物流(運送)会社の事業承継の動向!業界の環境・事例や案件例も紹介

会計提携第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

物流(運送)会社は、人材不足や後継者不足などで事業承継が行われることも多い業界です。本記事では、物流(運送)会社の事業承継の動向や事例・案件例をまとめました。物流(運送)会社のM&A・事業承継を成功するポイントも紹介します。

目次

  1. 物流(運送)業界を取り巻く環境
  2. 物流(運送)業界の事業承継方法
  3. 物流(運送)会社を廃業させずに事業承継を選ぶべき理由
  4. 物流(運送)会社の事業承継の案件例
  5. 物流(運送)会社のM&A・事業承継の事例
  6. 物流(運送)会社のM&A・事業承継を行う流れ
  7. 物流(運送)会社のM&A・事業承継における注意点
  8. 物流(運送)会社のM&A・事業承継におすすめの相談先
  9. 物流(運送)会社の事業承継まとめ
  10. 運送・物流業界の成約事例一覧
  11. 運送・物流業界のM&A案件一覧
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1. 物流(運送)業界を取り巻く環境

運送業は企業の事業運営や私たちの生活に不可欠な存在ですが、近年は課題も多く抱えています。まずは、運送業界の現状や課題、今後についてみていきましょう。

運送業界の現状

矢野経済研究所の調査によれば、物流17業種の2021年度における総市場規模は23兆1860億円であり、前年度比115.7%という大きな伸びとなりました。

大幅増加の要因は、ネット通販市場の拡大に加えフリマアプリなどを活用した個人間取引の広がりによって、宅配便の取扱個数が急速な増加傾向にあることが考えられます。

参考:株式会社矢野経済研究所「物流17業種市場に関する調査を実施(2023年)」

運送業界の課題

需要が拡大している運送業界ですが、解決すべき課題も抱えているのが実情です。特に以下2つの課題は、業界が安定した成長を続けるために早期解決が求められています。

ドライバーの高齢化と若手人材の不足

運送業界のなかでもトラック運送事業は典型的な労働集約型産業であり、ドライバー不足は業績に大きく影響します。しかし、近年はドライバーの高齢化が進む一方であり、若手人材は継続的に不足している状態です。

全日本トラック協会の資料によれば、2021年度における道路貨物運送業の従業員年齢は50歳以上が45.2%を占めており、40歳未満の従業員は全体の24.1%と、高齢化が進んでいることがわかります。

参考:公益社団法人全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2022」

DX化などによる生産性の向上

国内企業は「働き方改革」への対応を進めていますが、運送業界では長時間労働の抑制対応が急務となっています。

しかし、ドライバーの高齢化や若手人材不足を抱える運送業界が、課題解決を図りつつ成長を図るためには、生産性の向上が不可欠です。現在、業界ではDX化などによる業務効率向上や労働力の確保に向けた対応などが進められています。

運送業界の今後

国土交通省「令和4年度 宅配便・メール便取扱実績について」より

出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001625915.pdf

国土交通省が公表している資料によれば、2022年度の宅配便取扱個数は50億588万個であり、前年度より5265万個(前年度比1.1%)でした。

そのうちトラック運送が49億2508万個であり、全体の9割以上を占めています。1989年以降、宅配便取扱個数は右肩上がりで推移しており、今後も取扱個数は増加すると考えられますが、物流業界では人材不足をどうカバーするかが業績にかかわるカギといえるでしょう。

参考:国土交通省「令和4年度 宅配便・メール便取扱実績について」

2. 物流(運送)業界の事業承継方法

物流(運送)業界の事業承継方法として、3つの方法の概要とメリット・デメリットをお伝えします。

親族内承継

親族内承継は、中小企業で一般的な事業承継の方法であり、経営者の子供や親族が後継者となる形態です。以下にメリットとデメリットをまとめます。

【メリット】

  • 受け入れられやすい:親族による承継は、従業員や取引先にとって心理的な負担が少なく、既定路線として納得を得やすい。
  • 教育期間の確保:後継者候補の育成を計画的に進めることができ、自社や関連企業で経験を積ませる機会を持てる。
  • 所有と経営の一体化:事業用資産や株式を一括で引き継ぐことで、所有と経営の分離を防げる。

