SES会社は事業承継しよう!成長の可能性を残して承継するには

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

IT人材が不足する中、SES会社の需要は高まっています。しかし人材不足、価格競争の激化などで経営に苦しさを感じるSES会社は少なくありません。この記事では、事業承継によるSES会社の引き継ぎ方について解説します。自社に合う事業承継方法で悩みを解決しましょう。

目次

  1. SES会社が事業承継を考えるタイミング
  2. SES会社の経営は続けた方が良い?
  3. SES会社は事業承継できるのか
  4. SES会社の事業承継では後継者を見つけるべき?M&Aをすべき?
  5. SES会社がM&Aで事業承継を行うメリット
  6. SES会社がM&Aで事業承継した3つの事例
  7. SES会社をM&Aで高く売却する方法
  8. まとめ
  9. SES業界の成約事例一覧
  10. SES業界のM&A案件一覧
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1. SES会社が事業承継を考えるタイミング

SES会社が事業承継を考えると良いのは、以下のようなタイミングです。
 

  1. 経営に不安を感じているとき
  2. 収益改善が望めないとき
  3. 従業員の意欲が下がっているとき
  4. エンジニア不足が解消できないとき
  5. 持病など健康問題を抱えているとき
  6. 後継者としてふさわしい人物がいるとき

事業承継すべきタイミングは、自分の会社の周りを取り巻く環境によっても異なります。

周辺にライバルとなるSES会社ができた場合やエリア内でのエンジニア確保が難しくなっている場合などは、今後経営が難しくなる可能性が高くなるので事業承継という選択肢について早めに考えておくのも効果的です。

自分の力だけではSES業界の今後の動向を含めた判断が難しいという場合には、SES業界に詳しい専門家に相談するのが良いでしょう。

もし専門家をお探しの場合は、M&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では、M&Aを含めた会社の事業承継について幅広いサポートを行っております

SES会社の事業承継についてご検討の場合は、まずはM&A総合研究所の無料相談からご利用ください。

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2. SES会社の経営は続けた方が良い?

SES会社は好調ですが、モチベーションが下がる前に事業承継を検討した方が良いでしょう。事業承継を考えるにあたって、好調なSES会社の経営を辞めるべきか迷っている方は多いはずです。

ここからは事業承継について考えるにあたって知っておきたいSES業界の今後や、経営を続けるべきかどうかの判断基準について解説していきます。

今後の経営に向け、事業承継を含め前向きな方法を検討していきましょう。

SES業界の現在と今後

SES業界の需要は現在非常に高く、今後も需要はさらに高まるといわれています。

ITに詳しい人材、特にSEはどの業界でも不足している状態です。そのため技術を持つエンジニアを派遣できるSES会社に大きな価値を見いだす会社は、業界を問わず多くあります。

またスマートフォンの普及、IoT技術の拡大などにより、IT業界全体は今後さらなる拡大を続けるでしょう。

IDC Japanの情報によると、2019年度のIT業界の市場規模は前年比3.4%のプラス、さらに2018年から2023年までの年間平均成長率は、2.4%と予想されておりオリンピック後も需要が伸びるとのことです。

好調なIT業界の中で、ニーズの高い人材を派遣するSES業界の需要は、これからもさらに伸びていくでしょう。

しかし知名度が高くない中小のSES会社の場合、会社の運営に必要なエンジニアを集められないケースも少なくありません。さらに都心ではSES会社同士の競争が激しくなっているため、価格競争で大手SES会社に負けてしまうこともあります。

需要の伸びだけを考えればSES会社の経営には大きなチャンスがありますが、全ての会社が今後も生き残れるとは限りません。経営の難しさを解消するため、社内外にどのような課題があるか把握し、経営努力で解決できるものかどうか判断するところから始めましょう。

経営が苦しいならSES事業の売却を考えよう

SES業界は全体で見ると非常に好調ですが、会社経営に苦しさを感じている場合、事業承継で経営を別の人に任せるのも良いでしょう。

SES会社の業績が好調なとき、本当に事業承継を行うべきか迷ってしまう方は多いです。しかし経営者自身がSES会社の経営に苦しんでいる場合、経営へのモチベーションが下がり、いずれは業績にも悪影響が出てしまいかねません

