2021年03月08日更新
M&Aの実務を徹底解説!おすすめの本も紹介!

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
M&Aを進めるうえで専門家の協力は必須ですが、経営者としても最低限の実務知識を身につけておく必要があります。本記事では、M&A実務の進め方について要点をまとめました。実務について学習しやすいおすすめの本・書籍も紹介します。
1. M&A成功の秘訣は実務の事前準備
売却側・買収側問わず、M&Aは非常に規模の大きい取引です。当然ながらプロセスが複雑であるうえに、不測の事態が発生すれば決して容易には解決できません。
M&A実務を進めていく前には、以下に挙げる手順に沿って、M&A・会社売却を実施する動機および目的などを明確にしておくと良いです。
M&A・会社売却の動機を明確にする
M&A・会社売却は大きなイベントとなるため、ある程度の時間を確保し粘り強く交渉して相手を探すと、結果的にM&A・会社売却を成功に導ける可能性が高いです。
M&Aでは「どれだけ良い条件でM&Aできるか?」がポイントとなり、これを実現するためにも「なぜM&A・会社売却を実施するのか?」という動機を明確に持っておかなければなりません。
動機をしっかり記録しておく
M&Aの動機は、後継者不足・事業再編・セミリタイアなど、会社や経営者ごとに異なります。
ときに厳しい状況に立たされる交渉実務において、動機はM&A・会社売却を成し遂げるためのモチベーションとして必要不可欠です。明確にした動機は記録しておいて、M&Aの各プロセスで常に見返せる状態にしておくことをおすすめします。
M&Aの目標・目的を明確にする
動機を明確にした後は、M&A・会社売却における目標・目的を設定します。
具体的には、「M&A・会社売却によりどういった状態を作りたいのか?」「何が欲しいのか?」を記録しておき、その後の行動指針にすると良いです。
交渉場面では非常に多くの選択を迫られますが、行動指針がぶれなければ迷いが少ないため、判断力を欠くことなくプロセスを前に進められます。
目標・目的には、今後の会社運営面も含めて、少なくとも以下の項目を設定しておくと良いです。
- M&A・会社売却で得たい金額について
- 会社のガバナンスや経営者自身の将来的な身の振り方など、会社運営について
- 給与水準や人事に関する取り決めや解雇条件など、従業員の今後について
- 取引先との関係について
M&Aについて知る
動機や目的が定まった後は、実務遂行に向けてM&A・会社売却に関する知識を最低限身につけておく必要があります。
基本的に、M&A仲介業者などの専門家からサポートを受けない限り、M&A・会社売却プロセスを円滑に進めることはできません。
専門家からサポートを受けると専門知識が豊富なエキスパートに対応してもらえるため安心できますが、専門家に頼りきってしまうと想定外のトラブルが発生するおそれがあります。
M&A・会社売却の実務を成功させるためにも、自身でもM&Aに関する知識を身につけておきましょう。
2. M&Aの実務手順
動機や目的が定まり自身でも知識を身につけたら、いよいよM&A実務に着手していきます。
M&A仲介業者などへ相談する前に社内で検討すべき事項もあり、その点も含めて手順をまとめました。ここでは、売却側の視点を中心に紹介します。
- 事前準備
- 業界・企業分析
- M&A仲介業者への相談
- アドバイザリー契約の締結
- 売買先企業の絞り込み
- 秘密保持契約の締結
- トップ面談
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約の締結
- クロージング
それぞれの手順を詳しく見ていきます。
M&Aの実務手順①事前準備
社内におけるM&A実務として最初に実施するプロセスは、取引条件の検討および優先順位の設定です。
具体的には、以下の項目をひとつひとつ決めます。
- 売却を行う対象(企業や事業など)
- 希望売却(買収)価格
- 売却(買収)方法
取引条件に優先順位をつけておくと、交渉時に自社が譲れる条件と譲れない条件を明確にできるため、プロセスを円滑に進めやすくなります。
