事業譲渡の手続き・流れやスケジュールを徹底解説!期間はどれぐらい?

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

事業譲渡とは、事業の一部または全部を引き継ぐ手法です。事業譲渡の手続きは手間がかかるので、スケジュールも長めになりがちです。本記事では事業譲渡の手続きの流れ・スケジュールや期間について詳しく解説します。また、事業譲渡の特徴やメリット・デメリットもご紹介します。

目次

  1. 事業譲渡とは
  2. 経営者が考える事業譲渡の目的
  3. 事業譲渡の手続き
  4. 事業譲渡完了までの大まかな流れ
  5. 事業譲渡完了までの詳細なスケジュール
  6. 事業譲渡が完了するまでの期間
  7. 事業譲渡にかかる消費税等の税金
  8. 事業譲渡のメリット・デメリット
  9. 事業譲渡を選ぶべきケース
  10. 事業譲渡の注意点
  11. 事業譲渡をスムーズに進めるなら
  12. まとめ
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1. 事業譲渡とは

事業譲渡とは

事業譲渡とは、売り手企業の事業の一部または全てを、買い手企業に譲渡するM&A手法のことです。売り手企業と買い手企業は交渉手続きによって、人材、店舗、工場、権利義務など、何を事業譲渡の対象にするか決定します。

売り手の目的は経営の合理化や経営再建、事業承継など、買い手の目的は事業規模拡大や新規事業の獲得、人材や技術の取得などさまざまです。

事業譲渡は原則株主総会の特別決議が会社法で定められていたり、各種契約や許認可をやり直す必要があったりするなど、手続きが煩雑です。また、税金面やコスト面でも他のM&A手法に比べて不利な面があり、大企業で事業譲渡を利用することはあまりありません。

しかし規模の小さい中小企業の場合はメリットが多くデメリットが少なくなるため、主に小規模事業者でよく利用されます。

本記事では事業譲渡の手続きの流れやスケジュール、期間などについて詳しく解説します。

事業譲渡と会社分割の違い

事業譲渡と間違われやすいのが、会社分割です。会社分割とは、株式会社や合同会社が事業に必要な権利・義務を他の会社に引き継いでもらうことを指します。

一見事業譲渡と似たもののようにに思えますが、会社分割ではすでに存在する会社を複数に分けるという手続きです。そのため会社分割が行われた場合、事業に関する資産や権利などを全て移転する必要があります。

一方事業譲渡は、売り手側の持つ人材や拠点、設備などの資産を個別に譲渡する手続きです。譲渡する範囲を売り手と買い手との間で話し合って決めることが出来るので、事業の一部を残しておきたい場合に有効だと言えるでしょう。

また事業譲渡には株主総会の特別決議が必須ではないので、株主の同意がなかなか得られない場合も手続きを進められます。

ちなみに会社分割には、既存の会社に権利などを引き継ぐ「吸収分割」、新たに会社を設立し権利などを引き継ぐ「新設分割」の2種類があります。

事業譲渡と会社分割、どちらを選ぶべきかは会社の状況や規模によって変わってきますので、一度M&A仲介会社などの専門家に相談した方が良いでしょう。

【関連】会社分割と事業譲渡の違いやメリット・デメリットを比較解説!

2. 経営者が考える事業譲渡の目的

経営者が考える事業譲渡の目的

さまざまなM&A手法がある中で事業譲渡を利用する目的は、経営者や会社の状況によって様々です。ここからは売り手側の目的と買い手側の目的をそれぞれご紹介していきます。

売り手側の目的

売り手側が事業譲渡する目的としては、経営資源の集中やグループ企業の再編、経営再建や事業承継などがあります。ノンコア事業を事業譲渡することでコア事業に経営資源を集中させることができます。

また、子会社の事業を整理する目的で事業譲渡が使われることも少なくありません。事業譲渡で得た譲渡益を使って、経営再建を目指すことも可能です。

他にも、事業承継目的で不要な事業を売却し、残った事業で生計を立てていくという方法もあります。

買い手側の目的

買い手側の目的としては、事業規模の拡大や新規事業の獲得、人材や技術の取得などがあります。同業種の事業を譲り受けることで事業規模を拡大し、スケールメリットを得たり上場を目指したりすることができます。

