建設会社の事業承継の動向!準備から引き継ぎまで完全ガイド【事例あり】

企業情報本部長 兼 企業情報第一本部長
辻 亮人

大手M&A仲介会社にて、事業承継や戦略的な成長を目指すM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、経営者が抱える業界特有のお悩みに寄り添いながら、設備工事業や建設コンサルタント、製造業、医療法人など幅広い業種を担当。

建設会社の後継者がいない場合に、M&Aを用いて事業承継を行う経営者は多いです。この記事では、建設会社の事業承継の方法や成功させるためのポイントを解説します。納得した事業承継を行って、安心して建設会社を引き継ぎましょう。

目次

  1. 建築業界の概要
  2. 建築業界の事業承継
  3. 建設業界の事業承継での課題
  4. 建設会社の事業承継には早めに取り組もう!
  5. 建設会社の事業承継を考えたときに最初にすべきこと
  6. 建設会社の事業承継における3つの後継者選定方法
  7. 後継者が身近にいないなら廃業よりM&Aが正解!
  8. 建設会社の事業承継の成功事例
  9. 建設会社の事業承継をM&Aで行う際の流れ
  10. 建設会社の事業承継の5つの注意点と対策
  11. 建設会社の事業承継におすすめの相談先
  12. 建設会社の事業承継まとめ
  13. 建設・土木業界の成約事例一覧
  14. 建設・土木業界のM&A案件一覧
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1. 建築業界の概要

建設業界にはさまざまな業種があります。建設業界の事業承継について説明する前に、どのような業種が含まれているのか、建設業界の概要を把握しておきましょう。

建築業界とは

建設業には総合建設業者と専門工事業者の2業態があり、総合建設業者とは土木建築などの工事を一式で請け負い、専門工事全体を取りまとめる事業者のことです。

対して、専門工事業者は左官工事や大工工事など、専門的な工事を請け負う事業者を指します。建設業は、国や民間からの工事受注を受けた事業者がそれぞれの工事を専門の下請け業者へ依頼して完成まで手掛けるケースが一般的です。

建設工事は一社ですべて行うケースは少なく、建設業界は下請けから二次受け・三次受けと連なるピラミッド構造となっています。

2. 建築業界の事業承継

建設業界は中小事業者が多く、後継者不在に悩む事業者も少なくありません。帝国データバンクが行った調査では、2023年の建設事業者の後継者不在率は60.5%であり、2021年より2.9%減少しているものの、非常に高い割合であることがわかります。

また、建設業界は慢性的な人手不足であり、なかでも若年層の人材が割合が非常に低いのが現状です。建設業はM&Aによるスケールメリットが働きにくいといわれます。

というのは、事業規模を拡大すると公共工事の入札資格が制限されるなどのデメリットがあり、労働力や原材料のコスト削減効果は得にくいためです。ですが、深刻な人手不足を解消するため、M&Aによって人材を確保するケースは非常に多くみられます

参考:株式会社帝国データバンク「 特別企画:全国企業 後継者不在率 動向調査(2023)」

3. 建設業界の事業承継での課題

建設業を行うには許認可が必要であり、管理責任者を現場に置かなければならないなどの決まりもあります。建設業界の事業承継での課題は、このような事業特性によるものです。ここでは、建設業界の事業承継における2つの課題について説明します。

建設業許可の引き継ぎ

建設業を行うためには、国土交通省の許可が必要です。そのため、建設業界の事業承継では許可の引継ぎが重要となりますが、法人と個人事業ではその扱いが異なります。

法人への事業承継では、商業登記を変更すれば許可の引継ぎが可能です。個人事業では許可の引継ぎが認められていないため、事業承継を行う個人事業主が建設業許可の廃業届を行ってから、事業を引き継ぐ事業主が新たに許可を申請しなければなりません。

ですが、2020年10月に建設業法の改正が行われ、合併や事業譲渡および相続の場合は建設業許可の引き継ぎが可能となり、個人事業主も相続で事業を引き継ぐケースでは、建設業許可の引き継ぎが認められるようになりました。

