2024年04月27日更新
M&Aにおける弁護士の役割とは?業務内容、費用相場、依頼するメリットも解説
M&Aの各プロセスには専門的な知識が欠かせないため、弁護士など士業の専門家のサポートが必要です。本記事では、士業の中でも弁護士に着目し、M&Aにおける弁護士の役割や業務内容、メリット、費用、弁護士を選任するコツなどを解説します。
目次
1. M&Aとは
M&Aとは「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略称であり、合併などの組織再編行為と、会社や事業そのものの売買取引の総称です。M&Aを実施すると、買い手から売り手に資本が移動し、売り手の会社や事業の経営権が買い手に移転します。
M&Aの手法
M&Aにはさまざまなスキーム(手法)があり、その概要は以下のとおりです。
- 株式譲渡:売り手企業の株式を買収することで買い手はその経営権を取得する
- 事業譲渡:売り手企業の事業やそれに関連する資産・権利義務などを選別して売買する
- 株式交換:完全親子会社関係になる前提で買い手は売り手の全株式を取得し、対価として自社株式を交付する(現金も可能)
- 株式移転:会社を新設し持株会社体制構築を目的とする株式交換
- 第三者割当増資:特定の第三者に株式を交付することで資金調達を行う
- 会社分割:売り手の事業部門を丸ごと買い手が承継する
- 合併:複数の企業が1社に統合される
資本提携は、経営権の移転はないものの資本の移動は伴うため、広義のM&Aとされています。
M&Aに携わるプレーヤー
M&Aの仲介業務や何らかの役割でM&Aに関わる士業や業種は、以下のようなものがあります。
- M&A仲介会社:M&Aの専門業者だが、売り手・買い手双方と契約して仲介するタイプと、売り手・買い手のどちらかとのみ契約するアドバイザリー・タイプの2種がある
- ファイナンシャルアドバイザー(FA):一般的には金融アドバイザーのことだが、M&Aでは財務コンサルタントの立場から仲介業務に携わる
- 金融機関:かつてはM&Aに関する資金融資を行うだけだったが、現在は多くの金融機関内にM&A部門が設けられ仲介業務も手掛けている
- 公認会計士:企業価値評価(バリュエーション)や財務デューデリジェンス、PMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)サポートなどを担当するが、M&A仲介業務を行う事務所もある
- 税理士:税務デューデリジェンスを担当するほか、M&A仲介業務を行う事務所もある
- 弁護士:法務デューデリジェンス、各種契約書の作成・チェック、PMIサポートなどを担当するほか、M&A仲介業務を行う事務所もある
- 社会保険労務士:労務デューデリジェンス、PMIでの人事制度統合サポートなどを担当する
M&Aのメリット・デメリット
M&Aの主なメリットは以下のとおりです。
- 売却益の獲得(売り手)
- 後継者不在による事業承継問題の解決(売り手)
- 大企業の傘下になることで経営の安定化を図り業績向上が目指せる(売り手)
- 事業規模の拡大(買い手)
- 市場シェアの拡大(買い手)
- 営業エリア(拠点)の拡張(買い手)
- 新規事業へ低リスクで参入(買い手)
- シナジー効果による業績向上(買い手)
- 規模の経済によるコスト削減効果(買い手)
- 人材の獲得(買い手)
- 専門設備・特殊技術・ノウハウ・特許権などの獲得(買い手)
一方、M&Aには以下のようなデメリットもあります。
- 相手が見つからなければM&Aを実施できない
- 想定していたとおりの条件でM&Aが実現するとは限らない
- 最終契約書の表明保証に違反すると損害賠償責任を負う(売り手)
- 簿外債務を承継してしまい経営にダメージを負うリスクがある(買い手)
- PMIに失敗すると想定していたメリットを得られない可能性がある(買い手)
2. M&Aにおける弁護士の役割とは
