2020年10月01日更新
M&Aでの銀行の役割とは?特徴や利益相反の可能性について解説

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
銀行のなかには、法人サポートの一環として、M&Aアドバイザリー業務を行うところがあります。本記事では、M&Aでの銀行の役割や業務の特徴、M&Aを行う流れを解説します。また、銀行にM&Aサポートを依頼する際に注意すべき、利益相反の可能性についても解説します。
目次
1. M&Aでの銀行の役割とは
近年は中小企業経営者の高齢化が進み、M&Aで事業承継する事例が増加しています。相談先としては、まずM&Aを専門とするM&A仲介会社が挙げられますが、銀行や信用金庫といった金融機関でもM&Aの相談を受け付けているところがあります。
銀行は必ずしもM&Aに力を入れているとは限りませんが、普段取引しているメインバンクなら相談しやすいというメリットもあります。
本記事では、M&Aの相談先として銀行を選んだ場合の特徴や注意点などを解説しますが、まずこの章では、そもそもM&Aとは何か、銀行の主な業務は何かといった基本的な事項をします。
M&Aとは
M&Aとは、会社や個人事業を売買する取引のことです。英語で合併を「Mergers」、買収を「Acquisitions」というので、頭文字をとってM&Aと呼ばれています。
M&Aは大企業による買収、特に敵対的買収がよく取り沙汰されることもありますが、M&A自体は中小企業や個人事業主を含め、誰でも行うことが可能です。
大企業による1兆円規模の買収も、数百万円の飲食店の売却も、どちらもM&Aの一種です。
M&Aは、親族や身近な人間に後継者がいない中小企業の事業承継手段として注目されており、国も法整備や支援機関の設置など普及に力を入れています。
M&Aでの銀行の役割
銀行の主な業務は預金・為替・融資ですが、それ以外にもさまざまな業務を行っています。銀行でM&Aを依頼するにあたって、関連する業務は主に以下の3つがあります。
【M&Aでの銀行の役割】
- 資金調達
- 資金融資
- M&Aアドバイザリー
1.資金調達
銀行では、企業の資金調達を支援するファイナンス業務を行っています。まず、企業の信用力による一般的な融資(コーポレート・ファイナンス)があります。
そのほか、企業が将来得るであろう利益に基づくプロジェクト・ファイナンスや、資産を証券化して資金を集めるストラクチャード・ファイナンスなど、さまざまな資金調達手段があります。
信用力や資産が少ないからM&Aのための資金調達は無理だと思い込まずに、まずは銀行に相談してみることが大切です。
2.資金融資
銀行における融資とは、預かった預金を企業へ運転資金などのために貸し出して利益を得る業務をいいます。
銀行がM&A仲介会社と大きく違うのは、M&A仲介を行う際に、買い手側に自ら買収資金を融資できる点です。
M&A仲介会社は自分で買い手に融資を行うことはできないので、買い手側が別途銀行と相談して自分で調達する必要があります。
M&Aによる買収を検討していて同時に融資も得たい場合は、銀行が有力な相談先となります。
3.M&Aアドバイザリー
銀行では、さまざまな法人向けの事業相談を受け付けていますが、その一つとしてM&Aに関する相談窓口を設けていることもあります。
M&Aアドバイザリーとは、アドバイザーが買い手・売り手どちらか一方の立場に立ち、最善の条件で成約できるようにサポートすることです。
これに対して、M&A仲介とは買い手と売り手の中間の立場に立ち、両者の意見を聞きながらお互いが納得できる条件での成約を目指すことをいいます。
M&AアドバイザリーとM&A仲介は、似ているようで基本的なスタンスに大きな違いがあるので、選ぶ際は注意しましょう。
2. 銀行のM&A業務の特徴
この章では、銀行によるM&Aアドバイザリー業務の特徴と、報酬・料金体系の特徴について解説していきます。
銀行によるM&Aアドバイザリー業務の特徴
銀行によるM&Aアドバイザリー業務の特徴として、豊富なネットワークと買収資金の融資が挙げられます。
銀行は多くの顧客を抱えているので、売買先の幅広いネットワークを持っています。さらに、銀行の主な業務というのは融資なので、M&Aの際に買い手側に買収資金を融資できるのも特徴です。
銀行でM&Aアドバイザリー業務を依頼すると専門のアドバイザーがつきますが、銀行のM&Aアドバイザーは、M&A仲介会社に比べるとクオリティにややばらつきがあることもあります。
大手の銀行では、たいていの場合M&A専門の部署を設けているので、アドバイザーの質も高いことが多いです。
