吸収合併された時の社員の処遇は?告知なくリストラされる?

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

吸収合併に伴い、社員の処遇はどのように変更されるのでしょうか。吸収合併後、社員がリストラや解雇にあうのではないか、と懸念されますが、吸収合併に伴い雇用契約がどうなるのか、リストラは自由なのか、等について法的な根拠も含め、処遇について解説します。

目次

  1. 吸収合併された時の社員の処遇を解説!
  2. 吸収合併とは
  3. 吸収合併の告知は会社の義務
  4. 吸収合併された時の社員の処遇
  5. 吸収合併後社員のリストラがある?
  6. まとめ
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1. 吸収合併された時の社員の処遇を解説!

吸収合併された時の社員の処遇を解説!

出典: https://www.tadapic.com/

M&Aの一つの種類である吸収合併ですが、吸収合併により所属していた会社が別の企業に買収される場合、社員の処遇はどのようになるのでしょうか。
 
吸収合併における告知の手続きや、解雇やリストラ、賃金などをはじめとする労働条件の変更等、吸収合併後の社員の処遇について、順を追って解説します。

2. 吸収合併とは

吸収合併とは

出典: https://www.tadapic.com/

そもそも、吸収合併とは、どのような形の合併を言うのでしょうか。また、当事者はどのような法人格があるのでしょうか。吸収合併の基本について解説します。
 
なお、吸収合併と買収の違いについては下記リンクも参考ください。

【関連】合併(吸収合併)と買収の違いは?M&A手法を徹底解説!

定義

吸収合併とは、二つの企業が統合する際に、一方の企業の法人格を残し、他方の法人格を消滅させ、権利義務のすべてを合併後に存続する会社に承継させる手法です。
 
全ての法人格を消滅させ、新設する会社にすべての権利義務を承継させる新設合併とは、新たな法人格を必要としないという点で異なります。また、実務上はほとんどのケースで吸収合併が選択されています。
 
吸収合併の手続きを簡単に解説すると、合併契約の締結、株主・債権者に対する通知・広告、株主総会による合併の承認があります。
 
なお、新設合併との違い等については下記リンクも参考ください。

【関連】【保存版】吸収合併とは?吸収合併・新設合併との違いやメリット・デメリットを解説!

親会社が子会社を吸収合併する場合

親会社が子会社を吸収合併する場合も、基本と同様に、一方の法人格を残し、他方の法人格を消滅させることとなります。
 
会計上異なるのは、共通支配下の合併であることです。共通支配下の合併とは、吸収合併の前後で最終的な株主が同じである合併のことを指します。

吸収合併の当事者

吸収合併の際の当事者としては、「存続会社」と「消滅会社」の二つがあります。それぞれの言葉の定義について解説します。

存続会社

吸収合併における「存続会社」とは、文字通り、吸収合併後に残る法人格を持つ方の会社を言います。例えば、親会社が子会社を吸収合併する場合でいえば、親会社が存続会社となります。

消滅会社

吸収合併における「消滅会社」とは、存続会社に吸収される法人格を持つ方の会社を言います。先ほどの親会社が子会社を吸収合併する例で言えば、親会社にすべての権利義務を引き渡して消滅する子会社のほうを指します。

3. 吸収合併の告知は会社の義務

吸収合併の告知は会社の義務

出典: https://www.tadapic.com/

吸収合併の際には、存続会社・消滅会社共に株主や債権者等、利害関係者に対する告知が義務付けられています。これらの利害関係者に対する告知が完了していない場合、合併の効力も発生しません。
告知義務の範囲や、その法的根拠、および告知すべき内容等について解説します。

告知義務

吸収合併に関連する手続きについては、会社法に記載されていますが、吸収合併の際の義務として、債権者や株主等、利害関係者に対する告知が会社法により規定されています。
 
また、これに対して債権者等が異議を申し立てる手続きも用意されており、債権者・株主を保護するための手続きが用意されています。こうした手続きを法に則って行わなければ、合併契約自体も無効になってしまうため、手続きに漏れがないかどうかは注意が必要です。
 
M&A総合研究所では弁護士事務所へのパイプもあることに加え、会計士を中心にエキスパートが対応するため、専門知識が必要な法的手続きも安心してお任せいただくことができます。ご検討の際にはぜひ一度ご相談下さい。

【関連】M&A総合研究所

告知の相手

会社法により要請されている利害関係者への告知ですが、告知する対象者としては、債権者や株主が挙げられます。これは、株主や債権者が、その権利行使について判断するのに必要な情報を提供するためです。

