事業譲渡契約書の作成方法・注意点を解説!印紙税は?【ひな形あり】

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企業情報第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

事業譲渡契約書を必要とする人のために、契約書の作成方法などをまとめました。承継する資産や再締結が必要な取引・雇用契約などのほかに、印紙税やひな形の活用例など、事業譲渡契約書の注意点にも触れています。必要な情報を獲得して、契約書の作成に活かしてください。

目次

  1. 事業譲渡契約書とは?
  2. 事業譲渡契約書が必要な理由
  3. 事業譲渡契約書の作成方法
  4. 事業譲渡契約書作成の注意点
  5. 事業譲渡の印紙税
  6. 事業譲渡契約書のひな形
  7. まとめ
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1. 事業譲渡契約書とは?

事業譲渡契約書とは?

事業譲渡契約書とは、事業の一部や全部を譲渡する際に用いられる書類です。引き継いでもらう事業や資産、営業権、雇用の再締結など、契約書に明記される項目は多岐に渡ります。そのため、見落としや不備などの事態も想定しなくてはいけません。

ここでは、事業譲渡契約書について書類の作成方法や事業譲渡契約書を必要とする理由、注意点などを紹介します。
 

  • 事業譲渡契約書が必要な理由
  • 事業譲渡契約書の作成方法
  • 事業譲渡契約書作成の注意点
  • 事業譲渡の印紙税
  • 事業譲渡契約書のひな形

最後まで読み進めると、事業譲渡契約書の作成に関する知識を得られます。必要な事業・資産を承継できるように、まとめた情報に目を通してください。

2. 事業譲渡契約書が必要な理由

事業譲渡契約書が必要な理由

事業譲渡の契約書を必要とする理由には、譲渡する事業や譲渡の対価、資産、取引先・従業員との契約ばかりではありません。以下のようなことを理由に、事業譲渡の契約書を取り交わしているのです。

 

  1. 事業譲渡後のトラブルを防ぐため
  2. 会社法21条の認知および了承を得るため

事業譲渡後のトラブルを防ぐため

事業譲渡を無事に終えても、事後にトラブルを招いてしまうケースがあります。トラブルに見舞われないためには、次のような確認・対策を講じておきましょう。
 

  • 未払い債務に関する支払い請求の有無
  • ウェブサイトの権利主張に対する予防
  • 損害賠償責任請求の発生

①未払い債務に関する支払い請求の有無

事業譲渡では、債務の種類や債権者の意向により事業を譲り受ける側に債務を譲渡できないことがあります。この場合、事業譲渡を完了させても譲渡側には未払いの債務が残ってしまうのです。

未払いの債務が残ると譲渡側が債務を負担することになるため、事業譲渡を行っても債権者に対する支払いを続けなければいけません。

支払い債務のトラブルに見舞われないためには、事業譲渡契約書に事業譲渡後でも未払い債務の支払いを譲り受け側に請求できる旨を盛り込みましょう。これで、事業譲渡を終えた後は債務の支払いを回避できます。

②ウェブサイトの権利主張に対する予防

ウェブサイトには、著作権のほかに著作者人格権が含まれていることがあります。著作者人格権は、作成した人の人格を守る権利です。作成者の権利を守るための権利で、著作物のように譲渡することは許されていません。

事業譲渡を行っても著作者が権利を主張すると、譲り受けた側は著作物の使用や改変などが行えなくなるのです。トラブルを未然に防ぐためには、事業譲渡契約書に著作者人格権を行使しない旨を明記しておきましょう。

ちなみに、著作者人格権にはサイトの記事やウェブサイトのデザイン・設計などが該当します。ウェブサイトの作成を外部に委託している場合は、作成した人物を確かめるようにしてください。

③損害賠償責任請求の発生について

事業譲渡を済ませた後に、買い手側から損害賠償の請求を受けることがあります。承継した財産などに瑕疵(かし)が認められる場合、売り手側は瑕疵担保の責任を負わなければいけません。

そのため、売り手側は事業譲渡の契約書に表明保証や補償事項を盛り込んでください。これで、譲り渡す財産に瑕疵が認められても、損害賠償責任を負わずに済みます。

また、買い手側は最終契約を結ぶ前のデューデリジェンスで瑕疵の可能性を見極めましょう。損害が出そうな財産については、事業譲渡の契約書に表明保証・補償事項を加えることです。瑕疵に該当するように、具体的に記載することと覚えておいてください。