ここでは、M&Aにおける弁護士の役割を説明します。基本的に法律の専門家としてM&Aをサポートするのが、弁護士の役割です。
- M&Aの各種手続き
- M&Aの契約書作成
- M&Aの条件交渉・アピール
- M&Aの際のデューデリジェンス
- M&Aの企業価値評価
- M&Aの際のトップ面談・顔合わせ
- M&Aの買い手企業の選定
M&Aの各種手続き
M&Aにおけるプロセスの中には契約や書類の作成などがあり、これらには専門的な知識が必要になります。特に契約は法的な知識が不可欠であり、経営者自身で進めるのは難しいため、弁護士などの専門家に依頼して進めることが一般的です。
M&Aの契約書作成
M&Aでは、複数の契約書を作成しなければなりません。契約書は正確に作成しなければ、M&Aでのトラブルを生じさせる原因にもなります。契約書にはそれぞれ特定の書式があるため、法的に認められる内容を記載することが必要です。
契約書に不備があれば、M&Aの成立が無効になる可能性もあります。弁護士の幅広い法的知見や経験が契約書作成には求められるでしょう。M&Aの経験豊富な弁護士に依頼することによって、契約書は入念にチェックされトラブル発生を防げます。
M&Aの条件交渉・アピール
M&Aは、売り手と買い手の交渉による合意がなければ成立しません。M&Aの仲介業務を依頼している場合、当事者が直接交渉を行うことはなく、依頼された者が代行します。
弁護士は、職業柄、交渉やトラブル解決に長けているため、M&Aのサポート経験が豊富な場合は適切な交渉が期待できるでしょう。
M&Aの際のデューデリジェンス
デューデリジェンスとは、M&Aの買い手企業が売り手企業の価値や将来の収益、デメリットなどを詳しく検討・調査するとともに、PMIに必要な情報収集も行うものです。デューデリジェンスには、財務・税務・法務・人事・IT・ビジネスなどさまざまな種類があります。
その中でも法務デューデリジェンスは、売り手企業の法的リスクを看破するために欠かせない重要なデューデリジェンスの1つです。法務デューデリジェンスの最適任者は弁護士以外にありません。
M&Aの企業価値評価
M&Aの企業価値評価とは、企業にどれぐらいの価値があるかを算出することをさし、企業価値評価を基に売買額が交渉されるのが一般的です。企業価値評価を算出する方法は、企業が上場しているのか、非上場であるかによって異なります。
上場企業の企業価値評価
上場企業の場合は、その企業が発行している株式総数と株式市場の株価によって算出できます。算出結果は、いわゆる時価総額のことです。M&Aにおいて、企業の株式価値によって判断されることが一般的であり、上場している会社の企業価値はシンプルに算出できます。
非上場企業の企業価値評価
非上場企業の場合、コストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチなどの体系に分類される各種の専門的な方法を用いて、企業価値を算出します。
その中でもM&Aで多用されているのは、インカムアプローチのDCF(Discounted Cash Flow)法です。DCF法は、将来その企業が生み出すと想定される利益を、リスクなどを加味した率で割り引いて企業価値を算出します。
企業価値評価にはさまざまな算出方法があり、より正確な結果を求めるためには専門的知識が必要です。その評価の適切性・公平性を判断するといった観点から、弁護士が必要となる場面もあります。
M&Aの際のトップ面談・顔合わせ
売り手企業と買い手企業のトップ同士が直接顔を合わせ、書面だけでは伝わらない企業の価値観や理念などを双方が理解するための場を設けます。トップ会談・顔合わせでは、メリットを伝えるだけでなく、双方が疑問に思っていることを解消することも必要です。
その際に、客観的視点や専門的な見解が必要になるケースもあるので、弁護士の意見やサポートは重要な役割を果たします。
M&Aの買い手企業の選定
