2023年11月21日更新
M&Aの流れ・手順を徹底解説!初期の検討〜クロージング後のPMI【実務担当・経営者向け】
M&Aは事前に手順・流れを把握しておくと、契約書締結までスムーズに進めやすいです。本記事では、M&Aの流れ・手順を解説します。また、進め方や手続きの重要なワンポイントアドバイス、おすすめの書籍もまとめました。
目次
1. M&Aの全体的な流れ・手順
M&Aの基本的な流れ・手順(進め方)は、意思決定からM&A仲介会社との契約、交渉、経営者同士の面談など、さまざまなプロセスがあります。交渉で合意後、契約書を締結しクロージング(契約内容の履行)などの手続きをすませ、公表まで行うとM&Aは完了です。
M&Aの流れは、大きく4つの段階に分けられます。それぞれの段階で譲渡側・買収側がするべきことや成功するためのポイントなどを詳しく見ていきましょう。
- 検討・準備段階
- マッチング・交渉段階
- 最終契約段階
- 取引完了段階
2. M&Aの流れ・手順(検討・準備段階)
M&Aの流れ・手順(検討・準備段階)を解説します。
- 事前準備
- M&A仲介会社との秘密保持契約
- 自社の分析
- 業務委託契約
①事前準備
M&Aでは、将来の方向性や目標を決めることが手続きとして大切な一歩です。譲渡・買収の内容に関して真剣に考え、本当にM&Aの選択で間違いないのかを検討するのも重要な手続きといえます。その際には、専門家であるM&A仲介会社に相談するのが望ましいです。
M&Aが成立するかどうかや、譲渡側であればM&Aにおける譲渡価額の目安やメリット、買収側としてはどのような対象企業がいいのかなどが挙げられます。どのような流れや手続きでM&Aを進めていくのかを決め、整理していくのが事前準備です。
②M&A仲介会社との秘密保持契約
M&A仲介会社に具体的なアドバイスを受ける際に、決算書などの資料を持参する場合もあります。会社にとって重要な情報を明かすので、このときに必要な手続きがM&A仲介会社と秘密保持契約書を締結することです。
秘密保持契約を行うことで、会社の機密情報などが守られます。公表するまではM&Aの実行自体、周囲に知られない必要もあり、その意味でも秘密保持契約は必要です。
③自社の分析
譲渡側の次の手順(進め方)では、買収する側の企業に自社の情報を伝える資料作成のために自社の分析を行います。
M&A仲介会社との面談を基に提案資料の作成をしていくのですが、より具体的な内容にするために、決算書や企業概要書などを用意しましょう。この資料は買収する企業を探す際に活用され、M&Aの方向性や将来の目標などを明確にします。
④業務委託契約
M&Aの方向性や目標が決まったら、M&A仲介会社との業務委託契約書の締結手続きです。M&A仲介会社との業務委託契約には、以下の2タイプがあります。
- 仲介契約:M&A仲介会社は譲渡側・買収側の双方と契約し、両者の間を取り持つ(仲介する)立場で業務を行う
- アドバイザリー契約:M&A仲介会社が譲渡側・買収側のどちらかとのみ契約する
仲介契約は、一般的に合意形成がしやすく比較的、短期間で交渉がまとまりやすいとされていますが、その分、条件面の妥協を要求される傾向があります。アドバイザリー契約のM&A仲介会社は、顧客に最大限の利益が得られるよう業務を行うのが特徴です。
成約すれば希望内容に沿ったM&Aが実現しますが、条件面で妥協しない分、交渉には長期間を要することになります。場合によっては、条件が折り合えず破談もあり得るでしょう。どちらのタイプの契約にするかは、自社の状況を踏まえた判断が必要です。
3. M&Aの流れ・手順(マッチング・交渉段階)
M&Aの検討・準備段階を経て、マッチング・交渉段階に進みます。それぞれの手順を見ていきましょう。
- 買収側へのアプローチ(譲渡側の場合)
- 経営者同士の面談
- 条件交渉
- 基本条件の合意
- デューデリジェンス
①買収側へのアプローチ(譲渡側の場合)
M&Aにおける譲渡側の次の手順は、買収側へのアプローチです。M&A仲介会社が探してきた譲渡先候補から相手を選び、交渉の打診を行います。この手続きにおける細かい手順を以下で見てみましょう。
