M&Aの法務DD(デューデリジェンス)とは?手続き、チェック項目を解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)の位置づけや目的、プロセスを網羅的に解説しているため、全て読めば法務DD(デューデリジェンス)の基礎は完璧です。また、M&A実施の際に法務DD(デューデリジェンス)を行ううえでの注意点を経験を踏まえて解説しています。

目次

  1. M&Aの法務DD(デューデリジェンス)とは
  2. M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)の手続き
  3. M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)のチェック項目
  4. M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)後の対応
  5. M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)の注意点
  6. M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)まとめ
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1. M&Aの法務DD(デューデリジェンス)とは

まず、M&AにおけるDD(デューデリジェンス)とは、買い手側が実施する売り手側への綿密な調査のことです。DD(デューデリジェンス)は、さまざまな分野に対して士業などの専門家を起用して実施されます。

法務DD(デューデリジェンス)は、ビジネスDD(デューデリジェンス)、財務DD(デューデリジェンス)、税務DD(デューデリジェンス)と並ぶ重要なDD(デューデリジェンス)の1つです。

法務DD(デューデリジェンス)では、対象企業の法的リスクを確認し、その結果をもとにM&A実施可否の判断を行い、M&Aを実施する際の条件に反映させます。また、DD(デューデリジェンス)で検出した法的課題は、チェックリストを作成しなければなりません。

チェックリストは、M&A成立後に担当部門に引き継がれたのち、再度チェック項目の確認を行い、対応方針の決定や解決を図っていきます。

 

法務DD(デューデリジェンス)の目的

M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)の目的は、主に以下の4項目に分類されます。

  • 事業継続の障害となる項目の確認
  • 対象企業の価値を減少させる項目の確認
  • 当該M&Aを阻害する法的要因の確認
  • 当該M&Aの法的スキームの可否の確認

事業継続の障害となる項目の確認

対象企業について、法的な観点から「その事業が中断されるリスクがある、もしくは当該事業について競争力の源泉が損なわれる恐れのある事業が存在するか」を確認します。

対象企業の価値を減少させる項目の確認

事業継続そのものや法的問題の解決によって、対象企業の収益性が危ぶまれることはないものの、法的問題の解決によって対象企業の収益性が減少する、もしくは資産が損なわれるなどにより、企業価値を減少させることとなるような事項を確認します。

当該M&Aを阻害する法的要因の確認

M&Aを実施する場合に、法制度や法規制が阻害要因にならないかを確認します。

当該M&Aの法的スキームの可否の確認

M&Aを実施することにおいて、株式譲渡による株式の取得のほか、合併会社分割株式移転事業譲渡などさまざまなスキームが発生します。これらのスキームについて、想定どおりに実行できるかも検証目的です。

M&Aプロセスにおける法務DD(デューデリジェンス)の位置づけ

M&Aプロセスにおける法務DD(デューデリジェンス)は、以下の6つの観点で、それぞれ位置づけがあります。

  • 買収意思決定
  • 企業価値の算定との関係
  • 買収プロセス
  • 他のDD(デューデリジェンス)との関係
  • ビジネスDD(デューデリジェンス)との役割分担
  • 財務DD(デューデリジェンス)との役割分担

買収意思決定

法務DD(デューデリジェンス)においてM&Aの阻害要因が検出された場合は、意思決定者に対してリスク要因を明確にしたうえで、判断を仰ぎます。阻害要因は判断時に早急に伝える必要があり、これは売却中止が予想される案件に、時間やコストをかける無駄を省くためです。

企業価値の算定との関係

法務DD(デューデリジェンス)は、あくまでも法的観点からのリスク要素の検出と評価です。どのように企業価値に反映させるかは、財務DD(デューデリジェンス)のバリュエーション算出の役割を担う担当者や、その後の企業価値の算定の役割を担う担当者と調整する必要があります。

バリュエーションとは、企業価値評価とも言われ、M&Aでの売買価額交渉の際にベースとなるものです。

買収プロセス

法務DD(デューデリジェンス)では、買収スキームに関わるリスクも合わせて検証することが多くなります。結果として買収スキームは、買収条件とともに契約書に反映されるものです。したがって、契約書の作成担当者へも情報を提供する必要があります。

