2021年09月04日更新
【2020年最新】住宅建設業界のM&A動向〜M&A事例20選【ハウスメーカー/ビルダー/工務店】
ハウスメーカーなどの住宅建設業界では、最近M&Aが頻繁に行われています。業界的にM&Aを行いにくいとされていた住宅建設業界ですが、どういった要因から活発になったのでしょうか。ここでは、そうした業界の動向やM&Aの実例をご紹介します。
1. 住宅建設業界とは
私たちの生活に密着している業種の1つである住宅建設業界ですが、建設会社やビルダー、工務店など住宅建設業界のM&Aが最近は増加しています。
ここでは住宅建設業界のM&Aの状況を把握するまえに、住宅建設業界の定義などについて解説します。
住宅建設業界の定義
ここで住宅建設業界が関わる建設業界の定義を解説します。建設業界や住宅建設業界の定義を知ることは、M&Aを行ううえでも非常に重要なことです。また住宅建設業界でのM&Aを成功させるには知っておくべき事項といえます。
総合建設業(ゼネコン)
住宅建設業界の枠を超えた建設業である建設会社に、総合建設業があります。いわゆるゼネコンといわれている建設会社です。
総合建設業と呼ばれる建設会社は土木工事や建築工事、電気工事など多種工事を手掛ける許可を保有しています。そのため、ハウスメーカーやビルダー、工務店などはゼネコンには分類されません。
職別工事業(サブコン)
職別工事業と呼ばれるいわゆるサブコンは、それぞれの工事に合わせた工事業許可をもつ専門工事を行う建設会社です。ハウスメーカーやビルダー、工務店などはサブコンに分類されます。
住宅建設業界の取引流通
ここでハウスメーカーやビルダー、工務店などの建設会社における住宅建設業界の取引流通について見てみましょう。
発注者・元請業者の契約
住宅建設業界は住宅やビル、道路など構造物の構築を依頼する発注者と依頼された工事を請け負う建設会社である元請業者において工事請負契約が締結されます。この契約に基づき建設工事が行われます。
元請業者・下請業者の契約
住宅建設業界の契約は発注者と請負業者の契約だけではありません。多くの場合はゼネコンなどの総合建設業を担っている建設会社が下請けとされる建設会社に業務を請け負わせます。
また、工事の内容や工程によってはサブコンと呼ばれる専門工事業者に工事を請け負わせます。そのためには、元請業者と下請業者の間で下請契約を締結します。この契約に基づいて工事の請け負いが行われます。
住宅建設業界の事業
建設会社やハウスメーカー、ビルダー、工務店はどういった受注形態をとっているのでしょうか。ここでは住宅建設業界における主な事業を4つに絞り解説します。
- 公共工事への入札
- 営業による受注
- 元請けからの受注
- 受注生産
公共工事への入札
道路や橋、護岸工事や港湾工事など公共にかかわる工事を行う場合は各発注機関に入札を行います。入札は参加資格申請をそれぞれの公共団体に提出している建設会社のみが参加できます。
入札には、一般競争入札や指名競争入札、公募型、プロポーザルなどさまざまです。業種も土木、建築、管、電気、設計など多岐に渡ります。入札に参加した建設会社などの中から基本的には一番低い価格で入札した建設会社に業務を請け負わせます。
営業による受注
民間工事の多くは営業による受注から請け負っています。マンションやアパートなどの営業を一度は受けたことがあるでしょう。特に、住宅建設業界にかかわるハウスメーカーやビルダー、工務店は営業による獲得が大半を占めています。
ハウスメーカーやビルダー、工務店は住宅展示場などで営業展開を図るほか、最近では街角に住宅展示場などを開設するなど営業方法は多岐に渡ります。
元請けからの受注
元請けから工事を受注している建設会社も数多く存在します。下請けは一次下請けから始まり二次下請け、三次下請けなど階層が深くあります。
また、ハウスメーカーやビルダー、工務店の場合は、住宅の受注は自社で行うものの、建設や設備工事などはすべて下請けへ委託している建設会社がほとんどです。
受注生産
建設業界・住宅建設業界で作り出す構造物は現地で構築される受注生産型です。壁や床など工場などでプレカットが行われていますが組み立ては現地で行います。
また、土地や風土などその状況にあった工法や手法を取り入れるため、似た状態はあるものの全く同じ状態での工事が施されることはほとんどありません。特に地元に根付いた工務店であればなおさらです。
こうした受注生産型である業界特性は、M&Aでもたらされる大規模化における効率化によるコスト削減の恩恵が受けにくいものと認識されています。