【デメリット】
  • 後継者の適性不足:親族内に適切な後継者がいない場合や、本人が継承を望まない場合がある。
  • 親族間トラブル:相続時に財産分与を巡る争いが発生する可能性があり、株式の分散が経営の支障となるリスクもある。

そのため、事前に後継者や財産分与を明確に決めておくことが重要です。

親族外承継

親族外承継とは、経営者の親族以外の役員や従業員を後継者として選び、事業を引き継ぐ方法です。この方法では、企業理念や経営方針をよく理解している内部の人材が後継者となるため、承継後の一貫性と安定性が期待できます。

経営者は候補者の資質や能力を直接見極められるため、適切な人材を選びやすい点が挙げられます。後継者候補には役員や若手経営陣が多く、実績に基づいて信頼できる後継者を選ぶことが可能です。

ただし、自社株の買い取り資金が必要で、多額の資金を調達するために個人保証を伴う融資が必要になる場合がほとんどです。その結果、候補者が辞退する可能性もあります。

株式取得費用について候補者と十分話し合い、家族や親族への説明と理解を得ることが、スムーズな事業承継とトラブル回避の鍵となります。

M&Aによる第三者への事業承継

M&A承継は、自社を第三者に売却して事業を引き継ぐ方法で、主に株式譲渡や事業譲渡が用いられます。これにより、従業員の雇用維持や創業者利潤(売却益)の獲得、個人保証からの解放といったメリットがあります。

一方で、経営統合(PMI)には時間がかかり、経営方針の変更や従業員・取引先の不安による離職・契約中止のリスクも伴います。成功させるには、後継者の選定や目的の明確化、早期の専門家相談が重要です。

3. 物流(運送)会社を廃業させずに事業承継を選ぶべき理由

後継者がいても頼りなく、廃業の選択肢を考えていませんか?本当に廃業で良いのか悩んでいる人も多いでしょう。

結論からいえば、廃業よりも事業承継を選ぶ方が圧倒的にメリットが多いです。しかし、「後継者が頼りなくて廃業以外に方法がないのでは」と考える人も少なくありません。ここでは、なぜ廃業させずに事業承継を選ぶべきかを見ていきましょう。

①従業員や取引先に影響が少ない

事業承継を選ぶ理由の1つ目が「従業員や取引先に影響が少ない」ことです。

廃業してしまうと会社はなくなり、従業員は仕事を失ってしまいます。取引先への影響も決して少なくはありません。

今まで苦労して守ってきた会社を廃業することは、経営者として辛い選択となります。また、廃業を取引先などに伝えるのも心苦しいものです。

ですが、事業承継を選べば、今までどおり事業は続けられます。もちろん従業員や取引先にも大きな影響はありません。今まで築き上げてきた従業員や取引先との信頼関係を守ることを考えると選びたい選択肢です。

しかし、後継者が頼りない場合や、後継者候補がいないときには「事業承継できないだろう」と考えます。そこがポイントで、事業承継はもう1つの選択肢としてM&Aを活用する方法があります。

次の理由も見ていきましょう。

②事業が発展する可能性を残せる

事業承継を選ぶ理由の2つ目が「事業が発展する可能性を残せる」ことです。

後継者が生み出す新しいアイデアは、今の事業を良い方向へ発展させるかもしれません。業績があまり良くないとしても、創意工夫によって回復する可能性もあります。発展途上なら、今後も事業が伸びていく姿を見ることができるはずです。