経営管理責任者の不足

建設業を行うためには、経営管理責任者を社内に一名以上置くことが義務付けられています。経営管理責任者とは対外的な営業を行う際の責任者を指し、実務経験などの要件を満たしていなければ経営管理責任者には就けません。

個人事業の場合は事業主自身が経営管理責任者であるケースが一般的ですが、法人の場合は常勤役員のうち一名以上が経営管理責任者であることが決められています。

建設業の事業承継では経営管理責任者を引き継げるかどうかが問題となることもあり、譲渡側は経営者が経営管理責任者に就いている場合、ほかに条件を満たす人物が社内にいるかなど事前に確認しておかなればなりません。

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4. 建設会社の事業承継には早めに取り組もう!

建設会社の事業承継は、早めに取り組むのが良いとされています。自身が経営から離れるにあたって、後継者に会社を引き継いでもらいたいなら、早めに準備を始めて損をすることはありません。

事業承継をしようと思って後継者を探してみても、親族や従業員に後継者が見つからないというケースもよくあります。2019年の帝国データバンクの調査では、後継者不在率は65.2%となっています。

しかし、後継者がいない場合でもM&Aという方法で事業承継を行う建設会社は多いので安心してください。

どの事業承継方法をとるとしても、早めに着手することが成功の鍵です。慌てて事業を引き継いでも、経営が傾いては意味がありません。

建設業界の需要は落ち着いていくと見られていますが、実力ある経営者に事業承継できれば、会社は発展していくはずです。安心してリタイアができるように、入念に準備をして事業承継を成功させましょう

しかし、「事業承継について何から始めれば良いのかわからない」「今すぐにリタイアする気はないから事業承継については後回しにしよう」という方も多いでしょう。

ここでは建設会社の事業承継を少しでも意識したときに、行っておくと良いことを説明していきます。

5. 建設会社の事業承継を考えたときに最初にすべきこと

建設会社の事業承継を考えたときに最初にすべきことは、経営状況と経営課題の把握です。

経営状況や経営課題が不明確なままでは、何をどのように後継者に引き継げば良いのかわかりません。したがって、まずは建設会社の現状を整理してください。

ここで重要なのは、経営状況を整理する際に考えなければならない自社の経営資源に、目に見えない知的資産も含まれることです。単に株式を後継者に渡せば事業承継が完了するというわけではありません。

事業承継ではさまざまなものを引き継ぎます。2019年の中小企業庁の情報によると、後継者を選んでから事業承継が完了するまでに3年以上かかる企業が全体の約4割を占めています。

事業承継は非常に時間がかかります。まだ今すぐに事業承継をしようと思っていない場合でも、早めに経営状況と経営課題の整理だけは行っておきましょう

また、事業承継を成功させるためには、後継者が経営しやすい環境を作ってあげることが大切です。経営状況や経営課題が具体的に挙げられたら、どこまで会社を磨き上げてから引き継ぐのかについても考えましょう。

現状が整理できたら、後継者を選定していきます。

6. 建設会社の事業承継における3つの後継者選定方法

建設会社の事業承継における後継者の選定方法は以下の3つです。建設会社の後継者を探そうと思ったとき、親族内承継と親族外承継をイメージする方が多いでしょう。しかし、身近に後継者がいなくてもM&Aによる事業承継ができます。

①親族内承継

中小企業において親族内承継は最も馴染みのある方法であり、多くのケースで活用されています。

親族内継承とは

経営者の子どもなど親族から後継者を選び、事業を引き継ぐ方法です。親族内承継は、自社株と保有資産を後継者へ引き継ぐかたちで行われます。

親族内承継のメリット

親族内承継のメリットとしては、主に以下の3つが挙げられます。

  1. 従業員や取引先などの関係先から理解を得やすい
  2. 経営者としての教育期間が確保できる
  3. 所有と経営の分離が起こらない

1つ目は関係先からの理解が得られやすいことです。従業員や取引先などの関係者は経営者の親族であれば心情的に受け入れやすいため、理解が得られやすいメリットがあります。

