2019年09月30日公開
事業承継税制の特例措置を活用すべき!手続きや注意点を紹介

事業承継税制の特例措置には、納税額を減らせたり後継者の負担を軽くするメリットがあります。ただし手続きに多くの時間がかかるほか対応できる専門家の数が少ないです。M&A仲介会社に相談し不安や疑問を解消しつつ、事業承継税制の特例措置を上手に活用しましょう。
目次
1. 事業承継税制の特例とはどんな制度?
まずは事業承継税制の特例について理解するために、以下の2つに分けて紹介します。
- 事業承継税制についてのおさらい
- 事業承継税制に特例措置が生まれた理由
これら2項目について押さえて、事業承継税制の特例措置の活用を検討してみてください。それでは、それぞれの項目を順番に見ていきましょう。
①事業承継税制についておさらい
はじめに事業承継税制についておさらいしましょう。
事業承継税制とは中小企業の事業承継をサポートするため、贈与税や相続税の支払いを一定期間猶予してくれる制度のことです。個人と法人問わず株式譲渡による事業承継が対象となり、制度を利用するには都道府県知事からの認定が必要となります。
ところが適用要件が複雑で難しく、適用から5年間雇用の8割を維持しなければならないということもあり利用企業が少ない状況にありました。
②事業承継税制に特例措置が生まれた理由
前述のように煩雑な手続きと事業継続要件の厳しさから、事業承継税制の利用率は決して高くありませんでした。
そこで利用率が上がらない事態を重く見た政府は、事業承継税制の改正を実施します。新しく作られた事業承継税制の特例では、制度利用の要件が緩和され多くの中小企業が適用を受けられるようになりました。
改正にあたって新設された特例措置は、5年以内に承継計画の提出を求め10年以内に承継を行う中小企業しか利用できない期間限定の制度ですが、実質100%の税金が猶予される大きなメリットがあるので活用したい制度と言えます。
以上、事業承継税制の特例措置の概要を簡単に説明しました。ここまで読んで、事業承継税制の特例措置に興味が湧いたと思います。
そこで次に「従来の制度と特例措置とは何が違うのか分かりやすく教えてほしい」という経営者の方も多いはずです。ここからは従来の事業承継税制と特例措置との相違点をまとめたので確認しておきましょう。
2. 従来の事業承継税制と特例措置との相違点まとめ
従来の事業承継税制と特例措置との相違点は、以下の6つです。
- 全株式が納税猶予対象と認められた
- 相続税で100%猶予されるようになった
- 複数株主から複数後継者への相続・贈与も猶予対象になった
- 雇用8割維持が未達成でも猶予が継続されることになった
- 業績悪化で株式譲渡などを行う際は一部の税額免除となった
- 適用期間に制限が設けられた
これら6つの相違点を押さえておけば、事業承継税制の特例措置を理解できます。それでは、それぞれの相違点を順番に見ていきましょう。
①全株式が納税猶予対象と認められた
1つ目に、事業承継税制の特例措置では、全株式が納税猶予対象と認められました。
特例措置では猶予対象となる株式が増えただけでなく、猶予される税額も増加したのです。なおこれまでの事業承継税制の対象は発行済株式の3分の2のみで、残りの3分の1の株式は対象外とされてきたのです。
しかし特例措置では発行済の全株式が猶予の対象となりました。これにより中小企業が事業承継で支払う税金はさらに減るため大きなメリットとなります。
②相続税で100%猶予されるようになった
2つ目に、事業承継税制の特例措置では、相続税で100%猶予されるようになりました。
つまり従来の事業承継税制による相続税の猶予は80%でしたが、特例措置では100%支払いが猶予されます。
あくまでも猶予措置である点には注意すべきですが、相続で事業を承継するときに相続税の支払いがゼロになるのは大きなメリットでしょう。
③複数株主から複数後継者への相続・贈与も猶予対象になった
3つ目に、事業承継税制の特例措置では、複数株主から複数後継者への相続・贈与も猶予対象になりました。
既存の制度で対象となっていたのは、経営者が1人の後継者に株式を譲渡する場合のみに限定されていたのです。しかし特例措置では、複数の株主から複数の後継者(3名まで)の贈与・相続も対象となりました。
複数の後継者が共同で経営を行う場合での事業承継を考えていた経営者は、事業承継制度の特例措置活用を検討してください。