候補企業の絞り込み
M&A仲介会社が譲渡先候補企業をリストアップするので、そこから絞り込んでいきます。最初のリストはロングリストと呼ばれ、十数社~数十社に及ぶ譲渡先候補のリストです。ロングリストから、譲渡先候補を数社まで絞り込んだものをショートリストといいます。
この手順の中で譲渡先候補に提示するのが、「ノンネームシート」という匿名状態の企業概要書です。
秘密保持契約書の締結
意中の譲渡先候補が定まったら、M&A仲介会社を通してアプローチ(打診)し、譲渡・買収交渉の意思確認を行います。先方の同意確認が取れた場合には、秘密保持契約の締結が次の手続きです。秘密保持契約書の締結後、譲渡側は全面的に情報を開示し、M&A交渉が開始されます。
相手候補の選定・打診を支援する専門家
本記事では、M&Aのサポートを行う専門家の代表格であるM&A仲介会社と契約する前提で記事を進めていますが、他にもM&Aを支援する専門家はいますので、ここで紹介します。
- 士業事務所:税理士・公認会計士・弁護士・司法書士などの中にはM&A仲介業務を行う事務所もあります
- 経営コンサルタント:コンサルタント業務の一環としてM&A仲介業務を行う会社もあります
- 金融機関:昨今は多くの金融機関でM&A仲介部門を設けています
- 事業承継アドバイザー、事業承継プランナー:M&Aによる事業承継を目指す中小企業の相談に対応しています
バリュエーション(企業価値評価)
M&Aの成約額は、譲渡側と買収側の交渉によって決まります。譲渡側はできるだけ高く売りたいでしょうし、買収側は少しでも安く買いたいものです。譲渡側・買収側それぞれが、ただ希望額を言い合っても交渉はまとまりません。そこで、交渉の基準額が必要になります。
バリュエーション(企業価値評価)は、M&A交渉の基準額の目安とする目的で、譲渡側企業の金額価値を算定するものです。バリュエーションには、数多くの専門的な算定方法が確立されています。それら算定方法は3系統に大別され、その概要は以下のとおりです。
- コストアプローチ:譲渡企業の純資産額をベースに行うバリュエーション
- マーケットアプローチ:譲渡企業と類似する上場企業の株価などを参照して行うバリュエーション
- インカムアプローチ:譲渡企業の中期事業計画から将来の収益力を見込むバリュエーション
②経営者同士の面談
条件交渉の手続きの過程で必ず行われるのが、譲渡側・買収側それぞれの経営トップによる面談です。条件交渉自体はM&A仲介会社が代行しますので、トップ面談では条件交渉はしません。トップ面談では、主に以下のことを話し合い、同時に相手の人物像も見極めます。
- 経営理念
- 譲渡・買収を決断した経緯
- M&A後の方針
- 企業風土や会社の特徴
トップ面談の目的は、信頼関係を築き相互理解を深めることです。
③条件交渉
既述のとおり、M&A仲介会社と契約をしていれば、条件交渉はM&A仲介会社が代行しますので、当事者同士が直接行う必要はありません。条件交渉の手続きでは、金額交渉以外にも、経営者、役員、従業員などの処遇や最終契約までの手順などが話し合われます。
④基本条件の合意
条件が大筋で合意できた段階の手続きが、基本合意書の締結です。基本合意書は現時点での合意内容確認書であり、契約書には該当せず、一部を除いて法的拘束力を持ちません。基本合意書締結後、M&Aが破談になることもあります。
ただし、基本合意書に法的拘束力はなくとも、締結によって心理的拘束性は機能するといえるでしょう。
基本合意書の記載項目
基本合意書に記載される主要な項目は以下のとおりです。
- 契約条件:交渉で合意した内容を細かく正確に記載
- スケジュール:今後の手続きのスケジュール見込みを定める
- 有効期間:スケジュールに沿う形で基本合意書の有効期間を定める
- 費用分担:譲渡側・買収側で分担すべき費用が発生する場合、その分担内容を記す
- 準拠法:日本の法律に準拠する書類であることを表明する
