会社売却・企業売却の方法とは?手続きの流れ、M&A後の社員の処遇を徹底解説【最新事例あり】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

会社売却・企業売却を考えている方に向けて、会社を売るための詳しい方法を紹介します。会社売却の方法はもちろん、企業売却の種類や、成約までの流れ、用意するべき資料などを取り上げました。売却額が気になる方向けに、企業評価・高く売るための方法にも触れています。

目次

  1. 会社売却・企業売却とは?
  2. 会社売却・企業売却の方法・種類を解説!
  3. 会社売却・企業売却の方法・流れを解説!
  4. 会社売却・企業売却に必要な資料
  5. 会社売却・企業売却の価格算定方法
  6. 会社売却・企業売却で課される税金
  7. 会社売却・企業売却のメリットは?
  8. 会社売却・企業売却のデメリットは?
  9. 会社売却・企業売却後の経営者・社員・会社の処遇
  10. 会社売却・企業売却で買い手が付きやすい会社のポイントは?
  11. 高い価格で会社売却・企業売却を行う方法!
  12. 会社売却・企業売却の成功事例5選【2021年最新】
  13. 会社売却・企業売却の方法まとめ
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1. 会社売却・企業売却とは?

まず、冒頭では、会社売却・企業売却の概要を述べます。

会社売却・企業売却の意味

会社売却・企業売却とは、端的には自分がオーナー経営者である会社の経営権を売り、事業・資産・権利義務・許認可・組織・人材など会社の全てを買収側に譲り渡すことです。これを狭義の会社売却・企業売却とするならば、広義の会社売却・企業売却もあります。

それは、会社を丸ごと売るのではなく、会社組織は手元に残して一部の事業や資産などを売却することです。売却側の意思や買収側の目的などにより、会社売却・企業売却の内容は当事者間で臨機応変に変わります。

会社売却・企業売却と事業承継・M&Aの違いは?

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、直訳では「合併と買収」ですが、意味合いとしてはもっと広く、複数企業間における買収を伴う組織再編行為の総称です。つまり、ひとことでM&Aといっても、実際には10種以上にも及ぶ具体的なスキーム(手法)があります。

そのスキームの中でも、結果的に会社売却・企業売却の代表的な手段となるのが、株式譲渡事業譲渡・合併です。それぞれの具体的な説明は後述します。いずれにしろ、M&Aは会社売却・企業売却の手段ということです。

事業承継とは、現経営者から後継者に会社の経営権を譲り渡すことを意味します。ただし、譲渡といっても、現経営者の親族が後継者となる場合、会社の経営権の象徴である株式は、相続や贈与によって受け継がれるため、会社売却・企業売却には該当しません。

社内の役員や社員、あるいは第三者などが後継者となる事業承継では、株式は売買によって引き継がれるので、このとき、会社売却・企業売却によって事業承継が成立するのです。会社売却・企業売却と事業承継、M&Aには、このような相関関係があります。

会社売却・企業売却の注意点は?

会社売却・企業売却を行った場合、経営者は売却した会社で数年間、働かなければならなかったり、1~2年ほど顧問役として会社と関わることになったりすることが少なくありません。

これらを「キーマン条項」や「ロックアップ」と呼び、会社売却・企業売却の交渉では必ず注視される条件です。会社のキーマンである経営者が抜けることで、売却後に会社運営が滞ることを防ぐのが目的となっています。

この条件は、交渉によって拘束期間を短くすることや拘束そのものをなくすことも可能です。しかしその場合は、売却額が通常よりも減らされるかもしれません。交渉次第では、売却額を減らさず拘束期間を少なくもできますが、難易度は高いものがあります。

会社全部を売却せず一部の事業・資産を売却する事業譲渡を行った場合は、会社法の「競業避止義務」という定めにより、売却した事業と同じ事業には20年間、関われません(ただし、同一区市町村とそれに隣接する区市町村に限る)。

いずれにしても、会社売却・企業売却後の活動に制限が加えられることには注意が必要です。支障なく会社売却・企業売却を進めるためには、M&Aの専門家である仲介会社などにサポートを依頼するのが得策となります。

【関連】会社売却とは?手続きの流れやメリットデメリットなど徹底解説!

会社売却・企業売却のご相談はM&A総合研究所にお任せ!

昨今、M&Aが盛況となったことにより、M&A仲介会社も急増しており、どこにサポートを依頼していいか迷ってしまうかもしれません。そこで、会社売却・企業売却を安心して任せられる専門家としておすすめしたいのが、M&A総合研究所です。

全国の中小企業の会社売却・企業売却に数多く携わっているM&A総合研究所では、会社売却・企業売却に精通し実績・経験豊富なM&Aアドバイザーが案件ごとに専任となり、相談時から成約までフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談をお受けしておりますので、会社売却・企業売却をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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2. 会社売却・企業売却の方法・種類を解説!