M&Aの買い手の選定がうまくいかない場合、売り手が持っているポテンシャルを引き出せずにM&Aが終わってしまう可能性もあるでしょう。
売却する金額だけでなく、買い手の理念・経営方針・将来性、法的に問題点はないかなど総合的に考慮する必要があり、弁護士の知識や経験が有効な場面もあります。
弁護士と公認会計士、税理士の違い
弁護士は法律の専門家ですから、法務を中心業務としてM&Aに関わります。公認会計士は財務の専門家として、売り手の企業価値評価などを通して財務・会計状況の分析業務を中心にM&Aに関わっているものです。
税理士は税金のプロですから、売り手の税務調査、M&A後の税務アドバイス・対策など税務を中心としてM&Aに関わっていきます。三者ともそれぞれの専門性の強みを生かしながら、場合によっては提携するなど専門性を補完してM&Aをサポートします。
3. M&Aにおける弁護士の業務内容
ここでは、M&Aにおける弁護士の具体的な業務内容を解説します。M&Aにおける弁護士の主な業務内容は以下の6つです。
- M&Aアドバイザー業務
- M&Aの仲介業務
- FA業務
- M&Aに関連する法務
- M&Aの顧問担当
- 労務管理
M&Aアドバイザー業務
M&Aを行うには、M&Aに関する知識はもとより法務や財務などの専門知識も必要であるため、経営者自身で進めていくのは難しいでしょう。M&A仲介会社や弁護士・税理士などの専門家のサポートを受けながら進めていくケースがほとんどであり、M&Aのアドバイザー業務を担っている弁護士も大勢います。
弁護士は、特に交渉やトラブルの解決などに長けているので、M&A実績を有する弁護士であれば、専門性の高いサポートが期待できるでしょう。
M&Aの仲介業務
M&Aの仲介業務では、売り手と買い手の間に入り、成約に向けて中立の立場から交渉やサポート業務を行います。仲介契約の場合、買い手と売り手のマッチングから成約まで行うのが一般的です。中立の立場から交渉を進めるため、有効にM&Aを行えます。
FA業務
FAとは「ファイナンシャルプランナー」の略で、FA業務の場合は仲介契約と異なり、買い手または売り手の一方と契約します(アドバイザリー契約)。
FAのメリットは、クライアントの利益最大化を図りやすい点ですが、一方で互いの主張を通そうとするために交渉が滞ったり破断したりすることが否定できません。
M&Aに関連する法務
M&Aに関連する法務として、契約書の作成やチェックなどがあります。M&Aは専門的なので、契約が適切に行われているか、必要書類に不備がないかなどのチェックには、弁護士の専門的知識はおおいに役立つものです。
M&Aを通して法的に気になる点や注意すべき点などを相談することで、納得のいくM&Aを行えます。
M&Aの顧問担当
M&Aを行ううえでは、自社の内部情報を相手先企業へ開示する必要もあります。万一、内部情報が流出してしまうと、株価の低下だけでなくM&A自体も破談になるかもしれません。
顧問担当となる弁護士を決めておけば、企業の内部情報が外部に漏れる心配はなく、経営者がM&Aや会社について相談できる頼れる存在ともなります。
労務管理
労務条件は企業によって異なるため、売り手と買い手の間で条件が異なる場合、そのままM&Aを進めると企業の運営に支障をきたす恐れがあります。そこで、M&Aを行う際は労務条件を統一するのが一般的です。
弁護士は労務条件の現状把握をし、法定を上回る付与に関して検討・交渉します。何が問題になりやすいか、どこを抑える必要があるかなどを検討する際、弁護士の法的知識や経験は非常に頼りになるでしょう。
4. 弁護士が担当するM&Aの流れ
弁護士が担当するM&Aの主な流れは以下のとおりです。これは弁護士が担当するM&Aに限らず、一般的なM&Aの流れでもあります。
- 売り手企業との秘密保持契約の締結
- 売り手企業のM&Aにおけるニーズの確認
- 売り手企業とアドバイザリー契約の締結
- 買い手企業へのノンネーム資料提出
