会社買収の価格・金額の算定方法や相場を解説【M&A事例15選】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

会社買収を行う際は、買収手続きだけでなく、買収対象となる会社の価格(金額)の算定方法・相場なども知っておく必要があります。本記事では、会社買収の価格(金額)の算定方法・相場をまとめました。そのほか、会社買収の事例も紹介します。

目次

  1. 企業買収の価格は企業価値評価がベースになる
  2. 企業価値評価の方法
  3. 会社買収の価格を決める流れ
  4. 会社買収の価格の交渉方法
  5. 会社買収の価格・金額の相場
  6. 相場よりも高い価格・金額で会社売却を行うポイント
  7. 買い手側が相場よりも好条件で買収を行うポイント
  8. 会社買収の価格・金額に影響を与える無形資産
  9. 会社買収の価格算定に役立つ事例3選
  10. 希望する価格・金額で会社買収を行うには
  11. 会社買収の手数料価格
  12. 会社買収の価格・金額に関する相談先
  13. 会社買収の価格・金額まとめ
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1. 企業買収の価格は企業価値評価がベースになる

M&Aにおける「企業価値評価」とは、その名の通り、企業全体の価値を評価することを意味します。これは、企業が持つ資産の価値だけでなく、将来的に生み出す収益力や無形資産も含めた価値を評価することです。

つまり、「企業価値」は、「事業価値」(企業の事業から生み出される経済的価値)に、事業に直接必要でない余剰資産などの非事業用資産を加えたものです。

このように算出された企業価値評価が、企業買収の際の価格の基準となります。

2. 企業価値評価の方法

ここでは、会社買収の価格(金額)の算定方法を紹介します。会社買収の価格(金額)の算定方法は、大きく分類すると以下の3つです。

  1. インカムアプローチ
  2. マーケットアプローチ
  3. コストアプローチ

それぞれの算定方法を詳しく解説します。

①インカムアプローチ

インカムアプローチは、買収対象の会社または事業から将来生み出されるフリーキャッシュフローの現在価値総額から、買収金額を算出する方法でさします。この算定方法のデメリットは、買い手と売り手が考える事業の将来性が異なる場合、会社買収の交渉が難航するおそれがある点です。

インカムアプローチは、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)と配当還元法の2つに細かく分けられます。特にDCF法は、その理論的背景から最も合理的な企業価値評価の方法とされており、M&A取引の説明責任が高い案件で用いられる方法です。

DCF法

DCF法は企業価値評価の手段として学術から実務まで広く用いられている方法であり、一般的に将来5年にわたるフリーキャッシュフローの予想をもとに算出されます

フリーキャッシュフローは、会社の利益から必要経費を差し引いた額であり、会社が経営のために自由に使用(株主へ分配)できる現金です。DCF法では、想定される将来5年間のフリーキャッシュフローを現在価値に割り引き合計し、企業価値を求めます。

具体例を用いた計算方法は、後ほど紹介します。

配当還元法

配当還元法とは、将来の配当金をもとに企業価値を算出する方法です。理論上、株式の配当金は会社が生むフリーキャッシュフローと連動するため、DCF法と同様に将来の事業性から企業価値を評価できます。

しかし、実質的に配当金額を経営者自身が決められる場合は、配当金額を高く見積もることで配当還元法の評価結果の釣り上げを図るおそれがあります。実務上、配当還元法により会社買収の価格(金額)を算出するケースはそれほど見られません。

②マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、市場(マーケット)によって成立する価格(金額)を基準にして企業価値を算出する方法です。つまり、マーケットアプローチでも、客観的な企業価値を算出できます。

ここからは、マーケットアプローチに分類される方法のうち、市場株価法・類似会社比準法を詳しくまとめました。

市場株価法

市場株価法では、上場会社のM&A取引に際して、市場株価を企業価値とみなす方法です。つまり、東京証券取引所などに上場している企業の企業価値を算出する場合以外では使用できません。

日次株価は変動が大きいため、市場株価法を用いる際は3カ月間の株価の平均値を用いることが多いです。

類似会社比準法

類似会社比準法とは、会社の規模が類似している上場企業の株価をもとに、企業価値や会社買収の価格(金額)を算出する方法です。主として、非上場企業がマーケットアプローチにより企業価値を算出したい場合などに用いられます。

