2021年03月18日更新
事業譲渡と株式譲渡の違いを解説!税務面などメリット・デメリットを徹底比較!

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。
事業譲渡は会社における一部の事業のみを売買すること、株式譲渡は株式を全部か割合を定めて売買することです。事業譲渡と株式譲渡では、取引の相手や売買対象となるもの、また税金についても違ってきます。この違いとメリット・デメリットを解説します。
目次
1. 事業譲渡と株式譲渡の違い簡単まとめ
事業譲渡と株式譲渡の一番の違いは、「何が売買の対象であるか」という点です。事業譲渡では「事業」を、株式譲渡では「株式」を売買します。
事業譲渡と株式譲渡の違いをまとめると、以下の通りです。
事業譲渡 | 株式譲渡 | |
取引の相手 | ・売却側→法人 ・買収側→法人 |
・売却側→株主(経営者) ・買収側→法人 |
売買対象 | 事業の一部または全て | 株式 |
契約名 | 事業譲渡契約 | 株式譲渡契約 |
移転するもの | 事業に必要なヒト・モノ・権利の一部または全て | 会社の所有権と経営権・許認可・経営者の個人保証 |
譲渡手順 | ①事業譲渡契約締結 ②株主総会決議 ③譲渡効力発注 ④資産引渡し ⑤代金受渡 |
①株式譲渡契約締結 ②取締役会承認 ③名義交換手続 ④代金受渡し |
目的 | ・売却側→事業の選択と集中・不採算事業からの撤退 ・買収側→事業拡大、新規事業への参入 |
・売却側→事業承継・経営基盤の強化 ・買収側→事業拡大・新規事業への参入 |
これらの違いについて、今回の記事で詳しく説明していきます。
それぞれにメリット・デメリット・目的は異なりますが、何を目的としたM&Aであるかを最優先に手法を決定しましょう。
今回の記事を読んで、「なんだか難しそうだな……」「専門家に力を借りたい」と感じた方は、M&A総合研究所にご相談ください。事業譲渡・株式譲渡に詳しいアドバイザーが親身になってアドバイスいたします。
M&A総合研究所は、完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)の料金体系です。事業譲渡と株式譲渡に関して、無料相談をお受けしてますのでお気軽にお問い合わせください。
2. 事業譲渡とは?
事業譲渡とはM&Aスキームの一つで、会社における一部の事業のみを売却することです。
事業譲渡では、売却する事業の中でも、ヒト・モノ(商品・工場)・権利(取引先)などを定めて売ることが可能です。
この事業譲渡は、事業を売却する会社が、事業を買収する会社に売る形式です。したがって、売却の対価も会社が受け取ります。
3. 株式譲渡とは?
株式譲渡とはM&Aスキームの一つで、株主が会社の株式を売却して、新たな法人の株主に会社の所有権を移転させることです。
ただし中小企業の場合は、経営者が個人で株主を兼ねていることがほとんどです。その場合、所有権とともに経営権も移転させることになります。
また株式譲渡では、株式の全部ではなく一部のみを売却することもできますが、中小企業で経営権まで移転させる場合は通常、株式を全部売却する形が取られます。これは、会社を丸ごと売却しているのと同じです。
株式譲渡は、売却する会社の株主が、所持している株を、買収する会社に売る形式です。したがって、売却の対価は株主が受け取ります。
4. 事業譲渡と株式譲渡の違いは?