会社売却・企業売却を行う場合、以下4つの手段・ケースがあります。

  1. 株式譲渡
  2. 事業譲渡
  3. 合併
  4. 役員・従業員などによる事業承継(MBO・EBO)

それぞれの概要、メリット・デメリット(売り手側のメリット・デメリット)を掲示します。

①株式譲渡

株式譲渡とは、売却側企業の株式を買収側に売ることで、売却側企業の経営権を買収側が取得するM&Aスキームです。特に中小企業の場合、会社代表者がオーナー経営者として株式全てを所有していることが多く、中小企業のM&Aでは株式譲渡が最も多用されています。

会社を丸ごと譲渡する株式譲渡が、一般的な会社売却・企業売却のイメージに最も合致しているといえるでしょう。

株式譲渡のメリット

株式譲渡には、以下のようなメリットがあります。

  • 事業、雇用、取引先との契約が引き継がれる。
  • M&Aスキームの中で最も手続きが簡便。
  • 株式売却益を得られる。
  • 企業の資産価値は時価評価のため、のれんを含めた取引額が上乗せされる。
  • 会社の債務は買収側に引き継がれるため代表者の個人保証は解消される。
  • 後継者問題の解決により廃業を免れる。
  • 対外的には株主が代わるだけであり、事業の継続に支障が生じない。

株式譲渡のデメリット

残念ながら、株式譲渡では以下のような点がデメリットとされています。

  • 経営者が第三者に代わる。
  • 従業員の労働環境を変えてしまう可能性がある。
  • 会社を丸ごと売却するため、特定の事業を残せない。

②事業譲渡

会社の中の事業・資産などを選別して売買するM&Aスキームが事業譲渡です。会社組織自体は手元に残し、事業全てを売っても構いません。たとえば、会社売却・企業売却はしたいが、税金対策などで会社組織は残しておきたいなどのケースで選ばれるM&Aスキームです。

それだけでなく、多角化した経営体制を改め、主力事業に経営資源を集中させる「事業の選択と集中」を目的とする場合も、事業譲渡が行われます。

事業譲渡のメリット

事業譲渡の主要なメリットは以下のようなものです。

  • 売りたくない事業は残し、赤字部門など不要な事業を売却できる(買い手の同意は必要)。
  • 会社は残るので、引退せず事業を継続するのに適している。
  • 仮に会社に負債がある場合、株式譲渡の実現は難しくなるが、事業譲渡には支障が出ない。

事業譲渡のデメリット

売り手にとって、以下の点などが事業譲渡のデメリットと考えられます。

  • 売却する事業に関係する債権者、従業員、取引先などと個別の同意が必要。
  • 上記の同意を得ても、さらに個別で契約のし直しが必要となり手続きが煩雑で時間もかかる。
  • 売却主体は会社であるため、経営者個人は売却益を得られない。
  • 競業避止義務がある。

③合併

合併とは、複数の企業が1つに統合されるM&Aスキームのことです。統合の際に法人格が残る会社を存続会社、解散し法人格がなくなる会社を消滅会社といいます。合併には2種類あり、1つは吸収合併です。既存の会社間で行う合併をさします。

もう1つが新設合併です。合併のために新たに会社を設立し、その新設会社が存続会社となります。存続会社が消滅会社の事業・資産・権利義務・人材など全てを承継するのは、どちらの合併でも変わりありません。

合併を会社売却・企業売却の観点でとらえると、消滅会社が売却側の立場になります。合併の特徴として、買収側(存続会社)は、買収対価を現金の代わりに自社株式にできる点が、株式譲渡や事業譲渡との違いです。

合併のメリット

主な合併のメリットとされている内容は以下のとおりです。

  • 全ての権利や義務を引き継ぐため、契約ごとの手続きは不要。
  • 組織が1つに統合されるため、シナジー効果を得られやすい。
  • 合併することそのもので企業価値が高められる。

合併のデメリット

合併のデメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 合併は会社法の規定に従わなければならないため、株主総会の議決、株主買取請求、債権者保護手続きなどの各種手続きが多数、生じる。
  • 対価に現金を得られないケースがあり得る。
  • 対価を現金で受け取った場合、合併による企業価値の高まりが対価に反映されにくい。
  • 株式が対価の場合、存続会社が非上場企業だと株式の現金化が難しい。
  • 会社の法人格が消えてしまう。

④役員・従業員などによる事業承継(MBO・EBO)

親族に事業承継のための後継者がいない場合、社内の役員・従業員が後継者となって事業承継が行われることも多くあります。社内事業承継では、後継者は現代表者の親族ではないため、会社の株式の相続はできません。

したがって、会社の経営権を取得するには、現代表者から株式を買い取ることになります。このときの、役員、または従業員が経営権取得のために自社株式を買い取る行為を、それぞれMBO(Management Buyout)、EBO(Employee Buyout)というのです。

なお、複数の役員と従業員が共同して自社株買い取りを行うケースもあります。その場合の呼称は、MEBO(Management and Employee Buyout)です。

役員・従業員などによる事業承継(MBO・EBO)のメリット

役員・従業員による社内事業承継のメリットは、主に以下のような点です。

  • 経営陣や社員たちが事業を引き継ぐため、交渉がスムーズ。
  • MEBOでは社員が譲渡に関わるため、社員のやる気を高められる。
  • 上場企業の場合は上場廃止となるため、上場維持のコストを減らせる。

役員・従業員などによる事業承継(MBO・EBO)のデメリット

役員・従業員による社内事業承継では、以下のデメリットがあります。

  • 株式取得の資金を用立てないと実行できない。
  • 同じ経営陣が会社の指揮を執るため、悪習慣を引き継いでしまう可能性がある。
  • 役員や従業員に譲渡するため、高額な譲渡益を得られづらい。

【関連】事業譲渡と合併の違いやメリット・デメリットを解説!
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会社売却・企業売却で悩むならM&A総合研究所にまず相談!

会社売却・企業売却の方法は種類が豊富でそれぞれの方法によってメリット・デメリットも異なっています。このため、自分だけでは売却を行うのには非常にハードルが高く、何から手を付けていいかわからないことがほとんどです。

そのようなお悩みを持っているのであれば、会社売却・企業売却を行う前に、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、会社売却・企業売却に精通する実績・経験豊かなアドバイザーが、相談時からクロージングまで一括サポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ)。随時、無料相談をお受けしておりますので、会社売却・企業売却をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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3. 会社売却・企業売却の方法・流れを解説!