④雇用8割維持が未達成でも猶予が継続されることになった
4つ目に、事業承継税制の特例措置では、雇用8割維持の基準が未達成であっても猶予が継続されることになりました。
なお特例措置の場合でも、基本的な要件自体は一般措置と変わりません。しかし「申告期限から5年間、雇用の8割を維持する」という条件は平成30年度改正によって緩和されました。
つまり特例措置では、基準日の雇用平均が相続時の8割を下回った場合でも、認定支援機関からの指導・助言を受ければ事業承継税制を継続できるため、この要件が満たせずに悩んでいた経営者にとって大きなメリットとなります。
⑤業績悪化で株式譲渡などを行う際は一部の税額免除となった
5つ目に、事業承継税制の特例措置では、業績悪化で株式譲渡などを行う際は一部の税額免除となりました。
なお従来の事業承継税制では、猶予された税額が免除となるのは会社が倒産した時に限定されていたのです。しかし特例措置では、業績悪化により株式を譲渡したり、他の会社に買収された場合でも支払う贈与税・相続税が免除されるようになりました。
これにより業績悪化による株の譲渡や買収の際に株価を再計算し、下がった株価にかかった税金は免除となるため、会社の今後が不安な方にも大きなメリットのある制度となったのです。
⑥適用期間に制限が設けられた
6つ目に、事業承継税制の特例措置では、適用期間に制限が設けられました。
事業承継措置の一般措置は今後も続きますが、特例措置は10年間の時限措置です。つまり承継計画を5年後の2023年までに承認してもらい、10年後の2028年までに承継しなければ一般措置として扱われます。
様々なメリットがある特例措置ですが、期間限定の制度なので、できるだけ早めに活用を検討してください。
以上、従来の事業承継税制と特例措置との相違点を紹介しました。ここまで読めば、事業承継税制の特例措置について大まかに理解できたはずです。
そこで次に「事業承継税制の特例措置を利用するメリットを分かりやすく教えてほしい」という経営者の方も多いと思います。ここからは事業承継税制の特例措置を利用するメリットをまとめたので確認しておきましょう。
3. 事業承継税制の特例を利用する3つのメリット
事業承継税制の特例を利用するメリットは、以下の3つです。
- 納税額を減らせる
- 廃業コストを無くせる
- 後継者の負担を減らせる
これら3つのメリットを押さえて、自社の状況と照らし合わせてどれほどの利点があるのか確認してください。それでは、それぞれのメリットを順番に見ていきましょう。
①納税額を減らせる
事業承継税制の特例を利用する1つ目のメリットは、納税額を減らせることです。
これこそが事業承継税制の特例措置を活用する最大のメリットと言えます。納税額が多すぎて事業承継をためらっていたという経営者の方も、事業承継税制の特例措置を利用すれば承継できる可能性が高まるはずです。
事業承継税制を利用すれば数百万から数千万円もの税金支払いが猶予されます。さらに2023年までに承継計画を提出し特例が適用されれば、贈与税や相続税が全額免除になる嬉しいメリットがあるのです。
なるべく節税しつつ事業承継したいという経営者は、事業承継税制の特例措置の活用を検討してください。
②廃業コストを無くせる
事業承継税制の特例を利用する2つ目のメリットは、廃業コストを無くせることです。
前述の通り、特例措置では税金の負担額を減らせるので、廃業にかかるリスクやコストをなくすことができ事業承継しやすくなります。なお会社の経営には大量の備品や設備などを揃えたはずです。
会社を廃業した場合そうした設備を売ることもできますが、古いものや再利用が出来ないものはコストをかけて廃棄しなければなりません。
一方で事業承継を選べば、廃棄コストをかけず会社を残すことが可能です。事業承継税制により税金の支払いが猶予されれば、会社の存続に向けて前向きに考えられるようになるでしょう。
③後継者の負担を減らせる
事業承継税制の特例を利用する3つ目のメリットは、後継者の負担を減らせることです。
つまり事業承継税制を活用すれば、最低でも5年間税金の支払いが猶予されるので後継者の負担を減らせます。従来のケースでは、納税額が高いという理由で親族や従業員から会社の引き継ぎを拒否されるケースは少なくありませんでした。やはり、税金のことを考えるとなかなか簡単に会社を引き継ごうとは思えないものです。