債権者に対する公告

債権者に対する告知の方法は、会社法789条2項及び799条2項によって、「官報への公告」及び「債権者への個別の催告」が必要です。
 
また、債権者に対する公告と株主への通知広告を官報と同時に日刊紙や電子公告に同時に掲載する場合については、債権者への個別催告は不要です。

社員への通知

社員への通知は、会社法で規定される手続き上は必要がありません。これは、吸収合併に伴い、消滅会社で契約していた雇用契約がそのまま存続会社に引き継がれるためです。
 
また、吸収合併による存続会社への雇用契約の承継について、消滅会社の労働者の同意を得る必要はありません。吸収合併に伴い、雇用契約を含めてすべての権利義務が存続会社に承継されるためです。
 
逆に言えば、吸収合併によりトータルの人員が余剰になったとしても、吸収合併を理由に消滅会社の労働者を解雇することも許されないということです。

株主への通知

株主への通知は、先に述べた債権者への通知とは異なり、官報での報告は必須ではありません。定款所定の公告方法により公告を行うことで、個別通知を省略することができます。
 
なお、株券の権利を行使する日時を確定する基準日設定公告については、期間中の売買等により、株主名簿に登録されていない場合があるため、個別通知は認められず、定款所定の公告方法による公告が必要となります。

告知内容

吸収合併に関して債権者や株主に対して告知することが必須となりますが、告知そのものの内容としてはどのような情報をカバーすれば良いのでしょうか。
 
告知内容としてカバーすべき範囲としては、吸収合併をすること、また存続会社等の称号及び住所、消滅会社等及び存続会社等の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの、債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨、となります。
 
なお、その他吸収合併契約書の作り方等については下記リンクも参考ください。

【関連】吸収合併契約書の作り方・記載事項を解説!【ひな型/記載例あり】

期日

吸収合併の告知は、吸収合併の効力が発生する前日の1か月間以上前までに行わなくてはなりません。この期日までに、吸収合併をする旨等を記載して官報に公告する必要があります。また、合併の効力発生日以降、6か月を経過する日まで、その事前開示書類等を本店に据え置く必要があります。

4. 吸収合併された時の社員の処遇

吸収合併された時の社員の処遇

出典: https://www.tadapic.com/

それでは、吸収合併された時の社員の処遇についてはどのように扱われるのでしょうか。解雇やリストラ、労働条件の変更等がなされることはあるのでしょうか。告知義務や雇用契約の承継について解説します。

告知は必要不可欠ではないが重要

吸収合併では、上記で説明している通り、消滅会社の権利義務がそのまま存続会社に承継されるため、従業員も原則としてそのまま残留します。そのため、リストラや解雇は基本的になく、社員への不利益が生じないことから、吸収合併に関して労働者に事前の告知や同意を得ることは、法的には必要ありません
 
ただし、吸収合併に伴って、組織再編が行われるのは不可避であり、従業員が大きな不安を感じるのは当然のことです。吸収合併後も、企業活動が円滑に進められるよう、合併時のストレスを減らすために、従業員への説明をおこなうのは大切です。吸収合併等により従業員が不利益を被らないよう、労働契約及び就業規則について、どのように処遇を行うのか、従業員に対して丁寧に説明していくことが重要となります。
 
そのため、吸収合併を成立させるために従業員の同意や従業員への告知は必要不可欠ではありませんが、その後の事業継続のために非常に重要な手続きということができます。

雇用も継承

従前の通り、吸収合併では、消滅会社の権利義務がすべて存続会社に承継されるため、雇用契約も消滅会社のものをそのまま継承します。また、この雇用契約の承継について、消滅会社の労働者からの同意を得ることは不要です。
 
ただし、実務上、存続会社の雇用契約に合わせていくため、吸収合併の前に雇用契約の変更について合意を交わす場合もあります。その場合には、内容について書面で説明し、従業員の確認を取っておく必要があります。

5. 吸収合併後社員のリストラがある?

吸収会社の社員はリストラされる?

出典: https://www.tadapic.com/

吸収合併については、基本的に労働契約及び雇用関係が継続されることを前提とするため、吸収合併を理由として、社員をリストラすることは許されていません。
 
ただし、吸収合併という手段は、親会社が子会社を吸収する、業績の悪い会社を良い会社が吸収して合併するため、組織再編を伴います。消滅会社の部門すべてが残るわけではなく、同一部門が複数ある場合には、なくなることもあります。吸収合併後の組織再編に伴って、社員のリストラがありうるのではないか、という点が懸念されます。この疑問について解説します。

吸収合併後承継されるもの

まず、基本的に労働者と会社間で取り交わされた雇用契約については、吸収合併後も存続会社にすべて承継されます。そのため、従業員が吸収合併をきっかけにリストラ・解雇されることは法的に許されません。
 
雇用契約を変更する場合には、従業員への通知・告知や書面での説明、合意の取得などの手続きが必要となります。こうした手続きを行う過程で、存続会社の雇用契約に合わせる処置がとられることもあります。
 
リストラや解雇ではなく、従業員が個人の判断で離職することは自由に行うことができます。こちらについては、後程詳しくご説明します。

勤務形態の変更はあり

雇用契約の変更は基本的にありませんが、勤務形態が変更となることはあり得ます。雇用契約の範囲内であれば、吸収合併に伴う組織再編の一環として、営業職から事務職へ、事務職から営業職へ、等と個人の勤務形態が変更となる可能性があります。
 
この場合についても、当初の雇用契約の範囲内であれば、個別の労働者との合意や説明等は必要がありません。

管理職の身分は?

