金融・リース・レンタル業界の事業売却(事業譲渡)を初心者向けに解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

金融・リース・レンタル業界市場は飽和状態ともいえる動向にあり、事業売却(事業譲渡)する中小企業が増加中です。金融・リース・レンタル業界の事業売却(事業譲渡)の事例から動向を確認しつつ、手続きの流れや注意点などについて解説します。

目次

  1. 金融・リース・レンタル業界の特徴
  2. 事業売却(事業譲渡)とは
  3. 金融・リース・レンタル業界における事業売却(事業譲渡)をする理由
  4. 金融・リース・レンタル業界における事業売却(事業譲渡)の事例
  5. 金融・リース・レンタル会社の事業売却(事業譲渡)で必要な手続き
  6. 金融・リース・レンタル会社はどんな相手に事業売却(事業譲渡)すべき?
  7. 金融・リース・レンタル会社の事業売却(事業譲渡)で免許・許可・登録は引き継げない!
  8. 専門家に相談して金融・リース・レンタル業界の事業売却(事業譲渡)を成功させよう
  9. 【付記】事業売却(事業譲渡)におけるリース・レンタル契約の扱いとは
  10. まとめ
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    1. 金融・リース・レンタル業界の特徴

    金融・リース・レンタル業界における事業売却(事業譲渡)の件数は、増加傾向にあります。そこで、まずは、金融・リース・レンタル業界の基礎知識を確認しておきましょう。

    金融業界の特徴

    金融業とは、お金を貸して利益を得る業務のことです。銀行や証券会社・消費者金融などが当てはまります。

    リーマンショックのあった2008(平成20)年から2009(平成21)年まで市場は縮小傾向でしたが、2009年から2014(平成26)年の間は徐々に増加し、その後は横ばい状態が続いている状況です。

    金融業界の多くを占める銀行業界では、日銀による施策によって微増ながらもプラスの傾向とはなっていますが、人口減少によって地方銀行などでは収益力が低下しています。

    また、消費者金融業界は、縮小傾向です。2006(平成18)年〜2010(平成22)年にかけて実施された、利率のグレーゾーン撤廃や改正貸金業法の影響を大きく受け、大幅に市場が縮小してしまいました。

    一方で、拡大している業界はクレジットカード業界です。ECサイトの普及によって近年、急速に拡大しています。さらに、消費税率アップにおける、国のキャッシュレス還元施策も拡大理由です。

    このように一括りに金融業界といってもさまざまな業種がありますが、金融業界全体で見ると近年は横ばいとなっています。特に地方銀行や中小企業には、苦しい状況が続いているといえるでしょう。

    リース業界の特徴

    リース業とは、オフィス機器や設備などを貸し出し、その貸出料金をリース料として得る業務のことです。レンタルに比べて貸出期間が長く、リースの対象も電話機から航空機まで幅広くあります。

    現在、そのリース業界の市場規模は微増状態です。それは、法人の設備投資にかける費用が縮小しているからにほかなりません。現在、国内では、好況とはいえない状況であり、民間設備投資の低迷が見込まれています。

    したがって、市場拡大のためには、海外展開を積極的に行っていかなければなりません。そこで、海外展開するための資金力がない企業は淘汰されていく、という予測も見られます。

    レンタル業界の特徴

    レンタル業は、リース業と同じように物品を貸し出して利益を得る業務です。リース業との違いは、貸し出す期間が短いことや、車やCDなど安くて手軽なものを対象としていることです。

    2012(平成24)年以降は個人向けサービスが定着し、市場が拡大傾向でした。

    また、2012年には大規模な震災があったため、その後の復旧作業のために建設機械やトラックなどのレンタル需要が高まりましたが、それらの需要が落ち着いた近年では、市場への大きな期待はあまり見られません

    CDやビデオレンタルは、オンデマンド配信に切り替えるなど時代に対応したレンタル事業を展開していかなければ、業界の成長は見込めないでしょう。

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    2. 事業売却(事業譲渡)とは

    事業売却(事業譲渡)とは

    金融・リース・レンタル業界の現状を把握したところで、次に、事業売却(事業譲渡)について確認しておきましょう。

    事業売却(事業譲渡)とは、M&A(Mergers=合併 and Acquisitions=買収)手法の1つです。会社の中のある事業について、他社に売却(譲渡)し対価を得ることをさします。上図は、そのイメージ図です。