会社を売る方法に見当をつけたら、会社売却・企業売却を実行に移します。ここでは、株式譲渡で会社売却・企業売却する前提で手順をまとめました。

M&A仲介会社と契約する

手順の1つ目は、M&Aの仲介会社との契約です。会社を売る場合、自分たちだけで買い手を見つけることは難しいとされています。会社売却・企業売却に適した仲介会社を探して、M&Aの仲介を依頼するのです。

このほかにも金融機関や、税理士・会計士事務所などに仲介を依頼する方法もありますが、企業価値の評価方法が違っていたり、買い手の候補が限定されたりと、満足な結果を得られない可能性があります。

貴重な売却の機会を失わないためには、M&A仲介会社の利用が適しているでしょう。

M&A仲介会社と契約するまでの方法・流れ

M&A仲介会社と契約するまでの一般的な流れは、以下のとおりです。

  • インターネット上などでM&A仲介会社を探す。
  • 無料相談を活用し複数の会社と話をする。
  • 相談時には料金体系や契約形態などもよく確認する。
  • 候補の中から依頼する会社を選定する。
  • 業務委託契約を結ぶ。

M&A仲介会社を選ぶポイント

M&A仲介会社を選ぶときのポイントは、担当者・業務内容・料金・成約までの期間です。担当者には、実績・経験のあるアドバイザーをつけてもらいましょう。経験不足の人物が担当につくと、買い手の紹介・交渉・企業価値の評価・成約などが不安です。

業務内容は、M&A仲介会社によって違いが見られます。たとえば、対応するスタッフがM&Aの進捗具合に応じて入れ替わるケースもあれば、成約後のPMI(Post Merger lntegration=M&A後の経営統合プロセス)へのサポートは業務外などのケースです。

そのほかにも、無料相談・企業診断の有無や、一貫したサポート体制、戦略の立案・企業評価などがあるかを確かめてみましょう。手数料の料金体系も、仲介会社によって異なります。

月額報酬・着手金・中間金の発生有無、成功報酬の算出方法に違いが見られるなど、料金体系は違っているのです。したがって、料金は契約前に必ず見積もりを提示させるようにしましょう。

最後のポイントは、成約までの期間です。通常、M&Aは10カ月~1年以上かかるともされています。中小企業の会社売却・企業売却であれば、できるだけ短期に済ませたいでしょうから、短期間での成約を強みにしている会社を選ぶとよいでしょう。

M&A仲介会社の契約形態

M&A仲介会社の契約形態は2種類あります。1つは、仲介タイプです。売り手と買い手双方と契約し、間に立って両者の利益を考えた仲介・交渉を行います。短期間に成約できる可能性が高まる一方で、条件に妥協を強いられやすいことなどが特徴です。

もう1つは、アドバイザリータイプです。売り手か買い手のどちらかとのみ契約し、依頼者の利益が最大限得られるM&Aを目指して交渉を行います。好条件での成約に期待が持てますが、交渉に時間を要したり、場合によっえは破談となったりすることが懸念点です。

自社の分析を行う

手順の2つ目では、自社の分析を依頼することです。ここでは、自社の財務状況や事業計画、企業価値評価、交渉前の改善点などを分析し、交渉のための準備を整えます。

自社分析の方法・流れ

M&A仲介会社との契約後、取引候補を決めるまでの準備段階では、以下の内容を並行して進めます。

  • M&A仲介会社に企業価値評価(バリュエーション)を依頼し、それをもとに譲渡希望額を決める。
  • 自社の会社売却・企業売却に見合ったM&Aの方法を決める。
  • 事業計画書・決算書などを提出する。
  • ノンネームシート(匿名の企業概要書)を作成する。
  • ロングリスト(多数の取引候補リスト)からショートリスト(少数に絞り込んだ取引候補リスト)へ買収先の候補を絞る。

買い手企業を探し、条件をすり合わせる

手順の3つ目では、買収企業を見つけて、互いの条件をすり合わせます。まずは、絞り込んだ候補に交渉の意思があるかどうかの確認です。よい感触を得られた候補先から交渉先を選択し、秘密保持契約締結後、自社の詳しい情報を交渉相手に伝えます

買収企業探し・条件のすり合わせの方法・流れ

  • ノンネームシートを見た候補先に、興味の有無を確認する。
  • 興味を示した候補から交渉先を絞り込む。
  • 詳しい情報を求めてきた交渉先と、秘密保持契約を締結する。
  • 企業名を明かし、詳しい情報を開示する。

基本合意(LOI)を締結

手順の4つ目は、絞り込んだ交渉先と基本合意書(LOI=Letter Of Intent)を結びます。基本合意書とは、M&Aの交渉について、お互いの認識が共通していることを確かめるものです。現状確認書のような位置付けのため、基本的に法的な拘束力はありません

したがって、M&Aが約束されたわけではなく、基本合意後、破談した例もあります。基本合意書に記される主な内容は以下のとおりです。

  • 買収の方法
  • 売買予定額
  • 買い手側の買収資金調達方法
  • 従業員の雇用
  • デューデリジェンス(買収側による売却企業の監査)の実施
  • 成約までのスケジュール
  • 秘密保持義務
  • 独占交渉権の期間

上記のうち、秘密保持と独占交渉権は、例外的に法的拘束力を伴うのが一般的です。なお、基本合意書の英語名としては、LOI以外にも、MOU(Memorandum Of Understanding)、Basic Agreementなどがあります。