住宅建設業界のM&AならM&A総合研究所
2. 住宅建設業界の市場動向
建設業界の公共工事の予算はピーク時より大幅に削られているという動向の中、住宅建設業界の市場動向はどのようになっているのでしょうか。
住宅建設業許可業者は年々減少
建設業界の動向や住宅建設業界市場の動向を知るには、建設業許可業者数の動向に目を向ける必要があります。
国土交通省が発表している建設業許可業者数調査によると、一般建設業許可がある業者の数は2019年3月末の時点で46万8,311社となっています。この数はピーク時であった2000年3月末と比較して、13万2,669社の減少となっています。
このうち住宅建設業界に関わる建築工事業は2019年3月末時点で15万1,188社です。建設許可業種の中で、建築工事業種の減少率が最も高い数値になります。住宅建設業界の動向は淘汰の時期に差し掛かっているようです。
住宅建設業界の売上は上昇中
住宅建設業界の動向ですが新築着工の動向は芳しくないものの売り上げの動向は、業界動向サーチによると2016年からやや右肩上がりで推移しており、2018年~2019年の住宅業界の主要対象企業27社の売上高合計は、5兆1,677億円となっています。
こうした動向からハウスメーカーなどの住宅建設業界の動向は他の建設業種に比べて順調だといえる部分でもあります。
住宅建設業界が抱えている問題
住宅建設業界が抱えている問題とはどのような所にあるのでしょうか。以下の3項目について考えてみました。
- 廃業の増加
- 人材不足による問題
- 住宅着工率の減少
廃業の増加
住宅建設業界というよりも建設業界でいえることですが、廃業が多い状況が長く続いています。先にも解説したとおり、建設業許可業者がピーク時から見て大幅に減少しているのは廃業しているからです。
これは公共工事の減少や金融機関の貸し渋り、さらには民間工事の縮小など多くの要因が考えられます。
人材不足による問題
建設業界全般にいえることですが人材不足が深刻化しており、これは住宅建設業界でもいえることです。長時間労働による疲労や3Kと呼ばれる労働環境から就労者離れが深刻化しています。
こうした人材不足の動向は担い手不足にまで発展しており、地方では事業を廃業する小さな工務店が後を絶ちません。
住宅着工率の減少
新築の住宅着工率が年々減少してきました。野村総合研究所の情報によると、2016年度には97万戸あった住宅着工数は2020年度には74万戸となっており、そして2030年度には2016年度の約半分となる55万戸に減少していくと見られています。
3. 住宅建設業界は今「再編」のとき
こうした住宅建設業界の動向を見ると住宅建設業界が再編の時期に到達していることが見て取れます。しかし、住宅建設業界は今まであまりM&Aが進みませんでした。住宅建設業界でM&Aが促進されなかった理由、そしてM&Aのメリットなどについて解説します。
M&Aが進まなかった理由
他の産業に比べて住宅建設業界でM&Aが進まなかった理由には、住宅建設業界特有の問題があるとされています。M&Aを受け入れ難いとされる特性について解説します。
入札参加への制限がかかる
これは住宅建設業界というよりも建設業界にかかわることになりますが、入札参加への制限がかかってしまう問題があります。
多くの日本の建設会社は公共工事に依存していました。入札は会社の規模に合わせたランクで行われるのが一般的です。工事の分量はランクが低いほど多いですが低価格で、ランクが高いほど受注金額は高いですが工事量は少なくなります。
M&Aにより建設会社が大規模になり、完成工事高が上がると入札ランクが上がる可能性があります。すると、今まで入札参加できていた工事に参加できなくなるなど入札参加への制限がかかってしまうのです。
また、M&Aを行うことにより2社でそれぞれ入札に参加できていた状態から1社のみの参加になってしまうため、こちらも受注機会が減ってしまいます。
規模の拡大=業績アップにはならない
一般的にM&Aなどによって会社の規模が拡大すると業務の効率化が図れ、経費が抑えられる「規模の経済」が働き、業績が上がるとされています。しかしハウスメーカーやビルダー、工務店などの建設会社は「規模の経済」が働きにくいとされています。
それは先にも特性であげましたが、受注生産型による業界形態にあります。受注生産型では業務の効率化を図ろうとしても技術者ごとに図るまでにとどまるので、規模が大きくても小さくてもあまり変わらないことがわかります。