また、新規事業を譲り受けることで、ゼロから新規事業を始めるよりも時間を短縮することができるため、採用のコストや事業の開始にかかる資金も節約できる場合があります。

他に、事業譲渡によって欲しい人材や技術だけを選んで手に入れることも可能です。特に新しく事業を始めたい買い手にとっては、メリットが大きいでしょう。

【関連】事業売却とは?会社売却との違いやメリット・デメリットを解説!

3. 事業譲渡の手続き

事業譲渡の手続き

事業譲渡の手続きは非常に手間がかかるため、譲渡会社も譲受会社も、他のM&A手法の手続きに比べて期間が長くかかってしまうことが多いです。

特に譲受会社は手続きの負担が大きくなりがちなので注意が必要です。ここからは、必要な手続きについて大まかに説明していくので事業譲渡を考えている方はぜひ参考にしてください。

譲渡会社に必要な手続き

事業譲渡における譲渡会社の手続きには多数の承認が必要となるため、時間がかかることが多いです。

具体的な手続きの詳細は後述しますが、事業譲渡をする際は、株主総会を開催して承認を得る必要があります。債務も譲渡する場合は債権者に個別で承諾を得る必要もあります。

譲渡する事業の規模が大きいほど、手続きの負担も大きくなるため従業員を多数抱えている会社であれば別の手法も検討すべきでしょう。

譲受会社に必要な手続き

事業譲渡における譲受会社の手続きは、譲渡会社以上に負担が大きくなる場合があります。

従業員の引継ぎや許認可の取得、契約のし直しなど、手続きに時間がかかるケースもあるので、その点も手続きの流れに組み込んでスケジュールを組み立てる必要があります。

契約手続き期間だけでなく効力発生日以降も、円滑に事業が始められるようになるまで期間が必要な場合があります。譲受会社は効力発生日以降のマネジメントも重要です。

【関連】事業譲渡・事業売却の戦略策定方法!目的や注意点も解説!事例あり

個人事業主が事業譲渡を行う場合の手続き

法人登記をしていない個人事業主が事業譲渡を行う場合、通常の会社とは事業譲渡にかかる手続きが大きく異なるので注意が必要です。

事業の内容にもよりますが、基本的に個人事業主が事業を譲渡するとき、譲渡側は税務署に廃業届を提出し事業の廃止を行うことになります。

また個人事業主の事業譲渡では雇用関係が引き継がれないので、従業員がいる場合には新しい雇用契約書を作成しなければいけません。

一方譲受側が個人事業主の場合、新たに開業手続きを行うことになります。屋号または商号の引継ぎも必要ですので、個人で事業を譲り受ける場合は早めに動き出しましょう。

個人事業主の事業譲渡については、以下の記事でより詳しく解説しているのでぜひチェックしてください。

【関連】個人事業主の事業譲渡の手続き方法・注意点まとめ!税金や契約書の書き方も解説!

また、個人事業主のM&Aや事業譲渡については、規模が小さいため全てのM&A仲介会社やアドバイザリーが対応してくれるという訳ではありません。

専門家に相談する際には、小規模案件にも対応しているか事前に確認することが必要でしょう。M&A総合研究所であれば、スモールM&Aにも対応しているのでまずは相談してください。

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4. 事業譲渡完了までの大まかな流れ

事業譲渡完了までの大まかな流れ

まずは事業譲渡手続き期間の大まかな流れをご紹介します。

譲渡会社は事業譲渡することを決めたら、まず自社の分析や今後のプランなどを決めることになります。準備が取締役会で承認が得られれば、譲受会社を選定し、交渉を始めましょう。

交渉がまとまったら基本合意契約を締結し、譲受会社はデューデリジェンス(企業調査)を開始します。デューデリジェンスで問題がなければ取締役会での決議を経て事業譲渡契約の締結が行われることとなります。

