M&Aによる投資方法と成功ポイントとは?投資ファンドによるM&Aも解説

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

昨今、M&Aを投資ととらえる考え方が日本企業の投資家にも広まってきています。これを理解するためには、直接投資と間接投資の違いやそれぞれのメリット・デメリット、企業買収と株価の関係、投資枠、スモールM&Aの実態などの把握が必要です。

目次

  1. M&Aと株式投資の違い
  2. M&Aによる投資方法
  3. M&Aによる投資で成功するためのポイント
  4. 投資した会社のM&Aをお考えの方
  5. M&Aによる企業買収と株価の関係
  6. 投資ファンドによるM&A
  7. 個人投資家による日本企業のM&A件数は増加中
  8. M&Aによる投資方法まとめ
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1. M&Aと株式投資の違い

一般的にM&Aとは、複数の企業が合併したり、企業買収を行ったりする経営統合などの意味で使われています。さまざまな企業買収の手法がありますが、M&Aが行われる最大の目的は「事業を拡大すること」です。

その中で、最近は「投資」としてのM&Aを行う投資家が増えてきています。M&Aと株式投資は、いずれも「投資をする」概念が根底にあります。

M&Aとは

M&Aとは「merger and acquisition」の略語で、日本語で合併と買収を意味する言葉です。複数の会社が1つになることや、ある会社が別の会社を買う行為をさします。広義にとらえる場合、企業の合併・買収だけでなく、提携までを含める場合もあります。

株式投資とは

株式投資とは現物取引のことで、一般的に東京証券取引所をはじめとする国内市場に上場している株式を投資家自身が持っているお金で売買することをさします。

投資は、大きく金融投資と事業投資に分けられます。金融投資は、時価の変動や配当の受け取りにより利益を得ることを目的に、債券や投資信託などを購入する行為です。この目的では、株式の購入も金融投資に含まれます。

M&Aも株式投資も株の取得から

M&Aでは株式を取得します。株式投資も、該当企業の株式を取得して行う投資手法です。投資家にとってみれば、M&A・株式投資の両者は最終的には自分の利益を得るために行っているとの考え方を持つので、どちらも直接投資の意味合いで考えられています。

ただし、実際は直接投資と間接投資の違いがあるため、M&Aによる投資を行う場合はどのような目的を持って投資するのか明確にしておくことが大切です。

M&Aと株式投資の具体的な違い

実際に企業買収を行っている投資家でさえも、本当の目的を十分に理解していないケースも多く、理解していたとしても目の前の煩雑な手続きに追われて目的を見失ってしまっていることが多くあります。

M&Aと株式投資が具体的にどのように違うかを正確に説明できる人はそれほど多くありません。ここでは、M&Aと株式投資の違いを詳しく解説します。

M&Aはビジネスへの関与度が大きい

M&Aと株式投資の最も大きな違いは、投資した企業に対する「ビジネスへの関与度」にあります。M&Aによる企業買収は、はじめに対象企業の株式を取得し、その後に具体的な経営関与を進めていく流れです。

企業の株式を一定数取得した後、企業の業績が上がれば株価も上昇するのが一般的であるため、保有する株式の価値も上昇します。

投資としてのM&A

保有する株式価値が上昇すれば、配当金額も連動して上昇します。配当を受け取ることは利益を得ることですから、投資としての意味合いは十分です。

ただ、それでは企業の業績を向上させるために主体的にビジネス関与をしていないため、M&Aとは呼べません。

M&Aは経営関与する

M&Aは企業買収をした後、その企業の経営戦略に積極的に関与します。企業の業績を自らの手で上げていくことが最大のポイントです。

結果としては株価を上昇させ、最終的に保有している株の時価総額や配当金などで利益を得ることになるので、ゴールは同じに見えますが、企業への経営関与の有無がM&Aと株式投資との大きな違いといえます。

株式投資はあくまでも資金提供

株式投資は、投資家が企業の株式を取得することからスタートします。株式の取得方法は上場企業であれば証券取引所での購入であり、未上場の場合はその企業の株主からの直接取得です。

その後、投資家は株主となり株主総会に参加し、経営に対しての意見を述べることは可能ですが、投資家の株式取得数がよほど多くない限り(例:企業の筆頭株主にでもならない限り)は、その企業の経営を動かすほどの権限は得られません。

