事業譲渡の税務仕訳(会計処理)とのれんの税効果・償却期間まとめ!

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

M&Aにはいくつか種類がありますが、その中でも事業譲渡での選択肢があります。事業譲渡における会計処理、仕訳、のれん、税務などはどうなっているのでしょうか?今回はそんな事業譲渡での、会計処理、仕訳、のれんの扱い、税務上の処理について解説していきましょう。

目次

  1. 事業譲渡とは?
  2. 事業譲渡の税務仕訳と会計処理
  3. 事業譲渡の際にのれん代が発生するケース
  4. 事業譲渡の際に負ののれんが発生するケース
  5. 事業譲渡の際の税務上ののれん代
  6. まとめ
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1. 事業譲渡とは?

事業譲渡

まずは事業譲渡について解説していきましょう。

事業譲渡とはそもそも何?

事業譲渡とは、簡単にいえば資産の売買・取引です。全ての事業も可能ですし、丸ごと譲渡するわけではなく、一部の事業のみという具合に譲渡できます。

株式譲渡ではないので、事業譲渡だと対価は株式ではなく金銭で支払います。売り手側企業は、譲渡した事業への支配権を失うことになります。事業譲渡は、買い手側企業と売り手側企業と、お互いの経営の効率化を図ることで、次の段階に進むことができます。

事業譲渡で注意したい「消費税」の存在

事業譲渡は、M&Aの中でも株式譲渡に次いで見られる手法ですが、譲り受ける資産に課税対象となる資産があれば、課税対象となるため消費税の扱いに注意が必要です。

事業譲渡は、お金で売買をするわけですから、税務上の処理と会計処理も対処しなくてはいけません。後ほど解説もしていきますが、事業譲渡で生まれる「のれん」や、建物などの有形固定資産にも、課税資産として当然消費税がかかります。

事業譲渡は、このように消費税とは切っては切れないものですし、同時に税務仕訳や会計処理もきちんと処理しなくてはなりません。

事業譲渡の買収額の評価方法とは?

ところで、事業譲渡に対する評価はどうするのだろうと思われる方もいるのではないでしょうか?事業譲渡では、売り手企業側に対する企業評価が要になってきます。

あくまでも上場していない中小企業を対象とした評価方法ですが、事業譲渡での企業評価に次の計算式が用いられます。
 

  • 事業価値=事業に係る時価純資産価額+譲渡事業の営業権(のれん代)×規定年数(業種や業績により2~5年) 

「事業に係る時価純資産価額」とは、売り手側企業が現在行っている事業への価値、評価ということになります。買い手側企業としては、特に重視したい部分です。「譲渡事業の営業権(のれん代)」は、大体3年に及ぶ業績などから評価額が算定されます。

このように事業譲渡では、事業に対する価値がそのまま事業への評価につながります。一方で、株式譲渡では評価とする軸が異なり、株式譲渡では算出方法が「株主価値」などになります。

M&Aでは評価額どおりの買収額になるわけではありませんが、事前に評価額を算定しておくことで、「M&Aでどの方法を選ぶべきか?」と、選択肢になってくれます。

【関連】事業譲渡と株式譲渡の違いを解説!税務面などメリット・デメリットを徹底比較!

2. 事業譲渡の税務仕訳と会計処理

事業譲渡と税務仕訳

事業譲渡に限らず、会計処理は一般的に「企業会計原則」にのっとって行われます。簿記で仕訳けていくためにも、とっても大事な原則です。ここでは企業会計原則と負債について解説していきましょう。
 

事業譲渡の際に使用される企業会計原則とは?

企業会計原則とは、企業での会計処理における指針のことをいいます。事業譲渡の会計処理にも、この企業会計原則が指針として使われます。

なぜ「法律」ではなく「指針」としているのでしょう?それは、法律として日本国内どの業界も同じ会計処理の方法でまとめてしまうと、処理がとても難しくなってしまうからです。

さらに、会社ごとの会計処理担当者の判断基準に任せてしまうと、様々な会計処理の基準ができてしまいます。そこで、企業会計原則が指針されているのです。

企業会計原則は、原則法律での決まり事ではないために、法的拘束力自体はありません。しかし、会社法の公正妥当として認められているため、実際には法的拘束力があると考えられています。