類似会社比準法と性質が似ている算定方法である、類似取引比較法・類似業種比較法などを採用するケースも少なくありません。

類似取引法

類似取引法は、会社の規模が類似している企業のM&A取引における売買価格の平均を株式時価と考え、買収価格を算出する方法です。類似企業を参考にする点で類似会社比準法と似ていますが、上場会社の取引に限定しない点で異なります

ゴルフ場のM&A取引などで用いられる場合があります。しかし、基本的に非上場企業のM&Aの売買価格の情報は限定されているため、利用される場面は少ないです。

③コストアプローチ

コストアプローチとは、対象会社の現在における企業価値を算出して、会社買収の価格(金額)を求める方法です。主なメリットとしては、財務諸表をもとに算出できるため、客観的に会社買収の価格(金額)を求められる点が挙げられます。

その一方、主なデメリットとしては、将来予想される利益を加味しない点です。将来的に成長が期待できる業界に所属する企業などとM&Aを行う場合、コストアプローチはそれほど使用されません。

コストアプローチは、時価純資産法と簿価純資産法の2つに細かく分けられます。

時価純資産法

時価純資産法では、純資産の時価をもとに、会社買収の価格(金額)を求めます。具体的には、対象会社の総資産の時価から負債の時価を差し引き、得られた純資産額の時価を企業価値とする方法です。

簿価をそのまま使うのではなく、時価に置き換える点で簿価純資産法より手間がかかりやすいです。各資産や各負債の時価総額は、再調達原価法や正味売却価格を用いて求めます

ただし、すべての資産や負債の時価評価は困難です。金額が大きい一部の資産や負債のみを時価評価し、残りは簿価として計算する方法があり、この方法を修正時価純資産法と呼びます

時価純資産法に数年分の利益を加える方法

時価純資産法から派生した株式評価方法に、年倍法(または年買法)があります。時価純資産法により得られた企業価値総額に、直近年度の事業成績(営業利益やEBITDAなど)を数年分加算する方法です。

加算する事業成績の年数は、交渉によって決まることが多いです。一般的には3年から5年程度とすることが多く、買収対象会社の属性や状況次第で増減します。

DCF法と比較して理論的な背景がない方法のため、上場企業などの株主への説明責任が大きいM&A取引ではあまり用いられません

簿価純資産法

簿価純資産法は、貸借対照表上の純資産をもとに会社買収の価格(金額)を算出する方法で、具体的な計算方法は以下のとおりです。

  • 貸借対照表の総資産額 ー 貸借対照表の負債額

特に買収先が中小企業の場合には、帳簿を粉飾していたり、負債隠しをしていたりするケースが多いです。基本合意書締結後のデューデリジェンス(企業監査)を徹底的に行いながら、正確な簿価純資産法にもとづいた会社買収額を算出しましょう。

とはいえ、もともとの簿価が資産・負債の価値を正確に表している可能性が低いため、会社買収ではほとんど使用されていません。

【関連】M&Aの企業価値評価とは?算出方法を詳しく解説!

3. 会社買収の価格を決める流れ

M&A取引の交渉で最も繊細な場面は、買収価格の決定といわれています。その理由は、買い手企業は金額を低くしたいと考える一方で、売り手企業は金額を高くしたいと考えることが当然であることから利益相反の交渉となるためです。

通常、買収価格は基本合意書を結ぶ段階でおおむね合意され、その後のデューデリジェンスの結果にもとづいて修正されます。

企業価値評価を行う

買い手企業・売り手企業のいずれかが買収価格に納得せずに交渉が難航した場合、手助けとなるのが双方から独立した専門家による企業価値評価です。

買い手企業または売り手企業のいずれかから売り手企業の財務情報を専門家へ提出し、客観的な企業価値評価結果を算出してもらうことで、買収価格の交渉の材料として活用できます。

専門家には、会計士・税理士・フィナンシャル・アドバイザーなどの企業財務のプロや商工団体の支援機関などがいます。

専門家は、客観的な結果を出すためにシナジー効果を考慮しない算定結果を出すのが基本です。この客観的な算定結果に、買い手企業が自社で計算したシナジー効果を加算して、買収価格を決めることが多くみられます。

