2021年09月04日更新
中小・零細企業のM&A戦略を解説!事業承継問題を会社売却で解決するには?
近年では、経営者の引退などで事業承継問題を抱えた中小・零細企業が、M&Aによる事業承継で解決するケースが増えています。本記事では、中小・零細企業のM&A戦略について、目的や手法、売却相場の考え方など、経営者の方が押さえておきたい事項を解説します。
目次
1. 中小・零細企業とは
中小・零細企業のM&Aについて考える前に、まずはそもそも中小・零細企業とは何かについて整理しておきましょう。
普段日常会話で中小・零細企業と言う時は、事業規模の小さな会社のことを漠然と差していることが多いです。
しかし、中小企業基本法では、「中小企業者」と「小規模企業者」という用語が下の表のように定められており、中小企業者・小規模企業者のことを中小企業・零細企業と呼ぶこともあります。
どちらの使い方も慣習的に定着しているので、一方が正しくてもう一方が間違っているわけではなく、中小・零細企業という言葉には、このような曖昧さがあります。
【中小企業者】
業種 | 資本金 | 従業員数 |
製造業など | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
【小規模企業者】
業種 | 従業員数 |
製造業など | 20人以下 |
商業・サービス業 | 5人以下 |
2. 中小・零細企業がM&Aを実施する主な目的
中小・零細企業がM&Aを実施する目的を大きく分類すると、主に以下の3つがあります。
【中小・零細企業がM&Aを実施する主な目的】
- 事業承継
- 会社売却
- 事業売却
1.事業承継
事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。単に経営権を引き継ぐだけでなく、設備や不動産などの有形資産、ノウハウや技術、経営理念などの無形資産も含めて全てを引き継ぎます。
ですから、単に社長を交代するだけの場合は、事業承継とは呼ばないのが一般的です。
事業承継は、後継者を誰にするかによって、親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継の3つに分類できます。
親族内事業承継とは、現経営者の親族が後継者になる事業承継で、中小・零細企業の事業承継では一般的に用いられています。
親族外事業承継とは、親族ではない役員や社員、外部から招へいした人物などを後継者にすることです。親族が後継者に就くまでの一時的な社長交代など、柔軟性のある戦略がとれるのが特徴です。
M&Aによる事業承継では、M&Aで会社を他者へ売却して、買い手企業(または個人)が後継者となります。
中小・零細企業の事業承継は親族内事業承継が多かったですが、近年は親族内に適切な後継者がいないケースが増えており、代わりにM&Aによる事業承継が増えてきています。
2.会社売却
会社売却を目的に、中小・零細企業のM&Aを行うのも多くみられるケースです。特に、ベンチャー企業ではイグジットの手段として、会社売却によるM&Aがよく使われています。
会社売却とは会社を売却すること全般を指す用語であり、法律上の明確な定義があるわけではありません。
一般には株式譲渡のような包括的な売却のことを指し、事業譲渡による一部事業の譲渡などは含まないことが多いです。
単に株式譲渡のことを会社売却ということもあります。しかし、事業譲渡も含めて会社売却と呼ぶこともあり、使い方にはやや曖昧さもあります。
3.事業売却
事業売却を目的に、中小・零細企業のM&Aが行われることもあります。事業売却も会社売却と同様慣習的な用語で、一般には事業譲渡などによって事業を個別に売却し、会社の経営権は譲渡しないケースを指します。
事業譲渡と同じ意味で使われることも多ぃ、中小・零細企業の事業売却は、不採算事業の切り離しや、コア事業に集中するための資金の獲得などを目的に行われます。
また、個人事業主が事業売却でM&Aを行うケースも増えています。個人事業主は株式譲渡はできないので、M&Aは必ず事業売却で行われます。
3. 中小・零細企業で多く用いられるM&A手法
M&Aの手法にはさまざまなものがあり、代表的なものを列挙すると、株式譲渡・事業譲渡・株式交換・株式移転・合併・分割などがあります。
種類が多くて難しいと感じるかもしれませんが、中小・零細企業のM&Aで使われるのは株式譲渡と事業譲渡だけで、その他の手法はほぼ使われません。
ですから、中小・零細企業のM&Aを考える時は、株式譲渡と事業譲渡だけ知っておけば十分です。
【中小・零細企業で多く用いられるM&A手法】
- 株式譲渡
- 事業譲渡
株式譲渡
