2022年06月06日更新
事業譲渡・事業売却の戦略策定方法!目的や注意点も解説【事例あり】
事業譲渡・事業売却の目的を達成してメリットを最大限得るには、戦略の策定が欠かせません。戦略策定は手間と時間がかかりますが、大きな効果も得られます。本記事では事業譲渡・事業売却の戦略策定方法や手続きの流れ、事業譲渡・事業売却の事例などについて解説します。
目次
1. 事業譲渡・事業売却の戦略策定とは?
事業譲渡・事業売却の戦略策定とは、事業譲渡・事業売却の目的と方向性を定め、求める結果と現状のギャップを埋めるための計画です。
自社や競合、業界の現状を分析し、事業譲渡・事業売却をする目的を定めます。その後、自社のメリットを最大化できて、実現可能性が高くなるような事業譲渡・事業売却の戦略を絞り込んでいくのです。
本記事では、事業譲渡・事業売却の戦略を策定する流れや、実際に企業が戦略的に事業譲渡・事業売却を実行している事例、売買価格をアップさせる方法をご紹介します。
まずは、戦略を策定する目的から明確にしましょう。
2. 事業譲渡・事業売却の戦略を策定する目的
事業譲渡・事業売却の戦略を決める目的は、得られるメリットを最大化するためです。
他のM&A手法と比べて、事業譲渡・事業売却の戦略策定には手間と時間がかかるのが普通です。ですから、戦略の策定をしておいて、手間と時間を減らして最大限までメリットを得られるようになるのを目的とします。
事業譲渡・事業売却はメリットがある一方、的確に行わないとリスクもあります。戦略が失敗してしまった場合、事業譲渡・事業売却成立までに長く時間がかかってしまったり、相場より安い金額での売買になってしまったりするかもしれません。
そのため戦略を策定する際は、税理士、その他M&Aの専門家に相談してリスクを抑えて事業譲渡・事業売却の恩恵を得られるようにしてください。
きちんとした戦略を策定すれば譲渡資金を十分に得られる、事業譲渡・事業売却にかかる手間や時間を短縮できる、経営陣や従業員の不安や不満を減らせるなどのメリットが得られるはずです。
事業譲渡・事業売却のメリット
事業譲渡・事業売却をするにあたり、そもそも事業譲渡にはどのようなメリットがあるのかを、M&Aで多く用いられる株式譲渡と比較しながら挙げます。
まず事業譲渡では、任意の事業だけの売却が可能です。会社そのものを売却する株式譲渡とは、この点に大きな違いがあります。しかし、事業譲渡の場合は基本的に株主総会を開催して承認を得なければならない点や、任意の事業だけを売却しなければならないので、手間と時間が株式譲渡よりも多くかかるのが一般的です。
それでも会社そのものは残せるため、事業譲渡で得られる対価(現金)によって経営の安定化や設備投資などに使用できるメリットを享受できます。
ただし、事業譲渡によって対価を得た場合には法人税や消費税が発生しますので、売却価格が高くなるだけ納税額も高くなってしまいます。そのため、節税対策はしっかりと行うようにしましょう。
なお、買い手側の会社は事業とともに従業員も買収した場合、その従業員と雇用契約を改めて締結しなければなりませんので、さらに手続きと手間はかかりますし、買収によって獲得した資産に消費税やケースによって不動産取得税、登録免許税も発生しますので注意が必要です。
事業譲渡・事業売却の現状と課題
事業譲渡・事業売却は、企業が抱える経営課題の解決を目的としており、近年の日本においても活発に行われています。特に中小企業では、中小企業庁が推進しているのも相まって、事業承継問題の解決策として事業譲渡・事業売却が活発に行われています。事業再編の手段として、事業譲渡や事業売却は利用されているのです。
しかし、事業譲渡・事業売却には課題もあります。その課題のなかでも最も重要なのが、そのハードルの高さです。事業譲渡・事業売却をしようと思っても、なかなか手を付けられずにいる経営者が大勢います。事業譲渡・事業売却には、専門的な知識や膨大な手続きが必要になるケースも多く、戦略的に実行しないと、失敗に終わってしまうケースも少なくありません。
