M&Aと独占禁止法の関係性|概要とルール・リスクや事前届出の流れを解説

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

独占禁止法は、M&Aを含めた事業活動の自由を守り、円滑に行えるよう定められた法律です。当記事では、M&Aにおける独占禁止法について、意味やリスク、事前届出の方法など業務をする上で欠かせない情報をまとめました。

目次

  1. M&Aと独占禁止法
  2. M&Aにおける独占禁止法とは?基本知識まとめ
  3. M&Aにおける独占禁止法のリスク
  4. M&Aにおける独占禁止法を回避する事前届出
  5. 届出制度手続きの流れ
  6. 届出制度に必要な提出書類
  7. クロスボーダーM&Aにおける独占禁止法
  8. M&Aにおける独占禁止法とガンジャンピング
  9. M&Aにおける独占禁止法の相談先
  10. M&Aにおける独占禁止法まとめ
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1. M&Aと独占禁止法

独占禁止法とは、自由な事業活動を守るために制定された法律であり、M&Aを行う際も関わりの深い法律です。この記事では、M&Aに関わる独占禁止法の基礎知識や、想定されるリスク・事前届出など、理解しておくべきポイントを解説します。

M&Aとは

M&Aとは、事業の拡大や加速化・資本の集中・シナジーの獲得・新規事業の開始、事業の継続や後継者の確保などを目的として、自社の事業や株式を第三者へ譲渡するビジネスの取引を総称した言葉です。

事業譲渡株式譲渡といった売買手法のほか、合併・分割・株式交換・移転などのさまざまなものがあります。

それらの手法のうち、株式の授受を伴うのは株式譲渡・株式交換・株式移転などであり、事業の授受には事業譲渡・合併・分割が当てはまります。

M&Aにおける基本契約

M&Aを進める際は、仲介会社や交渉先と秘密保持契約・基本合意・最終契約の3つの基本契約を結びます。

秘密保持契約

秘密保持契約とは、知り得た他社の情報を第三者へ漏らさないことを約束する契約です。M&Aでは、交渉先か仲介会社と取り交わす契約であり、情報漏えいに伴うM&Aの見直しや自社への影響を避けるために締結します。

秘密保持契約書には、取引の定義・秘密保持の対象・契約完了に合わせた情報の返還・契約が有効に働く期限などが明記されます。

基本合意

基本合意とは、売り手と買い手が交渉条件におおむね納得した段階で締結する合意です。基本合意書は、あくまでも仮の合意であるため、一部内容を除いて法的な拘束力はありません。

記載する主な内容は譲渡の形態・取引価格・引き継ぎの対象などです。デューデリジェンスの結果によって条件が加えられたり変更されたりする場合もあります。

最終契約

売り手・買い手側の双方が、デューデリジェンスの結果を反映した条件でM&Aを行うことに同意すると、最終契約が結ばれます。最終契約に盛り込まれる条件には、取引価格・承継に関する事項(個人保証の解除・役員の処遇など)・クロージング条件などがあります。

なお、最終契約は法的な拘束力を持つ正式なものであるため、一方的に破棄することは認められません。

【関連】M&Aの契約書(基本合意契約書、最終契約書)について

独占禁止法とは

独占禁止法とは、自由な経済活動を促すために不正な取引を制限・禁止する法律です。国は公正取引委員会を設けて、独占禁止法に基づく制限を行っています。

主な独占禁止法の内容には、公正な取引の侵害・私的独占の禁止・価格の調整および談合といった不当取引の禁止などがあるでしょう。独占禁止法に抵触した場合は課徴金・刑事罰を設けられており、違反者に制裁を課すことで自由な取引の維持を図っています。

2. M&Aにおける独占禁止法とは?基本知識まとめ

この章では、M&Aにおける独占禁止法の基本事項を解説します。M&Aを行う際は、独占禁止法の規制範囲や届出規制を理解しておく必要があります。

M&Aの際に関係する独占禁止法の規制範囲

M&Aを通じて、企業グループ単体を作ったり他社と協同して事業を営んだりすると、市場での支配権が高まり、競争を制限しかねません。株式取得・役員兼任・合併・会社分割・共同株式移転・事業の譲受に当てはまる場合は、独占禁止法の規制対象とされます。