他のDD(デューデリジェンス)との関係

法務DD(デューデリジェンス)の実施にあたっては、他のDD(デューデリジェンス)との関係や役割分担を明確にして、効率よく実施することが重要です。特に、ビジネスDD(デューデリジェンス)、財務DD(デューデリジェンス)との役割分担は事前に決めておくことをおすすめします。

ビジネスDD(デューデリジェンス)との役割分担

対象企業の事業性を評価する役割を担うのがビジネスDD(デューデリジェンス)です。その際に、事業性の基礎となる取引構造が永続的であるかを検証するという観点で、法務DD(デューデリジェンス)との役割分担が生じます。

事業の根幹となる取引をビジネスDD(デューデリジェンス)で抽出し、法務DD(デューデリジェンス)で法的リスクを確認するという役割分担が効率的です。

財務DD(デューデリジェンス)との役割分担

対象企業における資産負債の健全性を確認するのが財務DD(デューデリジェンス)です。その際、財務DD(デューデリジェンス)で抽出した重要な資産、負債について、法的な瑕疵(かし)の有無を確認する役割を法務DD(デューデリジェンス)で担います。

特に、偶発債務に関しては法的解釈を伴うものも多いので、情報共有と担当の役割分担が必要です。

法務DD(デューデリジェンス)の対象

効果的にDD(デューデリジェンス)を行うためには、調査スコープ(範囲)の絞り込みと優先順位付けが重要です。

法務DD(デューデリジェンス)では、調査スコープを絞り込むために事前レビューの結果だけでなく、他のDD(デューデリジェンス)と情報を共有し、役割分担を行う必要があります。その際のポイントは以下の3点です。

  • 調査スコープの決定
  • グループ会社まで調査するか
  • 海外をどこまで調査するか

調査スコープの決定

法務DD(デューデリジェンス)で重要なのは、調査スコープをどのように定めるかということです。調査スコープを絞り込まないと、費用がかさむうえにDD(デューデリジェンス)の期間も長くなります。具体的には次のようなことを検討するといいでしょう。

グループ会社まで調査するか

対象企業に子会社や関連会社があり、対象企業よりもガバナンス体制が弱く、大きな法的リスクを有している可能性があります。

特に近年では、持株会社制度を有している企業もあるため、この場合、純粋持株会社よりも傘下の事業会社に対してのDD(デューデリジェンス)に多くのコストがかかってしまうのをどう判断するかがポイントです。

海外をどこまで調査するか

対象企業が日本企業でないケース、および対象企業の主要な事業が海外にあるケースが増加しています。また、海外の子会社がディールブレーク(M&A取引を中止すること)となる大きな法的リスクを有している可能性もあるでしょう。

基本的に海外でDD(デューデリジェンス)を行う際も、日本の専門家に依頼することが多いですが、海外の法律までスコープに入れると時間とコストがかさむ可能性が高まります。

法務DD(デューデリジェンス)の費用相場

法務DD(デューデリジェンス)を行うにあたり、専門家に依頼するのが一般的です。後述しますが、法務DD(デューデリジェンス)には多くの手間と時間が必要であり、それを依頼するとなると多額の費用が発生します。

一般的な法務DD(デューデリジェンス)の費用相場は100万円~500万円程度ですが、費用は調査対象となる会社の規模によって異なり、事業所や子会社・関連会社が多い会社の場合は、数千万円の費用が発生することもあり得るのです。

また、依頼する専門家の規模が大きくなるほど高額になる傾向もあるため、事前に費用がどの程度かかるのかを把握し、適切な専門家へ相談するようにしましょう。

法務DD(デューデリジェンス)の実施主体

法務DD(デューデリジェンス)の実施にあたり、法務部門が確立し、かつM&Aの経験も多い大企業などでは、社内の人間が担当するケースもあります。しかし、そのような企業だったとしても、さらに弁護士にも法務DD(デューデリジェンス)を依頼するのが一般的です。

弁護士であれば、問題点が発覚した際に、法律の専門家という観点でアドバイスが得られます。また、仮に後日、訴訟に発展した場合などは損害賠償請求額などの訴訟費用の相談もできて心強い存在です。ただし、注意点があります。弁護士といえどもオールマイティーではありません。