ところが後継者が税金などのコストを理由に引継ぎを拒否した場合でも、事業承継税制の特例措置について話せば承継に前向きになってくれるかもしれません。後継者や従業員にかかる負担が減れば、資本金などが少ない場合でも会社を維持しやすくなるでしょう。
以上、事業承継税制の特例を利用するメリットを紹介しました。ここまで読んで事業承継税制の特例措置を利用したくなった経営者の方も多いはずです。
しかし事業承継税制の特例措置を利用するためには適用要件を満たさなくてはなりません。ここからは贈与税と相続税それぞれの場合ごとに適用要件をまとめたので確認しておきましょう。
4. 事業承継税制の特例措置の適用要件(贈与税編)
事業承継税制の特例措置の適用要件(贈与税編)は、以下の5つです。
- 承認計画の要件
- 会社の要件
- 先代経営者の要件
- 後継者の要件
- 担保の要件
これら5つの要件を押さえて、贈与税の猶予申請を検討してください。それでは、それぞれの要件を順番に見ていきましょう。
①承認計画の要件
事業承継税制の特例措置(贈与税編)1つ目の要件は、承認計画に関するものです。
事業承継税制の適用を受けるには、都道府県知事からの認定を受ける必要があります。さらに特例措置の認定を受けるにあたっては、実際に贈与を行う前にあらかじめ特例承継計画を提出し確認を受けなければなりません。
なお特例承継計画の提出期限は2023年の3月31日なので、必ず期間を守って提出を行いましょう。
②会社の要件
事業承継税制の特例措置(贈与税編)2つ目の要件は、会社に関するものです。
贈与税の納税猶予を受けたい場合、以下の全要件に該当しない会社のみしか事業承継税制の特例を利用できません。
- 上場企業
- 風俗営業会社
- 資産管理会社
- 総収入金額がゼロの会社
- 従業員がいない会社
これら5つの要件全てに該当してはいけないことを理解しておきましょう。
なお資産管理会社とは、「貸借対照表の総資産のうち特定資産の割合が70%以上の会社」もしくは「売上のうち特定資産の運用収入の占める割合が75%以上である会社」のことです。
適用開始から5年以内にこれら会社に関する要件を満たせなくなった場合であっても猶予対象外となるので、申請後もチェックを欠かさないでください。
③先代経営者の要件
事業承継税制の特例措置(贈与税編)3つ目の要件は、先代経営者に関するものです。
贈与税の納税猶予を受けたい場合、先代経営者は以下の要件すべて満たす必要があります。
- 会社の代表権を有していたこと
- 贈与開始直前、議決権数の50%以上を有していたこと
- 後継者を除き最も多くの議決権数を有していたこと
- 贈与時、会社の代表権を有していないこと
なお先代経営者が株式を半分以上保有していた場合では、事業承継を行うことで満たせる条件がほとんどです。そのため事業承継税制のため特別な対応をすべき企業は少ないと言えます。
④後継者の要件
事業承継税制の特例措置(贈与税編)4つ目の要件は、後継者に関するものです。
贈与税の納税猶予を受けたい場合、後継者は以下の要件をすべて満たさなければなりません。
- 会社の代表権を有していること
- 20歳以上であること
- 役員就任から最低3年が経過していること
- 後継者とその親族などを合わせ50%超の議決権数を有していること
- 後継者とその親族などの中で後継者が最も多くの議決権数を有していること(後継者が1人の場合)
- 総議決権数の10%以上を有し、後継者の親族などを合わせ最も多くの議決権数を有していること(後継者は2人または3人の場合)
なお後継者の人数によっても要件が変わるので、専門家と共に要件を満たすか確認してください。
⑤担保の要件
事業承継税制の特例措置(贈与税編)5つ目の要件は、担保に関するものです。
事業承継税制の適用を受けるためには、猶予される税金の額に見合った担保を用意する必要があります。
担保として有効なのは不動産、国際、地方債、有価証券、支払い能力のある保証人などです。もしこれらの担保を用意できない場合、先代経営者などから引き継いだ非上場株式を担保として提供しなければなりません。
事業承継税制は便利な制度ですが、会社の資産が少ない場合には引き継いだ株式全てが担保になる可能性をあらかじめ意識しておいてください。
