2022年11月21日更新
M&Aがクロージングするまでの手続き・流れとは?クロージング条件、必要書類も解説
M&Aを行うためにはクロージングが非常に重要です。しかし、実際の手続き・流れまで理解している人は少ないでしょう。この記事では、クロージングするまでの手続き・流れ、クロージング条件や必要書類などについて解説するので参考にしてください。
目次
1. M&Aのクロージングとは

クロージングとは英語のclosingであり、直訳すると「終わり」「閉鎖」などの意味です。
M&Aにおけるクロージングとは、最終契約書に基づいてM&A取引が行われ、株式譲渡や事業譲渡による引渡しの手続きと支払い手続きを行った結果、経営権の移転が完了することをいいます。
この記事では、M&Aがクロージングするまでの手続き・流れ、クロージング条件について解説しますが、まずはM&Aにおけるクロージングの重要性、M&A手法によるクロージング手続きの違いを見ましょう。
M&Aではクロージングが重要
M&Aにおけるクロージングは、法律に基づいて手続きが行われる非常に重要な手続きです。クロージングが全て完了し、売り手側企業の経営権が買い手側企業へ正式に移行して、はじめてM&Aが成約します。
クロージング手続きを行うにあたって、漏れや不適格な事項があった場合は、法律的にM&Aの有効性を証明できなくなるため、十分注意しましょう。
M&A手法によりクロージング手続きは変わる?
M&A手法によりクロージング手続きは変わり、M&Aにおけるクロージングまでの期間もさまざまです。一般的に、M&Aは相手先を探してからクロージングまで最低でも3~6カ月程度かかり、場合によっては1年以上かかるケースもあります。
株式譲渡のクロージング
取締役会決議のみでM&Aを実行できるM&A手法(株式譲渡など)もあります。
株式譲渡を選んだ場合、売却側から買収側への株式の譲渡と、買収側からの株式代金における支払いがクロージングの内容です。株券発行会社、非上場でかつ株券不発行の会社、上場会社により、手続きは異なります。
事業譲渡のクロージング
事業譲渡では、一般的に効力発生日に手続きは終わりません。事業譲渡に要する各契約の移管は、契約における相手方の同意が要り、同意を効力発生日に全て得るのは困難だからです。
買い手側から売り手側に対価は支払われますが、対価の支払いは重要な契約の移管が前提条件のこともあるでしょう。いずれにしても、M&A手法として事業譲渡を選ぶと、クロージングで法律において必要な手続きはありません。事業譲渡のクロージングは、資産の譲渡や契約の移管などのための手続きが行われるといえます。
合併、会社分割、株式交換・株式移転のクロージング
合併には吸収合併と新設合併があり、吸収合併の対価が現金であれば、クロージングの手続きとして現金の払い込みを行います。新設合併では、クロージングの際、設立登記における申請の手続きが必要です。
株式交換で対価が現金の場合は、クロージングとして現金の払い込みが実施されます。株式移転のクロージングでは、設立登記における申請の手続きが必要です。
M&Aのクロージングにかかる期間
一般的に、最終契約を結んでから一定の期間を空けてクロージングを実施します。実務では、最終契約を結んでからクロージングまでは、1カ月から1年くらいです。
法令などに基づく対応、デューデリジェンスで見つかった問題の修正、M&A取引の際に実施するべき事項の実施など手続きが多いため、時間がかかります。
2. M&Aがクロージングするまでの手続き・流れ
M&Aがクロージングするまでの手続き・流れはどのようになっているのでしょうか。ここでは、一般的なクロージングの流れを見ましょう。
【M&Aがクロージングするまでの手続き・流れ】
- 専門家への相談
- 企業価値評価
- M&A先の選定・交渉
- トップ同士の面談
- 基本合意の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終合意の締結
- クロージング
①専門家への相談
M&Aからクロージングまでの手続きには、専門的な知識が必要となるものが多いため、一般的にはM&Aの専門家におけるサポートのもとで進めます。
よく利用されるのはM&A仲介会社であり、M&Aの相手先探しからクロージングまでの一括支援が受けられる点が特徴です。まずは、M&Aの専門家にサポートを依頼して、具体的にどのようにM&Aを進めていくのかを決めます。
②企業価値評価
企業価値評価とは「エンタープライズ・バリュー」とも呼ばれ、企業そのものの価値や株式の価値のことです。企業価値評価は、売り手企業の譲渡価格の基準となるため、専門家に算出を依頼するのが一般的です。
主な企業価値評価の方法には、コストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチの3つがあり、これらを組み合わせて算出します。