業績にかかわらず、経営に対する不安が高まっているときは事業承継を検討した方が良いでしょう。

また今後の経営が難しい場合、廃業という選択肢を考える方もいます。しかし廃業すればエンジニアの雇用や、取引先との関係、今後のビジネスにも悪影響が出てしまいます。

経営を退きたいと感じているなら、廃業ではなく事業承継を選びましょう。

3. SES会社は事業承継できるのか

SES会社の需要は非常に高いため、後継者を探して事業を継いでもらうことも、M&Aで会社を売却することも十分可能です。

IT業界、人材派遣業界では起業を目指す人も多いため、後継者を見つけやすい状況だといえます。さらにM&Aが活発なIT業界なら、すぐに買い手を探し会社売却を行うこともできるでしょう。

ただし、SES会社の労働環境が問題になることも多く、今後SE派遣に関して何らかの法的規制が行われる可能性もあります。業界を取り巻く環境が変われば、SES会社の需要にも変化が出るので需要の高い今、事業承継を行うのがおすすめです。

また実際に自分の会社に後継者または買い手が見つかるのか、不安に感じる方は少なくありません。特に業績に不安を抱えるSES会社であればなおさらです。

SES業界における事業承継の動向や、自分の会社の価値について知りたい方は、M&A仲介会社に相談しましょう。

仲介会社の中には、起業を目指す後継者とのマッチングサービスを行っているところもあるので、事業承継の方法についてまだ悩んでいるという方は、M&Aにも後継者探しにも対応できる会社に相談するのがベストです。

  • SES会社のM&A・事業承継

4. SES会社の事業承継では後継者を見つけるべき?M&Aをすべき?

SES会社の場合M&Aで高額売却を狙えるため、「どうしても後継者に継いでほしい」というこだわりがないならM&Aを検討した方が良いといえます。

事業承継には大きく分けて、後継者に継いでもらうパターンとM&Aで行うパターンがあります。ここからはそれぞれのケースごとの特徴を解説していくので、ぜひ参考にしてください。

後継者に継いでもらうケース

後継者に継いでもらいたい場合、親族や従業員、社外から経営者としてふさわしい人物に会社を任せることになります。後継者に事業承継してもらう場合、経営者が交代するだけですからM&Aに比べSEや従業員への影響は少ないと考えられます。

社内の体制をなるべく変えたくない場合は、従業員の中に良い後継者がいれば、その人に経営させるのも良いでしょう。

また、「IT業界での起業を目指す若手にチャンスをあげたい」「将来有望な人物に会社を継いでほしい」などの思いがあれば外部から後継者を呼ぶのも効果的です。

しかし後継者の育成には、少なくとも5年ほどの時間が必要です。特に外部から後継者を呼ぶとなれば会社の説明から行う必要があるので、教育には長い時間がかかってしまいます。

後継者探しのポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。会社外で後継者を探す方法についても紹介しているので、「やはり自分の理念や思いを、信頼できる後継者に託したい」という気持ちを持っている方はぜひチェックしてください。

【関連】後継者探しの方法や成功ポイントを解説!後継者不足のオススメ相談先は?

M&Aで事業承継するケース

納得できる後継者が見つからないSES会社は、M&Aによる事業承継がおすすめです。

少子化が進む現在、好調なSES会社であっても後継者が必ず見つかるとは限りません。後継者候補が複数いても、会社を任せるにふさわしい人物がいないというケースもあるはずです。

後継者が見つからない場合、M&Aによる事業承継を検討してみましょう。SES会社はM&A市場における需要が非常に高いので、短期間で買い手を見つけられることが多いといえます。

M&Aの場合、後継者による引き継ぎより会社の体制変化が大きくなることも少なくありません。しかしIT事業の場合、M&Aによる会社や事業の売却が他の業界と比べ一般的になっているといえます。したがってM&Aで会社を残す場合でも、従業員の不満や混乱は少ないでしょう。

また後継者に事業承継をする場合でも、M&Aを行う場合でも、経営者が希望すれば別の役職で会社に残ることもできます。M&Aの場合ほとんどの経営者が引き継ぎのため数年は会社に残るので、今後の経営について意見をすることも可能です。

SES会社の場合、後継者による事業承継にこだわりがなければ、M&Aで会社を売却するのも有効です。会社をこのまま廃業するより、M&Aで大切な会社を守りましょう。

ここからは、SES会社がM&Aで事業承継を行うメリットについて、さらに詳しく解説していきます。後継者に継いでもらうべきか、M&Aをすべきか迷っている方はぜひ参考にしてください。