会社法21条の認知および了承を得るため

事業譲渡契約書を必要とする理由には、取引相手に会社法21条の認知や、了承を得ることが挙げられます。これは、会社法の21条に、競業避止義務が定められているためです。

事業譲渡を行うと、売り手側は同じ市町村・近隣の市町村で、20年の間同じ事業を行ってはいけないとされています。売り手は、承継した事業のノウハウを有しています。再開をする地域・期間を設定することで、買い手への影響を抑えているのです。

上記の規定は、あくまでも原則です。買い手が同意すれば、地域や期間の変更が行えます。そのため、買い手側は、競業避止の範囲を広げたり(市町村から都道府県へ)、長い競業避止期間(最長で30年)を定めたりしていました。

競業避止義務に関する損害賠償の事例がある

事業譲渡では、会社法の21条3項にある「不正の競争の目的」に該当するとして、損害賠償が認められた例があります。ECサイトを譲渡した会社が、契約書を交わした後に同じ事業を行う目的でサイトのドメインを取得していた事例です。

しかも譲渡側の会社は、事業譲渡の引き継ぎを行う間に既存の顧客へ新しいサイトへの勧誘を行っていました。この2点が「不正の競争の目的」に抵触するとして、損害賠償のほか事業の差し止めが認められています。

ウェブサイトは、実店舗を持たなくても始められる事業です。場所を問わずに同じ事業が行えるため、競業避止義務を定めても抵触に該当しないケースが考えられます。

そこで、買い手側は事業譲渡の契約書に事業を行う範囲を全国規模に広げる旨を明記しておきましょう。これなら、ウェブサイトなどの事業譲渡でも自社の利益を損なわずに事業を引き継げます。

3. 事業譲渡契約書の作成方法

事業譲渡契約書の作成方法

事業譲渡契約書の作成を考えているなら、次に取り上げる作成方法に目を通しておきましょう。作成に必要な知識を得られます。

①契約者を記載する

契約者名は、事業譲渡契約書の冒頭に記載します。譲渡側の企業名と譲受側の企業名を明記してください。事業譲渡契約書のひな形を参考にすると、契約者名は次のような書き方で記入されています。

株式会社        以下「甲」という。)と        株式会社(以下「乙」という。)は,次のとおり事業譲渡契約(以下「本契約」という。)を締結する。

②目的に関する記載

契約者名の次は、目的に関する記載です。譲渡する側と譲り受ける側を明確にし、事業の規模や事業譲渡を行う日などを記載します。契約書によっては、クロージングが完了する日を譲渡日とします。

また、一文を加えて状況に応じて締結日の変更を含めることも可能です。ひな形を例に挙げると、次のような一文を使用してるので、例文に倣(なら)い目的に関する文章を書いてください。

甲は平成      (以下「譲渡日」という。)をもって,甲の      に関する事業(以下「本件事業」という。)を乙に譲渡し,乙はこれを譲り受ける(以下「本件事業譲渡」という。)。

ただし,譲渡日については,必要があると認める場合,甲乙協議の上,変更することができる。

③譲渡財産に関して

事業譲渡契約書で重要とされるのが、譲渡財産についての記載です。承継する財産を正確に記入しておかないと、事業譲渡契約書を交わした後に損害賠償の請求などのトラブルを招いてしまいます。

一般的に譲渡財産の記載は、各項目に分けて目録を作ります。各項目は、譲渡する資産や債務、事業に関する契約、従業員の雇用などについてです。契約書のほかに目録を作成して、まとまりのある書類を作りましょう。

本件事業譲渡の対象となる財産(以下「譲渡財産」という。)の範囲は,本契約書に添付された別紙目録記載のとおりとする。

事業譲渡では、すべての資産を承継するわけではありません。別紙にまとめた目録にもひな形が用意されているので、例文を参考にそれぞれの事業譲渡に合った項目を記載しましょう。

対象資産

承継の対象となる資産には、売り手が所有する不動産や店舗で使われていた備品、事業に必要な機械類・車両などが挙げられます。

記載する内容は、承継する資産のほか不動産の移転登記・登録手続きや登録免許税などの費用負担などです。どちらが対抗要件の具備と税金を請け負うのかを記載しておきましょう。

そのほかにも、著作物を譲り受ける場合は承継後のトラブルを防ぐために著作人格権を行使しない旨を明記しておく必要があります。

【関連】事業譲渡の登記は必要?不要?免責登記のやり方・注意点も解説!

