企業の合併とはどのような手法?定義・吸収合併と新設合併・買収との違い・メリット・デメリットを徹底解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

この記事では、吸収合併と新設合併の違いや、買収・提携といった他のM&A手法との違い、合併の手続き方法やメリット・デメリットなどを解説しながら、合併とはどのような手法なのか紹介します。

目次

  1. 企業の合併とは
  2. 合併の種類
  3. 合併のメリット
  4. 合併のデメリット
  5. 吸収合併の手順・フロー
  6. 合併の登記方法・契約書
  7. 合併における会計処理
  8. 合併における法務上の留意点
  9. 合併の事例
  10. 合併のまとめ
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1. 企業の合併とは

まずは、企業における合併の定義や合併の手続き方法、合併をする意味、他のM&A手法との違いを解説します。

合併とは

合併とは、2つ以上の法人を1社に統合することです。合併により、2つ以上の法人格は資産や負債などを統合し、1つの法人格となります。買収や業務提携、資本提携などでも法人同士の結び付きは強くなりますが、合併のように法人格が消滅することはありません。

合併とは、最も結び付きの強い手法です。合併の種類には、吸収合併と新設合併があります。合併の種類によって、手法の特徴やメリット・デメリットなどが異なるので注意が必要です。合併は、コスト低減や経営の合理化などのために、M&Aのスキームとして実施されます。

法的定義

吸収合併は会社法第2条第27号で、新設合併は会社法第2条第28号で定義されています。吸収合併とは、合併後に存続する会社が合併後に消滅する会社の資産、負債、権利義務などの全てを承継する合併手法です。消滅会社は解散登記を行い、存続会社と同一の法人格となります。

新設合併とは、合併を行う企業同士で新たに会社を設立し、新設合併を行う当事会社の資産や負債などを新設会社に引き継ぐ合併手法です。合併当事会社は全て解散登記を行い、新設会社で1つの法人格となります。

合併の手続き

(図)合併の手続き・流れ

合併の手続きは、上図の流れで進みます。合併の準備段階では、債権者などへの説明と合併契約書の作成が手始めです。合併契約書の作成は法令で定められています。取締役会で合併の承認を得られたら、各方面への告知です。

合併の当事会社間で合併契約を締結したら、官報公告や個別告知、事前開示書類の備置によって合併を行うことを周知します。株主総会で合併契約の承認を得て、反対株主や債権者の異議申し立てへの対応がすめば、予定していた合併の効力発生日を迎えられるでしょう。

合併の効力発生日以降は、登記申請手続きと事後開示書類の備置が完了すれば合併手続きの終了となります。

合併の意味

事業にとっての合併の意味は、同業種の企業同士が合併することによる事業シナジーの獲得です。能力の高い従業員が集まれば生産性が高まります。合併による規模の拡大にも意味があり、同業種の合併によって業界でのシェアを広げ、競争力を高められます。

商品やサービスの提供を充実させることも可能です。コスト削減の意味でも効果があり、合併前よりも大量仕入れや大量生産ができてコスト削減につながります。イメージ戦略としての意味も見過ごせません。

売り手企業はブランド力のある企業と合併することで信用力を得られ、買い手企業は資金力や成長性のアピールになります。企業によって合併する意味はさまざまです。メリットだけでなくデメリットもあるので、短期的な意味だけでなく長期的な意味も見とおしながら合併を決定します。

なお、合併は英語で、amalgamation、merger、consolidationなどになります。

買収・M&Aとの違い

買収とは株式買収と事業譲渡です。買収(M&A)とはどのような手法なのか、買収と合併の違いを見ましょう。

買収とはどのような手法?