基本合意(LOI)締結の方法・流れ

  • 秘密保持契約を結んだ買収候補から、交渉の申し出がある。
  • トップ会談で経営方針や考え方などの確認をする。
  • 譲渡価額やその他の条件について交渉を行う。
  • 大筋で条件合意が形成されたら基本合意書を結ぶ。

デューデリジェンス(買収監査/資産査定)

5つ目の手順は、デューデリジェンスになります。デューデリジェンスの主な目的は、経営リスク有無の調査と、最終的な売買価額決定のための情報収集、M&A後のPMI計画のための情報収集などです。

デューデリジェンスは、財務・税務・法務・労務・IT・事業などの各分野ごとに士業などの専門家を起用して実施されます。デューデリジェンスは買収側が実施するものなので、費用負担も買収側です。ただし、売却側は調査に全面的に協力しなければなりません。

デューデリジェンスには、1~2カ月程度の時間がかかる場合もあります。

株式譲渡に関する契約書の締結

手順の6つ目が、最終契約書の締結です。買収側のデューデリジェンスを経て最終交渉を行い、売り手と買い手が契約内容に了承すると、取締役会の決議を行い、株式譲渡の契約を結びます。最終契約では、以下の事項を確認しましょう。

  • 前提条件:ある条件を満たしていなければ、クロージングが完了しないこと。
  • 表明保証:売り手が契約の内容について、正確であると買い手に表明し、保証をすること。
  • 尊守条項:売り手が買い手に果たす義務のこと。クロージングの前後における、契約違反行為(資産の売却・経営方針の変更)の禁止、競業の禁止など。
  • 補償条項:表明保証、尊守条項などが守られなかった事態に備えた損害賠償の規定。

クロージングとは、契約内容の履行のことです。

株式譲渡契約を締結する方法・流れ

  • 買い手のデューデリジェンスを経て、両者が契約内容に合意する。
  • 売り手は、諸条件を再度確認し、取締役会を招集。決議を行う。
  • 取締役会の承認を受けて、株式譲渡契約を結ぶ。

譲渡の実行と入金(クロージング)

最後の手順は、譲渡の実行と入金(クロージング)です。売り手側は、株式譲渡契約に盛り込んだ前提条件を果たします。譲渡契約とクロージングの実行は、同時ではありません。1カ月のほどの期間を経たのち、譲渡を行うのが一般的です。

前提条件を満たすと、株式譲渡の対価が入金していることを確認して株式を買い手に交付し、売り手の会社側は株主名簿の書き換えをします。これで、譲渡契約のクロージングが完了です。

譲渡の実行と入金までの方法・流れ

  • 株式譲渡契約に記載された前提事項を満たす。
  • 譲渡代金の入金を確かめて買い手に株式を交付し、会社売却の取引を終える。

会社売却・企業売却のお手伝いいたします!

会社売却・企業売却はご覧いただいたように、非常に複雑な手続きとプロセスをこなして成約へとたどり着きます。「面倒だ」と感じる方もいらっしゃるでしょう。不安を解消しつつ手間を少なくするためにも、一度、M&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所では、会社売却・企業売却を専門とするアドバイザーが、クロージングまでフルサポートいたします。M&A総合研究所であれば、会社の拠点にかかわらず全国どこの企業でも、会社売却・企業売却をよりスムーズに進められます。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。まずは、無料相談からお問い合わせください。

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4. 会社売却・企業売却に必要な資料

会社売却・企業売却のシミュレーションができたら、次は必要となる資料を用意しなくてはなりません。ただし、会社を売る方法や会社の業種などによって、用意する資料には違いがあります。

会社を売ると決めた場合は、一度、M&A仲介会社を訪ねて、自社の会社売却に必要な資料を聞いてみましょう。用意する資料には、次のような書類が挙げられます。

  会社売却・企業売却に必要な資料 資料の内容
会社のあらまし 会社案内 会社の概要を交渉先に知ってもらうための資料です。自社のパンフレットや会報誌、自社の特集を組んだ雑誌などを用意してください。
定款(最新) 会社の規則を記した書類です。会社の基本的な情報を知れるほか、企業によっては、定款に株式の譲渡制限を定めているため、交渉を進めるにあたって必要となります。
商業登記簿謄本 会社の業務内容や資本金、役員の名前などを把握してもらう資料です。法務局や法務省のオンラインページから履歴事項全部証明書を取得してください。
株主名簿 株式の所有者を明記した名簿です。株主の名前・株式数・株式の種類が書かれています。株式譲渡の契約やデューデリジェンスを行うときに必要です。
財務関係 決算書
期末残高試算表
勘定科目内訳明細
(それぞれ3期分)
財務状況や、仕訳の確認、提出された資料の正確性を把握するための資料です。
税務申告書
(3期分)
決算書をもとに法人・消費・法人住民・事業税を計算した資料です。税務上の問題や、リスク、税務調査の有無などを確かめるために用いられます。
月次試算表
(前期から前の月まで)
1カ月ごとに区切りを設けた決算書です。月ごとの経営状態を把握するために用いられます。
減価償却資産台帳 固定資産(機械や設備など)の減価償却をまとめた台帳です。
固定資産評価証明書 固定資産(土地・建物などの不動産)の課税を示した書類です。相続税を計算する場合や、企業評価額との比較にも用いられます。
人事 組織図 自社の組織を、事業や部署に分けて示した図です。事業・部署ごとの人数を記載しておくことが望ましいとされています。
役員・主要ポスト・従業員の名簿 役員と主要ポストの経歴を記した名簿のことです。従業員の名簿は、氏名のほか生年月日、入社年月日、部署・役職などをまとめてください。
賃金台帳 従業員の賃金や税金、労働時間を記した台帳のことです。
社内規程の労働・賃金に関する事項 会社の従業員に定めた就業規則、賃金・賞与・退職金規程などが書かれた資料のことです。
営業 売上・仕入の内訳
(3期分)
部門・商品(または製品)・取引先ごとの内訳をまとめましょう。買い手や仲介会社が自社の売上と仕入に関する状況を確かめる際に必要です。
採算管理資料
(3期分)
こちらも部門・商品(または製品)・取引先ごとの資料をまとめください。採算や、管理問題の有無などを調べるために使われます。
店舗・拠点・事業所に関する資料 事業を行う場所や従業員などを把握するための資料です。
自社製品・サービスを紹介する資料 製品・サービスのパンフレット、カタログなどを用意してください。
契約 土地と建物の賃貸証明書 土地と建物の借り貸しに関する書類です。会社売却・企業売却で自社の株式が別の会社に移った際に、買い手は土地・建物の賃貸について、所有者に承諾を得る必要があります。
契約・リース契約 契約先の一覧を提出します。リース契約では買い手が契約を引き継ぐ場合、連帯保証人を変更する必要があるので、契約先の確認のために用意をしてください。
銀行からの借入金残価一覧 担保の一覧と、作成した返済予定表を提出してください。
生産・販売の委託契約書 委託する生産・販売の内容や、契約の期間、著作権・特許などを把握するために必要です。
保険の積立金(解約返戻金)・ゴルフ会員権の一覧 自社の企業評価には、保険の解約返戻金とゴルフの会員権も含まれます。
そのほかの契約書 経営に関する契約書があれば、用意をしてください。
許認可を証明する書類 事業で求められる許認可、免許などの書類もそろえましょう。
その他 オーナーに関する書類 住民票と印鑑証明書が必要です。