それぞれ得意分野・専門分野があります。したがって、企業法務やM&Aを専門として掲げている弁護士を選ぶ必要があります。

2. M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)の手続き

一般的なM&Aの大まかなスケジュールは、以下のようになっています。

  1. M&Aの検討開始
  2. 相手先の選定(マッチング)
  3. 秘密保持契約締結
  4. 交渉開始
  5. トップ面談
  6. 基本合意書締結
  7. DD(デューデリジェンス)
  8. 最終交渉
  9. 最終契約書締結
  10. クロージング(契約内容の履行)

法務DD(デューデリジェンス)は、上記のDD(デューデリジェンス)のプロセスで行われるものです。以下では、基本的な法務DD(デューデリジェンス)の進め方・手順を説明します。

調査体制の検討

まずは、調査体制の検討を行います。一般に法務DD(デューデリジェンス)を行う際には、外部の専門家に依頼するのが一般的ですが、それは次のような理由が存在するためです。

専門性

法務DD(デューデリジェンス)では、法的リスク検出のためにさまざまな法律の解釈が重要です。その意味で会社法、民法、その他の法律に関して幅広い知識が必要になります。

社内に法律部門がある企業では、法律に関して知見のあるスタッフがいることもありますが、M&Aのような法的検証が必要な項目を検討するには限界があるため、外部の専門家を活用するケースが多いです。

守秘義務の徹底

M&Aは秘密裏に行われるものであり、場合によっては社内スタッフにも知らせないケースも存在します。また、扱う情報も他の企業の情報や個人情報を含むものもあり、情報管理の徹底が必要です。

弁護士をはじめてとした法律事務所は守秘義務を有しているため、法務DD(デューデリジェンス)の担当に適しています。

説明責任

法務DD(デューデリジェンス)では高度な専門的判断を要する項目が含まれるので、その成否については会社の存続に関わるリスクや大きな経済的リスクがつきまといます。判断するにあたって十分な検討をしたという説明責任を果たすためにも、外部の専門家の起用が必要です。

このような観点から、法務 DD(デューデリジェンス)では外部の専門家を活用する必要が高いものの、一方で検討にかかる費用が高額であるため、利用する専門家を事前に吟味しておかなければなりません。

特に法律事務所によっても得意分野があるため、相談したい分野において実績を有しているかを事前に把握することが重要です。

基本資料の受領

対象企業より、調査を行う専門家が資料を受領します。法務DD(デューデリジェンス)を担当する法律事務所からチェックリストを送付し、資料を確認するのが一般的です。

担当にFA(ファイナンシャルアドバイザー)などが入っている場合は、FAがチェックリストを準備し、一斉にDD(デューデリジェンス)実施企業に送付することもあります。要求する資料は、主に次のとおりです。

公的資料

具体的には、定款、登記簿謄本、各種許認可・届出書類などです。対象企業の存続状態、およびビジネスに関して規制がないかを確認します。

社内資料

株式関係書類や株主総会議事録、取締役会議事録、決裁書・稟議書、各種規程類です。これらの書類により、コンプライアンスや内部統制に問題がないかを確認します。

取引関係資料

各種契約書、取引約定、および取引上のトラブルに関する資料を確認します。公正に取引が行われているかを確認するための資料です。

その他の資料

訴訟をはじめとする法的トラブルなどの発生可能性を判断するために情報を収集します。勤怠管理がしっかりなされているかなどはもちろん、訴訟の一要因となるため調査が必要です。場合によっては、担当の弁護士から話を聞くこともあります。

資料の開示請求

調査スコープと体制の確定後に調査対象の企業に資料の開示請求を行います。法務DD(デューデリジェンス)の場合、資料の開示先は基本的に法律事務所です。法律事務所は秘密保持義務・守秘義務があるため、あえて契約書に秘密保持の条文がない場合や秘密保持契約を結ばない場合もあります。

資料に関しては、外部の専門家が作成したチェックリストに従って、資料を請求しましょう。対象企業側としては、チェックリストの項目を確認して提示できる資料があるかどうか確認し、指定の資料がない場合は代替できる資料を探すか専門家に相談する必要があります。

資料の分析・検討

法務DD(デューデリジェンス)の実施にあたって、必要な分析の視点を整理します。分析の目的は、ディールブレーカーの存否確認、企業活動への影響考慮、スキームの有効性確認です。その目的に従い分析の視点を整理すると、以下が主なチェックリストになります。

なお、ディールブレーカーとは、M&A取引を中止せざるを得ないような重大な障害のことです。

事業運営の前提条件となる事項

  • 会社機関、ガバナンスの観点から、当該企業が存続しうるかを分析する
  • 当該事業を推進するために必要な許認可を取得しているか、またその許認可は維持が可能かを分析する