一方で、地方銀行や信用金庫の中には、あまりM&Aの経験がないスタッフが担当していることもあるといわれています。
金融機関にとってM&Aは主要な業務ではないので、専門のM&A仲介会社に比べると力を入れていないこともあるのは注意点です。
報酬・料金体系の特徴
銀行にM&A業務を依頼したら報酬・手数料を支払うことになりますが、銀行のM&A業務の料金体系は、おおむねM&A仲介会社の料金体系と似ていることが多いです。
よくある料金体系としては、着手金・中間金・月額報酬・成功報酬といったものがあります。
着手金は最初に支払う料金ですが、そもそもM&Aすべきどうか相談したいとか、M&Aについてよく知りたいといった初期段階の相談は、無料であることが多いです。本格的なアドバイザリー業務に入る時点で、着手金が発生します。
中間金は売買相手と交渉して基本合意を締結した時点で、成功報酬の一部を前払いする形で支払います。また、成功報酬はM&Aが成約した時に支払う料金です。
料金は銀行により違いますが、一般的にM&A仲介会社より高い傾向があります。特に、メガバンクは高めの設定になっていることが多く、中小企業のM&Aの相談先としては向いていないことがあるので注意しましょう。
3. 銀行にM&Aを依頼した場合は利益相反の可能性がある
銀行は融資を業務とする関係上、M&Aアドバイザリー業務が利益相反になるという特徴があります。銀行にM&Aを依頼する際は、利益相反になるという事実を理解しておくことが重要です。
利益相反とは
利益相反とは、一方の立場からみれば利益になるが、他方の立場からみると損をしてしまう行為や取引のことです。
利益相反は故意に行うことはできず、法律により規制されています。もし実行する場合は、株主総会の承認が必要になるなどの制度があります。
利益相反の可能性がある場合
銀行によるM&Aアドバイザリー業務で利益相反の可能性があるのは、例えば、買い手に融資をするために、安い価格でM&Aを成立させてしまうといった行為が挙げられます。
売り手にとっては不利な取引になるので、もし銀行が故意に行えば利益相反行為とみなされます。
銀行は融資が主な業務の一つなので、M&Aの取引を融資につなげたいと考えます。そのため買い手側の味方になってM&Aを成約させれば、融資をしやすくなるというメリットがあるわけです。
このような理由から、銀行によるM&Aでは、売り手側が損をする可能性があることは留意しておきましょう。
4. 銀行によるM&Aに潜む注意点とは
銀行はM&Aの相談先として有力ではありますが、M&A仲介会社に比べるとデメリットも存在します。
銀行にM&Aの相談をする時は、以下のような注意点を踏まえたうえで、相談すべきか決める必要があります。
【銀行によるM&Aに潜む注意点とは】
- 買い手側にとって有利な条件を提示する
- 銀行の規模により得意な案件が変わる
- 手数料などが高い可能性がある
1.買い手側にとって有利な条件を提示する
前章で解説したように、銀行にとってM&Aは、買い手側に有利な条件を提示することで利益を得られる可能性がある取引です。
売り手側として銀行にM&Aの相談をする時は、このことをしっかり頭に入れておく必要があります。
2.銀行の規模により得意な案件が変わる
一口に銀行といっても、メガバンクから地方銀行まで様々な規模がありますが、銀行の規模によって得意なM&Aの案件が変わってくるので注意しましょう。
一般に、メガバンクは大型案件を中心に取り扱っており、中小企業のM&A案件は断られる可能性があります。
それに比べると、地方銀行は比較的小規模なM&Aでも取り扱ってもらえる可能性があります。
3.手数料などが高い可能性がある
銀行によるM&Aアドバイザリーは、M&A仲介会社に比べると手数料が高い傾向があります。
特にメガバンクは大規模案件を取り扱うことが多いので、中小企業を考慮していない手数料体系になっていることもあります。
銀行にM&Aアドバイザリー業務を依頼する時は、M&A仲介会社の相場と比較して、手数料が高すぎないかチェックしておくようにしましょう。
5. 銀行が行うM&Aの流れ
銀行が行うM&Aの流れは、おおむね以下のようになります。M&Aが初めてで流れがよく分からない方は、まず大まかな流れを把握してから臨むようにしましょう。
銀行が行うM&Aの流れは、M&A仲介会社など他の相談先での流れと基本的に同じです。銀行での流れを覚えておけば、後でM&A仲介会社に相談先を変更することになっても、スムーズに手続きを進めることができるでしょう。
【銀行が行うM&Aの流れ】
- M&A戦略の策定・候補先の選定・交渉