この段階において検討内容に不安がある場合には、M&A仲介業者などへの相談も有効策です。ただし、M&A仲介業者は外部の人間であるため、あくまでも自社が主体となって検討することをおすすめします。少なくとも、こうした条件の最終決定権は、自社にあることを肝に銘じておかなければなりません。
M&Aの実務手順②業界・企業分析
M&A・会社売却における相手企業には単純に事業を引き継いでくれる相手ではなく、M&A後に技術向上やコスト削減などのシナジー効果(相乗効果)を多く獲得できる相手を選ぶことで、成功に近づきます。
そのため、自社にとってどのような企業(どのような業種・どのような地区・どのような強みや弱みを持っているかなど)が理想の相手先となるかを検討しなければなりません。
シナジー効果を検討するにあたっては、自社についても十分に理解しておく必要があります。ここでは、自社の業務プロセス・強みや弱みを十分に理解するとともに、所属する業界の特徴・脅威なども改めて分析しておくと良いでしょう。
M&Aの実務手順③M&A仲介業者への相談
次に、M&A仲介業者を決めます。M&A仲介業者に取引条件を説明したうえで、こちらの気持ちや考えを十分に理解してもらいましょう。
M&A仲介業者に相談すると、M&Aの目的・希望条件などについてヒアリングが行われた後で、実現可能性などに関するアドバイスをもらえます。
また、会社売却において最も関心が高い情報は売却相場だといえますが、多くのM&A仲介業者ではこのタイミングで簡易評価によりおおよその金額を算定可能です。
M&AはM&A専門のアドバイザーに相談すべき
M&Aの相談先に迷った場合には、M&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所には、M&A・会社売却に関する知識や経験を豊富に持つアドバイザーが在籍しております。
M&A総合研究所の強みは以下のとおりです。
- M&A専門のアドバイザーが仲介業務を手掛けている
- 業界では安値の手数料体系を採用している
- 圧倒的なスピード感で実務を遂行できる
相談料は無料となっておりますので、M&A・会社売却を検討したらまずはお気軽にご相談ください。
M&Aの実務手順④アドバイザリー契約の締結
M&A仲介業者への相談によりM&A実施の意思が固まったら、M&A仲介業者とアドバイザリー契約を締結すると、M&A実務をスムーズに進められます。
アドバイザリー契約とは不動産媒介契約における専任媒介契約に当たる契約であり、M&A仲介業者にM&A実務を委託する契約のことです。状況によっては、委託するM&A業務の範囲を選択したうえで締結します。
アドバイザリー契約を締結するとM&A仲介業者から自社に関する資料の提出を依頼されるため、あらかじめ準備しておくと良いでしょう。
ここで提出された資料をもとに、M&A仲介業者は企業の社名を伏せた簡単な説明資料「ノンネームシート」や、社名を掲載した詳細な説明資料「企業概要書」などを作成します。
M&Aの実務手順⑤売買先企業の絞り込み
その後はM&A仲介業者によって、M&A相手となる企業のリストアップを提示されます。
リストアップにおける基準には業種・企業規模・地域・事業内容・資力などがあり、これらの基準から自社の希望に近い企業が30社程度掲載されるケースが多いです。
自社が遂行する実務としては、リストアップの確認および順位付けとなります。
M&Aの実務手順⑥秘密保持契約の締結
M&A仲介業者をとおして相手先企業に自社情報を提供するには、M&A仲介業者と秘密保持契約書を締結しなければなりません。
M&A取引に関する情報が自社の従業員や取引先などに漏れると動揺させてしまい業務に支障をきたすおそれがあるため、秘密保持契約書をしっかりと締結したうえで情報を提供する実務の遂行が必要です。
秘密保持契約の締結後は、まず「ノンネームシート」により相手先企業の関心を確かめます。関心があれば「企業概要書」を開示したうえで、プレゼンテーションを行う段取りです。ここでは、自社の希望条件や今後のスケジュールに関する説明も行います。