- 管轄:万が一、裁判所で係争する場合に備えて管轄裁判所を定めておく
以下の記載項目は、その内容から例外的に法的拘束力を持たせます。
- 譲渡側のデューデリジェンスへの協力義務:譲渡側はデューデリジェンス(買収監査)に建設的に協力しなければならないことを定める
- 独占交渉権:一定期間(3カ月程度)、譲渡側は他の買収候補者との交渉を行えないことを定める
⑤デューデリジェンス
デューデリジェンス(買収監査)とは、買収側が譲渡側企業に対して、財務・税務・法務・労務・IT・事業などの分野ごとに、士業などの専門家を起用して行う精密な調査のことです。以下に、デューデリジェンスの目的、調査概要、成功のコツを記します。
目的
デューデリジェンスの目的は以下の3点です。
調査範囲
デューデリジェンスの主要な調査項目の各概要を掲示します。
- 財務:譲渡企業の決算状況に関する調査(決算書等の帳簿上で示された資産が実在しているか、帳簿上に載っていない負債がないか、粉飾はないかなどを調査する)
- 税務:譲渡企業の納税内容に関する調査
- 法務:譲渡企業が締結している各契約書の内容確認、法令順守の可否、訴訟リスクの有無などの調査
- 労務:譲渡企業における労務情報(各種規定など)の詳細、労務問題の有無(未払い賃金、不当解雇)などの調査
- IT:譲渡企業内のITシステムに関する調査
- 事業:譲渡企業の事業内容に関する調査(営業方針、在庫管理方法、集金方法などを調査する)
成功させるコツ
買収側としては、デューデリジェンスで何らかの問題点が露呈した場合、取り得る選択肢は以下のとおりです。
- 問題点が軽微と判断できる場合は、そのままM&Aを進める
- 譲渡側で解決可能な問題であればクロージングまでに解決することをM&Aの前提条件とする
- 問題点を金額換算して減額し、最終交渉で提示する
- M&Aスキームを変更する(株式譲渡を事業譲渡に変更し問題点を承継しないなど)
- 後日、問題点が原因の損害が発生した場合は、譲渡側が損害賠償する条件を要求する
- 万事に備えて表明保証保険に加入する
- 見過ごせない問題点と判断した場合はM&Aを破談とする
M&Aを失敗させないためには、デューデリジェンスの結果を踏まえて、以上いずれかの対応を慎重に選択する必要があります。
調査結果の活用法
デューデリジェンスで経営リスクなどの問題が見つからなかった場合、残り2つの目的を遂行します。1つは、最終交渉で提示する対価を決めるための最終的なバリュエーションを行うことです。そのためには、譲渡側企業の財務情報を徹底的に洗い出す必要があります。
もう1つは、PMI計画策定に必要な情報の収集です。PMIでは、以下の項目などを具体的に統合します。
- 管理システム
- 経理システム
- 業務システム
- ITシステム
- 組織の再編成と人員の再配置
- 就業規則などの社内規定
- 人事評価制度
- 社風
これらを統合するPMI計画を策定するためには、関連する譲渡側企業の情報を収集し、統合プランを考案しなければなりません。
課題点
デューデリジェンスは買収側が実施するものですが、受ける立場の譲渡側の視点で課題点を考えてみましょう。中小企業のほとんどはM&Aの経験を持っていません。したがって、デューデリジェンスを受けるのも初めてです。
デューデリジェンスでは、譲渡側に対して各種資料の作成・提出やヒアリング対応など、経営者以外の担当者にも重い負担がかかります。日常業務と並行してそれらを行うのは大変であり、場合によっては買収側が求める内容のものを用意できないかもしれません。
そうなるとM&Aの成約にも重大な影響を及ぼしてしまいます。デューデリジェンスで不首尾が生じないためには、M&Aを実施すると決めた段階で、デューデリジェンスで必要になる資料をM&A仲介会社に尋ね、早々に準備を進めておくのが得策です。
4. M&Aの流れ・手順(最終契約段階)
マッチング・交渉段階を経れば、最終契約段階です。最終契約段階では、基本合意の段階で合意した事項に関してデューデリジェンスの結果を反映させ、最終的な条件交渉、クロージングへ進めていきます。クロージングは法的にM&Aを有効にするための重要な手続きです。