その後株主総会の特別決議で承認を得て効力発生日を迎えれば、事業譲渡契約の手続きの流れは完了です。効力発生日以降は事業譲渡契約に基づいて手続きを進めていきます。

以下に効力発生日までの事業譲渡手続き期間の流れを表した図を掲載するので、一度チェックしてみてください。

事業譲渡完了までの大まかな流れ①

5. 事業譲渡完了までの詳細なスケジュール

事業譲渡完了までの詳細なスケジュール

事業譲渡手続きのおおまかな流れはフローチャートで上記しましたが、ここからは事業譲渡の効力発生日までの詳細なスケジュールについて解説します。

  1. 事業譲渡の準備開始
  2. 取締役会での決議
  3. 譲受先の選定と接触
  4. 事業譲渡に関する契約の締結
  5. 譲受先によるデューデリジェンス
  6. 事業譲渡契約書の締結
  7. 各所への届け出
  8. 株主への通知・公告
  9. 株主総会での特別決議
  10. 財産などの名義変更や許認可手続き
  11. 事業譲渡の効力発生
これらの項目について解説します。

①事業譲渡の準備開始

譲渡企業は事業譲渡の手続きに入るための準備を開始します。自社の現状や強み、市場価値を分析し、それを踏まえて事業のどの部分をどのくらいの価額で売るべきか、効力発生日までの手続きの流れなどの譲渡計画を立てます。

②取締役会での決議

事業譲渡を行う当事会社は、取締役会がある場合は承認を得なければならないと会社法で定められています。取締役会での決議は、過半数以上の承認が必要です。

③譲受先の選定と接触

譲渡会社は、あらかじめ譲受会社が決まっている場合でなければ、譲受先の選定から始めます。譲受会社の選定は、全く当てがないのであれば、金融機関やM&A仲介会社などの専門機関から紹介してもらうのが一般的です。

譲受先が決まったら、経営者同士面談をしたりM&Aの専門家を仲介して交渉したりと、条件交渉の手続きを進めます。交渉の際は金額だけでなく、経営者の理念や相性、事業譲渡後もパートナーとなり得るかなど、さまざまな視点から交渉に臨みます。

④事業譲渡に関する契約の締結

譲渡会社と譲受会社の交渉手続きが進んで合意が得られたら、基本合意契約を締結します。基本合意書を作成する前に、譲受会社は譲渡会社に意向表明書を提出する場合もあります。

基本合意書

基本合意書には事業譲渡の条件やデューデリジェンス いついて、独占交渉権に関してや今後の手続きスケジュールについてなどさまざまな事項が記載されます。

事業譲渡契約書が最終的な契約書で、基本合意書は中間の契約書という位置付けです。事業譲渡の場合は、事業譲渡契約書も基本合意書も会社法で作成が定められているわけではありません。しかし法的拘束力のある事項を盛り込むことで、トラブルを防ぐことができます。

また、基本合意書に記載する内容も会社法で定められているわけではないので、事業譲渡の案件によって記載事項は変わります。

意向表明書

譲渡後のトラブルを防ぐため、譲受会社は譲渡会社に、事業を買い取る意向を書面で表明するケースが多くなっています。意向表明書には、希望条件や手続きの進め方などを記載します。

意向表明書はあくまで提案書なので、会社法で提出が定められているわけではなく、手続きとして必要はありません。しかし意向表明書の提出が、事業譲渡契約手続き開始の表明にもなるため実施するのがおすすめです。

⑤譲受先によるデューデリジェンス

基本合意契約が締結されたら、譲受会社は譲渡会社のデューデリジェンス(企業調査)を行います。デューデリジェンスはM&Aの専門家と協力して、さまざまな分野の監査を行います。