相手先企業も、M&A仲介業者との間で秘密保持契約を結んでいるケースがほとんどです。そのため、自社の情報がM&A仲介業者から相手先企業に提供されたとしても、売却交渉が行われている事実を第三者に開示・漏洩しない点や、開示された情報を買収の検討以外の目的に使用しない点について、相手先企業は義務を課せられています。
M&Aの実務手順⑦トップ面談
「ノンネームシート」や「企業概要書」をとおして相手先企業からM&A仲介業者に向けて関心がある旨の連絡が届いたら、経営者同士のトップ面談に移行します。
トップ面談はあくまでも交流の場であり、交渉の場ではありません。経営者同士の相性確認が目的です。それぞれの自己紹介や質疑応答が中心となるほか、お互いの会社や工場などの見学が実施される場合もあります。
トップ面談の実施後に、M&A・会社売却の細かい条件交渉へと移行する段取りです。一度のトップ面談でM&A・会社売却の条件交渉に移行するかどうかは、ケースごとに異なります。
条件交渉については直接交渉が難しいため、M&A仲介業者に「緩衝材」の役割を担ってもらいながら、条件のすり合わせを行いましょう。交渉で問題とされる条件は、具体的にいうと、売却金額・売却予定日などです。
M&Aの実務手順⑧基本合意書の締結
トップ面談・条件交渉を通じて自社と相手先企業の双方がM&Aの進行に合意ができた段階で、相手先企業と基本合意書を締結します。
基本合意書は仮契約という扱いであり、本契約ではありません。基本合意書による契約は、あくまでもM&Aの検討をお互いに継続する意思を確認する契約です。
基本合意書には、売却予定金額・譲渡予定日・買収監査の進め方・独占交渉権の付与などが記載されます。
M&Aの実務手順⑨デューデリジェンスの実施
M&A・会社売却に関する基本合意書を締結したら、デューデリジェンス実務に移行します。
デューデリジェンスについて、目的・調査内容・必須の項目・調査主体・結果の活用方法・課題などをまとめましたので、順番に確認しておきましょう。
デューデリジェンスの目的
デューデリジェンスは、自社と相手先企業における情報の非対称性の解消を目的とする実務です。
自社の経営情報については十分に把握できていたとしても、買い手企業からすると売り手の内部情報は保有していないため、経営実態を詳細に把握できていません。いわば、M&Aにおける買い手企業は情報弱者にあたり、ここに「情報の非対称性」が存在しています。
情報の非対称性を解消して自社と相手先企業が対等な立場で検討・交渉を行えるようにすることが、デューデリジェンスの担う重要な役割です。そのため、デューデリジェンスは、買い手が把握したい事柄に沿って行われます。
デューデリジェンスを通じて明らかにするもの
デューデリジェンス実務を通じて明らかにするのは、買い手企業から見ると大まかに以下のとおりです。
- 買収は可能なのか
- 買収価格は適正か
- 買収後にトラブルを発生させる事情はないか
- その他、買収を行うべきでない特殊な事情はないか
デューデリジェンスで必須の項目
一般的にデューデリジェンスで必須とされる項目は、財務・法務・労務・ビジネスの4分野です。
財務デューデリジェンスでは、書面で示された資産が実在しているか、書面に記載のない負債が隠れていないか、損益計算書は正しく作成されているか(粉飾はないか)などを調査します。
法務デューデリジェンスは、企業が締結している契約がM&Aを進めるうえで妨げにならないか、法令を遵守した経営がなされているかなどを調査する行為です。
労務デューデリジェンスでは、就業規則・賃金規定・退職金規定などの各種規程や残業代・有給休暇・組織上の内規・稟議のルールなどを調査します。
ビジネスデューデリジェンスは、営業の進め方・在庫管理方法・集金方法などを調査する行為です。
デューデリジェンスは誰が行うのか
デューデリジェンス実務は、買い手企業により行われます。ただし、財務・法務などの分野は専門的であり買い手企業のみで行うことは困難となるため、公認会計士・弁護士などデューデリジェンス専門のコンサルタントに相談を依頼するケースがほとんどです。
上記以外の労務・ビジネス分野については、買い手企業の社員が調査するケースが一般的となります。そのため、デューデリジェンスは、以下の3チームで行う場合が多いです。
