中小企業庁が事業承継の5ヶ年計画を策定!その内容を簡単解説!

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

中小企業庁が事業承継ガイドラインに基づいて、事業承継の5ヶ年計画を策定しました。今後5年間で、中小企業の後継者問題解決に向けて集中的に支援する施策を始めています。本記事では5ヶ年計画の取り組みについて、M&Aの活用方法と共に解説します。


目次

  1. 中小企業庁とは
  2. 事業承継5ヶ年計画とは
  3. 事業承継5ヶ年計画の概要
  4. 事業承継5ヶ年計画の内容
  5. 事業承継5ヶ年計画と合わせて読みたい資料
  6. 事業承継5ヶ年計画まとめ

1. 中小企業庁とは

中小企業庁とは

中小企業庁は、日本の経済を支えている中小企業の維持・発展をさまざまな面から支援しています。中小企業の育成や資金面の補助、研修や相談業務など、その活動は多岐に渡ります。

近年は経営者の高齢化や後継者不足が原因で、会社の経営維持が難しい中小企業が多くなっています。中小企業庁は事業承継問題の現状周知と課題解決に向けて、さまざまな施策で中小企業の支援を行っています。

2. 事業承継5ヶ年計画とは

事業承継5ヶ年計画とは

事業承継5ヶ年計画とは、今後5年間で正念場を迎える中小企業の事業承継問題について、これまでよりもさらに集中的な支援を行う施策のことです。事業承継5ヶ年計画の目的と、作られた背景について解説します。

事業承継5ヶ年計画の目的

事業承継5ヶ年計画は、地域に根付いている事業を次の世代にしっかりとバトンタッチし、事業承継をきっかけとして後継者が積極的に新事業へチャレンジできる環境を整えるための施策です。中小企業庁は今後5年間を事業承継支援の集中実施機関と定めています。そのための支援策として
 

  1. 「経営者の『気付き』の提供」
  2. 「経営者が継ぎたくなるような環境を整備」
  3. 「後継者マッチング支援の強化」
  4. 「事業からの退出や事業統合などをしやすい環境の整備」
  5. 「経営人材の活用」
これら5つの項目を掲げています。それぞれの意味については本記事で後述します。

事業承継5ヶ年計画が作られた背景

事業承継5ヶ年計画は、経営者の高齢化や事業承継の準備が遅れていること、後継者への事業承継が円滑に進んでいない、などの現状を解決するために策定されました。事業承継計画が作られるきっかけとなったそれぞれの背景について、データと共に解説します。

背景①経営者の高齢化

事業承継5ヶ年計画が作られた背景①

出典:中小企業庁委託調査「中小企業の成長と投資行動に関するアン ケート調査」を再編

中小企業経営者の平均年齢は年々高くなっています。グラフを見ると、20年前は経営者年齢の山が50代前半だったのに対して、2015年には60代後半になっています。中小企業経営者の平均引退年齢は67歳から70歳となっています。つまり多くの中小企業が今後5年以内に事業承継を行う必要があります。

背景②事業承継が進んでいない

事業承継5ヶ年計画が作られた背景②

出典:中小企業庁「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)」を再編

中小企業経営者へのアンケートでは、どの世代も半数以上がまだ事業承継の準備を始めていない状態です。後継者の育成など事業承継にかかる準備期間を考えると、60代に入った頃から事業承継の準備を始める必要があります。

しかし現状は、60代以上の経営者の多くが「これから準備をする」「現時点では準備をしていない」と答えています。その理由として、日々の経営に追われている、何から始めれば良いのかがわからない、相談相手がいない、などの背景があります。

背景③後継者への引き継ぎがうまくいかない

事業承継5ヶ年計画が作られた背景③

出典:日本政策金融公庫総合研究所「『中小企業の事業承継に関するインターネット調査』の概要」を再編

アンケート調査によると、中小企業経営者の半数が廃業を予定していると答えています。中でも「子どもに継ぐ意思がない」「子どもがいない」「適当な後継者が見つからない」と答えている経営者は3割近くにまで及んでいます。

後継者へ引き継げないことによって廃業を考えざるを得なくなっている中小企業が多いことがわかります。また、廃業予定の中小企業の中で、4割以上の企業が事業の継続は可能であると答えています。

会社自体は成長と継続が可能であるにもかかわらず、後継者がいないことで事業が継続できないという厳しい現状があります。

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3. 事業承継5ヶ年計画の概要

事業承継5ヶ年計画の概要

中小企業庁は、事業承継5ヶ年計画による支援策として、以下の5つの項目を掲げています。それぞれの項目について解説します。

概要①経営者の「気付き」の提供

事業の継続性はあるにもかかわらず、日々の経営に追われていたり、事業承継に必要な期間や準備の大変さを認識していなかったりすることが原因で、事業承継への取り組みを先送りにしている経営者が多く存在します。

そのような中小企業経営者に、事業承継に早めに取り組むことの必要性を伝え、具体的な行動を促します。これまでのように支援機関が受け身で待つのではなく、事業承継診断などを積極的に行うことで、事業承継ニーズを引き出します。