事業譲渡と株式譲渡では、以下の点で違いがあります。加えて、事業譲渡は会社分割で行われることもありますので、参考までに会社分割についても簡単に説明を加えています。
- 取引
- 売買対象
- 契約
- 譲渡手順
- 目的
順番に違いを確認していきましょう。
違い1.取引による違い
事業譲渡と株式譲渡では、取引の相手が違います。
売却側 | 買収側 | |
事業譲渡 | 法人 | 法人 |
株式譲渡 | 株主(経営者) | 法人 |
違い2.売買対象による違い
事業譲渡と株式譲渡では、売買の対象が以下のように異なります。
- 事業譲渡…事業(事業に必要なヒト・モノ「商品・工場」・権利「取引先」の全部か一部)
- 株式譲渡…株式
違い3.契約についての違い
事業譲渡と株式譲渡では、契約と買収側に移転するものの違いがあります。
契約 | 移転するもの | |
事業譲渡 | 事業譲渡契約 | 事業に必要なヒト・モノ(商品・工場)・権利(取引先)の全部か一部 |
株式譲渡 | 株式譲渡契約 | 会社の所有権と経営権、許認可、経営者の個人保証 |
違い4.譲渡手順の違い
事業譲渡と株式譲渡では、最終契約の内容とその後の流れが少し異なります。
- 事業譲渡…事業譲渡契約締結→株主総会決議→譲渡効力発注→資産引渡し・代金受渡し
- 株式譲渡…株式譲渡契約締結→取締役会承認→名義交換手続・代金受渡し
違い5.目的による違い
事業譲渡と株式譲渡では、それぞれで目的が異なります。
売却側 | 買収側 | |
事業譲渡 | 事業の選択と集中、不採算事業からの撤退 | 事業拡大、新規事業への参入 |
株式譲渡 | 事業承継、経営基盤の強化 | 事業拡大、新規事業への参入 |
会社分割との違い
事業譲渡と株式譲渡においてはこれまでのおさらいを含んでいますが、これに会社分割のM&Aスキームを入れた違いは以下の通りです。
事業譲渡 | 株式譲渡 | 会社分割 | |
許認可 | 移転不可 | 移転 | 移転不可 |
従業員 | 移転不可 | 移転 | 移転※1 |
債権・債務 | 移転不可 | 移転 | 移転※2 |
消費税 | 課税 | 非課税 | 非課税 |
不動産所得税 | 課税 | 非課税 | 非課税※3 |
※1 労働承継法の手続が必要
※2 債権者保護の手続が必要
※3 一定の要件あり
(参考)会社分割とは
会社分割とは、事業の一部(資産・負債・契約関係)を他の企業に継承し、1つの会社を2つ以上に分割するM&Aスキームです。会社分割の主な目的としては、企業グループの再編成、新規事業の導入、後継者不足による経営困難の改善などがあります。
なお、会社分割には以下2通りあり、事業譲渡をこの会社分割のスキームで行うこともあります。
- 会社分割のスキームその1…既存の企業に事業を承継する「吸収分割」
- 会社分割のスキームその2…新規で企業を設立する「新設分割」
(参考)会社分割のメリット デメリット
会社分割のメリット デメリットは以下の通りです。
【会社分割のメリット】
- 消費税が課税されない
- 不動産を移動するにあたり、登録免許税が減額になる
【会社分割のデメリット】
- 手続きが複雑
5. 事業譲渡のメリットとデメリット
事業譲渡のメリット デメリットを見ていきます。
事業譲渡のメリット
事業譲渡のメリット デメリットのうちのメリットは以下の通りです。
- 主要事業への集中
- 必要な事業の獲得
- 債務や負債へのリスク回避
順番にみていきましょう。
①主要事業への集中
事業譲渡では売り手側のメリットとして、何か問題を抱えていたり、不要な事業を譲渡したりすることで、主要な事業へ資源を集中させることができます。
同じことですが、事業譲渡では必要な資産はそのまま残せるともいえます。
②必要な事業の獲得
事業譲渡では、買収側は会社を丸ごと買わなくても必要な事業だけ、そして事業の中でも必要なヒト・モノ(商品・工場)・権利(取引先)を選択して買収することが可能です。