【関連】会社売却・企業売却に必要な準備と準備期間まとめ!

5. 会社売却・企業売却の価格算定方法

会社を売る準備を整えても、最後に気になるのが会社売却の価格です。ここでは、「どのような方法で会社の価値を判断するのか」という疑問にお答えしましょう。会社売却では、次のような評価方法を使い、企業の価値を判断・評価しています。

時価純資産法

1つ目に挙げる会社売却価格の評価方法は、時価純資産法になります。会社が持っている資産を時価で評価し、ここから負債を引くことで純資産を算出します。現在の企業価値を知るために利用される方法です。

この方法で得られた価格は、将来の価値(営業権)を含んでいないため、今後の発展が見込まれない会社や、成長期を過ぎた企業などの評価に利用されています。

DCF(Discounted Cash Flow)法

2つ目に紹介する会社売却価格の評価方法は、DCF法です。将来のキャッシュ・フローを現在の価格に割り引いて、企業の価値を表します。

企業価値は1年単位ではありません。数年分をひとまとめにした価格で評価されます。数年後の利益を企業評価に加えてほしい場合に有効な算定方法です。DCF法は営業権を評価してほしい場合にも利用されています。

この方法を選択することで、企業に備わるノウハウや、築き上げたネットワーク、開発・研究技術、特許などを企業評価に加えられるのです。これなら、営業権が将来のキャッシュ・フローを呼び込むと判断され、企業価値を高められます。

ただし、将来に得られるキャッシュ・フローを前提とするため、事業計画書が必要です。5年分の事業計画を作成してください。業界の動向やライバル会社との競争などを加味して、事業計画が実現できるかどうかを判断してもらいます。

収益還元法

3つ目に取り上げる会社売却価値の評価方法は、収益還元法になります。将来の収益に着目して企業評価を行う方法です。評価価格は、税引き後の営業利益を資本コストで割り引き、得られた値を発行する株式の数で割ることで算出します。

利用されるケースは、事業計画を立てていない・収益を想定することが難しい場合です。そのほかには、再編や潮流の変化が少ない業種で活用されています。反対に、新しく開拓された市場や、設立してから日が浅い会社には、適していません。

赤字企業では税引き後の営業利益が得られないため、この方法では企業評価が実施できません。収益還元法で企業価値評価を望むのであれば、成熟期を迎えた業界で事業を営んでいるかを再確認しましょう。該当する場合は、将来の価値を含めた企業評価を得られます。

類似会社比準法

4つ目に紹介する方法は、類似会社比準法です。類似会社比準法は、自社と似ている上場企業を参考に、企業価値を評価します。事業性・資産・収益などを比べて比準割合を算出し、それぞれの比準割合を合計したうえで、対象会社の株価をかけて評価額を得る方法です。

類似会社比準法は、簡単に企業の価値を図れる方法といえます。しかし、非上場会社を評価する場合は、得られた評価額から一定の割合を引かなくてはなりません。株式が市場に出回っていなかったり、出回っている数が少なかったりするため、評価額を下げる必要があるのです。

株主が抱えるリスクを考えて、評価額から割り引くことになります。類似会社比準法を採用する場合は、株式の流動性を考慮した評価額と認識してください。

M&A仲介会社に支払う手数料

企業価値を評価する方法には、それぞれに特徴がありました。しかし、自社に合った評価方法を選択できたとしても、満足できる売却額が手元に残らない場合があります。これには、M&A仲介会社ごとの手数料の違いも関係しているといわざるを得ません。

手数料には相談料や月額報酬、着手金、中間金、成功報酬などがあります。この手数料全てが発生する会社もあれば、完全成功報酬制(成功報酬以外、費用発生しない)の会社もあり、また、成功報酬の計算方法が各社まちまちです。

これから会社売却・企業売却をM&A仲介会社に依頼する場合は、支払う手数料も選定基準にしましょう。

【関連】会社売却、M&Aの相場を解説!企業評価とは?