また、M&Aなどにより建設会社の規模が拡大したとしても業績が上がるとはなりません。それは先の入札参加への制限もそうですが、工事受注量が影響しています。
工事受注量が少ないとそれだけもうけが少なくなるのは確かですが、逆に工事受注量が多くなると現場管理人の不足などを招いてしまい、本来受注したい工事などが請け負えなくなる可能性があります。
また、建設工事中に労働災害が起こってしまうと現場はストップしていまいますし、台風などの災害が起きた場合の損失も少なくありません。
さらには、工事は順調に受注ができたとしても警備員の不足などを招いたり、運送業の人材不足から資材調達が間に合わないなど工事が滞ったりすることも数多くあり、計画なき経営規模の拡大はリスクがあるのです。
年々増加する住宅建設業界のM&A
そうした状況下にありながら、最近では住宅建設業界のM&Aが増加しています。それはどういったことからなのでしょうか。住宅建設業界のM&Aについて迫ります。
有効的なM&Aが主流
建設業や住宅建設業界は先に述べたとおり、M&Aが進んではいませんでした。しかし、最近では人材不足や受注エリア拡大など業界が抱えていた問題を解決する手段としてM&Aを活用する例が増えてきています。この動きにより住宅建設業界はM&Aによる再編を迎えているのです。
海外からのM&Aの増加
特徴的なのが海外の資本がM&Aにより国内の住宅建設業界に参入してくる傾向があることです。欧州や欧米などの建築技術をM&Aにより国内に輸入することで、今までの国内でのハウスメーカーやビルダー、工務店の住宅と差別化を図っています。
住宅建設業界M&Aのメリット
それでは住宅建設業界におけるM&Aとは一体どのような部分があるのでしょうか。さまざまな効果が見込めるM&Aですが、ここでは以下の3点について解説します。
- 後継者問題の解消によるM&A
- 他社の技術共有
- 人材の確保
後継者問題の解消によるM&A
まずは建設業界および住宅建設業界で大きな問題となっている後継者です。特に地方の建設会社にとっては非常に深刻な問題で、後継者が存在しないために技術があるのに廃業を強いられている状況です。
また、受注高もある地域で唯一の建設会社が廃業に追い込まれることもあります。こういった状況を招くと地域で災害などの緊急事態が起こった場合に対処できなくなってしまうなど地域社会へも大きな損失です。
こうした状況を防ぐためにM&Aを活用し、自社を売却するなどして事業を継続することは大変有効であり、建設会社がM&Aを行うメリットともいえます。
また、M&Aにより技術者などの従業員も安定して地域で生活が続けられるという点もM&Aメリットとしてとらえられています。
他社の技術共有
建設会社同士のM&Aにおけるメリットの1つに他社の技術共有が存在します。一様に建設会社といってもそれぞれに得意分野や専門分野があります。そうした技術を一から構築するよりもM&Aによる買収は効率的です。
住宅建設業界においては特に、それぞれに研究を行ってきた技術などを有するハウスメーカーやビルダー、工務店は非常に多く、そうした技術をM&Aを活用し組み合わせることにより、より高品質なサービスを提供することが可能です。
材料などのメーカーとのM&Aを実現できれば材料生産から受注、販売まで一気通貫で請け負うことができ、企業ブランドが高まることもあります。自社で開発してきた技術と資材メーカーとの技術を融合することで、今まで以上のブランド力を持つこともM&Aなら可能です。
人材の確保
建設業界・住宅建設業界の人材不足は深刻化をたどっています。特に地方の建設会社では新入社員を募集してもなかなか集まらないなど苦しい現状があります。さらには、採用した人材も数年や場合によっては数カ月でやめてしまうことも少なくありません。
人材を育成するよりもM&Aによって事業を買収したり売却したりするほうが効率的な手段です。すでに教育された技術者が多く確保できるM&Aは、教育する時間も節約できるわけです。
特に現場代理人などの資格をもった技術者はどの建設会社においても人材不足であり、流出を防止する策を考えています。こうした現場代理人などの技術者を一気に確保できるのもM&Aのメリットです。
加えて、宮大工など名工と呼ばれる技術は限られた財産です。こうした限られた財産を後世まで引き継ぎそして継承させることも建設業界・住宅建設業界のM&Aにおける大きな使命といえます。
4. 住宅建設業界の受注の変化
実は最近の住宅建設業界での受注体系には、変化が見られています。これは時代を背景とした変化となっており、今後も引き続き期待できる良い変化です。ここでは2点の変化について解説します。