株式取得の制限範囲

独占禁止法では、会社が他社の株式を所有することにより、特定市場での取引に関する競争を実際に妨げると見なされれば、規制対象となります。具体的には、公平性を欠いた方法で取得することなどが禁じられています。

役員兼任の制限範囲

会社法では、役員兼任の規制は設けられていません。独占禁止法では、会社役員か社員が競争相手となる国内他社で役員を務めることで、特定市場の取引における競争を実際に妨げる場合は他社の役員を務めてはならないと定められています。

会社と国内でライバル関係にある他社も、自社の役員もしくは社員が他社の社員や役員を務めることを無理やり命じてはならないとしているので、注意が必要です。

合併の制限範囲

特定の分野でなされる取引での競争を実際に妨げる合併、公平性を欠いた取引による合併のどちらかに当てはまる場合、その合併は認められません。

会社分割の制限範囲

特定の分野でなされる取引で競争を実際に妨げる分割(共同新設・吸収)か、公平性を欠いた取引による分割(共同新設・吸収)に当てはまる場合、会社分割を行ってはならないと定められています。

共同株式移転の制限範囲

特定市場における取引競争を実際に妨げる共同株式移転か、公平性を欠いて行われた共同株式移転のどちらかに当てはまると、独占禁止法の制限を受けるため、共同株式移転は認められません。

事業の譲受の制限範囲

独占禁止法では、特定の市場における取引競争を実際に妨げる事業の譲受や、公平性を欠いた方法で行った事業の譲受に関して、行為の実行を禁止しています。

【制限に該当する主な行為】

  • 他社事業のすべてか、重要と見なされる部分の譲受
  • 他社事業上の固定資産のすべてか、重要と見なされる部分の譲受
  • 他社事業のすべてか、重要と見なされる部分の賃借
  • 他社事業のすべてか、重要と見なされる部分における経営主体を委任
  • 他社と事業における損益共通契約を結んだ場合

M&Aの際に関係する独占禁止法の規制

独占禁止法では、M&Aが含まれる企業結合で、契約の締結で即座に規制の範囲に達するものではありません。

しかし、M&Aなどの企業結合を実施すると市場での競争を妨げることが予想されるため、実態規制と呼ばれる規制を設けて、自由な取引を守っています。

M&Aに独占禁止法が設けられている理由

独占禁止法上のリスクへの対処を事前に検討することは、M&Aを成功に導くためには非常に重要です。M&Aが実行されると、競争環境に一定の影響がもたらされるケースが多いでしょう。

しかしながら、M&A実行後に競争が制限されることになった場合、事後に解消することは困難です。そこで独占禁止法では、競争を実質的に制限するような影響がないかどうかを確認する必要があります。したがって、一定の要件を満たすものは事前届出の義務が課されているでしょう。

M&Aの際の届出規制とは

M&Aで、株式保有・合併・分割・共同株式移転・事業の譲受を行い、実施したM&Aが独占禁止法で定める制限に当てはまる場合、届出が必要になります。

大型のM&Aには事前届出を行う必要がある

独占禁止法では、株式保有に対してM&Aで株式を得る会社・株式を発行する会社の売上高と、M&A後に変わる議決権の保有割合が規定の水準を超える際は、事前に公正取引委員会へM&Aの計画を届け出る必要があると定められています。

事業の譲受も、事業を譲受する側と事業を譲渡する側の売上高や、対象事業の売上高などが規定の金額を上回っていると届け出が必要です。

その他、合併・分割・共同株式移転も、M&Aに関わる会社の売上高に基準を定められているので、大規模のM&Aを実施する際は届出の必要があるかの確認しておくようにしましょう。

審査期間がある

公正取引委員会への届出をした場合は、審査期間が設けられています。M&Aの手続きを禁止される期間(届出の受け付けから30日まで)内に、公正取引員会から審査の報告や情報・資料の差し出し要請があった場合は、以下のいずれかの遅い方を審査期間になります。

  • 届出を受け付けた日から120日
  • 要請に応えた報告などが受け付けられた日から90日

実体規制とは

実体規制とは、「こういう企業結合はしてはいけません」といった、一定の取引分野における競争を実質的に制限する企業結合を禁止するものであり、市場集中規制ともいいます。

「一定の取引分野」「競争を実質的に制限」などの概念は、非常に抽象的な表現です。したがって、予測可能性を確保するため、公正取引委員会がガイドラインを設定しています。