    事業売却(事業譲渡)では、売却(譲渡)する事業は1つでも全部でもよく、その数に特別の定めはありません。ただし、たとえ全部の事業を売却(譲渡)したとしても、会社そのものは売却(譲渡)していないため、そのまま手元に残ります。

    混同しやすいほかのM&A手法が、会社売却(株式譲渡)です。会社の全株式を譲渡すれば、必然的に会社の経営権を譲渡したことになります。つまり、会社を丸ごと相手に渡すことになるのが会社売却(株式譲渡)です。

    事業単位で売却(譲渡)を行い、会社組織はこれまで同様、経営者の手元に残る事業売却(事業譲渡)と、会社売却(株式譲渡)では、その点が大きな違いになります。

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    3. 金融・リース・レンタル業界における事業売却(事業譲渡)をする理由

    業界の特徴を確認すると、金融・リース・レンタル業界は比較的、安定した業界といえるでしょう。

    しかし、その内実は、金融業界ではゆるやかな伸びがあるものの、リース業界は国内需要の限界を迎えようとしています。また、レンタル業界は、一部大手企業の寡占状態です。

    したがって、金融・リース・レンタル業界は、今後の大きな伸びは期待できないでしょう。特に、中小企業にとっては、あまりよい状況とはいえません。

    金融・リース・レンタル業界で、中小企業を存続させたくても経営状況が厳しいことから、後継者に悩まされているケースも多いのが実情です。

    一方、大手企業は他社との差別化を図るため、顧客の獲得やカバーエリアの拡大、取り扱うサービスラインアップを強化する傾向にあります。

    つまり、中小企業も大手企業も、事業売却(事業譲渡)・事業買収(事業譲受)をしたいと考えているのです。

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    • リース・レンタル会社のM&A・事業承継

    4. 金融・リース・レンタル業界における事業売却(事業譲渡)の事例

    金融・リース・レンタル業界における事業売却(事業譲渡)には、どのようなものがあるのでしょうか。近年の事例を確認して、事業売却(事業譲渡)の動向を具体的に考えてみましょう。

    以下、6件の事例を掲示します。

    1. シャープファイナンスによるアルヒへの事業譲渡
    2. 島根銀行によるSBI証券への事業譲渡
    3. ブティックスによるヤマシタへの事業譲渡
    4. マリーゴールドによるテイクアンドギヴ・ニーズへの事業譲渡
    5. ダイレクト出版によるアイフィスジャパンへの事業譲渡
    6. ネットエイジによるAKIBAホールディングスへの事業譲渡

    ①シャープファイナンスによるアルヒへの事業譲渡

      売り手企業 買い手企業
    会社名 シャープファイナンス アルヒ
    事業内容 各種リース事業・信用販売事業 住宅ローンの貸し出しおよび取次業
    従業員数 575名 398名
    目的 事業の選択と集中 債権管理回収業務の拡大、主力事業の成長
    譲渡価額 非公開

    2020(令和2)年5月、シャープファイナンスは、国内最⼤⼿の住宅ローン専⾨⾦融機関であるアルヒに事業の一部を譲渡しました。譲渡した事業は、住宅金融支援機構住宅ローン【フラット35】事業です。

    シャープファイナンスとしては事業の選択と集中が目的ですが、現在、契約中の顧客への配慮から当該事業最大手であるアルヒを譲渡先として選択しました。

    アルヒ側としては、同事業のシェア拡大により、既存事業の強化と債権管理回収業務の拡大を図ることを目的としています。

    ②島根銀行によるSBI証券への事業譲渡

      売り手企業 買い手企業
    会社名 島根銀行 SBI証券
    事業内容 銀行業 金融商品仲介業
    従業員数 382名 566名
    目的 効率的な業務運営の実現 従来から進めていた業務提携の融合と推進
    譲渡価額 非公開

