2024年06月27日更新
事業承継税制の特例とは?内容や要件から申請の注意点まで解説!
本記事では、事業承継特例の内容と申請の要件、注意点などを解説しています。事業承継税制の特例措置を活用すると、贈与税・相続税の納税が難しい会社でも事業承継を行えます。事業承継の費用でお悩みの経営者の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
1. 【平成30年度改正】事業承継税制の特例とは何か
事業承継特例とは、「事業承継税制の特例」の意味です。そもそも事業承継税制とは、中小企業が事業承継を行うに当たって発生する贈与税・相続税の納税を猶予してもらえる制度のことです。
制度を実施しているのは国税庁、中小企業庁となっており、国からの認可を受けて条件を満たせば最終的に贈与税・相続税の支払いが免除となります。
そして、事業承継税制の特例とは、平成30年度に改正された特別な事業承継税制のことです。事業承継税制の特例は2027年末までの事業承継にだけ適用される制度となっています。
事業承継税制で猶予となっていたのは贈与税・相続税の最大80%でしたが、特例では100%猶予してもらうことも可能になりました。これまでの事業承継税制(一般措置)と、事業承継特例(特例措置)の違いは、以下の表で確認してみましょう。
中小企業庁の事業承継税制については、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
事象承継特例(特例措置)ではこれまでより猶予の条件が軽くなり、より多くの中小企業が制度を利用できるようになっています。猶予税額が大きいので、事業承継を考えている方は利用を検討してみるのがおすすめです。
事業承継特例の呼び方は正式なものではなく、「事業承継税制の特例」が正しい呼称であるため、公的な書類では「事業承継特例」の言葉を使わないようにしましょう。
事業承継税制の特例が設けられた背景
事業承継税制が2009年に創設されましたが、事業承継は思うように浸透しませんでした。事業承継税制の特例が設けられた背景は、以下のような点が挙げられるでしょう。
- 事業承継での贈与税や相続税は、後継者の大きな負担になっており、事業承継が困難なケースが多い
- 現状をこのままにしておくと、廃業の増加によって地方経済が崩壊する可能性が高い
例えば相続税の場合、相続の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に納税しなければなりません。先代経営者に万一のことが起きた場合、後継者は短期間で納税資金を用意しなければなりません。現金が用意できず期限を過ぎてしまうと延滞税などが発生し、納税額も増加します。
相続税が高額な場合、後継者が納税をするために借り入れをするケースもあるなどから、後継者の負担の軽減を目的として事業承継税制が設けられました。
事業承継税制の特例と一般の相違点
事業承継税制の特例と一般の相違点は、自社株を承継する場合に贈与税と相続税がかからない点です。
一般の事業承継税制では、納税猶予の対象となる株式は3分の2まで、猶予対象評価額は8割でした。したがって、53%の自社株は猶予対象となります。一方、特例事業承継税制では、納税猶予の対象となるのは全ての株式であり、贈与税と相続税が実質ゼロになりました。
項目 | 事業承継税制 | 特例事業承継税制 |
対象株式 | 発行済議決権である全ての株式の2/3まで | 全ての株式 |
相続時の猶予対象評価額 | 8割 | 10割 |
雇用確保要件 | 承継後5年間、平均8割雇用維持 | 実質的に撤廃 |
贈与などを行う者 | 改正前は経営者のみであったが、改正後は複数株主 | 複数株主 |
後継者 | 後継者である経営者のみ | 後継経営者3名まで(ただし、10%以上の持ち株要件あり) |
相続時精算課税 | 推定相続人などの後継者のみ | 推定相続人など以外も適用可能 |
特例経営承継期間後の減免要件の追加 | 民事再生・会社更生時にその時点の評価額で相続税を求め、超える部分の猶予税額を免除可能 | 譲渡・合併による消滅・解散のケースも含む |
特例承継計画の提出 | 提出不要 | 提出が必要 |
提出期間 | ー | 2018年4月1日から5年間 |
先代経営者からの贈与の期間 | なし | 2018年1月1日から 2027年12月31日 |
