2023年08月27日更新
廃業を回避する方法とは?必要な準備から事業承継補助金制度まで詳しく解説!
本記事では、廃業とは何か、閉店・倒産・休業とはどのように違うのか、そして事業承継やM&Aによる廃業の回避を解説します。経営不振や引退などの理由で廃業を考える経営者は少なくありません。廃業回避の方法を知りたい方は必見です。
目次
1. 廃業とは
近年は、中小企業経営者の高齢化が進み、多くの企業が廃業の危機に立たされています。新型コロナウイルスの影響で廃業件数が増えると予想され、経営者にとっても廃業が身近な問題となりつつあります。
しかし、詳しい意味や手続きの内容など、廃業とは何か正しく理解している経営者は少ないでしょう。
閉店・倒産・休業といった似た言葉もありますが、それらの違いやそもそも廃業とはどのようなことなのか理解する必要があります。
廃業の定義
廃業とは、会社や個人事業をたたんで、資産・負債を清算し法人格や事業を消滅させることです。廃業は経営を続けられないため、仕方なく行うイメージを持つ人も多く、実際に経営が立ちいかないために廃業するケースは少なくありません。
しかし、廃業とは単に会社や事業をたたむことを意味するので、経営が黒字であっても廃業は可能です。今後は経営者の高齢化により、多くの中小企業が廃業の危機に立たされるのを受けて、国は事業承継を推進し廃業を阻止する政策を進めています。
広義の廃業
広義の廃業は、理由や原因に関係なく事業をやめることをさします。経営が成立した状況で、自主的に事業をやめるケースの自主廃業と、債務超過などでやめざるを得ない状況となりやめることがあります。
東京商工リサーチの定義
東京商工リサーチの定義では、自主廃業を廃業といいます。一般的にも、廃業はこのように扱われることがあるでしょう。しかし、この記事では、廃業を広い意味で使用します。
閉店との違い
閉店は廃業と同じく事業をたたむ意味で使われることもあります。しかし、単にその日の営業を終了する意味でも使われます。
閉店は改装などのために一時的に営業を中止する場合にも使われるのに対し、廃業の場合は一度行うと法人格が消滅するので営業を再開できないのも大きな違いです。
閉店は単に店を閉めることをさすので、法律にのっとった閉店の特別な手続きはありません。
倒産との違い
廃業と倒産は同じ意味でとらえることも多いですが、実際には明確な違いがあるでしょう。まず、個人事業における廃業とは、廃業届を提出し事業とその屋号を消滅させるとともに、店舗や在庫などを処分して清算することをいいます。
会社の場合、廃業は解散を決議してから、清算手続きにより資産を整理することをさします。一方、倒産とは経営の悪化で事業が続けられなくなり、結果として廃業・破産することです。「倒産」といった法律上の手続きはありません。
つまり、廃業は会社をたたむための法律にのっとった一連の手続きを表すのに対し、倒産は単に会社がつぶれることを概念的にさす用語といえます。
清算との違い
清算の用語も廃業と似た意味で使われることがあります。しかし、これも廃業とは意味が異なるでしょう。
会社が廃業するには、法人格を消滅させるための解散手続きと、負債を弁済して残った資産を株主に分配する清算手続きを行う必要があります。つまり、清算とは会社を廃業するための手続きの一部にあたります。
個人事業も廃業するときは資産と負債の整理を行いますが、清算の用語は会社が行う場合です。清算の具体的な手続きでは、会社法や破産法にのっとり企業が通常清算・特別清算・破産のいずれかを行います。
破産との違い
一般的に、破産は全ての財産を失うことをさします。しかし、廃業や倒産の類義語では、倒産の状況にある会社が破産法にのっとり資産・負債を整理して廃業することをいいます。
休業・休眠との違い
日常では、休業は定休や臨時休業の意味で使われます。しかし、法人登記を残した状態で事業活動を完全にやめることも休業です。
後者では、税務署と自治体へ休業の異動届出書を提出します。法人税や事業税などはかかりません。一般的に、法人住民税の均等割も課されませんが、この扱いは自治体によります。
長期の休業になると、休眠の言葉が使用されるケースがあります。会社法では12年間何の登記もない会社を休眠会社とします。法務省の公告により2カ月以内に「事業を廃止していない」といった届出をしなければ、解散と見なされるでしょう。
解散との違い
事業活動をやめた(休眠会社の事業廃止を認定された)会社が、清算・破産の手続きへ移ることを解散といいます。合併で法人が消滅するのも解散です。
会社清算・解散については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