では、ここで運送会社の現状を考えてみましょう。現在では、物販サイトの拡大によって荷物が増え続けているなか、事業者数が足りていない現実があります。

しかしながら働き方改革によって、例えば以下のような課題があるのが現状です。
 

  • 残業ができない
  • 従業員の不足
  • 設備が追いついていない 

経営する側としてもとても難しいのが事実です。しかし、ここで廃業を選んでしまうと発展の可能性は完全に途絶えてしまいます。まだ伸びていくはずの物流事業で廃業してしまうのは大きな可能性を失うことになるのです。

事業承継を選べば多くの可能性を残せます。頑張って経営を続けてきた自社を、後世に託して発展を楽しめるのもメリットです。物流業界には伸びしろは十分にありますから、どのようにしたら会社を残していけるのかを考えてみましょう。

また会社にある資産はどうなるでしょうか。次の項目で資産にも触れていきます。

③トラックなどの資産を活用できる

事業承継を選ぶ理由の3つ目が「トラックなどの資産を活用できる」ことです。

物流会社を廃業してしまうと残ってしまったトラックなどの資産はどうなるでしょうか。会社から離れた日常で使うことは難しく、売却などで処分するにしてもなかなか買い手が見つからないものが多いです。

上手く処分できたとしても、処分コストがかかりすぎて赤字になってしまうことはよくあります。そうなると、会社そのものを失うだけではなく、現金も手元に残りません。場合によってはマイナスになることもあります。

では、物流会社を後継者に事業承継をした場合はどうでしょうか。

今使っているトラックなどの資産はそのまま活用でき、従業員や取引先にも影響はほとんどありません。新たな経営者を迎えることで、資産を活かした新サービスの導入やコスト削減などでより発展する可能性も残せます。

このように、トラックなどの資産を無駄なく活用できるのも事業承継のメリットです。

ここまで読むと、最も重要な問題点である後継者が頼りないときや、いないときはどのようにしたら良いのかという疑問が残るでしょう。

その疑問も問題なく解決できるので、なぜ解決できるのか次の理由を見てください。

④売却金額で今後のことも考えられる

事業承継を選ぶ理由の4つ目が「売却金額で今後のことも考えられる」ことです。

いきなり売却の話が出てきて驚く方も多いでしょう。

実は、物流会社の事業承継は家族や従業員の他にも「別企業への売却」という選択肢があります。この方法では、会社の経営権から資産、従業員から取引先までが売却の対象です。

つまり、今ある物流会社はそのまま残していけるのです。

事業承継ではありますが、会社を別企業が買い取る形ですからまとまった売却金額が得られます。トラックなどの資産もそのまま買い取ってもらえるので処分コストもかかりません。

物流会社はトラックなどの資産から人材まで揃っているので、場合によっては売却金額が億単位になることもあるでしょう。売却金額が高ければ高いほど、後の生活の心配をしなくても良くなります。

このように、物流会社の事業承継は、家族や従業員以外にも別企業に売却する選択肢もあります。これがM&Aと呼ばれる方法です。

M&Aであれば、後継者が頼りなくても、いなくても問題ありません。事業の買い手を見つけるだけで良いのです。

悩み続けているよりも、専門家に相談する方が多くの選択肢を得られます。選択肢を見つけてから、事業承継をどのようにしたらできるのかを考えてみましょう。

M&Aについてもよくわからず、選択肢としては曖昧な方もいるはずです。では具体的にどのような方法を検討すべきなのかについて、見ていきましょう。

  • 運送・物流会社のM&A・事業承継

4. 物流(運送)会社の事業承継の案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っている物流(運送)会社の事業承継の案件例をご紹介します。

【神奈川県・自走可能案件】流通加工運送業

神奈川県内の倉庫を拠点に一都三県、群馬県、栃木県、静岡県への運送が可能です。運送車両を7台保有し、駐車スペースに数台のキャパシティがあります。
 

エリア 神奈川県
売上高 5000万円〜1億円
譲渡希望額 1000万円〜5000万円
譲渡理由 事業存続に対する不安

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【関西/ドライバー30名以上/倉庫3拠点】重量物運搬に強みを持つ運送業