2. 事業承継税制の特例で猶予される税額
事業承継特例を利用すれば、数百万〜数千万円もの税金支払いが猶予されます。
最大100%の贈与税・相続税が猶予されると聞き、事業承継特例に興味を持った中小企業経営者の方は多いはずです。実際に事業承継特例を利用した場合、どれくらいの税金が猶予されるのでしょうか。
ここからは事業承継特例で猶予される税額を大まかに解説します。事業承継にかかる税金が理由で親族や従業員から承継を断られてしまった方は、ぜひ読んでみましょう。
事業承継特例を利用した際の詳しい納税額、猶予額の計算方法は以下の記事で詳しく解説します。
中小企業庁の事業承継税制については、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
贈与税の仕組み
まずは、事業承継特例を利用しなかった場合に発生する贈与税の額を見ましょう。贈与税の基本的な計算方法は、以下の表で計算できます。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | 控除なし |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
この表に載っている金額は、基礎控除額110万円を差し引いた額です。贈与税は、先代経営者が存命のうちに後継者に事業を渡した場合に課されます。
節税措置なしで5,000万円分の贈与(基礎控除はすでに差し引いています)を行った場合、贈与税は以下になります。
- 5,000万円×55%ー640万円(控除額分)=2,110万円
事業譲渡を行うに当たって、いきなり2,000万円を超える負担が発生するとわかれば、会社の引き継ぎにためらう方も多いでしょう。
しかし、事業承継特例を利用すれば、譲渡する株式の贈与税負担が100%猶予されます。後継者が次の世代に相続を行った場合、あるいは次の後継者に贈与を行った場合、最終的に贈与税の支払いは免除となります。
贈与税の支払額が大きすぎることを理由に会社の引き継ぎが難しくなっている場合、事業承継特例を利用できるのか専門家に聞いてみましょう。
相続税の仕組み
基本的な相続税は、以下の表のとおり計算できます。
課税価格 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | 控除なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円以下 | 55% | 7,200万円 |
5,000万円の事業用資産などを相続した場合、相続税は以下になります。
- 5,000万円×20%-200万円(控除額分)=800万円
相続税は、先代経営者が亡くなった後、事業を引き継いだ後継者が支払う必要があるでしょう。
贈与税と比べ相続税の税率は低めに設定されているため、贈与税よりは支払う税金も少なめとなっています。しかし、遺産の中から5分の1に近い額が税金として課されることを考えると、やはり後継者にとって重い負担であることに変わりはないでしょう。
しかし、事業承継特例を利用すれば、相続税も100%支払い猶予されます。猶予されるのは制度の対象となる会社の株式のみですが、会社の規模が大きいほど節税効果も大きくなるので利用を検討してみるのがおすすめです。
相続税も、後継者が次の世代に相続を行った場合、あるいは後継者がさらに次の後継者に事象承継税制を利用して贈与した場合、猶予税額は免除です。
数百万円~数千万円もの税金支払いが猶予されるとあって、事業承継特例を利用しようと考える中小企業は増えています。事業承継で発生する税金のことで悩んでいる方は、まず専門家に相談し事業承継特例の話を聞いてみましょう。
3. 事業承継税制の特例を使える会社の要件
事業承継特例が非常にお得な制度であることを解説してきました。しかし「どんな中小企業が事業承継特例を使えるの?」「審査に通るのが難しいのでは?」と不安に感じている方も多いでしょう。
ここからは、相続税・贈与税が最大100%猶予される事業承継特例を利用できる会社の要件を解説します。事業承継特例に興味をお持ちの方はぜひ参考にしましょう。
贈与税の特例
事業承継特例(贈与税)を利用できる会社の要件は、以下のとおりです。
- 承認計画の要件【贈与税】
- 会社の要件【贈与税】
