2020年11月11日更新
廃業とは?閉店、倒産、休業との違いや理由、廃業を回避する方法を解説

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
経営不振や引退などの理由で廃業を考える経営者の方は少なくありませんが、廃業はできる限り避けたい手段でもあるでしょう。この記事では、廃業とは何か、閉店・倒産・休業とはどのように違うのか、そして事業承継やM&Aによる廃業の回避について解説します。
1. 廃業とは
近年は中小企業経営者の高齢化が進んでおり、多くの企業が廃業の危機に立たされています。
さらに、2020年は新型コロナウイルスの影響で廃業件数が増えると予想されており、どの経営者にとっても廃業が身近な問題となりつつあります。
しかし、詳しい意味や手続きの内容など、廃業とは何かを正しく理解している経営者の方は、意外に少ないのではないでしょうか。
閉店・倒産・休業といった似たような言葉もありますが、それらの違いやそもそも廃業とはどのようなことなのかを理解しておく必要があります。
廃業の定義
廃業とは、会社や個人事業をたたんで、資産・負債を清算して法人格や事業を消滅させることです。
廃業は経営が立ち行かなくなって仕方なく行うというイメージを持つ人も多く、実際に経営が立ち行かないための廃業するケースは少なくありません。
しかし、廃業とは単に会社や事業をたたむことを意味するので、経営が黒字であっても廃業は可能です。
今後は経営者の高齢化により、多くの中小企業が廃業の危機に立たされるのを受けて、国は事業承継を推進して廃業を阻止する政策を進めています。
閉店との違い
閉店は廃業と同じように事業をたたむ意味で使われることもありますが、単にその日の営業を終了するという意味でも使われます。
また、閉店は改装などのために一時的に営業を中止する場合にも使われるのに対して、廃業の場合は一度行うと法人格が消滅するので営業を再開することはできないのも、大きな違いです。
閉店は単に店を閉めることを指すので、法律にのっとった閉店のための特別な手続きがあるわけではありません。
倒産との違い
廃業と倒産は同じような意味ととらえられることも多いですが、実際には明確な違いがあります。
まず、個人事業における廃業とは、廃業届を提出し事業とその屋号を消滅させるとともに、店舗や在庫などを処分して清算することをいいます。
また、会社の場合は、廃業とはまず解散を決議してから、清算手続きによって資産を整理することを指します。
一方で、倒産とは経営の悪化で事業が続けられなくなり、結果として廃業や破産をしてしまうことを指し、「倒産」という法律上の手続きがあるわけではありません。
つまり、廃業は会社をたたむための法律にのっとった一連の手続きを表すのに対して、倒産は単に会社が潰れることを概念的に指す用語だといえます。
清算との違い
清算という用語も廃業と似たような意味で使われることがありますが、これも廃業とは意味が異なります。
会社が廃業するには、法人格を消滅させるための解散手続きと、負債を弁済して残った資産を株主に分配する清算手続きを行う必要があります。つまり、清算とは会社を廃業するための手続きの一部にあたります。
個人事業も廃業する時は資産と負債の整理を行いますが、清算という用語は会社が行う場合を指します。
清算の具体的な手続きでは、会社法や破産法にのっとって、企業が通常清算・特別清算・破産のいずれかを行うことになります。
2. 廃業数の現状
近年は廃業件数が増えていて、逆に倒産件数は減っていると言われていますが、実際のところ年度別の推移はどうなっているのでしょうか。また、特定の業種で特に廃業が増えていたり、経営者の年齢による違いなどはあるのでしょうか。
この章では、近年の企業の廃業の現状について、産業別・法人格別・年齢別のデータを分析していきます。
休業数及び、解散企業数
近年の休廃業・解散及び倒産件数は、以下のようになっています。休廃業・解散は2万件台で推移していて、全体としてはやや増加傾向にあります。
一方で倒産件数の方は明らかな減少傾向が見られ、2008年と比べると2016年は約半分にまで減少しています。
【休廃業・解散・倒産件数】
年 | 休廃業・解散件数 | 倒産件数 |
2008 | 24705 | 15646 |
2009 | 25178 | 15480 |
2010 | 26086 | 13321 |
2011 | 25273 | 12734 |
2012 | 27226 | 12124 |
2013 | 29047 | 10855 |