対象資産の目録

対象資産の目録には、現在の預金額・流動資産・固定資産・知的財産権などを明記しましょう。売り手は譲渡する資産を、買い手は承継する資産を明らかにして事業譲渡後のトラブルを回避できるようにしてください。

目録に記載する対象資産が多い場合には、「○○に関するすべての資産」と明記したうえで注釈を加えます。「ただし、○○は除く」とし、一部の資産を譲渡・承継しない旨を記載しましょう。

対象債務

承継の対象とする債務には、流動負債と固定負債があります。流動負債は短い期間のうちに返済(一般的には1年以内)する負債のことです。未払金や買掛金、リース債務などが該当します。

固定負債は、長期に渡って返済(一般的には1年超)する債務。社債や未払金、返済・請求の費用がある保証金債務などがあります。

債務を承継する場合は、債権者へ通知したり承認を得たりするほか、債務の種類を確かめなければいけません。債務によっては譲渡が認められないことがあるため、売り手と債権者が結んだ契約を明らかにしておきましょう。

また、売り手側の経営者に連帯保証があるなら、契約後に解除して買い手に引き継いでもらえる事項を盛り込むことです。

買い手側は目録にない債務を承継しないように、目録に記載された債務のみを引き継ぐ旨を記載しておきましょう。

対象債務の目録

対象債務の目録には、流動債務と固定債務に分けて記載しましょう。資産と同じように「○○に関するすべての債務」とし、承継を望まない債務については「○○を除く」と目録に記入してください。

対象契約

承継の対象となる契約には、事業所などで使用する建物の賃貸借契約や得意先との取引契約などがあります。

事業譲渡では契約書を締結しても、契約は承継されません。再締結を行う必要があります。そのため買い手側は、契約先の承認を得る旨を契約書に明記しておきましょう。

これで買い手側は、契約を結んでいた相手方と再締結を行えます。そのほかの事項には、契約先の承認を得られない場合に備えて、契約書を取り交わす前の報告や対応を話し合うことを記載してください。

対象となる契約についても、先の2つの財産と同様に別紙の目録にまとめましょう。

あとは事業譲渡契約書とは別に、契約先と売り手・買い手の三者で契約上の地位の承継を行ってください。取引先ごとに契約書を作成し、事業譲渡契約書の添付書類として交付しましょう。

【関連】事業譲渡の際に承継される契約関係まとめ!債務・売掛金・買掛金・雇用関係・不動産など

対象契約の目録

対象契約の目録は、以下のとおりです。ひな形では、契約ごとに締結した企業の名前と売買基本契約書を締結した日付が記入されています。

買主が売主から承継する契約上の地位は、本件事業に関する以下の契約とする。

 株式会社____と株式会社____との平成  年 月 日付け売買基本契約書

④公租公課の負担について

公租公課には、国に納める税金(事業税・固定資産税・自動車税など)や保険料(雇用・社会保険)が挙げられます。ひな形を参考にすると、クロージング日を境にして公租公課の負担を分けていました。

譲渡日前は売り手、譲渡日の後は買い手という具合です。負担額を日割りで計算し、それぞれの支払額を明確にしてください。

また、誤って取引相手の負担分を支払ってしまう事態も考えられるので、自社の負担が増えないよう相手側に清算を求められる旨も記載しておきましょう。

⑤事業譲渡による対価

事業譲渡による対価については、支払う金額・振り込み先の銀行口座を記入しましょう。一般的には、買い手側が振込手数料を負担します。とはいえ、認識が異なる場合もあるため、振込手数料は買い手が支払うことも明記しておくとよいでしょう。

そのほかには、代金の支払いを証明してもらうため、売り手に領収書の発行を求めることも書き加えておいてください。

1 本件事業譲渡の対価は,金    万円とする。

2 乙は,譲渡日限りで前項の対価を甲の指定する口座に振り込んで支払う。振込費用は乙の負担とする。

⑥従業員の雇用について

買い手側が従業員との雇用を継続する場合には、雇用契約の再締結が必要です。事業譲渡契約書には、譲渡日に実施する解雇と雇用契約の再締結を明記しましょう。

また、売り手側が期日まで再雇用の承認を得ることも忘れずに記載しておいてください。買い手側は、未払いの債務(退職金・賞与・残業代など)や消化していない有給、勤続年数などの承継について、引き継ぐかどうかを取引に応じて書き加えましょう。