以上、事業承継税制の特例措置の適用要件(贈与税編)を紹介しました。ここまで読んで適用要件を確認しておけば、スムーズに贈与税の納税猶予申請を行えます。
しかし相続税の納税猶予申請では、贈与税とは異なる要件が採用されているため注意しなければなりません。ここからは事業承継税制の特例措置の適用要件(相続税編)をまとめたので確認しておきましょう。
5. 事業承継税制の特例措置の適用要件(相続税編)
事業承継税制の特例措置の適用要件(相続税編)は、以下の4つです。
- 承認計画の要件
- 会社の要件
- 経営者(被相続人)の要件
- 後継者(相続人)の要件
これら4つの要件を押さえて、相続税の猶予申請を検討してください。それでは、それぞれの要件を順番に見ていきましょう。
①承認計画の要件
事業承継税制の特例措置の適用要件(相続税編)1つ目は、承認計画に関するものです。
相続税で適用を受ける場合も贈与税と同じく、相続を行う前に特例承継計画を都道府県知事に提出しなければなりません。
なお相続税の場合、事業承継税制の申告は被相続人が死亡したことを知ってから10カ月以内が期限となっているので早めに手続きを進めてください。
②会社の要件
事業承継税制の特例措置の適用要件(相続税編)2つ目は、会社に関するものです。
会社に関する要件は、基本的に贈与の時と変わりがありません。なお適用から5年以内に守るべき要件も贈与の場合と同じなので、専門家と共にチェックしてください。
③経営者(被相続人)の要件
事業承継税制の特例措置の適用要件(相続税編)3つ目は、経営者(被相続人)に関するものです。
相続税の納税猶予を受けたい場合には、以下の要件をすべて満たさなければなりません。
- 会社の代表権を有していたこと
- 相続開始直前、議決権数の50%以上を有していたこと
- 後継者を除き最も多くの議決権数を有していたこと
事業承継税制の認定を始めて受ける場合以上の要件をすべて満たす必要があります。しかし相続前の段階ですでに事業承継税制の適用を受けている時は、要件を満たしていなくても問題ありません。
④後継者(相続人)の要件
事業承継税制の特例措置の適用要件(相続税編)4つ目は、後継者(相続人)に関するものです。
相続税の納税猶予を受けたい場合、以下の要件を満たさなければなりません。
- 相続開始の翌日から5カ月以内に会社の代表権を有すること
- 相続開始時、後継者およびその親族などを合わせ総議決権数の50%超を有すること
- 後継者とその親族などの中で後継者が最も多くの議決権数を有していること(後継者が1人の場合)
- 総議決権数の10%以上を有し、後継者の親族などを合わせ最も多くの議決権数を有していること(後継者は2人または3人の場合
- 相続開始直前に会社の役員であること(被相続人が60歳未満で死亡した場合を除く)
なお後継者の人数によって、株式の保有割合は変わるので注意してください。
以上、事業承継税制の特例措置の適用要件(相続税編)を紹介しました。ここまで読んで適用要件を確認しておけば、スムーズに相続税の納税猶予申請を行えます。
そこで次に「事業承継税制の特例措置はどのように手続きすればよいの?」と疑問に感じる経営者の方も多いはずです。ここからは事業承継税制の特例措置手続きの流れをまとめたので確認しておきましょう。
6. 事業承継税制の特例措置手続きの流れを6ステップで解説
事業承継税制の特例措置手続きの流れとして、以下の6ステップを紹介します。
- 事業承継税制マニュアルの確認
- 特例承継計画の作成・提出
- 代表者の交代
- 株式の贈与
- 認定の申請
- 贈与税・相続税の申告
これら6つのステップで手続きをあらかじめ押さえて、事業承継税制の特例措置をスムーズに受けてください。それでは、それぞれの手続きを順番に見ていきましょう。
①事業承継税制マニュアルの確認
事業承継税制の特例措置手続きの1ステップ目は、事業承継税制マニュアルの確認です。
中小企業庁のホームページでは、申請の手続きや申請書類についてのマニュアルが公開されています。このマニュアルは「中小企業経営承継円滑法の申請マニュアル・申請様式一覧」にて閲覧可能です。
できるだけ自分の力だけで事業承継税制を利用したい経営者は、不明点はマニュアルで調べられます。手続きを行う際には、事前に確認しておくと良いでしょう。
②特例承継計画の作成・提出