交渉次第ですが、事業譲渡では不要なものは自社に移転する必要はありません。
③債務や負債へのリスク回避
事業譲渡の場合、売却側の持つ債権・債務は、買収によって自動的に買収側に移転することはありません。
売却側が当該事業の債権・債務を移転する条件での売却を希望する場合もありますが、それは事業譲渡が成立する必要条件ではありません。
事業譲渡のデメリット
事業譲渡のメリット デメリットのうちのデメリットは以下の通りです。
- 手続きが面倒
- 譲渡内容の制限
- 許認可の譲渡不可
順番にみていきましょう。
①手続きが面倒
売却側にとって、事業譲渡を決定するには、ほとんどのケースで株主総会の特別決議が必要です。これは会社法に定められているもので、特別決議においては、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数をもってなされる決議をしなければなりません。
この特別決議が、時間および手間の両面で大きな負担がかかります。
一方の買収側においても、事業譲渡では事業の買収時に、買収した事業の従業員や取引先との契約を一から結び直す必要があります。この手続きが、時間および手間の両面で負担のかかるものです。
②譲渡内容の制限
事業譲渡を行うと、売却側には競業避止義務が課せられます。これは会社法で規定されていることです。
競業避止義務とは、同一市区町村および隣接市区町村内にて、一定期間事業譲渡したものと同種の事業を行えないという義務です。当事者の別段の意思表示がない限り、20年間この義務が課されます。
売却側は、事業譲渡後の事業には制限がかかる点に注意が必要です。
③許認可の譲渡不可
事業譲渡では、その事業の事業主に対して有効となっている許認可は、買収側に引き継ぐことはできません。つまり、許認可が必要な事業を買収した場合は、必ず買収側で新たに許認可を取り直す必要があるということです。
6. 株式譲渡のメリットとデメリット
株式譲渡のメリット デメリットのうちのメリット デメリットを見ていきます。
株式譲渡のメリット
株式譲渡のメリット デメリットのうちのメリットは以下の通りです。
- 社名を含めた会社の存続
- 株式保有率の調整が可能
- 売却益
- 許認可の引き継ぎ可能
順番にみていきましょう。
①社名を含めた会社の存続
後継者不在や、経営が行き詰っていたことにより会社存続の危機にあった場合の売却側に当てはまることですが、株式譲渡で所有と経営を引き継いでもらうことで、とにかく会社自体は存続が可能です。
売却後の社名については、最終的な決定権はあくまで買収した側にありますが、歴史や伝統、ブランド力のある社名は、引き続き継続してもらえることも多いでしょう。
②株式保有率の調整が可能
事業承継を目的とする株式譲渡の例は多くありませんが、株式の全部を譲渡しないことも可能です。これは、売却側が経営に対する影響力だけは残しておきたい場合に行われます。
過半数の株式を譲渡すると経営権は譲受企業に移りますが、3分の1以上の株式を保有し続けていれば、株主総会における特別決議を単独で否決することが可能です。
③売却益
売却側の話ですが、中小企業で経営者個人が株主でもある場合、株式譲渡で得た株式の売却益は、経営者個人のものになります。
所得税や住民税の課税はありますが、まとまった金額の創業者利潤は、経営者引退後の生活資金にできます。
④許認可の引き継ぎ可能
買収側にとって、事業譲渡では許認可を引き継ぐことはできず、買収後に再取得する必要がありました。株式譲渡では、この許認可も買収側が引き継げます。許認可が必要な事業でも、再取得せずそのまま事業を続けられます。
株式譲渡のデメリット
株式譲渡のメリット デメリットのうちのデメリットは以下の通りです。
- 株式の取得が面倒
- 債務や負債を引き継ぐ
順番にみていきましょう。
①株式の取得が面倒
株式譲渡では、譲渡する株式を株式譲渡実施前に集める必要があります。しかし、中小企業では株券と株主に関する情報が記録されておらず、経営者が記憶しているだけの状態となっている場合があります。