デューデリジェンスの結果によって、事業譲渡価額を修正したり、リスクを把握したりしながら事業譲渡契約書に盛り込みます。

譲受会社はデューデリジェンスの結果を基に取締役会で承認を得ます。事業譲渡契約書の修正内容に両社が合意すれば、事業譲渡契約書は締結されます。

⑥事業譲渡契約書の締結

事業譲渡契約書で契約を締結することで、両社の最終的な合意が得られたことになります。事業譲渡契約書には一般的に以下のような事項を記載します。

事業譲渡契約書の記載内容は会社法で定められているわけではありませんが、以下の項目から必要に応じて記載することで法的拘束力を持たせます。
 

事業譲渡契約書の記載事項 内容
目的・譲渡日 譲渡する事業の部分について・効力発生日の日付
譲渡財産について 譲渡する財産の概要
譲渡価額・支払い方法 譲渡対価の具体的価額・支払い方法
引渡時期 譲渡財産の引渡時期
善管注意義務 管理者の注意義務に違反した場合の対応等
守秘義務 業務上の秘密を保持し開示しない契約
従業員の取扱い 従業員の引継ぎ時期や待遇等
事情変更 特別な事情があった場合の事業譲渡契約書内容の変更
承認 株主総会での承認
瑕疵担保責任 譲渡財産に瑕疵があった場合の責任について
競業避止義務 事業譲渡後の競業避止義務について
公租公課等の負担 税金や保険料の負担者について
協議事項 事業譲渡契約書に規定していない事項は協議する旨

⑦各所への届け出

事業譲渡を行う企業は会社法によって、公正取引委員会へ届け出が必要になったり、臨時報告書の提出が必要になったりする場合があります。

公正取引委員会への届け出

譲受会社は会社法で定められた一定の条件を超えている場合、公正取引委員会への届け出が必要です。
国内売上高合計額が200億円を超えていて

  1. 国内売上高が30億円を超える会社の全ての事業を譲受する場合
  2. 譲受する一部事業の国内売上高が30億円を超える場合
  3. 譲受する事業の固定資産による国内売上高が30億円を超える場合
これらの要件に該当する場合は、公正取引委員会への届け出が必要です。

臨時報告書の提出

有価証券報告書の提出義務がある会社は、一定の要件に該当する場合は内閣総理大臣に臨時報告書を提出することが会社法で定められています。

  1. 事業譲渡または譲受によって、資産額が最近事業年度の末日現在の純資産額よりも30%以上増減する場合
  2. 事業譲渡または譲受によって、売上高が最近事業年度の実績に対して10%増減する場合
これらの要件に該当する場合は届け出が必要です。

⑧株主への通知・公告

事業譲渡契約は、株主の承認が得られなければ効力は発生しません。事業譲渡の当事会社は、効力発生日の20日前までに、株主に対して事業譲渡を行うことや株主総会を開催することを、官報公告や電子公告で周知します。

また、反対株主には株式の買取請求権があることも周知します。株主が少ない場合は個別通知だけで済ませることもあります。逆に大企業の場合は、公告と個別通知の両方を行う場合もあります。

⑨株主総会での特別決議

事業譲渡を行う当事会社は、効力発生日前日までに株主総会の特別決議で承認を得ることが会社法で定められています。議決権の過半数以上を持つ株主が出席し、2/3以上の賛成が得られれば事業譲渡が承認されます。

ただし会社法では、簡易事業譲渡や略式事業譲渡とみなされれば、株主総会での特別決議が必要ない場合もあるので、一度専門家に相談した方が良いでしょう。

簡易事業譲渡

会社法では、譲渡資産の帳簿価額が譲渡会社の総資産の20%を超えない場合は、簡易事業譲渡に当たるとされています。事業譲渡によって株主の利益に損害を与えることはないとみなされるので、株主総会での特別決議は必要ありません。

また、譲受会社の純資産の20%を超えない場合も、会社法では株主総会での特別決議は必要ないとされています。

略式事業譲渡

契約相手が特別支配会社である場合、会社法では略式事業譲渡に当たります。株主総会を開催しても間違いなく承認されることから、株主総会での特別決議は必要ありません。

特別支配会社の定義は、議決権のある株式を9/10以上保有している会社と会社法で決められています。

反対株主の株式買取請求

株主総会の特別決議は多数決で決められるので、株主の利益保護のため、反対株主には株式の買取請求権が与えられます。

事業譲渡の当事会社は反対株主に対して、株式の買取請求権があることを周知し、反対株主はあらかじめ反対の意思を示したうえで、株主総会で反対票を投じます。その後効力発生日前日までの期間に買取請求権を行使できると会社法で定められています。