業歴50年超の地場運送業者です。大手取引先との取引がメインで、重量物運搬に強みをもつ運送事業を展開しています。
 

エリア 近畿
売上高 10億円〜25億円
譲渡希望額 2.5億円〜5億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【関連】【関西/ドライバー30名以上/倉庫3拠点】重量物運搬に強みを持つ運送業(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

5. 物流(運送)会社のM&A・事業承継の事例

実際に、M&Aの事業承継をした成功事例を見ていきましょう。

ヤマトHDによるナカノ商会の買収

2024年11月、ヤマトホールディングス(ヤマトHD)は、ナカノ商会を連結子会社化することを決定しました。

ヤマトHDは宅急便を中心とした輸送事業を展開しており、今回のM&Aによりコントラクト・ロジスティクス(CL)事業の拡大、エクスプレス(EXP)事業との相乗効果、リソースの共同利用によるコスト削減を目指しています。

一方、ナカノ商会は保管や輸送サービスに加え、顧客に特化した物流施設の提供を行い、多様な法人顧客基盤を持っています。

本M&Aにより、法人ビジネス領域のさらなる拡大を図り、ヤマトグループの事業ポートフォリオを強化します。

株式会社ナカノ商会の株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ

JPメディアダイレクトによるヤマトダイアログ&メディアの買収

2024年9月3日、日本郵政グループのJPメディアダイレクトは、ヤマトホールディングス(YHD)の子会社であるヤマトダイアログ&メディアの株式を100%取得する契約を締結しました。

2024年11月1日付で、同社はJPメディアダイレクトの子会社となり、「YDM株式会社」に社名変更されます。JPメディアダイレクトはダイレクトメディアやBPOサービスを提供しており、ヤマトダイアログ&メディアはダイレクトマーケティングを専門としています。

本M&Aにより、両社のノウハウとリソースを活用し、利便性の高いサービスを提供することで、顧客の課題解決を目指します。

株主変更のお知らせ

エスライングループ本社による拓進物流の買収

2024年7月26日、エスライングループ本社は、埼玉県三郷市を拠点とする物流サービス会社、拓進物流の全株式を取得し、子会社化する契約を締結しました。

エスライングループは、物流センターを活用し、商品保管から配送までを一貫して行うワンストップサービスを提供しています。

拓進物流の保管・ピッキング業務とエスライングループの配送ネットワークを統合することで、付加価値の高い物流サービスを実現します。また、経営資源の共有や情報システムの統合により、生産性向上と効率化を目指します。

「株式会社 拓進物流」の株式取得に関するお知らせ

UACJによる構内運搬事業の会社分割

2020年8月にUACJが、これからの事業環境に応じた柔軟でスピーディーな運営強化を目指すために、連結子会社のUACJ物流の構内運搬事業を会社分割で承継しています。完全親子会社間での吸収分割なので、株式その他金銭などの割り当てや交付はありません。

【関連】運送会社のM&A動向!会社売却のメリットや注意点・事例を徹底解説【2024年最新】

6. 物流(運送)会社のM&A・事業承継を行う流れ

ここからはM&A・事業承継を進める手順をわかりやすく5つのステップに分けてまとめていきます。

①資産と経営状況を整理する

まず、物流会社の事業承継では「資産と経営状況を整理する」必要があります。

どうしてかというと、経営状況や資産状況によって事業承継で手に入れられる金額が変わるからです。より具体的に整理するためにも以下のような項目をチェックしてみてください。
 

  • 会社の現状
  • 株式の数と評価額
  • 保有する技術やノウハウ
  • パソコンなどの細かい設備
  • 経営者の資産状況
  • 後継者候補のリストアップ 

中でも、後継者の資産は会社が保有しているもの、経営者個人が持っているものに分かれています。個人で所有している資産を事業用に使っているときには、どこまでを自社の資産とするのか明確に決めておきましょう。(後で範囲についてトラブルになるため)