- 財務デューデリジェンスチーム
- 法務デューデリジェンスチーム
- 労務・ビジネスデューデリジェンスチーム
そのほかM&A案件によっては、専門家により人事労務デューデリジェンスチーム・ITデューデリジェンスチームなどが組織されて実務を遂行するケースもあります。
デューデリジェンス結果の活用方法
デューデリジェンスの結果にもとづいて、M&A取引の方針を具体的に決定します。
デューデリジェンスの結果は今後の実務遂行において最終契約書の基礎となるだけでなく、株主に対する説明責任の役割を果たす資料でもあるのです。
特に売却価格については、M&A・会社売却において最も重要な部分となるため、慎重に検討する必要があります。調査結果に問題がない場合には、最終契約締結に向けて、取引価格および取引条件の見直しや表明保証を含めた最終的な交渉プロセスに進む段取りです。
ただし、思わぬ問題の発覚などで想定よりも収益性がないと見込まれた場合には、買い手企業とのM&A・会社売却における最終合意が困難となり、交渉が破断するおそれもあります。
デューデリジェンスの課題
売り手側は、デューデリジェンスを受ける立場です。買い手企業に適正な情報や良い印象を与えることはM&A・会社売却において非常に重要な実務の一つであるため、適切な対応を心がけましょう。
とはいえ、デューデリジェンスでは初期段階の開示情報よりも詳細な情報を開示するため、売り手側の従業員からすると非常に負担が掛かります。具体的には、開示資料の準備・プレゼンテーションに向けた資料作成や予行演習・質問や追加の資料要求への対応などを日常業務と合わせて進めなければなりません。
特に中小企業は内部管理体制が完璧とはいえず、要求された資料を十分に作成できないケースが多いです。法的に必要な書類を作成できていない場合には、大きなトラブルにつながりかねません。
資料不足などが重なると、M&A取引を破断させてしまうこともあります。
上記のトラブルを避けるには、M&A・会社売却を検討した初期段階で、顧問の税理士などと相談しながら瑕疵のない書類を整備するなど、今後の手順を計画しておきましょう。
なお、売却側となる場合でも、買い手企業のいいなりとなる必要はありません。デューデリジェンスによって算出された価格の妥当性は、自社においても判断できるよう専門家とともに準備しておくと良いです。必要な場合には、客観的な資料をもとに反論・交渉を行ったうえで売却価格の調整を求めましょう。
M&Aの実務手順⑩最終契約の締結
デューデリジェンスの結果をもとに、M&Aの最終条件や細目事項を決定する、最終契約書の作成実務に移ります。
ここでは、以下のような事項を決定しなければなりません。もしもデューデリジェンスで指摘された箇所があれば、指摘内容を契約条件に反映させる方法についても検討します。
- M&A取引(売却)価格
- 退職金の処理方法
- 従業員の処遇
- 役員の処遇
- M&A取引金額の支払い方法
- 連帯保証や担保提供の解除方法
- 契約書に記載されていない債務の発生ケースの処理方法
- その他細目事項の決定(社宅の処理・骨董品やゴルフ会員権などの取り扱い・役員人事など)
上記と合わせて、M&Aのクロージングに向けて、スケジュール調整・取引場所の手配・株券の準備・最終契約書の製本実務・売却後の引継ぎ計画策定をはじめ、さまざまな実務をM&A仲介業者などの専門家からサポートしてもらいながら進めていきます。
M&Aの実務手順⑪クロージング
M&Aにおけるクロージングは、株式譲渡であれば株式の譲渡、事業譲渡であれば事業の譲渡を完了させるための実務をさします。つまり、株式の譲渡または事業の譲渡手続きおよび、これに伴う譲渡代金の決済手続きのことです。
M&A取引では最終契約締結のプロセスと合わせてクロージング実務が遂行されるケースもありますが、多くの場合には最終契約書の締結日以降(1ヶ月程度後が多い)にクロージング実務が遂行されます。
M&Aの最終契約書にはさまざまな前提条件が規定されており、基本的には規定された条件が満たされたうえでクロージング日が到来したときにM&Aは実行されると定められているのです。
