事業承継で親族・従業員に株式を承継する方法・ポイントを解説!株価はどうなる?

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

事業承継における内部承継は、親族への承継と役員・従業員への承継があります。外部承継はM&Aまたは、会社の外部から経営者を招へいし引継ぐ方法です。親族と役員・従業員への事業承継には、株式の承継による税負担の課題が生じてきます。

目次

  1. 事業承継とは
  2. 親族を事業承継の後継者とする場合(親族間承継)
  3. 役員や従業員を事業承継の後継者とする場合(従業員承継)
  4. 外部承継(M&A)
  5. M&Aを活用した事業承継をするときの流れ
  6. 事業承継先によるメリット・デメリット比較
  7. 【まとめ】事業承継で親族・従業員に株式を承継する方法・ポイント
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1. 事業承継とは

事業承継とは

まず、事業承継の定義や要件を簡単にまとめます。

事業承継とは、経営者が引退して後継者に経営をバトンタッチすることです。企業の経営を信頼するひとに引き継ぐことを事業承継と言います。

もっと詳しく事業承継の定義や事業承継先について確認していきましょう。

定義

日本の企業の99%を占める中小企業は、経営者の経営手腕が強みや存続の基盤になっていることが多い一方、経営者の引退もいつかは必ず訪れます。

この経営者の引退にあたって発生するのが事業承継です。企業の経営を、信頼出来る後継者に引き継ぐことですが、では「誰」に引き継ぐかを決めるのが肝心かなめの作業になります。

できるだけ早い段階から準備を行っていくことが、事業承継を成功させるための近道です。

事業承継先

事業承継先には、以下の内部承継と外部承継があります。

内部承継

内部承継は、経営者本人や企業の関係者に経営を引継ぐものです。したがって以下の2通りです。
 

  • 親族
  • 役員(従業員)

かつては、事業承継というとほとんどこの内部承継で、中でも親族への承継が当たり前でした。なぜなら、内部承継をする方が、会社のことをよくわかっている人に譲り渡すことができるからです。

また、時間をかけて経営者としての教育を行ったり、引き継ぎをすることができます。さらに、従業員にとっても、社風があまり大きく変わらないため、メリットは大きいのです。

しかし、近年では内部承継をするにも適切な後継者が見つからないと悩む経営者が多くなっています。後継者がいないことで廃業を選ばざるをえないケースもあるのです。

そこで増えてきた事業承継方法が、外部承継です。

外部承継

外部承継は、第三者に経営を引継いでもらうことで、以下の2つです。
 

  • M&A
  • 外部経営者の招へい

M&Aは会社や事業の一部を、買い取ってもらうことです。もともと事業承継を目的としたものではないですが、有力な後継者がいない場合の事業承継問題の解決策として、最近多くなってきています。

外部経営者の招へいは、企業の外にいる人材から後継者を募集して引継いでもらう方法です。

もし、内部承継をしたくても適切な後継者がいないのであれば、外部承継を検討しましょう。もし、M&Aを活用するのであれば、M&A総合研究所へご相談ください。

M&A総合研究所であれば、御社に最適な事業承継方法をご提案いたします。M&Aを専門とした公認会計士があなたと二人三脚でベストなM&Aを実現させます。

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事業承継される要件

事業承継される要件には三点あります。
 

  1. 経営権
  2. 株式
  3. 知的財産

それぞれどのようなものなのか確認していきましょう。

①経営権

事業承継では通常、元の経営者の地位を後継者にそのまま引継いでもらいますので、経営権もそのまま後継者に移るのが正しいです。

ただし経営権は、株式の承継とほぼイコールです

②株式

経営権を名実ともに後継者に引継ぐには、株式の承継も必須です。会社の支配権を握るのは、その会社の株を多く持っている人からですので、後継者は最低でも過半数の株式を取得する必要があります。