- 先代経営者の要件
- 後継者の要件
- 担保の要件
贈与税と相続税の場合で、事業承継特例を利用できる会社の要件は異なります。生前に事業承継を行いたい方、相続と比べ重めになってしまう税負担を何とか軽くしたい方はぜひ読み進めてください。
①承認計画の要件【贈与税】
事業承継特例を利用するには、都道府県知事から特例承認計画を提出し、確認を受ける必要があります。特例承認計画には、以下のような事柄を記す必要があります。
- 先代の経営者
- 後継者
- 経営上の課題とその対策
- 承継後5年間の経営計画
そして、特例承認計画を定められた認定支援機関に提出し、所見を記載してもらわなければいけません。
認定機関とは、中小企業、小規模事業者の経営相談を受けるのに十分な知識・経験を持っているとして国から認定を受けた機関のことです。商工会や商工会議所、弁護士や税理士、金融機関など幅広い専門家が認定支援機関として登録されています。
お近くの認定支援機関は、中小企業庁の公式サイト「経営革新等支援機関認定一覧について」で確認できます。
所見を書いてもらった後、特例承認計画を都道府県知事に提出して認定をもらう必要があるでしょう。事業承継特例は期間限定の制度となっており、特例承認計画の提出期限は2023年の3月31日となっています。
提出する前には最終確認として中小企業庁の公式サイトの情報を読み、期間を守って提出しましょう。
②会社の要件【贈与税】
事業承継特例の承認を受けるには、会社が制度の対象である必要があります。事業承継特例が利用できるのは、以下の全要件に該当しない企業のみです。
- 上場企業
- 風俗営業会社
- 資産管理会社
- 総収入金額がゼロの会社
- 従業員がいない会社
このうちどれかの要件に該当している会社は、事業承継特例の対象となりません。
なお資産管理会社とは、「貸借対照表の総資産における特定資産の割合が70%以上の会社」もしくは「売上のうち特定資産における運用収入の占める割合が75%以上である会社」のことです。
つまり経営を行い、事業を行うのが目的ではなく資産を管理、売買するために作られた会社は事業承継特例の対象外です。
事業承継特例を使い継続して贈与税を猶予してもらうには、適用開始から5年間の間先ほど挙げた要件に該当しない状態を維持しなければいけません。どれかの要件に該当してしまうと、その瞬間に猶予対象外となるため申請後もチェックを欠かさないでください。
③先代経営者の要件
事業承継特例を受けるため、先代経営者、つまり現経営者は事業承継を行う段階で以下の要件を全て満たす必要があります。
- 会社の代表権を有していたこと
- 贈与開始直前、議決権数の50%以上を有していたこと
- 後継者を除き最も多くの議決権数を有していたこと
- 贈与時に会社の代表権を有していないこと
条件が多いように見えますが、先代経営者が株式を半分以上保有している会社であれば、事業承継を行うことで自然と満たせる条件がほとんどです。
したがって、事業承継特例のため、特別な対応をすべき企業は少ないといえます。
④後継者の要件
事業承継特例を利用するには、後継者が以下の要件を全て満たしている必要があります。
- 会社の代表権を有していること
- 20歳以上であること
- 役員就任から最低3年が経過していること
- 後継者とその親族などを合わせ50%超の議決権数を有していること
- 後継者とその親族などの中で後継者が最も多くの議決権数を有していること(後継者が1人の場合)
- 総議決権数の10%以上を有し、後継者の親族などを合わせて最も多くの議決権数を有していること(後継者は2人または3人の場合)
平成30年度に改正された事業承継特例では、1つの会社あたり3人まで適用を受けられます。後継者の人数によって満たすべき要件が異なる部分もあるので、まずは誰に会社を任せるのか決めましょう。
⑤担保の要件
事業承継特例最後の要件は、担保に関するものです。
事業承継特例の適用を受けるためには、猶予される税金の額に見合った担保を用意する必要があります。事業承継特例では、条件が法律改正で多少緩くなったとはいっても、要件を満たせなくなれば猶予されていた税額を全て支払わなければなりません。
あらかじめ猶予されていた税金が支払えるだけの担保を用意し、支払い能力があることを表明する必要があるでしょう。担保として有効なのは、以下の5つです。