概要②後継者が継ぎたくなるような環境を整備

国税庁の調査によると、2016年度に赤字だった企業は63.5%でした。企業数にすると約169万社となります。赤字企業の割合は年々減少傾向にあるとはいえ、多くの企業が赤字経営をしています。

事業承継5ヶ年計画では、後継者が安心して事業を継げるように、経営改善の支援を行います。また、後継者が事業を引き継いだ後の新事業への挑戦も支援します。

概要③後継者マッチング支援の強化

以前まで中小企業は、ほとんどが親族への事業承継でした。M&Aは大企業か規模の大きい中小企業が行うもので、大半の中小企業には関係がないという風潮がありました。また、一時期M&Aによる敵対的買収がニュースをにぎわせたこともあって、M&Aに良い印象を持っていない経営者が多くいました。

最近ではM&Aのメリットを活用しようという中小企業経営者が増え、M&A件数は年々増加傾向にあります。しかし中小企業の数に対してM&Aの数はまだわずかです。そのため、事業承継5ヶ年計画では後継者マッチング支援の強化を行います。

現在各都道府県に設置されている事業引継ぎ支援センターの支援体制を強化し、民間企業と連携することで小規模M&Aマーケットを構築します。

概要④事業からの退出や事業統合などをしやすい環境の整備

1つの企業が廃業すると、取引企業や地域経済にも影響を及ぼします。例えば自動車部品工場が急に廃業した場合、自動車の製造工程に影響があります。また、伝統工芸品を作る企業が廃業すると、地域独自の技術や文化が失われてしまいます。

このような事態を防ぐために、取引会社が事業統合したり、地域の企業が協力し合ったりする必要があります。事業承継5ヶ年計画では、このようなサプライチェーンや地域における事業統合・共同化の支援を行います。

概要⑤経営人材の活用

事業承継によって後継者が経営を引き継いでからも、さまざまな課題が出てきます。後継者の経営能力不足から組織マネジメントに支障が出たり、取引先や顧客が離れたりするなどの課題をサポートし、後継者を育成する人材が必要です。

事業承継5ヶ年計画では、経営経験豊富な人材を、中小企業の次期経営者候補や後継者をサポートする経営幹部として送り込んだり、社外アドバイザーとして活用できるような環境を整備します。

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4. 事業承継5ヶ年計画の内容

事業承継5ヶ年計画の内容

事業承継5ヶ年計画のパンフレットには、事業承継支援について6つの施策が記載されています。また、後半には参考資料として、事業承継の現状と課題や支援体制、事業承継補助金や事業承継税制についての資料が添付されています。ここからは事業承継5ヶ年計画の内容について解説します。

内容①事業承継に関する課題と対応の方向性

事業承継5ヶ年計画では、具体的な事業承継支援に先立って、事業承継の現状認識と、どのような対応の方向性で進めていくかを最初にまとめています。事業承継の現状は、経営者の高齢化が進んでいるにもかかわらず多くの中小企業で事業承継の準備が進んでいないという状況です。
この問題を解決するための方向性として、本記事で前述したように

  1. 「経営者の『気付き』の提供」
  2. 「経営者が継ぎたくなるような環境を整備」
  3. 「後継者マッチング支援の強化」
  4. 「事業からの退出や事業統合などをしやすい環境の整備」
  5. 「経営人材の活用」
これらの項目を掲げています。この5つの項目の具体的な施策として
  • 事業承継支援のプラットフォームの構築
  • 早期承継へのインセンティブ強化
  • 小規模M&Aマーケットの形成
  • サプライチェーン・地域における事業統合・共同化の支援
  • 経営スキルの高い人材を事業承継支援へ活用
といった取り組みの強化を紹介しています。

内容②事業承継支援のプラットフォームの構築

事業承継5ヶ年計画では、事業承継支援を行う環境を整備しています。すでに事業引継ぎ支援センターやよろず支援拠点といった地域に密着した支援機関がありますが、これまでは受け身の支援でした。しかし今後は地域の支援者ともさらに連携を深め、支援機関から積極的に事業承継を推進する体制を整えていきます。

事業承継診断や資金面のサポート、地域で事業承継をサポートする専門家の育成などを実施し、今後5年間で25万件から30万件の中小企業に対して事業承継診断を行うことを掲げています。

内容③早期承継へのインセンティブ強化

事業承継5ヶ年計画では経営者や後継者へ早期に事業承継を行う動機付けを促すこととしています。具体的には、事業承継ガイドラインで早期の事業承継の重要性を明記しています。また、事業承継をきっかけに新たな事業への取り組みを支援する事業承継補助金を新設しました。

他にも、早い段階での経営改善の取り組みを支援したり、事業承継税制で生前贈与の税制優遇を強化したりと、さまざまな面から早期継承へのインセンティブ強化を実施するとしています。