2014 | 27167 | 9731 |
2015 | 27341 | 8812 |
2016 | 29583 | 8446 |
産業別の廃業状況
産業別に見た廃業件数は、以下の表のようになっています。件数としては2017年時点では建設業が約7500件で最も多く、続いてサービス業他・小売業・製造業と続きます。
2008年と比べると、建設業以外はおおむね横ばいとなっています。一方で建設業はここ10年で廃業数が大きく増加しており、2008年の約4200件に対して、2017年は約7500件と約1.8倍となっています。
【産業別の廃業状況】
業種 | 2008年 | 2017年 |
サービス業他 | 約7500件 | 約7000件 |
建設業 | 約4200件 | 約7500件 |
小売業 | 約3300件 | 約4000件 |
製造業 | 約2800件 | 約2600件 |
法人格別の廃業状況
法人格別の廃業状況は、以下のようになっています。数としては株式会社の廃業が最も多く、続いて有限会社・個人会社と続きます。
2008年と2017年を比べた件数の伸びに関しては、特定非営利活動法人が約7.7倍、続いて医療法人が6.2倍、個人企業が約1.6倍となっています。株式会社と有限会社はほぼ横ばいで、有限会社に限っては2008年と比べて廃業数が減少しています。
【法人格別の廃業状況】
法人格 | 2008年 | 2017年 |
株式会社 | 10117 | 10536 |
有限会社 | 9186 | 8441 |
個人企業 | 4519 | 7006 |
特定非営利活動法人 | 177 | 1358 |
医療法人 | 52 | 324 |
廃業した企業の経営者年齢
廃業した企業の経営者の年齢の割合は、以下のようになっています。高齢になるほど割合が高くなり、60代以上の廃業が80%を超えています。
2008年の60代以上の割合も約70%と高いですが、2017年と比べると低い割合となっており、近年の経営者の高齢化問題の深刻化がデータからも読み取れます。
【廃業した企業の経営者年齢】
年代 | 2008年 | 2017年 |
30代以下 | 2.3% | 1.2% |
40代 | 7.0% | 5.2% |
50代 | 19.3% | 10.1% |
60代 | 37.8% | 32.5% |
70代以上 | 33.6% | 50.9% |
3. 多くの中小企業が黒字でも廃業を選ぶ理由
経営難の結果、廃業せざるを得ない場合は当然多いですが、黒字の企業が廃業するというケースも少なくありません。
帝国データバンクが行った調査によると、廃業した企業の約5割が黒字だったという結果もあり、黒字であっても廃業を選択するケースは珍しいものではないことがわかります。
黒字にもかかわらず廃業して会社をたたむ主な理由には、経営者の高齢化・後継者がいない・M&Aに対して壁があるなどが考えられます。この章では、多くの中小企業が黒字でも廃業を選ぶ、これらの理由について解説します。
【多くの中小企業が黒字でも廃業を選ぶ理由】
- 経営者の高齢化
- 後継者がいない
- M&Aに対して壁がある
経営者の高齢化
経営者の高齢化を理由に廃業する企業は全体の約4割で、黒字で廃業する理由として最も多いものとなっています。
2020年代は団塊世代が完全に引退する時期で、経営者の高齢化がピークに達すると考えられます。
よって、黒字の企業が高齢化を理由に廃業する事例は、今後ますます増えていく可能性が高いといえるでしょう。
後継者がいない
経営を続けたいと考えていても、後継者がいないためにやむなく廃業するケースも多くみられます。
近年は、少子化で子どもがいない経営者や、また子どもがいても継ぐ意思がないなど、かつてのように子どもが代々後を継ぐという事業承継は少なくなっている現状があります。
M&Aに対して壁がある
親族などに後継者がいない企業にとって、M&Aによる事業承継は非常に有力な手段となります。
よい後継者を探すのは簡単ではありませんが、幅広い企業から候補を絞って、自社に適した後継者を探せるのはM&Aの大きなメリットです。
しかし、M&Aに対してネガティブなイメージを持っている人も多く、手続きが難しそう、手数料が高そうなどの理由で敬遠している経営者が多いのも事実です。
状況的に廃業よりM&Aによる事業承継が適していると考えられるケースでも、経営者がM&Aに対して壁があるために、廃業を選択する事例は非常に多くみられます。
4. 廃業を回避する方法
廃業にはメリットもありますが、基本的にはまず廃業を回避する方法を考えたほうがよいでしょう。廃業を回避する方法としては、事業承継・M&A・上場などが考えられます。