- 最終的な条件交渉
- 売買成立・クロージング
①最終的な条件交渉
デューデリジェンスの結果も含め、M&Aの手続きを進めることに問題がなければ「最終契約書」の締結へと進みます。これまでの流れで両社ともに得られた情報を基に、M&Aを実行するか否かの最終決定です。
このときに取締役会や株主総会での承認が必要となる場合があるため、自社内での準備も行いましょう。なお、最終契約書は便宜上の呼称で、実際には以下の例のようにM&Aのスキーム(手法)名が用いられた契約書名になります。
最終契約書の記載項目
最終契約書に必ず記載される項目の概要は以下のとおりです。
- 定義:契約書の定義
- 取引対象物の特定と売買の合意:取引対象、合意内容(株式の数や対価など)、支払い方法など
- クロージングの前提条件:相手方が契約上の義務を充足していない場合、自身がクロージングを実施する義務を免れ、案件から手を引けることを明記するもの(前提条件がない場合は省略)
- 表明保証:売り手が買い手に対して偶発債務や簿外債務などが存在しないことを契約書上で表明し保証すること(譲渡側・買収側それぞれが契約内容に関連した事項を保証する)
- 誓約事項:譲渡企業は重要な経営判断や資産売却などをクロージングまでに行わないことの誓約
- 補償:表明保証違反やその他の義務違反で相手方に損害を与えた場合、具体的な内容を含めて損害賠償できることを定める
- 解除:一定の条件下になった場合には契約を解除できることを定める
- 秘密保持:契約に関する秘密保持の内容
- 準拠法:日本の法律に従うこと
- 管轄:裁判所で係争する場合に備えて管轄裁判所を定める
②売買成立・クロージング
最終契約書の締結手続きをもって、M&Aは成約しました。しかし、手続きはそれで終わりではありません。譲渡側・買収側ともに、最終契約書で定められた内容を履行する手続きが残っています。クロージングとは、契約内容履行のことです。
具体的には、譲渡側であれば株券の引き渡しや会社代表印の引き渡しなどの手続き、買収側であれば対価の支払いや登記内容の変更手続きなどがあります。クロージングまでの手順が全てすめばM&Aは完了です。
最終契約書締結からクロージングまで、一定の期間を空けるのが基本的な流れになります。ただし、契約書の締結とクロージングを同時に完了させるケースもあるため、クロージングの期間は譲渡側・買収側で十分に話し合って決める必要があるでしょう。
5. M&Aの流れ・手順(取引完了段階)
買収側にとって、M&Aはクロージングで終わりではありません。むしろ、M&Aの成否を決めるのは、クロージング後の手順である経営統合プロセスです。
- クロージング後に求められる手続き
- 経営統合(PMI)
- M&Aの公表
- 事業の展開
①クロージング後に求められる手続き
クロージング後に求められる手続きは、M&Aの手法によってもさまざまです。財務諸表を確定する手続きは、クロージング後でなければ行えません。事業譲渡の場合は、所有権・契約関係の移転手続きを開始します。
事業譲渡の手法では、契約関係を個別に行わなければなりません。売掛金、買掛金、動産、不動産、取引に関する契約、知的財産権・ライセンスなどの契約を順に進めていきます。
合併・会社分割の場合は、権利義務が包括的に承継されるため、個別に対応する必要はありません。ただし、登記と知的財産権における登録の手続きは行う必要があります。株式譲渡・株式移転・株式交換の場合は、包括承継のため、所有権や契約関係の手続きなどは発生しません。
②経営統合(PMI)
買収側にとって、M&Aは、経営統合(PMI)作業こそが、M&Aの本番といえるでしょう。PMIに関する検討は、M&Aの準備段階からスタートし、デューデリジェンス時に並行して計画策定を始めます。
クロージングまでに短期的見直しを遂行して中長期的な統合計画を策定し、経営統合へと進める手順です。一般的に、クロージング後100日程度での計画策定が行われるため、100日プランともいわれます。