⑩財産などの名義変更や許認可手続き

譲受会社は名義変更手続きや許認可の手続きを行わなくてはいけません。事業譲渡前に確認しておかないと、事業譲渡は完了したのに事業が開始できないということにもなります。

財産などの名義変更手続き

事業譲渡では、譲受会社へと譲受された財産で譲渡会社の名義になっているものは、譲受会社へ名義変更をしなければなりません。

許認可手続き

事業譲渡では許認可が引き継がれないので、譲受会社が許認可を取得していない場合は、管轄の監督官庁で許認可手続きをする必要があります。許認可手続きは業種によって時間がかかるものや、取得に条件があるものもあるので注意が必要です。

取得に時間がかかることがあらかじめわかる場合は、契約手続き期間の間に申請手続きを進めておきます。

⑪事業譲渡の効力発生

事業譲渡の効力発生日を迎えて契約手続きの流れは完了しますが、効力発生日以降も事業の引き継ぎ作業に時間を要します。特に従業員の引き継ぎも伴う場合は、効力発生日以降のマネジメントが重要です。

6. 事業譲渡が完了するまでの期間

事業譲渡が完了するまでの期間

事業譲渡が完了するまでの手続き期間は、譲渡先の選定や会社の規模、譲渡する事業内容にもよりますが、早くても3ヶ月、長ければ6ヶ月から12ヶ月の期間を要します。

譲受会社の選定期間や両社の交渉期間が長引くほど負担が大きくなり、成功率も下がっていきます。信頼できるM&Aの専門家に依頼できるかどうかも重要なポイントです。

以下に効力発生日までの一般的なスケジュールと期間をご紹介します。

  譲渡会社 譲受会社
6月 ・M&A仲介会社と契約
・譲渡資産の精査、スケジューリング
 
7月 ・譲受会社の選定・交渉 ・M&A仲介会社との打ち合わせ
・譲渡会社との交渉
8月 ・基本合意契約書の確認
・基本合意契約
・従業員、取引先への説明など
・基本合意契約書の確認
・基本合意契約
・譲渡会社のデューデリジェンス
9月 ・事業譲渡契約書の内容検討
・事業譲渡契約締結
・株主への通知・公告
・事業譲渡契約書の内容検討
・事業譲渡契約締結
・許認可の取得準備等
・株主への通知・公告
10月 ・株主総会開催
・引渡準備
・譲渡資産引渡
・株主総会開催
・譲渡対価の決済

7. 事業譲渡にかかる消費税等の税金

事業譲渡/事業売却には大きな税金がかかります。

おおよその税金負担は、以下の通りです。

  • 個人が株式譲渡を行う場合…譲渡益に対して20.315%
  • 法人が株式譲渡を行う場合…譲渡益に対して約30%

譲渡益は、譲り渡す資産と負債の差額です。譲渡益が1億円の場合、個人では約2,000万円、法人では約3,000万円もの税金を支払わなければいけません。

また個人の場合も法人の場合もこれに加え、売却代金から不動産などの資産を引いた額に対し8%の消費税がかかります。例えば課税対象の資産が1億円の場合、消費税の支払い額は800万円です。

「事業を売って得た利益はすべて会社に入る」と考えるのではなく、事前に税金がどれくらいかかるのか計算しておくべきでしょう。事業譲渡の場合、税に関する特別な制度がなく節税は非常に難しいです。

しかし税金がかかるのは純利益に対してですので、費用として会社内で不足している物資や機材を買うことで純利益を減らし、節税を行うことが出来ます。

ただし利益を減らそうと会計を不正に行ったり、必要以上に物資を買い込むとペナルティを受けるかもしれません。脱税や所得隠しなどを行った場合、信用を失うだけでなく加算税や延滞税など追加の税金が発生する可能性もあります。