6. 会社売却・企業売却で課される税金

会社売却・企業売却で売却益が出れば、そこには当然、税金が課されます。会社売却・企業売却で用いられる可能性のあるM&Aスキームごとに、課税内容を確認しましょう。

株式譲渡で課される税金

株式譲渡を実施する当事者として、株主が個人の場合と法人の場合では課税内容が異なります。それぞれ分けて概要を記します。

個人株主のケース

個人株主の場合、株式譲渡で得た売却益は株式譲渡所得と呼ばれます。税額の計算には、まず株式譲渡所得額の算定が必要です。以下の計算式で割り出します。

  • 株式譲渡所得額=株式譲渡の対価-株式取得費-必要経費

株式取得費とは、創業者であれば会社の資本金額が該当します。必要経費とは、主に取得に関して支払った各種手数料などをさし、代表例としてはM&A仲介会社への手数料です。

株式譲渡所得は申告分離課税で、2021(令和3)年10月現在で固定税率20.315%となっています。税率の内訳は以下のとおりです。
  • 所得税:15%
  • 住民税:5%
  • 復興特別所得税:0.315%(2037(令和19)年までの時限措置)

法人株主のケース

法人株主の場合、株式譲渡で得た売却益は株式譲渡益と呼ばれます。株式譲渡益の計算方法は、個人株主の場合と変わりません。一方、法人の場合に課される税金は法人税です。法人税の場合、株氏譲渡益単独に課税されることはありません。

法人が年度末に行う決算の際に、ほかの損益と株式譲渡益が通算され、その金額に法人税が課税されます。したがって、仮に株式譲渡益額を上回る損失が出ていて赤字決算だった場合、課税はありません。

法人税の税率は、会社の所在地や会社の規模(資本金額や従業員数)によって、少し異なります。2021年10月現在の法人税の実効税率は約30~33%です。

事業譲渡で課される税金

事業譲渡の場合、譲渡する当事者は会社です。したがって、事業譲渡の場合の課税内容は、法人株主の場合の株式譲渡と同じになります。事業譲渡益の計算式は以下のとおりです。

  • 事業譲渡益=事業譲渡の対価-譲渡資産の簿価

なお、事業譲渡の内容に消費税課税対象資産が含まれている場合、消費税が発生します。この消費税を負担するのは買収側ですが、事業譲渡対価の支払いの際に、対価と合わせて売却側が消費税を受け取り、それを売却側が納付するのが決まりです。

合併で課される税金

合併では、法人税法に規定されている適格組織再編合併の場合、課税を受けません。親子会社間でない場合の合併では、適格組織再編要件は条件が厳しく、以下の要件全てを満たす必要があります。

  • 金銭等不交付要件
  • 継続保有要件
  • 事業移転要件
  • 事業継続要件
  • 事業関連性要件
  • 同等規模要件か双方経営参画要件のいずれか

合併で課税を受ける場合は、消滅会社とその株主双方が対象で、その内容は複雑です。いずれにしても、上記の適格組織再編要件の詳細も含め、合併の税務は専門家に相談しないと処理しきれません。

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7. 会社売却・企業売却のメリットは?

経営者が会社売却・企業売却を行う目的は、利益を得るためです。会社を譲渡することで、売却益が得られたり、個人保証から解放されたりするなどの恩恵が受けられます。高齢の経営者なら引退後の生活費を得られ、個人保証からの解放で精神的な負担がなくなるのです。

そのほかにも、得られた売却益を、新会社の立ち上げに使うケースも考えられます。会社の経営が軌道に乗ったところで売却し、興味が湧いた別の事業へと経営の舞台を変える方も少なくありません。

第三者への事業承継も会社売却の目的に挙げられます。精魂を込めて事業を続けた会社は、信頼できる会社に譲り渡したいものです。そこで、M&A仲介会社から、事業や雇用などを継続してくれる引き継ぎ先を紹介してもらい、会社売却を実行に移しています。

会社の規模を拡大するためにも会社売却・企業売却は有効です。売却先の持つ事業や資金力を活用することによって、既存事業の強化や新たな分野への進出が行えます。

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8. 会社売却・企業売却のデメリットは?

会社売却・企業売却のデメリットの1つとして、会社売却・企業売却後、引き継ぎのための拘束期間が発生することがあります。契約によっては、売却後も子会社に勤務しなければならなかったり、顧問として1年間携わったりするケースもあるのです。

したがって、売却してすぐ別の事業をやりたい場合は、売却価格を減らしてでも拘束をなくす交渉をする場合があります。実際に売却をした経営者の中には、「社長と呼ばれなくなり寂しい」という声もあるようです。

伝統ある会社を外資系に売ってしまった経営者が、非難されることも少なからず発生しています。事業譲渡の場合は、20年間の競業避止義務があるのもデメリットです。

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9. 会社売却・企業売却後の経営者・社員・会社の処遇

会社売却・企業売却後、経営者、社員、そして会社自体の処遇は、どのようになるのか、ここであらためて確認しましょう。

経営者の処遇

高齢の経営者の場合、会社売却・企業売却後は引退するのが一般的な選択肢でしょう。近頃は、高齢でない場合でも、アーリーリタイアと称し売却益を生活資金として引退生活を送るケースも増えてきました。

引退しない場合は、売却益を元手にして新たな事業を始めています。引退せず売却した会社に残るケースも少なくありません。親会社のブランド力や資本力をバックに、新たな事業ステージにチャレンジするケースはベンチャー企業などで多い傾向です。