このような場合で、かつ株主が複数いる場合は、株式の取りまとめだけでかなりの労力を割かなくてはなりません。
②債務や負債を引き継ぐ
株式譲渡では、売却側が持っている債権・債務は自動的に買収側に引き継がれることが前提です。見た目の債権・債務だけでなく、簿外債務や賠償金なども同様です。
したがって、買収側は買収前に、それら売却側の簿外債務なども注意してチェックしておく必要があります。
7. 相場から見た事業譲渡と株式譲渡の違い
事業譲渡と株式譲渡(株式を100%譲渡する株式譲渡、つまり会社売却)では、売買金額の相場を比較すると「事業譲渡<株式譲渡(会社売却)」です。さほど難しい話ではありませんが、相場が違う理由を見ていきます。
理由1.事業譲渡は事業の移動
事業譲渡は、会社全体の一部の事業のみを切り離して売却するM&Aスキームです。会社全体の中の一部ですから、当然ながら株式譲渡(会社売却)よりも相場は低くなります。
相場が低いとはいえ、事業譲渡は売却側にもメリットがあって、それは「継続保有したい事業・資産を法人格ごと残せる」ことです。
理由2.株式譲渡(会社売却)は全資産の移動
株式譲渡(会社売却)では、会社を丸ごと売却するM&Aスキームです。したがって、基本的に売却側が持っていたすべての資産が買収側に移動します。
全資産を取引するわけですから、同じ事業規模で比較するとしたら、当然ながら事業売却よりは相場が高めです。
売却側にとっては大きな金額で売却できるので、それだけでメリットがあるように思いますが、株式譲渡(会社売却)は株主兼経営者の中小企業にとって、後継者がいなくても会社を存続できる点が非常に大きなメリットになります。
8. 税務面から見た事業譲渡と株式譲渡の違い
事業譲渡と株式譲渡では、取引において発生する税金が異なりますので、税務の違いを見ていきます。
事業譲渡では、売却側にも買収側にも消費税の税金が課税されます。
事業譲渡で発生する税金
事業譲渡で発生する税金および税率は以下の通りです。詳しい税務は以下で解説します。
税金 | 税金の税率 | |
売却側税務 | 法人税 (法人事業税+法人住民税) |
税引前利益の約40% |
消費税 | 課税資産の売却金額に対して8% | |
買収側税務 | 消費税 | (消費税は売却側と同様) |
不動産取得税 | 土地、建物を取得した場合、 固定資産税評価額の4% |
|
登録免許税 | 土地は固定資産税評価額の2% (令和3年3月31日までは1.5%) 建物は固定資産税評価額の2% |
売り手側の税金
事業譲渡では、法人税と消費税が売却側に課税されます。
法人税(法人事業税+法人住民税)は、事業を売却した対価で得た利益に対して課税され、税務が発生します。
ただし、法人税は売却して受け取った対価のすべてに課税されるのではなく、正しくは「譲渡益=売却額-譲渡資産の簿価」に対してです。この譲渡益がプラスだったらそのまま法人税率を掛けて税金が課されますが、この譲渡益がマイナスだったり、会社自体が赤字だった場合は、そのマイナスや赤字の法人税金分は差し引かれます。
そして消費税ですが、消費税は譲渡する資産に対してかかる税金ですので、たとえ法人税(後述)でいう譲渡益がマイナスでも消費税は課税されます。ただし、消費税にも課税の対象となる資産とならない資産がありますので、それぞれ代表的なものを挙げておきます。
- 消費税課税資産:土地以外の有形固定資産、無形固定資産、棚卸資産、営業権(のれん代)
- 消費税非課税資産:土地、有価証券、債権
ただし、会社分割の方法で事業の売却を行った場合には、消費税は課されません。
買い手側の税金
事業譲渡において売却側にて説明した消費税は、買収側にも課税され、税務が発生します。というより、消費税は売却側から請求されますので、買収側はそれをそのまま支払う税務があります。
また、事業譲渡で売却側から不動産を取得した場合には、不動産取得税と登録免許税が課税され、税務が発生します。