デューデリジェンス・交渉をもとに買収価格・金額を決める

最終的な買収価格は、デューデリジェンスにより判明した事実を織り込んで決定されます。専門家による算定を得る場合には、デューデリジェンスの結果を反映できるかどうか確認することをおすすめすします。

逆にデューデリジェンスの際は、どの項目が買収価格に影響するかを意識しながら行うことが重要です。

4. 会社買収の価格の交渉方法

ここでは、会社買収の価格(金額)の交渉方法をまとめました。会社買収の価格(金額)の交渉方法は、大きく分けて以下の2つです。

  • 個別交渉による方式
  • オークション(入札)による方式

それぞれの方法を順番に解説します。

個別交渉による方式

価格交渉の方法としては、個別交渉による方式が一般的です。これまでに紹介した会社買収の価格(金額)の算定結果は、基本合意書の締結前に提示され、M&Aにおける取引価格のベースとなります。

基本合意書の締結後はデューデリジェンスが実施されますが、ここではマイナスに評価されれば金額が減少し、プラスに評価されれば金額が上昇します。そして、最終契約書の締結前に、デューデリジェンス結果をもとに価格交渉が行われる仕組みです。

以上が、個別交渉による方式の一般的な流れです。M&A仲介会社を通して会社買収を行う際は、基本的に個別交渉により会社買収の価格が決定されます。

オークション(入札)による方式

オークション(入札)による方式は、1つの売却対象に買収を希望する会社が複数存在する場合などに用いられる方式です。オークション方式では一般的にM&A取引金額が高くなる傾向にあるため、会社買収側からするとデメリットとなりやすい方法といえます。

とはいえ、現時点ではオークション方式が採用されるケースはそれほどありません。なぜなら、売り手側からすると、複数の買い手候補と交渉しなければならず、交渉能力の高いM&A専門家と長期間にわたって契約を締結する必要があるためです。

売り手側では会社売却が完了するまでに多くの費用を負担しなければならないことから、オークション方式を利用する企業はそれほど見られません。

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5. 会社買収の価格・金額の相場

ここでは、会社買収の価格(金額)の相場を具体的な計算方法とともに紹介します。時価純資産法とDCF法による価格(金額)の相場算出方法を、架空のケースを設定してまとめました。

ここで想定する買収予定の中小企業A社は自社と別業種であり、新規参入のために会社買収を行います。A社の貸借対照表上の総資産は1億円で負債は4,000万円です。ところが、総資産と負債を時価に直すと、それぞれ総資産1億2,000万円・負債5,000万円と算出されました。

A社では将来的に安定した収益が見込まれており、今後5年間のフリーキャッシュフローは毎年2,000万円と予想されています。ここからは、本件事例について、各算定方法における価格(金額)相場の計算方法を解説します。

大まかな相場の計算方法

企業買収価格の相場は、中小企業のM&Aや事業承継で用いられることの多い年倍法により計算します

年倍法では、時価純資産額に将来フリーキャッシュフローの3年分から5年分を加算しますが、上記事例では将来5年間のフリーキャッシュフローが予想されているので、5年分を加算するのが一般的です。

つまり、時価純資産額7,000万円にフリーキャッシュフロー5年分の1億円を加算し、相場は1億7,000万円と算出されます。

時価純資産法を用いた金額の算出

時価純資産法では、総資産と負債を時価に換算したうえで企業価値を求めます。この算定方法では、将来の収益およびフリーキャッシュフローなどは用いません。

上記の事例では、時価総資産が1億2,000万円・時価の負債が5,000万円であるため、時価純資産法による企業価値は1億2,000万円ー5,000万円=7,000万円と算出されます。

DCF法を用いた金額の算出

DCF法では、毎年期待されるフリーキャッシュフローの金額を現在価値に割り引いたうえで用います。詳細な計算方法は割愛しますが、将来的に物価の向上が予想されれば貨幣価値は下がるため、現在価値の金額が目減りする仕組みです。

上記事例で毎年の金利を3%と仮定すると、将来5年間分のフリーキャッシュフローの合計は、2,000万円✕5年間÷103%÷103%÷103%÷103%÷103%=8,600万円と算出されます。