課税額や節税について考えたい場合、公認会計士や税理士などの専門家に早い段階で相談しておくことが大切です。

全国対応のM&A総合研究所では、会社の拠点に関わらず公認会計士や税理士などの専門家に直接相談できます。相談は無料となっているので、事業譲渡を考えている方はぜひチェックしてください。

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8. 事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡はさまざまな目的で使われますが、手続きが複雑なためメリット・デメリットがわかりにくい面もあります。ここからは事業譲渡のメリット・デメリットについて、売り手側と買い手側に分けて解説します。

売り手側

  • 譲渡資産を選択できる
  • 現金が手に入る
  • 譲渡益に税金がかかる
  • 債務が残る
まずはこれら売り手側のメリット・デメリットについて解説します。

譲渡資産を選択できる

事業譲渡の大きなメリットとして、譲渡する事業資産を選択できる点があります。事業譲渡することで事業のスリム化、効率化をすることができます。負担の大きい事業を売却することで、経営に余裕を持たせることも可能です。

現金が手に入る

もうひとつのメリットとして、事業譲渡では、株式ではなく現金を手にすることができるので、株式の現金化リスクを抱えることがありません。手に入れた現金で債務を返済したりコア事業に使ったり、個人事業の場合はそのまま生活費に使うことができます。

譲渡益に税金がかかる

事業譲渡のデメリットは、譲渡益に税金がかかる点です。譲渡益にかかる税金は法人税なので、実効税率が約30%としてもかなりの支払額になります。他のメリット・デメリットも考慮しながら、法人税を支払ってでも事業譲渡を選択するかどうか、考える必要があります。

 

債務が残る

事業譲渡は譲渡資産を選択できるところがメリットですが、デメリットになる場合もあります。譲受会社が債務を引き継がないことになった場合、譲渡会社には債務が残ります。

もし譲受会社が債務を引き継いでくれることになったとしても、債権者へ通知し説明しなければならないため、手間やコストはどうしても増えてしまいます。

買い手側

  • 簿外債務リスクを回避できる
  • 節税ができる
  • 手続きが煩雑
  • 消費税がかかる
続いてこれら買い手のメリット・デメリットについて解説します。

簿外債務リスクを回避できる

事業譲渡では譲受する財産を選択できるので、買い手側は簿外債務を引き継いでしまうリスクを回避できます。包括承継した場合は強制的にある程度のリスクも引き受けることになります。

瑕疵担保責任の契約を交わしていたり、しっかりとデューデリジェンスを行っていたりしても、完全にリスクを回避することはできません。

事業譲渡によってリスクを減らせることは大きなメリットとなります。

節税ができる

譲渡会社の事業資産を時価で買い取る際は、現在の事業価値に加えて将来の価値(一般的には3年分~5年分)を加えて評価します。すると簿価と差額が生じます。

この差額をのれんと言い、損金算入する必要があります。こののれんを5年に渡って償却することで、節税することができます。のれんによる節税効果を目的にM&Aを行う企業もあるくらい大きなメリットがあります。

事業譲渡にかかるのれんについて、詳しく知りたい方は以下の記事もチェックしてみてください。

【関連】M&Aにおける「のれん代」をわかりやすく解説!償却期間や会計処理はどうなるの?

手続きが煩雑

事業譲渡では許認可や従業員との雇用契約などは引き継げないので、必要な手続きが多くなります。引き継ぐ事業規模によっては大きな負担になるため、大企業では事業譲渡はあまり使われません。

思わぬ足止めにならないように、許認可の取得や従業員との雇用契約は計画的に行う必要があります。

消費税がかかる

事業譲渡は売買取引なので、譲受会社が買い取った財産には消費税がかかります。事業譲渡は他のM&A手法に比べて税負担が大きくなりがちなので、引き継ぐ財産が多いほどデメリットが大きくなっていきます。

  売り手 買い手
メリット ・譲渡資産を選択できる
・現金が手に入る
・簿外債務リスクを回避できる
・節税ができる
デメリット ・譲渡益に税金がかかる
・債務が残る
・手続きが煩雑
・消費税がかかる