社員の処遇

会社経営でヒトは重要な要素です。人材獲得を目的に買収を行う企業もたくさんあります。したがって、会社売却・企業売却後、売却会社に属していた社員が冷遇されることは、まずありません。場合によっては、待遇が上がることも多いです。

ただし、管理部門など組織がダブついて余剰人員が生じるような場合、一部の社員には配置換え・転属などで以前とは別の業務に回される可能性はあります。

会社の処遇

株式譲渡が実施された場合、売却された会社は買い手の子会社になり、そのまま存続します。しかし、将来、グループ再編で合併などにより消滅する可能性はありますし、別の会社に売却される可能性もゼロではありません。

事業譲渡の場合は、選別した事業・資産が買い手に移転されるだけですから、会社自体は以前と変わらず存続します。合併の場合は消滅会社です。解散登記をし、会社はなくなります。

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10. 会社売却・企業売却で買い手が付きやすい会社のポイントは?

会社を売ることを検討している方は、どのような点に注意をすればよいのでしょうか。「初めての会社売却で詳しいことがわからない」という方でも、次に挙げるポイントを押さえると、自社や社員たちの利益を守ってもらえる相手に会社売却・企業売却が行えます。

  1. 利益を出している・将来利益を生む可能性がある
  2. 魅力的な営業権を持っている
  3. ニッチな事業を営んでいる
  4. 安定した財務状況
  5. 適切な売却価格を提示している

①利益を出している・将来利益を生む可能性がある

ポイントの1つ目は、利益を出している企業であることです。買い手は、経営者が変わっても組織や事業に変化がなく、買収した後でも現在のように利益を出せる会社を求めています。オーナー社長が一代で築いた会社は、買い手がつきにくい傾向があります。

オーナー社長による経営手腕によって、利益が得られていると判断されるためです。会社売却・企業売却では、将来の利益を見込んだ取引が行われることも珍しくありません。

買い手とのシナジーや、業界の流れ、会社・事業の再編などによって、近い将来に利益が得られると想定するのです。このケースに該当すれば、利益が少ない・利益が出ていない会社でも、会社を売却できます。

②魅力的な営業権を持っている

ポイントの2つ目は、他社にはない営業権を所有していることになります。営業権は、企業が持つ特許や、独自のネットワーク、研究・開発技術などのことです。買い手企業は、新規参入や事業拡大、将来の利益などを目的に、売り手を探しています。

買い手の資本や所有する事業との融合によって、多くの利益を生み出すことを狙いとしているのです。買い手企業にとって、利益を生む営業権を持っていれば、会社を売るための条件を備えているといえます。

営業のために免許が必要とされる業種の場合、高額な買収を提案する新規参入企業が多い状況です。免許取得に経験や時間が必要となる場合や、規制される前の免許を持っている場合などは引く手あまたとなっています。

③ニッチな事業を営んでいる

ポイントの3つ目は、特殊な事業を営んでいる点です。展開する事業にはライバル企業が少なかったり、参入するために多くの時間・資金・労力を必要としたりと、他の事業にはない特殊性を持ち合わせていることがあります。これが会社を売るための条件です。

ライバルが少なければ、買収によって大きなシェアを獲得できるチャンスがあります。しかも、会社を買収すれば、売り手が所有する設備や人員、ネットワーク、許可、権利などを引き継ぐことも可能です。

これなら、短い時間・抑えた費用・少ない人材で、希望の分野への進出が果たせます。このようなことから、ニッチな事業を営む企業は、会社を売るための必要な条件をそろえているといえるでしょう。

④安定した財務状況

ポイントの4つ目は、会社の財務状況が安定していることです。買い手は、高い売上高や利益を計上する企業を探しています。買収しても利益を得られず、赤字が出てしまっては買い取った意味がありません。

自己資本比率が高いことも、財務の安定には欠かせない項目です。自己資本比率とは、総資本に対する自己資本の割合をさします。返済義務のない自己資本を多く所有していれば、借金の返済に困る事態を避けられるのです。

これなら、事業の拡大のために資金を投じることも可能なため、買い手にとっては魅力的な企業と映ります。

⑤適切な売却価格を提示している

ポイントの5つ目は、適切な売却価格の提示です。会社を売るには、買い手が興味を持ち、交渉に応じてくれなければ目的を果たせません。自社の価値を過大に評価していると、買い手が現れてくれないのです。

しかも、会社売却・企業売却では、タイミングも重要な要素です。高い譲渡価格を提示したままでいると、交渉先の買う気をそいでしまい、妥当な買い手を逃してしまうことがあります。会社を売るときには、自社の評価に見合った譲渡額を提示することが肝要です。

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11. 高い価格で会社売却・企業売却を行う方法!

会社売却・企業売却の価格は、売り手と買い手の交渉によって、最終的な額が決定されます。売り手は高い売却価格を望み、買い手企業は少しでも安い価格で買収したいと考えるはずです。

では、どのような方法を使えば、買い手が提示した金額を上げられるのでしょうか。高い価格での会社売却を望む方に向けた、おすすめの方法を紹介します。

  1. 買い手が嫌う箇所をなくす
  2. ふさわしい買い手を選ぶ
  3. 新しい技術や特許などの権利を持っている

①買い手が嫌う箇所をなくす

1つ目の方法は、買い手の立場を考えた対処の仕方です。買い手は、過剰在庫と簿外債務を嫌います。多くの在庫を抱えることで、キャッシュ・フローが減少したり、収益が減ってしまったりと、不都合な事態を招いてしまうためです。