    2020年5月、島根銀行は、SBI証券に事業の一部を譲渡しました。譲渡した事業は、投資信託・債券の取扱いに係る事業です。

    島根銀行とSBI証券は、2019(平成31)年4月より業務提携、さらに同年9月より資本業務提携を結んでいます。

    そのなかで、投資信託・債権販売業務においても提携していたわけですが、それをSBI証券に一元化すべく、投資信託・債券の銀行窓販業務およびこれに付随する業務一式を事業譲渡することになりました。

    ③ブティックスによるヤマシタへの事業譲渡

      売り手企業 買い手企業
    会社名 ブティックス ヤマシタ
    事業内容 展示会事業
    M&A仲介事業
    Webマッチング事業
    福祉用具レンタル・販売
    住宅改修
    居宅介護支援事業
    リネンサプライ
    寝具リース
    受託サービス事業
    従業員数 56名 2,206名
    目的 事業の選択と集中 事業拡大
    譲渡価額 3,250万円

    2020年3月、ブティックスは、ヤマシタに事業の一部を譲渡しました。譲渡した事業は、介護用品、健康器具などを取り扱うeコマースサイトの運営事業です。

    ブティックスとしては、譲渡事業の収益悪化を受け、主力事業である展示会事業やM&A仲介事業に経営資源を集中し注力するために事業譲渡を決定しました。

    一方、ヤマシタは、福祉用具レンタル・販売業を30年行ってきている業界最大規模の会社で、この事業譲渡に関してもヤマシタ側からの提案だったとされています。その意図は、既存の福祉用具レンタル・販売事業の業績拡大になるという判断だった模様です。

    ④マリーゴールドによるテイクアンドギヴ・ニーズへの事業譲渡

      売り手企業 買い手企業
    会社名 マリーゴールド テイクアンドギヴ・ニーズ
    事業内容 婚礼衣装のレンタル・販売事業 国内・海外ウェディング事業
    従業員数 630名(連結) 1,322名
    目的 エリアの集中化 既存事業の強化
    譲渡価格 約1億5,000万円

    2017(平成29)年11月、マリーゴールドは、ウェディング事業大手のテイクアンドギヴ・ニーズに事業の一部を譲渡しました。譲渡した事業は、婚礼衣装レンタル店の神戸店・姫路店・京都店・大阪店の4店舗に関する固定資産と人材です。

    譲渡価格は、約1億5,000万円とされています。マリーゴールドは4店舗を事業譲渡することで、エリアの集中化に成功しました。現在は、熊本を中心に、福岡・佐賀・大分・山口・東京に店舗が集約されています。

    一方、テイクアンドギヴ・ニーズは、事業譲受によって、直営ドレス店舗を12店舗にまで増やすことに成功し、既存事業の強化へとつなげたのです。

    ⑤ダイレクト出版によるアイフィスジャパンへの事業譲渡

            売り手企業 買い手企業
    会社名 ダイレクト出版 アイフィス・インベストメント・マネジメント
    (アイフィスジャパンの子会社)
    事業内容 教育事業・翻訳出版 資産運用コンサルティング事業
    従業員数 44名 171名(連結)
    目的 事業の選択と集中 個人投資家向けサービスへの進出と事業拡大
    譲渡価格 非公開

    2015(平成27)年12月、ダイレクト出版は、アイフィスジャパンの子会社アイフィス・インベストメント・マネジメントに事業の一部を譲渡する契約を締結しました。譲渡した事業は、個人投資家向けの投資助言事業です。

    ダイレクト出版の本業は教育事業や書籍出版であることから、個人投資家向けの事業だけを切り離して事業譲渡しました。

    一方、アイフィスジャパンは機関投資家や証券会社、上場企業向けに金融情報を提供する事業を展開しています。ダイレクト出版の個人投資家向けの事業を譲り受けたことで、金融情報サービスを活用し、さらに顧客を増やし事業を拡大していく方針です。