最終契約締結日からクロージング日までの期間は、前提条件を満たすために実務を遂行する期間となります。前提条件が満たされていることを確認した後で、M&Aのクロージング実務に移る段取りです。
クロージングが終了すると、M&A取引の実務が完了します。
3. M&A実務プロセスに必要な書類
ここでは、いかなるM&A・会社売却ケースであっても最低限準備が必要となる書類を紹介します。
基本的には社内で管理されている書類のほか、簡単に取得できる書類が中心です。
会社の基礎資料
こちらは会社の概要を説明する資料となります。M&A実務で必要な書類は以下のとおりです。
- 会社案内・会社経歴書・工場案内など
- 定款
- 会社商業登記簿謄本(法務局で最新の履歴事項全部証明書を取得する)
- 株主名簿
- 議事録(株主総会・取締役会・経営会議など、添付資料を含む)
財務関係の書類
こちらは確定申告で必要となる書類が中心です。顧問の税理士に相談してみましょう。
- 決算書・期末残高試算表・勘定科目の内訳明細(3期分)
- 法人税・住民税・事業税・消費税の申告書(3期分)
- 減価償却資産台帳(直近期末分)
- 月次試算表(直近期1年分および進行期分)
- 支払保険料内訳・租税公課内訳(総勘定元帳の写しなど、3期分)
- 固定資産課税明細書(最新のもの)
- 土地・建物の登記簿謄本(法務局より最新の全部事項証明書を取得)
- 事業計画
営業・製造関係の書類
自社の営業実態を詳細に説明する資料です。M&A・会社売却では、通常公開しない種類も提出する必要があります。
- 製品・サービスのカタログ
- 店舗・事業所の概況(所在地・人員数など)
- 採算管理資料(部門別・商品別・取引先別など、3期分を要約)
- 売上内訳(部門別・商品別・取引先別など、3期分を要約)
- 仕入内訳(部門別・商品別・取引先別など、3期分を要約)
人事・労務関係の書類
こちらは中小企業において十分に作成・管理されていないケースが多い書類です。作成・管理されていない書類については、M&A・会社売却に取り掛かった際になるべく早く揃えておかなければなりません。
- 組織図(組織別人員数もわかるもの)
- 主要役員・部門長の経歴書
- 従業員名簿(生年月日・入社年月日・役職や取得資格などがわかるもの)
- 社内規程(特に就業規則・給与・資金規程・退職金規程)
- 給与台帳(直近期末分)
契約関係の書類
こちらは各種契約関係の書類です。契約の事実がある場合には、準備しておく必要があります。
- 土地・建物の賃貸借契約書
- 銀行借入金残高一覧(返済予定表・差入担保一覧)
- 保険積立金の解約返戻金資料(直近期末時点の金額)
- 株式・ゴルフ会員権などの保有数量がわかる資料(取引残高報告書・現物集計など)
- 金融商品・デリバティブ(為替予約・スワップ・仕組み債など)の最新時価資料
- 取引先との取引基本契約書
- 生産・販売委託契約書
- リース契約一覧
- 連帯保証人明細表
- 株主間協定書
- その他経営に関わる重要な契約書
その他重要事項(許認可関係)の書類
許認可についてはM&Aスキームによって買収先に引き継げない場合もありますが、自社の活動の根拠となる書類であるため準備しておきましょう。
- 事業活動に必要なすべての免許・許認可・登録・届出の各書類
4. M&A実務を学ぶのにおすすめの本7選
M&A・会社売却の実務をスムーズに済ませるには、専門家に任せる必要があります。ただし、経営者はM&Aにおいて大きな決断の当事者となるため、当然ながらM&Aの基礎知識や実務の流れを把握しておかなければなりません。
最後に、M&A実務について学べる本を7冊紹介します。
M&A実務を学べるおすすめ本①
1冊目は、『トップM&Aアドバイザーが初めて明かす 中小企業M&A 34の真実』(藤井一郎 著/東洋経済新報社)です。
著者は中小企業のM&Aを手掛けるインテグループ株式会社の代表取締役社長であり、主に以下の点を明らかにしながら「売り手」「買い手」「仲介会社」の各視点から中小企業M&Aの事実をまとめています。
- 大企業のM&Aと中小企業のM&Aでは何が根本的に違うのか?