3. M&Aにおける独占禁止法のリスク

当事会社同士がM&Aの契約に合意したとしても、独占禁止法の制限に抵触すると、M&A実施前の申請や問題解決のための措置が必要になり、場合によってはM&A計画自体が白紙になります。

しかし、M&A計画を実行できるように事前相談や届出審査を行えばそれなりの期間を要するため、M&Aの完了までが長引いてしまうでしょう。

実際のところ、平成25〜28年度で第1次審査の届出のうち、95〜97%は第1次審査で済んでいるものの、5件前後は2次審査へと移行していました。

2次審査へ移行したM&Aは、2016年の12月以降は審査を終えるまでの期間が300日を超える案件が目立つため、独占禁止法の制限によりM&A完了までが長期に及ぶリスクをはらんでいるのがわかるでしょう。

売上高や議決権の割合などの基準を満たしていても、競争を実質的に制限する観点からM&Aによって市場でのシェア率・市場における集中度合いが基準を超える場合、問題解消の措置を取るか計画を取り下げなければならないケースもあります。

【関連】クロスボーダーM&Aの成功要因・メリットを解説!件数も紹介!

4. M&Aにおける独占禁止法を回避する事前届出

M&Aで関わる独占禁止法の制限を回避するためには、事前届出が必要になります。ここでは、事前届出の概要・審査対象および審査基準を解説します。

事前届出とは

M&A(株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業の譲受)で、当事会社の売上高などが公正取引委員会の基準に達する場合、あらかじめM&Aの実施計画を届け出る必要があるでしょう。

公正取引委員会が公開する株式取得の届出制度

M&Aでよく用いられる株式取得の場合では、株式保有がM&Aで株式を得る会社・株式を発行する会社の売上高と、M&A後に変わる議決権の保有割合が規定の水準を超える際は、事前に公正取引委員会へM&A計画を届出が必要です。

審査対象となるのは

株式取得の場合、事前の届出が必要となるケースは、売上高と議決権の保有割合が以下の基準に当てはまる場合です。独占禁止法の制限を受ける可能性があるので、大規模のM&A(株式取得)を行う際は、届出の必要があるかを確認しましょう。

【株式取得で審査対象となる基準】

  • 株式を取得する会社:会社が属する企業グループの国内での合計売上高が200億円を上回る
  • 株式を発行する会社:子会社を含めた国内での合計売上高が50億円を上回る
  • 議決権の保有割合:M&A後に株式を得る会社の議決権保有割合が20%から50%を上回る

審査基準

独占禁止法の制限に当てはまるかどうかは、取引分野と実質的競争の制限の有無、2つの審査が行われます。

一定の取引分野

株式の取得などで影響が及ぶ地域・商品(サービスを含む)を決めなければ、自由な事業運営を妨げているかを調べられないので、企業結合のあとに商品価格を上げたシミュレーションを行い影響の範囲を画定します。

影響が及ぶ範囲はSSNIPテストと呼ばれる方法で決められ、約1年の間に5〜10%ほどの値上げを実施した場合に、商品などを購入する人がどのくらい他地域の事業者や他の製品へ切り替えるかによって、制限への抵触を見極めます。

つまり、切り替えの程度が小さければ、株式取得などを実施した企業が値上がりによる利益を得られると想定して、地域・商品の範囲を画定する必要があるでしょう。

しかし、国内に限らず海外からの商品購入者が多い場合、価格を上げたとしても海外のメーカーへと購入先を切り替るため、価格上昇による利益を得られないと見なされ、海外まで画定する地域を広げる必要があります。

独占禁止法の審査基準は地域・商品を定めるだけでなく、購入できる選択肢や海外メーカーが備える供給力なども反映される点に注意が必要です。

実質的競争の制限

企業結合で同業者が大きなグループ企業を形成した場合、市場での競争相手が減って競争が起きにくい状態へと変わるので、起きるはずの競争を制限してしまいます。そうなれば、大きなグループ企業が競争で優位に立ち、価格などを操作してしまうなど市場を支配しかねません。

企業結合で原材料の調達から商品・サービスの供給までを一貫して行える企業グループをつくりあげると、他社に与えられている取引の権利を損なうことにもなります。これでは自由な事業運営を妨げてしまうので、独占禁止法では水平的結合と垂直的結合のそれぞれに制限基準を設けています。