買収の種類には株式買収と事業譲渡があります。中でもよく使われるのが、株式買収の1つである株式譲渡です。議決権のある株式50%以上を取得すると、買収企業は被買収企業の経営権を手に入れられます。議決権のある株式3分の2以上を取得すれば、支配権の獲得です。

支配権があると経営上、重要な事項への決定権を持てます。株式を100%保有すると、被買収企業は完全子会社です。事業譲渡は取得する事業を選べます。欲しい事業だけを切り離したり取得したり、債務は引き継いだりしないといった選択が可能です。

買収と合併の違い

株式譲渡は、株式の取得割合によって被買収企業への支配範囲が変わります。株式を100%保有して完全子会社化しても、被買収企業が消滅することはありません。事業譲渡は、被買収企業を丸ごと引き継ぐ必要はなく、欲しい事業だけを切り出せます。

事業譲渡の場合も、被買収企業は消滅しません。一方、合併は消滅会社の全てを存続会社に移行します。一部分だけを移行できません。強制的に全て引き継ぐことになります。消滅会社は解散して1つの法人格となるのが買収との最大の違いです。

提携との違い

提携には業務提携と資本提携があります。提携の手法や提携と合併の違いを見ましょう。

提携とはどのような手法?

提携には業務提携と資本提携があります。業務提携とは、提携する企業同士のリソースを活用することによって、事業を効率的に行う取引契約です。共同で商品を開発したり製造や営業をどちらかに委託したりするなど、さまざまな業務提携の事例があります。

資本提携とは、お互い支配権を持たない程度に株式を保有し合い、協力関係を築く方法です。一方だけが出資するケースもありますが、いずれにしろ資本の移動を伴うため、業務提携に比べて提携関係は強くなります

提携と合併の違い

提携によって支配権を持つことはありません。提携企業は独立したまま協力関係を築きます。その分、結び付きは弱いので、提携関係の解消も比較的簡単です。

一方、合併は完全に1つの法人格となるので、協力関係では提携よりも相当強い結び付きとなります。統合され一体化するので、提携のように関係を解消できません

【関連】合併と買収の違いとは?M&A手法の基礎知識をわかりやすく紹介

2. 合併の種類

合併の種類は吸収合併と新設合併です。この章では、合併の種類による特徴や、合併の種類ごとの違いを解説します。

吸収合併

吸収合併とは、既存の企業間で行われるもので、そのうちの1社が存続会社となり、消滅会社の資産、負債、権利義務、従業員など会社を丸ごと取り込む合併方法です。消滅会社は解散します。

資本の大きい会社が資本の小さい会社を取り込む事例や、親会社が子会社を取り込む事例が大半です。ただし、まれに逆の事例も存在します。

新設合併

新設合併は、新しく会社を設立し、消滅会社の全ての資産、負債などを新設会社が引き継ぐものです。既存の会社は全て解散し、新設会社が存続会社となります。新設合併は、吸収合併に比べて新たに会社を設立する手間が加わるため、事例はほとんど見られません

吸収合併と新設合併の違い

吸収合併と新設合併では全ての資産や負債などを引き継ぐ点は共通していますが、新設合併は、消滅会社の許認可や免許を承継できません。吸収合併は、許認可や免許も承継できる点が違いの1つです(一部の業種では引き継げないものもある)。

新設合併の消滅会社が上場企業だった場合、新設合併すると上場廃止となります。存続会社(新設会社)はあらためて上場の手続きが必要です。吸収合併は、存続会社が上場企業であれば、そのまま維持されます。合併の登録免許税額も相違点です。

吸収合併は、資本金の増加分のみに対して課税されますが、新設合併の場合は、資本金自体に課税されます。消滅会社の株主への対価にも違いがあり、吸収合併では現金による対価の交付も可能ですが、新設合併では現金の受け渡しはできません。

吸収合併は合併の1つ

合併の種類には吸収合併と新設合併がありますが、吸収合併の方がメリットは多くデメリットが少ないため、大半の合併は吸収合併をさします。対等合併という表現もありますが、対等合併は法令で定められた合併の種別のことではありません。

合併は吸収合併のイメージが強いですが、吸収合併はあくまで合併の種類の1つです。

3. 合併のメリット

合併には経営の一元化によるメリットや組織の大型化によるメリット、税務面のメリットなどがあります。それぞれのメリットを確認しましょう。

経営の一元化

合併で経営を一元化することにより、収益力の拡大と経営の効率化を図ることが可能です。共通部門の一元化によってコスト削減が可能になり、事業展開の一体化によって収益性が高まります。