内容④小規模M&Aマーケットの形成

M&Aを取り扱う地方銀行やM&A仲介会社は増えていますが、規模の大きいM&Aの仲介が中心となっています。事業承継5ヶ年計画では、事業引継ぎ支援センターのデータをオープンにすることで、税理士や会計士などが小規模のM&A案件を取り扱う機会を増やしていく計画です。

事業承継5ヶ年計画のパンフレットには外国の事例が紹介されています。フランスでは譲渡希望企業のデータベースをインターネットで検索できるようになっています。また、アメリカでは大規模なM&Aマッチングサイトが多数運営されています。

内容⑤サプライチェーン・地域における事業統合・共同化の支援

中小企業庁は下請中小企業振興法の振興基準を改正し、中小企業が自主的な行動計画を策定することを明記しました。これによって、サプライチェーンや地域における中小企業の自主的な協力体制を促し、国もそれを支援するとしています。また、M&AやMBO(役員承継)をするために必要な支援策を実施しています。

事業承継5ヶ年計画のパンフレットには実際の支援事例が紹介されています。奈良県の自動車整備会社は、事業承継した後継者が後継者難と赤字で苦しむ自動車整備業や板金塗装業などの企業をM&Aで買収して成長し続け、サプライチェーン・マネジメントに成功しています。

石川県の伝統工芸品である中山漆器は、職人不足で廃業の増加が心配されていました。そこで北國銀行は課題を報告書にまとめ、他地域との共同システムの構築を進めています。

内容⑥経営スキルの高い人材を事業承継支援へ活用

中小企業庁は経営スキルの高い人材を事業承継支援へ活用するために、人材紹介会社との連携を進めています。また、経営者OBによるセミナーを実施しています。

事業承継5ヶ年計画のパンフレットでは、経営スキルの高い人材を活用することによって、後継者が新規事業に挑戦しやすい環境作りを目指すことを目標に掲げています。

参考資料

事業承継5ヶ年計画のパンフレットの後半には、事業承継に関する参考資料が添えられています。

参考資料①事業承継の現状と課題について

参考資料の1つ目は、事業承継の現状と課題についてのデータが載せられています。企業の廃業件数、中小企業経営者の年齢分布、廃業予定企業の割合と廃業理由のデータから、事業は継続可能であるにもかかわらず、後継者問題によって廃業せざるを得なくなっている現状がわかります。

参考資料②事業承継支援体制について

参考資料では事業承継の支援ネットワークについて解説されています。事業承継ネットワークでは、支援機関同士が連携して支援を行います。県振興センターなどが事務局となって、都道府県や市区町村、金融機関や商工会議所、士業の専門家などがメンバーとして中小企業をサポートします。

参考資料③事業承継補助金について

参考資料では事業承継補助金の概要についての資料も掲載しています。事業承継補助金とは、地域に貢献し新事業にチャレンジする中小企業を資金面で支援する制度です。経営革新を行う場合は、200万円を上限として補助されます。その際に既存事業の廃止などを伴う場合は、廃業費用として300万円が上乗せされます。

参考資料④事業承継税制について

事業承継5ヶ年計画パンフレットの最後には、事業承継税制についての概要が紹介されています。

事業承継税制とは、後継者が株式などの資産を贈与や相続で受け取る際に、前もって都道府県知事の認定を受けていれば、贈与税や相続税の納税が猶予される制度です。平成29年4月に事業承継税制が改正され、より認定が受けやすく、税制優遇が強化されました。

5. 事業承継5ヶ年計画と合わせて読みたい資料

事業承継5ヶ年計画と合わせて読みたい資料

事業承継5ヶ年計画は、事業承継ガイドラインで策定された内容を基に作られています。事業承継ガイドラインと、事業承継ガイドラインをわかりやすくまとめた事業承継マニュアルについてご紹介します。

事業承継ガイドライン

事業承継ガイドラインは、中小企業の経営者が現状把握や事業承継に早期に取り組む必要性を認識するために策定されました。事業承継ガイドラインは、具体的にどのような課題があってどのように行動すれば良いか、適切な相談先など、経営者の次の一歩を促す内容となっています。

事業承継ガイドラインは中小企業庁のサイトからダウンロードできます。

事業承継マニュアル

事業承継マニュアルは、事業承継ガイドラインと内容はほぼ同じですが、事業承継ガイドラインをより読みやすいようにイラストや図表を多く使ってまとめたものです。マニュアルの付録として目的ごとの相談先が掲載されていたり、事業承継診断テストができるようになっていたりと、実用的な内容となっています。

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6. 事業承継5ヶ年計画まとめ

事業承継5ヶ年計画まとめ

ここまで事業承継計画の内容についてご紹介してきました。中小企業経営者の高齢化と後継者不足は今後5年間が正念場です。中小企業庁はこの5年間で集中的に中小企業を支援することで、事業承継問題の解決を目指しています。

事業承継5ヶ年計画はそのためのガイドラインとなっています。事業承継5ヶ年計画のパンフレットには、事業承継の現状と課題、支援体制の内容、事業承継補助金や事業承継税制の概要などが紹介されています。事業承継5ヶ年計画を読むことで、中小企業は今後どのような支援を受けることができるか理解することができます。

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