③M&A先の選定・交渉
M&A仲介会社に依頼した場合は、自社の希望条件を伝えましょう。候補先企業を何社かリストアップしてくれるため、そのなかから交渉先候補を絞ります。
候補が絞ったら、「ノンネームシート」と呼ばれる匿名の会社概要を候補先業へ提示し、交渉へ進むかを検討してもらいます。M&A先を選定する際は、専門家に相談したうえで必要な情報を共有しながら検討してください。
④トップ同士の面談
M&A先の選定を行い交渉先の企業が決まり、ある程度交渉が進んだ段階でトップ同士の面談を行います。トップ同士の面談は、経営者同士が互いの人間性を知る機会でもあり、疑問に感じていることを直接質問できる機会でもあります。
譲渡先企業へのアプローチをある程度行っているため、条件に関しては大まかに決まっていますが、経営理念などの確認などもできる重要な工程です。
⑤基本合意の締結
トップ同士の面談が終わり、売り手側企業と買い手側企業がM&Aを行うことに大筋で合意したら、基本合意所の締結を行います。基本合意所に記載される内容は、取引の対象と価格・使用するM&Aスキーム・M&Aを実際に行う時期・独占交渉権の付与などです。
基本合意はいわば仮契約であり、次に行われるデューデリジェンスの結果によって、条件や取引価格が変更することもあります。基本合意書は一部の内容を除き法的な拘束力はないため、注意が必要です。
⑥デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスとは企業調査のことをさし、M&Aでは買い手側企業が売り手側企業に対して行うものです。
売り手企業が提出した財務や労務などの資料に相違がないか、専門家が細かく調査を行います。デューデリジェンスには、財務・税務・法務・人事・ITなどさまざまなものがあり、これらのいくつかを行うのが一般的です。
株式譲渡のような包括承継が原則となるスキームでは、簿外債務や偶発債務などがないかを徹底的に調査し、リスク回避に努めます。
売り手企業は、デューデリジェンスに必要な情報の提示を求められたら、協力する義務があります。都合の悪い情報などを隠してしまうと、後から大きな問題となるため情報開示はしっかり行いましょう。
⑦最終合意の締結
デューデリジェンスを実施した結果、売り手企業に問題がなく双方がM&Aの実施に合意したら、最終条件が決定して最終合意所の締結を行います。
最終合意書の締結には、事業や株式などM&Aで譲渡する内容・譲渡価格を記載しなければなりません。条件や取引価格はデューデリジェンスの結果を加味して、最終的に決定します。
最終合意書は基本合意書とは異なり、全ての内容に法的な拘束力があります。正式に締結したあとに一方的に破棄することがあれば、損害賠償を請求される可能性があるでしょう。
最終合意書の締結にあたっては、専門家とともに内容をしっかり確認したうえで、行ってください。
⑧クロージング
M&Aにおいてクロージングは最後の手続きとなり、最終契約の内容を基に売却側の経営権を買い手会社に移転させ、それに伴う対価の支払いを完了させます。
M&Aの最終契約締結からクロージングまでは、クロージング条件を満たすために必要な手続きもあるため、一定期間を空けるのが一般的です。
3. M&Aのプレ・ポストクロージング手続き
この章では、M&Aのプレクロージングとポストクロージングの手続きを見ましょう。
プレクロージング
最初に、プレクロージングを見ましょう。
クロージングにおける準備が、プレクロージングです。売却側と買収側における合意により実施し、最終契約の規定をしないこともあります。クロージングの前日や数日前に行うのが一般的です。
プレクロージングでは関係者が参加し、クロージングでチェックする事項が書かれたリストを用いて行います。
ポストクロージング
次に、ポストクロージングを見ましょう。クロージングの後に行う義務付けられた手続きが、ポストクロージングです。手続きは、下記の内容になります。
- 株主総会や取締役会で必要な決議を得る
- クロージングしてからの誓約事項の実施
- 財務諸表の作成
- 対価の調整、など
対価の調整では、対象会社における将来の業績などに関して買収側と売却側の意見が合わない場合などに、アーンアウト条項を用いるケースもあるでしょう。
4. M&Aのクロージング後の流れ
M&Aはクロージングしたら全て完了ではなく、クロージング後は総合プロセスを行う必要があります。統合プロセスは非常に難易度が高く、M&Aの成否を分けるといっても過言のない行程です。ここでは、M&Aのクロージング後の流れを見ましょう。
統合プロセスの実施
統合プロセスとは買収や合併の後に行われるもので、PMI(ポスト・マネジメント・インテグレーション)ともいいます。統合プロセスは大きくソフト面とハード面に分かれます。