- M&Aの成功率は低いのか?
- M&Aで人気のある業種・人気のない業種はあるのか?
- オーナー社長はどういう理由で会社を売却しているのか?
- 会社を売却するベストタイミングはいつか?
- 売却しやすい会社とはどういう会社か?
- M&Aで従業員の雇用は守られるのか?
- 買い手の買収理由や買収戦略にはどのようなものがあるか?
- シナジーとは何か?どのようなシナジーがあるか?
- 売り手および買い手のM&A成功のポイントやおかしやすいミスとは?
- 仲介会社とアドバイザリー会社の違いとは?
- 仲介会社は何を基準で選ぶべきか?
また、中小企業の経営者がなぜM&Aで会社を売るのか、買い手企業はどういう戦略で買収しているのかなど、立場と思考行動経路について本音に踏み込みながら解き明かして説明されています。
説明が極めて論理的になされており、数あるM&A書の中でも読みやすい1冊です。実務の事前準備段階で、いかなる考え方を持ってM&A実務を進めていくべきなのか把握できます。
M&A実務を学べるおすすめ本②
2冊目は、『200万円でもできるM&A~百年企業を育てる最強のM&A活用術~』(萩原直哉 著/スモールサン出版 )です。
著者は中小企業のコンサルティングを手掛ける株式会社オプティアスの代表取締役であり、この会社では中小・零細企業を専門としたM&Aアドバイザー業務も手掛けています。
著者は信用調査会社に勤めていた経歴があり、その期間に1,000を超える企業の経営者と面談を重ねました。この経験は現職であるM&Aアドバイザー業務に活かされているほか、本書においても従来はそれほどスポットが当てられなかった「中小企業の小規模なM&A実務」に関する実務について詳しく述べられています。
中小企業特有である、ピンチな場面における「守りの戦略」として実施するM&Aや、限られた経営資源の中で実施するM&A実務の生々しい現場の解説に力点を置いた1冊です。
非常に読みやすく理解しやすいため、M&A実務を進めていく前に読んでおくと良いでしょう。
M&A実務を学べるおすすめ本③
3冊目は、『M&Aの契約実務』(藤原総一郎 編著/中央経済社)です。シンプルなタイトルが印象的な、弁護士の共著によるM&A専門書です。
本書では、M&Aで締結される最終契約の概要解説や、典型的な契約条項の法的性質・意図・趣旨・条項の相互関係などが体系的に述べられています。
また、守秘義務契約や基本合意書など取引の前段階で交わされる契約書についても整理されている良書です。
M&Aの契約実務に関して把握しておくべきポイントがほとんど網羅されているだけでなく、非常にわかりやすく解説されている1冊だといえます。M&Aの企業実務担当者である場合には、こちらの1冊の理解で十分となるケースが多いです。
実務において疑問点が生まれた際には、まず本書をヘルプとして活用できます。
M&A実務を学べるおすすめ本④
4冊目は、『公認会計士と弁護士が教える「専門家を使いこなす」ためのM&Aの知識と実務の勘所』(木村直人他 著/日本法令)です。
経営者であっても、M&Aは珍しい経験だといえます。企業のM&A実務担当者であるならば、初めてM&Aの実務に直面するという人も非常に多くいます。
M&Aに関して未経験だと、どうしても実務をM&Aの専門家に丸投げしてしまいがちです。
本書は、M&Aを専門家に依頼する側がM&Aに関する実務の基礎知識を身に付けることで、専門家が何を行っているのかを理解したうえで「専門家を使いこなせるようになろう」という視点で述べられています。