    ⑥ネットエイジによるAKIBAホールディングスへの事業譲渡

      売り手企業 買い手企業
    会社名 ネットエイジ モバイル・プランニング
    (AKIBAホールディングスの子会社)
    事業内容 インターネット事業 通信コンサルティング事業
    従業員数 158名 52名
    目的 事業の選択と集中 新規事業の開発・相乗効果による事業強化
    譲渡価格 1億円

    2015年10月、ネットエイジは、AKIBAホールディングスの子会社であるモバイル・プランニングに事業の一部を譲渡する契約を締結しました。譲渡した事業は、Wi-Fiルーターレンタル事業です。

    ネットエイジのWi-Fiルーターレンタル事業は、同業者の中でも高い知名度を持っていました。しかし、キャリアショップ事業・インターネットプロバイダー事業に集中するため、Wi-Fiルーターレンタル事業を譲渡したのです。

    一方、モバイル・プランニングは通信コンサルティング事業を展開しています。Wi-Fiルーターレンタル事業を譲り受けることで、所有する公衆無線LAN網を相互に補完することを期待しての事業譲受です。

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    5. 金融・リース・レンタル会社の事業売却(事業譲渡)で必要な手続き

    金融・リース・レンタル会社の事業売却(事業譲渡)について、実際にどのような手続きをするのかよくわからないという人も多いかもしれません。そこで、この項では事業売却(事業譲渡)の具体的な手続きの流れと内容について、概要を説明します。

    個別のケースにより多少の相違点が加わる可能性もありますが、事業売却(事業譲渡)手続きの流れは、以下のとおりです。
     

    1. M&A仲介会社とアドバイザリー契約締結
    2. 買い手企業の選定・アプローチ
    3. 秘密保持契約の締結
    4. 買い手企業による意向表明書の提示
    5. 基本合意書の締結
    6. デューデリジェンスへの対応
    7. 事業譲渡契約の締結
    8. 株主総会での特別決議
    9. クロージング

    以下に、手続きごとの概要を記します。

    ①M&A仲介会社とアドバイザリー契約締結

    M&A仲介会社へサポートを依頼する場合は、アドバイザリー契約を締結します。

    M&A仲介会社とは、事業売却(事業譲渡)に関する業務を請け負ってくれる存在です。経営者だけで事業売却を進めるのは、専門的な知識などが必要となり無理があります。

    周りに相談できる人がいないのであれば、M&A仲介会社に相談しましょう。M&A仲介会社なら、以下のような業務を依頼できます。

    • 買い手企業の選定やアプローチ
    • 交渉の立ち会い
    • 契約書の作成サポート
    • 弁護士などの専門家の紹介
    • スケジュールや戦略立案

    特に、買い手企業に悩むことは多いでしょう。M&A仲介会社に相談すれば何社か提案してもらえるはずです。

    また、初めての事業売却では、知識不足が原因でトラブルに発展するケースも少なくありません。安心のためにも、M&A仲介会社に依頼することをおすすめします。

    M&A仲介会社へ依頼する際は無料相談へ行き、正式に依頼することになったらアドバイザリー契約を交わしましょう。アドバイザリー契約を締結したら、本格的に事業売却の業務が開始されます。

    中小企業のM&Aを数多く支援しているM&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが専任となり、事業売却(事業譲渡)などのM&Aを一括サポートします。

    M&Aの料金体系は完全成功報酬制(譲渡企業様のみ)です。着手金は譲渡企業様・譲受企業様ともに無料となっておりますので、安心してご相談いただけます。

    随時、無料相談を行っておりますので、事業売却(事業譲渡)を検討される際は、M&A総合研究所までお気軽にお問い合わせください。

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    ②買い手企業の選定・アプローチ

    アドバイザリー契約の締結後、買い手企業の選定をしていきましょう。

    どんな買い手企業がよいか社内で具体的に話し合っておくと、スムーズにM&A仲介会社に紹介してもらえます。ただし、わからないのであれば率直にM&A仲介会社に相談してください。