2つ目は経営者としての教育期間を十分確保できることです。後継者の教育期間は少なくとも数年かかるといわれていますが、経営者の親族を後継者とする場合は事業承継の実施時期に合わせて早い時期から育てていくことができます。

3つ目は所有と経営の分離が起こらないことです。親族内承継では後継者へ財産と経営権を一緒に引き継ぐことができるので、所有と経営の分離が起こらず、スムーズな事業運営が可能となります。

親族内承継のデメリット

一方で親族内承継のデメリットには、以下の2点があります。

  1. 適性のある後継者が親族内にいない場合がある
  2. 親族内で争いが起こる可能性がある

親族内に後継者候補がいても、必ずしも適性が備わっているとは限りません。また、経営者としての資質がある人物が親族内にいても、事業を継ぐ意思がないケースもあります。

どちらの場合も無理に事業承継をしてしまうと経営状態が悪化するリスクもあるため、難しいと判断した場合はM&Aによる事業承継など別の手段も視野にいれたほうがよいでしょう。

また、相続による事業承継では後継者候補以外にも相続人がいるケースが多いです。この場合、相続人が経営権(株式)や財産分与について争いがおこるケースも珍しくありません。

株式が分散してしまうと経営権が掌握できなくなり、事業がうまくいかない可能性もあるため、親族内承継を検討している場合は経営者自身が生前から後継者や財産分与について決めておくことが必要です。

②親族外承継

自社の役員や従業員に優秀な人材がいる場合、後継者候補に選ぶこともできます。資質が備わった人材に事業を任せられるため、親族内に後継者候補がいない場合は選択肢のひとつとなる方法です。

親族外承継とは

親族外承継とは、経営者の子供など親族以外から後継者を選定して事業を引き継ぐ方法です。後継者候補は自社の役員や従業員などであり、企業理念や経営方針を十分理解している人材が選ばれるケースが多くみられます。

親族外承継のメリット

親族外承継では社内の役員や従業員などから後継者を選ぶため、資質や能力を見極められることが最も大きなメリットです。

また、企業理念や経営方針など他者への引継ぎが難しい要素もよく理解しているため、事業の一貫性が保ちやすいというメリットもあります。

親族外承継のデメリット

親族外承継の場合、株式は有償譲渡するケースが一般的ですが、その際に最大のデメリットとなるのは資金調達です。株式の評価額は優良な企業ほど高くなり、後継者個人が経営権の掌握に必要な株式を取得できるだけの資金を持っているケースはほぼありません。

そのため、株式を取得するために融資を受ける必要がでてきますが、個人保証を負うリスクから後継者候補から事業承継を辞退される可能性もあります。

③M&Aによる事業承継

親族内承継や親族外承継が難しい場合でも、M&Aを活用することで事業承継を行うことができます。

M&Aによる事業承継とは

M&Aによる事業承継とは、株式譲渡や事業譲渡などのM&A手法を用いて、自社あるいは事業を他社へ引き継ぐ方法です。

ほとんどの場合は株式譲渡が用いられ、自社の発行済み株式を第三者(他社)へ売却することで経営権を移転させます。

M&Aによる事業承継のメリット

M&Aによる事業承継のメリットには、大きく以下の4つが挙げられます。

  1. 広い範囲から後継者を探すことができる
  2. 経営者は個人保証から解放される
  3. 創業者利潤を獲得できる
  4. 従業員の雇用が維持できる

M&Aの相手先は、仲介会社などを介して広い範囲から探します。経営者の周りに後継者候補がいなくても、他社へ事業を引き継げる点が最も大きなメリットです。

また、中小企業が融資を受ける際は経営者が個人保証を負うことが多く、これが障壁となり親族への事業承継が難しかったり、なかなか引退できなかったりするケースも多くみられます。