水平的結合の場合

ライバル企業との企業結合を行う水平結合の際は、市場における企業の占有率から集中度合いを導き出すHHIが用いられます。HHIは、市場占有率を二乗することで導き出されるので、独占状態(HHIが10,000)に近いほど、企業の集中度合いが高いと見なされます。

公正取引員会が示すHHIの基準は、以下のとおりであり、いずれかの基準を超えていると実質的制限と見なされるでしょう。

【公正取引員会が示すHHIの基準】

  • HHIが1,500以下
  • HHIが1,500を超え2,500以下で、HHIの増加分が250以下
  • HHIが2,500を超えて、HHIの増加分が150以下

ただし、上記の基準を上回っていなくても、別の審査が実施されます。これまでの審査例に倣えば、市場でのシェア率が35%以下でHHIが2,500以下なら、競争を実質的に制限する可能性が少ないと判断されるでしょう。

垂直的結合の場合

川上・川下企業によって行われる垂直的結合は、手を組んだ企業間だけで取引が進められるので、他の企業が取引に関わる可能性を排除しかねません。

以下の基準のうちいずれかが上回っている場合、実質的に競争を制限していると見なされます。

【公正取引員会が示すHHIの基準】

  • 市場シェア率が10%以下
  • HHIが2,500以下で、市場シェア率が25%以下

なお、垂直的結合では取引対象が異なる企業同士がM&Aなどを行うので、水平的結合のようにHHIの増加分は考慮されていません。

単独行動・協調的行動の観点で検討

M&Aが一定の基準や要件を満たしている違法とならない範囲(セーフハーバー)に該当するのであれば、ただちに取引委員会における競争を実質的に制限することにはならないと判断されます。

セーフハーバーに該当しない場合、独占禁止法上の問題の有無に関して、単独行動・協調的行動それぞれの観点による検討が実施されるでしょう。

単独行動の観点は、M&Aによる企業結合によって単独のグループとして事業を行うことで、競争の実質的制限がされる行動です。協調的行動の観点は、M&Aによる企業結合によって、競合他社と共同で行動しやすく、競争の実質的制限がされる行動です。

5. 届出制度手続きの流れ

独占禁止法に基づく届出制度は、企業の合併・買収などが独占禁止法上の問題にならないように、政府に届け出を行い、審査を受ける制度です。この制度には、事前の届出が必要なケースと事後の報告が必要なケースがあります

事前の届出が必要な場合は、政府機関に届出を行い、審査を受けることが必要です。ここでは、独占禁止法に基づく届出制度手続きの流れについて説明します。

届出前相談(任意)

独占禁止法に基づく届出制度手続きの流れにおいて、届出前相談は非常に重要な手続きの一つです。届出前相談とは、当該事業者がM&Aや業務提携などの事業結合を行う場合、その手続きに関して公正かつ適正な手続きを行うことを目的に、独占禁止法に基づく届出制度の運用についての相談を行うことです。

この届出前相談は、必須ではありませんが、事前に専門のコンサルタントや弁護士などに相談し、独占禁止法の適用範囲や手続きの流れ、必要な書類や申請方法などについて十分に理解した上で届出を行うことが望ましいです。また、届出前相談を行った場合、適切なアドバイスを受けることができ、事前に問題点を把握することができるため、スムーズな届出手続きが行える可能性が高くなります。

届出前相談は、当該事業者が実施することもできますが、届出書の提出期限と同時に提出することも可能です。

届出の実施

届出制度手続きにおいて、届出の実施は以下のように行われます。

  1. 届出書類の提出
  2. 審査
  3. 結論の通知
  4. 届出後の措置

①届出書類の提出
届出者は、独占禁止法に基づく届出書類を事前に作成し、独占禁止法の規定に基づく書類を揃えた上で、公正取引委員会に提出します。

②審査
公正取引委員会は、届出書類を受け取った後、独占禁止法の規定に基づき審査を行います。審査期間は、原則として30日以内となっており、審査期間中に必要に応じて調査や公聴会が行われます。

③結論の通知
公正取引委員会は、審査の結果、届出について問題がないと判断した場合、届出者に対して結論の通知を行います。また、問題があると判断した場合には、届出者に対して改善勧告を行うこともあります。