総合プロセスにおけるソフト面について
ソフト面の総合プロセスでは、企業文化や風土などについての統合・浸透を行うために、新体制の発表や目標の提示などを行いましょう。
M&Aを行うと、買い手側の従業員が上の立ち場になってしまうことが多いですが、双方のキーパーソン同士で認識などをすり合わせるなどして、お互いの理解を深めていくことが重要です。
総合プロセスにおけるハード面について
ハード面の総合プロセスとは、業務・人事制度・システムなどの統一を行うことをいい、そのなかでも業務プロセスは慎重に進める必要があります。
人事制度や退職金制度などに関しては会社によって大きく異なる可能性があり、格差や不満などが生じやすくなるため、注意が必要です。今まで以上により効果を高めるために、双方のよいところを積極的に取り入れることも重要です。
5. M&Aのクロージングに必要な書類
この章では、M&Aのクロージングに必要な書類について、売却側と買収側に分けて見ましょう。
売却側の必要書類
最初に、売却側の必要書類から見ましょう。
- 会社実印押印の株主名簿写し
- 株式譲渡に関する名義書換の委任状と印鑑証明書、または名義書換済の株主名簿写し
- 株式譲渡承認申請書、株式譲渡承認書(譲渡する株式が譲渡制限株式の場合)
上記にプラスして、売却側の表明補償事項がクロージングで真実であり正確である、クロージングまでに売却側が行うべき義務を行っていることを証明する書類があれば、それが必要なこともあります。
買収側の必要書類
次に、買収側の必要書類を見ましょう。
- クロージング書類の受領書
- 印鑑証明書
- 登記事項証明書
クロージング書類の受領書は、売却側から必要な書類を授受したことを証明します。印鑑証明書は、印鑑が買収側のものであることを証明する必要書類です。登記事項証明書は、買収側の登記事項を示します。
6. M&Aにおけるクロージング条件とは
クロージング条件とは、M&Aを実施するために厳守すべき条件をいい、条件を満たさない限りクロージングは行えません。
クロージングを行う際は、必要な条件を全て満たしたうえで、売り手企業から買い手企業へ、株式や資産など対象となるものが移行されます。その後、買い手側企業から売り手側企業へ対価が支払われ、クロージングを迎えます。
クロージング条件が満たされなかった場合は、M&A取引を実行しなかったり、クロージング条件を変えなければならなかったりする可能性があるでしょう。
7. M&Aのクロージング条件を決める際の注意点
クロージング条件を決める際の注意点はさまざまですが、ここでは下記の2点を解説します。
- クロージングの価格調整を盛り込むようにする
- 具体的なクロージング条件を入れるようにする
クロージングの価格調整を盛り込むようにする
最終契約からクロージングを行うまでに譲渡対象の価値が変わった場合に備えて、取得対価の価格調整を行う内容を条件に盛り込みます。価格調整を行うことは一般的にはほとんどありません。価格が大きく変動してしまった場合は、価格調整を行う必要があるでしょう。
具体的なクロージング条件を入れるようにする
最終契約書のクロージング条項に具体的な内容を入れておくと、クロージングを円滑に進めやすくなります。クロージング条項には、主に以下の内容を盛り込みます。
- 正しい表明・保証事項が記載されている
- クロージングが行われるまでに前提条件を満たしていること
- 業務上の許認可の取得が終わっていること
- 独占禁止法による届出が終わっていること
- 重要な取引先や役員から同意を得ていること
8. M&Aのクロージングに関する相談先
M&Aを行うためにはさまざまな手続きを行わなければならず、専門的知識や経験も必要です。自社のみで行わずに、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。
M&A総合研究所では、豊富な実績と専門知識を持つM&Aアドバイザーが、M&Aのご相談からクロージングまで案件をフルサポートします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
無料相談を受け付けていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
9. M&Aがクロージングするまでの手続き・流れまとめ
M&Aにおけるクロージングとは、最終契約書に基づいてM&Aが行われ、株式譲渡や事業譲渡による引渡しの手続きと支払い手続きを行った結果、経営権の移転が完了することです。
クロージングは、法律に基づく手続きが行われます。クロージングが全て完了することにより、売り手側企業の経営権が買い手側企業へ正式に移行して、はじめてM&Aが成約します。
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