- 買い手企業の選定
- 買い手企業との秘密保持契約
- 売り手企業に対して買い手企業のネームクリア
- トップ面談
- 「基本合意書」の締結
- デューデリジェンスの実施
- 「最終契約書」の締結
- クロージング
①売り手企業との秘密保持契約の締結
売り手企業からM&Aに関するヒアリングを行うに際し、売り手企業と弁護士間で秘密保持契約を締結します。M&Aにおいて、内部情報が外部に流出してしまうことは避けなければなりません。弁護士には守秘義務がありますが、秘密保持契約の締結は必要です。
②売り手企業のM&Aにおけるニーズの確認
弁護士がまず行うのは、売り手企業に対するM&Aのニーズ内容の確認です。売却金額のみならず、買い手企業の規模や経営方針など内容は多岐に渡ります。
③売り手企業とアドバイザリー契約の締結
売り手企業のM&Aにおけるニーズの確認後、弁護士と売り手企業間でアドバイザリー契約の締結です。弁護士は、M&Aの戦略策定を行うとともに、買い手企業との交渉に必要な書類を作成します。
④買い手企業へのノンネーム資料提出
弁護士は買い手候補に対して、売り手企業の概要書を提出します。この概要書は、書面からどの企業か特定できないように工夫されており、ノンネーム資料。ノンネームシートなどと呼ばれるものです。
⑤買い手企業の選定
買い手候補がしぼられてきたら、クライアントの条件に最も適した買い手企業の選定です。選定の過程で、書面などでの調査のみならず、弁護士が買い手企業と面談を行うなどし、売り手企業にとって最適であるかをしっかり確認します。
⑥買い手企業との秘密保持契約
買い手企業が定まったら、売り手企業と買い手企業間で秘密保持契約を締結します。
⑦売り手企業に対して買い手企業のネームクリア
売り手・買い手間の秘密保持契約締結と同時に、両社の企業情報の開示です。特に伏せていた社名を開示することをネームクリアといいます。
⑧トップ面談
条件交渉の過程で行うのが、売り手企業と買い手企業のトップ面談です。この際も、弁護士はクライアントに対してアドバイスやサポートを行います。
⑨「基本合意書」の締結
条件交渉が大筋で合意したら、「基本合意書」の締結です。基本合意書は、一部の条項(独占交渉権など)を除いて法的拘束力がありません。
⑩デューデリジェンスの実施
基本合意書が締結されると、弁護士など専門家を起用して、売り手企業に対するデューデリジェンスが実施されます。売り手企業は、資料提出やヒアリング対応など建設的に調査に協力しなければなりません。弁護士は、協力に関し必要に応じてアドバイスします。
⑪「最終契約書」の締結
デューデリジェンス後、最終交渉が行われます。その場で合意した場合は、「最終契約書」の締結です。なお、最終契約書とは便宜上の呼称であり、実際には用いられるM&Aスキーム名がついた書名になります(株式譲渡契約書、事業譲渡契約書など)。
⑫クロージング
クロージングとは、最終契約書の締結内容を履行することです。売り手であれば株式や資産などの引き渡し、株主名簿の書き換えなど、買い手であれば対価の支払い、資産の名義書き換えなどが該当します。
5. M&Aで弁護士に依頼するメリット
M&Aを弁護士に依頼するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、M&Aを弁護士に依頼する3つのメリットを紹介します。
- 法的な視点による取引の健全化
- 法的トラブルの回避
- 法的トラブルの早期解決
法的な視点による取引の健全化
M&Aには、さまざまなプロセスがあります。その中では、多くの書面作成や契約締結が適切に行われているかのチェックが不可欠です。特に、法律に触れていないかなどを確認するには、弁護士の専門的知識が欠かせません。
M&Aを弁護士が多角的にチェックすることで、取引を健全なものにし、生じ得るトラブルを回避できます。
法的トラブルの回避