では、企業会計原則について解説していきましょう。

企業会計原則の一般原則

企業会計原則には、損益計算書原則と貸借対照表原則、そして一般原則から成り立っています。一般原則とは、損益計算書と貸借対照表の作成や、会計処理を行う上で守るべきことです。基盤となる、一般原則について取り上げていきます。

①真実性の原則

真実性の原則とは、「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。」とされています。一番初めに書かれているだけあって、もっとも大事な部分です。

そのままの意味で捉えると、「真実を報告せよ」ということになります。当然のことのように思えますが、会計処理は、担当者が変われば数字が変わる可能性が出てきまます。

また、会計担当者の主観的な判断がなされる要素が多いため、揺らぎやすく、何が真実なのか一概に判断できないものなのです。

そこで、一般的に「真実性の原則」では、「真実性の原則以外の一般原則と、損益計算書原則と貸借対照表原則を守ることで、真実であると見なす」と考えられています。他の原則を守ることが、真実性の原則も守ることになる、ということです。

この考え方は「相対的真実」といいます。相対的真実とは、「企業会計原則を守った会計処理であれば、真実と見なされる」ということです。会計処理とは担当者によって異なる答えがありますが、きちんと本質を捉えた会計処理であれば、認められます。

②正規の簿記の原則

正規の簿記の原則とは、「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」とされています。

当然のことですが、「正確な会計帳簿を作成せよ」ということです。その正確な会計帳簿に従って、財務諸表も作ることにつながります。つまり、この正規の簿記の原則では、二つのものを正確に作りなさい、といっていることになります。

この「正規の簿記の原則」とは、具体的に「網羅性・立証性・秩序性」の3つの要素を満たしている必要がある、といわれています。

  • 網羅性:全ての経済活動が記録されている簿記であること
  • 立証性:立証可能な資料に基づいた簿記であること
  • 秩序性:継続的で組織的に記録されている簿記であること

正規の簿記の原則には、これら簿記の記録から財務諸表を作成する方法である、誘導法である点も含まれます。

これらの要素を満たせる簿記が「複式簿記」です。必ずしも、複式簿記である必要はないのですが、複式簿記以外に要素を満たしている方法がないために、おのずと複式簿記で仕訳けることになります。

③資本利益区別の原則

「資本取引と損益取引の区別」ともいいます。資本利益区別の原則では「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」とあります。

これは、資本取引と損益取引の両者の間で「明瞭に区別せよ」という決まりです。資本取引とは、直接資本を変動させる取引のことをいいます。例えば、株式の発行や増資、減資などが挙げられます。一方の損益取引とは、商品の販売やサービスの提供で収益を上げることや、費用が発生する取引のことです。

企業において利益を上げることは大事です。しかし、資本取引による増減というのは、企業の営業活動とは関係のない事項になります。

資本取引と損益取引を区別していないとどうでしょう?いくらの資本を元にして、どれほど収益を上げたのかもしくは損したのかが、企業の経営成績が分からなくなってしまいます。

また、利益で得た利益余剰金については、株主に分配しても問題ありませんが、資本余剰金は企業の資本として必要な存在なので、外に流出させてはいけません。会計処理で資本取引と損益取引を区別するのには、こういった理由があります。

④明瞭性の原則

明瞭性の原則とは、「企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。」とされています。

債権者や株主などの利害関係者に対して、財務諸表を「誤解を与えぬよう明瞭に伝えよ」ということです。もしも、企業の財政状態や経営成績が分かりづらい「明瞭ではない」状態だったらどうでしょう?企業と利害関係者の間で誤解を招きますし、認識にズレが生じます。

具体的に何を以て「明瞭性」と呼ぶのかというと、財務諸表である「貸借対照表」と「損益計算書」を簡潔に表示していること、さらに「個別注記表」や、「附属明細表」を作成する方法があります。

はじめに簡潔に説明し、後からさらに詳しい説明をすることで、明瞭性の原則が成り立つと考えられます。

⑤継続性の原則

継続性の原則では、「企業会計は、その処理の原則および手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」とされています。

これは「会計処理の方法をその都度変更せずに、毎期継続して同じ方法を継続せよ」ということです。さらに詳しくいうと、「財務諸表の期間比較性を確保すること」が関わっています。