廃業数の現状
近年は廃業件数が増え、逆に倒産件数は減ったといわれています。実際のところ年度別の推移はどうなっているのでしょうか。特定の業種で特に廃業が増えたり、経営者の年齢による違いなどはあったりするのでしょうか。
この章では、近年における企業の廃業の現状について、産業別・法人格別・年齢別のデータを分析します。
休業数および解散企業数
近年の休廃業・解散および倒産件数は、以下です。休廃業・解散は4万件台で推移しており、全体としてはやや増加傾向です。倒産件数は、明らかな減少傾向が見られます。
年 | 休廃業・解散件数 | 倒産件数 |
2016 | 41,162 | 8,446 |
2017 | 40,909 | 8,405 |
2018 | 46,724 | 8,235 |
2019 | 43,348 | 8,383 |
2020 | 49,698 | 7,773 |
産業別の廃業状況
産業別に見た廃業件数は、以下です。廃業件数は、2020年時点でサービス業他が最も多く、2019年よりも廃業件数が全体的に増えています。
【産業別の廃業状況】
業種 | 2019年 | 2020年 |
サービス業他 | 13,245件 | 15,624件 |
建設業 | 7,027件 | 8,211件 |
小売業 | 5,749件 | 6,168件 |
製造業 | 4,996件 | 5,518件 |
法人格別の廃業状況
法人格別の廃業状況は、以下です。数は、株式会社の廃業が最も多く、続いて有限会社・個人会社と続きます。
2008年と2018年を比べると、2018年は大幅に各法人格別の廃業件数が増えています。
【法人格別の廃業状況】
法人格 | 2008年 | 2018年 |
株式会社 | 10,117 | 19,684 |
有限会社 | 9,186 | 15,898 |
個人企業 | 4,519 | 8,001 |
特定非営利活動法人 | 177 | 1,737 |
医療法人 | 52 | 466 |
廃業した企業の経営者年齢
廃業した企業における経営者年齢の割合は、以下です。高齢になるほど割合が高くなり、60代以上の廃業が多いでしょう。
70代以上では、2020年が2019年を上回っています。近年の経営者における高齢化問題の深刻化がデータからも読み取れます。
【廃業した企業の経営者年齢】
年代 | 2019年 | 2020年 |
30代以下 | 1.07% | 0.76% |
40代 | 4.75% | 4.79% |
50代 | 10.52% | 10.01% |
60代 | 27.5% | 24.5% |
70代以上 | 39.06% | 41.77% |
多くの中小企業が廃業を選ぶ6つの理由
経営難の結果、廃業せざるを得ないケースは多いです。しかし、黒字の企業が廃業するケースも少なくありません。
帝国データバンクの「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2020年)」によると、休廃業・解散した黒字の企業は6割に迫ります。
黒字にもかかわらず廃業して会社をたたむ主な理由は、経営者の高齢化・後継者不在・M&Aに対して壁がある、などが考えられるでしょう。この章では、多くの中小企業が黒字でも廃業を選ぶ理由を解説します。
経営者の高齢化
経営者の高齢化を理由に廃業する企業は増えており、黒字で廃業する理由として最も多いです。2020年代は団塊世代が完全に引退する時期で、経営者の高齢化がピークに達すると考えられます。
よって、黒字の企業が高齢化を理由に廃業する事例は、今後ますます増える可能性が高いでしょう。
後継者がいない
経営を続けたいと考えていても、後継者がいないためにやむなく廃業するケースも多いでしょう。近年は、少子化で子どもがいない経営者や、子どもがいても継ぐ意思がないなど、かつてのように子どもが代々後を継ぐ事業承継は少ない現状があります。
M&Aに対して壁がある
親族などに後継者がいない企業にとって、M&Aによる事業承継は非常に有力な手段です。良い後継者を探すのは簡単ではありませんが、幅広い企業から候補を絞り自社に適した後継者を探せるのはM&Aの大きなメリットです。
しかし、M&Aにネガティブなイメージを持つ人も多く、「手続きが難しそう」「手数料が高そう」などの理由で敬遠する経営者は少なくありません。
状況的に廃業よりM&Aによる事業承継が適していると考えられるケースでも、経営者がM&Aに対して壁があるために、廃業を選択する事例は非常に多く見られます。
将来に対する不安