3. 事業譲渡・事業売却の戦略策定方法
事業譲渡・事業売却戦略の策定にはステップがあります。
- 自社の分析を行う
- 事業譲渡・事業売却の目的を明確にする
- 市場調査を行う
- 事業譲渡・事業売却の戦略オプション案をまとめる
- 財務や会計を踏まえて点検する
ここからはそれぞれのステップを解説しますので、ぜひ戦略作りに役立ててください。
①自社の分析を行う
事業譲渡・事業売却の戦略を決める際には、まず自社の分析を行います。
なぜなら、自社の状態を正しく把握しなければ、事業譲渡をする目的が明確にならないからです。目的をはっきりさせておかなくては、譲渡先を見つけられても目的が達成できませんし、最適な譲渡先を見つけるのも難しいでしょう。
例えば、自社商品・サービスの売り上げ、シェアなどの現状把握から、人材、営業力、技術力、ブランド力などさまざまな項目を設けて強み・弱みを洗い出してみてください。
こうして算出した自社の企業価値や売却予定の企業価値を基に、本当に事業譲渡が必要な状態であるのかを考えていきます。本当に必要であれば、なぜ必要なのかの目的を考えてみましょう。
②事業譲渡・事業売却の目的を明確にする
先ほどお話したように自社の洗い出しが済めば、目的を明確にする必要があります。
目的によって戦略も変わってきますから、代表的な目的の参考を例として挙げるので検討してください。
買い手側の目的
買い手企業は事業譲渡によってさまざまなメリットが得られます。
例えば、同業種の事業を取得して事業規模や販売網の拡大を狙う動きが可能です。海外の事業を取得すれば、それをきっかけに海外進出もできるでしょう。
他にも、他業種の事業を取得して新規事業の参入もできます。優秀な人材や高度な技術を手に入れて人材シナジー、技術シナジーなどのシナジー効果が得られます。
買い手は、このような目的をもって動くケースが多いです。
売り手側の目的
売り手側にも事業譲渡・事業売却によって多くのメリットがあります。
例えば、事業譲渡によって残ったコア事業や成長事業に集中投資が可能です。事業譲渡で得た売却益による資金調達もできるでしょう。
よくある従業員のリストラは経営者にとって苦しい選択ですが、事業譲渡によって従業員の雇用先を確保できる可能性もあります。他にも、後継者問題を解決するために事業承継の手段として活用するのも可能です。
このように、売り手側は抱えている経営課題を解決するためを目的とするケースが多いです。
特殊な目的
特殊な目的をもって事業譲渡を検討している場合もあります。
例えば、事業譲渡・事業売却であれば企業再生やグループ企業内の組織再編を検討している場合などです。不採算事業を切り離して事業譲渡して、経営を立て直すきっかけになります。
事業譲受側の企業は、事業を立て直せれば資金面や時間にゆとりを得られるのです。
M&Aの繰り返しでグループ企業が肥大化した場合は、子会社間で事業譲渡したり子会社に事業を親会社に事業譲渡したりしてグループ企業を整理できるでしょう。
ここまでお話したとおり、目的に応じて選ぶべき事業譲渡のパートナーは変わってきますので、まずは事業譲渡で目指すべきゴールの設定を考えてみてください。
③市場調査を行う
事業譲渡・事業売却を検討する際は、自社だけでなく他社や売却する事業の業界自体を調査する必要があります。例えば、譲渡予定の事業自体に買い手需要があるのかを業界の成長性や顧客のニーズなどから分析してみてください。競合のシェアや特徴、自社のポジションなどを見定めるのも良いでしょう。
市場調査を行って、事前に事業譲渡・事業売却の成功、失敗リスクを想定できます。気付いていなかったメリットや戦略方針などが見えてくる事柄もありますので、積極的にリサーチは行うべきです。
④事業譲渡・事業売却の戦略オプション案をまとめる
事業譲渡・事業売却の目的が定まり、自社と業界の現状分析が済んだら、戦略オプション案をまとめます。