6. 相場よりも高い価格・金額で会社売却を行うポイント

上記の企業価値計算方法は、あくまでも客観的情報から計算した会社の価値であり、誰が計算してもその結果はほとんど同じです。

以下では、計算結果以上の価格でM&A取引に応じてくれる相手を探すためのポイントを解説します。

自社を高く評価する相手先を見つける

買い手企業の状況によっては、売り手企業が持つ帳簿に現れない価値を評価し、相場以上の価格で取引に応じてくれる場合があります。特に大きなシナジー効果が見込まれる場合は、シナジー効果により得られる利益の一部を買収価格に加算可能です。

自社を高く評価してくれる相手を見つけられれば、相場以上の価格でM&A取引を実行できます。

買収側が魅力に感じる無形資産をそろえる

帳簿に計上される有形資産のほかに会社価値に影響を与える要素として、無形資産の概念があります。無形資産は、買収価格と時価純資産額の差額である「のれん」として数値化されます。

会社価値には以下のような無形資産が影響することを認識し、資産を蓄積しておくと良いでしょう。

  • 従業員の質
  • 技術力、ノウハウ
  • 知的財産権(特許権など)
  • 許認可
  • ブランド、知名度、信用
  • 販路や商流
  • 店舗網、販売網
  • 業界での地位
  • 業界の成長性

根拠を交えて自社の強みをアピールする

自社の強みのアピールは難しいです。デューデリジェンスの過程で自社の情報を相手に正確に伝えられれば、買収価格を向上できる可能性があります。

売り手側の将来のキャッシュフローは、事業計画によって判断されます。事業計画の根拠を自社内で明確化しておくことで、将来見込まれる利益をアピールすることが可能です。

7. 買い手側が相場よりも好条件で買収を行うポイント

小が大を飲む買収のように、M&Aの相手先企業によっては買収金額がそのまま負債化することもあるため、買収する側としては相場より少しでも低い金額で買収を行いたいと考えるでしょう。ここでは、M&Aにおいて相手先の企業を相場よりも好条件で買収するためのポイントを解説しています。

デューデリジェンスを綿密に行う

デューデリジェンスは、買収予定先の企業の財務状況や将来的な価値を調査するため、買収金額を決定する上で非常に重要な役割を担っています。
買収先の企業価値やリスクについて綿密に調査することで、不良資産や簿外負債などを事前に把握することができ、不当な高額取引の防止につながります。

そのため、買収を成功させる上でも、費用が許す範囲内でデューデリジェンスに注力することがおすすめです。

値下げ交渉をしない

買収価格を引き下げるための交渉は可能ですが、あまりメリットが存在しないため可能な限り値下げ交渉はしないほうが妥当です。相手先の企業の事業の価値を低く見積もっているというイメージを与え、より好条件の買い手先を見つけようと交渉が破談になる可能性が考えられるからです。

仮に値引き交渉の結果、安い金額で買収できたとしても、その後の事業の引き継ぎや移籍した従業員のモチベーションに悪影響を与える恐れがあります。そのため、買収後の長期的な利益も考慮すると、できるだけ買収価格を抑える交渉は控えた方が良いと言えます。

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8. 会社買収の価格・金額に影響を与える無形資産

ここでは、会社買収の価格(金額)に影響を与える無形価値の評価を解説します。会社買収の価格(金額)に影響を与える要素は、純資産額・設備など数値を用いて計算できる要素だけではありません。

買収先が保有する特別な無形資産が1つでもあれば、価格は大きく変動する可能性があります。本記事では、こうした無形資産を、以下の7項目に分けてまとめました。

  1. 会社買収先の従業員
  2. 会社買収先の顧客リスト
  3. 会社買収先の取引先
  4. 会社買収先の市場シェア
  5. 会社買収先の特許や技術・ノウハウ
  6. 会社買収先の強み(地域・世代・ジャンル・ブランド力など)
  7. 会社買収先の経営者の人間性・経営哲学

以下では、それぞれの無形資産を詳しく解説します。

①会社買収先の従業員

会社買収の価格(金額)に影響を与える無形価値の1つ目として、従業員を紹介します。中でも従業員のスキル・定着率・賃金の3要素は、会社買収の価格に影響を与える可能性が高いです。

スキルの高い従業員が多かったり従業員の定着率が高かったりするほど、価格は高まります。賃金水準がスキルに比して低いほど買収側のメリットとなり、買収価格は高くなる傾向があるためです。この3要素のバランスが取れている企業ほど、買収価格は高くなります。