④届出後の措置
公正取引委員会は、届出後にも状況に応じた措置を講じることがあります。例えば、競争制限がある場合には、公正取引委員会が競争制限を解消するための手続きを指示することもあります。

届出の実施には、公正取引委員会と届出者との間でのやりとりが必要となります。届出前にも、相談や説明会などが開催されており、事前に公正取引委員会とのコミュニケーションを図ることが重要です。

公正取引委員会による第1次審査

公正取引委員会は、禁止期間中に、企業結合が規制上問題なく、あるいは詳細調査を実施する必要があるかを判断します。

第1次審査の結果、独占禁止法上の問題がないと認められた場合、公正取引委員会は排除措置命令を行わず、通知を行い、届出手続きを終了させます。

公正取引委員会による第2次審査

第1次審査の結果、詳細な調査が必要と判断された場合、第2次審査に進むことになります。その場合、公正取引委員会は届出を行った会社に対して報告等要請書を交付し、詳細な情報提供を求めます。

第2次審査の結果、独占禁止法上の問題がないと判断された場合、公正取引委員会は排除措置命令を行わない旨の通知を行い、届出手続きは終了します。

届出会社による問題解消措置の提案

第2次審査の結果、企業結合規制に違反したと公正取引委員会が判断した場合、排除措置命令を受ける前に、届出を行った会社が違反状態を解消するために、問題解決措置を公正取引委員会に提案することが普通です。

そのような提案を行うことで、会社は解決策を実行して違反状態を改善するための努力を行うことができます。公正取引委員会は、そのような提案を行った会社に対して、適切な措置を取るか、もしくは取らないかを決定する権限を持っています

公正取引委員会による排除措置命令

企業結合規制に違反した場合、公正取引委員会は、問題が解消されないことを確認し、排除措置命令を下すことを決定します。これは、公正取引委員会が、結合規制に反している可能性があると判断した場合に行われる処置です。

この排除措置命令は、企業間の結合を解除し、それぞれの企業が個別に行動して、競争環境を回復させることを目的としています。このような処置を受けた企業は、公正取引委員会の指示に従う必要があります。

そうしない場合は、排除措置命令の違反で罰金が課せられる可能性があります。

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6. 届出制度に必要な提出書類

M6Aの届出制度においては、一定の書類を提出することが必要です。この書類には、申請者や特定の業務に関する情報が含まれており、事前に準備しておくことが求められます。以下では、届出制度に必要な提出書類を詳しく紹介します。

株式取得

株式を取得する場合は、計画届出書を提出する必要があります。また、添付書類についても以下の準備が必要です。

  • 契約書の写しや意思決定を証明する書類
  • 最近1年間の事業報告、貸借対照表、損益計算書
  • 主総会の決議書や社員総会の同意書など、株式取得に関する決定の記録
  • 届出会社が所属する企業結合集団の最終親会社による有価証券報告書など、財産と損益の状況を示す書類

なお、最終親会社とは、他の会社の子会社ではない親会社のことを指します。

合併・会社分割・共同株式移転・事業譲渡

M&A(合併・買収)を行う場合、まず計画届出書を提出する必要があります。合併、共同新設分割、吸収分割、共同株式移転、事業譲渡それぞれについて計画届出書が必要です。

提出する添付書類として、当事会社の定款、最近一事業年度の事業報告書、貸借対照表、損益計算書、総株主の議決権の100分の1を超えて保有する者の名簿が求められます。また、合併の場合は合併契約書の写し、分割の場合は分割計画書または分割契約書の写し、共同株式移転の場合は共同株式移転計画書または共同株式移転契約書の写し、事業譲渡の場合は契約書の写しも提出が必要です。

さらに、M&Aに関して、株主総会の決議または総社員の同意があった場合には、その決議または同意の記録の写し、当事会社の属する企業結合集団の最終親会社により作成された有価証券報告書、または当該当事会社が属する企業結合集団の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものも提出する必要があります。

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7. クロスボーダーM&Aにおける独占禁止法

ここまで述べたのは日本国内での独占禁止法の制限ですが、M&Aは国内企業に限った案件だけではありません。海外企業に対するM&Aを行う際は、海外の主要国や共同体で適用される独占禁止法の制限を理解しておく必要があります。