- インバウンド効果
- ストック
①インバウンド効果
昨今のインバウンドにおける建設業の状況ですが、大都市圏を中心にホテル需要が高まっています。特にオリンピックが開催されるまでは多くのインバウンド効果が見込めるとしています。一方で、オリンピック後の建設業界の先行きは不透明なのも確かです。
②ストック
住宅建設業界は新築の個数は落ちているものの、リフォームなどのストックでは売り上げが堅調に推移しています。これは高度成長期などで建設された戸建て住宅やマンション、アパートなどが改修・改築の時期を迎えているからです。
そのため、リフォーム市場は2030年までは横ばいの売り上げの年間6兆円台が予想されています。さらに空き家数や空き家率は上昇する傾向があり、今後もリフォーム市場は安定した伸びを見せると予想されています。
5. 住宅建設業界のM&Aのメリット
住宅建設業界のM&Aを実施して、他の会社を買収したり、自分たちの住宅建設会社を売却したりする際の「メリット」について解説していきます。
M&Aを実施して住宅建設会社の買収・売却を検討されている方は、どのようなメリットが得られるのか確認してみてください。
売却側のメリット
まずは、M&Aによって会社を売却する側のメリットから見ていきましょう。売却する側のメリットとしては、以下の4点が挙げられます。
- 資本力による安定経営
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用維持
- M&Aによる売却益
順番に詳しく確認しましょう。
資本力による安定経営
大手住宅建築会社に会社を売却すれば、安定した経営ができます。なぜなら、M&Aの相手が資本力のある大手企業であれば傘下に入れるからです。
たとえば、設備投資のための初期費用がなくても親会社の資金を使うことができます。結果的に自社の収益拡大が期待できるのです。
後継者問題の解決
M&Aを行って会社を売却すれば、後継者問題が解決します。住宅建設業界では若い人材が不足しており、後継者不足に悩まされる中堅・中小企業が多いです。
廃業をすると取引先や従業員に迷惑がかかります。しかし、M&Aを実践すれば買い手が経営者となって事業を継続してくれます。
従業員の雇用維持
M&Aをして事業継続できれば、従業員の雇用を守ることができます。経営者が引退するタイミングで事業を廃止してしまうと従業員を路頭に迷わせることになるでしょう。
しかし、M&Aをすれば事業が継続でき、雇用も継続できるのです。もし、大手企業に売却できれば雇用条件が改良される可能性もあります。
M&Aによる売却益
売却側の経営者は、売却益を得ることができます。売却益とは、M&Aによって得る利益のことです。
M&Aをすると譲渡する事業や会社の対価を受け取れます。事業譲渡や株式譲渡であれば、まとまった対価を現金で支払われることが多いです。
もちろん、M&Aの実行にある程度の経費はかかりますが、十分経営者の手元に現金が残るでしょう。
買収側のメリット
続いて買収側のメリットも見ていきましょう。買収する側のメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- 経験を積んだ人材の確保
- 速やかな事業展開
- 事業スケールの拡大
順番に確認しましょう。
経験を積んだ人材の確保
住宅建設会社を買収すれば、経験を積んだ優秀な人材を確保できます。優秀な人材を取り込めば、よりスピーディーに自社の事業を進められるようになるのです。
特に、住宅建設業界では人材不足が顕著となっています。多くの人材を自社に取り込むことで、他の競合会社と差別化を図ったり、競争力強化につなげたりできるでしょう。
速やかな事業展開
住宅建設業界とは異なる事業を新しく展開したいと考えるときにM&Aを実施すれば、速やかに事業展開ができます。どのような経営者でも事業の多角化経営をして会社のリスクを分散させたいと考えるものです。
しかし新しい事業を立ち上げるには時間がかかります。そこで、すでにその事業を運営している会社を買収すれば、そのまま自社ブランドとして取り扱えるようになるのです。
事業スケールの拡大
住宅建設会社を買収することで、事業スケールの拡大ができます。例えば、進出したいエリアの住宅建設会社を買収すれば、市場調査や人材採用活動なしで進出可能です。
自社メーカーを作りたいのであればすでに建材メーカーとして機能している会社を買収すると、すぐに自社メーカーとして取扱商品を増やせます。このように事業を広げたいときにM&Aを活用もできます。