事業承継税制の特例措置手続きの2ステップ目は、特例承継計画の作成・提出です。
特例承継計画を作成して、認定承継機関に所見を記載してもらう必要があります。なお認定承継機関とは、商工会や商工会議所・金融機関・税理士などです。
商工会や商工会議所では無料のセミナーを開催している所もあるので確認してみましょう。株式を後継者に引き継ぐ際の節税対策についても尋ねることができます。
ちなみに承継計画には、会社の後継者や承継時までの経営見直しを記載しなければなりません。平成35年(2023年)3月31日までに都道府県庁に提出する必要がありますが、それまでに贈与・相続を行う場合、相続・贈与後の提出も認められています。
③代表者の交代
事業承継税制の特例措置手続きの3ステップ目は、代表者の交代です。
株式を後継者に渡すことで、実際に代表者が交代します。なお贈与にて事業承継税制の適用を受ける場合には、このタイミングで贈与しなければなりません。
④株式の贈与
事業承継税制の特例措置手続きの4ステップ目は、株式の贈与です。
ここで株式の贈与や相続が実行されます。株式の引き継ぎを行う際には、税理士に節税対策について聞いておくのが得策です。
実際に承継が実行したあとは、次は特例認定の申請をしましょう。
⑤認定の申請
事業承継税制の特例措置手続きの5ステップ目は、認定の申請です。
都道府県庁に対して、特例認定申請書を提出しなければなりません。特例認定申請書は中小企業庁のページからダウンロード可能です。
なお贈与税の納税猶予の場合、申請の締め切りは贈与のあった翌年1月15日までです。また相続税の納税猶予の場合には、申請の締め切りは相続の開始後8ヶ月以内となっています。
ちなみに贈与税・相続税いずれの場合も、承継計画の添付が必要です。
⑥贈与税・相続税の申告
事業承継税制の特例措置手続きの6ステップ目は、贈与税・相続税の申告です。
前述の認定申請の締切までに、贈与税や相続税の申告を行います。贈与税の納税猶予の場合には、認定書のコピーと合わせて贈与税の申告書を提出しなければなりません。
また相続時精算課税制度の適用を受けたい場合、その旨を明記します。なお相続税の納税猶予の場合にも、認定書のコピーと合わせて相続税の申告書を提出してください。
以上、事業承継税制の特例措置手続きの流れを紹介しました。ここまで読めば、事業承継税制の特例措置手続きをスムーズに行うことができます。
ただし事業承継税制の特例措置は、適用後にもしなければならない手続きがあるのです。ここからは事業承継税制の特例措置における適用後の手続きをまとめたので確認しておきましょう。
7. 事業承継税制の特例措置は適用後の手続きも重要
事業承継税制の特例措置を利用するなら、適用後の手続きも理解しなければなりません。
適用後の手続きは、以下の3つです。
- 年次報告書・継続届出書の提出
- 特例承認計画に関する報告書の提出
- 免除届出書・免除申請書の提出
これら3つの手続きを押さえて、適用後も怠らずに手続きしてください。それでは、それぞれの手続きを順番に見ていきましょう。
①年次報告書・継続届出書の提出
事業承継税制における特例措置適用後の手続き1つ目は、年次報告書・継続届出書の提出です。
事業承継税制が適用されてから5年以内は毎年、都道府県知事に対し「年次報告書」、税務署に対し「継続届出書」を提出しなければなりません。
年次報告書と継続届出書の提出が無ければ、事業承継税制を継続するつもりがないと判断されて、それまで猶予されていた税金の支払いが課されます。
そのため適用から年数が経つほど猶予税額は大きくなるので、一気に請求されないよう毎年書類の提出を忘れないようにしましょう。
ちなみに税務署に対して継続届出書を提出する際は、贈与税・相続税の申告期限から5年間は毎年にわたり、5年経過後は3年ごとに提出しなければなりません。
なお継続届出書の提出にあたっては、相続税の申告期限から5年間は以下の要件を満たす必要があります。
- 後継者が会社の代表であること
- 後継者が筆頭株主であること
- 納税猶予対象株式を継続保有していること
- 上場会社や風俗営業会社、資産管理会社に該当しないこと
以上の条件を常に意識しておくようにしてください。
②特例承認計画に関する報告書の提出
事業承継税制における特例措置適用後の手続き2つ目は、特例承認計画に関する報告書の提出です。