現在は経営が成り立っていても、自社事業や業界が減少状態で、経営を継続すると業績の悪化が予想される場合は、経営者が倒産となる前段階で自主的に廃業を選ぶケースもあります。
余力が残っている間に廃業すれば、負債の完済や株主・自分自身への残余財産分配、取引先・従業員への対応などを、スムーズに行うことも可能です。
赤字・債務超過・業績不振
赤字経営が継続して負債が資産を上回る債務超過が長引くと、信用力が下がり資金調達や取引継続が難しくなります。すぐに倒産とはなりませんが、事業を継続するほど状況は悪くなるでしょう。経営再建の見とおしがはっきりしない場合は、廃業を選ぶのが得策です。
支払い不能
支払い期限までに支払い不能の場合は取引の継続が困難となり、倒産につながることもあります。6カ月以内に手形や小切手の不渡りが2回生じれば、銀行取引停止処分となり借入や当座預金での取引は2年間できません。そうなると、倒産を避けることは難しいでしょう。
黒字経営でも支払い不能で倒産する黒字倒産もあります。売掛金の売り上げは、帳簿上では利益を押し上げて黒字に寄与します。しかし、回収するまで現金収入ではありません。手元資金が不足の場合は、売掛金が大きくても回収前に支払い不能となり、倒産となる可能性があるでしょう。
2. 廃業の手続き(通常清算)
この章では、通常清算における廃業の手続きを解説します。
①解散前の準備
取締役会などで解散の意思決定を実施します。解散予定日を定め、従業員・取引先・顧客へ廃業の説明を行います。そして、これからの対応における協議を行うことになるでしょう。
⑤の解散公告手続きをすれば、債権者申し出期間が終わるまで債務の弁済ができません。取引先への影響を考え、買掛金など取引に関する債務は公告前までに弁済します。準備する際に、これに関しても検討し協議しましょう。
②解散決議・清算人の登記
臨時株主総会を開いて、会社の解散を決議します。会社は清算に関する事務だけを行う清算株式会社となり、清算が終わるまで存続します。清算株式会社は清算人が必要です。清算人には、現務の完了や債権の取立てなどの義務が課されるでしょう。
清算人は、定款で定められた人あるいは株主総会決議で選ばれた人が就任します。しかし、定款の定めがなく選任決議も行わないケースでは取締役が就き、取締役もいないケースでは利害関係人の申立てで裁判所が選びます。
解散決議から2週間以内に、解散と清算人の登記を行わなければなりません。
③税・社会保険に関する廃止届の提出
解散が決定したら、税務署と都道府県税事務所・市区町村役場へ事業廃止の届出を行いましょう。年金事務所へ健康保険・厚生年金の適用事業所全喪届を届けます。そして、ハローワークへ雇用保険適用事業所廃止届を提出します。
④債権の取立て・現務の完了
次に、清算の手続きです。現務完了や会社保有の債権取立ても、並行して実施します。清算株式会社が行えるのは、清算に関する事務のみです。しかし、現務を終わらせるのに必要とする範囲なら、新規の取引も行えます。
⑤公告・個別催告
解散後、官報で解散の事実と債権申し出の事項を、遅れることなく公告します。会社が認識した債権者へ個別に催告しましょう。
会社が認識しない債権者が、会社設定の申し出期間に債権を申し出ないときは、債権者は清算対象外です。清算後に残った財産へのみ弁済の請求ができるでしょう。
清算人は申し出による債権を調査し、存否と額を決定します。債権者間で争いがあれば、訴訟などで決めます。
⑥財産調査、財産目録などの作成・承認
清算人は、就任してから遅れることなく、会社財産の現況を調査し解散時点での財産目録と貸借対照表を作ります。作成した目録や貸借対照表は、株主総会に提出します。そして、承認を受け、清算結了登記が終わるまで保存しなければなりません。
⑦解散・清算事業年度の確定申告
解散を実施した年度は、開始日から解散日までを1つの年度である解散事業年度とします。解散した翌日から2カ月以内に、確定申告をしましょう。
その後は、解散の翌日から1年ごとに年度を区切ります。これが、清算事業年度です。年度終了日の翌日から2カ月以内に、確定申告書を提出しましょう。
⑧資産の現金化、債務の弁済、残余財産の分配
会社に残った資産を売って現金化します。そして、申し出のあった債務を弁済します。残余財産があれば、清算人の決定により株主へ分配が進められるでしょう。
⑨残余財産に関する確定申告
残余財産の確定日をもち、最後の事業年度である残余財産確定事業年度が終わります。残余財産確定日翌日から1カ月以内に、残余財産確定事業年度の確定申告書を出しましょう。期間内に残余財産の分配が終われば、完了日前日までに行います。
⑩決算報告の作成・承認
