M&Aによる子会社化とは?買収やグループ企業との違いから注意点も解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、M&Aによる子会社化のメリット・デメリットやグループ企業との違いを解説します。M&Aによる子会社化は、相手企業の発行済株式の50%超を取得することで実現します。グループ全体の成長を促すことが可能です。M&Aを検討している方は必見です。

目次

  1. M&Aによる子会社化とは
  2. M&Aによる子会社化やグループ会社と買収の違い
  3. M&Aによる子会社化のメリットとデメリット
  4. M&Aによる子会社化を成功させる3つのコツ
  5. M&Aによる子会社化の相談先
  6. M&Aによる子会社化のまとめ
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1. M&Aによる子会社化とは

近年、企業の成長戦略として、M&Aが活用されるケースが増えています。日常生活でも、大手企業による子会社化などのニュースを耳にすることが増えており、M&Aが急速に普及していることがわかります。

M&Aによる子会社化とは、相手企業の議決権のある株式を買収して経営権を取得する手法のことです。

株式の取引価格は、相手企業の価値や交渉により決められます。買収費用は高額になることが多いでしょう。しかし、子会社化には費用に見合うだけのメリットがあると考えられています。

買い手と売り手のニーズの一致や価格交渉などが済むと株式の取引が成立し、買い手と売り手に親子関係が生まれて親会社と子会社が誕生します。

親会社とは

親会社とは、会社法第2条第4号で「株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」と定義されています。

上記の定義を要約すると、「株式会社を子会社とする会社」「子会社の財務及び事業の方針の決定を支配している法人」に該当する会社が親会社です。

基本的には子会社の議決権のある株式の過半数を所有している場合に限られますが、議決権40~50%の場合でも親会社の役員などが子会社の取締役会などの構成員の過半数を占めているときは親子関係となります。

子会社とは

子会社とは、会社法第2条第3号で「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」と定義されています。

上記の定義を要約すると、「親会社が総株主の議決権の過半数を有する株式会社」「親会社が財務及び事業の方針の決定を支配している法人」に該当する会社が子会社です。

子会社は「完全子会社」「非連結子会社」「非連結子会社」の3つがあり、親会社が有する議決権の割合などによりタイプ分けがされます。

完全子会社

完全子会社とは、親会社によって議決権のある株式の内100%を所有されている会社のことです。完全子会社にとっての親会社は1社に限られますが、親会社が傘下に加える完全子会社の数には制限は設けられていません。

子会社化の目的は経営権の完全掌握であることが多いので、全ての株式を取得して完全子会社化を目指すパターンが多いです。

主な取得方法には、TOB(株式公開買付)を用いて株式持分比率を2/3超にし、スクイーズアウト(少数株主排除)で残りを買い集めるなどがあります。

相手企業が中堅・中小の場合は経営者やその一族が100%の株式を保有していることが多いため、比較的簡単に完全子会社化を目指すことが可能です。

完全子会社化の主なメリットは意思決定が早くなることです。他の株主の意見を聞いたり取り入れたりする必要がないので、物事の判断やトラブルの対処なども迅速に行えます。

連結子会社

連結子会社とは、企業の連結財務諸表における対象の子会社のことです。親会社が子会社の議決権の過半数を有しており、実質的な支配下にある場合が該当します。

連結子会社の主なメリットは子会社の独立性を維持させやすいことです。親会社がすべての意思決定権を持つわけではないので、M&Aによる子会社化の摩擦を抑えやすい特徴があります。

特に異業種に参入するときは、親会社が十分な経験・知見を有していないことも多いです。連結子会社として独立性を維持しながら、協力関係の構築を目指す方法も見られます。

非連結子会社

非連結子会社とは、企業の連結財務諸表の対象外の子会社のことです。親会社の支配が一時的であったり、連結範囲に含めると利害関係者の判断を誤らせるおそれがあったりする会社が該当します。

非連結子会社の主なメリットは、事務手続きの簡便化です。子会社を連結範囲から除外することで、連結決算の事務作業量を減らせます。グループ全体の業績を良化できる場合もあります。赤字の子会社を除外すると連結決算の赤字分を減らすことが可能です。

TOBの手続きの流れについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】TOBの手続きの流れ!公開買付の実施方法や応募手順を解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

2. M&Aによる子会社化やグループ会社と買収の違い

M&Aによる子会社化には、買収や合併、グループ会社などの似た性質を持つものがあります。これらの手法や言葉にはどのような違いがあるのか解説します。

子会社化と買収の違い

M&Aによる子会社化と買収は、基本的に同じ意味を持つ言葉です。このうち買収は、ある企業が他企業の発行済株式を買い取り、他企業の経営権を得る行為をさすことが多いです。そして、子会社化とは、買収のうち、ある企業が他企業の発行済株式の過半数以上を買い取る行為を意味します。

子会社化と買収のどちらも株式譲渡やTOBなどのM&A手法を用いて、相手企業の株式と経営権を取得することを目的とする行為です。

社内の事業や部署を切り離して法人として独立させることを、子会社化と呼ぶこともあります。主な目的はグループ再編で、会社分割と呼ばれるM&A手法が用いられるのが一般的です。