もし、毎期ごとに会計処理の方法を変更していたらどうでしょう?利益の計上を「今回は多めに計上すること」も自由になり、統一性がなくなってしまいます。また、意図的な会計処理の操作も可能になります。

ただし、「会計処理の方法を変更した方が、正しく企業の経営状態を報告できる」といった、正当な理由がある場合、変更が認められています。

⑥保守主義の原則

保守主義の原則では「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。」とされています。

これは、「企業の将来の発展に備えるための原則」と考えられています。別の言い方をすれば、企業の力をキープする会計処理も認められている、ということです。

もし、「収益が多めで、費用が控えめだった」という会計処理だとどうでしょう?報告する税も多くなりますし、株主へ配当する配当金も多くせざるを得なくなります。

つまり、企業にとって不利な状態を招くのを、防ぐために設けられた原則だと考えられます。具体的には、固定資産を取得したときに発生する、減価償却に対する計算方法があります。

計算方法は、定額法と定率法と選べますが、定率法だと初年度が最も費用が高くなるものの徐々に少なくなっていきます。長い期間で見れば、収益は遅く少ないがらも、費用は早く多めに計上されるます。保守主義の原則にならっていることが分かります。

もちろん、定率法を選んだことで赤字になるのなら、無理せず定額法を選んだほうがいいでしょう。

ただし、保守主義の原則は「企業の将来のためにも保守主義を認めていますよ」としつつも、意図的に収益を下げたり隠したりするのを認める原則ではありません。過度の保守主義の会計処理も、禁止されているので気を付けましょう。

⑦単一性の原則

単一性の原則では、次のように決められています。

「株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

これは「財務諸表は一つだけしか認めません」ということです。決して、複数の財務諸表を作ってはいけませんよ、ということではなく、提出先ごとに異なる形式の財務諸表は作ってもいいが、情報と事実が歪められた財務諸表の作成はいけません、ということです。

財務諸表の提出先として挙げられるのが、税務申告や株主総会提出などです。それぞれ求められる内容が異なります。しかし、だからといって「情報と事実が歪められた」財務諸表を作っては、単一性の原則に反しするのでしてはいけません。

事業譲渡の際の譲渡資産と負債の扱い

事業譲渡では、買い手側企業と売り手側企業の間で、引き継ぐ資産と負債を細かく指定できます。

譲渡資産の対象とは?

経営権のみを引き渡す方法では、株式譲渡があります。対して、事業譲渡では店舗や工場などの建物、土地、などの有形固定資産に限らず、売掛金、在庫などの流動資産も対象になります。

さらに、営業権(のれん)や、特許や商標などの知的資産、職人の持つ技能や知識などの人的資産などの人材や、目には見えないノウハウなどの無形資産も、事業譲渡の対象となります。

このとき、事業譲渡ではお互い企業同士で協議することで、買い手側企業は自分達にとって必要な資産・負債を選べます。事業譲渡は資産や負債を対象とする自由はありますが、その反面手続きが多くなり、複雑になります。

ちなみに、事業譲渡では、売り手側企業は同一市町村内、さらに隣接する市町村でも20年間は同一営業を再開できないと決められています。従業員も雇用契約を改めて交渉する必要もあります。

事業譲渡における負債の扱いとは?

事業譲渡では、買い手側企業は負債の権利義務に関して、全般的に承継する必要はありません。また、債務の範囲を指定することで、偶発債務(将来確定債務になる恐れがある債務)の負担義務も、同様にありません。

ただ負債による責任は、会社法によって両社で連帯責任を負うことになっています。買い手側企業としては、やはり「事業譲渡で商号は引き継ぎたいが、負担は負いたくない…」と考えると思います。

この場合、事業譲渡では会社法22条2項にて登記することで、買い手側企業が債務を負わなくて良い「免責の登記」があります。しかし実際のところ、負債の免責はトラブルも多いようです。負債と商号の引継ぎは、入念に検討しましょう。

このように、事業譲渡では資産や負債、従業員など一緒くたに譲渡するわけではなく、別々に指定できます。

税務リスクも負う義務がない

税務リスクとは、企業への税務調査が行われた際に、調査官から認められず追徴課税される可能性のことをいいます。

税務リスクには、例えば企業が全く認識していなかった部分や、想定していなかった部分を調査官から指摘され、きちんと説明できずに従うしかなかった、など様々な形があります。

事業譲渡での税務リスクは、資産・負債と同様に原則として引き継ぐ義務はありません。対して、M&Aの中でも株式譲渡だと税務リスクも引き継がなくてはいけません。

事業譲渡では、他のM&Aと比較すれば、複雑で面倒と思われる要素もありますが、資産・負債や税務リスクも選べることから、事前に価値やリスクの調査をする必要性は比較的低くなるメリットもあります。

共通支配下の会計処理では?