買い手側が雇用の再締結を結ばない場合には、再雇用をしない旨を記載してください。

目録・対象従業員

従業員を承継する場合は、別紙に設けた目録に引き継ぐ従業員の名前を明記しておきましょう。紹介するひな形を手本に、対象従業員の目録を作成してください。

買主が売主から承継する従業員は、本件事業に関する以下の従業員とする。

      甲野 太郎

      乙野 次郎

⑦書類の交付時期について

事業譲渡で必要な書類があれば、交付する時期を記載しておきましょう。書類の交付は、譲渡日に設定されています。

必要な書類は、免責登記の書類や事業譲渡を承認した取締役会・株主総会の議事録、売り手の商業登記簿謄本など、財産の移転に関する書類です。

【関連】事業譲渡の際の株主総会の手続きやポイント・議事録作成方法を解説!

⑧財産の移転時期など

財産の移転時期については、譲渡日とするケースや譲渡日から30日までと定める場合があります。また、手続きについても、財産の承継に関する手続きのみを売り手に求める場合と、手続きの費用を含める場合があります。

取引相手と協議のうえ、財産の移転時期と移転手続きの範囲を決めてください。

⑨譲渡日までの運営に関する記述

事業譲渡契約書には、契約を結んでから譲渡を行う日までの取り決めを記載しておきましょう。
 

  • これまでのように事業を続けること
  • 譲渡対象の財産管理を怠らないこと
  • これまでの事業展開から逸脱し事業の価値を損なう行為に走らないことなど

そのほかにも、法令違反や財務の悪化など承継後の事業活動に影響が及ぶ場合には、買い手側に報告することも記載しておきましょう。

⑩取引先について

譲渡資産の項目でも紹介したように、事業譲渡のスキームでは取引先との契約は承継されません。契約を引き継いでもらう場合には、譲渡に合わせて契約を結んでいた取引先から同意を得てください。

事業譲渡契約書に明記する取引先については譲渡資産の対象契約に基づき、承継する契約のみを明記しましょう。

⑪表明保証

表明保証は、売り手と買い手に分けて項目を設定します。どちらも事業譲渡契約書の締結日と譲渡日に取り上げる事項が真実で正しいことを表明・保証することと、明記しましょう。

具体的には、両者が表明保証する事項に次のような内容を記載しています。

売り手側の表明保証

  • 売り手側は、事業譲渡契約書の締結に関する手続きをすべて終えている。
  • 事業譲渡契約は、法や社内の規定、第三者と交わした契約に反していない。
  • 現在、契約に影響を及ぼす司法・行政手続きがなく今後も発生する見込みはない。

そのほかにも、個別の事項について表明保証を行うケースもあります。別紙に目録を設け、財務や資産の所有・使用権、事業に用いられているシステムなどについて、細かな表明保証を明記します。

買い手側の表明保証

買い手側の表明保証は、ひな形を参考にすると、次のような内容を記しています。
 

  • 買い手側の会社は日本の法律に則り、今も尚事業を続けている。
  • 事業に必要な権利と働きを備えている。
  • 契約に見合った権利・機能を備え自社が果たす手続きを終えている。
  • 契約には法的拘束力があり強制執行が行える。
  • 契約は買い手側の定款・法律、売り手側と取引先との契約に反しない。
  • 買い手側は倒産の手続きを踏んでいない。手続きを始める要因も存在しない。
  • 買い手側の財務状況は安定し債務超過や不払いの恐れもない。
  • 契約は債権者に対し嘘をついたり財産を隠したりすることが目的ではない。
  • 買い手は反社会的な勢力に属さず関わりも持っていない。

⑫譲渡前の遵守事項を記載

事業譲渡契約書を締結しても、譲渡日は先のことです。そこで、契約書には譲渡するまでの間に守ってもらう事項を記載し、不利益を被らないように努めましょう。

記載の仕方には、個別に遵守事項を記載する方法があります。承継する事業や資産(財産・債務・契約)、従業員の雇用維持をはじめ、譲渡日までに手続きを終える・必要な同意を得る旨を記載してください。

そのほかにも、遵守事項を大きく括った書き方もあります。譲渡日まで契約書の締結前と同じように事業を行い、承継する資産の管理や利用を続けることを書いておきましょう。

また、買い手の許可なしに事業に影響を与える行為を行わないことや事業に多大な影響が及んでしまった場合は、売り手に報告することなども忘れずに書き加えてください。

⑬譲渡後の遵守事項を記載

譲渡後の遵守事項には、競業避止義務があります。契約書に定める遵守事項は、事業譲渡の前だけとは限らないのです。

売り手は、譲渡事業のノウハウを有した企業です。買い手にとってはライバルと成りえるため、今後の事業展開を視野に入れたうえで競業避止義務の期間と範囲を決めて、事業譲渡契約書に記載してください。