住宅建設業界のM&AならM&A総合研究所
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6. 住宅建設業界のM&A事例20選
それではここで、実際に住宅建設業界で行われたM&Aの事例について紹介します。地場の建設会社や大手ビルダー、工務店、電気業などさまざまな業種で売却や買収が進んでいる様子がM&Aの事例を見ることで理解できるでしょう。
①日本リビング保証が横浜ハウスを子会社化
日本リビング保証は2020年5月、住宅建設やリフォーム工事などを行う横浜ハウスを買収することを発表しました。日本リビング保証グループは、住宅事業者を主として経営効率化や新商流形成のサポートをしています。このM&Aにより、日本リビング保証は、グループの事業基盤をより充実させることを見込んでいます。
②戸田建設が佐藤工業を子会社化
準大手ゼネコンの戸田建設は2018年10月、福島県の地場ゼネコンである佐藤工業の株式を取得し子会社化すると発表しました。佐藤工業は福島県で総合建設会社を経営しています。このM&Aにより戸田建設による東北エリアのシェア拡大を見込んでいます。
③土木管理総合試験所がアイ・エス・ピーを子会社化
土木・建築工事を手掛けている土木管理総合試験所は2018年10月、土木測量設計プログラムの開発・販売を行っている北海道のアイ・エス・ピーの全株式を買収し完全子会社化しました。
このM&Aの事例は土木管理総合試験所がすでに所有している土木測量などの技術に、新たにソフト開発の技術を融合させることで生産性の向上や業務の拡大を狙っています。
④淺沼組がシンガポールのSINGAPORE PAINTSを子会社化
中堅ゼネコンの淺沼組は2018年10月、シンガポールにあるSINGAPORE PAINTS & CONTRACTOR PTE. LTD.の株式を買収し子会社化しました。
淺沼組では中期計画において海外事業の強化などを掲げており、中期計画にのっとりM&Aを活用してアセアンエリアでリニューアル事業を手掛けるとしています。
⑤積水化学工業がフクビ化学工業へ事業譲渡
積水化学工業は2018年9月、自社の事業部門である環境・ライフラインカンパニー事業をフクビ化学工業に売却しました。これは積水化学工業が住宅向けに展開していた高性能フェノールフォーム断熱材「フェノバボード」の事業をフクビ化学工業に引き渡したM&Aの事例です。
⑥大盛工業が井口建設を子会社化
大盛工業は2018年8月、山梨県にある井口建設の全ての株式を買い取り子会社化として買収しました。取得価額は2億3,100万円です。井口建設は山梨県内の公共工事で実績がある会社で、大盛工業はM&Aによる子会社化でグループの収益力の確保を図りました。
⑦日成ビルド工業がアーバン・スタッフを子会社化
日成ビルド工業は2018年7月、太陽光発電事業にも強い栃木県にあるアーバン・スタッフを全株式取得する形で買収し完全子会社化をしました。太陽光発電事業の分野に進出しサービス充実とビジネスモデルの拡大を目指したM&Aの事例です。
⑧桧家ホールディングスがハウジーホームズを子会社化
桧家ホールディングスは2018年3月、静岡県の地場ビルダーであるハウジーホームズを子会社化しました。桧家ホールディングスはM&Aを取り入れた戦略で成長を見せているビルダーです。
地場ビルダーを傘下に入れたことにより、東海地方での営業展開をより一層強固な物とするとともに情報網も網羅するという、事業拡大を目指したM&Aの事例です。
⑨飛鳥建設がノダックと関連会社の子会社化
飛島建設は2018年2月、潜水工事や上下水道のメンテナンス事業を手掛けている大阪府のノダックの株式を79.9%と関連会社となる滋賀県のジャパンレイクアンドキャピタルの株式75.2%を取得し子会社化しました。
この事例では飛島建設はノダックらが培った専門業種であるノウハウと人材を、M&Aによる買収で獲得した形です。
⑩積水化学工業がソフランウイズを完全子会社化
ソフランウイズは2017年12月、発行済となっている全株式を積水化学工業に譲渡し売却しました。ソフランウイズは、硬質ウレタン原液やそれに伴う商品を製造し販売を手掛けています。
積水化学工業はこのM&Aによる売却で、耐火材料や不燃材料などの各種製品の開発や販売などの事業拡大を目指していくとしています。
⑪大盛工業が山栄テクノを子会社化
大盛工業は2017年12月、小口径推進工事を手掛けている千葉県にある山栄テクノの全株式を買い取り完全子会社化として買収しました。このM&Aの事例はグループの事業拡大を目指した買収です。株式の取得価額は6,500万円でした。