【廃業を回避する方法】
- 事業承継
- M&A
- 上場
1.事業承継
親族や社員を後継者に据える事業承継は、廃業を回避する最もオーソドックスな手法です。
近年は親族による事業承継は減少傾向にありますが、やはり有力な手段であることに変わりはありません。
2.M&A
親族や社員に後継者がいない場合は、M&Aで会社を売却するのが廃業を避ける有力な選択肢となります。
M&Aは廃業を避けるだけでなく、売却益やシナジー効果を得たりと、さまざまなメリットを得ることができます。
M&Aは相手をみつけて成約するまでが大変ですが、うまくいけば廃業を回避するだけでなく、事業を大きく発展させられる可能性も秘めています。
3.上場
株式上場は廃業の回避の手段としてとらえられることは少ないですが、売上規模が大きく黒字の場合は、上場によるイグジットで経営者が引退し、高齢による廃業を回避するという選択肢もあり得ます。
5. 廃業するなら、事業承継やM&Aを検討すべき理由
廃業と事業承継・M&Aにはそれぞれメリットとデメリットがあり、廃業することが必ずしも悪いわけではありません。
しかし、会社を存続させる事業承継・M&Aは、従業員の雇用を守ったり、顧客や取引先との関係を維持したりといった、社会的なメリットが多くあります。
事業承継・M&Aすべきケースで、M&Aに壁があるなどの理由で廃業する事例がありますが、廃業する前に事業承継・M&Aの可能性を検討すべきだといえるでしょう。
6. 事業承継やM&Aの相談先としておすすめの仲介会社
事業承継・M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は主に中堅・中小企業のM&Aを手がける仲介会社で、専任のアドバイザーが親身になってサポートいたします。
当社の所在地は東京と大阪と名古屋ですが、地方企業の事業承継・M&Aも多数手がけています。全国どこでも無料でお伺いいたしますので、経営者様が相談のたびに移動の時間や費用をご負担いただくことはありません。
仲介手数料は着手金・中間金無料の完全成功報酬制を採用しており、成約に至らなければ料金は一切かかりません。
無料相談は随時お受け付けしていますので、事業承継・M&Aによって自社を継続させたいとお考えの方は、お電話かメールでお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
企業経営者や個人事業主にとって、廃業はいつでも直面する可能性がある問題です。廃業とは何か理解し、事業承継やM&Aによって回避する方法についても知っておくと、万一の際も最良の選択をすることが可能です。
【休廃業・解散・倒産件数】
年 | 休廃業・解散件数 | 倒産件数 |
2008 | 24705 | 15646 |
2009 | 25178 | 15480 |
2010 | 26086 | 13321 |
2011 | 25273 | 12734 |
2012 | 27226 | 12124 |
2013 | 29047 | 10855 |
2014 | 27167 | 9731 |
2015 | 27341 | 8812 |
2016 | 29583 | 8446 |
【産業別の廃業状況】
業種 | 2008年 | 2017年 |
サービス業他 | 約7500件 | 約7000件 |
建設業 | 約4200件 | 約7500件 |
小売業 | 約3300件 | 約4000件 |
製造業 | 約2800件 | 約2600件 |
【法人格別の廃業状況】
法人格 | 2008年 | 2017年 |
株式会社 | 10117 | 10536 |
有限会社 | 9186 | 8441 |
個人企業 | 4519 | 7006 |
特定非営利活動法人 | 177 | 1358 |
医療法人 | 52 | 324 |
【廃業した企業の経営者年齢】
年代 | 2008年 | 2017年 |
30代以下 | 2.3% | 1.2% |
40代 | 7.0% | 5.2% |
50代 | 19.3% | 10.1% |
60代 | 37.8% | 32.5% |
70代以上 | 33.6% | 50.9% |
【多くの中小企業が黒字でも廃業を選ぶ理由】
- 経営者の高齢化
- 後継者がいない
- M&Aに対して壁がある
【廃業を回避する方法】
- 事業承継
- M&A
- 上場
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