株式の数と評価額は会社の価値を決める大きなポイントとなります。未上場会社の場合は、正確に株式の価値を把握するのは難しいので専門家に相談して今後の方針を決めると簡単です。

では、相談も含めて次のステップにいきましょう。

②M&A/事業承継の仲介会社に相談する

資産と経営状況を整理できたら「M&A/事業承継の仲介会社に相談」していきます。もちろん、資産と経営状況が整理できていないときから相談しても問題ありません。

M&A仲介会社は、運送会社の価値から実際にM&Aをするかしないかも含めて、いろいろな選択肢を一緒に考えてくれるパートナーとなってくれます。

おさらいとして、後継者が頼りない場合に検討すべき方法は下記の2種類です。
 

  1. 従業員・役員に承継する親族外承継
  2. M&Aで承継先を探す

運営会社で事業承継したいけれど後継者が頼りなくて困っているときには、M&Aで承継先を探します。

なぜなら、後継者が育つ可能性が低いこと、今後も後継者を見つけられない可能性が高いことが考えられるからです。M&A仲介会社に希望を伝えれば、細かく買い手候補の報告を入れてくれます。

また、事業承継に関する細かい疑問や知らないことはM&A仲介会社に相談してみてください。「わからないことは相談相手にいつでも話せる」という状況は安心感があります。

M&A仲介会社に相談をしたら、いよいよ具体的な計画をまとめていく次のステップです。

③具体的な計画を5〜10年分まとめる

物流会社の事業継承でM&Aをするしないに関わらず「具体的な計画を5〜10年分」まとめてみてください

事業承継では以下のような計画がとても大切です。
 

  • 企業理念
  • 中長期経営計画
  • 後継者の承継時期
  • 承継の基本方針 

5〜10年分もなぜ必要なのかというと、いつ事業が別の経営者に承継されるのかなどを明確にしておくことで従業員の混乱を防げるからです。

もちろん、契約変更の手続きから名義変更、引き継ぎ期間なども決めておきます。理想どおりの事業承継はとても難しいので細かい計画が必要です。

どのようなタイミングでどのようにしたら安心して承継できるのか悩んだときには、M&A仲介会社に相談してみましょう。このような具体的な計画にも的確に答えてくれるので順序よく進められます。

【関連】中小企業庁が事業承継の5ヶ年計画とは?概要や目的から背景まで詳しく紹介!

④事業承継を計画に沿って実行する

事業承継の方法と今後の計画を決めたら、計画に沿って実行していきましょう。

中でも早めに始めておきたいのは以下のものです。
 

  • 事業承継方法の決定
  • 資産整理
  • 従業員・取引先への説明

物流会社の事業承継をM&Aでするなら、このタイミングで最終契約締結に向かいましょう。税務、法務、会計の知識はどのようなケースでも不可欠です。

積極的にM&A仲介会社などの専門家からアドバイスを受けて進めていきましょう。

⑤少なくとも1年は社内に残りケアする

事業承継を計画どおり進めたとしても「少なくとも1年は社内に残りケア」していきます。

承継したのにどうして残る必要があるのかというと、いきなり経営者としての仕事を後継者に任せるとトラブルにつながることがあるからです。M&Aで承継した場合でも、アフターケアは必要となります。

また、ここで注意しておきたいのが経営方針の変更です。新しくなった経営者のケアを怠り、経営方針が変わったら従業員はどうなるでしょうか。最悪の場合、従業員の大量離職につながってしまいます。

物流会社では細かい引き継ぎなどもあるので、取引先に影響が出てしまうこともあるでしょう。どこまで残るかは後継者もしくは企業にもよりますが、1年程度を目安として考えてみてください。