反対に、3要素のうち1つでも魅力に欠けていると、買収価格は低くなりやすいでしょう。例えば、従業員のスキルが高く賃金水準も低い一方で、定着率が低い会社を想定します。この会社は定着率が低いため、従業員のスキルを保証できません。

つまり、魅力が大きく低下してしまうため、企業価値が低下して比較的安価な買収価格になります。もしもこうした会社を買収した際は、欠けている魅力を補うための対策が必要です。対策を考慮したうえで、会社買収を行いましょう。

②会社買収先の顧客リスト

会社買収の価格(金額)に影響を与える無形価値の2つ目は、顧客リストです。一般的に保有している顧客リストが多い企業ほど、会社買収の価格(金額)は高くなる傾向にあります。顧客リストが整理・分析されており、非常に有用であると判断されれば、会社買収の価格(金額)はより高まる仕組みです。

新規参入を目的として会社買収を行い即座に利益を上げたい場合には、たとえ会社買収の価格(金額)が高くても分析済みの顧客リストを保有する会社を買収すると良いでしょう。

③会社買収先の取引先

3つ目に、買収先の取引先を挙げます。一般的に自社よりも規模の大きい会社を取引先とするためには、非常に大きな労力が必要です。取引先として数多くの大企業を抱えている会社では、会社買収の価格(金額)が高くなる傾向にあります。

買い手側からすると、取引したい大企業をすでに取引先として抱える買収先を見つけた場合は、買収価格(金額)が多少高くても積極的に買収を狙うと良いでしょう。

④会社買収先の市場シェア

4つ目は市場シェアです。ここでいう市場シェアは、特にニッチ商品に関する市場シェアをさします。

ニッチ商品とは、特定業界において、需要が少なく大手企業が手を出さない商品のことです。しかし、確実な需要があり、なおかつ企業の努力次第で利益を上げられるため、中小企業を中心にニッチ商品の製造・販売は積極的に実施されています。

たとえ業績が赤字だとしても、ニッチ商品の市場シェアを10%以上占めていると、高い確率で利益を上げやすいです。こうした買収相手は、赤字か否かにかかわらず価格(金額)が高くなる傾向にあります。

⑤会社買収先の特許や技術・ノウハウ

5つ目は、特許や技術・ノウハウです。これらは非常に高い価値のある無形資産の代表例でもあります。客観的に見て価値の高い無形資産を保有している企業は、もちろん価格(金額)が高まりやすいです。

特許・技術・ノウハウなどの無形資産の獲得を目的に会社買収を行う場合、M&A取引価格がある程度高まることを想定しておきましょう。

⑥会社買収先の強み(地域・世代・ジャンル・ブランド力など)

6つ目に、地域・世代・ジャンル・ブランド力などの強みです。ここでは、これらの強みと会社の買収価格との関係性を、駄菓子の製造会社を例に挙げながら解説します。

もともと駄菓子は小学生を対象とする商品であり、この世代に対して強みを持っています。そこで駄菓子を製造する会社を買収すれば、小学生を対象とした新商品が受け入れられやすくなったり、駄菓子のブランドや会社名を覚えてもらえたりするほか、将来的に自社の顧客になる可能性も高いでしょう。

このように、何らかの強みを持つ会社はさまざまな経営戦略に応用できるため、会社買収の価格(金額)が高くなる傾向にあります。

⑦会社買収先の経営者の人間性・経営哲学

最後に紹介するのは、経営者の人間性・経営哲学です。買収先企業の創業歴が長いほど、経営者の人間性・経営哲学などが企業全体に行き渡りやすくなります。

しかし、会社買収を行うと、自社の企業風土にするために統合プロセスを行わなければなりません。このときに、経営者の人間性や経営哲学がわかりやすく全社員に浸透している会社を買収すれば、買収後スムーズに統合しやすいです。

経営者の人間性や経営哲学が浸透している企業は、会社買収の価格(金額)が高くなる傾向にあります。

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9. 会社買収の価格算定に役立つ事例3選

ここでは、2018年以降に実施された会社買収の事例を3件紹介します。会社買収の目的および買収価格(金額)を可能な限り記載しているため、会社買収を行う際にご参考ください。

ニトリHDによる島忠の買収

2021年1月、ニトリホールディングスはTOBにより島忠を完全子会社化しました。ニトリホールディングスは島忠の株式を約3,000万株取得し、買収金額は1,650億円でした