消滅会社側で管理職となっていた場合に、その管理職の身分はどうなるのでしょうか。労働条件にもよりますが、管理職の身分は保証されるというものではありません。
 
例えば、合併直後に降格される場合もありますし、同格の身分でいられる場合もあります。これは、合併に伴い組織の編成がどうなるかにも左右されます。1つの会社に同じ部門は複数必要ではないため、どちらかの部門がなくなるのは必然です。そのため、合併前後で同じ程度の管理職の身分が保証されるとは限りません。

労働条件も変更になる可能性あり

吸収合併では、原則として労働条件は消滅会社のものをそのまま引き継ぐこととなりますが、合併を契機として労働条件も変更となる可能性があります
これは、吸収合併は親会社が子会社を吸収し、経営の効率化を図るきっかけとすることが多いことに起因します。

ただし、労働条件の変更に関しては、企業側が勝手に行うことはできません。労働条件に関わる、労働協約や就業規則の変更は、労働者や労働組合と事前に協議が必要になります。

その上で、労働条件が変更となる場合には、労働者にとって不利益な変更を含む場合は特に、個別の労働者への通知と、書面での合意が必要となります。
 
労働条件が変更となる場合、福利厚生や給料、退職金制度についてはどのように取り扱われるのでしょうか。それぞれについて解説します。

福利厚生

社宅や家賃補助等の福利厚生を含めた労働条件は、基本的には以前の労働条件を承継することとなりますが、効率化のため、社宅の廃止等の不利益な変更がとられる場合があります。この場合にも、事前の従業員への説明と書面での合意が必要です。
 
こうした不利益変更の際には、ソフトランディングのため、社宅廃止の対象となった社員等に家賃補助を支給する等の措置が取られる場合があります。

給料

合併する企業同士の給料体系が異なる場合については、まず給与テーブルを統合し、差額を調整給という形で支給する形式で2年ほどかけて統合していく場合があります。
 
給料の昇給タイミングはおおむね年1回の会社が大半であるため、短期的な調整が難しい、という点が背景です。

退職金

吸収合併に伴い、退職金が減額される等の不利益な変更が行われる場合がありますが、その場合には、説明の内容や、労働者が受け入れるまでに至った経緯、およびその内容等、様々な観点に照らし、労働者の自由意思で受け入れたという判断が必要である、という最高裁の判例もあり、経営者側にとっては厳しい運用となります。
 
労働者側からすれば、経営者から十分な説明を聞くことができるため、納得するまで退職金制度について聞くことが重要です。

希望退職などのリストラはあり

雇用契約については、吸収合併に伴い自動的に存続会社に継承されますが、吸収合併後、事業の効率化や組織再編をおこなう必要が出てくるかもしれません。
その際、企業が希望退職を募るといった形でリストラをおこなうことはあります。


希望退職制度を利用するかどうかは、社員個々人の自由です。 
 

転職のチャンスととらえる人も

逆に、これを転職のチャンスととらえて積極的に希望退職をする場合もあります。
例えば、管理部門など、同一業務を担当する部署が重複し希望退職が募集されたり、合併後の経営方針の転換や事業の効率化で担当業務がなくなったりすることで、退職する人もいることでしょう。
 
一方、合併後の統合作業に関わった社員等については、ほかの合併を検討している企業等にとって「ほしい人材」となることも考えられます。
他社の社員とチームを組んで吸収合併後の統合作業を実行する経験などは、誰でもが積める経験ではありません。
多くの会社にとって、合併というプロセスは初めての出来事となります。
 
こうした経験を積んでおくと、他社に対してアピールできるポイントとなるため、吸収合併を転職のチャンスととらえる人もいます。こうした点も視野に入れて、今後のキャリアを検討するとよいでしょう。

6. まとめ

まとめ

出典: https://www.tadapic.com/

親会社による子会社の吸収合併等、様々なシーンで実行される吸収合併ですが、基本は労働条件が承継されるため、勝手に解雇されたり退職金や給料が変更されたりすることはありません。
 
ただし、その後の労働条件の変更等により、管理職の地位がなくなったり、福利厚生等の制度が変更される場合があります。
 
吸収合併によって得られる知識や経験をもとに転職することが今後のキャリア形成に有効な場合もあります。賃金や退職金等の情報をよく検討したうえで、どうするか決定しましょう。

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