専門家を使いこなすことが目標であるため、デューデリジェンスの実務に重きが置かれた内容です。デューデリジェンスにおいて弁護士・会計士などはいかなる点に着目していかなる作業を実施しているのか、基礎知識と裏事情を交えてまとめています。
デューデリジェンス実務に不安を感じる場合には、ぜひ頭に入れておきたい内容の1冊です。
M&A実務を学べるおすすめ本⑤
5冊目は、『M&Aドキュメント 事業売却』(藤田浩 著/商事法務 )です。
2004年刊行で少々古い本ですが、現実のM&Aの流れをもとに物語形式で記述されている珍しい1冊となります。ハウツー本ではわかりにくいM&A実務の流れですが、本書では物語をとおして追えるため読みやすいです。
文章は簡潔で非常に読みやすいうえに内容も入門向けですが、事業売却実務の流れは時系列順にしっかりと書かれています。M&A実務の全体的な流れが理解できていない段階で読んでおくと、楽しみながら流れのツボを押さえられる1冊です。
物語形式であるため、何となくM&Aの実務現場の雰囲気を予習しておくこともできます。これは、他のM&A書にはない本書ならではの特徴です。
M&A実務を学べるおすすめ本⑥
6冊目は、『M&A実務の基礎』(柴田 義人他 著/商事法務)です。
「本書でM&Aの全体像がわかる」と銘打たれており、M&A実務に関する網羅性が非常に高い1冊となります。
M&A実務を網羅的に把握できるよう、M&Aの典型的な契約条項だけでなく、金融商品取引法・独占禁止法・労働法・知的財産法をはじめとする関係法令についても幅広く述べられている点が特徴的です。
また、第2版となり初版が全面的に見直されたことで、組織再編行為・事業譲渡・一部出資や共同出資については各論として独立項目で取り上げられるようになり、より詳しく解説する構成に変更されました。
M&A実務の段階に沿って必要となる検討ポイントが網羅的に解説されているため、M&Aに臨む段階にある企業の法務担当者や経営者を中心におすすめしたい1冊です。
M&A実務を学べるおすすめ本⑦
7冊目は、『最新版 M&A実務のすべて 』(北地達明 著/日本実業出版社)です。
さまざまなM&Aスキームが紹介されたうえで、企業価値評価・デューデリジェンスなどM&A実務のプロセスが徹底的に解説されています。それだけでなく、連結会計・税制適格要件・組織再編税制など、会計・税務分野の実務までを幅広くカバーする1冊です。
2019年に刊行されたため比較的新しく、最新動向を踏まえてM&A実務を理解したい人におすすめします。
5. M&Aの実務まとめ
M&Aを検討する場合、実務に取り掛かる前にまずは動機と目的を明確にすることが重要です。これにより、M&A交渉の要を築けます。
実務の段階に入ったら専門家に任せるべき点は任せて良いですが、自社に深く関わる実務については最低限の知識と手順を把握しておく必要があります。
特に売却側となるときに把握しておかないと、売却価格を必要以上に下げざるを得ないといった不利益が発生する場合も少なくありません。
基本的に提出が求められる書類は従来からしっかり管理されているケースが多いですが、非常に膨大な量となるためスピーディーな対応は困難です。M&A実務を遂行する前に、必須となる書類をひとつひとつ準備しておくことをおすすめします。
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