M&Aではさまざまな契約や書面が交わされますが、それぞれに記載すべき事項があり、内容に誤りや抜けがあれば。M&A自体が破談になったり法的トラブルに発展したりする可能性がありえるでしょう。
弁護士に書面作成や契約に関するサポートをしてもらえば、記載漏れや誤りによる法的トラブルを回避できます。
法的トラブルの早期解決
十分注意してM&Aを進めても、法的トラブルが発生してしまう可能性はゼロではありません。弁護士にM&Aのサポートを依頼すれば、万一、法的トラブルが起きてしまった場合も迅速に対応できます。
トラブルが発生してしまった原因を把握し、問題解決をするには弁護士の専門的な知識と経験が必要です。弁護士が法的トラブルの早期解決を行うことで、たとえトラブルが生じたとしてもM&Aを継続できる可能性があります。
6. M&Aで弁護士に依頼する際の費用
M&Aの際に依頼する弁護士は、大きく分けて以下の4つの類型です。各弁護士への依頼料の相場は、その類型によって大きく異なります。
- 大手法律事務所
- 外資系法律事務所
- 中堅法律事務所
- M&A専門法律事務所
大手法律事務所の弁護士
大手法律事務所では、手数料が数千万円から数億円になることもあるなど非常に高額です。海外企業とのM&Aや大規模なM&A案件を主に取り扱っています。
外資系法律事務所の弁護士
外資系法律事務所も、大手法律事務所同様、手数料が数千万円から数億円になるなど非常に高額です。主に海外企業とのM&Aを対象にしています。
中堅法律事務所の弁護士
中堅法律事務所には、M&A専門チームが存在しているケースはあまりありません。中堅法律事務所の弁護士は、企業法務案件の一環としてM&Aに携わることが大半であり、大手法律事務所に比べると料金もリーズナブルです。
M&A専門法律事務所の弁護士
M&A専門法律事務所の数は多くはなく、手数料設定にも幅があります。M&Aに関連する法律をメインとしているため安心して依頼できますが、サポート範囲や得意分野などは手数料と合わせて事前に確認する必要があるでしょう。
業務の種類ごとに費用は異なる
M&Aで弁護士に業務を依頼する場合の契約形態、つまりは依頼する業務内容によって、大体の相場はあります。ただし、紹介する金額はあくまで一例であり、最終的には各弁護士事務所の料金体系で決まるものです。
- スポット依頼の費用
- 顧問契約の費用
- アドバイザリー契約の費用
スポット依頼の費用
M&Aに関連して弁護士に単発で業務依頼した場合、時間制と固定額制の2種類があります。時間制の場合、何の業務を行うにせよ、作業1時間あたり数万~10万円程度の費用です。固定額制の場合、M&A関連業務だと以下のような費用になります。
- 契約書の作成・チェック:50万~数百万円
- 法務デューデリジェンス(小規模案件・買収価額数億円以下):50万~数百万円
- 法務デューデリジェンス(中規模案件・買収価額10億~数十億円):数千万円
- 法務デューデリジェンス(大規模案件・買収価額100億円~):1億円~
顧問契約の費用
一般的に弁護士と顧問契約を結ぶ場合、月額報酬となります。顧問契約締結の際に顧問業務の内容を取り決め、その範囲の広さ次第で金額は左右するので、以下はあくまでも参考額です。
- 弁護士の顧問契約月額料:数万~数十万円
アドバイザリー契約の費用
弁護士とM&Aのアドバイザリー契約を締結した場合、以下の手数料が発生する可能性があります。
- 着手金:契約締結時に支払うが発生しない場合(無料)も多い
- リテイナーフィー:月額顧問料だが発生しない場合(無料)が多い
- 中間金:成功報酬の一部を前払いとして基本合意書締結時に支払うが発生しない場合(無料)も多い
- 成功報酬:M&A成約時に支払うが、金額はM&Aの成約額などを基準額として、金額帯ごとに異なる手数料率を掛け合わせて算出する
成功報酬の計算方式はレーマン方式といわれ、基準額の各金額帯への一般的な手数料率は以下のとおりです。各金額帯別に手数料を計算し、最後にそれらを合算して成功報酬額を算出します。