共通部門の一元化

合併で共通部門を統合することによって、コスト削減につながり効率のよい経営を行えます。

営業部門の事例でいうと、買収であれば買収企業と被買収企業で、使用する営業管理システムはお互いの企業にそれぞれ存在するものです。しかし、合併であれば、営業管理システムを一元化でき、システム管理費は大幅に削減できます。

事業展開の一体化

合併当事会社同士の既存顧客や販売ネットワーク、取引先などを一体化することで、より効果的な事業展開ができます。顧客数の増加、顧客単価アップ、新規顧客の獲得など、事業展開がしやすくなるのがメリットです。

新規分野への進出が容易

合併により、各企業で不足していた部分が補足し合え、新規分野への進出が容易になることが期待できます。

ブランド力、マーケティング、開発力などを生かすノウハウなど今まで足りなかった部分を補うことによって、新しい販路を切り開いたり、新規分野へ進出しやすくなったりするメリットがあるでしょう。

組織の大型化に伴うメリット

従業員の一体感や取引先・顧客からのイメージアップ、金融機関から融資が受けやすくなるなど、合併によるスケールメリットは多岐に渡ります。

大組織の一員としての一体感

吸収合併では規模の大きい企業が規模の小さい企業を吸収合併する事例が多いです。これまでよりも規模の大きい企業の一員となった一体感を感じられます。新設合併でも同程度の規模の企業が合併する事例がほとんどなので、大組織となった一体感を感じられるでしょう。

ただし、うまく融合できなければ一体感を得られず、人間関係の不和を生じる事例も多いので、合併の前に丁寧な準備が必要です。

信用力の強化

合併を行うことで、存続会社は合併する余裕があるといった経営状態のよさをアピールできるでしょう。一般的には財務状況が良く成長性のある企業同士が合併する事例が多いので、さらに財務状況が良くなり信用力の強化につながります。

資金繰りが容易になる

1つの法人格として資金が増加することで、資金繰りが楽になります。提携や買収ではあくまでも法人格はそのままなので、会社間の資金移動は簡単ではありません。合併によって資金移動が簡単になることが大きなメリットです。

税務面でのメリット

会社法で規定されている組織再編行為である合併は、税法上の適格要件を満たすと税制の優遇措置を受けられます。条件によっては消滅会社の繰越欠損金も利用できますが、こちらは条件が厳しく、租税回避と判断されてしまうリスクもあるので注意が必要です。

また、合併では法人格が統合されるため、黒字会社と赤字会社の間で損益通算が可能です。黒字会社側は節税効果が期待でき、赤字会社側は損失を補填できるなどのメリットがあります。

4. 合併のデメリット


合併にはメリットが多くありますが、デメリットもあります。ここでは、合併のデメリットを見ましょう。

コストがかかる

合併によって多くのコストがかかるので、合併にかかるコストと合併によって得られるメリットをあらかじめしっかりと計算しなければなりません。

合併時

合併には多くのコストがかかります。株主や債権者、合併の手続きにかかわる専門家への支払いなど、合併するまでのコストから、合併後の事業やシステム、人材を融合させるコストなど、全て合わせると大きなコストです。

人件費

合併によって、基本的には消滅会社の従業員は全員引き継がなければなりません。その際に給与水準は高い方に合わせることがほとんどなので、その分人件費は増大します。

税金面

法人税法では、資本金が1億円以下の企業はさまざまな優遇措置が受けられます。合併によって資本金が1億円を超えてしまうと、税金の負担が増えてしまうでしょう。

組織の巨大化

会社が大きくなるスケールメリットがある反面、規模の肥大化によってデメリットが生じることもあります。

意志の共通が難化

組織が大きくなることによって、部門間での意思の疎通が難しくなり、縦割りの構造になりがちです。経営陣の考えが下にうまく伝わりにくくなる問題も起こり得ます。

責任の所在

合併によって事業範囲が広くなると、責任の所在が曖昧になります。その結果、責任の押し付け合いが増えたり無責任な幹部が出てきたり、不祥事が出てきたりすることもあるでしょう。