適用から5年が経過したら、都道府県知事と税務署に「特例承認計画に関する報告書」を提出しましょう。
なお特例措置では実績報告時に雇用の8割が維持できていなくても、認定経営革新等支援機関からの指導・助言を受けることで継続して事業承継税制の利用が可能です。
③免除届出書・免除申請書の提出
事業承継税制における特例措置適用後の手続き3つ目は、免除届出書・免除申請書の提出です。
後継者の死亡があった場合には、相続税免除申請で猶予されていた相続税の全部が免除されますが、相続税免除申請を行う際には、免除届出書・免除申請書を提出しなければなりません。
ちなみに後継者の死亡以外に、相続税の納付が免除されるのは以下のような場合があります。
- 相続税の申告期限後5年間において、やむを得ない理由で後継者が代表権を有しなくなった日以降に、猶予継続贈与を行った場合
- 相続税の申告期限後5年間経過後に、後継者が猶予継続贈与を行った場合
- 相続税の申告期限後5年経過後に、会社について破産手続開始決定があった場合
やむを得ない理由とは、後継者が精神障害者・身体障害者となった場合などです。
なお猶予継続贈与とは、後継者(2代目経営者)が3代目経営者に贈与したときに考慮するものとなります。つまり後継者から贈与された3代目経営者が納税猶予を受ける場合における贈与のことです。
このケースでは2代目経営者の納税猶予税額のうち、3代目経営者が納税猶予を受ける株式に対応する部分が免除されることを押さえておきましょう。
以上、事業承継税制の特例措置適用後の手続きを紹介しました。ここまで読めば、適用を受けた後も怠らずに手続きできます。
しかし、事業承継税制の特例措置を受ける際には多くの注意点があり、知っておかなければ不利益を被るケースもあるのです。ここからは事業承継税制の特例措置を受ける際の注意点をまとめたので確認しておきましょう。
8. 事業承継税制の特例措置を受ける際の5つの注意点
事業承継税制の特例措置を受ける際の注意点は、以下の5つです。
- 手続きや計画策定に多くの時間がかかる
- 事業を最低5年は継続しなければならない
- 取消事由に該当すると利子税が発生する
- 2023年までに承継計画を認定してもらわなければならない
- 対応できる専門家の数が少ない
これら5つの注意点をあらかじめ押さえて、事業承継税制の特例措置にまつわるトラブルを回避してください。それでは、それぞれの注意点を順番に見ていきましょう。
①手続きや計画策定に多くの時間がかかる
事業承継税制の特例措置を受ける際には、手続きや計画策定に多くの時間がかかることに注意しましょう。
事業承継税制の適用を受ける場合、数多くの書類を作成・提出した上で、事業承継計画を策定しなければならず時間的コストが多く発生します。
それだけでなく認定を受けた後も、毎年都道府県と税務署に書類を提出しなければならないので、通常の業務で手一杯な会社にとっては大きな負担になりかねません。手続きをする時間的余裕がなければ、円滑に事業承継税制を利用するのは難しいでしょう。
ところが普段の仕事が忙しいからと言って、制度の利用を諦める必要は無いです。税理士など事業承継税制に対応してくれる専門家に相談すれば、手続きの効率的な進め方についてアドバイスをもらったり、代わりに書類を作成してもらったりできます。
手続きや計画策定にはある程度時間がかかってしまいますが、専門家の力を借りればたとえ忙しくても事業承継税制を利用できるので安心してください。
②事業を最低5年は継続しなければならない
事業承継税制の特例措置を受ける際には、事業を最低5年は継続しなければならないことに気をつけてください。
業績悪化による株式の売却や他社からの買収などのケースにおいてはある程度の救済措置が設けられていますが、5年以内に事業を辞めてしまうと猶予されていた税金が課されてしまいます。
したがって将来的に廃業も検討しているなら、事業承継税制の利用を考え直すべきです。会社の存続だけを考えるのであればM&Aなど他にも様々な手段がありますので、事業承継に詳しい専門家に相談するのがおすすめです。
③取消事由に該当すると利子税が発生する
事業承継税制の特例措置を受ける際、取り消し事由に該当すると利子税が発生することを押さえておきましょう。
平成30年の改正によって多少は緩和されたものの、取消事由に該当すれば猶予は取り消されて利子税が発生するのです。