簿外債務などの偶発債務によって、賠償や保証の義務が生じることがあります。高い価格で会社を売る場合は、過剰在庫をあらためて、簿外債務の処理を実行してみましょう。このようにすれば、買い手の評価額を下げずに、高い売却価格を維持できます。

最も論外なのは、訴訟トラブルを抱えていることです。いかに在庫管理の徹底や簿外債務の処理を行っていても、トラブルを抱えている会社を買収しようとする会社はほとんどありません。

訴訟トラブルの解決は、会社売却・企業売却を行ううえで必須となるため、最も注力して迅速に取りかかってください。

②ふさわしい買い手を選ぶ

2つ目の方法は、自社に見合った買い手を選ぶことです。シナジーが発生する企業や、異業種の企業を選んでみましょう。同業者なら製品・素材の運搬をまとめて行えますし、製造規模が大きくなればコストを下げられるため、買い手にとってメリットがあると判断されます。

新規参入を希望する買い手なら、自社の事業を活用することで、スムーズな参入を果たせるのです。高い価格で会社を売るとするなら、このような企業に的を絞って、交渉を進めましょう。

③新しい技術や特許などの権利を持っている

特許や新しい技術は本来、お金を払って使用する必要があるものです。もし、売却を予定する会社に権利収入を生み出す要素があれば、それだけで企業評価額は底上げされるでしょう。

売却予定の会社では使えなかった特許や活用法が見つからなかった新しい技術など、会社売却というM&Aを行うからこそ大きな意味を持ったカードなのです。特に近年では、他業種からの新規参入が非常に活発となっています。

特許や新しい技術を持っている会社への買収交渉には力を入れる企業が多い状況です。今までは無視されていた特許や技術も、売却予定会社の持つ技術や製品と組み合わせることで有益な活用方法が現れることがあります。

交渉する際には、どのような特許や技術でも開示することで会社の価値を高めましょう。

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12. 会社売却・企業売却の成功事例5選【2021年最新】

会社売却・企業売却の最新成功事例を紹介します。内容をご覧ください。

  1. ブルー・ケアによるリビングプラットフォームへの会社売却
  2. システムイン国際によるダイサンへの会社売却
  3. 中央理化工業による九電工への会社売却
  4. 明治薬品によるファーマフーズへの会社売却
  5. アンタ―による JMDCへの会社売却

①ブルー・ケアによるリビングプラットフォームへの会社売却

2021年10月、ブルー・ケアは株式譲渡により、リビングプラットフォームへ会社売却しました。譲渡価額は公表されていません。北海道のブルー・ケアは、各種介護サービス事業を行っています(年商13億5,900万円)。

東京のリビングプラットフォームは、介護事業・障がい者支援事業・保育事業などを行っている企業です。リビングプラットフォームとしては、北海道地域におけるドミナント戦略強化を目指しており、その条件に合致するブルー・ケアが会社売却に成功しました。

②システムイン国際によるダイサンへの会社売却

2021年9月、システムイン国際は株式譲渡により、ダイサンへ会社売却しました。譲渡価額は公表されていません。広島のシステムイン国際は、土木・建築業界向け積算システムや電子納品を支援するパッケージソフトの開発・販売事業などを行っています(年商非公開)。

大阪のダイサンは、建設現場用の足場の施工事業、建築金物・仮設機材の製造・販売事業などを行っている企業です。ダイサンは建設現場のデジタル化推進サービス事業などへの参入を目指しており、その条件に合致するシステムイン国際が会社売却に成功しました。

③中央理化工業による九電工への会社売却

2021年9月、中央理化工業は株式譲渡により、九電工へ会社売却しました。譲渡価額は公表されていません。東京の中央理化工業は、防災関連設備・機器の販売・設計・工事・保守・メンテナンス事業を行っています(年商非公開)。

福岡の九電工は、電気工事、空調管工事、工事関連の機器・材料の販売事業などを行っている企業です。九電工は関東エリアでのシェア拡大を目指しており、その条件に合致する中央理化工業が会社売却に成功しました。

④明治薬品によるファーマフーズへの会社売却

2021年8月、明治薬品は株式譲渡により、ファーマフーズへ会社売却しました。譲渡価額は23億円です。東京の明治薬品は、医薬品・医薬部外品・健康食品などの製造・販売事業を行っています(年商53億3,500万円)。

京都のファーマフーズは、機能性食品素材・医薬部外品などの開発・販売事業、抗体医薬の研究開発事業などを行っている企業です。ファーマフーズとしては、シナジー効果が得られて業績拡大・企業価値向上が実現できる企業を探していました。

その条件に合致した明治薬品が会社売却に成功しています。

⑤アンタ―による JMDCへの会社売却

2021年8月、アンタ―は株式譲渡により、JMDCへ会社売却したことを発表しました。譲渡価額は公表されていません。東京のアンタ―は、医師向けにプラットフォーム運営を通して情報サービス提供事業を行っています(年商非公開)。

東京のJMDCは、製薬会社・保険会社、医療機関、保険組合など向けに、医療データサービス事業、医療システム開発・提供事業などを行っている企業です。JMDCとしては、さらなるデータサービスの推進とプラットフォームの拡充を考えていました。

その条件に合致するアンタ―が会社売却に成功しています。

【関連】M&A成功事例60選!取引規模・業界別、海外企業のケースも紹介【2021年最新版】

13. 会社売却・企業売却の方法まとめ

会社を売る方法にはいくつかの種類があり、その選定には専門知識がいります。事前の準備も必要です。そして、経営をこなしながら、交渉先を探すことは困難を極めます。

適切な買い手を見つけて円滑に会社売却・企業売却の交渉を進めていくには、M&A仲介会社などの専門家に相談することが得策です。

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