    過去の事例を聞きながら、適切な買い手企業を紹介してもらいましょう。気になる企業があれば、M&A仲介会社を通してアプローチをします。

    このとき、ノンネームシートといって、企業名を伏せた企業概要書を提示するのが常です。

    【関連】ノンネームシートとは?意味、M&Aでの重要性を解説【サンプルあり】

    ③秘密保持契約の締結

    買い手企業が興味を示したら、秘密保持契約を締結したうえで、さらに詳しい企業の資料を提出しましょう。

    秘密保持契約とは、交渉を進めていくうえで知った情報(秘密)を公開しないという取り決めのことです。「会社が事業売却相手を探している」という情報自体が、当然ながら秘密情報になります。

    自社が事業売却を進めていることや社内の内部情報が、「事業売却の目的以外」で漏れないように秘密保持契約を締結しましょう。

    【関連】秘密保持契約(NDA/CA)とは?

    ④買い手企業による意向表明書の提示

    実際に買い手候補と面談を繰り返すなかで、買い手企業による意向表明書が提示されます。意向表明書とは、買収の意思を表明する文書のことです。

    意向表明書には、以下のような内容が書かれています。

    • 事業売却(事業譲渡)に対する対価
    • 対価の根拠
    • 事業を譲受する目的や理由
    • 資金調達方法
    • 従業員や役員の待遇
    • デューデリジェンスや事業売却(事業譲渡)のスケジュール

    あくまでも、この内容は買い手企業の「意向」にすぎません。ここから交渉をし、互いが納得できる条件に調整していきましょう。

    事業売却の交渉を進めるときの注意点

    事業売却(事業譲渡)では、譲り渡す資産を明確にしなければなりません。なぜなら、事業売却(事業譲渡)は、お互いの話し合いによって譲り渡す資産を決めていくからです。

    自分は「AとBとCを譲渡したい」と考えていても、買い手企業は「AとCを譲受する」と考えている可能性もあります。このような食い違いが生まれないように、基本合意書の締結までに明確にしておきましょう。

    また、従業員や役員の待遇も、しっかりと条件を詰めるべきです。事業売却(事業譲渡)のとき、従業員の雇用は確約されていません。

    事業売却(事業譲渡)では、実施後にあらためて買い手企業と従業員個人が雇用契約を結び直す必要があります。しかし、買い手企業が契約の意思を示さなければ、当然、従業員は雇用先を失うことになるのです。

    したがって、従業員や役員の待遇も、基本合意書の締結までに、しっかりと合意を取るよう話し合いを進めましょう。

    【関連】LOI(意向表明書)とは?MOU(基本合意書)との違いは?【契約書サンプル/雛形あり】

    ⑤基本合意書の締結

    意向表明書の内容をもとに、条件が整ったら基本合意書を交わしましょう。基本合意書とは、売り手・買い手の双方が、現時点での基本的な事業売却(事業譲渡)条件の合意を確認するための書類です。

    今まで話し合ってきた内容をあらためて文章で書き起こし、締結します。基本合意書には、以下のような内容を記載しましょう。

    • 事業売却(事業譲渡)の取引条件
    • 事業売却(事業譲渡)の対価
    • 事業売却(事業譲渡)までのスケジュール
    • デューデリジェンスの協力義務
    • 守秘義務

    基本的には、基本合意書に書かれた内容で事業売却は成立します。この内容からよい条件になることは、ほとんどありません。

    もし、疑問点や気になることがあるなら、基本合意書締結の前に再度話し合いの場を設けましょう。また、締結の前に必ず基本合意書の内容を確認し、弁護士などのリーガルチェックを受けることも必要です。

    自社が不利な条件にならないよう、確認作業を怠らないようにしましょう。

    ⑥デューデリジェンスへの対応

    基本合意書の締結後は、デューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスとは、買い手企業による売り手企業の調査のことです。

    たとえば、直近の収益状況や従業員の経歴、取引先との契約状況などが調べられます。デューデリジェンスの目的は、現時点での課題やリスクを洗い出すことです。

    そのため、財務・法務・税務・労務・人事など、あらゆる角度から調査がなされます。必要に応じて書類や資料を提出しましょう。

    また、ときには答えにくい質問をされる可能性もあります。特に、消費者金融業界などでは法改正が行われたばかりで、まだ順守できていないこともあるかもしません。

    しかし、会社をよく見せようと、うそをつくことはやめましょう。提供した情報が虚偽である場合、事業売却(事業譲渡)後、すぐにわかってしまいます。

    過去には、虚偽の情報を渡されたと裁判に発展したケースもありますから、注意が必要です。

    【関連】M&AにおけるDD(デューデリジェンス)項目別の目的・業務フローを徹底解説!