ここでは、アメリカにおける独占禁止法・EUにおける独占禁止法・中国における独占禁止法を解説します。

アメリカにおける独占禁止法

アメリカでいう独占禁止法には、シャーマン法・クレイトン法・連邦取引委員会法の3つが含まれています。

独占取引制限などの禁止や違反における差し止め、刑事罰などを定めているのがシャーマン法です。クレイトン法はシャーマン法における違反の事前予防などを定めるもの、不正な競争を禁じているのが連邦取引委員会法です。

企業結合における規制では、クレイトン法第7条により、実質的に競争が減るか独占状態が作られる場合の株式や資産の取得を禁じています。

M&Aが以下の基準に当てはまる場合は、事前に反トラスト局とFTCへの届出も必要です。

  • 年間の純売上高か総資産が1億8,000万ドルを超える会社が、1,800万ドルを超える会社と結合し、結合される側の株式か資産から9,000万ドルを超える対象株式か資産を取得する場合
  • 3億5,990万ドルを上回る企業結合の場合

【関連】アメリカのM&A市場が2019年も好調!M&A件数が伸び続ける理由とは?

EUにおける独占禁止法

EUでは、欧州連合の機能に関する条約を根拠法とし、執行機関に欧州員会を据えています。M&Aによる企業結合では、以下いずれかの基準に当てはまると規制の対象になり、事前に欧州員会への届出が必要です。

  • すべての当事者が世界での売上高合計額50億ユーロを上回る
  • 最低2社以上の当事者がEU内での各売上高2.5億ユーロを上回る
  • すべての当事者がEU内での売上高のうち2/3を超える値を同じ国で上げていない

上記の基準に当てはまらなくても、以下の条件をすべて満たす場合は規制対象になります。
  1. すべての当事者が世界での売上高合計額25億ユーロを超える
  2. 最低2社以上の当事者がEU内での各売上高1億ユーロ
  3. 3を超えるEU加盟国それぞれで、すべての当事者における年間の売上高合計額が1億ユーロを上回る
  4. ③に当てはまるEU加盟国それぞれで、当事者の最低2社の各売上高が2,500万ユーロを上回る
  5. すべての当事者がEU内の売上高のうち、同じ国で2/3を超える売上高を上げていない

中国における独占禁止法

中国では、中華人民共和国独占禁止法を根拠法とし、独占禁止委員会を執行機関に定めています。

自由な競争を排除したり、制限したりする企業結合(株式や資産の取得による他社の支配権の獲得・合併など)を禁止しており、以下の基準に当てはまる場合は事前の届出が必要です。

  • すべての当事者に関して、世界での売上高合計額(直近)が100億元を上回り、当事者会社のうち2社以上が中国での各売上高の合計(直近)4億元を上回る
  • すべての当事者に関して、中国での売上高合計額(直近)が20億元を上回り、当事者会社のうち2社以上が中国での各売上高の合計(直近)4億元を上回る

ただし、上記の基準に該当する場合でも、当事者が親子関係か、同じ親会社を持つ(各当事会社との出資関係は50%を超える)ケースの届出は不要です。

8. M&Aにおける独占禁止法とガンジャンピング

ガンシャンピングとは、M&Aの手続きが完了する前に買い手・売り手が株式取得などの企業結合をフライングして行うような行為を、先取りして行うことです。企業結合の期日前に行うと状況によっては、企業結合規制の違反や競争法上の違反行為に該当すると見なされ、取り締まりの対象となります。

最近、各国でガンジャンピングの摘発事例が相次いでいるため、注意が必要です。

9. M&Aにおける独占禁止法の相談先

M&Aを進めるうえで独占禁止法の規制が心配な場合は、M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、中堅・小規模向けの案件を多数取り扱っている仲介会社です。

M&A総合研究所では、経験豊富なM&Aアドバイザーがクロージングまでのサポートをします。

料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)で、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。無料相談を受け付けていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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10. M&Aにおける独占禁止法まとめ

今回は、M&Aに関わる独占禁止法の基本的な知識や、生じるリスク、法律への抵触を避けるための事前届出などを解説しました。

M&Aを行う際は、規模の大きさにより売上高や議決権の保有割合などが基準に達する場合、事前の届出が必要になります。海外企業に対するM&Aではその国などが定めた独占禁止法に従う必要があるので、注意が必要です。

事前届出に関する手続きや、独占禁止法に抵触するか否かの判断には専門的な知識が不可欠であるため、専門家のサポートを受けて進めるようにしましょう。

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