株式譲渡とは、株式を売却して経営権を譲り渡すM&A手法です。中小・零細企業だけでなく、大企業も含めて最もよく使われるM&A手法です。
メリット
株式譲渡の主なメリットは以下の3点です。
【株式譲渡のメリット】
- 許認可や権利義務を引き継げる
- 経営者が交代すること以外大きな変化がない
- 事業譲渡より手続きが簡単
1.許認可や権利義務を引き継げる
株式譲渡は会社の経営権の移転なので、会社が持つ許認可や権利義務なども全て引き継ぐことになります。許認可が必要な業種でも、新たに許認可を取る必要がないのは大きなメリットです。
2.経営者が交代すること以外大きな変化がない
株式譲渡は株主が変わるだけなので、従業員や取引先から見ると経営者が交代する以外大きな変化はありません。
M&Aは、従業員や取引先が不安を感じて離職や取引停止することがあるので、変化が少なく不安を与えにくいのは大きなメリットです。
3.事業譲渡より手続きが簡単
株式譲渡の手続きは株主を変更して対価を支払うだけなので、資産を個別に売却する事業譲渡に比べると手続きが簡単です。
中小・零細企業は株主数も少なく、経営者一人が全株式を保有していることも多いので、中堅・大企業の株式譲渡と比べてさらに簡単になります。
デメリット
メリットの多い株式譲渡にも当然デメリットが存在します。特に注意しておきたいのは、以下の2点です。
【株式譲渡のデメリット】
- 簿外債務などを引き継ぐ恐れがある
- のれんの償却が負担になることがある
1.簿外債務などを引き継ぐ恐れがある
株式譲渡は経営権を譲渡して会社を包括的に引き継ぐので、負債も全て引き継がれることになります。
特に、譲渡時には把握していなかった簿外債務が譲渡後に発覚すると、買い手は予定外の負担を背負うことになり、表明保証違反であれば訴訟になる恐れもあります。
さらに、未払い残業代などの簿外債務は従業員から訴訟される恐れもあるので、株式譲渡の際は売り手企業のデューデリジェンスを徹底して、できるだけ簿外債務を洗い出しておくことが大切です。
2.のれんの償却が負担になることがある
M&Aで株式を売却する時は、売り手企業の無形資産を「のれん」として盛り込みますが、のれんは一定期間かけて償却されていくので、思わぬ負担となることがあります。
のれんの価値に見合うシナジー効果が得られた場合は問題ありませんが、思ったほどのシナジーが得られなかった場合は、のれんが経営を大きく圧迫することもあります。
事業譲渡
事業譲渡とは、株式は譲渡せずに事業に関連する資産を譲渡するM&A手法です。下の図を見ると、A会社はA事業に関わる資産(店舗や設備、在庫など)をB会社に売却し、B会社は対価として現金を支払います。
しかし、譲渡後もA会社はそのまま存続し、B会社の子会社にはなりません。ここが会社を子会社化する株式譲渡との大きな違いです。
売却する事業は複数事業のうちの一部だけでもいいですし、全ての事業を売却することもできます。
メリット
事業譲渡の主なメリットには、以下の3つが挙げられます。
【事業譲渡のメリット】
- 譲渡する資産を選べる
- 会社の経営権を保持できる
- のれんを損金算入できる
1.譲渡する資産を選べる
事業譲渡は株式ではなく事業資産の売買なので、全ての資産を譲渡する必要はありません。
買い手は余計な負債を引き継がなくて済み、売り手はコア事業を残して経営を続けることができます。
2.会社の経営権を保持できる
会社の経営権を保持できるのも、事業譲渡のメリットです。株式譲渡のように子会社化されないので、会社の独立性を維持できます。
3.のれんを損金算入できる
事業譲渡ではのれんの償却が損金として計上できるので、買い手にとっては株式譲渡より節税効果が高くなります。
デメリット
事業譲渡の主なデメリットは以下の3つです。
【事業譲渡のデメリット】
- 債権者や従業員の了承が必要
- 株式譲渡より手続きが面倒
- 競業避止義務
1.債権者や従業員の了承が必要
事業譲渡では債務の移転や雇用の再契約が行われるので、債権者や従業員の了承がなければ引き継ぐことはできません。
2.株式譲渡より手続きが面倒
事業譲渡は資産や権利義務を売買するので、株式譲渡よりも手続きが面倒になります。
3.競業避止義務
事業譲渡では、売却した事業と同じ事業を一定期間行うことができない「競業避止義務」が課されます。
もし、M&A後もいずれ同じ事業を立ち上げたいと考えている場合は、よく検討してから行う必要があります。
4. 中小・零細企業の会社売却価格相場
どのような目的でM&Aを行うにしろ、売却価格の決め方を知っておくのは重要です。この章では、会社の売却価格はどうやって決まるのか、売却価格の目安となる企業価値評価とは何かについて概要を解説します。
会社の売却価格はどうやって決まる?