株式の承継は、譲渡、売買、相続などの方法で行われますが、いずれの場合も株の取得資金や税金の問題が絡んできます。

③知的財産

知的財産は、人材、技術、技能、ブランドから、経営理念、顧客とのネットワークまでなんでもですが、つまりは無形で単純に数字で測ることのできない資産のことです。

中小企業の場合は、こうした知的財産は経営者個人に帰属していることが多いため、この知的財産の後継者への引継ぎも用意周到に、じっくり時間をかけて行う必要があります。経営権や株式を単に引継いだだけでは承継されないので注意が必要です。

2. 親族を事業承継の後継者とする場合(親族間承継)

親族を事業承継の後継者とする場合(親族間承継)

親族間承継は、経営者の子息が後継者の場合がほとんどです。

経営者の死亡や病気などで、一時的に兄弟や夫人が引継ぐこともありますが、ここでは経営者が元気なうちに子息に承継する場合を考えます。

親族間承継をする場合のポイントや注意点、流れを確認していきましょう。

親族を後継者として株式を承継する際のポイント・注意点

親族を後継者として株式を承継するにあたっては、遺言や贈与にあたっての遺産トラブルに注意が必要です。

親族間の事業承継でよくあるのは、遺言や生前贈与の方法で後継者に事業用の資産や株式を集中させることです。ただこれは、基本的には他の相続人との間で不公平になるやり方です。

遺言や生前贈与の方法では、後継者以外の相続人には遺留分の権利(最低限度の資産承継の権利)があります。後継者以外の相続人へも配慮して、後継者への株式資産の承継を進めなければなりません。

相続人全員の理解が初めからあることが望ましいですが、議決権制限株式の利用や経営承継円滑化法の「民法の特例」を活用する方法もあります。詳しくは弁護士事務所などで相談に乗ってもらえます。

親族に事業承継する際の流れ

親族に事業承継する際は、以下の3点をのステップを踏んで行う必要があります。

①関係者への周知と理解を求める

ここでは経営者の同族をはじめ、社員や取引先などの関係者に理解をしてもらうことが重要になってきます。理解してもらうことをおろそかにすると、同族内での相続争いや社員や取引先の離反などの問題が起こりかねません。

したがって単に公表するだけではなく、きちんと説明して理解を得られるような計画づくりをしっかりと行う必要があります。

計画を作成したら、行動すべきことは以下の通りです。また、以下はそもそも計画を作る際に、どのように進めていくかを検討しておくべき事柄でもあります。

  • 後継者候補との方針の共有(特に、後継者候補が複数いる場合は注意)
  • 社員や取引先・金融機関への事業承継計画の公表し理解を求める
  • 将来の経営陣の構成を視野に入れて、役員・従業員の世代交代を準備

それぞれしっかりと検討しておきましょう。

②後継者の教育

誰を後継者にするにしても、いきなり経営権だけ与えただけではもちろん不十分です。しっかりと経営が出いるだけの能力を磨き上げなければなりません。

この後継者の教育が、最も時間のかかるプロセスです。年単位で計画して進めていく必要があります。後継者のキャリアにもよりますが、一般的に考えられる流れは、以下の通りです。

【社内での教育の例】
各部門をローテーションさせる⇒責任ある地位に就ける⇒現経営者による直接指導

【社外での教育の例】
他社での勤務を経験させる⇒子会社・関連会社等の経営を任せる⇒セミナー等の活用

③株式・財産の分配

経営者が名実ともに経営権を握るためには、株式を過半数以上持っていることが必須であることはすでに述べたとおりです(加えて、株主総会で重要事項を 決議するために必要な3分の2以上の株式を持っていることが望ましいです)。

このため、後継者が固まった時点で株式が分散している場合には、可能な限り買取り等を進めていくことが望ましいです

買い取りを実施するには、後継者以外の相続人への配慮も必要です。また、生前贈与や遺言を用いる場合でも、他の相続人の遺留分による制限があることに注意が必要です。

親族に事業承継する方法

親族間で事業承継する方法は、株式の承継方法により以下三点です。
 

  • 相続
  • 贈与
  • 売買

それぞれ確認していきましょう。

相続による方法

相続による承継とは、経営者の生前には事業承継を行わず、相続が発生した際に後継者に承継させるという方法です。

ただし、何もせず経営者が亡くなった場合は、相続時に株式が法定通りに分散してしまいます。したがって相続による承継を行うためには、必ず遺言を作成の上、「後継者に事業に関する資産等を相続させる旨」を明確に記載しておく必要があります。