戦略オプションとは、M&Aを行う際に起こり得るあらゆる可能性に備えて、選択肢として戦略のパターンをいくつか用意しておく考え方です。複数用意して、シナジー効果やメリットを得られる可能性を高めていきましょう。
そして、いくつかの戦略を用意したら中心となる戦略を基に進めていきます。M&Aでは買い手側と売り手側でメリット・デメリットに違いがあるのです。例えば、売り手はなるべく高く事業を売却したいと考え、買い手はなるべく安く事業を取得したいと考えます。
そうすると、売り手と買い手のメリット・デメリットは対立が多くなり難航してしまうでしょう。買い手が事業を手に入れたいと考える目的や、事業を取得する条件などによっても売り手の対応は変わります。
このように、さまざまな状況に対応するために戦略オプション案をまとめておくと良いです。
⑤財務や会計を踏まえて点検する
事業譲渡・事業売却する側は、売却益に応じて法人税が譲受側には消費税がかかります。
他にも、不動産取得税や登録免許税が発生する場合もあるでしょう。
こうした税金の支払いは、譲渡企業、譲受企業両社にとって大きな出費となります。ですから、事業譲渡・事業売却の交渉を円滑に進めるためにも、あらかじめ税金がどのくらいになるか把握しておく必要があるでしょう。
税務や法務などに不安を感じるのであれば、専門家に依頼するのも検討してください。
ここまで戦略の策定方法をまとめました。
ある程度の戦略がまとまれば、事業譲渡に移りたいと考える人も多いでしょう。しかし、現在の状態でいきなり事業譲渡に動き出しても納得のできる利益が得られるとは限りません。
そこで、次の項目で譲渡価格を最大限に引き出すための方法を解説します。
4. 事業譲渡・事業売却までに取引価値を高める方法
「事業譲渡をするならなるべく高い価格で売却したい」と考えている経営者は多いでしょう。
事業譲渡・事業売却において売買価格をアップさせる方法は、以下のとおりです。
- さまざまな買い手と価格について話し合う
- 会社の収益性が高いときに売却を行う
- 売却対象の事業に最後まで力を入れる
- 優秀なM&Aアドバイザーに相談する
売却価格を上げるため、早めに戦略を立てておきましょう。
①さまざまな買い手と価格について話し合う
ある程度の相場はあるものの、買い手の判断によって売買価格は大きく異なります。
買い手が売り手を評価するとき、チェックするポイントは以下のとおりです。
- 自分の会社とのシナジー効果が見込めるか
- 事業に将来性はあるか
- 優秀な人材はいるか
- 価値の高い設備などを持っているか
買い手の重視するポイントは目的によってさまざまですので、多くの買い手に価格の判断をしてもらうのが大切です。例えば、買い手Aから500万円だといわれた事業も、別の買い手から1,000万円の価値があると評価されるかもしれません。
可能であれば複数の買い手と話し合い、提示価格が最も高い買い手を有力候補とするのが良いでしょう。
②会社の収益性が高いときに売却を行う
買い手が最も重要視するのは、会社や対象事業の収益性です。
収益も出ておらず、改善も見込めない事業をボランティアで買ってくれる企業はほとんどありません。特に、多くのお金が動くM&Aにおいて買い手はなるべく失敗したくないと考えているので、収益性が低い場合は具体的な話し合いに応じてもらえない恐れもあります。
事業譲渡を円滑に進めるため、早めに経営改善を行い会社の価値をアップさせるのが大切です。事業譲渡の具体的な話し合いに入る前に、債務の解消、コスト削減などを行うと良いでしょう。
現時点で収益をアップさせるのが難しい場合、会社の将来性をアピールし事業の魅力を伝えてみてください。将来性のある事業だと買い手に判断されれば、売買価格の大幅アップも見込めます。
③売却対象の事業に最後まで力を入れる
社内の話し合いで事業の売却を決めた後、対象の事業をおざなりにする企業も少なくありません。しかし、売却対象となる事業で手を抜いてしまうと事業の収益性が大きく下がり売買価格も低下してしまいます。