株式投資は間接投資

株式投資は、直接自ら企業の経営に関わることがありません。株主には企業の経営を左右する権限があるように思われやすいですが、現状は一部の大株主のみがそのような経営権限を持っており、一般株主は現在の企業が行っている事業をただ見守って、業績が上がっていくことに期待を持ちます。これが、いわゆる間接投資です。

一般的な投資家はそれほど大きな投資枠を確保しているケースが少ないため、筆頭株主になることはありえません。

投資家はあくまでも経営に関与する直接投資ではなく、企業に対して株式購入による間接投資で資金提供を行い、その企業が生み出す利益や株価の上昇から配当を受け取るといった間接投資の意味合いが大きいです。

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2. M&Aによる投資方法

M&Aの手法は数多くあります。主な手法を挙げると、「業務資本提携」「吸収・合併」「買収」などです。国内企業では、これらのM&Aを行うために取る最も有名な手法として、直接投資である「株式取得」があります。

M&Aによる投資方法は、株式取得が一般的です。

株式取得

企業の株式を取得することでM&Aを行い、経営権を移行する手法です。株式取得は経営権の移行手続きが比較的簡単であることと、後継者がなく困っている企業の問題が解決できるなどのメリットがあります。

この株式取得は、数あるM&Aの手法の中では最もシンプルな手法です。株式取得によるM&Aのリスクとしては、簿外債務や保証債務などが買収後に発覚した場合に大きな損失が発生してしまうことが挙げられます。

M&Aを実行する前に事前調査(デューデリジェンス) をしっかりと行い、無理のない投資枠の設定をすることが重要です。

株式取得をさらに詳細に分類していくと、「株式譲渡」「第三者割当増資」「株式交換」に分けられます。

株式譲渡

株式譲渡とは、売却側企業の株主が株式の一部または全部を譲渡し、買い手である企業または投資家がその対価を支払うことで企業の経営権を移行する方法です。会社の株主は変更になりますが、企業本体や営業状態は以前のまま継続されます。

株式譲渡のメリットは、手続きが非常に簡易であることです。中小企業などのスモールM&Aでは非常に多く使われます。

株式譲渡は、企業の譲渡前の情報は基本的にすべて引き継がれます。株主の名前が変わること以外は、企業の名前や事業内容などが変更されることはほとんどありません。社外から見た場合は、どこが変わったのかはほとんどわからないのが特徴です。

株式譲渡

第三者割当増資

第三者割当増資とは、企業が新規株式を発行し、その新規発行分の株式を買収側の企業が買い取ります。買収側の企業はもともとの株主である必要はなく、仮に経営悪化で株価が低く通常の増資ができないときでも増資が行えるのが特徴です。

第三者割当増資のメリット

第三者割当増資のメリットは、企業の資金が増資されることで財務基盤強化につながることです。資金が増資されれば株価の上昇も期待できます。株式が売買される流れとしては株式譲渡と同じですが、第三者割当増資の場合は新規発行分のみを取得するため、既存の株主はそのまま経営に関わり、企業の株式を100%取得する手法ではありません。

第三者割当増資
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株式交換

株式交換とは、1999(平成11)年の商法改正で新たに導入された制度です。企業買収の際に、現金の代わりに企業が発行している株式を譲渡する手法になります。株式交換のメリットは、現金を支払うことなくM&Aを行える点です。

買収される側の企業の株主から株式を強制的に買い上げることが可能であるため、買収する企業を100%子会社化できます。

株式交換

株式交換のメリット

株式交換の主なメリットとして、現金を支払うことなくM&Aを行える点が挙げられます。買収される側の企業の株主から株式を強制的に買い上げられるため、買収する企業の100%子会社化も可能です。

その場合は吸収・合併などとは異なり、株式交換により子会社化されても法律上は別法人として扱われます。現在の企業名をそのまま継続できる点もメリットです。

株式交換のデメリット

株式交換の主なデメリットは、部分的な企業買収を行えないため、マイナス資産や簿外債務などもすべて引き受けなければならない点です。特に簿外債務は事前調査でも発見できない場合があり、株式交換後に発覚するケースもあります。