⑭譲渡条件と解除について

契約書には、事業譲渡を行う条件・解除の項目を明記します。

【売り手の譲渡条件】
以下の項目が守られていることを条件に、売り手は対象事業の譲渡を行います。

 

  • 譲渡日において、買い手の表明保証が真実で確かであること。
  • 契約に盛り込んだ義務を、買い手が果たしていること。


【買い手の譲渡条件】
以下の項目が守られていることを条件に、買い手は承継に対する対価を支払います。

 

  • 譲渡日において、売り手の表明保証が真実で確かであること。
  • 契約に盛り込んだ義務を、売り手が果たしていること。
  • 事業に必要な許認可、手続きを終えていること。

解除に含める内容

解除の項目には、表明保証違反と法を介した破産手続きを記載します。定められる項目には、次のような例があります。
 

  • 譲渡日までに譲渡条件で定めた事項が満たされない場合、相手方への通知をもって事業譲渡契約の解除が認められる。
  • 表明保証の違反が発覚し、書類による通知で守るように促したにもかかわらず定めた期間内での遵守が行われない場合、相手方へ書面を送ることで契約の解除が認められる。
  • どのような理由があっても、対価の支払い・事業の引き渡しを終えた後に事業譲渡の契約を解除することはできない。

場合によっては、譲渡日までに条件を満たせない事態も考えられます。ある程度の許容を定めるなら、2つ目に取り上げた目的の項目に、譲渡日が変更できる旨を加えておきましょう。

⑮協議事項

協議事項には、契約書に定めていない事項や疑問に思う事項が見つかった場合についての協議を定めます。これらの問題に直面した場合、両者が協議して解決に力を注ぐこととします。

⑯適用する法と管轄の明記

事業譲渡契約書には、適用する法律と管轄を記載しておきましょう。契約を解釈する法を明らかにするために「日本法に準処する」などと明記することです。

また、トラブルに見舞われる事態に備えて争いを解決する裁判所を定めておきましょう。具体的には「○○裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」という文章を用います。

⑰署名

署名欄には、日付と双方の会社名・代表者の名前・会社の住所を記載してください。また、判を押した事業譲渡契約書を、双方が1通ずつ保管することも明記しておきましょう。ひな形では、以下のような書き方をしています。

本契約の成立を証するため本契約書を2通作成し,甲乙各記名押印の上,各1通を保有する。

 

平成      

 

甲:住   所             乙:住   所            

  会 社 名               会 社 名            

  代表取締役           印   代表取締役            

4. 事業譲渡契約書作成の注意点

事業譲渡契約書作成の注意点

事業譲渡契約書には、いくつかの注意点があります。契約後にトラブルを招いたり訴訟を起こされたりにしないために、次に挙げる注意点を押さえておきましょう。

 

  1. 契約書の作成
  2. 事業譲渡の目的
  3. 事業譲渡の対価
  4. 法令上の規定への配慮
  5. 商号続用時の免責登記
  6. 従業員の処遇

①契約書の作成について

事業譲渡契約書の作成では、どのような点に注意を払えばよいのでしょうか。契約書の作成では、3つのポイントが挙げられます。
 

  • 自社で行う場合
  • 第三者に任せる場合
  • ひな形を利用する場合

自社で行う

事業譲渡契約書は、自社で作成しましょう。契約書は、契約自由の原則によりどちらが作成してもよいとされています(一部の契約を除く)。積極的に契約書の作成を行い、事業譲渡の主導権を握りましょう。

ただし、作成した原案に不備が見つかったり原案の質が劣っていたりすると、相手側に主導権を握られます。相手側から質の高い原案を提出されることで、交渉は相手方を中心に進んでしまうのです。

状況に応じて、相手よりも先に契約書の原案を作成する・相手方の原案を待つのかを選択してください。

第三者に任せる


事業譲渡契約書を自社で作成する場合、細部のチェックは法務の専門家に任せましょう。作成した原案に基づき、顧問弁護士やM&Aに精通した弁護士にリーガルチェックを依頼してください。