5. SES会社がM&Aで事業承継を行うメリット

後継者候補がいない、後継者探しに不安があるSES会社は、M&Aによる事業承継を検討しましょう。

SES会社がM&Aを行うメリットは、以下のとおりです。

  1. 負債を解消し新しいビジネスを始められる
  2. 買い手企業のエンジニアを活用できる
  3. SES事業の価値が下がる前に売却できる
  4. SES事業のみを売却し経営を続けられる
  5. 場合によっては後継者探しより負担が少ない

ここからはそれぞれのメリットを解説していきます。会社の価値を高め、経営者として納得できる道へ進むため、M&Aによる事業承継について考えてみましょう。

①負債を解消し新しいビジネスを始められる

株式譲渡などでM&Aを行えば、負債を含む会社の全てを買い手に渡すことができるため退職後の不安が減ります。

会社設立や、投資を行うにあたって負債を負っている会社は少なくありません。SES会社の場合、設備への投資は少なく済みますが人材の確保にかなりの費用を使った方もいるでしょう。

しかしM&Aを行えば、業種を問わず売り手側の負債を含め会社の全てを買い手に渡せるので、負債を解消し安心して自分のしたいことにチャレンジできます

意欲的なSES会社の経営者であれば、すでに次のビジネスについて考えている方も多いはずです。M&Aなら負債を解消できるうえ、会社の売却である程度は利益を得られるので新しいビジネスへの投資資金として使えます。

ただし多額の負債を抱えている場合、M&Aにおける売却金額が相場より低くなってしまうケースがほとんどです。負債を解消したいならM&Aのみに頼るのではなく、自力での負債解消の努力を続けましょう。

②買い手企業のエンジニアを活用できる

エンジニアが増えれば、今の従業員、SEの負担を減らすことができます。

事業承継後、会社に一定期間残り引き継ぎや業務のサポートをしたいと考える経営者は少なくありません。

しかし後継者に会社を引き継いでもらうだけでは、SES会社の慢性的な人手不足は解消しないのです。優秀なSEを集められなければ、後継者に事業承継したもののそのまま廃業というケースもあるでしょう。

しかし、M&Aで同じIT業界の会社を買い手にすれば、買い手企業に所属するエンジニアを相互に活用できます

また、大手傘下に入ることで知名度が上がれば、人材を集めやすくなるでしょう。自分が経営を退いた後もSES会社を長く残していきたいと考えるなら、この点もメリットです。

③SES事業の価値が下がる前に売却できる

M&Aは後継者育成と比べ短期間で事業承継を行えるため、事業の価値が高い状態で売却できます。

人材不足などで経営が苦しくなり、事業継続へのモチベーションが下がっている状態ではなかなか前向きな戦略も取れません。また経営者のモチベーションが低いと、社員にまで悪影響が出てしまい業績が落ちてしまうこともあります。

5年後、SES事業を続けるのが難しいと感じるのであれば、M&Aで早めに譲渡を済ませるのがおすすめです。

またIT業界においては、会社が今後好調な業績を保っていけるかはわかりません。変化の激しい業界ですから、業界全体の勢力図が数年で大きく変わっている可能性もあります。

需要の高い今のうちにM&Aを行えば、好条件で事業承継を行うことができるのです。

④SES事業のみを売却し経営を続けられる

M&Aの手法によっては、SES事業のみを売却し会社の体制を残せるので、今の会社の社長として経営を続けることもできます。

M&Aを検討している現経営者の中には、「まだ会社の経営を続けたい」「特定の事業だけ引き継いでもらって経営状態を良くしたい」と考えている方もいるでしょう。

事業譲渡、事業売却というM&A手法なら現経営者が会社経営を続けながら特定の事業のみを売却し、会社の体制を改善することも可能です。

これからも会社に残って経営を続けたい、自分の力で会社の経営状態を良くしたいという方は、事業売却を検討しましょう。

⑤場合によっては後継者探しより負担が少ない

M&Aによる承継には面倒なイメージがあるかもしれませが、後継者を探すより負担が少ないこともあります。

後継者による承継の場合、後継者さえ決まっていれば経営者を交代させるだけですから手続きも簡単で、業務に影響も出にくいでしょう。

しかし後継者を新たに見つけるとなると、後継者探し、育成に5~10年もの多大な時間がかかることもあるため一概に簡単だとはいえません。

一方M&A市場が活発なSES業界であれば、M&Aで買い手が見つかるまで早くて3カ月ほどです。また後継者育成の手間もかからないので、従業員の業務負担を増やす必要もありません。

SES会社にとって、M&Aによる事業承継には数多くのメリットがあります。「負債を解消したい」「新しいビジネスにチャレンジしたい」「あと少しだけ経営者として会社に残りたい」など経営者のさまざまな思いに応えられるのが、M&Aによる承継です。