子会社化とグループ会社の違い

グループ会社とは、資本における親子関係を持つ会社群のことです。親会社は子会社を複数持てるので、グループ内に直接親子関係を持たない子会社や孫会社も生まれます。
 

親会社
子会社A 子会社B
孫会社C 孫会社D 孫会社E 孫会社F

上記の例では、子会社A・Bの親子関係や孫会社C〜Fの親子関係もありませんが、すべての子会社と孫会社の決定権を有する親会社がトップにいるためグループ会社として扱われます。

グループ会社の関係性は、仕事の相互受注やブランド使用などのグループ内連携に活用できます。他グループに属する会社よりも深く関わっているため密な連携を取りやすいです。

なお、会社法では、グループ会社の明確な定義は設けられていません。呼称も一定したものが存在しておらず、関係会社と呼ばれることもあります。

子会社化と合併との違い

合併とは、2つ以上の法人格を1つに統合するM&A手法です。「吸収合併」と「新設合併」があり、ほとんどの場面で吸収合併が使われます。

吸収合併は、被合併会社は資産・負債や権利義務の全部を既存会社に承継したうえで消滅する決まりです。吸収側の被合併会社は2社以上になることもあります。

新設合併は、すべての当事会社は資産・負債・権利義務の全部を新設会社に承継したうえで消滅します。対等な立場の合併であることを強調したいときに利用されることが多いでしょう。

M&A手法としての合併のメリットは、強いシナジー効果が期待できることです。合併会社と被合併会社が完全に一体化するので、単独で運営するよりも高い効果を期待できます。

一方、M&Aによる子会社化の場合、被買収会社が消滅することはありません。被買収会社は一定の独立性が維持されますが、基本的に親会社の意思決定に従いながら事業を行います。

吸収合併については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】吸収合併とは?新設合併との違いや事例、メリット・デメリット、手続き、登記を解説【保存版】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

3. M&Aによる子会社化のメリットとデメリット

この章では、M&Aによる子会社化を行うメリット・デメリットを解説します。

売り手のメリット

まずは子会社化の売り手側のメリットから紹介します。特に高い効果が期待できるメリットは下記の2点です。

  • 親会社に守ってもらえる
  • 親会社の資金力・ブランド力を活用できる

親会社に守ってもらえる

子会社化を行う会社は、強固な経営基盤を有していることほとんどです。人材基盤や管理基盤など、会社が継続して栄えるために必要不可欠なものがそろっています。

安定した経営基盤の親会社の傘下に加わることで、子会社側が多少の損失を出しても親会社の支援を受けられるので、立て直しを図りやすくなります。新規事業の着手などリスクの伴う意思決定に迷ったときも、親会社の存在のおかげで踏み切ることも可能です。

親会社の資金力・ブランド力を活用できる

親会社はグループ全体の経営資源を有効活用して、業績を向上させることを考えています。親会社の方針次第ではヒト・モノ・カネなどの経営資源を共有できるので、資金を活用して事業規模を拡大させることが可能です。

親会社のブランドを活用すると、消費者に共通のイメージを持ってもらいやすくなります。確かな技術力や商品はあるもののブランド力が足りなくて効果的に売り出せない場合でも、グループ全体の業績向上に貢献しやすくなります。

売り手のデメリット

売り手が得られる利点は大きいものでしたが、いくつかの欠点もあります。売り手側が注意しておきたいポイントは、下記の2点です。

  • 親会社に不祥事があった場合は、影響を受けることがある
  • 自社が築いたブランドを使えなくなる場合もある

親会社に不祥事があった場合は影響を受けることがある

親会社と子会社は、グループ会社として一体的に扱われることが多いです。親会社は子会社の意思決定権を有しており、親会社の不祥事は子会社にも通ずるものがあると捉えられるためです。

万が一、親会社が不祥事を起こした場合は、子会社側も悪影響を受けるおそれがあります。子会社側から親会社の監視・管理はできないので、対策が難しい問題の1つです。

自社が築いたブランドを使えなくなる場合もある

親会社の判断次第では、ブランドの統一が図られることがあります。これは、親会社が積み上げてきたブランドを子会社の社名や商品名に反映することで、親会社のブランドの認知度をさらに向上させられるためです。

子会社側としては親会社のブランドを利用できる反面、自らが積み重ねてきたブランドを利用できなくなる欠点があります。一族の名前が刻まれた社名や開発に思い入れのある商品なども、まとめて名称を変更されるおそれがあります。

買い手のメリット

続いて、買い手のメリットを紹介します。グループの母体が大きくなることで得られるメリットは主に下記の3点です。

  • 利益責任の所在をはっきりできる
  • 会社間での利益移動が可能
  • 節税対策になる

利益責任の所在をはっきりできる

複数の事業や部門を1社に集中していると、トラブルが発生した際に利益責任の所在がわかりにくい問題があります。その点、事業や部門を法人単位で区切っておけば、トラブルの責任の所在を明確にしやすくなり対処も迅速に行いやすくなります。