一度作成したからといって、自社だけ作成することは控えましょう。事業譲渡に応じて、承継する資産や契約、取引などは違います。

事業譲渡が完了した後に損害賠償で訴えられたり引き継ぎができなかったりと、両者に不利益を生じさせる場合も考えられるのです。

事業譲渡契約書の作成に関しては非常に重要な契約書になるため、M&A・事業譲渡の専門家のM&A総合研究所にご相談ください。知識と経験が豊富なM&Aアドバイザーが契約書作成のアドバイスはもちろん、クロージングまでフルサポートいたします。

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ひな形を利用する

事業譲渡契約書の作成では、ひな形をしっかりと確認しておきましょう。事業譲渡は、資産を選んで承継するため、ひな形と同じ形式を取ることはできません。そのため、ひな形を参考にする場合は契約内容に承継する資産が含まれているかを確かめておきましょう。

ひとつの項目にたくさんの内容を掲載する場合は、別紙を用意して目録を作成すると見落としが少なく、相手側もチェックがしやすいです。

また、ひな形をそのまま利用すると履行できない義務を課してしまいかねません。ひな形は、必要・不要の項目を見極めたうえで、契約書の作成に使いましょう。

②事業譲渡の目的について

事業譲渡契約書では、承継する事業と財産、財産の移転時期、手続きについて記載しておくことが求められます。お互いが利益を損なわないように、取り決めた内容が反映されていることを確かめてください。

譲渡する事業や財産の明記

契約書には、譲渡する事業と財産を一つひとつ記載する必要があります。不要な事業・資産を承継させないために、別紙にまとめたり明記の仕方を工夫したりといった書き方を選びましょう。

承継する項目が多い場合には「○○の資産を除く」と明記すれば、すべての資産を書かずに済みます。

譲渡後の財産移転時期や手続き

事業譲渡契約書には、財産を移転させる時期と手続きに関する事項を記載します。財産を移転させる時期ははっきりと記載しておきましょう。事業に必要な機械やソフトウェア、特許などがなければ、事業の開始を妨げてしまいます。

また、事業譲渡では財産を移転する日に手続き(必要な承認・引渡し・登記など)の完了を合わせることも重要です。

財産を承継しても対抗要件の具備がなければ、買い手は権利を主張できません。そのため、手続きは財産を移転させる日に済ませるか、移転する日までに完了させておきましょう。

③事業譲渡による対価について

事業譲渡の対価で注意する点は、次の2つです。対価についての記載は、支払う額だけを載せればよいというものではありません。不利益を被らないために、以下の内容を把握しておきましょう。
 

  • 支払い額の明記
  • 財産評価の保証

支払い額の明記

事業譲渡契約書には、譲渡に対する支払額をはっきりと記載しておきます。さらに、支払う日や支払い方法、どちらが振込手数料を負担するかなども明記してください。

事業譲渡契約書の締結から、譲渡をする日までは一定の期間があります。財産の評価は契約書の締結に合わせて行われているので、譲渡日までに価値が下がってしまいかねません。適正価格での支払いを求めるなら、譲渡日までに財産評価を行うことを書き加えましょう。

一定額を契約した日に支払い、譲渡日に残りの金額を支払うことで適正な対価での承継が行えます。ただし、契約相手によっては自社に有利な評価を得るために、何度も財産評価を求めかねません。

回数を制限するために、財務評価を求めた側に費用を負担させることも明記しておいてください。

財産評価の保証

契約書には、財産評価を保証させる事項を加えておきましょう。保証条項を定めることで、売り手側に財産評価に用いられた資料の正確性を保証させられるのです。

これで、事実を偽り資料を提出していたことが発覚しても契約の解除や契約内容の変更などが行えます。

④法令上の規定への配慮について

法令上の規定に対する配慮には、次の2点が挙げられます。

 

  • 事業譲渡に関する手続き
  • 競業避止義務

従うべき法律があることを契約書に記載して、トラブルや不利益を回避してください。

事業譲渡に関する手続きを明記

事業譲渡では、法律に即した手続きを踏まなければいけません。株主総会や取締役会の決議を経たり株式の買い取り請求に応じたりと、株主への配慮が求められます。

そのほかにも、条件に該当する場合には独占禁止法に従って事業の譲受を報告したり禁止期間の譲受を控えたりと、公正な取引に対する配慮も必要とされるのです。

認識の違いから訴訟トラブルを招かないためにも、契約書に保証条項を設けて事業譲渡に関する手続きをしっかりと記載しておきましょう。

競業避止義務に関する記載

事業譲渡契約書が必要な理由で取り上げたように、事業譲渡契約書には競業避止業務についての記載が必要とされます。競業を禁止する期間と地域の設定は、両者にとって今後の事業活動を左右します。