- 不動産
- 国債
- 地方債
- 有価証券
- 支払い能力のある保証人
もし、これらの担保を用意できないのであれば、先代から引き継いだ非上場株式などを担保にするしかありません。
事業承継税制は便利な制度ですが、会社の資産が少ない場合には引き継いだ株式全てを担保にする必要があります。株式を担保する場合、要件を一定期間満たしたまま経営を継続できるのか、特例計画を立てるときに意識しましょう。
要件を満たしているかどうか、自社内で判断がつかないときには専門家を利用するのがおすすめです。
相続税の特例
事業承継特例【相続税】を利用できる会社の要件は、以下の4つです。
- 承認計画の要件【相続税】
- 会社の要件【相続税】
- 経営者(被相続人)の要件
- 後継者(相続人)の要件
相続税の場合、担保の要件がないため贈与税と比べ要件の数は少なめです。しかし上記4つの要件を満たさなければ事業承継特例が利用できないので、現時点で会社の状況がどうなっているか見てみましょう。
①承認計画の要件【相続税】
事業承継特例を相続税で認定してもらう場合も、承認計画の提出が必要です。相続を行う前に今後の経営計画、後継者の情報などを記入した計画を認定機関に提出し、所見を記入してもらいましょう。
認定支援機関に提出し、所見を記入してもらった後、都道府県知事に認定を受け事業承継特例を受ける権利を得てください。
なお相続税の場合、承認計画の認定を受けられるのは被相続人が死亡したことを知ってから10カ月以内となっています。相続の手続きでばたばたしている時期ですが、早めに手続きを進めるのが大切です。
②会社の要件【相続税】
事業承継特例を受けるための会社の要件は、贈与税のときと同じです。以下全ての要件を満たさない企業だけが、事業承継特例の対象となります。
- 上場企業
- 風俗営業会社
- 資産管理会社
- 総収入金額がゼロの会社
- 従業員がいない会社
適用から5年間は、上記の要件を満たさず経営を続ける必要があります。不安がある場合は専門家に相談して会社の状況を見てみましょう。
③経営者(被相続人)の要件
事業承継特例を適用してもらうため、経営者(被相続人)は以下の要件を全て満たしている必要があります。
- 会社の代表権を有していたこと
- 相続開始直前、議決権数の50%以上を有していたこと
- 後継者を除き最も多くの議決権数を有していたこと
会社の株式を持っていた代表者であれば自然に満たせる要件が多いですが、不安な方は専門家とともに確認しましょう。
相続前に事業承継税制(一般措置または特例措置)の適用を受けている人物が会社にいる場合、上記の要件で満たせていないものがあっても大丈夫です。
④後継者(相続人)の要件
事業承継特例を受けるにあたって、後継者(相続人)は以下の要件を全て満たしておく必要があります。
- 相続開始の翌日から5カ月以内に会社の代表権を有していること
- 相続開始時、後継者およびその親族などを合わせ総議決権数の50%超を有していること
- 後継者とその親族などの中で後継者が最も多くの議決権数を有していること(後継者が1人の場合)
- 総議決権数の10%以上を有し、後継者の親族などを合わせて最も多くの議決権数を有していること(後継者は2人または3人の場合)
- 相続開始直前に会社の役員であること(被相続人が60歳未満で死亡した場合を除く)
贈与税のときと同じく、後継者の人数によって少し満たすべき要件の内容が異なる場合もあります。生前の内に社内で後継者を決めておき、事業承継特例の要件を満たせるか事前に確認するのが良いでしょう。
ここまで、相続税で事業承継特例に申請する場合の要件を確認してきました。相続で事業承継を行い場合であっても、なるべく生前のうちに先代経営者と後継者、経営陣が話し合い事業承継特例の申請準備を行うのが大切です。
次は、要件を満たした会社がどうやって事業承継特例の手続きを行うのか解説します。「中小企業庁のページを見たけれど申請を行う手順がよくわからない」方はぜひ参考にしましょう。
節税対策については、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
4. 事業承継税制の特例申請手続きの6つの流れ
事業承継特例の申請手順は、以下のとおりです。
- 事業承継特例を知る
- 特例承継計画を作成する
- 特例承継計画の提出する
- 事業承継を実行する