企業価値に重要な影響を及ぼす事項

  • 事業活動において重要と思われる各種計画に欠けている要素はないか、有利な条件での継続が可能かを分析する
  • 現段階ではリスクは顕在化していないものの何らかの条件でリスクが発生した場合、その影響の程度を分析する

M&Aの推進そのものに影響のある事項

  • 法律や各種規制の存在により、M&A自体が制限されていないかを分析する
  • M&A推進において想定しているスキームを阻害する法的な要件は存在しないかを分析する

対象企業の経営者と対談

資料の調査だけでなく、対象企業の経営者、役員と面談を行います。必要に応じ、役員以外でも会社のキーマンに対して面談を行うこともあるでしょう。方法としては、対面での面談や、電話会議などを活用することもあります。

一度で足りなければ複数回の面談を繰り返し、調査企業への理解を深めることがポイントです。経営者らも忙しいので、直前にチェックリストを調査企業へ送付し回答を考えておいてもらいます

ビジネスDD(デューデリジェンス)や財務DD(デューデリジェンス)などと質問が重複することもあるので、チェックリストや回答の共有などの工夫は必須です。一回の面談で複数のDD(デューデリジェンス)分をすませて、時間の短縮を図ります。

法務DD(デューデリジェンス)報告書の作成

分析結果を取りまとめます。主な取りまとめ項目は次のとおりです。

ディールブレーカーの存否

一定の条件でディールブレーカーが発生するケースもあるので、スキームとの関係性や相手方および利害関係者の存在を踏まえて、M&Aにおける交渉方針や契約における諸条件の付与を検討すべきです。

企業価値選定・スキームへの影響

法務DD(デューデリジェンス)においては、対象企業の収益性や競争力の源泉となる事業が法的に持続できるかを検証し、企業価値算定へその結果を反映させる必要があります。反映の視点は、下記の2点です。

  • 事業を継続できない場合、どの程度、収益が減少するか
  • 継続するためにはどの程度の投資が必要になるか

そのうえで、訴訟など対象企業が将来にわたって発生・継続するリスクファクターを明確にする必要もあります。

さらに、対象企業に対するM&Aスキームがディールブレーカーの要因にならないか、あるいはチェンジ・オブ・コントロール条項などの適用、もしくはその回避のために追加の負担などで企業価値にどれだけの影響が発生するか明確にすることが必要です。

なお、こららの影響額をどれくらい取り込むかは他のDD(デューデリジェンス)の結果を踏まえた企業価値算出との兼ね合いになるので、算出に資する一定の金額的なレンジを提示できるようにすることが望ましいといえます。

また、ディールブレーカーになりうる問題や、少なくともM&Aのディールが完了する前に解決しておかなければならない問題は、検討がしやすいようにチェックリスト形式となっているのが望ましいです。

M&Aのご相談はM&A総合研究所へ

法務DD(デューデリジェンス)では、多くの手続きや高い専門性が要求されます。そして、法務DD(デューデリジェンス)を含めた各DD(デューデリジェンス)の結果は、M&Aの成否を左右させるほど重要です。

また、M&Aでは、交渉や手続きなど経験や知識が必要になる場面も多いため、専門家のサポート下で進めることをおすすめします。M&Aの専門家選びでお悩みでしたら、M&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所には、M&Aの知識・経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、相談時から交渉・クロージングまでしっかりサポートいたします。ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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実施するタイミング

法務DD(デューデリジェンス)を実施するタイミングは、先述したM&Aの大まかなスケジュールで掲示したとおり、基本合意書締結後です。基本合意書の締結は、交渉で条件面の大筋合意がなされたときに行われます。ただし、基本合意書に法的拘束力はありません。

つまり、M&Aが成約したわけではないのです。デューデリジェンス完了後、その結果を踏まえた検討が買収側で行われ、最終交渉が行われます。最終交渉で合意してはじめて、正式な契約締結となるのです。

完了までにかかる期間

法務DD(デューデリジェンス)を含めたDD(デューデリジェンス)に要する期間は、対象企業の規模や事業内容により変動します。あくまでも平均的な目安として言えば、1~2カ月です。ただし、小規模事業であれば1~2週間、大規模企業であれば3カ月以上、要することもあります。