M&Aによる事業承継では、多くの場合、譲受側が保証自体を引き受けるか融資を肩代わりするかたちをとるため、経営者は個人保証が解除される点もメリットです。

さらに、株式譲渡の場合はオーナー経営者が売却した利益を得ることができるので、セカンドライフの資金にするなど自由に使うことができます。

そのほか、M&Aによる事業承継では従業員の雇用契約も譲受側へ引き継ぐことが可能です。引継ぎ方法は手法によって違い、株式譲渡であれば包括的に承継され、事業譲渡であれば個々に契約しなおすかたちで譲受側へ雇用を引き継ぐことができます。

M&Aによる事業承継のデメリット

M&Aによる事業承継にはデメリットもあり、主なものには以下が挙げられます。

  1. 相手先がみつからない可能性もある
  2. 従業員が離職するリスクがある
  3. M&A後に経営方針が変わる可能性がある

1つ目は相手先がみつからない可能性があることです。企業の経営状態や市場動向などのさまざまな要因がありますが、M&Aはすぐに相手先がみつかるというものではなく、最終的にマッチングせずに終わったり、交渉へ進んでもM&Aが成立しなかったりする可能性もあります。

M&Aによる事業承継の成功率を高めるためには、事業承継の検討を始めた早めの段階で専門家に相談し、実施タイミングをはかることもポイントです。

2つ目はM&Aによって従業員が離職する可能性があることです。M&Aを行った理由や従業員の処遇などを丁寧に説明しなければ、混乱や反感を招く可能性があり、従業員の離職にもつながりかねません。キーマンや幹部が離職すればM&A後の事業運営にも影響しかねないため、公表のタイミングや内容には十分な注意と配慮が必要です。

また、M&A後に譲受側の経営方針に沿って事業を行います。経営方針だけでなく従業員の雇用条件も変更される可能性があるため、譲渡側は交渉段階から従業員の雇用条件について譲受側とよく話し合ておくことが重要です。

7. 後継者が身近にいないなら廃業よりM&Aが正解!

後継者が身近にいない場合、廃業よりM&Aを行った方がよいと考えられる理由には、以下の4つがあります。廃業を選ぶと費用がかかるうえに、さまざまな関係者に影響が出ます。それぞれの理由について、順番に確認していきましょう。 

①廃業費用がかからない

まず、M&Aを行えば、廃業の際に必要な費用がかかりません。廃業費用とは、例えば設備を廃棄する費用や、事務所のテナントを入居時に戻す原状回復費用です。

建設会社の廃業費用は他の業種に比べて低いといわれています。しかし、それでも最低限のお金は必要となるので事前に考えておかなければなりません。

中小企業庁の情報によると、建設会社で廃業費用がかからなかったケースは全体の3.2%と非常に少ないです。

建設会社が事業を行う際、設備のリース・レンタルを行わずに自社でまかなっている場合は、廃業費用は高額になりやすいです。しかし、M&Aを行えば廃業費用はかかりません。それだけではなく、現経営者は売却による利益も得ることができます。

このように、廃業ではなくM&Aを選ぶと、金銭的なメリットが大きいです。

②従業員の職がなくならない

従業員の職がなくならないというのも、廃業を避けるメリットです。

建設会社は人手不足で悩んでいるケースが多いので、転職先がないという従業員は少ないでしょう。しかし、中小規模の会社を中心に、建設会社は経営者のカラーが社風に現れやすいです。

あなたの会社を気に入って長く勤めている従業員が、転職先で必ずうまくいくとは限りません

M&Aで会社を引き継いでもらえば、今まで勤めてきた顔なじみの仲間たちと引き続き働いてもらえるので廃業よりも安心です。

③取引先に迷惑がかからない

廃業してしまうと取引先に迷惑がかかるということも覚えておかなければなりません。

特に、自社が大きなシェアを占めている取引先がいるなら、廃業すると大きな迷惑をかけてしまいます。そうでなくても、定期的に仕事を発注してくれていた取引先には、廃業したら別の建設会社を探してもらうことになるでしょう。

新しい建設会社を探す際には与信情報を手に入れるなど手間もかかってしまいます。

M&Aで自社を存続させれば、取引先に迷惑がかかりません。そのうえ、人材の数も増えて今まで以上に受注できる工事の幅も広がり、取引先も今まで以上に安心して仕事を発注できるでしょう。