    ⑦事業譲渡契約の締結

    デューデリジェンスのあと、もう一度、交渉を行い、事業譲渡契約を締結します。事業譲渡契約とは、事業売却(事業譲渡)を実行するにあたっての条件や、今後のスケジュールの書かれた契約書のことです。

    交渉した内容がしっかりと記載されているか、必ず確認しましょう。なぜなら、事業譲渡契約を締結してしまうと、内容を撤回できないからです。

    基本合意書と内容が変わらなくても、弁護士などの専門家に目を通してもらい、不利な条件がないか、あらためてチェックしてもらいましょう。

    【関連】事業譲渡契約書の作成方法・注意点を解説!印紙税は?【ひな形あり】

    ⑧株主総会での特別決議

    事業譲渡契約の締結後は、株主総会で特別決議を取らなければなりません。株主総会の特別決議に向けては、各所への届出や株主への通告なども必要です。

    株主総会での特別決議は、事業売却日の前日までに行い、承認を得る必要があります。議決権の過半数以上を持つ株主が出席し、3分の2以上の賛成が得られれば事業譲渡の承認です。

    ただし、会社法では、簡易事業譲渡や略式事業譲渡と見なされれば、株主総会での特別決議が必要ない場合もあります。M&A仲介会社などに相談して、必要な手続きを確認しましょう。

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    ⑨クロージング

    株主総会での承認を得たらクロージング作業へ入っていきます。クロージングとは、事業の移転を完了させる最終的な手続きのことです。

    事業売却(事業譲渡)では、所有者の移動や取引先・従業員との再契約などをしなければなりません。手続きの必要なものを確認しておかないと、契約は成立したのに事業が開始できないことも考えられます。

    特に、リース・レンタル会社では、リース・レンタルするための所有物が多くあるため、なおさらです。これらの所有権をどのように移動させるかを考えておきましょう。

    各手続きの手順やスケジュールは、買い手企業と一緒に前もって決めておきます。

    以上が、事業売却(事業譲渡)に必要な手続きです。事業の規模によって変動しますが、これらの手続きを終えるのに約10ヶ月〜1年ほどの期間が必要とされています。

    すぐに事業を売却したいと考えても、思うように進まないこともあるかもしれません。検討段階からM&A仲介会社などに相談し、できるだけスムーズに実行できるよう調整することをおすすめします。

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    6. 金融・リース・レンタル会社はどんな相手に事業売却(事業譲渡)すべき?

    前項では、金融・リース・レンタル会社の事業売却(事業譲渡)の流れを確認しましたが、その中でも、金融・リース・レンタル会社の事業売却の成功を大きく左右させるのは、買い手企業選びです。

    そこで、どのような相手であると事業売却(事業譲渡)が成功しやすいのか、3つのチェックポイントを確認しましょう。

    1. 同業会社である
    2. 売却したい事業のエリアへの進出を狙っている
    3. 売却したい事業のエリアをすでにカバーしている

    この3つのポイントについて、順番に内容を確認していきましょう。

    ①同業会社である

    金融・リース・レンタル会社の事業売却(事業譲渡)では、同業会社を選ぶことをおすすめします。

    なぜなら、金融・リース・レンタル事業の営業を行うためには、資格や許認可が必要となることが多いからです。資格や許認可は細かな条件を満たす必要があり、また、扱う商品・商材によっても必要な資格や許認可は変わります。

    つまり、もともと自社と同じ資格や許認可を持っている会社を選ぶと、スムーズに事業売却(事業譲渡)できるでしょう。もし、同じ資格や許認可を持っていなくても、同業であれば申請の要件を満たしている可能性も高いはずです。