9. 事業譲渡を選ぶべきケース

事業譲渡を選ぶべきケース

手続き方法はスキームによって特徴やメリット・デメリットが違うため、一概にどれが良いとは言えません。どのような目的で行うのか、どのメリットを優先し、どのデメリットを極力減らしたいかなど、状況に応じて選択する必要があります。

事業譲渡、株式譲渡、会社分割の目的や特徴、メリット・デメリットを比較しながら、事業譲渡を選んだ方が良い状況について解説します。

目的・特徴の比較

  事業譲渡 株式譲渡 会社分割
目的 ・経営資源の集中、組織再編
・経営再建、事業承継
・事業規模の拡大、新規事業の獲得
・人材や技術の取得
・協力関係の強化
・事業承継
・経営権の獲得
・経営再建、組織再編
・株主関係解消
・事業承継
・人材、技術の取得
特徴 ・譲渡する事業を個別に選択できる ・中小企業で多く採用 ・事業を包括で引き継ぐ

株式譲渡は、買い手企業が売り手企業の株式を取得する方法です。

前の見出しでも少し触れましたが、会社分割は事業を分割して買い手企業に引き継ぐ手法です。会社分割には、既存の買い手企業に引き継ぐ吸収分割と、新たに会社を設立して事業を引き継ぐ新設分割があります。

メリット・デメリット比較

  メリット デメリット
事業譲渡 ・譲渡事業の選択ができる
・簿外債務を回避できる
・手続きが多い
・税負担が大きい
株式譲渡 ・手続きが容易
・譲渡後も会社が存続する
・簿外債務リスクがある
・株式の買い集めに苦労する場合がある
会社分割 ・買収資金が不要
・事業譲渡よりも手続きが容易
・簿外債務リスクがある
・税務面が煩雑

株式譲渡は手続きが簡便なため、中小企業で最も多く採用されている手続き方法です。事業譲渡と会社分割は事業を切り分けるという面では似ていますが、事業譲渡は個別に引き継ぐことができます。一方会社分割は包括的に事業を引き継ぎます。

これらの特徴やメリット・デメリットから、売り手側は譲渡後も独立性を保ったまま事業を継続したい場合に事業譲渡を用いるとメリットが得られます。また、買い手側は簿外債務・偶発債務など、リスクを極力無くした取引をしたい場合には事業譲渡が合っています。

事業譲渡は規模の小さい事業の譲渡や、アフィリエイトサイト、WEBサービスの売買など、個人事業の売買でよく採用されます。

【関連】事業売却・会社売却の相場は?金額の決め方と高く売る方法を解説【事例あり】

10. 事業譲渡の注意点

事業譲渡の注意点

事業譲渡契約書の中で特に注意しなければならないのが、競業避止義務と守秘義務です。

競業避止義務とは、譲渡会社は事業を譲渡した後に同じ事業を行わないという契約のことです。競業避止義務は事業譲渡手続き完了後の経営に大きく影響するので、慎重に検討する必要があります。

他にも注意点として、交渉に向かう姿勢も重要です。譲渡会社は、なるべく高く事業を売却したい、交渉を成立させたいという意思が働くので、悪い部分や都合の悪い部分を小さく見せようとしてしまう場合があります。

しかしそのような行為は結果的に不利益になり、交渉が途中で頓挫するきっかけにもなります。

また、売り手側も買い手側も売買金額にこだわりすぎて交渉が長引き、結果的に取引が頓挫してしまった事例もあります。

事業譲渡後のマネジメントも非常に大事です。M&Aが失敗に終わる原因の多くは、事業を引き継いだ後にうまく経営できなかったり、従業員の不満をコントロールできなかったりしたことにあります。

事業譲渡後どうするかについて、専門家にも協力してもらいながら当事者間でしっかりと計画を立てることが重要です。

債権者保護についても注意が必要です。債権者保護を考慮せずに事業譲渡を進めると、トラブルになる場合があります。以下で債権者保護の注意点について解説します。

事業譲渡における債権者保護

事業譲渡では、債権者保護については会社法で定められていません。債権者保護が必要となるのは、譲受会社に債務も引き継ぐ場合です。この場合は債権者保護の観点から、個々の債権者から承諾を得る必要があります。