③M&Aの公表
M&Aの流れ・手順(進め方)の最後は、社内外への情報開示です。中小企業では取締役や従業員、取引先、取引金融機関など、大企業ともなればマスコミなどにも公表するケースがあるでしょう。基本的な流れでは、最終契約書の締結など必要な手続きが全て終了してからです。
いつ、どのように行うかは、M&Aの関係者同士で話し合い、トラブルが発生しないよう慎重に対応しなければなりません。中小企業の場合、優秀な従業員が退職したり、M&A後に従業員同士の関係が悪化したりしないように、伝え方には十分な留意が必要です。
経営を継続していくためにも、新旧経営者がそろって取引先にあいさつ回りをするなど、協力し合いながら円滑に引き継ぎを進めることが重要になります。
④事業の展開
最後は、事業の展開です。社内にプロジェクトチームを作り、現状分析を基にビジョンや戦略、課題を設定し、3~5年程度の計画を策定します。
計画の実施段階では、進捗(しんちょく)管理と定期的なモニタリングが欠かせないでしょう。統合作業を軌道に乗せるためにも、最初の1年で既存事業とのシナジー効果が目に見える形で成果を達成することが求められます。
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6. M&Aの流れ・手順をサポートする専門家とは
ここでは、M&Aの流れ・手順をサポートするさまざまな専門家を紹介します。
- 事業承継アドバイザー・事業承継プランナー
- 公認会計士・税理士
- 弁護士
- 司法書士
- M&A仲介会社・アドバイザリー
①事業承継アドバイザー・事業承継プランナー
事業承継アドバイザー・事業承継プランナーは民間資格です。中小企業の事業承継に関して総合的にサポートを行います。M&Aによる事業承継を目指す中小企業の相談にも対応していますが、士業やM&A仲介会社などの方が専門性は高いです。
②公認会計士・税理士
公認会計士は財務の専門家、税理士は税務の専門家の国家資格です。財務と税務は密接に関係するため、両方の資格を持つ士業もいます。デューデリジェンスやバリュエーションで欠かせない存在です。また、昨今はM&A全般のサポートを実施する公認会計士・税理士も増えています。
③弁護士
弁護士は法律全般に関する専門家の国家資格です。M&Aでは、デューデリジェンス、契約書の作成・チェックで欠かせません。公認会計士・税理士と同様に、昨今はM&A全般のサポートを行う弁護士が増えてきました。
④司法書士
司法書士は、法律に関する書類の作成や登記などの法的手続きを代行できる国家資格です。M&Aでは、譲渡・譲受資産の名義変更や法務局への各種登記手続き、不動産の登記手続きなどで業務を依頼することになります。
⑤M&A仲介会社・アドバイザリー
M&A仲介会社・アドバイザリーは、M&A仲介を専業とする専門家です。士業のような国家資格はありませんが、民間機関によるM&Aの各種民間資格は多数あり、それらを有しているかどうかは1つのバロメーターになるでしょう。
いずれにしろ、M&Aを実施する場合にはM&A仲介会社・アドバイザリーに相談・依頼するのが一般的です。ただし、M&A仲介会社・アドバイザリーは数多くあり、それぞれが得意とする業種・エリア・会社規模が異なるので、自社に適したところを選ぶのがポイントになります。
7. M&Aの流れ・手順をスムーズに進めるポイント
この章では、M&Aの流れ・手順をスムーズに進めるポイントを見ていきましょう。
譲渡側のポイント
まずは、譲渡側のポイントです。
目的・戦略の策定
M&Aにおける目的・戦略が決まらなければ、重要な判断ができません。条件の譲歩も、容認するのが困難になります。M&Aフローが滞ったり、M&A先が有利となるように実施されたりする可能性もあるでしょう。
M&Aの目的・戦略の策定には、専門的な知識が欠かせません。M&A専門家のサポートを受けながら、M&A戦略を策定しましょう。
専門家選び