売却価格が決まる前に事業の収益性が下がっている状態だと「将来性がない」「業績が悪化している」と判断されて買い手が見つからないのも十分に考えられます。
多額の投資や新たな人材投入を行う必要はありませんが、収益性をキープするために売却を決めた後でも力を抜かず事業を継続させましょう。
④事業譲渡・事業売却以外のM&A手法も検討する
事業再編を目的とする場合、事業譲渡や事業売却以外にもさまざまなM&A手法が存在ます。例えば、吸収合併、株式移転などの手法があり、それぞれのM&A手法にはそれぞれの特徴があります。そのため、自社が置かれた状況や事業再編の条件に合わせて柔軟にM&Aの手法を考えるのが重要です。
⑤優秀なM&Aアドバイザーに相談する
売買価格を少しでもアップさせるために有効なのは、M&Aの専門家からのアドバイスです。
適切なタイミングや買い手の選び方についてアドバイスをもらえれば、会社にとってベストな選択を行えます。小規模の案件であっても、優秀なアドバイザーに相談すれば売買価格の大幅アップを狙うのも可能です。
アドバイザーによっては買取価格が少しでもアップするよう、経営改善のアドバイスも行ってくれます。買い手から注目されやすい、魅力的な会社作りを行い事業の価値を高めましょう。
もし、アドバイザーがどこにいるかわからない、どこに相談するべきか悩んでいるケースでは、M&A総合研究所へご相談ください。
M&A総合研究所では、知識と経験が豊富な専門家が現在の企業価値を無料で算定し、アドバイスとサポートをいたします。ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
5. 事業譲渡・事業売却における戦略策定の注意点
事業譲渡・事業売却の戦略策定における注意点は、「急ぎすぎて焦らない」です。
戦略を策定するのはとても重要ですが、焦りが出てしまうと正しい判断はできなくなります。
例えば目的は明確になり、これから買い手企業を探したいと考えているとしましょう。たしかに、このままいけば買い手企業を見つけて売るだけに見えるかもしれません。
しかし、税金の支払いや手続きのリスクには注目できているでしょうか。
事業譲渡はただ手続きをすれば良いものではなく、節税対策から手続きにおけるトラブルを未然に防ぐなど、さまざまな要素を検討して戦略に盛り込む必要があります。
焦らずじっくりと策定できれば、今まで気付いていなかった情報や発想が得られる場合もあるでしょう。本当に事業譲渡をすべきか、目的を明確化してよりどこに頼るべきかなど細かく検討してください。繰り返しになりますが、焦りは失敗やトラブルを引き起こしてしまいます。
できる限り専門家に依頼するなど、丁寧に策定するよう心がけてください。このように、焦らず決めるためには流れを知っておくのも必要です。わかりやすく解説するので、落ち着いて確認してください。
6. 事業譲渡・事業売却を戦略的に行う流れ
戦略策定は、法令的に必ず行う必要があるものではありませんが、納得できる事業譲渡をしたい場合は必須です。
ですから、事業譲渡・事業売却に関する法令で定められた手続きを知って、策定しやすい環境を整えましょう。
- 事業譲渡・事業売却の戦略策定
- 事業譲渡先の選定
- 事業譲渡先への提案
- 取締役会で検討
- 基本合意書の締結
- 買い手側のデューデリジェンス
- 事業譲渡契約書の締結
- 株主への説明
- 事業譲渡契約の完了
これら戦略策定を含めた事業譲渡・事業売却の流れを解説します。
①事業譲渡・事業売却の戦略策定
事業譲渡・事業売却を検討し始めたら、まずは戦略を策定します。自社の現状を把握し、業界や競合の分析をしましょう。
メリット・デメリットを見極め、他の可能性も洗い出したうえで、事業譲渡が戦略的に最も有効だと判断されれば具体的な手続きに進みます。
②事業譲渡先の選定