また、誰にも相談せず勝手に進めた場合、相続による承継は思わぬトラブルに発展することもあります。専門家に相談しながら対策を取る必要があります。

贈与による方法

経営者が生きているうちに、持っている自社株式等の資産を後継者に贈与する方法です。

生前贈与の場合の贈与税は、相続税の場合よりも移転財産(自社株式など)の評価額あたりの税率が高いため、まとめて贈与しようとすれば、税金負担が重くなります。このため、以下の方法も考えられます。

【暦年課税贈与】
贈与税の基礎控除(非課税枠)である年間110万円の範囲内にとどめて、数年かけて贈与していく方法です。暦年課税贈与と言います。

【相続時精算課税制度】
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対して、累計で2,500万円までの財産を非課税で贈与できる制度です。それを超えた部分には、一律20%の税率で課税されます。ただし相続発生時に、このかこの贈与分の課税額と相続分の課税額の両方を収める必要があります。

売買による方法

後継者が、経営者の持つ株式等を買取る方法です。つまり、普通の株式売買です。

売買による方法ですと、相続や贈与の場合には配慮が必要な、他の相続人の遺留分はありません。また、贈与税や相続税が課税されるということもありません。

しかし、後継者が自社株式等を買取るための資金力が必要になってきます。

親族に事業承継するメリットとデメリット

親族間で事業承継する場合のメリットとデメリットを確認しましょう。親族間承継がベストな選択であるかを判断しましょう。

中小企業は事業承継税制の対象(税金面)

親族間および親族外の事業承継は、事業承継税制の対象です。親族間の事業承継は必ず親族の誰かしらに納税が発生しますが、事業承継における相続や贈与は通常より税金負担の軽減が図られているのがメリットになります。

この事業承継税制は、2008年に成立した「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」によります。事業承継に伴う税金負担の軽減などで、事業承継円滑化のための総合的支援策を講ずることを目的としています。

この制度においては、中小企業の後継者が先代経営者からの贈与または相続により取得した非上場株式に係る相続税・贈与税の一部の納税が猶予されます。

利用するにあたっては、5年間の雇用維持を始めとする制度要件に合致することについて、都道府県知事の認定を取得していることが前提となります。

その認定の元、一定要件を満たしている場合に限り、納税が免除されます。したがって自社への適用可能性については、詳しくは都道府県の役所などで相談しましょう

贈与税が免除される要件まで記載しておくと、以下の通りです。
 

  1. 後継者(受贈者)の死亡
  2. 特例経営贈与承継期間中、やむを得ない理由から会社代表権を失った日以後の「免除対象贈与」の実施
  3. 特例経営贈与承継期間の経過後における「免除対象贈与」の実施
  4. 特例経営贈与承継期間の経過後における会社の破産手続き開始決定
  5. 特例経営贈与承継期間の経過後に事業継続が困難となって会社を譲渡・解散する場合

さらに2018年度の税制改正では、より一層事業承継がスムーズに進むよう、この制度の適用の拡大や要件の緩和が行われています。こちらも詳しくは、自社の役所に相談しながら経営者自身や後継者の状況に照らし合わせての検討が望ましいところです。

株価への影響

親族間で株式の生前贈与や譲渡が行われる場合、課税関係の基準となる価額(時価)は相続税評価額です。

一方で、過去の未処分利益の蓄積により内部留保(純資産額)が潤沢であるような会社においては、相続税評価額は高く算出される傾向にあります。すると、実際に自社株式を移転させた場合に贈与税や株式譲渡所得税の税金負担、および株式購入の資金負担などが、とても高くなってしまう可能性があります