株式交換は手続きが非常に複雑です。株主総会で特別決議が必要であったり、株式交換に反対する株主の株式買取請求を受けたりするなどの手続きが求められます。

そのほかにも株式交換は節税のメリットがそれほどないこと、買収企業が株式を公開していない会社の場合は株式を現金化することが難しいことなど複数のデメリットがあります。

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事業譲渡・会社分割

事業譲渡と会社分割は、いずれも譲渡側の事業を譲受側に承継する手法です。ただし、それぞれの手法の特徴やメリット・デメリットなどに相違点があります。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社が営む事業の全部または一部を、他の会社に対して売却する行為です。

買収企業が不要な資産を抱え込む必要がないことなどがメリットとして挙げられる一方で、個別の資産の所有権や契約上の地位の移転手続きが求められるために多くのコストが発生することなどがデメリットです。

会社分割

会社分割とは、会社が展開する事業の一部またはすべての事業を他の企業に引き継ぐM&Aスキームです。吸収分割と新設分割の2種類のスキームに分けられます。

事業譲渡と比較して手続きがシンプルであることや、転籍させる従業員から個別に同意を得る必要がないことなどがメリットとして挙げられる一方で、システムの統合などで現場への負荷が高まり、経営統合がスムーズに進まない可能性があることなどがデメリットとして挙げられます。

3. M&Aによる投資で成功するためのポイント

M&Aによる投資を検討・実施をする場合に注意すべき点を考えましょう。ここでは、特にスモールM&Aのケースと、直接投資・間接投資のメリット・デメリットなどを考察します。

スモールM&Aの投資で成功するには

スモールM&Aとは、事業規模が比較的小さいM&Aのことです。スモールM&Aの定義はさまざまあるため一概にくくれませんが、おおむね年間売上高が1億円以内の日本企業であったり、投資枠の金額が数千万円以下・従業員が30名以下の日本企業であったりすることなどが挙げられます。

かつてM&Aといえば、大企業の吸収・合併や事業提携、赤字企業の経営再建などのために行われていることがほとんどです。

ところが、2012(平成24)年以降、団塊の世代が定年によって大量に現役から引退する事態の際に転機が訪れます。引退の流れは経営者も例外ではなく、経営者自身が引退した後の企業の後継者がいなくなる大きな問題が発生してきました、そこで、注目を浴びたのがスモールM&Aです。

スモールM&Aが投資家に注目される理由

最近はスモールM&Aが投資家から大きな注目の的です。企業買収のための取引金額が非常に小さくて済むスモールM&Aは、ローリスク・ハイリターンを狙える投資先として投資家の中で人気が上がってきています。

特別大きな投資枠を用意しなくても済むため、もしも投資に失敗しても投資家の財政全体が揺らぐリスクも少なくて済むのが特徴です。株式投資の世界もそうですが、一般的には業績の良い日本企業を投資先として選ぶ傾向があります。

業績が良ければ株価も安定して上がるため、株式を安く買って高く売る投資方法、いわゆる「順張り」と呼ばれる手法です。M&Aの投資でもこの順張りの手法が多く使われています。

しかし、スモールM&Aの場合は、企業価値が低い企業もM&Aの対象に加える「逆張り」の手法を取ります。

日本企業全体の70%が赤字企業といわれている中で、スモールM&Aはマーケットが大きいにもかかわらず、日本企業を狙う投資家の競合が少ないのが最大のメリットです。

赤字企業も対象に入れる

スモールM&Aの対象として、赤字の日本企業を入れることにはリスクも伴います。ただし、スモールM&Aの場合は全体的な取引金額と投資枠が少なくて済むため、仮にスモールM&Aに失敗した場合でもダメージは最小限に食い止めることが可能です。

反対にスモールM&Aに成功した場合は、非常に大きなリターンが期待できます。

事業の成長性を見抜く

スモールM&Aへの投資の最大のポイントは、事業の成長性を見抜くことです。スモールM&Aを行う際は、最低限の経営に関する基礎知識が求められます。

ただし、企業の実務の細かいところまで関与する必要はなく、専門家にお願いするのが時間の短縮です。それでも、スモールM&Aの将来の見通しや、投資枠を自分自身の目で計算して見通す程度のスキルは身に付けておくことが大切です。