次に、譲渡先を選び出します。社内にM&Aを行う部署があれば別ですが、基本的にはM&A仲介会社などの専門家に依頼するのが一般的でしょう。なぜなら、自社の価値を正しく把握し、最も効果的な買い手候補を見つけるのは簡単ではないからです。
専門家であれば、独自のプラットフォームや情報網を活用してさまざまな分野から買い手を紹介してもらえます。これにより、目的を達成しやすい買い手を見つけるのも可能です。
相手企業の現状や事情、これまでのM&Aの実績などを総合的に判断しながら、候補を絞り込んでいきましょう。
③事業譲渡先への提案
譲渡先を選定したら、交渉を始めます。
交渉の際は売却額も重要ですが、事業譲渡後も良い関係を築いていけそうな相手なのか、経営者同士の理念や相性、従業員も譲渡する場合は雇用や待遇をしっかり守ってくれるかなど、さまざまな面から交渉を進めるのが重要です。
売買価格アップのために今までの実績や従業員の優秀さなど、会社にとってプラスになるケースはどんどんアピールしましょう。
④取締役会で検討
当事会社は、交渉の内容を基に取締役会で承認を得る必要があります。取締役会で案件を検討し承認が得られれば、契約の手続きに入っていきます。
⑤基本合意書の締結
両社が基本的な内容に合意し、それぞれ社内で承認を得られれば、基本合意契約を締結して契約の手続きを進めていきます。
基本合意書では、用いられる手法や対象事業、金額、支払いタイミングなどを記載するのです。デューデリジェンスに関する合意や秘密保持契約なども契約しましょう。
⑥買い手側のデューデリジェンス
譲受企業は、譲渡企業についてさまざまな面から企業調査を行います。デューデリジェンスは税理士などの専門家とともに行われるのが一般的です。
専門家であれば、リスクまで丁寧に調査できます。これにより、譲渡後に知らなかったなどのトラブルを防げますので、できる限り依頼するようにしてください。
なお、売り手企業が事前に公表していない重要な要素が出てくるケースもあります。デューデリジェンスによって合意内容に変更が必要になった場合は、交渉しながら内容を修正していきましょう。
⑦事業譲渡契約書の締結
デューデリジェンスにより契約を細かいところまで詰めたら、取締役会で承認を得たうえで事業譲渡契約書を締結します。
事業譲渡契約書には、法的拘束力がある事項だけでなく、法的拘束力はないが両社にとって重要な事項を契約内容として記載するのです。
譲渡企業が虚偽の情報を伝えていたり重要な情報を隠していたりすると、譲受企業に損害が出る可能性があります。裁判など大きな問題に発展する可能性もありますので、丁寧に進めましょう。
⑧株主への説明
事業譲渡契約が締結されたら、株主から承認を得る必要があります。
そのため、官報広告や電子公告で告知したり、株主に個別通知を送ったりして株主総会を開く準備をします。このとき、反対株主には株式買取請求権があるのも伝えなければなりません。
株主総会の特別決議は、事業譲渡の効力発生日前日までに行いましょう。
⑨事業譲渡契約の完了
効力発生日までに全ての手続きが完了していれば、事業譲渡契約は完了です。その後は速やかに実際の事業譲渡を進めます。譲渡後も引き継ぎなどがあるので、すぐに終わるわけではありません。
丁寧に事業を引き継ぎし、今後の経営が問題なくできる状態になるまでは譲渡先に協力しましょう。
ここまで流れをお話してきましたが、不明な点や不安なところもあるかと思います。自信をもって進められるほどしっかりと考えなくては、事業譲渡が失敗してしまう可能性は捨てきれません。
ですから、M&Aの専門家への相談も検討してください。次の項目では、M&Aの専門家へ依頼して得られるメリットを解説しますので、確認しておきましょう。
7. 事業譲渡・事業売却の戦略をM&Aの専門家に相談するメリット
事業譲渡・事業売却を戦略的に進めて目的を達成するには、専門家の協力が欠かせません。なぜなら、専門知識がなければ予測できないトラブルもあるからです。ここで、M&Aコンサルタントに依頼して得られるメリットを確認しましょう。