M&Aの専門家には、それぞれ得意分野が存在します。大企業のM&Aが得意な専門家、中小企業のM&Aを専門に扱う専門家、薬局業界など特定の事業分野に特化した専門家など、さまざまです。
自社が実施するM&Aに合わせた専門家に依頼することが、M&Aを成功させる確率を高めるカギといえます。
相手先の選定
包括承継を前提としたM&Aを実施する際は、譲渡後における従業員の待遇が考慮すべき点です。経営者の譲渡後における生活や新事業を考慮する場合は、譲渡価額も考慮すべき点になります。これらは、相手先によって大きく左右される要素なので、慎重に選定を行ってください。
条件の決定
譲渡側におけるM&Aの条件に多いのが、譲渡後における従業員の待遇と譲渡価額です。「これらの条件を満たす場合のみ譲渡したい」といった会社はよく見られます。
ただし、条件に固執するといつまでたっても譲渡できないことが多いです。自社のM&A戦略をベースに、許容できる条件と譲れない条件を前もって決定しておきましょう。
情報管理
M&Aを実施するという情報は、従業員や取引先などのステークホルダーへ多大な影響を与え、上場企業の場合は株主や株価にも影響があります。M&Aの情報公開を適切に行うには、情報管理が大切です。
M&Aの専門家とM&A先とは秘密保持契約を結び、情報が流出するのを防ぎましょう。社内では、経営陣と担当者のみで情報を共有してください。
買収側のポイント
次に、買収側のポイントを見ていきましょう。
専門家選び
買収側は希望する事業規模・業種、そしてその企業を買収したときの問題を見極めなければなりません。これらの判断ができるのは、M&A専門家です。
M&A専門家によって、得意分野や事業規模は異なるので、不得意分野のところに相談をするとM&Aの成功確率は下がります。M&A専門家選びは、とても重要です。
相手先の選定
M&A仲介会社などに相談し、M&A先の条件などを提示すると、候補先をいくつか紹介してくれます。最終的に候補先を決めるのは、買収側自身です。間違った判断をすると、M&Aの撤回となったり交渉期間が長引いたりすることもあります。
こうした事態を避けるためには、専門家から助言をもらい、M&A先を慎重に選定しましょう。
デューデリジェンスの徹底
特に包括承継を前提としたM&Aを実施するケースでは、相手が有する資産や従業員などを全て引き継ぎます。負債なども含まれるので注意が必要です。譲渡側に、申告されていない簿外債務などがあれば、予期しなかったトラブルが生じる可能性もあります。
M&Aの後に、買収側が経営難に陥るリスクも否定できません。これらは、デューデリジェンスの徹底により把握できるので、専門家に依頼してリスクを回避してください。
条件の決定
M&Aの交渉では、前もって条件の許容できる範囲を考慮しなければなりません。条件には、取引金額や従業員の待遇、買収後における経営者のロックアップ条項や固定資産の譲渡などもあります。買収側は、買収後の経営活動を考え、条件を決定しましょう。
念入りな統合プロセス
想定したシナジー効果は、統合プロセスがうまくいかなければ発揮されません。ハード面の統合はシステムの構築などで、半年くらいですみますが、従業員の考え方や社風統一などのソフト面は、時間がかかります。
M&Aの後にシナジー効果を早期に得るには、経営陣におけるリーダーシップのもと、迅速な統合プロセスの完了が欠かせません。
8. M&Aの流れ・手順に必要な書類一覧
一般的なM&Aの流れ・手順に必要な契約書や書類は、以下のとおりです。
- 秘密保持契約書
- アドバイザリー契約書
- ロングリスト(買い手候補先、売り手候補のリスト)
- ショートリスト(一定の条件で候補先を絞ったリスト)
- ノンネームシート(簡易的な企業情報が匿名で掲載されたもの)
- 企業概要書
- 基本合意書(売り手、買い手間で合意している条件を明記、独占交渉権の付与やその交渉期間なども記載)
- デューデリジェンスにおける書類(会社案内、会社沿革、役員経歴書、商業登記簿謄本、定款、株主名簿、従業員名簿など)
- 最終契約書