    なお、資格や許認可に関する詳細は別途、後述しますので、そちらもご覧ください。

    ②売却したい事業のエリアへの進出を狙っている

    売却したい事業の営業エリアへの進出を狙っている会社を、買い手企業に選びましょう。

    それは、買い手企業にとって進出したいエリアにある営業所や店舗は、とても価値が高いからです。

    たとえば、東京で衣装レンタル業を営む会社があったとしましょう。次は、名古屋へ進出したいと考えているとき、名古屋にある衣装レンタル店を買収すれば時間も労力もカットできます。

    すでに安定した顧客のある店舗を早期に手に入れられるので、高い対価を払ってでも手に入れたいと考えるはずです。

    このように、売却したい事業のエリアへの進出を狙っている会社を買い手企業に選ぶと、高値で売却できる可能性が高まります。

    ③売却したい事業のエリアをすでにカバーしている

    一方で、すでに自社のカバーエリアに、すでに進出している会社を買い手企業にするのも良策でしょう。

    その際には、全くの同業ではなく、同じ金融業界でも少し異なる商材を扱っている企業が狙い目になります。その理由は、似た商材を扱っている企業であれば、その企業のサービスラインアップを増やすことにつながるからです。

    一例として、ウェディングドレスの衣装レンタル業を営む会社があったとしましょう。このとき、白無垢や打ち掛けといった和装レンタル業を買収すれば、サービスの幅は広がります。

    同じ顧客に、ウェディングドレスと打ち掛けの2つの衣装を使ってもらえるかもしれません。

    この例のように、似た商材を扱っている企業かつ同じエリアで営業している企業も買い手企業として最適です。

    7. 金融・リース・レンタル会社の事業売却(事業譲渡)で免許・許可・登録は引き継げない!

    金融・リース・レンタル会社で取得している免許・許可・登録は、事業売却(事業譲渡)で引き継げません。

    事業売却(事業譲渡)後は、買い手企業によって、あらためて免許・許可・登録を取得してもらわなければならないのです。この取得を行わなければ、事業売却(事業譲渡)後、営業することが認められないので注意しましょう。

    もちろん、買い手企業がもともと同じ免許・許可・登録を持っている場合は、あらためて取得する必要はありません。また、株式譲渡という手法でM&Aをした場合は、免許・許可・登録を引き継げます。

    必要な免許・許可・登録は、営業する内容によって細かく定められています。事前に確認しておきましょう。

    金融会社に必要な免許・許可・登録

    金融会社に必要な免許・許可・登録は、金融庁によって定められています。具体的には、以下の事業を営む場合、それぞれ免許・許可・登録が必要です。

    預金取扱等金融機関 銀行・銀行持株会社・信用金庫・労働金庫・信用組合・系統金融機関・兼営信託金融機関
    銀行等代理業者 銀行代理業者・郵便局銀行代理業者・信用金庫代理業者・労働金庫代理業者・信用組合代理業者
    金融商品取引業者 金融商品取引業者・登録金融機関・金融紹介仲介業・証券金融会社・登録投資法人
    保険会社 生命保険・損害保険・保険持株会社・保険仲立・少額短期保険業者
    信託会社 信託会社・自己信託会社・信託契約代理店
    金融会社 貸金業者・特定金融会社

    このほかにも、免許・許可・登録の必要な事業はあります。このように金融業界では、取り扱うものによって細かく免許・許可・登録が指定されているのです。

    同じ金融業界内での事業売却(事業譲渡)であっても、相手の持っている免許・許可・登録を確認したうえで事業売却(事業譲渡)の取引を進めましょう。

    リース・レンタル会社に必要な資格・許可

    基本的に、リース・レンタル会社を営むために必要な資格や許認可はありません。しかし、貸し出すものによっては資格や許可が必要なケースがあります。

    どのような資格や許可が必要なのか、確認しましょう。

    • CDレンタル:著作権を管理する団体からの許可(レンタル用CD卸業者で一括依頼が可能)
    • DVDレンタル:日本映像ソフト協会に加盟することで許可を得る
    • レンタカー・レンタルバイク:自家用自動車有償貸渡業許可
    • 中古品レンタル:古物商許可