- 特例認定申請書を提出する
- 贈与税・相続税を申告する
事業承継特例に必要な手続きをあらかじめ知っておくことで、スムーズな申請が可能になります。事業承継特例は期間限定の制度ですので、早めに手続きを進めましょう。
①事業承継特例を知る
具体的な手続きに入る前に、事業承継特例への理解を深めるのが大切です。事業承継特例の手続き方法や申請時期は、年度ごとに変更になる可能性があります。
手続き時期を間違えてしまわないよう、まずは中小企業庁の公式マニュアル「法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定」を読んでみましょう。
この公式マニュアルには、事業承継特例の概要や都道府県知事の認定を受ける方法、要件などが書かれています。事業承継特例の適用を目指すなら、最初に目を通しておいてください。
参考として、中小企業庁が発表した「事業承継マニュアル」に目を通しておくと後継者の決定や引き継ぎがスムーズです。以下の記事では事業承継マニュアルの内容をわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしましょう。
②特例承継計画を作成する
事業承継特例の確認ができたら、特例承認計画の作成に移りましょう。
事業承継特例の適用を受けるためには、特例承認計画の作成が必須です。承認計画が作れない場合には、相続税・贈与税が最大80%猶予となる「事業承継税制の一般措置」での申請となるので、注意しましょう。
特例承認計画には、会社の後継者や承継時までの経営見直し計画を記載しなければなりません。行政に承認される計画を作るには業績の見通しや今後の計画をわかりやすくまとめる力が必要となるので、事業承継に詳しい専門家に相談しつつ作成するのがおすすめです。
③特例承継計画を提出する
完成した特例承認計画は認定承継機関に提出し、所見を書いてもらった後に、都道府県庁に提出します。認定承継機関とは、商工会や商工会議所・金融機関・税理士など国が専門知識を持っているとして認めた機関のことです。
商工会や商工会議所では、事業承継に関する無料のセミナーを開催している所もあるので確認してみましょう。商工会などが開催するセミナーでは、株式を後継者に引き継ぐ際の節税対策も尋ねることも可能です。
事業承継特例の適用を受けるためには、平成35年(2023年)3月31日までに特例承認計画を都道府県庁へ提出する必要があります。「まだ後継者が決まっていない」「書類を準備できていない」方は早めに動き出しましょう。
④事業承継を実行する
特例承継計画を提出し、認定してもらったら計画に沿って事業承継を実施します。事業承継を行う際は、現経営者の持つ株式を後継者に譲渡し代表者を交代します。
事業承継のタイミングは、特例計画を認めてもらった後になるので、誤って先に株式を譲渡してしまわないよう注意しましょう。
⑤特例認定申請書を提出する
計画のとおり事業承継が実行できたら、都道府県庁に対して特例認定申請書を提出します。特例認定申請書は中小企業庁のページからダウンロードが可能です。
なお贈与税の納税猶予の場合、翌年1月15日が申請の締め切りです。相続税の納税猶予の場合は、申請の締め切りが相続の開始後8カ月以内となっています。
贈与税・相続税いずれの場合も、承継計画の添付が必要です。
⑥贈与税・相続税を申告する
特例認定申請書を提出し、無事に承認されれば事業承継特例の適用を受けられます。
贈与税・相続税の支払いが100%猶予となるので、その旨を税務署に申告しましょう。税務署への申告を忘れると、通常どおり税金の請求が来てしまう可能性があります。
税務署への申請は、特例認定書の提出締め切りまでに行ってください。贈与税の納税猶予の場合には、認定書のコピーと合わせて贈与税の申告書を提出しなければなりません。
相続時精算課税制度の適用を受けたい場合、その旨を明記します。なお相続税の納税猶予の場合にも、認定書のコピーと合わせて相続税の申告書を提出しましょう。
以上が、事業承継特例の手続きの流れでした。ここからは申請を行い、認定を受けた後に行う手続きを解説します。
5. 事業承継税制の特例申請後の手続き一覧
適用後、しなければいけない手続きは以下の3つです。
- 年次報告書・継続届出書を提出する
- 特例承認計画に関する報告書を提出する