そこでよくあるのが、組織再編成を含めた会社規模の変更、配当性向の見直しを通じた純資産額の縮小などの、自社株式の評価額引き下げ対策です。

ただしこれも、著しく経済合理性を欠くような方法で行われたような場合には、納税額が否認されたりといった税務リスクが高くなります。

株価的には本来の企業価値の向上とは相反する方向に動かざるを得ないのと、そのことによる税務リスクは親族内承継のデメリットです。

社員への影響

現経営者の子どもが事業承継するのは、今もって日本では受け入れられやすい現状もあります。社員や取引先の理解を得やすいのはメリットです。

社員に反発されると、モチベーションが下がって企業の生産性が落ちてしまいます。また取引先や金融機関から不信を買うと、後の企業経営が難しくなってしまいます。こうしたリスクは親族内承継には少ないと言えるでしょう。

3. 役員や従業員を事業承継の後継者とする場合(従業員承継)

役員や従業員を事業承継の後継者とする場合(従業員承継)

会社の内部、つまり役員や従業員へ事業承継する場合です。こちらも経営者が元気なうちに、後継者に引継ぐケースで考えます。

従業員承継をするときのポイントや注意、流れを確認していきましょう。

役員や従業員を後継者とする際のポイント・注意点

最近では、親族内で後継者を見つけることが困難になっていることから、社員の中から後継者を選定することも多くなっています。

ただしこれには、早い段階から十分な準備を行う必要があります。後継者の教育と育成が必要なのは言うまでもありませんが、社員への事業承継の場合、教育と育成ための社内体制も経営者自らが力を入れて整備していかなければなりません。親族間の事業承継の場合に増してです。

後継者となる役員・従業員を教育・育成しても、会社の他の社員が協力しなければ事業承継は成功しませんが、後継者となる役員・従業員には親族内の場合における血縁によるバックボーンはありません。

後継者だけでなく、最終的には他の社員の協力と賛同を得られてこそ、円滑な承継が可能となることに注意しておかなければなりません。

役員や従業員に事業承継する際の流れ

役員や従業員に事業承継で経営を引き継いでもらう場合、特に重要な手順は以下の3つです。
 

  1. 関係者への周知と理解を求める
  2. 経営・財務の透明化
  3. 資金面のサポート

①関係者への周知と理解を求める

親族間の事業承継であれば、社内・社外からも理解が得られやすいですが、親族外の事業継承の場合は必ずしもそうはいきません。

社員の中で「同僚が後継者候補になると、それでは面白くない」と反発を招くケースがあります。また、取引先などといった社外からも予想外のクレームがつくこともしばしばあります。親族間の事業承継の場合より、社内や外部に丁寧に理解を求める必要があります。

また、通常は経営者個人が差し入れている会社の借入金の保証や担保も、ほとんどの場合は後々後継者に引継いでもらう必要が生じます。金融機関にそれをスムーズに了承してもらうためにも、後継者を前もって紹介し定期的に金融機関との交渉を担わせるなどで、丁寧に理解してもらいながら進める必要があります。

②経営・財務の透明化

中小企業では、経営者の財産と会社の財産が明確に線引きされていないことがあります。例えば、経営者個人が利用している会社名義の高級外国車やゴルフ会員権などはよくある例です。

親族外の事業承継では、承継後に経営者と後継者の繫がりは、親族内の場合に比べてはるかに薄くなります。こうした財産などを後継者も理解しておらず曖昧なままだと、後々混乱をきたすことにもなりかねません。

会社経営に直接必要のない資産の整理などを積極的に行い、経営・財務を透明化しておくことが、特に親族外の事業承継の場合には必要です。

③資金面のサポート

親族外の事業承継の場合、通常、後継者は経営者の所有する株式を買取るか贈与を受けることになります。

どちらにせよ問題になってくるのが、資金面です。親族外の後継者は株を入手するための資金力に乏しいことが大半です

その場合には、株式取得資金として役員給与を増額するなどの方策を検討する必要があります。

また、多くの中小企業では、会社の借入金に対して経営者自身の保証や担保を差し入れています。これを後継者に可能な限り負担なく引き継いでもらうためにも、後継者が債務保証できる額まで会社の借入金を減らすなどの対策を取っておきたいところです