    上記のように、リース・レンタルするものによって必要な資格や許可が変わるので注意しましょう。

    CD・DVDなどは、許可なく営業してしまうと著作権法違反につながります。また、衣装や車、家電製品などの場合でも、中古品を扱うのであれば古物商許可が必要です。

    以上のように、金融・リース・レンタル会社では、免許・許可・登録を取得して営業しているケースが少なくありません。つまり、買い手企業が免許などを取らなかった場合、営業停止になる可能性があるのです。

    金融・リース・レンタル会社の免許・許可・登録は、扱う商品・商材によって多岐に渡ります。買い手企業が、自社と同じ免許・許可・登録を所持しているかを確認しましょう。

    8. 専門家に相談して金融・リース・レンタル業界の事業売却(事業譲渡)を成功させよう

    金融・リース・レンタル業界の事業売却(事業譲渡)を検討しているのであれば、必ず専門家に相談しましょう。

    その理由としては、金融・リース・レンタル会社は免許・許可・登録を取得しておかなければ営業できない一方で、事業売却(事業譲渡)では、それらを引き継げないといった側面があるからです。

    事業売却(事業譲渡)の知識が十分になければ、事業売却(事業譲渡)後に問題が発覚し、営業できないなどということも起こり得ます。このようなトラブルを避けるためにも、専門家への相談は必須です。

    また、買い手探しから事業譲渡契約まで、全て自社内で行うのは非常に難しいといわざるを得ません。

    どの専門家に依頼すればよいかわからないという場合には、M&A総合研究所にご相談ください。中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所であれば、金融・リース・レンタル業界の事業売却の実績もあり、実績事例をもとにアドバイスいたします。

    また、M&A総合研究所は、通常10ヶ月~1年以上かかるとされる事業売却(事業譲渡)などのM&Aを、成約まで最短3カ月と機動力があるのも特徴です。

    M&Aの料金体系は完全成功報酬制(譲渡企業様のみ)です。着手金は譲渡企業様・譲受企業様ともに無料となっておりますので、安心してご相談いただけます。

    随時、無料相談を受けつけておりますので、金融・リース・レンタル会社の事業売却(事業譲渡)にお悩みの際には、お気軽にお問い合わせください。

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    9. 【付記】事業売却(事業譲渡)におけるリース・レンタル契約の扱いとは

    企業や店舗を事業売却(事業譲渡)するとき、リース・レンタル契約の扱いはどうなるのか気になる人は多いはずです。

    実際に、「電話機やコピー機などをリース・レンタルしていた企業が事業売却(事業譲渡)をして対応に困った」などというケースもあるのではないでしょうか。

    そこで、事業売却(事業譲渡)におけるリース・レンタル契約の扱いがどうなるのか確認しておきましょう。

    まず、事業売却(事業譲渡)において、譲渡する資産や負債の移転をするときには債権者の了承が必要です。

    リース資産(電話機やコピー機など)はリース会社に所有権があり、レンタル資産(重機など)はレンタル会社に所有権があります。あくまでも電話機や重機は、リース・レンタル会社から物を借りているだけにすぎません。

    したがって、事業売却(事業譲渡)によって契約者の移転が発生する場合は、リース・レンタル会社の了承が必要です。

    リース・レンタル契約は代表者が個人保証をしていることもあります。契約者の移転と同時に連帯保証人の変更も必要となるでしょう。

    このように、企業や店舗を事業売却するとき、リース・レンタル契約はリース・レンタル会社の了承を得る必要があります。

    もし、取引先からリース・レンタル契約の契約者を変更したいといわれた場合には、あらためて与信を取り、契約を結んでも問題のない相手なのかを確認したうえで了承をしましょう。

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    10. まとめ

    近年の金融・リース・レンタル業界は、伸び悩みで市場拡大できていません。このような状況から中小企業の経営が追い込まれ、事業売却(事業譲渡)を決意する会社が増えてきているのが実情です。

    金融・リース・レンタル業界で経営が苦しい中小企業であっても、買い手は見つかります。M&A仲介会社などの専門家と相談しつつ、事業承継やその後の経営について前向きに考えていきましょう。

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