事業承継でお悩みのSES会社の経営者は、一度社内で話し合い、後継者を探すべきか、M&Aを行うべきか意見を聞いてみましょう

ここからはSES会社がM&Aに成功した事例を解説していくので、ぜひ自分の会社の現状と照らし合わせてみてください。

6. SES会社がM&Aで事業承継した3つの事例

SES会社を含むIT業界ではM&Aが盛んに行われており、数多くの成功事例があります。ここから紹介するSES業界のM&A事業承継事例は、以下のとおりです。

  1. アローインフォメーションによる夢真ホールディングスへの事業承継
  2. ビクタスによるナレッジスイートへの事業承継
  3. RINETによるITbookへの事業承継

M&A事例の目的や成功のポイントをチェックし、自社の事業承継方法について考えてみましょう。

①アローインフォメーションによる夢真ホールディングスへの事業承継

夢真ホールディングス

夢真ホールディングス

出典:https://www.yumeshin-hd.co.jp/

最初に紹介するのは、アローインフォメーションによる夢真ホールディングスへの事業承継事例です。

2020年6月、SES事業を行っているアローインフォメーションは、夢真ホールディングスに自社を売却して事業承継しています。

この事業承継で、両社は顧客基盤を共有し活用できるので、営業販路開拓が進むと見込んでいます。

また、夢真ホールディングスグループにとってはIT業界の上流工程に入る機会となり、育成力をさらに強化することを図っています。

②ビクタスによるナレッジスイートへの事業承継

ナレッジスイート

ナレッジスイート

出典:https://ksj.co.jp/

次に紹介するのは、ビクタス(現:アーキテクトコア)によるナレッジスイートへの事業承継事例です。

2018年10月、SES事業を行うビクタスはSES事業、クラウドソリューション事業を展開するナレッジスイートに自社を売却し、事業承継を行いました。

ビクタスは今回のM&Aで、ナレッジスイートの持つ基盤を生かし事業の拡大と継続に成功しました。

またナレッジスイートはIT人材の確保を目的に、ビクタスの買収を行っています。この事業承継により、ナレッジスイートの技術者数は100名を超えさらなる技術力アップのチャンスも得ました

事業のさらなる拡大と継続をしたいビクタスと、ナレッジスイート両社の目的が一致したことで事業承継が実現したといえるでしょう。

この事例のように、人材を求めSES事業会社の買収を積極的に行う企業は少なくありません。社内にIT人材が多数いれば会社の価値はアップしますので、廃業するよりM&Aを検討しましょう。

③RINETによるITbookへの事業承継

ITbook

ITbook

出典:https://www.itbook.co.jp/

次に紹介するのは、RINETによるITbookへの事業承継事例です。

2018年9月、SES事業、ソフトウェア受託開発事業などを行うRINETはITコンサル業を展開するITbookへ事業承継を行いました。譲渡価格は、約1億円と発表されています。

RINETはこのM&Aにより、買い手の持つネットワークや技術を得てSES事業をさらに強化することに成功しています。

またITbookはRINRTに所属する技術者を得たほか、ノウハウを得てSES、ソフトウェア開発など新たな事業へ進出するチャンスを得ました。

この事例のように、買い手の持つ資源を活用することで自社の事業規模をさらに拡大する機会を得られます。事業承継後も会社に残りたいという方は、M&Aを行い買い手とともに会社の発展に向け尽力しましょう。

これからも大切な自分のSES会社を発展させたいなら、すでに多くの資源や人材を持つ別企業との協力が不可欠です。M&Aを行えば、買い手企業との結びつきが強まり事業のさらなる拡大が望めます。

会社に大きなチャンスを残せるM&Aで、前向きな事業承継を行いましょう。

次は、SES会社をM&Aによる事業承継で少しでも高く売却する方法を解説します。良い買い手と出会うため、ぜひ参考にしてください。

7. SES会社をM&Aで高く売却する方法

SES会社をM&Aによる事業承継で高く売却する方法は、以下のとおりです。

  1. 所属SEの離職率を下げる
  2. 業務の引き継ぎが容易な環境を作る
  3. 在籍SEのスキルを上げる
  4. 有益なシステムで特許や著作権を取る
  5. IT・SES業界でのM&A実績を持つ専門家に聞く