「共通支配下の取引」における事業譲渡ではどうでしょう?

共通支配下の取引とは、同一株主の支配下での会社同士の企業結合(合併・事業譲渡など)のことをいいます。最終的に同じ株主の下で支配されます。共通支配下の取引で分かりやすい例は、親会社と子会社、子会社同士の合併があります。

共通支配下の取引の場合、会計処理はどうなるのでしょうか?共通支配下の取引では、別々の事業同士が事業譲渡をするのとは少し異なります。共通支配下だと、事業譲渡は100%グループ内での事業の取引・移動と見なされます。

資産・負債は、事業譲渡前(移転前)に個別財務諸表に簿価で会計処理が行われ、連結財務諸表では内部取引として相殺消去されます。のれんも、買取側となった企業の方で、償却期間を以て処理します。

同じ事業譲渡とはいえ、共通支配下だと異なった認識になるのだと覚えておくといいでしょう。

【関連】事業譲渡の登記は必要?不要?免責登記のやり方・注意点も解説!

3. 事業譲渡の際にのれん代が発生するケース

のれん

ここからは、事業譲渡における「のれん」について解説していきましょう。実際に事業譲渡でのれん代が発生するケースとは、どんな場合でしょう?

のれんは、一見「高くついた」と喜ばしいもののように思えますが、多額ののれんの計上が必要です。事業譲渡をする上では知っておきたいところです。詳しく見ていきましょう。

のれん代とは?

事業譲渡におけるのれんとは、「買い手側企業がM&Aで売り手側企業に支払った買収額のうち、売り手側企業の純資産を上回った差額」のことをいいます。

例えば、売り手側企業の純資産が100億円に対し、事業譲渡による買収額が上乗せされて120億円であれば、のれん代は差額の20億円ということになります。高値がつくというのは、こういうことです。

なぜのれんが発生するのかというと、事業譲渡におけるのれんとは、いわば「見えない資産価値」ともいえるからです。

のれんには事業譲渡の買収後に生じる効果、その企業の知識やノウハウ、ブランド力、企業の立地条件など、見ただけでは分かりづらい資産価値を表しています。

事業譲渡では、形の見える資産、見えない資産も譲渡対象となりますが、このような見えない資産価値に対しても、のれんでお金にします。将来にかける期待値が大きいほど、のれん代が発生し多額になるといえます。

なお、事業譲渡で使われる勘定科目では、のれんは無形固定資産として仕訳・記帳され、消費税、減価償却、減損処理などの対象になります。減価償却については、次で解説しましょう。

のれん償却期間について

通常、会計処理では、減価償却は建物などの固定資産に充てられるものです。しかし、前述したようにのれんは、会計処理上、減価償却の対象となります。のれんも、固定資産の減価償却と同じで、年々資産価値が減ってゆくという考え方です。

のれんの償却期間を定めるのは難しい問題ですが、日本会計基準だと、のれんの償却期間は20年を上限に均等に計上していくよう、定められています。

減価償却期間を10年、5年と決めている企業もあります。償却期間を定める基準として、「売却と利用によって生じる回収額が、等しくなると想定される期間」などのように、決めるといいでしょう。

ちなみに、のれんの減価償却は日本会計基準の会計処理における考え方です。国際会計基準(IFRS)だと一部例外を除いて、適用されません。

日本会計基準だと、のれんの減価償却をすると費用が発生するため、利益から差し引かれることを意味します。そのため、近年では会計処理に国際基準(IFRS)を選択する企業も出てきています。

【関連】事業譲渡・事業売却の相談先15選!弁護士?会計士?M&A仲介会社?

4. 事業譲渡の際に負ののれんが発生するケース

負ののれん

事業譲渡の際に生まれるのれんについては分かりました。一方で、まれなケースですが事業譲渡では「負ののれん」が生まれる場合があります。どうすればいいのでしょうか?