3. M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)のチェック項目

法務DD(デューデリジェンス)では、以下の項目をチェックします。

  1. 帳簿
  2. 株式・株主
  3. 資産・負債
  4. 契約関係
  5. 人事労務
  6. 法令順守・許認可
  7. 訴訟紛争
  8. 子会社・関連会社

①帳簿

債権・債務の有効性や偶発債務の確認などは財務DD(デューデリジェンス)のスコープとなるため、法務DD(デューデリジェンス)では債権が存在しているかや適切に処理されているか、時効になっていないかなどを確認します。

また、簿外債務が存在しないかなどの検証も必要です。事前に調査スコープを決定し、財務DD(デューデリジェンス)のスコープと役割分担をします。

②株式・株主

現在の株主が、適切な手続きのもとで存在しているかを確認します(非公開会社における譲渡制限が守られているかなど)。

既存株主の動向として、過去の企業再編により、既存株主より買取請求や決議無効の訴訟などを提起されていないか、優先株などにおいて転換の請求などがなされているかの確認も必要です。

また、潜在株主の有無を確認します。転換社債など株主数の変動する要素は存在するか、変動する要件および議決権に及ぼす影響はどの程度かを確認するのです。

③資産・負債

一般的に、帳簿上の資産、債務の有効性などは財務DD(デューデリジェンス)の範囲です。法務DD(デューデリジェンス)では、所有権や担保権に関する契約の確認や保証債務、訴訟などの確認を行います。

こちらも事前に調査スコープを決定し、財務DD(デューデリジェンス)のスコープと役割分担をすることが必要です。

④契約関係

契約書の存在の有無や契約が適切に取り交わされているかを確認します。

また、ライセンス契約やリース契約などに事業継続を回避できるものの、賠償や追加の出捐(当事者の一方が自分の意思で財産上の損失をし、他方に利益を得させること)を求められる法的根拠があるかなども確認事項です。

金融機関からの借入においては、コベナンツ(契約内容に記載する一定の特約事項)の存在により、融資条件の変更を求められることもあるため、その確認を行います。

⑤人事労務

人事DD(デューデリジェンス)を行う場合、労務に関するトラブルやリストラに関する事項は人事DD(デューデリジェンス)で行うため、法務DD(デューデリジェンス)では労働条件やセクハラ・パワハラの問題、希望退職・解雇に関する問題の有無を確認します。

事前に人事DD(デューデリジェンス)とのスコープを確認し、調整することが必要です。また、役員に関してチェックする項目としては以下のようなものがあります。

  • 役員の選任や報酬、委嘱事項などについて明示的かつ適切なプロセスで決定されているか
  • 役員の活動はどのような形で報告および共有されているか
  • 役員の活動を監督・牽制する機能は存在するか
  • 上記の機能は有効に作用しているか

⑥法令順守・許認可

対象企業が事業運営において法令を順守していない場合、買収後の影響が経済的リスクにとどまらない可能性があります。

具体的な違反事項としては、事業運営において法に定める必要な手続きがなされていないことや、無許可・無認可による事業展開、談合・利益供与など反社会的行為への関与などです。法令違反の程度によっては、M&Aの検討および交渉を打ち切る可能性も想定されます。

また、対象企業の事業遂行において許認可が必要な場合、許認可は一定の期間で更新することが多いものの、主要株主の変更があると許認可の継続や更新が不可能な場合があることも認識しておきましょう。

なお、対象企業が海外の場合は、許認可の取得・継続において外資規制があることも多く、留意しなければなりません。許認可の主なチェックリストは次のとおりです。

  • 許認可の種類、内容、有効期限
  • 当該許認可の更新の可能性
  • M&Aによる許認可取り消しなどの可能性
  • 許認可が取得できない場合の影響

⑦訴訟紛争

対象企業が訴訟紛争を抱えている場合、ディールブレークすることもあります。また、潜在的に訴訟紛争を引き起こす可能性がある契約などを抱えている場合もあり、それを未然に検知するのも法務DD(デューデリジェンス)の役割です。

ディールブレークするような訴訟紛争でなくても、訴訟が続くと大きな支出を伴います。M&A成功のためだけでなく、支出を減らすためにも、訴訟紛争を未然に防ぐ、または早めに解決することは重要です。