なお取消事由には以下のようなものがあります。
- 5年以内に後継者が代表者でなくなったとき
- 後継者が取得した株式を他人に譲渡などで手放したとき
- 会社が資産管理会社に該当したとき
- 会社が解散したとき
- 会社の年間収入がゼロになったとき
- 継続届出書を提出しなかったとき
事業承継税制を利用する際には、上記の取消事由に該当しないように注意してください。
④2023年までに承継計画を認定してもらわなければならない
事業承継税制の特例措置を受ける際には、2023年までに承継計画を認定してもらわなければなりません。
なお認定を受けた後は2028年までに承継を行わなければ特例が使えなくなり、一般措置として扱われてしまいます。事業承継税制の特例は時限措置であるため、今後10年ほどの間に事業承継を行おうと考えている経営者の方は早めに動かなければならないのです。
特例承継計画では後継者に関する情報も詳しく書く必要があるため、後継者が未定の場合には専門家に相談の上、なるべく早めに会社の今後を考えておきましょう。
⑤対応できる専門家の数が少ない
事業承継税制の特例措置を受ける際には、対応できる専門家の数が少ない点にも注意しましょう。
事業承継税制の特例措置は施行から数年しか経っていないため、対応できる専門家が少ない状況です。そのため上手く対応してもらえないというケースも少なくありません。
事業承継税制を検討する際は、社外の税理士に相談するのが得策です。しかし一部ですが、事業承継の手続きをすることだけを重視し現実的でない会社の存続計画を作る専門家もいます。
また報酬に関して専門家の認識がズレており、想定外の出費が発生するおそれもあるのです。上記のトラブルを防ぐため事業承継税制に関することだけでなく、会社の成長について共に考えてくれる専門家を選びましょう。
専門家によっては公式ページで事業承継税制への対応について説明していますので、あらかじめ読んでから依頼を検討するのがおすすめです。
以上、事業承継税制の特例措置を受ける際の注意点を紹介しました。ここまで読めば、事業承継税制の特例措置を安全に活用できます。
ところが「まだまだ不安点が多いから信頼できる専門家を教えてほしい」という経営者の方も少なくないはずです。最後に事業承継税制の特例措置に関するおすすめの相談先をまとめたので確認しておきましょう。
9. 事業承継税制の特例措置で悩んだらM&A仲介会社に相談しよう
事業承継税制の特例措置を上手に活用するには、税務や会計に関する深い専門知識が必要です。とりわけスムーズに手続きするためには、事業承継税制に関して知識を持つ専門家が不可欠でしょう。
また事業承継税制には税務リスクやデメリットも多くあるため、事業承継について考えるときは税制の利用を含め様々な観点から会社にとってベストな方法を選ばなくてはなりません。
おすすめなのが、事業承継全般について知識と経験を持つ専門家への相談です。
相談先としては税理士事務所などがありますが、税理士と提携しているM&A仲介会社なら会社の事情に合わせた承継プランを提案してくれます。
さらにM&A仲介会社は事業承継の専門家として経営に関する様々な観点からアドバイスを行うので、今後の経営に迷っている方も安心です。
「どういった方法で事業承継税制の特例措置をすればよいか分からない」「事業承継税制の利用を含め様々な手段を検討したい」などの悩みは、事業承継のプロフェッショナルであるM&A仲介会社に任せましょう。
M&A仲介会社は数多くありますが、おすすめの仲介会社は「M&A総合研究所」です。
M&A総合研究所は相談料、着手金無料の完全成功報酬制なので、M&Aにかかる予算をなるべく抑えたい方でも気軽に相談できます。
また経験豊富な公認会計士や税理士が事業承継のサポートをしてくれるので、税務に関する手続きの専門性は非常に高いと言えるでしょう。
事業承継に興味をお持ちの方は、一度M&A総合研究所のサイトでこれまでの実績をチェックしてみてください。
10. まとめ
事業承継税制の特例措置を受けることで、納税額を減らせたり後継者の負担を軽くさせるメリットがあります。
ただし、手続きに多くの時間がかかるほか対応できる専門家の数が少ないので注意してください。
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