役員や従業員に事業承継する方法(株式の動き)

株式の動きから見た事業承継の方法は、以下三点あります。
 

  1. 株式を売却する
  2. 株式を贈与又は譲渡する
  3. 経営権のみを譲渡する

方法①株式を売却する

経営者が株式を売却して、後継者が取得する方法です。最も単純で分かりやすい方法といえます。

ただし問題は、中小企業といえども自社株式の株価が数千万円から数億円を上回ることがあります。サラリーマンであった役員や従業員個人が、このような大金を用意して株式を買い取ることはほぼ不可能です。

そこで、株式の売却による手法の中で取られる手段には、以下が考えられます。

株価を意図的に下げる
例:経営者が退職金を多くとって資産を減らす

株式取得資金を分割して出す
例:後継者が給与に株式買取りの資金を上乗せする

銀行やファンドから資金を調達
例:借入金を活用したLBOスキームなど

方法②株式を贈与又は譲渡する

株式の売却には後継者の資金的な問題がありますので、それが解決しないなら株式を贈与する方法があります。

ただし、この方法でも後継者に贈与税が発生します。

方法③経営権のみを譲渡する

後継者には株式を売却せず、経営権のみを渡す方法です。

しかしながら、株主総会での普通決議では2分の1以上の賛成が必要ですし、特別決議では過半数の株主が出席した上で、出席者の3分の2以上の賛成が必要です。

このような所有と経営が分離した状態は、後継者が会社を運営するのに旧経営者の了承を得ながら進めなければならなくなります。中小企業のほとんどはそのような状態を前提としていませんから、何かと運営に支障をきたすことが考えられます

この解決策の一つとして、無議決権株式(種類株式)の大量発行の方法もあります。

役員や従業員を後継者とするメリットとデメリット

役員・従業員に承継する場合のメリットとデメリットです。まとめは本記事の最後の方にありますので、ご覧下さい。

中小企業なら事業承継税制が利用可能

親族内承継の項目で記載した事業承継税制は、後継者が親族でなくても適用されます。

内容は同じなので説明は省きますが、都道府県の認定が必要ですので、詳しくは相談してみましょう。

株価への影響

経営者が株式を後継者に売却する場合は、株価が高いほど経営者にとっては売却益が多く良い結果になりますが、一方で後継者には前述の株の買い取り資金の問題がありますので、不都合な状態になります。これは、親族内の売買では同族内のお金の流れのみだった場合とは、また違った問題です。

したがって、本来の株価より低い金額での売却もよくあります。ただしこの方法でも、贈与税などはまた売却価額とは別に税金が算出され得ることに注意が必要です。

もちろん、贈与税も株価が高いほど高額になりますので、株価対策がよく行われます。この場合の税務リスクのデメリットも、親族内承継の場合と同様です。

社員への影響

役員・従業員への事業承継は、親族内におけるバックボーンがない分、能力と人柄による人選がすべてになります

後継者を選ぶにあたっては、経営者としての資質があることはもちろん、人柄やコミュニケーション能力も重要なポイントとなります。

また、後継者に適任な人材がいたとしても、本人が経営者になることを希望するかどうかは別問題です。本人が理解した上での承諾を得ることは必ずしなければなりません。

加えて、後継者以外の社員が快く思わないことも、親族内承継に比べたら発生しえます。親族外承継は人選および社員への周知にハードルが高くなることはデメリットと言えます。

4. 外部承継(M&A)

外部承継(M&A)

M&Aも事業承継の有効な解決手段の一つです。適切な事業承継先が見つからない場合は、はやめにM&Aを活用した事業承継も視野に入れましょう。

M&Aで事業承継するメリットを確認しましょう。

中小企業がM&Aするメリット

M&Aによる会社売却では、外部に広く後継者としての事業承継先を探すことができますし、雇用関係や残債務もうまくいけばそのまま引き継ぐことができます。このため、比較的短期間で会社の整理をし、かつ育てた事業を存続させることが可能です。