ストレス

合併によって環境が大きく変わるため、合併時や合併後に強いストレスを訴える事例が多く出てきます。

合併時のストレス

合併の際は経営者や従業員に大きな負担がかかります。日常の業務だけでも大変な中、合併にかかわる業務もこなさなければなりません。企業にとって初めての合併ともなれば、業務の負担や精神的負担はかなり大きいでしょう。

合併後の社員のストレス

合併当事会社の社員同士は、なかなかなじめない場合があります。一方の会社の従業員がもう一方の会社の従業員を下に見ることもよくあります。会社側は平等な合併といいながらも、従業員が合併後の人事や待遇に不平等感を訴えることは少なくありません。

合併のメリットを最大化し、デメリットを極力なくすには、合併を進める際にデューデリジェンス(企業監査)やPMI(経営統合のマネジメント)計画を徹底的に行う必要があります。それには豊富な経験と知識を持った専門家の協力が欠かせません。

M&Aの専門家をお探しの際は、M&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では、豊富な知識や経験を持つM&Aアドバイザーが、クロージングまで案件をフルサポートします。

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5. 吸収合併の手順・フロー

吸収合併は、一般に以下の流れで手続きを進めます。

  • 合併契約書の締結
  • 事前開示書類の備置
  • 株主総会の承認
  • 利害関係者の保護手続き
  • 反対株主の株式買取請求手続き
  • 効力発生・登記
  • 事後開示書類の備置


各手続きの概要を見ましょう。

合併契約書の締結

合併を実施しようとする当事会社間の交渉において各条件が合意に至れば、その内容を各社の取締役会で承認を得た後、合併契約書を作成し締結します。合併契約書には、合意条件として以下の条項を記載することが必須です。

  • 存続会社の商号と住所
  • 消滅会社の商号と住所
  • 合併の効力発生日
  • 各社が株主総会を開き承認を得る日程
  • 存続会社が支払う対価の内容
  • 対価の算定方法
  • 合併後の取締役の選任

事前開示書類の備置

合併を行うにあたっては、会社法の定めにより株主や債権者のための事前開示書類の備置が義務付けられています。備置の開始時期はいくつかの細かな規定の中で最も早い日のため、合併契約書の締結後、準備して備置するのが一般的です。

事前開示書類を備置しておく期間は、存続会社は合併の効力発生後6カ月間、消滅会社は合併の効力発生日までと定められています。事前開示書類とは、以下の書類です。本店に備置し、株主や債権者の求めに応じて閲覧させます。

  • 合併契約書
  • 対価の算定方法説明書
  • 存続会社、消滅会社それぞれの財務諸表(貸借対照表、損益計算書、販売費および一般管理費明細書、株主資本等変動計算書など)

株主総会の承認

会社法の定めにより、合併の当事会社それぞれにおいて、株主総会を開催し合併の承認を得なければなりません。承認には特別決議が必要です。特別決議は、議決権を持つ過半数の株主が出席した株主総会において、その3分の2以上の賛成を得なければなりません。

合併の効力発生日の前日までに承認を得る必要もあります。

利害関係者の保護手続き

利害関係者とは、株主と債権者をさします。会社法の定めにより、存続会社・消滅会社ともに、以下の利害関係者の保護手続きが必須です。

  • 合併することを官報公告に掲載
  • 上記と同様の内容を利害関係者に個別催告(新聞紙への掲載または電子公告した場合は不要)
  • 利害関係者からの異議申立てへの対応
  • 合併の効力発生1カ月前までに株券などの提出公告(消滅会社の場合)

反対株主の株式買取請求手続き

合併に反対する株主は、所有する株式を会社に買い取らせる請求ができます。合併の当事会社は、その対応として、まず、合併の効力が発生する20日前までに、株主に合併の通知を行っておくことが必要です。通知には買取請求できることも記します。

株式買取請求を行う株主は、合併の効力20日前から前日までの間に請求を申し出なければなりません。請求を受けた会社側は、公正な価格で買い取ることが義務付けられています。