「負ののれん」とは?

負ののれんとは、本来プラスであるべきのれんが、マイナスになったものをいいます。事業譲渡で買収したものの、純資産よりも肝心の買収額が低かった場合、その差額のことを、「負ののれん」と呼びます。

負ののれんが発生する理由はいくつかありますが、「簿外債務がある」「損害賠償請求のリスクを抱えている」などが挙げられます。

負ののれんの償却について

会計処理では、のれんでは20年を償却期間の上限として、償却処理していきます。一方の負ののれんでは、会計処理では償却するのではなく、発生した事業年度に特別利益として仕訳、計上されます。

ちなみに、このような負ののれんの会計処理は2010年からで、以前は正ののれんと同じように仕訳、償却処理されていました。負ののれんでは、正ののれんと仕訳が異なります。

【関連】負ののれんとは?分かりやすく解説!仕訳、税務処理はどうなるの?

5. 事業譲渡の際の税務上ののれん代

税務上ののれん代

ここまで、会計処理上ののれんについて解説してきました。しかしのれんは、税務処理では異なる扱いになり、あくまでも会計上の考えであって、税務上では存在しない考えです。そんな税務上ののれんについて、解説していきましょう。

会計処理と税務処理の違いは?

会計処理は、企業会計原則などの会計処理の決まりごとによって導きだされたもので、使われたお金は費用として計上されます。儲けは「利益」とされます。企業の儲けを算定することで、株主など利害関係者に向けて経営状態などを報告するためのものです。

だからといって誤った情報や、都合のいい情報だけを記載して良いわけではなく、あくまでも考え方の違いということです。くれぐれも考え方を履き違えないようにしましょう。

一方の税務上(税務処理)は、税金を納めるために存在するものです。恣意的な考えは排除されます。当然、正しく公平に計算することが求められます。税務上の儲けでは「所得金額」とされます。利益操作を防ぐために、期間内に発生した所得金額しか認められません。

また、会計処理と税務処理では、費用認識が異なるため、同じ企業内の処理でも数字に違いが出ることがあります。

事業譲渡の際ののれんの税効果とは?

前述でもお伝えしたように、会計処理と税務処理では、費用認識が異なるため、数字に違いが出ることがあります。そこで、事業譲渡の際に使われるのが税効果(税効果会計)です。

税効果とは、会計処理で算定された利益と、税務上の処理で算定された税金との、会計処理と税務上との資産・負債との一時的なズレを調整するための手続きのことです。

のれんと、負ののれんの処理では「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」の第72項にて、税効果は使わない旨が記載されています。

確かに通常ですと、のれんの処理に税効果は使わないのですが、中にはのれんに税効果を適用させるケースもあります。それが、今回のテーマである「事業譲渡で買収したとき」です。

このとき、税務上のれんでは「資産調整勘定」、負ののれんは「差額負債調整勘定」として仕訳されます。

資産調整勘定

正ののれんでは、この資産調整勘定に仕訳、計上されることで、5年間の償却期間を以て償却していきます。

前述したように、この資産調整勘定が発生する処理に限り、のれんに対して税効果が適用されます。実際に、税効果を適用させた場合に発生する資産(繰延税金資産)も計上されます。

差額負債調整勘定

負ののれんでは、「差額負債調整勘定」に仕訳、計上されることで、正ののれんと同様に5年間の償却期間を以て償却していきます。

ただし、平成29年度税制改正によって、2017年4月1日以後に取得した営業権の減価償却費の計算については、月割計算することになりました。資産調整勘定や差額負債調整勘定が発生した月から数えて、60か月間償却することになります。

事業譲渡でのれんを引き継いだ際は、会計処理と税務上の処理で扱いが異なるので、注意が必要です。

【関連】事業譲渡・事業売却でかかる税金の種類や相場!節税方法も解説!

6. まとめ

事業譲渡まとめ

事業譲渡の際の税務仕訳(会計処理)と、のれんの税効果・償却期間などをまとめて紹介しました。事業譲渡では、会計処理と税務上の処理では計上されるお金が異なりますし、のれんの償却期間も異なってきます。消費税が発生することも考慮しなくてはいけません。

また、事業譲渡ではのれんの償却によって、費用が増えるため注意も必要です。今回ご紹介した内容が、事業譲渡をする上で、参考になると幸いです。

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