⑫住友林業が熊谷組を業務資本提携
住友林業と熊谷組は2017年11月、事業拡大を見込む形で業務・資本提携しました。これにより新市場となっている木化・緑化関連の建設事業での地位確立を目指しています。このM&Aの事例では国内だけではなく海外事業においても共同販売を行っていくとしています。
⑬飛鳥建設が杉田建設興業を買収
飛島建設は2017年7月、千葉県および東京都を主要エリアとしている総合建設業の杉田建設興業を買収しました。全株式を買い取る形で完全子会社化しています。新たな営業エリア拡大とサービスの向上を目指すM&Aの事例です。
⑭旭化成ホームズが中央ビルト工業を業務・資本提携
旭化成ホームズと中央ビルト工業は2017年3月、首都圏での需要拡大に対応するために業務・資本提携を行いました。元々両社は業務上で取り引きのある関係でありましたが、このM&Aによりお互いの企業価値をさらに高めるとしています。
⑮徳倉建設が九州建設を子会社化
徳倉建設は2017年2月、福岡県にある九州建設の株式の84.78%を取得する形で買収し子会社化しました。九州建設は古くから地元で実績を残している信頼がある建設会社です。このM&Aの事例により徳倉建設は九州地区における技術協力や人材交流などを図るとしています。
⑯トヨタホームがミサワホームを子会社化
ハウスメーカーのトヨタホームは2016年11月、同じくハウスメーカーであるミサワホームを連結子会社化しました。これは、人口の減少に備え、今後の住宅ストックへの対策や高齢者住宅などへ対応するためとしています。
M&Aの後においてもミサワホームは社名やブランド名などは売却されずに今までどおりに継続していますが、技術や商品などの開発や資材の調達などは統合化するとしています。
⑰積水ハウスが鴻池組と業務提携・鳳ホールディングスを傘下に
ハウスメーカーの大手である積水ハウスは2015年11月、鴻池組と業務提携を行い、さらに鴻池組の持ち株会社であった大阪府の鳳ホールディングスを傘下にしました(その後、積水ハウスは2019年3月、鳳ホールディングスを子会社化)。両社は主力としている営業エリアが異なっていたため、今回のM&Aによる業務提携でお互いのシェア拡大を目指します。
⑱長谷工コーポレーションがジョイント・コーポを子会社化
大手ゼネコンである長谷工コーポレーションは2015年11月、ジョイント・コーポレーションの全株式取得を行い子会社化しました。
長谷工コーポレーションはマンション関連の事業を手掛けており、M&Aで獲得したジョイント・コーポレーショングループのノウハウを融合させることにより、相乗効果が期待できるとしています。
⑲美樹工業が下村建設より建設事業を事業譲受
美樹工業は2015年10月、大阪府を主力とした不動産賃貸業などを行う、建設業者である下村建設が売却した建設事業を買収しました。この建設事業をM&Aで売却したことにより、美樹工業は営業エリアを拡大するとともに事業競争力を強化しています。
⑳タカラレーベンの日興建設を買収
タカラレーベンは2014年12月、神奈川県にある不動産管理業者・日興建設の全株式を取得し買収しました。このM&Aの事例によりタカラレーベンは横浜エリアでの事業強化と不動産管理事業の拡大を目指しています。
中小企業でもM&Aは可能です。以下の記事では、おすすめのM&A仲介会社を20社紹介しています。
仲介会社を選ぶ際のポイントについても解説しているので、ぜひ確認してみてください。
7. 住宅建設業界M&Aのまとめ
住宅建設業界は売り上げの低迷や担い手不足などに嘆いています。これは住宅建設業界がもっている特有の体質からくるものです。
その影響もあって、現在では会社を存続するためにM&Aで売却する建設会社も多くなっています。建設会社がM&Aによって売却されることにより、後継者問題が解決します。またM&Aによる売却は地域社会へも大きな恩恵をもたらします。
M&Aなどによる事業の売却はあまり良いイメージがありませんでしたが、こうした観点から現在ではM&Aなどで事業を売却するメリットが多く認められている状況です。
今回紹介した買収・売却のM&Aの事例などを参考にして、住宅建設業界の動向をリサーチしながらハウスメーカーやビルダー、工務店などの建設会社の技術力を良く見極めてM&Aを進めていくとよいでしょう。
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