スモールM&Aは、企業にとって後継者不在問題や事業規模が小さいために継続が難しくなってしまっている企業存続の危機を救う素晴らしい手法です。

一方、投資家にとってはローリスク・ハイリターンでの投資が期待できるため、中小企業の多い日本ではスモールM&Aがますます注目を浴びる投資手法となる可能性があります。

直接投資・間接投資のメリット・デメリットを把握

M&Aの手法には、「直接投資」と「間接投資」があります。直接投資は、株式を取得しながら企業の経営の実質的な部分に関与し、業績を上げることに貢献していく投資手法です。

一方、間接投資は、投資枠を用意して資本のみで支援することで、業績の上がった企業から金利や配当収入を受け取ることなどを目的としています。直接投資・間接投資には、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるのか解説します。

直接投資のメリット・デメリット

直接投資のメリットは、事業を成功させるための時間の短縮にあります。仮にゼロから新規事業を立ち上げるためには、マーケティング調査から始まり、商品の企画と開発を行い、従業員を雇用して教育するなど膨大な時間と費用が必要です。

M&Aを行って既存の企業を買収する場合には多額の資金が必要ですが、買収先の企業の人材やノウハウなどをすべて活用できるため、大きく時間を短縮できます。

一方、直接投資のデメリットは、企業文化の違いが解消されず、両企業のシナジー効果が生まれない可能性があることです。2つの別の企業が1つになって仕事をするには大きなリスクがあります。

お互いをうまく認められない状況に陥ってしまうと、社内に派閥が生まれます。派閥同士が対立すると、せっかくの企業融合が意味をなさなくなる可能性が高いでしょう。そのことで、優秀な人材が外部に流出してしまう可能性すらあります。

間接投資のメリット・デメリット

間接投資は、主に金利や株式配当の収入などを目的とした投資手法です。企業の経営には関与せず、投資枠を準備して金銭的な投資を行い、事業が成功した場合の利益を得ることが目的です。直接投資のような経営に関するメリット・デメリットは生まれません。

間接投資のメリットは、事業が成功した場合に大きな利益を得ることと、自分自身が経営に介在しないため、経営の実務に関する知識がさほどなくても投資が可能である点です。

事業そのものは投資先の企業が行っているため、経営状態を見極められれば非常に少ない労力で投資を行えます。

一方、間接投資のデメリットは、企業が事業に失敗した場合に多額の損失が発生することです。経営に関与しないことは、表面上には見えないマイナス資産や、簿外債務などを見極めることが難しくなります。

事業が失敗して企業価値が下がるのを予測しにくい点は大きなデメリットです。

投資枠の上限は無理のない範囲で設定

M&Aの投資枠とは、M&Aの投資を行うための予算枠を意味します。個人投資家が株式投資や証券投資などの投資をする際は、「家計全体の中でどれほどの金額を投資に回していいか」投資枠を設けますが、同じ考え方です。

最近は経営計画を発表する際に、M&Aの投資枠も合わせて発表する企業が増えています。投資家などに向けてM&Aを受け入れる用意があることをアピールし、積極的な投資を集めるのが主な目的です。

他の投資枠と同じく、M&A投資枠の上限は借入資金などを利用せず、自分自身で調達できる資金の範囲の中で設定するのが望ましいことです。

もしもM&A投資に失敗してしまった場合でも、全体の財政基盤が揺らぐことのないよう慎重な投資枠の設定が求められます。

日本企業の投資枠の割合は業態によって差があるものの、一般的に資産全体の10%程度が一般的といわれています。特に大企業における投資枠は年々増えつつあり、製造業などの伸び率が高いです。

ただし、投資枠を設けて実際に投資を行った場合、その年の決算は減益となってしまう可能性があります。

投資家が見れば企業の投資による減益はマイナスの判断材料になることはそれほどありません。しかし、一般的に見ると企業の業績が悪化してしまったととらえられてしまうことはあります。

4. 投資した会社のM&Aをお考えの方

ここまでM&Aの投資を解説しましたが、直接投資・間接投資を行った会社のM&Aをお考えの方は中小企業のM&Aに携わっているM&A総合研究所にご相談ください。

M&Aを知り尽くしたアドバイザーが懇切丁寧にフルサポートし、ご要望に沿うように努めます。一般に半年から1年かかるとされるM&Aを、最短3カ月でスピード成約している機動力も特徴です。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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5. M&Aによる企業買収と株価の関係