また、譲渡の際に、顧客や取引先企業、金融機関との契約も維持されます。買い手側にとって、その後の事業も滞りなく行うことができますので、これはかなり大きなメリットとなります。

さらに、経営者が創業者である場合には、創業者利潤を得ることも可能です。創業者利潤とは、実際の投入資金と株式資本の総額の間に生じた創業者の利益のことです。

M&A・会社売却は、元々事業承継のための制度ではないですが、このように中小企業の事業承継においてメリットは大きく、近年増加しています。

中小企業がM&Aする際のハードル

M&Aによる事業承継はメリットも大きいですが、ハードルとなるのは適切な買い手を探すことと、その後の交渉です。端的に言えば、このハードルが越えられず、売れないことも多いです。売りたい事案全体の5%程度しか売れないとも言われています。

 

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5. M&Aを活用した事業承継をするときの流れ

M&Aを活用した事業承継をするときの流れ

M&Aを活用して事業承継をするのであれば、事前に流れを確認しておきましょう。流れは以下の通りです。

①M&A仲介会社へ相談

当事者同士でM&Aを行うことも不可能ではありませんが、仲介会社などの専門家に相談して進めていくのが一般的です。

相談先は、M&A仲介会社とM&Aアドバイザリーが一般的ですが、銀行や信用金庫などの金融機関、事業引継ぎ支援センターなどの公的機関でも相談することができます。

売却する企業が大規模な場合は金融機関、中小企業の場合はM&A仲介会社・M&Aアドバイザリー・行政機関に相談するのがおすすめです。

②事業承継先の選定

M&Aによる事業譲渡・株式譲渡では、まず売り手の要望に合う買い手を数十社くらい洗い出し、さらに精査して数社程度に絞ります。

次に、その中から特に有力な買い手候補に連絡をとり、具体的な交渉へと進んでいきます。

選定では、譲渡金額などの要望に加えて、会社への思いや経営理念など、精神的な要望ともいえる部分もアドバイザーに伝えるようにしましょう。

③基本合意書の締結

買い手候補と具体的な交渉に入り基本的な合意が得られると、基本合意書を締結して最終合意に向けて本格的に動き出します。

基本合意書には、譲渡価格や取引のスキームなどを記載しますが、あくまで基本的な合意であるため後で変更することも可能です。

仲介会社によっては、基本合意の時点で「中間金」という報酬が発生することもあります。中間金が発生するかどうかは仲介会社によって異なるため、報酬体系を事前にチェックしておくようにしましょう。

④デューデリジェンスの実施

基本合意書を締結したら、相手先企業の内容を詳しく調べるデューデリジェンスを実施します。

財務状態を調べるファイナンシャルデューデリジェンス、事業内容を調べるビジネスデューデリジェンスなどを実施するのが一般的です。

慎重を期すなら、違法行為や訴訟の履歴を調べるリーガルデューデリジェンス、過去の税務処理について調べる税務デューデリジェンスなどを実施することもできます。

⑤最終契約書の締結

デューデリジェンスの結果、相手先企業に問題がないと分かり両社が納得すれば、最終契約書の締結をします。

最終契約書の名前は、事業譲渡の場合は事業譲渡契約書、株式譲渡の場合は株式譲渡契約書となります。

一旦最終契約書を締結すると、事業譲渡・株式譲渡契約を取り消すことはできないので、内容は慎重に吟味する必要があります。

⑥クロージング

最終契約書が締結されて事業譲渡・株式譲渡が確定すると、実際の譲渡手続きを行うクロージングに入ります。事業譲渡の場合は手続きがやや複雑になるので、クロージングにある程度の期間が必要になります。