- 基本合意の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終合意契約の締結
- クロージング
1.M&A戦略の策定・候補先の選定・交渉
銀行でM&Aを行う場合は、まず銀行のM&A担当者と相談して、どのM&Aスキームを使用するか決めたり、売買先候補の選定作業などを行います。
M&Aスキームはいろいろありますが、中小企業では株式譲渡が選択されることが多いです。
株式譲渡とは譲渡企業の株式を譲受企業に売却することで、経営権を譲受企業に譲り渡す取引です。
売却先の選定は銀行が持っているネットワークから探したり、提携の証券会社やM&A仲介会社のネットワークを利用することもあります。
2.基本合意の締結
売却・買収先候補と面談・交渉して基本的な合意内容が固まったら、その内容を基本合意書という書面にして締結します。
基本合意書は、法的に必要な書類というわけではなく拘束力もありませんが、M&Aの交渉では作成するのが一般的です。
基本合意書には、どのスキームでM&Aを行うか、取引価格はいくらか、独占交渉権を与えるかなどが記載されます。
3.デューデリジェンスの実施
M&Aは今まで面識のなかった会社に対して売却・買収するので、相手企業の詳細をできるだけ調べておく必要があります。
デューデリジェンスとは売り手側企業の内容を調査することで、調べる内容によってビジネスデューデリジェンス・ファイナンシャルデューデリジェンス・リーガルデューデリジェンスといった種類に分けられます。
デューデリジェンスは詳細に行うに越したことはないですが、コストや時間の制約により、一般的には最も重要な分野に絞って実施します。
4.最終合意契約の締結
デューデリジェンスの結果、売り手側企業に問題がなく、買い手と売り手でM&Aを行ってもいいという合意が得られたら、最終合意契約を締結してM&Aを確定させます。
基本合意書と違い、最終合意契約書には法的拘束力があるので、締結は慎重に行う必要があります。もし、後になって内容を変更したり破棄したりすると、相手から損害賠償を請求される可能性もあるので注意しましょう。
最終契約書は、基本合意書の内容をベースにデューデリジェンスの結果を加味して、必要があれば修正します。
5.クロージング
最終合意契約を締結してM&Aが確定したら、実際に経営権を移動させるクロージング手続きに入ります。
経営権を移動させる手続きの内容はスキームによって変わってきますが、例えば株式譲渡なら譲受企業が譲渡企業の株式を取得します。
そのほかには、従業員の転籍に関する手続き、許認可が必要な事業であれば許認可の承継や新規取得手続き、事業譲渡の場合は事業にかかる資産の移転手続きなどを行います。
6. 銀行と比較したいおすすめのM&A仲介会社
銀行へM&Aの相談をするのはおすすめではありますが、売り手にとっては利益相反があったり、手数料が高いことが多い、M&Aの専門家がいるとは限らないことなど、デメリットも多くあります。デメリットを抑えたいなら、専門のM&A仲介会社に相談するとよいでしょう。
M&A総合研究所は、経験豊富な弁護士・アドバイザーが在籍しており、満足のいくM&Aが実現できるよう、親身になってフルサポートいたします。
M&A総合研究所は、主に中堅から中小企業のM&Aを手がけているので、事業規模が小さいために銀行でのM&A相談を断られた方でも安心してご相談ください。
7. まとめ
銀行の主業務はあくまで資金の融資などですが、なかにはM&Aアドバイザリー業務を行っているところもあり、特に近年は中小企業の事業承継問題の深刻化を受けて、地方銀行や信用金庫でもM&A相談を受け付けているところが増えています。
M&Aの相談は、専門のM&A仲介会社で行うのがオーソドックスではありますが、銀行に相談するのも場合によっては有力な選択肢となります。
【M&Aでの銀行の役割】
- 資金調達
- 資金融資
- M&Aアドバイザリー
【銀行によるM&Aに潜む注意点とは】
- 買い手側にとって有利な条件を提示する
- 銀行の規模により得意な案件が変わる
- 手数料などが高い可能性がある
【銀行が行うM&Aの流れ】
- M&A戦略の策定・候補先の選定・交渉
- 基本合意の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終合意契約の締結
- クロージング
銀行でのM&Aは有力な選択肢ですが、やはり専門のM&A仲介会社を利用したほうがメリットが多い部分もあります。
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