- 5億円以下の部分:5%
- 5億円超10億円以下の部分:4%
- 10億円超50億円以下の部分:3%
- 50億円超100億円以下の部分:2%
- 100億円超の部分:1%
7. M&A検討時に弁護士を選ぶコツ
M&Aを検討する際に弁護士を選ぶコツには、どのようなものがあるのでしょうか。この章では、特にチェックしておきたい5つのポイントを紹介します。
- M&Aの知識が豊富にある
- 自社と同規模・同事業のM&A経験がある
- M&Aの一貫サポートができる
- M&Aに関連する法律に精通している
- 担当者との相性がよい
M&Aの知識が豊富にある
弁護士は幅広い法的知識や経験を持っていますが、全ての弁護士がM&Aに精通しているわけではありません。
法律事務所でもM&Aをメイン業務に扱っているケースはあまり多くないため、M&Aの相談をする際は実績の有無やM&Aに関する知識が豊富にあるところを選ぶようにしましょう。
自社と同規模・同事業のM&A経験がある
弁護士を選ぶうえで、自社と同規模・同事業でのM&A経験は重要です。M&Aは、行う規模や事業ごとに、必要な知識や注意すべき点が大きく異なるためです。依頼を検討している弁護士が、どのような規模・事業でM&A実績があるのかを確認するようにしましょう。
M&Aの一貫サポートができる
一貫サポートが受けられれば、M&Aをスムーズに進められます。M&Aを成功させるためには、業界やM&Aに関する知識のほか、法務・財務・税務などの知識も必要です。各工程でそれぞれの専門家に相談やサポート依頼をすると、効率も悪く情報が漏えいするリスクも高くなります。
費用も余計にかかることになり、依頼する企業にとっては大きな負担です。弁護士にM&Aを依頼する場合は、一貫したサポートが受けられるのかどうかを確認するようにしましょう。
M&Aに関連する法律に精通している
弁護士は法律の専門家ではありますが、全ての弁護士がM&Aに関連する法律に精通しているわけではありません。M&A業務を請け負っている弁護士の数はそう多くないため、依頼する弁護士がM&Aに関連する法律に精通しているかを確認しておく必要があります。
担当者との相性がよい
M&Aは短くても3カ月以上かかり、長い場合だと1年以上かかる場合もあります。その中では、相談しなければならないことや、弁護士にしかわからないこともあるものです。
自社の秘密情報や経営者の思いなども伝える必要があるため、依頼する弁護士との相性は重要な要素になります。ささいなことでも相談できる弁護士や、話しにくいことを相談できる弁護士に依頼することで、トラブルを防ぎM&Aを成功させられるでしょう。
8. M&Aは弁護士よりも仲介会社に相談すべき
弁護士が扱っているM&Aの件数はそれほど多いわけではないため、M&Aに強い弁護士を見つけるのは容易ではないでしょう。M&Aを成功させるためには、M&Aの専門家であるM&A仲介会社のサポートを受けることをおすすめします。
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9. M&Aにおける弁護士の役割まとめ
M&Aにおける弁護士役割や依頼するメリットは多いですが、依頼する弁護士が自分のニーズに応えてくれるのか、M&Aの実績がどの程度あるのかは、しっかり見極める必要があるでしょう。本記事の概要は以下のとおりです。
・M&Aにおける弁護士の役割
→M&Aの各種手続き
→M&Aの契約書作成
→M&Aの条件交渉・アピール
→M&Aの際のデューデリジェンス
→M&Aの企業価値評価
→M&Aの際のトップ面談・顔合わせ
→M&Aの買い手企業の選定
・M&Aにおける弁護士に依頼するメリット
→法的な視点による取引の健全化
→法的トラブルの回避
→法的トラブルの早期解決
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