- 相続税の納税猶予に切り替えを行う
事業承継特例が無事適用され、猶予を受けた後も所定の手続きが必要です。
適用後の手続きを忘れてしまうと、猶予がストップする可能性があります。無事最後まで適用が受けられるよう、詳しい手続きを見てみましょう。
①年次報告書・継続届出書を提出する
事業承継特例が適用されてから5年以内は毎年、都道府県知事に対し「年次報告書」、税務署に対し「継続届出書」を提出しなければなりません。
年次報告書と継続届出書の提出がなければ、事業承継税制を継続するつもりがないと判断されそれまで猶予されていた税金の支払いが課されます。
税務署への継続届出書は、贈与税・相続税の申告期限から5年間であれば毎年、5年経過後は3年ごとに提出しなければなりません。
なお相続税・贈与税の申告期限から5年間は以下の要件を満たす必要があります。
- 後継者が会社の代表であること
- 後継者が筆頭株主であること
- 納税猶予対象株式を継続保有していること
- 上場会社や風俗営業会社、資産管理会社に該当しないこと
要件を満たせなくなれば猶予が取消される可能性があるので、事業承継特例を利用する方は以上の要件を意識して経営を続けましょう。
②特例承認計画に関する報告書を提出する
事業承継特例の承認を受けて5年が経過したら、都道府県知事と税務署に「特例承認計画に関する報告書」を提出します。
事業承継特例では、「事業承継から5年間で雇用の8割を維持する」の項目が、努力目標として定められています。
8割が維持できなかった場合、事業承継特例の適用を継続してもらうためには認定経営革新等支援機関からの指導・助言を受けなければいけません。
③相続税の納税猶予に切り替えを行う
贈与税で事業承継特例の認定を受けている場合、贈与者が死亡した後は相続税の納税猶予に切り替えを行います。切り替えに必要なのは、以下の4つです。
- 都道府県知事への確認申請
- 税務署への相続税申告
- 納税猶予の申請
- 対象株式の担保提供
詳しい手続きの問い合わせを行う必要があります。贈与者が亡くなった場合には追加で手続きが要ると覚えておきましょう。
以上が、事業承継特例の適用を受けた後の手続きでした。案外すべき手順が多く、事業承継特例の申請に不安を感じた方は少なくないはずです。
ここからは事業承継特例に関する注意点を解説していくので、どうすればペナルティを負わず正しく制度を利用できるのか悩んでいる方はぜひチェックしましょう。
6. 事業承継税制の特例を利用する際に意識すべき6つのポイント
事業承継特例の申請を行う際は、以下6つのポイントを意識しましょう。
- 最低でも事業を5年続ける
- 令和9年12月31日までの贈与・相続が対象となる
- 承認計画だけでなく認定申請を提出する
- 自社の株式評価額の引き下げ対策を行う
- 都道府県庁及び税務署への報告を継続して行う
- サポート経験のある専門家に依頼する
最低でも事業を5年続ける
事業承継特例を受ける際には、事業を最低5年は継続しなければいけません。
業績悪化による株式の売却や他社からの買収などのケースはある程度の救済措置が設けられていますが、5年以内に事業を辞めてしまうと猶予されていた税金が課されてしまいます。
したがって将来的に廃業も検討しているなら、事業承継税制の利用を考え直した方が良いでしょう。会社の存続のみを考えるのであればM&Aなど他にもさまざまな手段があるので、事業承継に詳しい専門家に相談するのがおすすめです。
令和9年12月31日までの贈与・相続が対象となる
特例事業承継税制には期限があり、2027年(令和9年)12月31日までの贈与・相続が対象です。
そのため、特例事業承継税制の利用を考えている方は早めに行動することをおすすめします。
承認計画だけでなく認定申請を提出する
事業承継特例の認定を受けるには、特例承認計画だけでなく認定申請書を提出する必要があります。
特例承認計画の認証は、あくまでも事業承継特例の適用を受ける資格があると証明するためのものです。実際に猶予を受けるには認定申請書の提出が必須ですので、計画を出しただけで安心しないようにしましょう。
自社の株式評価額の引き下げ対策を行う
事業承継税制の特例では納税の免除ではなく、あくまで納税猶予を受けるだけです。
将来的には贈与税や相続税を納める必要があるため、自社の株式評価額の引き下げを行い、節税対策をする必要があります。