効力発生・登記

合併契約書に定めた効力発生日を迎えると合併が実現しますが、公的な効力を持たせるには登記手続きが必要です。存続会社は変更登記、消滅会社は解散登記を、合併の効力発生日から2週間以内に行わなければなりません。

新設合併の場合は存続会社が新設会社ですから、新設会社が新設の登記を行った日が合併の効力発生日になります。登記手続き以外にも、消滅会社から移転された資産について、全て名義変更手続きが必要です。

事後開示書類の備置

合併の存続会社は、合併の効力発生日から6カ月間、事後開示書類を備置する決まりです。事後開示書類には、以下の内容を記します。消滅会社は事後開示書類を備置できないので、存続会社は消滅会社の分の書類も作成することが必要です。

  • 合併の諸手続きの経緯
  • 反対する株主の有無
  • 異議を申し立てた債権者の有無
  • 反対する株主があった場合の対応内容
  • 異議を申し立てた債権者があった場合の対応内容
  • 消滅会社から承継した資産や権利義務の内容

【関連】吸収合併契約書の作り方・記載事項を解説!【ひな型/記載例あり】

6. 合併の登記方法・契約書

ここでは、前章で述べた合併の手続きにおける手順のうち、登記に関して取り上げます。合併の登記には存続会社の変更登記・消滅会社の解散登記がありますが、両者は同時に行わなければなりません。通常、登記手続きはその会社の本店所在地を管轄する法務局で行います。

ただし、例外的に、消滅会社に支店がある場合、支店所在地を管轄する法務局においても解散登記手続きを行わなければなりません。合併の登記手続きは専門的で煩雑であるため、司法書士などに委任するケースも多いです。

存続会社の変更登記では多くの添付書類が必要であるため、登録免許税の内容と合わせて以下に掲示します。

存続会社の添付書類

合併する存続会社が変更登記手続きを行う場合、以下の添付書類が必要です。

  • 合併契約書
  • 取締役会の議事録
  • 株主総会の議事録
  • 債権者保護手続きを行った証明資料
  • 資本金の額の計上に関する証明書
  • 消滅会社の登記事項証明書
  • 消滅会社が新株予約権証券提供公告をした証明資料
  • 消滅会社が株券提供公告をした証明資料
  • 主務大臣の許認可
  • 略式合併・簡易合併の場合、資本関係などの証明資料
  • 委任状(司法書士などに手続きを委任する場合)

変更登記・解散登記にかかる登録免許税

合併の変更登記・解散登記では登録免許税が発生します。一般に、登録免許税は、登記申請書に収入印紙を貼り付けて納めるものです。存続会社の変更登記の登録免許税は、以下の計算で求めます。

  • 増加した資本金額の1,000分の1.5(=0.15%)
  • 上記計算で金額が3万未満の場合は、登録免許税が3万円

一方、消滅会社の解散登記の登録免許税は、一律3万円です。

7. 合併における会計処理

ここでは、合併における会計処理を考察するにあたり、吸収合併の会計処理を念頭に以下の項目を説明します。

  • のれんとは
  • 通常取得における仕訳
  • 負ののれん発生時における仕訳
  • 親会社による完全子会社の吸収合併時の仕訳

のれんとは

合併に限らずM&A全般において、会計処理ではのれんの概念を理解しておくことが必要です。のれんとは、買収側が売却側の潜在価値を評価した金額をさします。具体的には、買収価額と売却側の時価純資産額との差額分が、のれんです。

一般に、純資産は固定資産(有形資産)をさします。つまり、のれんとは、固定資産として純資産額に含まれていない無形資産の評価額といえるでしょう。無形資産は、以下になります。

  • 特許権、商標権、意匠権などの知的財産
  • ノウハウ
  • ブランド力
  • 販売ネットワーク
  • 特殊な許認可
  • 従業員が持つ特殊な免許
  • 技術力・開発力・企画力など当該企業が持つ特性
  • 顧客・取引先リスト
  • 人材

通常取得における仕訳

合併における存続会社の仕訳・会計処理として、以下の前提で具体例を掲示します。なお、消滅会社の会計処理は、合併の効力発生日前日を決算日とする最終決算を行うのみで、他には何もありません。