会社の価値というのは無形資産の部分も大きいので、商品の値段のようにはっきりと価格をつけにくい部分があります。
また、同じ会社でも買い手が求めるニーズと一致するかどうかによって、売却価格が大きく変わることもあります。
結局のところ、会社の売却価格は、売り手と買い手が交渉をして双方が納得するかどうかで決まります。
売却価格の目安は企業価値
中小・零細企業の売却価格は、最終的には売り手と買い手の合意で決まりますが、全くの言い値で交渉するのではなく、企業価値評価を行ってある程度の目安を算定するのが一般的です。
中小・零細企業では、純資産に数年分の営業利益を足して、さらに無形資産の価値をのれんとして加えて算定することが多いです。
このような純資産をもとにした企業価値評価を「コストアプローチ」といいます。また、同業種の企業の株価や経営指標などを参考に、中小・零細企業の価値を見積もることもあり、この手法を「マーケットアプローチ」といいます。
5. 中小・零細企業が事業承継を会社売却で成功させるには
中小・零細企業のM&Aは必ず成功するわけではなく、買い手が見つからず失敗することもあります。
たとえ買い手がみつかっても、その後会社の業績が落ちたり、経営方針が望まない方向に変わってしまっては成功したとはいえません。
中小・零細企業のM&Aを行うには、成功させるポイントを押さえておくことが大切です。ここでは、中小・零細企業がM&Aによる事業承継を成功させる主なポイントについて解説します。
【中小・零細企業が事業承継を会社売却で成功させるには】
- 会社売却・事業承継のタイミングを逃さない
- 会社売却・事業承継に向けて磨き上げ・体制作りをしておく
- M&Aの専門家に相談する
1.会社売却・事業承継のタイミングを逃さない
中小・零細企業のM&Aは、適切なタイミングで行うかどうかによっても成功率が変わってきます。
会社の業績が好調な時、業界全体が好調な時、大規模な業界再編が起こっている時などは、M&Aのよいタイミングといわれています。
2.会社売却・事業承継に向けて磨き上げ・体制作りをしておく
M&Aを行う前の会社の磨き上げと体制作りは、成功率を高めるとともに、売却価格を引き上げるのにも役立ちます。
磨き上げの方法はさまざまですが、方針としては買い手への魅力を高めて、買い手に対する買収リスクを軽減していきます。
例えば、経営状況や財務状況の確認および改善をしたり、簿外債務やコンプライアンス違反などがないか確認などが挙げられます。
3.M&Aの専門家に相談する
中小・零細企業の経営者が自分だけでM&Aを行うのは困難なので、M&A仲介会社などの専門家のサポートを得ながら進めていくことになります。
中小・零細企業のM&Aでは、小規模なM&Aを得意にしている仲介会社を選ぶことが重要です。
大企業専門の仲介会社は手数料も高く、中小・零細企業の案件は断られることも多いため、事前によく確認しておく必要があります。
6. 中小・零細企業の会社売却・事業承継におすすめの仲介会社
中小・零細企業のM&Aをご検討中の方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。当社はさまざまな業種で中堅・中小企業M&Aの実績がありますので、中小・零細企業のM&Aを安心してお任せいただけます。
50件以上のM&A実績があるアドバイザーが親身にフルサポートいたしますので、M&Aのことが何も分からない方でも、基本的なことから相談して進めていただけます。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
中小・零細企業のM&Aに関して、無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
中小・零細企業のM&Aを成功させるには、目的や手法などの戦略を理解することが大切です。事業承継問題の解決策として、中小・零細企業の経営者の方もM&A戦略を知っておくとよいでしょう。
【中小・零細企業がM&Aを実施する主な目的】
- 事業承継
- 会社売却
- 事業売却
【中小・零細企業で多く用いられるM&A手法】
- 株式譲渡
- 事業譲渡
【中小・零細企業が事業承継を会社売却で成功させるには】
- 会社売却・事業承継のタイミングを逃さない
- 会社売却・事業承継に向けて磨き上げ・体制作りをしておく
- M&Aの専門家に相談する
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