開示情報によれば、ニトリの目的は「ホームセンター商品とホームファッション商品との相互補完による販売拡大と、プライベートブランド商品開発ノウハウ共有による利益率の向上、物流機能の共同利用によるコスト削減・資産効率改善」です。

ZホールディングスによるZOZOの買収

2019年11月、ヤフーを子会社に持つZホールディングスは、ZOZOをTOBにより連結子会社化しました。Zホールディングスは152万株を取得し、買収金額は約4,000億円でした

開示情報によれば、ZホールディングスによるZOZOの連結子会社化の目的は、「集客、商品提供、ユーザーの利便性向上などの事業シナジーの実現」です。

伊藤忠商事によるデサントの買収

2019年3月、デサントに対する敵対的TOBにより、伊藤忠商事は40%の株式を取得しました。本事例では、伊藤忠商事は約700万株を取得し、買収金額は2,000億円です

開示情報によれば、買収の目的は「取締役の見直し等を中心とした経営体制やコーポレートガバナンスの再構築及び強化によりデサント社及び伊藤忠商事グループ全体の企業価値を向上させること」です。

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10. 希望する価格・金額で会社買収を行うには

希望する価格(金額)で会社買収を行うためには、以下の3つを実践すると良いでしょう。

  • 複数のM&A仲介会社に相談して、マッチングできそうな買収先を探してもらう
  • 会社買収価格を適正に計算できるようにする
  • 最終契約を行うときの交渉を綿密に行う

1つ目のポイントは、複数のM&A仲介会社に相談しつつ、マッチングできそうな買収先を探してもらう点です。探索の数を増やすと目的の会社に出会う確率が高まるため、取り扱い案件数の多いM&A仲介会社には積極的に相談しましょう。

2つ目のポイントは、会社買収価格を適正に計算できるようにする点です。もともと売却側は、できるだけ高値で会社を売ろうと考えます。自社の価格が最も高くなるような計算方法で算出した価格のみを、最初に提示してくる可能性もあります。買収側の経営者自身も会社買収価格を計算できるようにしておき、適切な金額で取引できるようにしましょう。

最後のポイントは、最終契約を行うときの交渉です。最終契約の締結はデューデリジェンス後であるため、取得したデータをもとに経営者自身が納得する価格交渉を行えるよう準備しておきましょう。

これら3点のポイントに対応できれば、希望する価格(金額)での会社買収を目指せます。

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11. 会社買収の手数料価格

会社買収の実施にあたって、M&A仲介会社にサポートを依頼する場合、さまざまな手数料の支払いが求められます。代表的な手数料の概要と価格相場は以下のとおりです。

  • 相談料=M&A案件の交渉を進める前に相談するための費用。基本的に無料の会社が多い。
  • 着手金=M&Aの仲介業務を依頼した段階で発生する費用。相場は100万円~500万円程度。
  • 成功報酬=M&Aが成立し最終契約を結んだときに生じる手数料。レーマン方式を用いて算出するケースが多い。

12. 会社買収の価格・金額に関する相談先

会社買収のスムーズな成功を目指すためにも、M&Aの専門家からサポートを得ながら手続きを進めることをおすすめします。

相談先を選ぶ際は、マッチング先が豊富にあること・適正な会社買収価格が計算できること・交渉をしっかり代行してくれることなどを基準に決めるとM&Aの成功につながりやすいです

M&A総合研究所では、経験豊富なM&Aアドバイザーが交渉から契約まで一括サポートします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談は電話・Webより随時受け付けていますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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13. 会社買収の価格・金額まとめ

本記事では、会社買収の価格(金額)の算定方法や相場を解説しました。会社買収のポイントは、以下のとおりです。

  • 会社買収の算定方法=算定方法により金額が異なるため、一度すべての方法で計算してから適正価格を求める
  • 価格に影響を与える無形価値 = 慎重に評価する必要がある

自社の成長につなげるため、スピーディーに会社買収を行う経営者の方は多いです。しかし、取引を急ぐあまり、相場とかけ離れた高値で会社買収を行い買収側が大きく損してしまった事例も多く報告されています。このような失敗を防ぐには、M&A仲介会社に相談しながら進めていくことが大切です。

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