、戦略的M&Aの流れを紹介します。基本的には通常のM&Aの流れとほぼ同じです。

  1. M&A戦略の策定
  2. M&A先企業の選定
  3. 取締役員会などでの検討
  4. M&A基本合意書締結
  5. 買い手側によるデューデリジェンス
  6. M&A買収契約書締結
  7. クロージングにてM&A成立

一番重要なのは、M&A戦略の策定部分になります。しっかりと確認し、戦略的M&Aを成功させましょう

①M&A戦略の策定

まず最初にM&A戦略を策定します。ここで自社分析、市場調査を行い、M&Aの目的を決めたうえで、M&A戦略を決めます。

M&A戦略が定まらないままでM&Aを行うと失敗する可能性が非常に高くなるでしょう。M&Aアドバイザーに相談し、意見を聞いて、具体性があって、実効性のあるM&A戦略を策定します。

この時点でM&A戦略を策定しておくと、M&Aの条件交渉でも軸がぶれずに目的を達成できます。また、社員に説明する際も、はっきりとした言葉でM&Aの理由や目的を伝えることが可能です。

しっかりと時間をかけてM&A戦略を策定しましょう。

②M&A先企業の選定

次にM&A先の企業選定を行います。M&A先の探索は、時間がかかるため普通はM&Aアドバイザーに依頼して、M&A先企業の候補を挙げてもらいます

M&Aアドバイザーですが、M&A取引額の大きさによって、得意とするM&Aは変わるでしょう。中小企業のM&Aなど取引額の小さいM&Aは、M&A仲介会社が得意としています。M&A総合研究所がM&A仲介会社に当たります。一方で比較的取引額の大きいM&Aは、ファイナンシャルアドバイザー(FA)に依頼しましょう。

M&Aアドバイザーから挙げてもらった候補から最終的にM&Aを行う企業を決めます。

経験豊富なM&Aアドバイザーをお探しの際には、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には経験豊富なアドバイザーが在籍していますので、M&Aをスピーディーにサポートいたします。

また、料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしてますのでお気軽にお問い合わせください。

③取締役会などでの検討

M&A先の企業が決まったら本格的にM&Aを行う準備を開始しましょう。まずは、取締役会でM&A内容を確認し、問題がなければ承認をします。

次に、株主総会でM&Aの提案を行い、特別決議で承認を得ます。株主総会の特別決議には、議決権の3分の2以上の賛成が必要です。ここまで賛成の数が必要な理由は、株主総会が会社の最高意思決定機関であり、かつM&Aは最も重要な議題であるからです。両社の株主総会で特別決議を得られると次のステップに進みます。

④M&A基本合意書締結

M&A交渉中の内容が外部に漏れないように秘密保持契約を締結します。そのあと、買収企業がM&Aスキームの提案書を作成し、その資料をもとにトップ面談を行いましょう。

トップ面談により、両社がM&Aの意向を示したら、基本合意書を締結し、両社にM&Aの意向があることや独占交渉権があることを確認します。

⑤買い手側によるジューデリジェンス

基本合意書に締結した後は、買収企業によるデューデリジェンス(企業監査)を実施します。デューデリジェンスには3種類あり、ビジネスデューデリジェンス・財務デューデリジェンス・法務デューデリジェンスです。

この3つの観点から買収する企業を分析し、M&Aを行っても問題がないか確認を行います。特に吸収合併など包括承継のM&Aを行う場合には、デューデリジェンスの徹底が必要です

⑥M&A買収契約書締結

デューデリジェンス実施後、この分析結果に基づいて、最終条件の交渉を行います。この交渉で話し合う内容が契約金や条件などについてです。

なお、デューデリジェンスの結果、その会社を買収すると今後経営できなくなる可能性があると判断した場合には、買収の話を白紙にできます。無事に交渉が終わり、両社がM&Aの意向を示したら、M&A買収契約書を締結します。

⑦クロージングにてM&A成立

最後はクロージング(M&Aの実行)にてM&Aが成立したことになります。しかし、クロージングでM&Aが終了するわけではありません。買収企業はクロージング後、統合作業を行う必要があるのです。

統合作業にはハード面とソフト面があり、ハード面は人事や総務などのシステムを統合する作業で、約3カ月程度かかります。ソフト面は、企業風土の統合や従業員の交流などであり、ソフト面が完了したと思うまでには1年以上かかることも珍しくありません。

このように統合作業がM&Aの中で一番時間がかかる作業であり、かつ一番困難な作業となります。そのため、M&Aのクロージングまでは無事に終了しても、統合作業に失敗して業績が悪化し、結果としてM&Aに失敗した例もあるのです。M&A戦略策定の段階で統合作業をどうするか考えておくといいでしょう。

9. M&A戦略のまとめ

M&A戦略とは、M&Aを実行する前にM&Aの目的を明確にし、目的を達成するための戦略のことです。M&A戦略を立てておくことで、目的を達成するための合理的なM&Aを成立できます。

M&Aを実施するのであれば、事前にしっかりとしたM&A戦略を策定する必要があります。以下の5つのステップでM&A戦略策定しましょう。

  1. 自社の分析を行う
  2. M&Aの目的を定める
  3. 市場調査を行う
  4. M&Aを行うための戦略オプション案をまとめる
  5. 財務や会計を踏まえて点検する

しかし、自社だけでM&A戦略の策定を行うことは難しいでしょう。なんどもM&Aの経験があり、M&A専門で動く部署があれば別ですが、そうでない場合はM&Aの専門家であるM&A仲介会社に相談することをおすすめします。

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