M&A市場におけるSES会社の需要は高い状況ですから、多くの企業が短期間で買い手を見つけられるはずです。

しかし買い手によって提示してくる希望価格はさまざまでしょうから、会社の価値を上げ少しでも高い金額を提示してくれる買い手に出会うことが大切です。

今後会社に残る場合でも、新しいビジネスを始める場合でもまとまった資金は必要ですから、高額売却を実現できるよう早めに準備を始めましょう。

①所属SEの離職率を下げる

所属SEの離職率を下げることで、働く環境の良い職場だとアピールできるので買い手から高く評価されます。

SES会社は労働環境が悪いというイメージがあり、短期離職による人手不足が深刻化しているケースは少なくありません。しかし買い手は一人でも多くのエンジニアを獲得したいので、離職率が高い会社を買収する可能性は低いといえるでしょう。

同エリアのSES事業会社と比べ離職率が高い場合は、エンジニアの労働環境を少しでも改善させて定着率を上げるべきです。長く働く従業員が増えた方が技術やノウハウの承継もしやすいので、まずはSEの労働環境を見直してみましょう。

②業務の引き継ぎが容易な環境を作る

小規模なSES会社の場合、経営者によるワンマン状態になっていることも少なくありません。しかしワンマン経営であると経営者が変わったときにうまく引き継ぎを行えず、実務を行うSEにトラブルが起きてしまう可能性があります。

経営者退任後の混乱を防ぐため、あらかじめ業務一連の流れ、方法などを第三者にもわかるよう明文化しておくのが良いです。

また、経営者の人柄にひかれて取引を続けてくれている取引先には、経営者が変わっても取引を続けてもらえるようサービスの質をさらに上げる必要があります。

経営者が突然いなくなったら仕事がどのようになるのか考え、経営陣全員で対策を話し合っておきましょう。

③在籍SEのスキルを上げる

スキルの高いSEが大勢いればレベルを問わずさまざまな仕事を請け負えるようになるため、買い手から高く評価されます。

既存の言語や技術に深く精通し、高度なエンジニアリングスキルを持つ人材はIT業界において非常に高い価値を持ちます。

システム開発などに使える新言語や、新技術は次々に登場していますが、習得の難しさや運営への不安から新言語を積極的に導入する企業は少ないです。そのため日本のIT業界では、既存の言語や技術を高いレベルで使いこなせる人材が求められます

既存言語に精通した優秀なSEが少ないという場合、勉強会などで在籍SEのスキルを上げれば、SES会社の価値は上がるはずです。また事業承継までに時間があれば、本格的な研修プログラムを組み所属SEのレベルを底上げするのが良いでしょう。

④有益なシステムで特許や著作権を取る

有益なシステムを開発した実績があり、特許などを持っていれば他企業より優位に立てるのでM&A市場での価値がアップします。

買い手はSES会社の持つ技術力を重視しています。レベルの高いシステムや、他社での開発が難しい高度なシステムを開発した実績があれば、注目されやすいといえるでしょう。

さらに開発したサービスやシステムについて特許や著作権があれば、他の企業が容易に介入できなくなるため価値はさらに上がります。

また特許申請などにかかるコストを削減できることもあって、有益なシステムで特許などを持つ会社の価値は高いでしょう。

独自のシステムやサービスを開発したにもかかわらず、普段の業務が忙しく特許申請などができていない会社は少なくありません。事業承継前に特許や著作権の状況をチェックし、必要であれば申請などを行いましょう。

⑤IT・SES業界でのM&A実績を持つ専門家に聞く

IT・SES業界に精通した専門家に相談することで、会社の価値をさらにアップさせる方法について詳しく聞くことができます。

業界に詳しい専門家なら買い手の考え方に沿ったアドバイスを行えますし、会社の課題を正確に分析してくれるので事業承継に向けた経営改善もスムーズです。

事業承継について相談できる人は会計士や税理士など多数いますが、M&Aを含めた事業承継方法を検討したい方はM&A仲介会社を選ぶと良いでしょう。

ここからは高額売却のチャンスをさらに高められるM&A仲介会社について解説していきます。SES業界に詳しい仲介会社を集めているので、事業承継でお悩みの方はぜひチェックしてください。

8. まとめ

今後も需要が拡大すると予想されるSES業界ですが、会社同士の競争が激しくSEが確保できない会社の今後は厳しくなっています。

これからの経営に不安を感じている方は、SES会社の価値が下がってしまう前に事業承継を検討するとよいでしょう。事業承継に向けて早めに動き出すことで、経営改善のチャンスは増えます。

9. SES業界の成約事例一覧

10. SES業界のM&A案件一覧

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