最終契約書の締結によって、M&Aに関する契約が完了します。その後、譲渡対価の支払い、株券や会社代表印の引き渡しなど全て終了した日がクロージング日です。クロージングの完了時点で、正式に売り手の経営権が買い手に移行し、M&Aの成約となります。
9. M&Aの流れ・手順に関する本・書籍
M&A・会社売却を成功させるには専門家に依頼して進めるだけでなく、経営者自身もM&Aの流れに関して基礎知識を身につけましょう。ここでは、M&Aの流れ・手順に関する本・書籍を紹介します。
『改訂5版 M&A実務のすべて 』
M&Aの流れ・手順に関する本・書籍1冊目は、『改訂5版 M&A実務のすべて 』(北地達明ら:編/日本実業出版社/2022年発行/3,740円(税込))です。
合併、事業譲渡、株式公開買付、株式交換など、それぞれのM&A手法を解説しています。企業価値評価やデューデリジェンスのM&Aプロセス、他にも連結会計や税制適格要件、組織再編税制など会計・税務までの取扱いまで網羅された内容です。
M&Aの実務に関して、進め方が理解できるでしょう。
『企業買収の実務プロセス 第3版』
M&Aの流れ・手順に関する本・書籍2冊目は、『企業買収の実務プロセス 第3版』(木俣貴光:著/中央経済社/2021年発行/4,400円(税込))です。
買い手企業の担当者がM&A実務を行ううえでのポイントを、時系列に解説しています。第3版は、2019(令和元)年会社法改正や税制改正なども反映済みです。
M&A実務に関連のある法律、会計、税務の制度改正などもフォローしています。M&Aを取り巻く状況の変化や裁判例など昨今の実務プロセスに関して、企業や事業の再構築に関する部分を中心に加筆・修正された1冊です。
『中小企業M&A実務必携 法務編 第2版』
M&Aの流れ・手順に関する本・書籍3冊目は、『中小企業M&A実務必携 法務編 第2版』(梅田亜由美:著/きんざい/2019年発行/3,850円(税込))です。
中小企業M&A実務で多く活用されている「株式譲渡」に特化し、法務に関する知識をわかりやすく要点をまとめて解説しています。
初心者にもわかりやすく論点解決形式の構成で、基本的な知識も多く解説された書籍です。2020(令和2)年4月1日施行の民法改正にも対応しており、実務を学べます。
『M&A実務ハンドブック 第8版』
M&Aの流れ・手順に関する本・書籍4冊目は、『M&A実務ハンドブック 第8版』(鈴木義行:編著/中央経済社/2019年発行/6,160円(税込))です。
中小企業の会計、税務、法務など、M&Aの基礎に関して整理された1冊です。企業評価の手法や経営戦略の視点など、総合的に解説しています。2019年における制度改正の情報もアップデートしているため、M&Aの実務書として学べるでしょう。
『M&A実務の基礎 第2版』
M&Aの流れ・手順に関する本・書籍5冊目は、『M&A実務の基礎 第2版』(柴田義人ら:編/商事法務/2018年発行/4,400円(税込))です。
M&A実務を全体的に網羅できるよう、典型的なM&Aの契約条項、金融商品取引法、独占禁止法、労働法、知的財産法など関係法令を解説しています。第2版は初版を大幅に見直し、組織再編行為や事業譲渡、一部出資、共同出資に関して詳しく紹介しているのが特徴です。
10. M&Aの流れ・手順に関する相談先
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11. M&Aの流れ・手順まとめ!
M&Aの基本的な流れや手順(進め方)の中には、いろいろな手続きがあります。手続きの中で一番重要といえるのが、情報管理の部分でしょう。M&Aを進めるうえで、これに失敗するとM&Aそのものが破談になりかねません。
ケースによっては手順が多少前後する可能性もありますが、基本的な流れは今回まとめた内容です。上記における一連の流れを参考にしながら、スムーズにM&Aを進められるよう準備しましょう。
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