特別に規定を設けない場合は競業禁止の期間は20年、事業活動を禁止する地域は同じ市町村と隣の市町村です。双方の経営方針に沿って、事業譲渡後の活動に影響が出ないように調整した期間・地域を契約書に記載してください。

⑤商号続用時の免責登記について

商号の続用とは、買い手が売り手事業の商号を引き継ぐことです。商号の続用を選ぶと、売り手の債務を引き継ぐことになります。

しかし、買い手によっては債務の弁済を望まないこともあるでしょう。このような場合に、債務の弁済を避けられる免責登記が用意されています。

免責登記を選択する場合は、事業を譲り受けた直後に滞りなく債務を弁済しないことを本店の所在地で登記しなければいけません。買い手が免責登記を望むときは、事業譲渡契約書に免責登記の事項を加えておきましょう。

そのほかに、債権者へ債務を弁済しない旨を通知することでも免責が認められます。債権者の数に応じてふさわしい方法を選びましょう。ひな形を例に挙げておくので、こちらを参考に商号続用時の免責登記の記載方法を確かめてください。

第16条 (名称の使用継続)

 1.       売主は、買主が、本件事業の名称として、名称「______」(以下「本名称」という)を使用することに同意し、これに異議を述べない。

 2.       買主は、クロージング日以降、遅滞なく、会社法第22条2項の定めに従い、買主が売主の債務を弁済する責任を負わない旨の登記を行うものとする。

 3.       売主は、クロージング日以降、本名称を使用しないものとする。

債務の支払い義務

商号を続用すると、外側からは同じ事業体が営業を続けているように見えます。そのため、一般的な解釈では商号の続用が行われた場合、債務も引き継がれたと判断をするのです。

そのため、買い手は商号続用を選ぶと債権者を保護するために、債務の支払い義務を負うことになります。免責の手続きを踏まなければ、債務は買い手に移ったとみなされることを知っておきましょう。

⑥従業員の処遇について

事業譲渡契約書における従業員の処遇は、3つのパターンに分けられます。
 

  • そのまま譲受側に承継する場合
  • 雇用契約の再締結
  • 承継しない場合

選択する処遇から、作成の注意点を押さえてください。

そのまま譲受側に承継する場合

譲渡側の従業員をそのまま譲受側に承継する場合は、従業員たちの同意が必要です。そのため、契約書には譲渡日までに従業員の同意を得ることを明記してください。また、従業員たちの労働環境も変わってしまうので、承継先での処遇なども書いておきましょう。

従業員を承継させるものの雇用契約を再締結する場合は、次の項目を参考にしてください。

雇用契約を再締結する

従業員を承継する場合には、そのまま承継する方法のほかに雇用契約を再締結する手段も残されています。譲渡側で雇用契約を解除し、譲受側で契約の再締結を行う方法です。再締結を選ぶ場合にも、従業員の同意が必要とされます。

そこで、事業譲渡契約書には譲渡側が雇用契約の再締結について、雇用契約の解除と再締結の同意を得る旨を記載しておきましょう。

また、雇用契約の再締結では退職金の支払いや未払いの給与、有給休暇の消化、勤続年数の消失などに対応しなければいけません。どちらが問題に応対するのかを協議して契約書に記載しておくことで、事後の争いを避けられます。

承継しない場合

従業員を承継しない場合には、転属・出向・解雇という手段が用いられます。転属とは、配置転換のことです。従業員を別の事業所へ移して雇用を継続させます。

出向は、雇用契約を維持したまま譲受側に勤務先を移す方法です。従業員の籍と給料の支払い義務は譲渡側に残り、業務の命令権が譲受側に移ります。

解雇は文字通り、従業員を辞めさせることです。承継や転属、出向に従わない場合に、止むを得ず解雇の手段を取る場合があります。

従業員を承継しない場合には、譲渡側と従業員との間でトラブルの発生が予想されます。譲受側が争いに巻き込まれることを避けるためには、契約書に雇用関係・雇用契約のすべてを承継しない旨を記載しておくことです。

5. 事業譲渡の印紙税

事業譲渡の印紙税

事業譲渡契約書には、収入印紙を貼付することが義務づけられています。収入印紙とは、国が発行する証明書のことです。収入印紙を購入して契約書に貼りつけることで、税金(印紙税)を収めたことが証明されます。