- 幅広いネットワークで買い手を見つけられる
- 誠実さによって交渉を有利に進められる
- スピーディーに事業譲渡を完了できる
それぞれわかりやすく解説します。
①幅広いネットワークで買い手を見つけられる
M&Aコンサルタントが所属している場所であれば、幅広いネットワークで買い手を見つけられます。
なぜなら、独自のプラットフォームや情報網を持つので、多くの企業とコンタクトを取っているからです。海外企業まで含めて紹介できるコンサルタントに依頼すれば、海外進出を狙うのも可能です。戦略で策定した目的に合わせた買い手を見つけるのは簡単ではありません。
ですから、幅広いネットワークを持つコンサルタントに依頼して適切な買い手へと売却ができるようにするのです。
自身で買い手を見つけるのに時間がかかれば、それだけ事業譲渡も遅れてしまいます。スピーディーに進めたい人にしても、大きなメリットとなるでしょう。
②誠実さによって交渉を有利に進められる
M&Aコンサルタントは、専門家ですから誠実に交渉へと向かいます。そうすると、自社に有利な条件だけを押し付けてるのではなく、相手にもメリットがあるのを伝えてスムーズに交渉できるのです。
条件の交渉に失敗してしまうと、せっかく譲渡できても目的を達成できなかった可能性も十分にあり得ます。ですから、誠実に交渉してもらえるコンサルタントが力強い味方となるのです。自社のアピールを最大限にするためにも効果的です。
③スピーディーに事業譲渡を完了できる
M&Aコンサルタントであれば、スピーディーに事業譲渡を完了できます。
なぜなら、手続きから交渉、法務・税務に至るまで多くの知識を持っているため失敗が少ないからです。失敗が減るだけでも、やり直ししなくて済みますから時短できます。
それだけではありません。未然にトラブルを防ぎ、安全に進めるためにも知識は必要です。
ですから、急いでいる人ほどコンサルタントに頼るべきでしょう。報酬は必要となりますが、時間がかかって無駄な出費をしてしまうよりも有益です。
もし、M&Aコンサルタントはどこに依頼すべきなのかわからない場合、M&A仲介会社に相談するのもおすすめです。
M&A総合研究所は、中小・中堅規模のM&Aを主に取り扱う仲介会社です。知識と経験が豊富なアドバイザーがスムーズかつ安全に進められるよう、M&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
8. 事業譲渡・事業売却の戦略策定に役立つ事例10選
ここからは、事業譲渡・事業売却を戦略的に行っている事例を10選としてご紹介します。
- NTTグループ
- 東芝
- AKS
- サイバーエージェント
- ヤマノホールディングス
- ニチレイ
- ソフトバンクグループ
- 楽天
- ファウンダー
- Peing-質問箱
戦略を策定するときの参考にもなりますので、確認してみてください。
①NTTグループの事業譲渡戦略
2017年にNTTグループは、人材派遣事業などを行うパソナグループに6社の人材サービス会社を株式譲渡と事業譲渡しました。
これによりNTTグループは、人材派遣や業務委託、社員の教育などを切り離し、パソナグループのノウハウによって社員の働き方を効率化できます。
パソナグループはNTTグループに対してこれまで行ってきたサービス提供をさらに拡大できるほか、NTTグループのノウハウ獲得や営業範囲の拡大に期待できるでしょう。
②東芝の事業譲渡戦略
東芝はアメリカでのLNG(液化天然ガス)事業から撤退し、中国の大手ガス会社に売却するのを決定しました。東芝のLNG事業は1兆円の損失が出るともいわれていました。
今回の売却で東芝の損失は約930億円に抑えられ、従業員も大幅に削減してコスト削減を行い、資金をIoT分野などの成長分野に集中させる中期計画も発表しています。
③AKSの事業譲渡戦略