④会社が成長して対応できる工事が増える

廃業すれば会社はなくなってしまいますが、M&Aで存続させれば会社は成長していきます。そうすることで、今までは対応できなかった工事も可能になることが珍しくありません。

例えば、同業他社に買収されれば、買い手の人材や技術力も活かした工事ができるようになります。新たな工事に取り組めば、自社の従業員の能力も高まっていくでしょう。

自分の育てた従業員たちが大きな工事を成功させるのは、あなたにとっても達成感があるはずです。リタイア後も自分が経営してきた会社の成長を楽しみにできるのは、非常に嬉しいポイントだといえるでしょう。

以上の理由から、廃業ではなくM&Aを選ぶのが良いといえます。身近に後継者がいないというだけで事業承継を諦めてしまうのはもったいないです。親族や従業員から後継者が見つからないとしても、会社を存続させることを諦めないでください。

8. 建設会社の事業承継の成功事例

近年の建設会社の事業承継の主な成功事例を紹介します。

守谷商会と未来ネットワークの事業承継

2024年11月8日、守谷商会は、ユニットハウスの製造・設計・企画などを手がける未来ネットワークの全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。

守谷商会は、長野県を拠点に大都市圏や中京圏で総合建設業を展開しています。今回のM&Aにより、新たな商品をグループの事業ラインアップに加えることで、顧客ニーズの多様化や事業環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できる体制を構築し、競争力の強化を目指しています。

未来ネットワーク株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

ナガワと鳥海建工の事業承継

2020年に行われた建設会社の事業承継の事例もご紹介しておきます。

2020年9月に、ナガワは、主に埼玉県で総合建設事業を行っている鳥海建工の全株式取得により、子会社化することを発表しています。

ナガワグループは、モジュール・システム建築事業の拡大を図っているため、この買収により、ナガワが経営戦略としているモジュール・システム建築事業の体制が強化できることを見込んでいます

9. 建設会社の事業承継をM&Aで行う際の流れ

M&Aは必要な工程が多いため、大まかな流れを頭に入れておくとスムーズに事業承継を行うことができます。ここでは、建設会社の事業承継をM&Aで行う場合の流れをみていきましょう。

まだ具体的な事業承継時期が決まっていないという場合も、できるところまでは準備しておけば、よいタイミングを逃さずにM&Aを行うことができます。

①経営状況の確認

すでにご紹介しましたが、建設会社が事業承継をする際にまずするべきことは、経営状況の確認です。売上や取引先の数といった自社の現状や、引き継ぐべき経営資産を整理することから始めましょう。

特に重要なのが、後継者に引き継ぐ経営資産についてです。事業承継といえば、経営権を後継者に渡せば良いと考えている方も少なくありません。

しかし、事業承継を成功させるには、経営権だけではなく、株式や会社の設備などの資産に加え、知的資産の承継も必要です。知的資産とは、例えば経営理念やノウハウ、従業員との関係性、取引先との人脈が挙げられます。

建設会社は経営者の人柄で成り立っている部分も大きいので、特に知的資産が重要です。M&Aで事業を引き継ぐ場合も、買い手に自社の知的資産を理解してもらうことが重要となります。

自社の強みがどこにあるのかを目に見えない部分まで確認し、後継者に引き継げるように準備していきましょう。

②経営課題の把握と磨き上げ

次に行うことは、経営課題の把握と磨き上げです。事業承継を実行する前に、より良い状況で後継者に引き継げるよう準備していきます。

事業承継は、会社を飛躍させる良い機会です。例えば競争力が弱いのであれば、強みを増やして弱みを改善しなければなりません。自社の職人の技術力向上やサービス範囲の拡充、若手の採用と育成などできることは多いです。