とはいえ、収入印紙を貼りつけただけでは税金を納めたことにはなりません。貼りつけた印紙に消印をしなければならないのです。そのため、印章を押すか署名をして消印を完了させてください。

消印に使う印章は、どのようなものでも構いません。契約書で使用したものや契約書を作成した人物のもの、代理人のもの、従業員の印章なども使えます。

また、署名をする人物にも特別の定めを設けていません。契約書を作成した人物や代理人、使用人、従業員が署名を行えます。さらに、契約書に署名する人物は一人でよいとされています。相手方と作成した契約書でも、両者が署名をする必要はないのです。

引用:国税庁HP・印紙の消印の方法より

消印が認められない場合

次のような印章・署名は消印と見なされません。正しい方法を知って、印紙税の納付を完了させてください。
 

  • 署名を鉛筆で書いた場合
  • 「印」の字を書いたり斜線だけを引いたりした場合
  • 印章・署名が文書と彩紋にかかっていない場合

彩紋とは、印紙の描かれた図柄のことです。印紙の彩紋と契約書にかかるように消印を済ませましょう。

追徴課税に気をつける

事業譲渡契約書を作成するまでに印紙税を納めなかった場合、追徴課税が課せられます。追徴課税の額は納める額面の3倍ですので、余計な出費を増やさないために契約書を作成するまでに印紙税を納めておいてください。

とはいえ、国の調査が行われるまでに印紙税の不納を申し出れば、追徴課税は1.1倍に減らせます。このほかにも、誤った方法で収入印紙を貼った場合には再度同じ金額の印紙を納めなければいけません。

不納や不備があると不要なお金を支払うことになるので、契約書の作成と合わせて印紙税の納付もしっかりと行いましょう。

非課税対象の範囲

印紙税が非課税となるのは、契約書に記載された取引額が1万円未満の場合です。1万円以上で事業譲渡の契約を結ぶ場合には、印紙税が必要となります。つまり、ほとんどの場合において契約書の作成では印紙税を支払うといえるのです。

印紙税の価格

では、支払う印紙税の価格はどのぐらいの金額でしょうか。印紙税は契約書に書かれた取引額に応じて、次のような支払額を定めています。

【印紙税の価格】

1号文書
契約金額 印紙税額
契約金額の記載なし 200円
1万以上10万円以下 200円
10万超え~50万円以下 400円
50万超え~100万円以下 1,000円
100万超え~500万円以下 2,000円
500万超え~1,000万円以下 1万円
1,000万超え~5,000万円以下 2万円
5,000万超え~1億円以下 6万円
1億超え~5億円以下 10万円
5億超え~10億円以下 20万円
10億超え~50億円以下 40万円
50億円を超える額 60万円
引用:国税庁HP・印紙税額の一覧表(その1)より
 

収入印紙の販売先

収入印紙の購入先はコンビニや郵便局、金券ショップ、法務局などです。必要な額面の収入印紙を手に入れるなら、郵便局か法務局を訪れましょう。

コンビニは一般的に少額の印紙のみを取り扱っています。そして、金券ショップは買い取った印紙を販売するため、目的の額面が売られていないことがあるのです。

6. 事業譲渡契約書のひな形

事業譲渡契約書のひな形

事業譲渡契約書を作成するなら、用意されているひな形を活用しましょう。契約書のひな形は以下のようなサイトで提供・開示しています。
 


ひな形を利用する際は、契約内容に合わせて追加・削除する事項を決めてください。

事業譲渡契約書の相談は、M&A総合研究所へ

ひな形をそのまま利用してしまうと、必要な資産を譲渡したり不要な資産を受け取ったりと、売り手と買い手の双方に影響が及びます。契約書をしっかりと仕上げるなら、M&Aの仲介会社に相談しましょう。その際はぜひM&A総合研究所にご相談ください。

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そのほかにも、提携する弁護士のサポートも受けられるので安心して事業譲渡を行えます。契約書の作成でお悩みの場合は、無料相談をご検討下さい。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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7. まとめ

まとめ

事業譲渡契約書について、作成の方法や注意点、参考にするひな形などを紹介しました。ひな形の利用でも取り上げたように、契約内容は譲渡する事業によって異なります。

取引先・従業員との契約を再締結する旨や競業避止の期間・範囲などをしっかりと記載しておくことが求められます。

事業譲渡契約書を作成するときは、不利益が生じないように顧問弁護士や外部の弁護士、M&Aの仲介会社を頼りましょう。

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