  • 譲受資産の時価:1,000万円
  • 譲受負債の時価:200万円
  • 取得原価(買収額):600万円
 
借方 貸方
譲受資産 1,000万円 譲受負債 200万円
のれん 200万円 取得原価 600万円

負ののれん発生時における仕訳

合併を含むM&Aでは、売却側の業績が悪化していたり、何らかの経営リスクをはらんでいたりするケースでは、買収額が売却側の時価純資産額を下回る金額となることもあります。この場合、通常ののれんとは逆の状態です。これが、負ののれんです。

具体例としては、純資産額1億円の企業を5千万で買収するケースなどが該当します。この場合、負ののれん5千万は、合併などのM&Aを行った期に特別利益として会計処理する決まりです。

親会社による完全子会社の吸収合併時の仕訳

親会社が完全子会社を吸収合併する場合、親会社(存続会社)は合併以前に消滅会社(完全子会社)の全株式を所有している状態です。こうしたケースでは、「共通支配下の取引」として会計処理を行います。共通支配下における取引の仕訳の特徴は、以下のとおりです。

  • 消滅会社の資産や負債は簿価で引き継ぐ(資産・負債の単なる移動とみなす)
  • 消滅会社の純資産額と存続会社が所有する子会社株式の差額は「抱合株式消滅差損益」とする(のれんではない)

8. 合併における法務上の留意点

企業の合併を実施する際は、法務上、留意しておくべき事項が存在します。本章では、合併における法務上の留意点を、以下2つのケースに分けて解説します。

簡易合併

簡単にいうと、簡易合併とは、引き継ぐ企業が手に入れる財産の価値が、その企業の純資産の5分の1以下である場合です。ただし、いくつかの条件があります。

例えば、反対する株主が企業の株式の6分の1を超える場合、または引き継ぐ企業が譲渡制限株式を持っている場合、さらには引き継ぐ企業で損失が発生する場合などです。これらの条件がある場合、株主総会を省略することはできません。

また、平成26年に改正された会社法では、以前は合併した企業の株主に株式買取請求権が認められていましたが、現在では簡易要件を満たす場合、株式買取請求権は認められません。

略式合併

親子会社の合併では、親会社が子会社の議決権の90%以上を持っている場合、子会社の株主総会を省略できます。しかし、いくつかの条件で略式合併が適用されません。

例えば、子会社が消滅する場合で、譲渡制限株式を持つ存続会社がある場合や、子会社が上場企業で種類株式を発行している場合です。また、子会社が存続会社で、譲渡制限株式を持つ場合や、子会社が非上場企業の場合も略式合併が適用されません。注意してください。

そのほか、親会社には略式合併の適用はなく、特別支配会社には株式買取請求権が認められない点にも注意しましょう。

9. 合併の事例

三菱UFJリースの合併事例

2020年9月、三菱UFJリースは、日立キャピタルを合併することを決めました。2021年4月1日から、三菱UFJリースが主体となり、日立キャピタルの名前はなくなり、新しい名前「三菱HCキャピタル」として事業を進めることになりました。

これまで、両社は一緒に仕事をしており、特に海外のプロジェクトやエネルギー関連の仕事で協力してきました。しかし、新型コロナウイルスの影響で、リースの事業が難しくなってきたため、二つの会社を一つにまとめて、もっと強い会社にすることを目指しました。

三菱 UFJ リースと日立キャピタルとの合併を通じた経営統合に向けた契約締結に関するお知らせ

USENの合併事例

2017年2月、音楽を提供する会社のUSENは、一度分かれた映像配信の会社U-NEXTと再び一つになることを決めました。この統合の背景には、業務をスムーズに進めるため、経営のコストを下げるため、そして新しいサービスを始めるための目的がありました。

U-NEXT、USENと再統合 動画配信などテコ入れ

10. 合併のまとめ

合併を実施する場合は、まず十分な検討が必要です。検討の際は、メリット・デメリットをよく把握して行いましょう。自社内だけの検討にとどめず、M&A仲介会社などの専門家に相談するのも得策です。

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