M&Aによる企業買収は、その後の株価に大きく影響します。企業買収によって企業の価値が上がれば株価は上昇しますが、企業価値が下がれば株価は下落してしまうのが一般的です。

企業価値は2つの企業でのシナジー効果が重要視されますが、それぞれの企業が持っている競争優位性を生かすことが重要です。

事業領域とシナジー効果

お互いに企業価値を高めていくためには、企業買収の際にそれぞれの企業が強みをきちんと生かせる事業領域を選ぶ必要があります。お互いに良いシナジー効果を生み出せるようなM&Aを行うには、事前に念入りの調査を行うことが重要です。

企業買収のシナジー効果

企業買収によってシナジー効果が生まれる主なケースは、自分と同業の企業のM&Aをすることです。2つの企業の類似部門を整理することで、一定のコスト削減が期待できます。

系列の部門を持った会社のM&Aをするケースは、例えば、メーカーがディーラーや販売会社のM&Aをすることです。製造側には新たな販売経路を活用でき、販売側では新規商品を取り扱うことが可能になるなどお互いにメリットがあり、win-winのシナジー効果が生まれる可能性があります。

TOBの場合

TOBとはtake-over bidの略称で、株式公開買付けのことです。投資家が手に入れたい銘柄の株式を取得するために、買付の金額・数・時期などの内容を公開します。

これにより証券取引所を通すことなく、不特定多数の株主から、目的の株式を買い付ける手法です。もちろん証券取引所で「TOB銘柄」として公開買付けを募集するケースもあります。

投資家のTOBのメリット

TOBは買収企業の株式を公に買付けするのが目的のため、買付け希望株価は市場価格に利益(プレミアム)を乗せて募集するケースが多いです。

投資家にとっては、保有している株式を何のリスクも負うことなく、現在の保有価格より高く売れるため、証券取引所でTOB銘柄を狙っている投資家は数多くいます。

友好的TOBと敵対的TOB

TOBには、「友好的TOB」と「敵対的TOB」の2種類があります。買収する企業と買収される企業の両者の間で事前に買収に関する合意が得られているケースが「友好的TOB」です。

一方、強制的に企業買収をすることを目的としてTOBを仕掛けることを「敵対的TOB」といいます。

友好的TOBの場合

友好的TOBの場合は、もともと2社間で企業買収の合意がされているため、基本的には取引は成立しやすいです。

友好的TOBの買付価格は、マーケットで出回っている株価と同程度の金額で取引されるのが一般的です。投資家にとっては株価の上昇が期待できないため、それほどメリットは感じられません。

敵対的TOBの場合

敵対的TOBは、買収者が対象企業の経営陣の同意を得ずに買収を仕掛け、企業買収を行う目的のためにTOBを行使します。大量の株式を不特定多数の株主より買い付けることで経営権を奪うための手法です。

敵対的TOBを行う場合は、不特定多数の株主が株式を売却しても良いと思わせるような株価の設定が必要です。

現在の株式市場で取引されている株価にプレミアムと呼ばれる利益を乗せ、投資家がすぐに手放したくなるよう仕掛けます。その結果、友好的TOBと比較すると株式の価格は高くなるのが一般的です。

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株式移転などの場合

株式移転とは、企業が自社の株式を新しく設立した親会社に取得させることをさします。日本企業では、ホールディングスカンパニーなどの持株会社が代表例です。株式移転による完全親会社の設立は、1999(平成11)年に解禁されました。

株式移転を行う場合、株主総会による承認が必要です。複数の日本企業による株式移転を行う際、株式移転によって企業価値が上がると投資家が判断した場合は株価が上昇する可能性があります。

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株価が上昇するメリット

株価が上昇することのメリットは主に3点あります。「企業イメージが良くなる」「資金調達が容易になる」「企業買収の防止がしやすくなる」の3点です。

企業のイメージが上がることによって株価が上昇し、企業の時価総額が上がります。

信用が上がるため、新株の発行が容易となって資金調達がしやすくなることと、自社の株式を長期保有してくれる株主が増えて、長期的にも企業の安定につながっていきます。

企業が安定して成長することは、直接投資・間接投資のどちらにとってもメリットです。

企業買収における取引が発生した際は、非常に優位になります。株価が上がることで非常に多くの買収資金が必要になるため、敵対的買収をされるリスクを下げます。

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6. 投資ファンドによるM&A

M&Aでの投資を語る場合、投資ファンドの存在も無視できません。投資ファンドの概要と、M&Aへの関わり方を簡単に掲示します。

投資ファンドとは

投資家や金融機関などから資金を集め、その資金を投資・運用して利益を得ることを目的にする行為および、それを行う組織や会社のことを、投資ファンドといいます。M&Aを実施する投資ファンドにはいくつかの種類があり、具体的には以下の3つです。