総合エンターテインメント事業を手がけるKeyHolderは、芸能プロダクションの経営などを行うAKSから、アイドルグループSKE48事業を承継する取引で合意しました。
KeyHolderはライブ・イベントスペースの開設・運営やテレビ番組制作事業、エンターテインメントコンテンツの企画・開発・制作事業などを展開しています。
AKSはKeyHolderとの接点を持って、SKE48事業を始めアイドルグループの運営・管理事業のさらなる発展が見込めるでしょう。
④サイバーエージェントの事業譲渡戦略
2016年にサイバーエージェントは、テレビ朝日との共同出資で設立したAbemaTVに、サイバーエージェントが運営していた映像配信事業であるAbemaFRESH!を事業譲渡しました。
サイバーエージェントはAbemaTVを会社の中核事業として、経営資源の多くをAbemaTVに投入しています。多額の赤字を出しながらも他の黒字事業で埋め合わせながら運営し、将来の収益化を目指していく狙いです。
⑤ヤマノホールディングスの事業譲渡戦略
美容事業・和装宝飾事業などを展開するヤマノホールディングスは、2017年RIZAPにスポーツ事業を事業譲渡しました。
ヤマノホールディングスは積極的なM&Aで事業規模を拡大してきましたが、不採算事業を切り離して既存事業、成長事業に集中投資するために事業譲渡を行ったのです。
しかし、同じくM&Aで会社を急拡大させてきたRIZAPは、M&Aによって取得してきた事業を育てられず大幅な赤字を計上しています。
⑥ニチレイの事業譲渡戦略
2009年、加工食品事業などを行うニチレイは、子会社のニチレイフーズが行っていたアセロラ飲料事業をサントリー食品に事業譲渡しています。
アセロラ飲料は需要のある商品ですが、飲料販売は販売網の広さが重要な事業であるため、ニチレイは事業譲渡を決定しました。
2015年にはJTも同じ理由から、桃の天然水などの飲料事業をサントリー食品に譲渡しています。サントリーは国内飲料市場のシェアでトップを目指していて、M&Aなどを活用してトップシェアのコカコーラを追いかけています。
⑦ソフトバンクグループの事業譲渡戦略
ソフトバンクグループは、一部の商標権や事業分野を子会社のソフトバンクに事業譲渡しました。
ソフトバンクグループは積極的なM&Aで成長してきましたが、最近では組織の事業再編を行い、子会社であるソフトバンクに資源を集中させ始めています。
2018年12月にソフトバンクが上場するなど、モバイル事業に力を入れていくでしょう。
⑧楽天の事業譲渡戦略
2018年、楽天はウェディング事業を行う楽天ウェディングを、グループ会社のオーネットに事業譲渡しました。
オーネットの結婚相手マッチング事業と楽天ウェディングの結婚式情報サービスが融合して事業シナジーが期待できます。
2018年12月に楽天はオーネットを投資ファンドに株式譲渡しました。楽天ウェディングがオーネットに事業譲渡されているので、高い企業価値で売却できています。
⑨ファウンダーの事業譲渡戦略
アフィリエイトサイトを運営していたファウンダー(旧:ユービジョン)は、資金調達のポータルサイト「資金調達プロ」を上場企業に6億2,000万円で事業譲渡しました。
ファウンダーでは、サイトの事業譲渡経験を基にWEBサービスやサイトに特化したコンサルティング事業とM&A仲介サービスを開始しています。サイトM&Aや個人M&Aなどの小規模M&Aは近年増加していて、マッチングサイトも増えているのです。
ファウンダーのように、サイトM&Aによって資金を得て、さらに収益性の高い事業に投資していく形は、今後日本でも増えていく傾向にあるといえるでしょう。
⑩Peing-質問箱の事業譲渡戦略
匿名質問サービス「Peing-質問箱」の個人運営者は、インターネットサービスの開発運営などを行うジラフに「Peing-質問箱」を事業譲渡しました。
「Peing-質問箱」は2017年11月にリリースされてから、月間2億PVを達成するほどのWEBサービスとなりました。しかし、これ以上個人で開発運営していくのに限界を感じ、事業譲渡を決意しています。