なお、会社分割で事業を取得した場合には、消費税は課されません。
株式譲渡で発生する税金
株式譲渡で発生する税金および税率は以下の通りです。詳しい税務は以下で解説します。
税金 | 税金の税率 | |
売却側税務 | 所得税 | 所得税+法人税で、売却益に対しておよそ20% |
住民税 | ||
買収側税務 | なし | ー |
売り手側の税金
株式譲渡では、中小企業の場合は株主=経営者が買収側に株式を売却します。この場合、株式を売却したのは個人です。
個人における株式の売却益には、所得税と住民税が課税され、個人で税務を行う必要があります。
買い手側の税金
株式譲渡の場合、買収側への消費税や法人税の課税と税務はありません。
9. 事業譲渡を選ぶ理由
事業譲渡のメリット デメリットについては、すでに見てきましたが、事業譲渡を行う理由をまとめています。
売り手側の理由
よくある売却側が事業譲渡を選ぶ理由は、以下の通りです。
- 不採算事業だけを売れればよく、本業は自社で続けたい
- 収益性の高い事業を売って、本業への原資にしたい
買い手側の理由
よくある買収側が事業譲渡を選ぶ理由は、以下の通りです。
- 買収側の持っているある事業をピンポイントで欲しいので、その他の事業は必要としていない
- 会社の負債を引き継ぎたくない
- 会社全体を買うと、買収金額が大きくなりすぎて不可能
- 売却側の簿外債務が大きくて、会社全体を買うのはリスクが大きい
10. 株式譲渡を選ぶ理由
株式譲渡のメリット デメリットについては、すでに見てきましたが、株式譲渡を行う理由をまとめています。
売り手側の理由
よくある売却側が株式譲渡を選ぶ理由は、以下の通りです。なお、すべて株主兼経営者が株式譲渡をする場合を想定しています。
- 後継者がいないから、会社を丸ごと売却して経営を引き継いでもらいたい
- 会社の株式を売って、経営者引退後の資金にしたい(創業者利潤の獲得と、ハッピーリタイア)
- 会社の債務保証からも解放されたい
- 会社を売って得た資金を元に、新しい事業を始めたい
買い手側の理由
よくある買収側が株式譲渡を選ぶ理由は、以下の通りです。
- 売却側の持つ、資産、人材、許認可やブランドなど、全部が欲しい
- 売却側の持つ、広範な拠点展開を一気に欲しい
- 売却側の事業規模が小さく、すべてを買収してもさほど負担もかからず手続きも簡単
11. 事業譲渡の事例
事業譲渡のM&Aスキームによる事例を2つ見ていきます。
- 事業譲渡の事例①ブランドの事業譲渡
- 事業譲渡の事例②外食の事業譲渡
事例を確認し、どのように目的を果たしているのかを確認しましょう。
事業譲渡の事例①ブランドの事業譲渡
アパレルブランドの事業が、同業他社に事業譲渡・事業売却された事例です。
事業譲渡売却側 | 事業譲渡買収側 | |
事業内容 | アパレル製造 | アパレル製造 |
売上 | 40億円 | 非公表 |
目的 | 事業再編 | 事業拡大 |
売り手側の事情
複数のブランドを保有していましたが、その中に収益力の悪いブランドがありました。このブランドを自社のリソースだけで立て直すことは困難と判断し、他社に事業譲渡で売却することを決断しました。
買い手側の事情
売却側と同業で、こちらも多数のブランドを保有していました。またマーケティング力・販売力に定評があり、これまでも他社からブランドを買収したうえで育成と強化することで事業を拡大してきました。
売却側の対象ブランドは、自社がすでに保有しているブランドと競合関係になく、むしろ補完関係にあると考えられたことから取得するに至っています。
事業譲渡の事例②外食の事業譲渡
ある会社の外食事業が、食品小売の会社に事業譲渡された事例です。
事業譲渡売却側 | 事業譲渡買収側 | |
事業内容 | 外食 | 食品小売 |
売上 | 8,000万円 | 50億円 |
目的 | 事業再編 | 新規事業 |
売り手側の事情