⑧子会社・関連会社

対象企業に子会社・関連会社があり、対象企業よりもガバナンス体制が構築されていないため、大きな法的リスクを抱えているケースがあります。

複数の子会社や関連会社を有している企業もあり、さらに海外の子会社や関連会社がある場合には、法務DD(デューデリジェンス)に多大なコストと時間がかかる場合があるでしょう。

複数の子会社や関連会社がある場合は、チェックリストを作成しておくと整理しやすいです。事前に専門家と相談して、調査スコープを絞り込むようにしましょう。

4. M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)後の対応

対象会社の法的課題は、法務DD(デューデリジェンス)が実施されても、網羅的に全てを解明できるわけではありません。また、M&Aの期間中に解決できないことが多いのも事実です。したがって、法的課題のハンドリング方法と、リスク顕在化をどう抑制するかが鍵になります。

そのため、他のDD(デューデリジェンス)と比べると、PDM(Post Deal Management=Post M&Aマネジメントの総称)を意識することが肝要です。

法務DD(デューデリジェンス)の成果物は、その性質上、評価額が定量的に示されないことが多いものの、DD(デューデリジェンス)の企業価値算出の基礎資料であるため、取りまとめの際に定量的な換算ができるか否かを確認する必要があります。

なお、法務DD(デューデリジェンス)において、ディールブレーカーや重要なコンプライアンス違反が検出された場合は、全ての調査が終わる前、もしくはM&Aのディールが完了する前に対応策を検討しなければなりません。

また、ディールブレークが生じる問題が検出された場合は、その解決が最優先事項です。

5. M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)の注意点

法務DD(デューデリジェンス)では、次の2点を確認しなければなりません。

  • M&A実施前後に必要な届出はあるか
  • 現在取得している許認可の承継が認められるか

届出や許認可の申請が遅れると、M&Aのプロセス全体の進捗に影響が出てしまうため注意が必要です。DD(デューデリジェンス)は、あくまでもM&A推進やグループ経営を展開させるための手段にすぎません。

しかし、限られた条件の中で効率的かつ目的にかなったDD(デューデリジェンス)を実行することは、非常に重要です。近年では、経営資源を効果的に獲得するために、M&Aは必須の手段になっています。

また、M&Aでも特に企業買収の実施後においては、対象企業をグループ会社として適切に運営することが大切です。さらには、グループ経営を進めるうえで、構成企業が適切な戦略のもとで機能しているかを常に把握する必要があります。

そのような状況の中で、M&Aやグループ経営における意思決定に資する情報を提供するという役割を担う意味で、DD(デューデリジェンス)は欠かせません。

DD(デューデリジェンス)は調査資料をまとめるだけでなく、M&Aやグループ経営推進の意図や目的を十分に理解したうえで、実施責任者や関係者へ、解決しなければならない項目や情報を適切に提供することが大事なのです。

その意味でも、最終報告での情報提供だけでなく、DD(デューデリジェンス)の期間中も、対象会社と専門家は密にコミュニケーションを行う必要があります。

なお、DD(デューデリジェンス)が成功したからといって、その後のM&Aやグループ経営が必ず成功するとは限りません。DD(デューデリジェンス)はあくまでも意思決定・推進に資する情報の提供であり、その後の判断および実施には別の要素も存在します。

その中で、法務DD(デューデリジェンス)は企業価値算出をするうえの基礎を作るだけでなく、法律違反やコンプライアンス違反などの会社存続に関わる要素を検出するためのものであり、M&Aをする際には必ず行う必要があるのです。

6. M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)まとめ

法務DD(デューデリジェンス)は、ビジネスDD(デューデリジェンス)、財務DD(デューデリジェンス)と並び、M&Aを実施するうえで必ず実施される項目です。

また、法的要因がディールブレークに直結する可能性があることや、法務DD(デューデリジェンス)の資料は企業価値の算出の基礎の資料となることから、他のDD(デューデリジェンス)の結果との関係が大変重要になります。

加えて、資料収集の効率性や面談の日程調整の効率化、アウトプットの整合性の確保のために、各DD(デューデリジェンス)間で調整が必要です。

プロジェクト管理者は、開始前に各DD(デューデリジェンス)間で調整が必要な項目を整理およびチェックリスト化し、収集した資料や各種情報を共有して調査結果のすり合わせのタイミングなどを明確にしましょう。

そのうえで、それぞれの責任者とチェックリストをもとに、コミュニケーションをとって進めていくことが肝要です。

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