上記の手続きが終わると、遅れることなく決算報告を作ります。決算報告は、株主総会へ提出して承認を受けなければなりません。
⑪清算結了の登記申請
決算報告が株主総会により承認された日から2週間以内に、清算結了の登記を実施しましょう。これにより、通常清算の手続きは終わりです。
3. 廃業を回避する3つの方法
廃業にはメリットもありますが、基本的にはまず廃業を回避する方法を考えたほうが良いでしょう。廃業を回避する方法は、事業承継・M&A・上場などがあります。
【廃業を回避する方法】
- 事業承継
- M&A
- 上場
①事業承継
親族や社員を後継者に据える事業承継は、廃業を回避する最もオーソドックスな手法です。近年、親族による事業承継は減少傾向ですが、有力な手段であることに変わりはありません。
②M&A
親族や社員に後継者がいない場合は、M&Aで会社を売却するのが廃業を避ける有力な選択肢です。M&Aは廃業を避けるだけでなく、売却益やシナジー効果の獲得などさまざまなメリットを得られます。
M&Aは相手を見つけて成約するまでが大変です。しかし、うまくいけば廃業を回避するだけでなく、事業を大きく発展させる可能性も秘めています。
従業員の雇用を維持できる
東京商工リサーチの「事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」によると、売却側としてM&Aの実施を考える際に重視する点は、従業員の雇用維持が82.7%でした。
M&Aを行った買い手側の82.1%で、売却側全従業員の雇用を維持できています。50~90%の雇用を維持している企業が11.9%です。M&Aによる廃業回避は、従業員の雇用を維持できる大きなメリットがあるでしょう。
日本の経済活性化に貢献できる
承継先が親族内や親族外でも、築いてきた経営資源を次の世代へ引き継ぐことは、日本の経済活性化に貢献する行為です。そして、大きな社会的意義もあるといえます。
取引先に迷惑をかけずに済む
廃業すると、取引先が取引相手を失ったり債権の回収不能になったりするなどの影響を与えてしまいます。廃業した会社に販売などを依存していた会社が、連鎖的に倒産するリスクも考えられます。しかし、M&Aを実施すれば、取引先に迷惑をかけずに済むでしょう。
高額な売却利益の獲得が見込める
事業を清算すると、会社の資産を基本的に個別処分します。売り物となる資産も限定されるでしょう。
しかし、事業承継・M&Aを実施すれば、会社保有のノウハウやブランド、人材など無形の資産も含めて事業全体の価値が取引対象となります。清算時の資産売却額より高額な売却利益が期待できるでしょう。
自社の事業拡大が期待できる
買い手側は、一般的に事業の成長や拡大を狙ってM&Aを実施します。買収の対象となる事業が広がることもあり、既存事業と掛け合わせることでさらなる事業の成功に貢献することもあります。
雇用が引き継がれる従業員にも、キャリアパス拡大の可能性があるでしょう。
③上場
株式上場を廃業の回避手段としてとらえることは少ないです。しかし、売り上げの規模が大きく黒字の場合は、上場によるイグジットで経営者が引退し、高齢による廃業を回避する選択肢もあり得ます。
4. 廃業を回避するための準備
中小企業の経営者の多くが高齢者のうえに人材不足も相まって、中小企業が後継者不足の理由で廃業しています。しかし、後継者がいない中小企業でも廃業を回避できます。
後継者がいない場合、第三者に事業を承継する事業承継があるでしょう。自社の価値を示す必要があることから、まずは以下の準備をするのが大切です。
自社の企業価値を知る
廃業を回避するためには、自社の企業価値を知ることからはじめましょう。中小企業などの非上場企業は株式が証券市場に出回っていないため、市場価値がわかりません。自社にどれくらいの価値が付くかを明確にすると、第三者に対して事業メリットを説明しやすくなります。
M&Aによる事業承継時の価値算定では、企業価値評価の方法を活用します。企業価値評価とは、財務指標をもとに会社自体の価値やその株式の価値を算出する方法です。
適正かつ客観的な企業価値が求められるため、M&Aの企業価値評価を行う際は専専門家に依頼するのがベストです。
事業の需要を知る
手掛けている事業のニーズが高くなければ、第三者に興味を持ってもらうことは難しいでしょう。中小企業では、事業の需要を把握したうえで、効果的にアピールする必要があります。前述のとおり、企業価値評価といった客観的な評価も必要でしょう。
5. 廃業回避に向けた後継者選びのポイント
中小企業の廃業を避けるには後継者を見つける必要があるでしょう。ここでは、廃業回避に向けた後継者選びのポイントを解説します。