また、建設会社は取引先が偏っているケースも珍しくありません。事業承継前に新たな取引先を増やし、事業リスクを分散させておくと安心して引き継げます。

収益性の良い会社や事業リスクの低い会社はM&Aでも買い手が見つかりやすくなるので、しっかり磨き上げておきましょう。

③買い手への条件設定

自社を磨き上げることができたら、買い手への条件を決めていきます。

条件を考えることなく買い手探しを行うのは良くありません。なぜなら、買い手によっては、気持ちに反した経営が行われてしまう可能性があるためです。

例えば、従業員の雇用を継続してもらうことを条件にする経営者はたくさんいます。買い手と売り手で考え方は違うので、「この条件は当たり前だからいうまでもないだろう」と、安易に考えるのはやめましょう。

どのような買い手なら心配なく会社を任せられるのかを考えてみてください。従業員や取引先といった自社の関係者も安心できる買い手をイメージすると考えやすいです。

④M&A仲介会社の選定

どのような会社に自社を引き継ぎたいかを決めたら、M&A仲介会社を選びます。M&A仲介会社を選ぶ際には、以下のポイントを意識しましょう。
 

  • 建設会社のM&Aの経験が豊富か
  • 専門家が親身になって話を聞いてくれるか
  • 報酬を無理なく支払えるか

建設会社の事業承継をM&Aで行う際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所には、建設会社の事業承継に精通したM&Aアドバイザーが在籍しており、親身になって案件をフルサポートいたします。

当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、建設会社の事業承継をM&Aで行う際は、お気軽にご連絡ください。

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⑤買い手探し

M&A仲介会社が選べたら、買い手探しを行っていきます。事前に決めた条件をM&A仲介会社に伝えつつ、自社に最適な買い手を探しましょう

条件によってはすぐに買い手が見つからない可能性もあります。その場合はM&A仲介会社と条件を相談しつつ、会社の磨き上げを続けておくのが良いです。

このとき避けるべきなのは、納得できない買い手を慌てて選んでしまうことです。事業承継はやり直しができないので、落ち着いて進めていきましょう。

⑥買い手との条件交渉

買い手が見つかったら、条件交渉を行います。

M&Aでは、事前に伝え合っていた条件以上の契約にできることも少なくありません。条件交渉の際には、自社の強みがよくわかるように資料を持参してください。

また、相手の要望も聞き取りながら、お互いが納得できる条件を探していきましょう。買い手は自社の後継者となってくれる存在です。一方的に自分の条件を押し付けるのはやめて、お互いの希望をしっかり伝え合うのが良いといえます。

ちなみに、条件交渉の際にM&A仲介会社が同席してくれることが多いです。第三者としての客観的な意見をもらえばスムーズに交渉しやすいでしょう。

⑦デューデリジェンスと条件調整

大まかな条件交渉が終わったら、デューデリジェンスを行います。

デューデリジェンスとは、買い手が売り手について監査することです。経営自体や税務関係など、さまざまなところに問題がないかを確認していきます。

デューデリジェンスの結果によっては、先ほどの段階で決めた条件が調整されます。

あまり買い手に知られたくない情報もあるかもしれませんが、隠すのは絶対にやめましょう。M&Aが成立してから不当に情報を隠していたことが発覚すれば、大きなトラブルになってしまいます。

買い手に気持ちよく事業を引き継いでもらえるように、デューデリジェンスには積極的に協力していきましょう。

⑧事業承継の実行

調整された条件にも納得できたら、会社を引き継ぐための契約を結ぶなどして事業承継を実行します。細かな手続きはケースによるので、M&A仲介会社の指示に従いましょう。

事業承継を実行する際には、従業員や取引先に丁寧に説明と挨拶をした方が受け入れてもらいやすいです。

自分が経営から離れるからといって、いい加減な引き継ぎをしてしまうと、買い手は円滑に事業を引き継げません。買い手の会社と自社が統合して経営がうまくいくまでは、買い手のサポートを続ける気持ちでいるのが良いでしょう。

また、親族にも自社を売って引き継いでもらうことを伝え、納得してもらわなければなりません。過去に後継者になることを断られていたとしても、M&Aについて説明して理解してもらってください。