すぐに引退を考えている場合は、事前に逆算して事業承継の準備にとりかかりましょう。

6. 事業承継先によるメリット・デメリット比較

事業承継先によるメリット・デメリット比較

これまでに記載したことを踏まえて、「親族」「従業員・役員」「M&A」による事業承継のメリット・デメリットを一覧にしました。

経営の持続性

経営の持続性の観点では、事業承継直後さしあたっては親族が最もメリットが大きいです。長期的なスパンで見れば、M&Aが最も成功の可能性が高いかもしれません。

  メリット デメリット
親族 従業員や取引先の理解を得やすい 親族の後継者に能力がなければリスクは高い
役員・従業員 後継者が長年の役員・従業員であれば、会社のことをよくわかっている 従業員や取引先の理解は得にくい
M&A 買い手とのシナジーによる更なる発展が期待できる 社風やノウハウの違いから失敗も多い

株式の移管

M&Aを除けば、株式の移管にあたり経営者本人以外にも必ず税金負担が生じます。

特に役員・従業員への事業承継は、この株式の移管の面で特にハードルが高いです。

株価(資産面)

  メリット デメリット
親族 なし 自社株引下げをせざるを得ない
役員・従業員 なし 自社株引下げをせざるを得ない
M&A 自社株引下げは不要
売買価額はM&Aの手法による評価(相対取引)で、高く売れる可能性がある
売買価額はM&Aの手法による評価(相対取引)で、安く評価される可能性がある

株式承継のコスト

  メリット デメリット
親族 事業承継税制を使える 後継者に相続税・贈与税の税金負担が発生する
役員・従業員 事業承継税制を使える 後継者に贈与税の税金負担が発生する
後継者に株式を買収する資金力があることはほとんどない
M&A 相続税・贈与税の税金負担は発生しない 株式を売却した経営者に譲渡所得税が発生する(株式譲渡により株式を売却した場合)

株式承継の手続き面

  メリット デメリット
親族 経営権譲渡と一緒に株式を全て渡す必然性は少なく、遺言など他の方法も取りやすい 相続面で後継者以外の親族への理解が難しい場合がある
役員・従業員 なし 後継者に、予め株式の買取資金を出さざるを得ないのがほとんど
経営権だけの譲渡になったり、ファンドや銀行借入による複雑なスキームが必要になることがある
M&A 経営者の株式売却の手続きのみとなる 部外者との手続きになるので、経営者の思い通りにはなりにくい

人員確保と教育

M&Aにおいては、後継者の人員確保と教育は必要ありません。
 

  メリット デメリット
親族 後継者の教育への社内の協力は得やすい 親族内に経営者の資質や希望があるとは限らない
役員・従業員 親族内から探すよりは後継者の選択肢が増える
長年働いた役員・従業員であれば、予め社内のことはよくわかっている
経営者になることを考えている役員・従業員は少ない
後継者の教育への社内の強力に、労力を要する
M&A (後継者の人員確保や教育は不要) (後継者の人員確保や教育は不要)

承継にかかる時間

事業承継に係る時間は、後継者のキャリアによりケースバイケースですが、一般的に考えられるのは以下のとおりです。
 

  メリット デメリット
親族 社内・社外への後継者の周知はスムーズに進みやすい 後継者の育成に時間がかかる
役員・従業員 親族に比べて後継者教育にかける時間は少なくて済む可能性あり 後継者の育成に時間がかかる
社内・社外への後継者の周知に時間をかける必要あり
M&A 後継者育成の時間は必要ない 買い手候補の選定と交渉に時間がかかる

7. 【まとめ】事業承継で親族・従業員に株式を承継する方法・ポイント

事業承継とは、経営者が引退するときに信頼出来る後継者に引き継ぐことです。「誰」に引き継ぐかを決めるのが肝心となります。

一般的には親族や従業員へ引き継ぎますが、選択肢の多い現在ではM&Aを活用して事業承継するケースも増えています。

もし、M&Aを活用した事業承継を検討するのであれば、早い段階でM&A総合研究所にご相談ください。あなたの引退日から逆算してスピーディーに案件を進めていきます。

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