都道府県庁及び税務署への報告を継続して行う
特例事業承継税制を活用した場合、事業承継後も継続要件を満たす必要があります。
また、都道府県庁及び税務署に報告し続けないといけません。
この報告には手間がかかるため、都道府県及び税務署への報告をスムーズにできる形態を考えておくことをおすすめします。
サポート経験のある専門家に依頼する
事業承継特例を使うには、知識を持った専門家によるサポートが必須です。事業承継特例に関する手続きを行った経験のある専門家に依頼し、ミスがなく申請を進めましょう。
特に事業承継特例の確認が必要な26項目の取消事由は、事前にきっちり把握しておく必要があります。
取消事由に該当してしまうと、それまで猶予されていた税金に加え利子まで支払わなければいけません。今後の経営状況によって取消の危険がある場合には、事業承継特例の申請が終わった後であっても専門家の力を借りる必要があるでしょう。
7. 【参考】事業承継税制の特例と相続時精算課税制度の併用は可能!
平成30年度の改正により、相続時精算課税制度と事業承継特例の併用が可能になりました。もともと贈与税の課税方法は、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類となっています。この記事内で紹介した贈与税の計算方法は「暦年課税」のみでしたが、贈与で事業承継を行う場合は相続時精算課税も利用が可能です。
相続時精算課税制度とは子や孫に贈与を行う際、合計で2,500万円までが非課税となることです。
これまでこの相続時精算課税制度と事業承継特例の併用はできず、要件を満たせなくなった場合暦年課税制度で発生していたと考えられる贈与税を負担すると定められていました。
しかし、現行の計算方法では、暦年課税で贈与したとされる場合の税金が大きくなってしまいます。一気に多額の贈与税が課されることを恐れ、事業承継特例の利用を控える中小企業が多くいました。
そこで国は、暦年課税と比べ税金負担が減るケースの多い相続時精算課税制度を併用するのを進めています。相続時精算課税制度と併用していれば、猶予の対象から外れたときの税負担をこれまでより軽くするのが可能です。
事業承継特例と相続時精算課税制度を併用すれば、支払う税金は全て相続で資産を渡した場合と同額になります。
しかし、詳しい税額の計算方法は非常に複雑になるため、専門家の知識がなければ正しい金額を算出するのは困難です。相続時精算課税制度と併用する場合、手続きが増えるため経営者や従業員の負担は増えてしまいます。
事業承継特例の適用要件を最後まで満たせるか不安な方は、相続時精算課税制度との併用について一度専門家に相談した方が良いでしょう。
【平成30年改正】事業承継税制のメリット・デメリットについては、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
8. 事業承継税制の特例措置に関する相談先
事業承継特例の申請、相談、サポートはM&A総合研究所にお任せください。事業承継特例の申請にはさまざまな書類や準備が必要です。特例計画の作成から書類の提出までを通常の業務と並行しながら行うのは非常に難しいでしょう。
しかし、忙しい経営者様であっても、専門家のサポートがあれば不備のない計画、書類の作成が可能です。
M&A総合研究所では事業承継特例に関する相談だけでなく、事業承継の専門家として承継の方法、今後の経営などの幅広いアドバイスを行っています。M&A総合研究所では、中小企業の事業承継に詳しいM&Aアドバイザーが専任サポートします。
料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)で、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。事業承継特例について話を聞きたい、今後の経営や税務に関して聞きたい方は、ぜひM&A総合研究所の無料相談をご利用ください。
9. 事業承継税制の特例のまとめ
事業承継税制の特例を使えば、中小企業に限り相続税、贈与税の支払いが100%猶予されます。支払いが免除となるケースもあるので、税金の支払いが原因で後継者交代が難しくなっている会社は特例を利用しましょう。
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