ここまでさまざまな手続きを紹介しましたが、不備なく行えるかが不安な方もいるはずです。しかし、M&A仲介会社にサポートを依頼すれば、丁寧に手伝ってもらえるので心配はいりません。建設会社の事情に詳しい専門家にサポートしてもらえれば、安心して手続きを進めていけるでしょう。

10. 建設会社の事業承継の5つの注意点と対策

ここでは、建設会社が事業承継を行うときの注意点と対策についてみていきましょう。これらのポイントを意識して事業承継を進めることは、成功率の向上やリスク回避につながります。また、事前に対策できる部分は可能な限り行っておくことも、事業承継成功のポイントです。

①建設業許可について事前に考えておく

事業承継の際には、建設業許可について事前に考えておきましょう。

建設業許可を取り直す場合は、早くても1カ月ほどかかります。それも踏まえて事前にスケジュールを考えておかなければなりません。

許可の引き継ぎは、個人事業主の場合と法人の場合で異なります。個人事業主の場合、建設業許可は引き継げません。ですので、事業を引き継いだ人が新たに許可を取り直すことになります。

一方で法人の場合は、建設業許可は会社全体に対して出されているものです。したがって、事業承継によって会社の経営者が代わったときには引き継ぐことが可能です。

しかし事業承継によって建設業の許可要件を満たさなくなったケースでは、法人でも許可が引き継げなくなります。建設業許可の主な条件は以下の5つです。
 

  1. 経営業務の管理責任者がいること
  2. 専任技術者がいること
  3. 財産的基礎があること
  4. 欠格要件に該当しないこと
  5. 営業所があること

特に、経営業務の管理責任者や専任技術者については事業承継で変わりやすいので気をつけなければなりません。建設業の許可が引き継げるように、後継者にきちんと理解してもらう必要があります。

どうしても許可要件を満たすのが無理な場合は、再取得の手続きが必要です。スムーズに事業を引き継いでもらうために、事前に許可について確認しておきましょう。

②公共工事の入札参加資格が変わるか確認する

公共工事の入札参加資格が変わるか確認することも重要です。

国土交通省が定めるランク分けが変われば、競争参加資格も変わります。そうすると、今まで参加できていたランクの工事が入札できなくなるかもしれません。

自社や事業承継先の会社が公共工事をよく受注していた場合は、特に注意が必要です。事業承継をする前に、ランク分けが変わらないかどうかを確認しておきましょう。

③事業承継後の社風の変化に気をつける

事業承継後の社風の変化に気をつけることも大切です。

建設会社は経営者が変われば、大きく社風が変わることがあります。社長であるあなたの人柄に惹かれて働き続けてくれていた従業員が多ければ、事業承継後は働くモチベーションが下がってしまうかもしれません。

事業承継は目に見えない資産を引き継ぐことも大切です。まずは後継者に今の社風を知ってもらいましょう

そして、事前に従業員には事業承継の必要性や、後継者を選んだ理由をしっかり説明しておく必要があります。事業承継について理解してもらうことで、あなたがいなくなってからも会社を発展させるために協力してもらえるでしょう。

④従業員や取引先へのケアを怠らない

事業承継の際には、従業員や取引先へのケアを怠らないようにしなければなりません。

経営者が変わると、関係者に大きな影響があります。説明なく経営者がリタイアすると、社内は大きく混乱するでしょう。

そして事業承継を行うとき、特に取引先へのケアは後回しにされがちです。事業の引き継ぎを考えた場合にまずは社内のことを重視するのはおかしなことではありません。

しかし、現経営者の人柄があって取引を続けてもらっていたのであれば、事業承継をきっかけに取引が打ち切られることもあります。

取引は続けてもらえるケースでも、契約内容が大幅に変わることも少なくありません。したがって、事業承継を決めたときには従業員だけではなく、取引先ともしっかりコミュニケーションをとって事業承継について理解してもらいましょう