親族から選ぶ場合
中小企業が親族を後継者に選ぶ場合、社員や取引先から受け入れられやすいメリットがあるでしょう。しかし、後継者が経営者の素質があることが必要不可欠です。小規模になるほど経営者の影響力が大きく、経営者が頼りないと経営状況が悪化しかねません。
したがって、後継者候補を選ぶ時期は、経営者が退任を予定している時期や後継者育成期間などを考慮しておくのが重要です。事業承継には、少なくとも4~5年、長く見積もると10年は必要です。
なお、後継者候補が複数いる場合は、株式折半をしてしまうと経営権の集中ができないため、経営上リスクが生じやすくなるため十分検討する必要があります。
従業員から選ぶ場合
親族に後継者としてふさわしい人材がいない中小企業の場合、社内の役員や従業員から選ぶことも考えられるでしょう。従業員であると選定段階で一定のスキルを有した人材を選べる点が大きなメリットです。親族内事業承継と比較すると、後継者育成にかかる時間も削減できるでしょう。
しかし、従業員に事業承継すると、社内外から反発を受ける可能性も考えられます。したがって、現経営者から社内外の関係者に早めに説明をしておく必要があるでしょう。
M&Aに伴い第三者から選ぶ場合
中小企業が第三者にM&Aを行う場合は、自社の企業理念や経営方針を理解してもらえる買い手を探すのが大切でしょう。M&Aでは、従業員から反発や不安から大量辞職につながりやすいデメリットがあります。
廃業を回避できても、従業員が退職してしまっては意味がありません。したがって、後継者不足問題だけでなくM&A後の方針に関しても事前に検討しておく必要があるでしょう。M&A仲介会社などの専門家に仲介を依頼すると、スムーズに交渉を進めやすくなります。
6. 廃業回避のために後継者に必要な能力
廃業回避のために後継者に必要な能力はいくつかあります。経営者のスキルはすぐには習得できないため、長期的な計画を策定したうえで進めていく必要があるでしょう。
中小企業庁が発表している中小企業白書によると、後継者を決定する際に重視していることに対する回答で、「リーダーシップが優れていること」「経営に対する意欲が高いこと」「決断力・実行力が高いこと」「自社の事業・業界に精通していること」などが高い割合を占めていました。
経営者にとって、後継者には実務能力だけでなく経営面における高い能力を求めているのがわかります。中小企業の後継者候補に必要な能力は主に以下が考えられるでしょう。
- 実務に関する知識と経験:さまざまな部署の実態をつかんでおく
- 経営を受け継ぐ覚悟:従業員や顧客・取引先に対する責任が伴うため、普段の業務や言動、態度から見て判断する
- 経営能力:民間企業や商工会議所が実施するセミナーや研修を受ける
- 経営理念の理解と共感:経営理念への理解と共感があるかどうかを判断する
- リーダーシップ・決断力:リーダーシップに加え、重要な場面で責任を持って決断できる力が必要
7. 廃業の回避に役立つ事業承継・引継ぎ補助金
廃業の回避に役立つ令和3年度補正予算の事業承継・引継ぎ補助金を解説します。
事業承継・引継ぎ補助金とは
中小企業庁が行っている事業承継補助金制度は、中小企業の継続的事業運営を目的とした制度です。中小企業の廃業を避けるため、企業が事業承継や事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎなど、費用の一部が助成金として国の予算から支給される仕組みです。
令和3年度補正予算の事業承継・引継ぎ補助金では、経営革新事業、専門家活用事業、廃業・再チャレンジ事業の3事業を設定しています。
事業承継・引継ぎ補助金の内容
令和3年度補正予算の事業承継・引継ぎ補助金は3種類の事業があります。
- 経営革新事業
- 専門家活用事業
- 廃業・再チャレンジ事業
事業承継・引継ぎ補助金の経営革新事業には、創業支援型(Ⅰ型)、経営者交代型(Ⅱ型)、M&A型(Ⅲ型)と3つの類型があります。
タイプ | 申請内容 | 補助率 | 補助金額の範囲 | 備考 |
創業支援型 (Ⅰ型) |
・事業承継対象期間内における法人(中小企業者)設立、あるいは個人事業主としての開業予定 ・創業にあたり廃業を予定している者から、株式譲渡、事業譲渡により、経営資源(設備、従業員、顧客)の引き継ぎを受けるのが条件 |
2/3以内 | 600万円以内 | 物品・不動産のみを保有する事業の承継は対象外 |
経営者交代型 (Ⅱ型) |