会社間での利益移動が可能

グループ会社では、互いに仕事を発注することで利益移動させて利益・損失をコントロールできます。

これは、主に節税対策の一環として行われており、利益率の高い仕事・業務は損失が出てくる会社に担当させるなどして利益を抑えようとする取り組みです。すべての会社で利益が出ている場合は決算日をずらしておくことで、利益のキャッチボールができます。

節税対策になる

小規模の会社は税制上の優遇措置が取られており、税金負担が軽くなる傾向にあります。特に軽減税率は、節税対策として有効活用することが可能です。

軽減税率は、資本金1億円以下の所得800万円以下の部分に適用される措置です。対象の子会社の年間所得が800万円を下回ることが見込まれる場合、グループ内の利益を移動させることで優遇措置を無駄なく活用できます。

買い手のデメリット

続いて、買い手のデメリットを解説します。子会社を傘下に加えることで想定される問題は、主に下記の3点です。

  • 子会社に不祥事があった場合、連帯責任を問われる
  • 事務作業の負担が増す
  • 子会社の赤字を補填しなければならない場合がある

子会社に不祥事があった場合、連帯責任を問われる

子会社が不祥事を起こした場合、親会社も連帯責任を問われます。深刻な不祥事になると、親会社の経営陣の辞職を迫られる可能性もゼロではありません。

子会社を持つような規模が大きい会社は、内部統制による管理を徹底しています。しかし、子会社まで管理が行き届いていないことも多く、不祥事が起きてしまうことがあります。

無用なトラブルを避けるためにも、普段より親会社から監査役を派遣するなどして、徹底管理に努めましょう。

事務作業の負担が増す

グループ全体の規模が大きくなると、親会社はグループ全体の連結納税処理で事務作業量が増えます。

連結納税制度は、グループ全体を1つの納税単位として課税する制度です。納税義務者は親会社であり、法人税の納付や税務申告も親会社が行います。

グループ会社の所得を通算でき、個別に申告・納付するよりも税負担が軽くなるため、積極的に利用したい制度の1つです。

子会社の赤字を補填しなければならない場合がある

資本が少ない子会社では、赤字経営になることがあります。再建を図るために、資金の貸付や債務の肩代わりなどの必要性が生じることもあります。

4. M&Aによる子会社化を成功させる3つのコツ

M&Aによる子会社化を成功させるためには、さまざまなコツを押さえておくことがポイントになります。特に押さえておきたいコツは以下の3つです。

  • 売り手・買い手間で信頼関係を築く
  • 買い手はデューデリジェンスをしっかり行う
  • M&Aの専門家に相談する

売り手・買い手間で信頼関係を築く

M&Aによる子会社化では、売り手・買い手の協力体制が必要不可欠です。険悪な関係だと交渉がまとまりづらくなり、従業員の引き継ぎなどもうまくいかなくなる可能性が高まります。

信頼関係の構築では、子会社化に向けて実施するトップ面談が重要なポイントです。トップ面談を実施する目的は、交渉ではなく顔合わせをすることです。

互いに悪い印象を与えないように努め、子会社化に求めている条件などを聞き出せれば、M&Aによる子会社化の案件を大きく進展させられます。

買い手はデューデリジェンスをしっかり行う

M&Aによる子会社化では、相手企業が抱える潜在的リスクに注意が必要です。特に簿外債務は見落としやすいうえに、親会社に与える損失が大きくなりやすい傾向にあります。

潜在的リスクへの効果的な対策方法は、デューデリジェンスの徹底です。財務・税務・法務などさまざまな観点から専門家による調査を行います。

専門性の高い人材を稼働させるため人件費は高くなりますが、子会社化のリスクを抑えるためにも重要な工程です。

M&Aの専門家に相談する

M&Aによる子会社化は、成約までに必要な工程が多岐にわたります。幅広い分野の専門的な知識が求められるため、M&Aの専門家からサポートを受けることをおすすめします。

子会社化に関するおすすめの相談先はM&A仲介会社です。自社の規模や業種を得意とする仲介会社を見つけられれば、精度の高いサポートにより成功率を高められます。

5. M&Aによる子会社化の相談先

M&A総合研究所は、中堅・中小規模のM&A仲介サポートを得意とするM&A仲介会社です。幅広い業種における豊富な実績を有しており、サポートを担当するアドバイザーは豊富なM&A経験・ノウハウを培っています。会社の状況やM&Aの目的を伺ったうえで、買収による子会社化や吸収合併などの手法も検討して最善策を模索します。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。M&Aによる子会社化に関して無料相談を受け付けていますので、どうぞお気軽に問い合わせください。

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6. M&Aによる子会社化のまとめ

M&Aによる子会社化には、売り手・買い手の双方にさまざまなメリット・デメリットがあります。デメリットへの対策を講じながら実施することで、メリットを最大限に活用できます。

案件を計画的に進めるためには、専門家のサポートが必要不可欠です。当事会社の仲介役を担える専門家であれば、友好的なM&Aを実現させやすくなります。

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