⑤親族に理解してもらう

親族に事業承継について理解してもらうことも大切です。

特に、親族内承継以外の場合には、内心で後継者になりたいと思っている人がいないかをしっかり確認しなければなりません。身近に後継者希望の人がいるのに、簡単に外部への引き継ぎを決めてしまうと後々トラブルになりやすいです。

ただし、親族にM&Aの詳細な話を伝える際、時期には気をつけた方が良いです。M&Aは情報管理が成功のポイントです。まだ契約が成立していないのに情報漏洩してしまうと、M&A自体が破断することもあります。

したがって、まずは身近に後継者希望の人がいないか確認し、いないことがわかったらM&Aで事業承継することを説明しましょう。そして買い手企業に関する具体的なことを伝えるのは、M&Aが成立してからにしてください。

ここまで、建設会社が事業承継する際の注意点を見てきました。事業承継する際には注意点を押さえたうえで取り組むことがポイントです。

もし少しでも不安なことがあるなら、早めに専門家に相談しましょう。

11. 建設会社の事業承継におすすめの相談先

建設会社の事業承継におすすめの相談先をご紹介します。

金融機関

最近、金融機関が企業のM&A(合併や買収)を支援する専門部署を新設する動きが顕著です。大手投資銀行やメガバンクは、資金調達のアドバイスや取引戦略の立案など、M&Aプロセス全体をサポートする幅広いサービスを提供しています。これにより、企業は事業承継や資金調達といった複雑な課題を効果的に解決し、専門家の知見を活かして取引の成功率を高めることが可能です。

一方で、大型案件が優先される傾向があり、中小企業が十分な支援を受けられない場合もあります。そのため、自社の規模や目的に合った支援機関を慎重に選ぶことが重要です。また、こうしたサービスには高額な費用がかかる場合があるため、事前に料金体系を確認し、費用対効果をしっかりと見極める必要があります。

公的機関

近年、事業承継やM&Aを支援する公的機関の取り組みが大幅に充実しています。「事業承継・引継ぎ支援センター」は全国に設置され、後継者不足に悩む中小企業を対象に、無料で事業承継やM&Aに関する相談や情報提供を行っています。

さらに、企業間マッチングの仕組みが整備されており、地方企業でも専門的な支援を受けやすい体制が整っています。個人事業主向けの支援も強化されており、必要に応じてM&A仲介会社や専門家を紹介してもらうことが可能です。

一方で、公的サービスは民間仲介会社と比較してスピード感や柔軟性に限界がある場合があるため、利用する際にはその特性を理解し、自社のニーズに合った選択肢を慎重に見極めることが重要です。

これらの公的支援は、リスクを抑えながら事業承継やM&Aを進めるための有効な選択肢の一つといえるでしょう。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の売買をスムーズに進めるために専門的なサポートを提供する機関です。単に売り手と買い手を仲介するだけでなく、交渉の進行管理、企業価値の算定、契約書の作成など、取引を成功させるために必要なさまざまな業務を支援します。これにより、M&Aが初めての企業でも安心して取引を進められる環境が整っています。

特筆すべきは、広範囲なネットワークを活用して、理想的な取引相手を迅速に見つける能力です。このネットワークが取引の成功率を大幅に高める要因となっています。また、初心者にも分かりやすい説明を心がけ、不安を軽減する姿勢が魅力です。

ただし、仲介会社を利用するには着手金や中間報酬などの費用が発生する場合があるため、事前に料金体系を確認することが重要です。コストを抑えたい場合には、成功報酬型のサービスを選ぶことで、費用対効果の高い支援を受けることが可能です。

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12. 建設会社の事業承継まとめ

中小規模の建設会社の経営者はできるだけ早く事業承継に着手するべきです。後継者を選んでから事業承継が完了するまでに、3年以上かかることは少なくありません。

建設会社の事業承継は建設許可の引き継ぎなど注意するべき点も多いので、余裕を持ったスケジュールを考えておく方が安心です。手遅れになる前に後継者選びを始めて、安心して事業を引き継ぎましょう。。

13. 建設・土木業界の成約事例一覧

14. 建設・土木業界のM&A案件一覧

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