9. 事業譲渡・事業売却の戦略に関する相談先
自社のリソースだけを活用して事業譲渡・事業売却を行うのは非常に困難です。そのため、外部の専門家などを利用して、戦略的に事業譲渡・事業売却の戦略を考えていく必要があります。以下では、事業譲渡・事業売却の戦略を相談できる機関を紹介します。
金融機関
事業譲渡や事業売却において、最も気軽に相談できる存在は金融機関でしょう。どんな企業でも、銀行から資金の提供を受けているはずです。銀行の営業担当に事業譲渡や事業売却を検討しているのを相談すれば、親身になってその手続きについてアドバイスをもらえます。
ただし、金融機関には、事業譲渡や事業売却を専門とするアドバイザーがいないケースがほとんどなので、最終的には手続きなどについて専門家に委託します。そのため、まずは気軽な相談ときっかけをくれる存在として、金融機関を利用しましょう。
公的機関
中小企業庁は、中小企業の事業承継問題を日本全体の中小企業における問題として捉えており、この問題を解決するために、全国各地に事業譲渡や事業売却を支援してくれる公的機関を設置しているので活用しましょう。
具体的には、事業承継・引継ぎ支援センターのような機関です。その他にも、補助金、税制、法律等などで中小企業に対する積極的な支援を行っています。円滑な事業承継・引継ぎの実施体制構築のための助言、実務に関する助言・研修を行っているほか、中小企業・小規模事業者に対して、広報活動やセミナーを通じて事業承継・引継ぎ支援センターの認知度向上・利用促進を行っています。
親族内への承継も、第三者への引継ぎも、中小企業の事業承継に関するあらゆる相談に対応してくれるので便利です。
中小企業の事業承継・M&A支援に詳しい専門家が、無料でアドバイスを行っているので、具体的に組織再編を考えているケースに重宝します
M&A仲介会社
事業譲渡・事業売却を行いたいと考える会社は多数ありますが、買い手を探すところから契約まで全て自社で行うのは非常に難しいです。
M&Aに少しでも興味があるなら、最初にM&A仲介会社に相談するのが良いでしょう。
M&A総合研究所では、中小・中堅企業を中心としたM&A仲介を取り扱っています。案件ごとに専任のM&Aアドバイザーがクロージングまでのフルサポートを提供しています。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしてますので、お気軽にお問い合わせください。
10. 事業譲渡・事業売却の戦略策定方法まとめ
事業譲渡・事業売却の戦略策定を解説しました。
戦略を策定すると、事業譲渡・事業売却の目的を達成できるだけでなく、譲渡後の経営にもメリットが得られます。
戦略を策定する際は、まず目的を明確にし、自社の現状分析や競合や業界の分析をしましょう。そして、最適な戦略をいくつか絞り込んだうえで事業譲渡・事業売却の手続きに進むのです。
経営状態の改善や経営資源の集中、グループ内の事業再編、譲渡先企業との関係構築、イグジット戦略など、ご紹介した事例でもそれぞれの目的達成のために事業譲渡・事業売却が用いられています。
戦略策定は手間と時間がかかりますが、専門家とともに戦略を策定して、目的をスムーズに達成して大きなメリットが得られる可能性が高くなりますので、ぜひ策定してみてください。
早めに戦略策定や準備を行い、売り手と買い手がお互い納得できる形での成約を目指しましょう。
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 経験豊富なM&Aアドバイザーがフルサポート
- 圧倒的なスピード対応
- 独自のAIシステムによる高いマッチング精度
M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。


M&A総合研究所 会員限定メールマガジン
プレミアム案件・お役立ち情報