  • バイアウトファンド
  • 再生ファンド
  • ベンチャーキャピタル

バイアウトファンド

ファンド側は、ターゲット企業の株式に関して、経営に参画できる規模の数量を購入します。経営に携わり業績を上げ株式価値も上がった段階になると購入した株式を売却(バイアウト)し、購入時の株価との差額で利益を得るのが、バイアウトファンドです。

株式の入手の仕方や経営への関わり方、M&A後の対応や株式の売却方法などのやり方によって、バイアウトファンドはさらに細分化されます。

再生ファンド

基本的にファンド側が行うことは、バイアウトファンドと同等です。特殊な違いは、ターゲットを赤字状態などの経営難の企業をあえて選択することです。

ファンド側が経営に深く入り込み、経営改善を行って業績を回復させ、企業価値(株式価値)がプラスに転じた時点で取得していた株式を売却して利益を得ます。

ベンチャーキャピタル

ベンチャー企業に出資する組織や会社が、ベンチャーキャピタルです。大きな成長が期待できる起業したばかりのベンチャー企業をターゲットとし、その企業がIPOやM&A(株式譲渡)を実施する際に取得していた株式を売却して利益を得ます。

上述した2つのケースとの違いは、経営に深く関わらない点です。ベンチャー企業の事業計画自体を評価しての出資であるため、間接投資に近いイメージで資金援助をして見守る姿勢で臨みます。

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投資ファンドによるM&A戦略

主な戦略は、以下のとおりです。

  • ロールアップ戦略
  • MBO

ロールアップ戦略とは、その名の通り囲い込みを意味します。同じ業種の会社を多く買収することで、市場のシェアを拡大しバリューアップさせていく戦略です。

次に、MBOとはManagement Buy-Outの略で、経営陣(あるいは従業員)が自社の株式や一部の事業部門を買収して独立することをさします。例えば、オーナーではない経営者が事業の継続を前提にオーナーや親会社から株式を買い取り、経営権を取得することなどです。

投資ファンドは、MBOを通じて経営陣をサポートし、買収したM&A対象会社の価値向上を目指します。その後、株式を再上場させるか、株式を第三者に譲渡することでリターンを得る仕組みです。

7. 個人投資家による日本企業のM&A件数は増加中

日本企業のM&Aにおける契約件数は、年間でどの程度の取引が成立しているか正確な数字が把握できていません。

情報が公表される上場企業のものだけであれば、2019(令和元)年は過去最高の4,088件のM&Aが成立したことがわかっています。

ただし、証券取引所の例外規定である「軽微基準」に該当すれば取引したM&Aは公表する必要がないため、実際の取引件数はさらに多いです。

そのうえ、完全非公表である非上場の日本企業や個人投資家が行っているスモールM&Aが加わるので、1年間に相当の数のM&Aが成立しています。

予想される動向としては、個人投資家が行っている日本企業の買収案件数は「日本企業を購入する」との考え方が一般的になってきた現在、以前に比べて増加の一途をたどっていると考えられます。

8. M&Aによる投資方法まとめ

M&Aというと、企業価値が低くなってしまった会社が大企業に買収されてしまったり、経営に失敗してしまった赤字企業を救済したりするために行われるイメージが強いかもしれません。

しかし、実際は事業をさらに発展させていくための戦略の1つであったり、後継者がおらず事業が継続できない会社を救済したりするなど、企業の得意分野を企業買収によって伸ばし、これまで自社になかった強みを生み出せるようになる手法です。

実際にM&Aを行う際は、株式取得の手法や直接投資・間接投資のどちらの手法を取るかなど、検討すべき点は数多くあります。

企業買収の際は、その会社の経営状態・取り巻く環境などを事前に調査することも重要です。

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