・親族内承継や従業員承継などの事業承継(事業再生も含む) ・産業競争力強化法に基づく認定市区町村あるいは認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者、経営に関して一定の実績や知識を有している者 |
2/3以内 | 600万円以内 | 承継者が法人の場合、事業譲渡や株式譲渡による承継は原則として対象外 |
M&A型 (Ⅲ型) |
・事業再編・事業統合などのM&A ・産業競争力強化法に基づく認定市区町村あるいは認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者、経営に関して一定の実績や知識を有している者 |
2/3以内 | 600万円以内 | 物品・不動産のみを保有する事業の承継は対象外 |
専門家活用事業には、買い手支援型(Ⅰ型)、売り手支援型(Ⅱ型)と2つの類型があります。
タイプ | 申請内容 | 補助率 | 補助金額の範囲 |
買い手支援型(Ⅰ型) | 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを生かした経営革新を行うこと。 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引(けんいん)する事業を行うこと。 |
2/3以内 | 600万円以内 |
売り手支援型(Ⅱ型) | 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引(けんいん)する事業を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。 | 2/3以内 | 600万円以内 |
廃業・再チャレンジ事業とは、廃業・再チャレンジを行う中小企業者などを支援する事業です。経営革新事業/専門家活用事業との併用申請と、廃業・再チャレンジ事業単独での申請があるでしょう。併用申請のケースは以下の3つです。
- 事業承継またはM&Aで事業を譲り受けた後の廃業
- M&Aで事業を譲り受けた際の廃業
- M&Aで事業を譲り渡した際の廃業
その他の支援制度
小規模企業共済制度(廃業支援ローン)は、企業の廃業を回避する際に活用できる制度です。 個人事業者自身が退職金の積み立てをできる制度です。この制度を利用すると、会社を整理した際にまとまった金額が退職金として入ってくるため「廃業支援ローン」ともいわれています。
一般的に、廃業の際には設備の廃棄などで多額の出費が発生することが多いので、同制度を利用すれば負担が軽減できます。廃業支援ローンを活用し、積み立てた費用の一部を経費に充てれば事業承継がスムーズに実行され廃業が回避できるでしょう。
今後の展望
事業承継を考えている経営者は今後の国の補助金制度が気になるかもしれません。コロナ禍による社会的な影響に鑑みて、今後も制度変更は考えられます。そうなれば、事業承継の件数は増加してくるでしょう。
M&Aを検討している経営者はM&Aの専門家に相談をし、サポートを受けて進めていくのが重要です。M&Aの意思決定を促進する専門家の役割を担っていますので、経営者の要望に沿ったサポートが受けられるでしょう。
8. 廃業を回避するために事業承継・M&Aを検討すべき理由
廃業と事業承継・M&Aにはそれぞれメリットとデメリットがあり、廃業が必ずしも悪いわけではありません。
しかし、会社を存続させる事業承継・M&Aは、従業員の雇用を守ったり顧客や取引先との関係を維持したりするなど社会的なメリットが多いです。
事業承継・M&Aを行うべきケースで、M&Aに壁があるなどの理由で廃業する事例があります。しかし、廃業する前に事業承継・M&Aの可能性を検討すべきといえるでしょう。
事業承継と廃業(清算)については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
9. 事業承継・M&Aに関する相談先
事業承継・M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、主に中堅・中小企業のM&Aを手掛けるM&A仲介会社です。専任のM&Aアドバイザーが親身になって案件をサポートします。
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10. 廃業を回避する方法のまとめ
企業経営者や個人事業主にとって、廃業は常に直面する可能性がある問題です。廃業とは何か理解し、事業承継やM&Aにより回避する方法を知れば、最良の選択が可能となるでしょう。
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