しかし債権者保護手続きが必要ないからといって、債権者保護をしなくても良いということではありません。

例えば事業譲渡価額が不当に安かった場合や、特定の債権者に返済する目的で事業譲渡を行った場合は、債権者保護の観点から、事業譲渡契約を取り消させることができます。

また、破産宣告を受ける前の譲渡会社が事業譲渡を行い、それによって債権者保護がなされなかった場合は、事業譲渡の効力を否認することができます。

譲受会社は経営状態の良くない会社から事業を引き継ぐ場合、債権者保護の点からも確認する必要があります。

【関連】事業譲渡・事業売却の際の社員・従業員の待遇まとめ!退職金や給与はどうなる?

11. 事業譲渡をスムーズに進めるなら

事業譲渡をスムーズに進めるなら

事業譲渡は手続きが煩雑なので、手続きに時間がかかってしまうこともあります。また、財産を個別に選別するので、交渉が進みにくくなる場面もあります。事業譲渡をスムーズに進めるためには、M&Aの専門家の協力が必要です。

事業譲渡を始めM&Aを行うには、法律の知識や税金の知識、会計の知識など幅広い知識が必要です。また、高い実務能力と、経営者とも対等に交渉ができるコミュニケーション能力も求められます。

M&AアドバイザーはM&Aに関する全ての知識に精通していることが基本ですが、それに加えて専門性を持っていると、大きな強みとなります。

また、M&Aアドバイザーは、他の専門家や企業とのネットワークを持っているかどうかも重要です。

特に重要なことは、誠実さです。M&Aアドバイザーは会社の内情に深く関わることになるため、担当企業との信頼関係が欠かせません。

M&A総合研究所は上記のポイントを重視し、誠実な対応を心掛けています。在籍するM&Aコンサルタントは、会計士の資格を持った経験豊富な人材が揃っています。

着手金、中間報酬は無料で、成功報酬は業界最安値水準のシンプルな料金設定になっています。相談無料なので、まずはお気軽にご相談ください。

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12. まとめ

まとめ

事業譲渡の手続きの流れ・スケジュールについてご紹介してきました。ここまでの内容を簡単にまとめます。

事業譲渡とは、事業の一部または全部を譲渡するM&A手法のことです。

事業譲渡することによって、売り手は経営資源をコア事業に集中させたり、組織再編や経営再建、事業承継に利用したりします。買い手はスケールメリットを得たり、新規事業を始めたりすることができます。

事業譲渡の手続きの流れ・スケジュールは、おおまかには

  1. 譲渡先の選定・交渉
  2. 基本合意契約の締結
  3. デューデリジェンス
  4. 事業譲渡契約の締結
  5. 株主総会の特別決議
  6. 事業譲渡の効力発生日
このような手続きの流れで進んでいきます。

手続きの流れ・スケジュールは、3ヶ月~12ヶ月ほどの間で進みます。スケジュールは会社の規模や譲渡する事業の規模などによっても変わります。

事業譲渡による売り手のメリットには
  • 譲渡資産を選択できる
  • 現金が手に入る
デメリットは
  • 譲渡益に税金がかかる
  • 債務が残る
などがあります。また、買い手のメリットは
  • 簿外債務リスクを回避できる
  • 節税ができる
デメリットは
  • 手続きが煩雑
  • 消費税がかかる
などがあります。

事業譲渡の際は、守秘義務や競業避止義務、債権者保護に注意する必要があります。競業避止義務は、譲渡会社の事業に影響するので、よく検討する必要があります。

債権者保護については、株主を保護する手続きはあっても債権者保護手続きについては会社法で規定されていないことから見逃しがちです。債権者保護の観点から問題がないか、注意しなければなりません。

事業譲渡の流れをスムーズに進め、事業譲渡完了後もトラブルなく済ませるには、M&A専門家の協力が欠かせません。事業譲渡の際には、ぜひ私たちM&A総合研究所にご相談ください。

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