M&A仲介会社では、事業承継後のことも相談できますので、働きやすい環境作りにまで力を注いでみましょう。

7. 物流(運送)会社のM&A・事業承継における注意点

ここまで物流会社のM&A・事業承継の方法について解説してきました。

最後に物流会社のM&A・事業承継でもっとも注意すべき点についてお伝えします。それは「M&A・事業承継を考え始めたときがタイミング」ということです。

後継者探しや引き継ぎなどをトータルで考えてもかなり時間がかかります。今は経営者にも会社にも体力があるかもしれません。しかし、実情は時間と共に変わっていきます。

例えば、3年経つと状況も変わり、後継者候補すら見つからないこともあるでしょう。経営者に体力があっても、会社の経営が立て直しを必要とするなら、後継者探しどころではなくなってしまうのです。

M&A・事業承継は考え始めたときがタイミングです。タイミングを見失ってしまい失敗しないためにも、すぐに計画を考え始めましょう。

8. 物流(運送)会社のM&A・事業承継におすすめの相談先

物流(運送)会社のM&A・事業承継におすすめの相談先をご紹介します。

金融機関

近年、金融機関が企業の合併や買収(M&A)を支援する専門部署を設置する動きが活発になっています。特に大手の投資銀行やメガバンクは、資金調達の支援や取引戦略の立案など、M&Aを円滑に進めるための幅広いサービスを提供しています。

これらの支援を活用すれば、企業は事業承継や資金確保といった複雑な課題を効率的に解決でき、専門家の助言を得ながら取引の成功率を高めることが可能です。

ただし、大規模な案件が優先される傾向があるため、中小企業が十分な支援を受けられない場合もあります。そのため、企業規模や目的に合った支援機関を慎重に選ぶことが重要です。

また、こうしたサービスは高額になることもあるため、料金体系を事前に確認し、コストと効果を十分に検討する必要があります。

公的機関

最近では、事業承継やM&Aを支援するための公的サービスが大幅に充実しています。全国各地に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者不足に悩む中小企業を対象に、事業承継やM&Aに関する情報提供やアドバイスを無料で行っています。

さらに、企業同士のマッチングをサポートする仕組みも整備されており、地方企業でも専門的な支援を受けやすくなっています。また、個人事業主向けの支援も拡大されており、M&A仲介会社や専門家の紹介を受けることが可能です。

ただし、公的サービスは民間仲介会社に比べて対応のスピードや柔軟性に限界がある場合もあるため、利用を検討する際にはこれらの特性を十分に理解し、慎重に判断する必要があります。

これらの公的支援は、リスクを抑えながら事業承継やM&Aを進めるための安心できる選択肢といえるでしょう。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の買収や売却をスムーズに進めるための専門的なサポートを提供します。単なる売り手と買い手の仲介に留まらず、交渉の進行管理や企業価値の評価、契約書の作成など、幅広い業務を支援します。このため、M&Aの経験が少ない企業でも、安心して取引を進められる環境が整っています。

特に強みとなるのは、広範なネットワークを活用して最適な取引相手を迅速に見つけられる点です。このネットワークが、M&A成功の重要な要素となっています。また、初心者にも分かりやすい丁寧な説明で、取引に伴う不安を軽減する姿勢も高く評価されています。

ただし、仲介会社のサービスには着手金や中間報酬などの費用が発生することがあるため、事前に料金体系を確認することが重要です。費用を抑えたい場合は、成功報酬型のサービスを選ぶことで、より効果的かつコストに見合ったサポートを受けられます。

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9. 物流(運送)会社の事業承継まとめ

物流会社で後継者候補が頼りなく廃業を悩む前に、事業承継を検討してみてください。M&Aは活発に行われていますので、後継者がいないときでも問題ありません。

事業承継に詳しい専門家のアドバイスをもらってから決めても遅くはないのです。

まずは気軽に相談することが、今ある会社と従業員、取引先を守る1つの方法となります。時間が過ぎてしまう前に、前向きに検討していきましょう。

10. 運送・物流業界の成約事例一覧

11. 運送・物流業界のM&A案件一覧

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