本業が建設業で、外食事業も行っていました。しかしながら本業が不振で資金繰りも楽ではない状態となったため、外食事業を事業譲渡で売却して本業に資源を向ける決断をしました。
買い手側の事情
外食事業の経営に意欲を持つ社員がいたため、取得に至りました。ただし外食事業は未経験でノウハウがないので、最初は売却側を本部とするフランチャイズとして運営をはじめ、ノウハウを学んだ段階で買収側が完全に運営する形にしました。
12. 株式譲渡の事例
株式譲渡のM&Aスキームによる事例を2つ見ていきます。
- 株式譲渡の事例①調剤薬局の株式譲渡
- 株式譲渡の事例②空調設備工事会社の株式譲渡
事例を確認し、どのように目的を果たしているのかを確認しましょう。
株式譲渡の事例①調剤薬局の株式譲渡
調剤薬局が、上場大手のドラッグストアに株式譲渡をした事例です。
株式譲渡売却側 | 株式譲渡買収側 | |
事業内容 | 調剤薬局11店舗 | ドラッグストア・調剤薬局 |
売上 | 18億円 | 3,700億円 |
目的 | 後継者不在 | 規模拡大 |
売り手側の事情
地元密着で11店舗の調剤薬局を運営していましたが、経営者には後継者がいないため、事業承継問題を抱えていました。加えて、薬剤師の確保にも苦戦しており、会社を売却する決断をしました。
買い手側の事情
買収側は上場大手のドラッグストアと調剤薬局を運営していましたが、もともと売却側が展開する地域への出店に強い関心を持っていました。
11店舗とまとまった店舗を一気に得られるのが非常に魅力であったため、当初から良い条件を提示しての買収に至りました。
株式譲渡の事例②空調設備工事会社の株式譲渡
空調設備資材販売・工事と人材派遣を行う会社が、空調設備関連の事業に近い事業を行う他社に株式譲渡をした事例です。
株式譲渡売却側 | 株式譲渡買収側 | |
事業内容 | 空調設備資材販売・工事/人材派遣 | 空調設備のメンテナンス |
売上 | 6億円 | 10億円 |
目的 | 後継者不在、創業者利益 | 周辺分野への進出 |
売り手側の事情
空調設備資材販売・工事と人材派遣の2つの事業を行っており、会社設立以来増収を続けるなど、好調な業績を維持していました。一方で、業績が好調であったために、会社の借入金が増え、それに対する経営者個人の保証も膨らむ一方で、それが心理的負担にもなってきていました。
まだ経営は続けられる年齢ではありましたが、後継者がいないことと、早く心理的負担から逃れてリタイアしたいとの思いから、会社を売却する決断をしました。
買い手側の事情
売却側は業績が好調でしたし、売却側の主要事業である空調設備資材販売・工事の事業は、自社(買収側)のメンテナンス事業とはちょっとズレているものの、人材や資産とともに買収すれば引き継ぐのはさほど難しくなく、むしろサービスの強化につなげられると考え、買収を決断しました。
人材派遣業は買収側には全くノウハウはありませんが、収益も出ており設備投資などもかからない事業であることから、売却側の希望通り一緒に買収することにしました。
13. まとめ
事業譲渡と株式譲渡の一番の違いは、「何が売買の対象であるか」という点です。事業譲渡では「事業」を、株式譲渡では「株式」を売買します。
事業譲渡とは、会社における一部の事業のみを売却するM&Aスキームことです。事業の中でも、ヒト・モノ(商品・工場)・権利(取引先)などを定めて売買できます。
一方で株式譲渡とは、株主が会社の株式を売却して、新たな法人の株主に会社の所有権を移転させるM&Aスキームです。中小企業で経営権まで移転させる場合は通常、株式を全部売却する形が取られ、これは会社を丸ごと売却しているのと同じことになります。
事業譲渡と株式譲渡では、取引の相手、売買の対象、契約、譲渡手順、税務などがかなり違います。それらの違いやメリット・デメリットをしっかりと理解したうえで、どの手法がベストなのかを見極めましょう。
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